JP2017132897A - フェノール樹脂を硬化剤として含有するエポキシ樹脂組成物、その硬化物及び該硬化物を用いた電気・電子部品 - Google Patents
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Description
このようなエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化させて得られた硬化物は、その使用時の作業性や、硬化物としての耐久性などの観点から、取扱い性(ハンドリング性)や、耐衝撃性、耐吸水性、あるいは耐熱性などが優れていることが要求されている。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[5]に存する。
[1] エポキシ樹脂と、該樹脂100重量部あたり、少なくとも2種類のエポキシ樹脂用の硬化剤を計0.1〜1000重量部含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂に対する硬化剤の全当量配合比が0.7〜1.15であり、
上記硬化剤の少なくとも1種が下記式(1)で示されるフェノール化合物であり、
[2] 150℃における溶融粘度が10P(ポアズ)以下である上記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3] 少なくとも2種類のエポキシ樹脂用の硬化剤において、上記式(1)以外の硬化剤が、上記式(1)に該当しないフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミド系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤である上記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4] 上記1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[5] 上記4に記載の硬化物を用いて構成されてなる電気・電子部品。
なお、本明細書において「〜」という表記を用いる場合、その前後(両端)の数値又は物性値は当該範囲に含まれるものとして扱う。
本発明のエポキシ樹脂組成物の主成分として用いられるエポキシ樹脂としては、本発明の趣旨を損なうことがない限り、特に限定されることなく種々のエポキシ樹脂を用いることができる。
これらのエポキシ樹脂の中でも組成物の流動性や硬化物の耐熱性、耐吸水性及び難燃性等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、 及びトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、少なくとも2種類のエポキシ樹脂用の硬化剤を合計量として0.1〜1000重量部含有する。
この含有量が0.1重量部未満では、エポキシ樹脂組成物を硬化させるために過大な時間を要することとなり、実用的でない。一方、この含有量が1000重量部を超えるほど多量に硬化剤を使用すると、成形品が不均一になったり、歪みを生じやすくなったりするだけでなく、硬化反応に寄与しない硬化剤が硬化物中に多量に残存して、成形品表面にベタつきが発生したり、所望の硬度が得られなかったりすることがある。
また硬化剤の含有量の下限は0.5重量部が好ましく、1重量部がより好ましい。このような量とすることで、より迅速に所望の硬度を得ることができる。
この配合比を、0.8〜1.1とすることで、硬化の速度や均一性をより優れたものとすることができるので好ましい。また、配合比を0.9〜1.05にすると、硬化物の物性がより改良されるので、さらに好ましい。
当量配合比=(硬化剤量(g)/硬化剤の当量(g/eq))/(エポキシ樹脂量(g)
/エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq))
(但し、「エポキシ当量」は「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」で定義され、JIS K 7236に従って測定できる。また、「硬化剤の当量」は、1当量のエポキシ基と反応可能な硬化剤の質量である。)
なお、本発明においては少なくとも2種類の硬化剤を用いるので、硬化剤ごとに「硬化剤量をその当量で除した値」を算出して、その合計を上記式における分子の数値として用いることとする。複数のエポキシ樹脂を用いる場合も、同様に、樹脂ごとに「エポキシ樹脂量をその当量で除した値」を算出して、その合計を上記式の分母の数値とすればよい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の優れた取扱い性を発現するために、エポキシ樹脂、と、下記の少なくとも2種類のエポキシ樹脂用の硬化剤とを配合した混合物の、150℃における粘度は、10P(ポアズ)以下であることが好ましい。
本発明の組成物において用いる、少なくとも2種類の硬化剤の内、その少なくとも1種は下記構造式(1)で示される化合物(2,2‘−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)であることが必要である。
上記式(1)の化合物は、「ヨシノックス425(三菱化学(株)製)」や「アンテージW−500(川口化学工業(株)製)」として市販されている。
上記比率の下限値未満では、組成物の取扱い性や、硬化物の耐衝撃性、耐吸水性、及び耐熱性等について、本発明に基づく優れた硬化を十分得ることが困難となる。
(2−2)上記特定のフェノール化合物以外の硬化剤
本発明において、式(1)で表されるフェノール化合物以外の硬化剤(以下「その他の硬化剤」と記すことがある)も、本発明の趣旨、目的を阻害しない限り、特に制限することなく使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における、このようなその他の硬化剤の全硬化剤中の含有割合は、上記式(1)のフェノール化合物の残余分である45〜99.2重量%である。
例えば、式(1)に該当しないフェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミン、第3級アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類等が挙げられる。
本発明のその他の硬化剤におけるフェノール系硬化剤としては、上記式(1)に相当するフェノール化合物以外のエポキシ樹脂の硬化剤として利用可能な全てのフェノール化合物及びフェノール樹脂が該当する。
これらのフェノール系硬化剤中でも組成物の硬化後の耐熱性、硬化性等の観点から、上記の中でも、フェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3)で表される化合物)、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4)で表される化合物)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5)で表される化合物)、ナフトールノボラック樹脂(例えば下記式(6)で表される化合物)、ナフトールアラルキル樹脂(例えば下記式(7)で表される化合物)、トリスフェノールメタン型樹脂(例えば下記式(8)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(10)で表される化合物)等が好ましく、特にフェノールノボラック樹脂(例えば下記式(3)で表される化合物)、フェノールアラルキル樹脂(例えば下記式(4)で表される化合物)、ビフェニルアラルキル樹脂(例えば下記式(5)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジメトキサイド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・キシリレンジハライド重縮合物(例えば下記式(9)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジメトキサイドビフェニル重縮合物(例えば下記式(3)〜(8)で表される化合物)、フェノール・ベンズアルデヒド・4,4’−ジハライドビフェニル重縮合物(例えば下記式(9)、(10)で表される化合物)が好ましい。
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、第3級アミン以外の硬化剤、例えば脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等、及びこれらの硬化剤以外の第3級アミン類があげられる。
脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が例示できる。
芳香族アミン類としては、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、2,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−アミノフェノール、m−アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−
アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が例示できる。
なお、第3級アミンは、上記第1級アミンや第2級アミンと異なり、分子中に活性水素を有していないためエポキシ基との反応性が低いが、硬化促進剤として硬化反応の触媒作用を有し、かつその後硬化に寄与することがある、という特徴を有している。
酸無水物系硬化剤としては、酸無水物、酸無水物の変性物等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1−メチル−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
上記例示した酸無水物系硬化剤は1種のみでも、その2種以上を任意の組み合わせ及び配合量で組み合わせて用いてもよい。
アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
アミド系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
アミド系硬化剤を用いる場合、フェノール樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とアミド系硬化剤との合計に対してアミド系硬化剤が0.1〜20重量%となるようにすることが好ましい。
イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には硬化促進剤にも分類されることがあるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
イミダゾール類を用いる場合の使用量としては、フェノール樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分とイミダゾール類との合計に対してイミダゾール類が0.1〜20重量%となるように用いることが好ましい。
(3−1)硬化促進剤
本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤を含むことにより、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化が可能となり、より容易に所望の硬化物を得ることができる。
硬化促進剤として使用できるリン系化合物として以下のようなものが例示できる。
ここで用いることができる他の化合物としては、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等が例示できる。
上記例示した硬化促進剤の中でも有機ホスフィン類及びホスホニウム塩が好ましく、有機ホスフィン類が最も好ましい。また、硬化促進剤は、単独で用いても、また2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
硬化促進剤の含有量が上記下限値以上とすることで、良好な硬化促進効果を得ることができ、上記上限値以下とすることで、所望の硬化物性を得やすくなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、窒化ホウ素等が例示できる。これらの無機充填剤は、1種のみで用いても2種以上を、任意の組み合わせ及び配合比率で併用してもよい。
中でも半導体封止材用のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤として破砕型及び/又は球状の、溶融及び/又は結晶性シリカ粉末充填剤を用いることが好ましい。
ましくは2〜30μmである。平均粒子径が上記下限値以上であると溶融粘度があまり高くならないので、流動性が低下しにくい。また平均粒子径が上記上限値以下であると成形時に金型の隙間に充填材が目詰まりしにくく、材料の充填性が向上して成形不良が少なくなるので好ましい。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填剤の使用量は、エポキシ樹脂組成物全体の50〜95重量%の範囲であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂成物には離型剤を配合することができる。離型剤としては例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸類及びその金属塩類、パラフィン等の炭化水素系離型剤等を特に限定することなく用いることができる。これらは、1種のみで用いても2種以上を任意の組み合わせ及び配合比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における離型剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。離型剤の配合量を上記範囲内とすることでエポキシ樹脂組成物の硬化特性を維持しつつ、良好な離型性を発現することができるので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合することが好ましい。カップリング剤を無機充填剤と併用すると、マトリックスであるエポキシ樹脂と無機充填剤との接着性を向上させることができる。このようなカップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物にカップリング剤を配合する場合の配合量は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対し、0.1〜3.0重量部用いることが好ましい。カップリング剤の配合量を上記範囲内とすることで、カップリング剤によるエポキシ樹脂と無機充填材との密着性が向上するとともに、得られる硬化物からのカップリング剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記以外の成分(「その他の成分」と記すことがあ
る)を配合することができる。このようなその他の成分としては例えば、難燃剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料等が挙げられ、必要に応じて本発明の趣旨や本発明における硬化反応を阻害しない範囲で適宜配合することができる。勿論、上記の「その他の成分」は単なる例示であり、これらの成分以外の成分を用いることを排除するものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、本発明の硬化物を得ることができ、得られた硬化物は、耐衝撃性、耐吸水性、及び耐熱性が優れている。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、通常、加熱による熱硬化反応により硬化させることができる。このときの加熱温度は用いる硬化剤の種類によって適宜選択すればよい。例えば、フェノール系硬化剤を用いた場合、硬化反応の温度は通常130〜300℃である。
硬化反応の反応時間は、通常1〜20時間程度で、好ましくは2〜18時間、より好ましくは3〜15時間である。反応時間を上記範囲とすることで、硬化反応が十分に進行しかつ加熱による樹脂成分等の劣化や加熱時の放熱ロスを少なくできる。
例えば、上記硬化物の耐衝撃性は、JIS K 7171に従って測定した曲げ応力(25℃)の値を、10GPa以上とすることができる。
また、該硬化物は耐吸水性が良好であり、例えば、85℃・湿度85%の環境下で、3cm角・4mm厚の試験片を168hr放置した後の吸水率は、通常1.40%以下となる。硬化物の吸湿率が低いほど、高温環境下での水の膨張による熱応力がかかりにくく、クラック等の発生が低減できるので、より厳しい環境下で電気電子部品を使用できるようになる。なお、耐吸水性は例えば後述の実施例において記載する方法で測定できる。
る。200℃での弾性率が低いほど高温時の熱応力が少なく、従って高温環境下でのクラックが入りにくくなり、より厳しい環境下で電子電機部品を使用することができるようになる。200℃での弾性率は、上記同様、後述の実施例の項に記載される方法で測定できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述の通りハンドリング性が良好で、耐衝撃性、耐吸水性、耐熱性に優れた硬化物を与えることができる。従って、樹脂成形品に、このような物性が求められる用途であれば、いかなる用途にも有効に用いることができる。
例えば、自動車用電着塗料、船舶・橋梁用重防食塗料、飲料用缶の内面塗装用塗料等の塗料分野;積層板、半導体封止材、絶縁粉体塗料、コイル含浸用等の電気電子分野;橋梁の耐震補強、コンクリート補強、建築物の床材、水道施設のライニング、排水・透水舗装、車両・航空機用接着剤の土木・建築・接着剤分野等の用途にいずれにも好適に用いることができる。これらの中でも特に半導体封止材・積層板の様な電気・電子用途に有用であ
る。
なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものでもあり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
(1)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:1032H60、エポキシ当量:168g/当量)
エポキシ樹脂2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:EOCN-1020-65(エポキシ当量:199g/当量)
2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(三菱化学(株)製、商
品名:ヨシノックス425、水酸基当量:184g/当量)
(3)式(1)以外の硬化剤
硬化剤1:フェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名:MEH−7800、水酸基当量:174g/当量)
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製、商品名:PSM4261、水酸基当量:103g/当量)
(1)当量配合比
エポキシ樹脂と式(1)で表されるフェノール化合物及び硬化剤(式中では両者をまとめて「硬化剤成分」と表記)との当量配合比は、以下の式に従って計算した。
当量配合比=(硬化剤成分(g)/硬化剤成分の当量(g/eq))/(エポキシ樹脂成分
(g)/エポキシ樹脂成分の当量(g/eq))
なお、上記式の分子について、併用するフェノール化合物とその他の硬化剤は、それぞれの成分毎に「硬化剤成分(g)/硬化剤成分の当量(g/eq)」を計算し、その合計
を上記計算に用いた。複数種類のエポキシ樹脂成分を用いる場合も同様である。
式(1)で表されるフェノール化合物の全硬化剤成分中の含有割合を下式によって計算し、「重量比」として示した。なお、「部」は「重量部」を示す(以下同じ)。
重量比(%)=(1)で表されるフェノール化合物(部)/((1)で表されるフェノール化合物(部)+その他の硬化剤の合計(部)))*100
150℃に調整したコーンプレート型粘度計(東海八神(株)製)の熱板の上で、上記のエポキシ樹脂組成物を溶融させ、回転速度750rpmで粘度を測定した。
粘度2.00Pa・s以下のものをハンドリング性が良好と評価した。
JIS K7171に従って曲げ試験を実施。曲げ試験の結果から曲げ応力を算出した。
(5)耐吸水性(吸水率)
離型PETフィルムを用いて厚さ4mm、開口部サイズ10cm×10cmの型枠を作成し、ここにエポキシ樹脂組成物を100℃で流し込み、オーブン中で120℃×2hr、175℃×6hrの条件で、加熱・硬化させて、硬化物を得た。
この硬化物を縦3cm、横3cm、厚さ4mmに切削して試験片を調製し、この試験片を85℃、湿度85%に調整した恒温恒湿漕中に168hr保管した際の、試験片の重量変化率を吸水率とした。
上記耐吸水性試験における硬化物の調製方法と同様にして硬化物を調製し、これを縦5cm、横1cm、厚さ4mmに切削して試験片を作成した。この試験片について、熱機械分析装置(DMS:セイコーインスツルメント社製 EXSTAR6100)により、3
点曲げモードで、1回昇温法(5℃/分、初期温度30℃、到達温度250℃)にて測定して、1Hzの200℃(E')のピークトップを求め、これを高温時の弾性率とした。
この値が低いほど耐熱性が優れていると判定した。
(1)実施例1〜6、比較例1
表1に示す割合で、エポキシ樹脂と、式(1)に相当するフェノール化合物及び硬化剤を配合し、100℃に加温して均一になるまで撹拌した。その後室温に冷却・固化させて粉砕し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
得られた組成物について上記の方法に従って溶融粘度を測定した。結果を表1に示す。表1において、溶融粘度が2.00Pa・s以下のものを「ハンドリング性が良好」と判
定した。
表2、表3に示す割合でエポキシ樹脂と、式(1)で表されるフェノール化合物及びその他の硬化剤を配合し、100℃に加温して均一になるまで撹拌した。その後、80℃に冷却し、硬化促進剤を表2に示す割合で加え、再び均一になるまで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。(表2の実施例7〜11は、「硬化促進剤」を加えたこと以外は、上記実施例1〜5と同じ配合である。)
得られた組成物を用いて、上記方法に従って硬化物を作成し、耐衝撃性、耐級水性、耐熱性を評価した。結果をまとめて表2、表3に示す。
なお、比較例5、比較例6は特開2001−234073公報の実施例における樹脂成
分のみを硬化した試料についての結果である。
表1より、本発明のエポキシ樹脂組成物に相当する実施例1〜6は、比較例1の組成物に対して、溶融粘度が低くなっており、ハンドリング性が良好であることが判る。
表2より、本発明のエポキシ樹脂組成物から得られた硬化物である実施例7〜11では、比較例2〜4の硬化物に対し、耐衝撃性、耐吸水性、耐熱性のバランスが優れている。
が判る。
また表2、表3の結果より、特定の当量配合比、重量比において本発明のフェノール樹脂組成物は優れた耐衝撃性、耐吸水性、耐熱性のバランスに優れることを読み取ることができる。
表3の実施例12〜15と比較例5、6を対比した場合、比較例では、硬化剤成分の当量配合比が本発明の範囲を超過していて、耐衝撃性、耐吸水性に劣る成形品しか得られていないことが判る。
このような特性は、近年の電子部品の小型化や薄型化に伴う、封止材用途における種々の品質要求を満たすものである。
Claims (5)
- 150℃における溶融粘度が10P(ポアズ)以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 少なくとも2種類のエポキシ樹脂用の硬化剤において、上記式(1)以外の硬化剤が、上記式(1)に該当しないフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミド系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
- 上記請求項4に記載の硬化物を用いて構成されてなる電気・電子部品。
Priority Applications (1)
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