JP5040404B2 - 封止材用エポキシ樹脂組成物、その硬化体および半導体装置 - Google Patents

封止材用エポキシ樹脂組成物、その硬化体および半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、高い接着性を有し、低応力性に優れ、また難燃性付与成分としてハロゲン化合物、アンチモン化合物を添加すること無しに、優れた難燃性を有する硬化物を与える封止用エポキシ樹脂組成物と、その硬化体に関する。
本発明はまた、この封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子および/または半導体集積回路を封止した半導体装置に関する。
半導体素子の封止には、信頼性、生産性およびコストの面から、エポキシ樹脂組成物が広く用いられているが、近年の高度に複雑化した実装方式に対応するため、封止用エポキシ樹脂組成物にはなお一層の耐ハンダクラック性が要求されており、これらを達成するためには、高い接着性、優れた低応力性を備えた組成物が求められている。
これらの要求を満足させるために、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂と非極性の置換基を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノール樹脂からなる組成物を用いる技術(特許文献1)、嵩高い置換基を有するジシクロペンタジエンフェノールを原料とするエポキシ樹脂を主成分に用いる技術(特許文献2)など、種々の検討が提案されている。
しかし、どの提案も年々より高度になっている耐ハンダクラック性を十分に満たしているとは言えない。
一方、一般のプラスチック材料と同じく、これら組成物にも難燃性が要求されており、そのために主成分とは別に難燃性付与成分として、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂や臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などの臭素化エポキシ樹脂と酸化アンチモンが組み合わせて配合されている。
近年、環境保護の観点からダイオキシン類似化合物を発生する危惧のある含ハロゲン化合物や毒性の高いアンチモン化合物の使用を量規制する動きが高まっており、半導体封止用組成物に関しては、上述の臭素化エポキシ樹脂をはじめとするハロゲン化合物や酸化アンチモンを使用することなしに難燃性を達成させる技術が検討されるようになった。例えば、赤リンを配合する方法(特許文献3)、リン酸エステル化合物を配合する方法(特許文献4)、ホスファゼン化合物を配合する方法(特許文献5)、金属水酸化物を配合する方法(特許文献6)などのハロゲン化合物や酸化アンチモンに代わる難燃剤を配合する手法および充填剤の配合割合を高くする手法(特許文献7)などが検討されている。
しかし、半導体封止用エポキシ組成物に赤リンを用いた場合は耐湿信頼性の低下や赤リンの打撃発火性に起因する安全性の問題、リン酸エステルやホスファゼン化合物を用いた場合は可塑化による成形性の低下や耐湿信頼性の低下の問題、金属水酸化物を用いた場合や充填剤の配合割合を高くした場合は流動性の低下の問題がそれぞれにあり、いずれの場合も臭素化エポキシ樹脂と酸化アンチモンを併用した封止用エポキシ樹脂組成物と同等の成形性、信頼性を得るに至っていない。しかも、どの提案も環境に配慮した提案とは言えず、また、難燃剤としてハロゲン化合物やアンチモン化合物を用いないと十分な難燃性を達成できないのが現状である。
特開昭61−47725号公報 特開昭61−123618号公報 特開平9−227765号公報 特開平9−235449号公報 特開平8−225714号公報 特開平9−241483号公報 特開平7−82343号公報
本発明は、高い接着性を有し、低応力性に優れ、また難燃性付与成分としてハロゲン化合物、アンチモン化合物を添加すること無しに、優れた難燃性を有する硬化物を与える封止用エポキシ樹脂組成物およびその硬化体と、この封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子および/または半導体集積回路を封止した半導体装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のフェノール化合物を配合した封止用エポキシ樹脂組成物により、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
[1] (a)エポキシ樹脂と、(b-1)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物を含む(b)エポキシ樹脂用硬化剤とを含有してなる封止材用エポキシ樹脂組成物であって、(b)エポキシ樹脂用硬化剤が、(b-1)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物:10質量%以上90質量%以下および(b-2)その他のフェノール化合物:10質量%以上90質量%以下からなり、(b-2)その他のフェノール化合物が、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールアルキルフェノール共縮合ノボラック樹脂、およびトリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種類のフェノール樹脂であることを特徴とする封止材用エポキシ樹脂組成物。
Figure 0005040404
(式中の記号は次のように定義される。
Xは互いに同一であっても異なっていてもよく、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、硫黄原子、または酸素原子である。
は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のアラルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシ基である。ここでの置換とは水素原子が炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基に置き換わったものを示す。
mは1〜4の整数、nは平均値で0.1〜10の数である。)
[2] (b-1)前記一般式(I)で表されるフェノール化合物のフェノール性水酸基濃度が2.5〜8.5 meq/gであり、軟化点が50〜140℃であることを特徴とする、[1]に記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
[3] (a)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テルペンジフェノール型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種類のエポキシ樹脂であることを特徴とする[1]またはに記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
] 更に、(c)無機充填剤として、破砕型および/または球状の、溶融および/または結晶シリカ粉末を、組成物中に60〜95質量%の割合で含有することを特徴とする[1]ないし[]のいずれかに記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
] ハロゲン化合物およびアンチモン化合物のいずれをも含まず、かつその硬化物がUL−94規格のV−0を満足する難燃性を有することを特徴とする[1]ないし[]のいずれかに記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
] 半導体素子および/または半導体集積回路が、[1]ないし[]のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されていることを特徴とする半導体装置。
] [1]ないし[]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化体。
本発明の封止材用エポキシ樹脂組成物は、高い接着性を有し、低応力性に優れ、耐ハンダクラック性に優れた硬化物を与えるため、特に半導体封止用エポキシ樹脂組成物として有用である。また、難燃性付与成分としてハロゲン化合物、アンチモン化合物を含まずとも、優れた難燃性を示すため、これを用いて半導体素子および/または半導体集積回路を封止した半導体装置は、環境配慮型の半導体装置として有用である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[封止材用エポキシ樹脂組成物]
本発明の封止材用エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂と、(b-1)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物((b-1)フェノール化合物)を含む(b)エポキシ樹脂用硬化剤とを含有してなることを特徴とする。
Figure 0005040404
(式中の記号は次のように定義される。
Xは互いに同一であっても異なっていてもよく、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、硫黄原子、または酸素原子である。
は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のアラルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシ基である。ここでの置換とは水素原子が炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基に置き換わったものを示す。
mは1〜4の整数、nは平均値で0.1〜10の数である。)
{(b)エポキシ樹脂用硬化剤}
<(b-1)フェノール化合物>
まず、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤として用いられる(b-1)フェノール化合物について説明する。
本発明で用いられる(b-1)フェノール化合物は、上記一般式(I)で表されるものであるが、特に、一般式(I)において次のような構成であることが好ましい。
Xとしては、低応力性と反応性の点から−C(CH−、メチレン基、スルホニル基、硫黄原子、酸素原子、または直接結合であることが好ましい。
としては反応性の点から、水素、メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、メトキシ基、ベンジル基、メチルチオ基であることが好ましい。
mは反応性の点から、特に0〜2であることが好ましい。
nは0.1〜10、好ましくは0.2〜8、より好ましくは0.3〜3である。nが小さすぎると接着性、低応力性が低下する。nが大きすぎると溶融粘度が増大してしまう。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物は、前記一般式(I)で示される構造を有していれば、その製造方法に制約はないが、(b-1)フェノール化合物の製造方法としては、一般的にはエピクロルヒドリンやエピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンと2価フェノール化合物の少なくとも1種類を、アルカリ存在下に反応させて製造する一段法と、2価フェノール化合物の少なくとも1種類と2官能性エポキシ樹脂の少なくとも1種類とを一般に触媒の存在下に反応させて製造する二段法とがある。
上記製造法によって、得られるフェノール化合物の分子量やエポキシ当量については、一段法においてはエピハロヒドリンと2価フェノール化合物の仕込みモル比、二段法においては2価フェノール化合物と2官能性エポキシ樹脂の仕込みモル比を、調整することで目的の値のものを製造することができる。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物の製造に用いることのできる2価フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビフェノール類などが挙げられるが、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールが好ましい。また、これらはアルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていても良い。これらの2価フェノール化合物は複数種を併用して使用することもできる。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物の二段法製造に用いることのできる2官能性エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中で特に好ましいものは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノールおよび3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールのジグリシジルエーテルである。これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていても良い。これらのエポキシ樹脂は複数種を併用して使用することもできる。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物の二段法製造においては、触媒を使用することができる。該触媒としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミンなどが挙げられる。第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等が挙げられる。
これらの触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
通常、触媒の使用量は反応固形分に対して0.001〜1質量%である。
触媒としてアルカリ金属化合物を使用する場合、フェノール化合物中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した封止材の信頼性を特性を悪化させるため、得られるフェノール化合物中のLi,NaおよびKのアルカリ金属含有量の合計は好ましくは5ppm以下であり、より好ましくは4ppm以下であり、更に好ましくは3ppm以下である。このアルカリ金属含有量が5ppmを超えると、封止材としての信頼性が悪くなり、好ましくない。また、有機リン化合物を触媒として使用した場合も、フェノール化合物中に触媒残渣として残留し、封止材の信頼性を悪化させるので、フェノール化合物中のリンの含有量は好ましくは150ppm以下であり、より好ましくは140ppm以下であり、更に好ましくは130ppm以下である。リン含有量が150ppmを超えると信頼性が悪くなり、好ましくない。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物は、その製造時の合成反応の工程において溶媒を用いても良く、その溶媒としては反応に悪影響のないものであればどのようなものでも良い。例えば、芳香族系炭化水素、ケトン類、アミド系溶媒、グリコールエーテル類などが挙げられる。
芳香族系炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサンなどが挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、例えば二段法製造時の場合は固形分濃度が30質量%以上になるようにすることが好ましい。
反応終了後、溶媒は蒸留等により除去することで本発明に係る(b-1)フェノール化合物を得ることができる。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物の二段法製造時の反応温度は使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは100〜200℃である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。
以上のようにして製造される本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物の品質性状は、反応に供する各成分の種類、使用割合等により変化するが、フェノール性水酸基濃度が2.5〜8.5meq/g、好ましくは3.3〜7.7meq/g、より好ましくは4.0〜7.1meq/g、軟化点が50〜140℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは60〜100℃、150℃の溶融粘度が10dPa・s以下、好ましくは8dPa・s以下、より好ましくは5dPa・s以下、可鹸化塩素が150ppm以下、好ましくは120ppm以下、より好ましくは100ppm以下、となるよう各種条件等を調整することが好ましい。
フェノール性水酸基濃度が小さすぎると硬化性が悪化し、大きすぎると低吸湿性に劣る。軟化点が低すぎると固体としての取り扱いが困難になり、高すぎるとエポキシ樹脂等との混合が困難になる。溶融粘度が高すぎると成形時の流動性が損なわれる。可鹸化塩素が高すぎると封止材としての信頼性が低下する。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(b-1)フェノール化合物に含まれる水分は1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。(b-1)フェノール化合物中に含まれる水分が多いと硬化促進剤の効果を阻害し、エポキシ樹脂と硬化剤の反応が十分に進行しない、硬化物がハンダクラックによる不良を起こす可能性が高くなる、などの理由で半導体封止の用途には不適である。
また、(b-1)フェノール化合物の電気伝導度は50S/cm以下、好ましくは30S/cm以下、さらに好ましくは20S/cm以下である。(b-1)フェノール化合物の電気伝導度が高いと、フェノール化合物中に含まれるイオン性不純物に起因するアルミニウム配線の腐食による不良が起こる可能性が高くなる等の問題がある。
<(b-2)フェノール化合物>
本発明に係る(b)エポキシ樹脂用硬化剤は、種々の物性のバランスをとるために、上述の(b-1)フェノール化合物とは異なる、(b-2)その他のフェノール化合物を含んでいても良い。
本発明に用いられる(b-1)フェノール化合物以外の(b-2)フェノール化合物としては、公知のものが使用できるが、具体例としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールアルキルフェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、石油系重質油またはピッチ類とホルムアルデヒド重合物とフェノール類とを酸触媒の存在下に重縮合させた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂等が挙げられる。この中でも組成物の硬化後の低吸湿性や難燃性などの観点から、上記フェノール性硬化剤のなかで、フェノールノボラック樹脂(例えば一般式(II))、フェノールアラルキル樹脂(例えば一般式(III)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば一般式(IV))、ナフトールノボラック樹脂(例えば一般式(V))およびナフトールアラルキル樹脂(例えば一般式(VI))、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型樹脂(例えば一般式(VII))が特に好ましい。
Figure 0005040404
これらの(b-1)フェノール化合物以外の(b-2)フェノール化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<フェノール化合物の配合割合>
本発明に用いられる(b-1)一般式(I)で表わされるフェノール化合物と(b-1)フェノール化合物以外の(b-2)フェノール化合物の混合割合は、(b-1)一般式(I)で表わされるフェノール化合物10質量%以上100質量%以下に対して、(b-1)フェノール化合物以外の(b-2)フェノール化合物0質量%以上90質量%以下であり、好ましくは(b-1)フェノール化合物20質量%以上100質量%以下に対して、(b-2)フェノール化合物0質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは(b-1)フェノール化合物30質量%以上90質量%以下に対して、(b-2)フェノール化合物10質量%以上70質量%以下である。
エポキシ樹脂用硬化剤中の(b-1)フェノール化合物の混合割合が少なすぎると、本発明のエポキシ樹脂組成物に十分な性能を付与することができない。
<調製方法>
本発明に係るエポキシ樹脂用硬化剤は、(b-1)フェノール化合物と(b-2)フェノール化合物等のエポキシ樹脂用硬化剤成分を、予め混合して混合硬化剤を調製してから使用しても良いし、エポキシ樹脂組成物の製造時に各種の成分を混合する際にエポキシ樹脂用硬化剤の各成分をそれぞれ別々に添加して同時に混合しても良い。
{(a)エポキシ樹脂}
本発明に用いられる(a)エポキシ樹脂としては、公知のものが使用できるが、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テルペンジフェノール型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂、オルソ−クレゾールノボラック樹脂型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂;種々のフェノール類と、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られるフェノール樹脂等の各種フェノール化合物およびフェノール変性キシレン樹脂などとエピハロヒドリンから製造されるエポキシ樹脂、次のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミンなど、次のカルボン酸類とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
この中でも、硬化物の吸湿性や難燃性の観点から、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テルペンジフェノール型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
更に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂、およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(a)エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度は、エポキシ樹脂組成物の流動性を考慮すると5.0dPa・s以下、好ましくは3.0dPa・s以下、より好ましくは1.0dPa・s以下、さらに好ましくは0.3dPa・s以下になるようにすることが好ましい。この溶融粘度が5.0dPa・sより高いと半導体チップずれやワイヤー流れなどの不良が起きやすい。また、エポキシ当量は硬化物の耐熱性、吸水率等の点から、120〜400g/eq、好ましくは140〜350g/eq、より好ましくは150〜300g/eqである。
{(a)エポキシ樹脂と(b)エポキシ樹脂用硬化剤との配合割合}
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用される(b)エポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、全(a)エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して、全(b)エポキシ樹脂硬化剤成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.2モルになる量である。この割合が多過ぎても少な過ぎても硬化が完全に進まず、硬化物の強度が低下する、ガラス転移点が低下するなどの問題がある。なお、以下において、全(a)エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対する全(b)エポキシ樹脂硬化剤成分中のエポキシ基と反応する基の合計の割合を「エポキシ反応当量」を称す場合がある。
なお、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物において用いられる(a)エポキシ樹脂と(b)エポキシ樹脂用硬化剤の混合物の150℃における溶融粘度は、エポキシ樹脂組成物の流動性を考慮すると10dPa・s以下、好ましくは8dPa・s以下、より好ましくは5dPa・s以下、さらに好ましくは2dPa・s以下になるように(a)エポキシ樹脂と(b)エポキシ樹脂用硬化剤の組み合わせを考える必要がある。この溶融粘度が10dPa・sより高いと半導体チップずれやワイヤー流れなどの不良が起きやすい。
{(c)無機充填剤}
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、好ましくは(c)無機充填剤が配合される。
その(c)無機充填剤の種類としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
その形状としては、破砕型または球状である。
各種の無機充填剤は、1種を単独でまたは2種以上混合して用いられるが、それらの中では溶融シリカまたは結晶性シリカが好ましい。
(c)無機充填剤の配合量は、組成物全体の60〜95質量%とすることが好ましい。(c)無機充填剤の配合量が少なすぎると、吸湿性が大きくなり、耐ハンダクラック性に悪影響を及ぼす。(c)無機充填剤の配合量が多すぎると、成形時の流動性が損なわれる。
なお、(c)無機充填剤の粒径は、適用する半導体装置の形状やそれらに必要とされる特性により様々であるが、平均粒径1〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは5〜50μmである。また、膨張係数の調整のための高充填化、流動性の調整および成形時のバリ不良の低減などの目的のために、平均粒径が0.01〜1μmの無機充填剤を併用することもできる。
{(d)硬化促進剤}
本発明の封止材用エポキシ樹脂組成物には、更に(d)硬化促進剤を配合することができる。(d)硬化促進剤は、(a)エポキシ樹脂中のエポキシ基と(b)エポキシ樹脂用硬化剤中の水酸基との硬化反応を促進する化合物である。
その具体例としては、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2、4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2、4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
それらの硬化促進剤となる化合物の中では、三級アミン類、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、およびそれらの塩が好ましい。更に好ましいのはホスフィン化合物、およびそれらの塩である。
これらの硬化促進剤は、1種を単独でまたは、2種以上を混合して用いられ、その配合量は、本発明の組成物の全エポキシ樹脂に対して、0.1〜7質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%である。
硬化促進剤は組成物の硬化性や保存安定性に大きく影響することがあるので、その使う種類や使用量を、本発明の特性を損なわないように、調整することが重要である。
{その他の添加剤}
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じてカップリング剤、カーボンブラック、着色剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、イオン補足剤、応力緩和剤等の他の添加剤を、本発明の組成物の特性を損なわない程度に適宜に配合することができる。
それらの使用量は適用される半導体装置の種類等により変更することができるが、一般的には全組成物に対してそれぞれ0.01〜3質量%である。
このうち難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂などのハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、赤リン、表面被覆化赤リン、リン酸エステル類、ホスフィン類などのリン系難燃剤、メラミン誘導体などの窒素系難燃剤および水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃助剤、ホスファゼン難燃剤および特殊シリコーン難燃剤などが挙げられる。
しかしながら、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物は難燃性に優れるため、上記のうち特に環境安全性が危惧されている臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノール樹脂などのハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物について、これらの難燃剤を配合する必要がないか、少量にすることができる。
ただし、組成物中の各成分の種類や配合量により難燃性は変化するので、UL−94規格のV−0あるいはそれに準じた難燃性を確保できるよう各成分の選択や配合量の調整をすることが望まれる。
{調製方法}
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、必須成分およびその他の任意成分を均一に分散混合できる方法であれば、その調製方法に特に制限はないが、一般的な方法として、所定の配合量の成分をミキサー等により十分混合した後、ミキシングロールやニーダーにより、必要に応じて加熱しながら溶融混合させたものを冷却固化して粉砕する方法が挙げられる。この際、粉砕後の組成物は成形条件に合うような大きさおよび重さで打錠機などを用いてタブレットとすることもできる。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、常温(30℃)以下で固形であり、ブロッキング性が低いなど取扱性が良好であるので、粉砕性やタブレット化性も良好である。
[硬化体]
本発明の封止材用エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させて得られる硬化体は、高い接着性を有し、低応力性に優れ、また難燃性付与成分としてハロゲン化合物、アンチモン化合物を添加すること無しに、優れた難燃性を有するものであるが、この硬化物は、吸湿率が0.1%〜0.5%であることが好ましい。即ち、一般に、半導体封止用途においては、吸湿率は低い程よいとされるが、0.1%より低くするには、無機充填剤の含量を極端に多くする必要があり、このような組成物の製造は現実的には不可能である。吸湿率が0.5%より高い場合はハンダクラックによる不良が頻発するため半導体封止の用途には不適である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体は、吸湿しにくい特性をもっているが、吸湿率は、組成物中の各成分の種類や配合量および必須成分以外の各種添加剤により変化するので、硬化体の吸湿率が0.5%を超えないよう各成分の選択や配合量の調整をすることが好ましい。
なお、本発明の硬化体の吸湿率は、下記式で算出される値である。
吸湿率={(85℃、85%RHの恒温恒湿槽に72時間処理後の試験片の質量
−処理前の試験片の質量)/処理前の試験片の質量}×100
[半導体装置]
本発明の樹脂封止型半導体装置は、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオードなどの半導体素子および/または半導体集積回路が、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されているものであり、半導体素子および/または半導体集積回路の種類、封止方法、パッケージ形状などには特に限定されない。
封止の一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられるが、射出成形、圧縮成形、注型、ポッティング等により封止することもできる。成形時および/または成形後の硬化条件は、エポキシ樹脂組成物の各成分の種類や、配合量により異なるが、通常、150〜220℃の温度で30秒から10時間である。
トランスファー成形などの方法で封止された半導体装置は、そのままあるいは80〜200℃の温度で15秒〜10時間かけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
樹脂封止型半導体装置のパッケージ形状としては、DIP、ZIP、SOP、SOJ、QFPなどのリードフレームタイプ、BGAなどの片面封止タイプ、TAB、CSPなどが挙げられる。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体装置は、環境上配慮すべき、ハロゲン化合物やアンチモン化合物を配合しなくても難燃性に優れ、また耐ハンダクラック性にも優れる。
以下に、本発明で使用される一般式(I)で表されるフェノール化合物の製造例、本発明のエポキシ樹脂組成物の実施例、参考例および比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
なお、フェノール化合物の品質の測定は以下の通り行った。
フェノール性水酸基濃度:
フェノール化合物0.3gを50ml標線付メスフラスコに精秤し、クロロホルム50mlに溶解した。この溶液を1/100に希釈した後、5mlを三角フラスコに入れた。三角フラスコに過沃素酸溶液5mlを加え混合した後、45分放置した。また、ブランク液としてクロロホルム5mlと過沃素酸溶液5mlを別の三角フラスコに45分放置した。ブランク液を対照液として分光光度計を用い、溶液の吸光度を測定した。
また、各種2官能性フェノール(製造例1ではビスフェノールA、製造例2ではビスフェノールF)を用いてフェノール性水酸基濃度が0.001meq/5ml、0.002meq/5ml、0.003meq/5ml、0.004meq/5ml、0.005meq/5ml、の溶液を調製し、上記操作と同様に吸光度を測定し、検量線を作成した(X軸:吸光度、Y軸:フェノール性水酸基濃度)。その傾きをAとした。
過沃素酸溶液は過沃素酸2水和物2.7gを標線付き1000mlメスフラスコに精秤し、蒸留水50ml、氷酢酸を標線まで加え溶解したものを使用した。
分光光度計は日立製作所社製 日立分光光度計UV−2010を使用した。
次式よりフェノール性水酸基を求めた。
フェノール性水酸基濃度(meq/g)=吸光度×A×1000/サンプル重量
軟化点:JIS K7234準拠
150℃における溶融粘度:ASTM D4287準拠
可鹸化塩素:JIS K7243−2準拠
電気伝導度:JIS K6757準拠
水分:JIS K0068準拠
リン含有量:理論値
[フェノール性化合物の製造例]
<製造例1>
撹拌装置、環流冷却管および温度計を備えた容量2Lの4つ口フラスコにビスフェノールA785g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 jER828US)400g、メチルイソブチルケトン60gを仕込み、系内を減圧窒素置換した。これを100℃まで昇温した後、トリフェニルホスフィン0.25gを加え2時間かけて160までに昇温し、3時間攪拌を続けた。その後、減圧してメチルイソブチルケトンを留去してフェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物(一般式(I)において、X=−C(CH−,R=H、m=0、n=0.69)は、フェノール性水酸基濃度4.72meq/g、可鹸化塩素が80ppm、軟化点79℃、150℃における溶融粘度は3.8dPa・s、電気伝導度は11S/cm、水分は0.08質量%であった。また、リン含有量は25ppmであった。
<製造例2>
製造例1においてビスフェノールA785gの代わりにビスフェノールF860g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 jER806H)を用い、製造例1と同様の操作を行い、フェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物(一般式(I)において、X=−CH−,R=H、m=0、n=0.70)は、フェノール性水酸基濃度5.26meq/g、可鹸化塩素が70ppm、軟化点75℃、150℃における溶融粘度は3.1dPa・s、電気伝導度は13S/cm、水分は0.09質量%であった。また、リン含有量は23ppmであった。
<製造例3>
撹拌装置、環流冷却管および温度計を備えた容量2Lの4つ口フラスコに3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール1040g、テトラメチルビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 jER YX4000)400g、を仕込み、120℃まで昇温した後減圧窒素置換を行った。その後、トリフェニルフォスフィン0.25gを加え2時間かけて220℃までに昇温し、3時間攪拌を続け、フェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物(一般式(I)において、X=直接結合,R=CH、m=2、n=0.68)は、フェノール性水酸基濃度4.48meq/g、可鹸化塩素が60ppm、150℃における溶融粘度は2.0dPa・s、電気伝導度は10S/cm、水分は0.10質量%であった。また、リン含有量は21ppmであった。
<製造例4>
製造例1においてビスフェノールA785gの代わりに3,3’−ジメチルビフェノール920gを用い、製造例1と同様の操作を行い、フェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物(一般式(I)において、X=直接結合又は−CH−,R=CH又はH、m=0又は1、n=0.69)は、フェノール性水酸基濃度5.50meq/g、可鹸化塩素が90ppm、150℃における溶融粘度は1.5dPa・s、電気伝導度は19S/cm、水分は0.10質量%であった。また、リン含有量は22ppmであった。
<製造例5>
製造例1においてビスフェノールA785gを980gに変えて製造例1と同様の操作を行い、フェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物(一般式(I)において、X=−C(CH−,R=H、m=0、n=0.48)は、フェノール性水酸基濃度5.36meq/g、可鹸化塩素が13ppm、軟化点71℃、150℃における溶融粘度は2.0dPa・s、電気伝導度は8S/cm、水分は0.05質量%であった。また、リン含有量は21ppmであった。
[エポキシ樹脂組成物の実施例および比較例]
<実施例1〜6、参考例1および比較例1〜3>
エポキシ樹脂としてオルソ−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤として製造例1〜5で製造されたフェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂、無機充填剤として溶融シリカ粉末、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、難燃助剤として水酸化マグネシウム、離型剤としてカルナバワックス、シランカップリング剤としてエポキシシランを用いて、各半導体封止用エポキシ樹脂組成物を配合した。
各配合物をミキシングロールを用いて70〜130℃の温度で5分間溶融混合し、得られた各溶融混合物をシート状に取り出し、室温以下(おおよそ5〜35℃)で冷却固化した後、粉砕して各成形材料を得た。これらの各成形材料を用い、低圧トランスファー成形機で金型温度175℃、成形時間180秒で成形して、各試験片を得、180℃で8時間ポストキュアさせた。
ポストキュア後の各試験片について、下記方法で吸湿率、ガラス転移温度、高温弾性率、接着性、および難燃性を試験した。更に、各成形材料により封止された模擬半導体装置の耐ハンダクラック性を下記方法で試験した。これらの結果を表1に示した。
(吸湿率)
試験片(直径50mm、厚さ3mmの円盤)を85℃、85%RHに72時間放置した後の吸湿率であり、下記式で算出される。
吸湿率={(85℃、85%RHの恒温恒湿槽に72時間後の試験片の質量
−処理前の試験片の質量)/処理前の試験片の質量}×100
(ガラス転移温度)
熱機械測定装置により、昇温速度5℃/分の条件で求めた。
(弾性率)
JIS K6911に準拠し測定した。
(接着性)
アルミ箔上に試験片を成形し、ピール強度を測定した。
(耐ハンダクラック性)
160ピンQFP16個を85℃、85%RHにおいて168時間吸湿後、260℃赤外線リフローを3回行い、クラックの発生した個数を求めた。
(難燃性)
厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94に準拠し評価した。
また、エポキシ樹脂と硬化剤のみを加熱溶融混合したもの(無機充填材、硬化促進剤などは含まない)の150℃における溶融粘度を測定し、混合溶融粘度として表1に併記した。
なお、表1中、*1〜*21は次の通りである。
*1:A;オルソークレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商
品名 jER 180S62,エポキシ当量:197(g/eq)、150℃にお
ける溶融粘度:1.9dPa・s)
*2:B;テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名
jER YX4000,エポキシ当量:185(g/eq)、150℃における溶
融粘度:0.11dPa・s)
*3:C;ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社商品名 jER YL
6121H,エポキシ当量:172(g/eq)、150℃における溶融粘度:
0.08dPa・s)
*4:D;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社商品名 NC3000S,
エポキシ当量:282(g/eq)、150℃における溶融粘度:0.9
dPa・s)
*5:E;アントラセン型エポキシ樹脂(特開2005−113084の製造例2に記
載,エポキシ当量:174(g/eq)、150℃における溶融粘度:0.15
dPa・s)
*6:F;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(特開2005−97473の実施例3
に記載,エポキシ当量:174(g/eq)、150℃における溶融粘度:
0.15dPa・s)
*7:G;トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレ
ジン社商品名 jER 1032H60,エポキシ当量:169(g/eq)、
150℃における溶融粘度:1.6dPa・s)
*8:H;フェノ−ルアラルキル樹脂(明和化成社商品名 MEH−7800S,水酸基
当量:175(g/eq),軟化点:75(℃))
*9:I;ビフェニルアラルキル樹脂(明和化成社商品名 MEH−7851S,水酸基
当量:205(g/eq),軟化点:72(℃))
*10:J;フェノ−ルノボラック樹脂(群栄化学社商品名レジトップPSM4261,
水酸基当量:103(g/eq),軟化点:85(℃))
*11:球状溶融シリカ粉末(龍森社商品名 YXK−35R,
平均粒径:25.3mm)
*12:水酸化マグネシウム(タテホ化学工業社商品名 エコーマグZ−10,
平均粒径:1.0mm)
*13:カルナバワックス(セラリカ野田社商品名 精製カルナバワックスNo.1)
*14:エポキシシラン(信越化学工業社商品名 KBM−403)
*15:エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤のみの混合物の150℃における溶融粘度
*16:85℃、85%RH、72時間後の吸湿率
*17:TMA法
*18:JIS K6911準拠
*19:アルミピール試験
*20:160ピンQFP16個を85℃、85%RHにおいて168時間吸湿後、
260℃赤外線リフローを3回行い、クラックの発生した個数を求めた。
*21:UL94準拠
Figure 0005040404
これらの試験結果から明らかなように、実施例1〜の各組成物は、比較例1〜3の組成物と比較して難燃性に優れると同時に接着性も良好で、また半導体封止の耐ハンダクラック性にも優れる上に、低吸湿性、低応力性(即ち、高温弾性率が低い)も良好であった。
本発明の封止材用エポキシ樹脂組成物は、高い接着性を有し、低応力性に優れ、また難燃性付与成分としてハロゲン化合物、アンチモン化合物を添加すること無しに、優れた難燃性を有する硬化物を与えるので、特に電気電子分野、とりわけ半導体封止の用途に有用である。

Claims (7)

  1. (a)エポキシ樹脂と、(b-1)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物を含む(b)エポキシ樹脂用硬化剤とを含有してなる封止材用エポキシ樹脂組成物であって、(b)エポキシ樹脂用硬化剤が、
    (b-1)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物:10質量%以上90質量%以下および
    (b-2)その他のフェノール化合物:10質量%以上90質量%以下からなり、
    (b-2)その他のフェノール化合物が、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールアルキルフェノール共縮合ノボラック樹脂、およびトリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種類のフェノール樹脂であることを特徴とする封止材用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 0005040404
    (式中の記号は次のように定義される。
    Xは互いに同一であっても異なっていてもよく、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、硫黄原子、または酸素原子である。
    は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のアラルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシ基である。ここでの置換とは水素原子が炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基に置き換わったものを示す。
    mは1〜4の整数、nは平均値で0.1〜10の数である。)
  2. (b-1)前記一般式(I)で表されるフェノール化合物のフェノール性水酸基濃度が2.5〜8.5 meq/gであり、軟化点が50〜140℃であることを特徴とする請求項1に記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
  3. (a)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テルペンジフェノール型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシルフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種類のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
  4. 更に、(c)無機充填剤として、破砕型および/または球状の、溶融および/または結晶シリカ粉末を、組成物中に60〜95質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
  5. ハロゲン化合物およびアンチモン化合物のいずれをも含まず、かつその硬化物がUL−94規格のV−0を満足する難燃性を有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の封止材用エポキシ樹脂組成物。
  6. 半導体素子および/または半導体集積回路が、請求項1ないしのいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されていることを特徴とする半導体装置。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化体。
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