JP2004051402A - 改質赤燐、その製造方法、消色化赤燐組成物及び難燃性高分子組成物 - Google Patents

改質赤燐、その製造方法、消色化赤燐組成物及び難燃性高分子組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂等に練り込んだ場合においても赤燐特有の暗赤色の着色を抑制することができる消色化赤燐組成物、該消色化赤燐組成物に用いられる改質赤燐及びその製造方法、並びに前記消色化赤燐組成物を用いた難燃性高分子組成物を提供すること。
【解決手段】赤燐含有粒子(A)の表面が、白度が70以上の白色粒子(B)、マンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆された改質赤燐。該改質赤燐及び白度が70以上の白色粒子(B)を含む混合粉末である消色化赤燐組成物。該消色化赤燐組成物及び高分子化合物(I)を含む難燃性高分子組成物。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質赤燐、その製造方法、樹脂等に練りこんだ場合においても赤燐特有の暗赤色の着色を抑制することができる消色化赤燐組成物、該消色化赤燐組成物に用いられる改質赤燐及びその製造方法、並びに前記消色化赤燐組成物を用いた難燃性高分子組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
赤燐は合成樹脂に優れた難燃効果を付与することが知られている。しかし、赤燐単体で用いると、空気中の水分と接触することにより加水分解反応を起こしてホスフィンガスを発生するため、このままで用いることはできない。このため、従来、赤燐を有機または無機の材料で被覆して安定化した改質赤燐等が提案されており、例えば、特開昭51−105996号公報には、赤燐を熱硬化性樹脂で被覆した改質赤燐が開示されている。しかし、前記改質赤燐は、通常赤燐固有の濃い暗赤色を呈するため、製品の色調を問題とする合成樹脂には用いることができなかった。
【0003】
これに対し、本出願人は、特開昭59−195512号公報に、安定化された改質赤燐を用いつつ、赤燐固有の濃い暗赤色を隠蔽または消色して難燃化される樹脂の自由な着色を可能にする方法を開示した。該方法で得られる改質赤燐は赤燐を酸化チタンと有機ポリマーで被覆したものであり、赤燐の暗赤色の隠蔽、消色はかなりの程度まで改善される。
【0004】
また、本出願人は、特開2000−169119号公報に、赤燐粒子(A1)の表面に無機顔料をカチオン性水溶性樹脂とアニオン界面活性剤又はノニオン系界面活性剤との反応により被覆させた改質赤燐と、Zn、Al、Mg、Ti等の酸化物又は水酸化物、リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の無機顔料粉末からなる消色化赤燐組成物を開示した。該消色化赤燐組成物は、改質赤燐にさらに無機顔料粉末を配合したものであるため、樹脂と混練したときにおける赤燐の暗赤色の隠蔽、消色の程度が改質赤燐のみを樹脂と混合する場合に比べてさらに改善される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−169119号公報記載の消色化赤燐組成物は、樹脂に十分に練り込まれたり、樹脂との混練が高速で行われたりすると、消色性成分である無機顔料が改質赤燐の粒子周辺から樹脂中に分散して粒子周辺に不足するため、消色性が低下し、混合後の樹脂に薄い赤味の色相が残ることがあるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、樹脂等に練り込んだ場合においても赤燐特有の暗赤色の着色を抑制することができる消色化赤燐組成物、該消色化赤燐組成物に用いられる改質赤燐及びその製造方法、並びに前記消色化赤燐組成物を用いた難燃性高分子組成物を提供することにある。
【0007】
かかる実情において、本発明者らは、更に研究を行ったところ、赤燐含有粒子(A)の表面が、特定の白色粒子(B)、特定の色の有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆された改質赤燐に更に少なくとも白色粒子(B)を均一に混合した混合粉末は、樹脂に練り込んだ場合においても赤燐特有の暗赤色の着色を抑制することができるため、消色化赤燐組成物として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、赤燐含有粒子(A)の表面が、白度が70以上の白色粒子(B)、マンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆されたことを特徴とする改質赤燐を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、赤燐含有粒子(A)、白度が70以上の白色粒子(B)及びマンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)を含む水性スラリー中でバインダー樹脂(D)の硬化反応を行うことを特徴とする改質赤燐の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記改質赤燐及び白度が70以上の白色粒子(B)を含む混合粉末であることを特徴とする消色化赤燐組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記消色化赤燐組成物及び高分子化合物(I)を含むことを特徴とする難燃性高分子組成物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
(改質赤燐)
本発明に係る改質赤燐は、赤燐含有粒子(A)の表面を、白度が70以上の白色粒子(B)、特定の色の有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆してなるものである。
【0013】
本発明において赤燐含有粒子(A)とは、赤燐のみからなる赤燐粒子(A1)、及び赤燐粒子(A1)の表面に後述の改質樹脂被膜(F)以外の被覆層を形成した被覆赤燐粒子をいう。被覆赤燐粒子としては、例えば、赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆したもの、赤燐粒子(A1)の表面を有機物で被覆したもの、赤燐粒子(A1)の表面を無機物が含まれる有機物で被覆したもの、赤燐粒子(A1)の表面を無電解ニッケルめっきしたもの、赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆した後に更にその粒子表面を有機物で被覆したもの、及び赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆した後に更にその粒子表面を無機物が含まれる有機物で被覆したもの等が挙げられる。
【0014】
このうち、赤燐含有粒子(A)としては、赤燐粒子(A1)、赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆した被覆赤燐粒子(以下、「安定化赤燐(A2)」ともいう。)、赤燐粒子(A1)の表面を熱硬化性樹脂で被覆した被覆赤燐粒子(以下、「安定化赤燐(A3)」ともいう。)、及び赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆した後に更に熱硬化性樹脂で被覆処理した被覆赤燐粒子(以下、「二重被覆安定化赤燐(A4)」ともいう。)が、その他の赤燐粒子よりも耐湿性が高くPH発生量も低いため好ましい。なお、安定化赤燐(A2)及び安定化赤燐(A3)を含めて、以下、単に「安定化赤燐」ともいう。
【0015】
赤燐粒子(A1)としては、工業的に入手できる赤燐粒子を用いればよく、種類、品位や形状等は特に制限されるものではない。このような赤燐粒子(A1)としては、例えば、赤燐の破砕品や、球状品等が挙げられる。
【0016】
また、赤燐粒子(A1)は、予め酸又はアルカリで洗浄処理したものであると、リン酸イオン、亜リン酸イオン等の溶出を抑制することができることから、特に厳しい電気絶縁性が要求される分野にも使用することができるため好ましい。
【0017】
安定化赤燐(A2)に用いられる無機物としては、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる金属の酸化物又は水酸化物の少なくとも1種が挙げられる。また、無機物は、含水物であっても無水物であってもよい。
【0018】
安定化赤燐(A2)における無機物の被覆量は、赤燐粒子(A1)100重量部に対して通常1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部であると、後述の難燃性高分子組成物中の安定化赤燐からのホスフィンガスの発生やリン酸イオン、亜リン酸イオンの溶出を抑制できると共に、難燃性高分子組成物に難燃性を付与し易いため好ましい。
【0019】
安定化赤燐(A3)に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、フルフリルアルコール−ホルマリン系樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
安定化赤燐(A3)における熱硬化性樹脂の被覆量は、赤燐粒子(A1)100重量部に対して、固形分として通常1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部であると、安定化赤燐(A2)における無機物の被覆量と同様の理由により好ましい。
【0021】
安定化赤燐は、赤燐含有率が通常70重量%以上、好ましくは85〜98重量%である。この理由は、赤燐含有率が70重量%未満であると難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し難く、98重量%を越えると被覆物の量が少ないためにリンのオキソ酸の溶出量が多くなりホスフィン発生量も多くなるからである。
【0022】
安定化赤燐(A2)の製造方法としては、例えば、赤燐粒子(A1)50〜150重量部を水1000重量部に分散させたスラリーに、前記無機物の水溶性金属塩を通常0.5〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部添加し、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO、NaCO、NaCO、KCO、KHCO、Ca(OH)等の無機アルカリ、又はエタノールアミン等の有機アルカリ剤から選ばれる少なくとも1種のアルカリを添加し、該スラリーのpHを6〜10に調製して、前記無機物を赤燐粒子(A1)の粒子表面に沈着させ、反応終了後、濾過、洗浄し、不活性ガス雰囲気中で乾燥する方法が挙げられる。この際、洗浄処理は処理後の安定化赤燐(A2)を10%スラリーとしたときの電気伝導度が通常1000μS/cm以下、好ましくは500μS/cm以下になるまで行うと、イオン性不純物が低減されることにより安定化赤燐(A2)を絶縁性が要求される高分子化合物に使用することができるため好ましい。
【0023】
また、安定化赤燐(A3)の製造方法としては、例えば、赤燐粒子(A1)を水に分散させたスラリーに、前記熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加し、その熱硬化性樹脂の単独重合条件で重合反応を行うことで赤燐粒子(A1)の粒子表面を熱硬化性樹脂で被覆処理する方法が挙げられる。より具体的には、熱硬化性樹脂がフェノール系樹脂である場合には、まず赤燐粒子(A1)の通常50〜150重量部、好ましくは80〜120重量部を水1000重量部に分散させたスラリーを調製し、次いで該赤燐スラリーを、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ又は塩酸、硝酸、硫酸等の酸を添加し、次いでフェノール樹脂の初期縮合物(固形分として)通常1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部を添加して、60〜90℃で1〜3時間攪拌しながら重合反応を行い、反応終了後、濾過、洗浄し、不活性ガス雰囲気中で乾燥する方法が挙げられる。この重合反応は、塩化アンモニウム等の緩衝液の存在下に行うことができる。また、洗浄処理は処理後の安定化赤燐(A3)を10%スラリーとしたときの電気伝導度が通常1000μS/cm以下、好ましくは500μS/cm以下になるまで行うと、イオン性不純物が低減されることにより安定化赤燐(A3)を絶縁性が要求される高分子化合物に使用することができるため好ましい。
【0024】
二重被覆安定化赤燐(A4)に用いられる無機物は、安定化赤燐(A2)と同様のものを用いることができる。二重被覆安定化赤燐(A4)における無機物の被覆量は、赤燐粒子(A1)100重量部に対して通常0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部であると、安定化赤燐(A2)における無機物の被覆量と同様の理由により好ましい。
【0025】
また、二重被覆安定化赤燐(A4)において無機物を被覆した赤燐粒子(A1)の粒子表面を被覆処理する熱硬化性樹脂は、安定化赤燐(A3)と同様のものを用いることができる。二重被覆安定化赤燐(A4)における熱硬化性樹脂の被覆量は、赤燐粒子(A1)100重量部に対して、固形分として通常1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部であると、安定化赤燐(A2)における無機物の被覆量と同様の理由により好ましい。
【0026】
かかる二重被覆安定化赤燐(A4)は、赤燐含有率が通常70重量%以上、好ましくは80〜97重量%である。この理由は、赤燐含有率が70重量%未満であると、難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し難く、97重量%を越えると、被覆物の量が少ないためにリンのオキソ酸の溶出量が多くなりホスフィン発生量も多くなるからである。
【0027】
二重被覆安定化赤燐(A4)の製造方法としては、例えば、まず、赤燐粒子(A1)50〜150重量部を水1000重量部に分散させたスラリーに、前記無機物の水溶性金属塩を通常0.5〜15重量部、好ましくは0.5〜7.5重量部添加し、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO、NaCO、NaCO、KCO、KHCO、Ca(OH)等の無機アルカリ、又はエタノールアミン等の有機アルカリ剤から選ばれる少なくとも1種のアルカリを添加し、該スラリーのpHを6〜10に調製して、前記無機物を赤燐粒子(A1)の粒子表面に沈澱させ、所望によりろ過後リパルプ洗浄する。この際、洗浄処理は処理後のスラリーを10%スラリーとしたときの電気伝導度が1000μS/cm以下、好ましくは500μS/cm以下になるまで行うと、高度な電気絶縁性が要求される高分子化合物に使用することができるため好ましい。なお、赤燐粒子を水酸化亜鉛で被覆処理する場合には、pHを常に6.5以上に保持して行うことが好ましい。
【0028】
次いで、前記スラリーに、前記熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加し、その熱硬化性樹脂の単独重合条件で重合反応を行うことで無機物を被覆処理した赤燐粒子の粒子表面を更に熱硬化性樹脂で被覆処理する方法が挙げられる。より具体的には、熱硬化性樹脂としてフェノール系樹脂を用いる場合には、前記無機物を被覆した赤燐粒子の通常50〜150重量部、好ましくは80〜120重量部を水1000重量部に分散させたスラリーに、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ又は塩酸、硝酸、硫酸等の酸を添加し、次いでフェノール樹脂の初期縮合物(固形分として)の通常0.5〜22重量部、好ましくは1.5〜15重量部を添加して、60〜90℃で1〜3時間攪拌しながら重合反応を行えばよい。この重合反応は、塩化アンモニウム等の緩衝液の存在下に行うことが好ましい。反応終了後、濾過、洗浄、不活性ガス雰囲気中で乾燥することにより赤燐粒子(A1)の粒子表面を無機物及び熱硬化性樹脂で被覆した二重被覆安定化赤燐(A4)を得ることができる。また、洗浄処理は処理後の二重被覆安定化赤燐(A4)を10%スラリーとしたときの電気伝導度が通常1000μS/cm以下、好ましくは500μS/cm以下になるまで行うと、高度な電気絶縁性が要求される難燃性高分子組成物の原料として使用することができるため好ましい。
【0029】
本発明において赤燐含有粒子(A)は、赤燐含有粒子(A)が赤燐粒子(A1)以外のものである場合は、レーザー回折法によって求められる平均粒径がレーザー回折法によって求められる平均粒径が通常100μm以下であり、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmである。この理由は、100μmを越えると高分子化合物と混合したときの改質赤燐の分散性が悪くなり、難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し難いため好ましくないからである。
【0030】
また、赤燐含有粒子(A)が赤燐粒子(A1)である場合は、赤燐粒子(A1)の前記平均粒径は、通常1〜100μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは5〜20μmである。この理由は、平均粒径が100μmを越えると前記同様の理由で好ましくないからであり、また、1μm未満であると、赤燐粒子(A1)が被覆成分である白色粒子(B)や有色粒子(C)等に比べて小さすぎることから赤燐粒子(A1)表面に後述の改質樹脂被膜(F)を形成することが技術的に困難であり、このため改質樹脂被膜(F)に欠陥が生じ易くて好ましくないからである。また、赤燐含有粒子(A)が赤燐粒子(A1)である場合は、赤燐粒子(A1)は粒径1μm未満のものが5重量%以下、好ましくは1重量%以下であると、酸化分解によるリンのオキソ酸やホスフィンの生成を少なくすることができるためより好ましい。
【0031】
本発明に係る改質赤燐は、赤燐含有粒子(A)の表面が、特定の白度を有する白色粒子(B)、特定の色相の範囲内にある有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆されたものである。
【0032】
本発明で用いられる白色粒子(B)は、白度が通常70以上のものである。本発明において、白度とは、JIS Z 8722に記載の反射率方式を用いて測定した粉体用白度計で求められる白度であり、具体的には、試料面にマグネシウムリボンの燃焼によって生じる白色煙(酸化マグネシウムの極微粉)を付着させた場合の反射率を白度100とし、反射率が0の場合を白度0としてこの間を100等分したものである。従って、白度の値が大きいほど試料が白に近く、小さいほど試料が黒に近くなることを示す。
【0033】
白色粒子(B)は、赤燐粒子(A1)自体の有する濃い赤褐色を隠蔽すると共に、赤燐の分解にともなうホスフィンガスを吸着したり、加水分解により生成するリン酸、亜リン酸等のリンのオキソ酸を化学的に固定したりするための成分である。このような白色粒子(B)としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸鉛、2PbCO・Pb(OH)等の炭酸塩、CaO、MgO、ZnO、TiO、ZrO、Sb、Al等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸鉛、硫酸ストロンチウム、2PbSO・Pb(OH)等の硫酸塩、Bi(OH)・NO等の硝酸塩、PbCl・Pb(OH)等の塩化物、二酸化珪素、珪酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、PbSiO、3MgO・4SiO・HO等の珪酸塩、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸亜鉛カリウム等の亜リン酸金属塩、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛カリウム、ヒドロキシアパタイト等のリン酸金属塩、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸亜鉛及びポリリン酸アルミニウム等の縮合リン酸塩、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸亜鉛カルシウム、モリブデン酸亜鉛カリウム等のモリブデン酸金属塩、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸亜鉛カルシウム、ホウ酸亜鉛カリウム等のホウ酸金属塩、ホウ珪酸亜鉛、ホウ珪酸カルシウム、ホウ珪酸バリウム、ホウ珪酸アルミニウム、ホウ珪酸マグネシウム、ホウ珪酸ストロンチウム、ホウ珪酸亜鉛カリウム、ホウ珪酸亜鉛カルシウムストロンチウム、ホウ珪酸カルシウムストロンチウム亜鉛等のホウ珪酸金属塩等、リン珪酸亜鉛、リン珪酸カルシウム、リン珪酸バリウム、リン珪酸アルミニウム、リン珪酸マグネシウム、リン珪酸ストロンチウム、リン珪酸亜鉛カリウム、リン珪酸亜鉛カルシウム及びリン珪酸カルシウムストロンチウム亜鉛等のリン珪酸金属塩、タングステン酸バリウム、タングステン酸カルシウム等のタングステン酸金属塩、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛等のチタン酸金属塩、硫化カルシウム、硫化亜鉛、ZnS・BaSO、MnCO等の正塩又は塩基性塩が挙げられる。また、白色粒子(B)は、含水物又は無水物のいずれであってもよい。この中、白色粒子(B)としては、赤燐の有する濃い暗赤色を隠蔽する性能が高いために、二酸化チタン、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイトの正塩又は塩基性塩が好ましく、また二酸化チタンの正塩又は塩基性塩がさらに好ましい。本発明において、白色粒子(B)は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、白色粒子(B)は、通常レーザー回折法により求められる平均粒径が通常0.2〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.3〜1μmである。平均粒径が該範囲内であると、バインダー樹脂(D)を介して白色粒子(B)が赤燐含有粒子(A)の表面を効果的に被覆することにより、赤燐含有粒子(A)の発色の隠蔽力が大きくなるため好ましい。これに対し、平均粒径が0.2μm未満であると、発色の隠蔽力が不足するため好ましくない。
【0035】
本発明で用いられる有色粒子(C)は、マンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)である。該色相Hは、連続して変化する色相を0〜100の数値で表したものであり、0が略赤紫〜赤、10が略赤〜橙、20が略橙〜黄、30が略黄〜黄緑、40が略緑、50が略緑〜青緑、60が略青緑、70が略青、80が略青紫及び90が略赤紫の領域に相当し、さらに100が0に一致することにより0〜100の間で色相を連続的に表すものである。このうち色相H30〜80は略黄緑〜青紫の領域に相当し、該範囲は赤の領域と略補色関係にある色の領域に相当する。本発明は、有色粒子(C)を白色粒子(B)と併用してバインダー樹脂(D)中に分散させて、赤燐含有粒子(A)の表面に改質樹脂被膜(F)を形成するため、効果的に消色化を行うことができる。
【0036】
また、本発明においては、有色粒子(C)が緑色粒子又は青色粒子であると、これらの粒子の色は赤褐色と補色関係にあることから有色粒子(C)が赤燐の赤味を消色化するため好ましい。ここで、緑色粒子又は青色粒子とは、マンセル表色系の色相環における厳密な緑色領域又は厳密な青色領域に属する粒子を指すものでなく、緑色と青色との中間色である青緑色の粒子をも緑色粒子又は青色粒子のいずれか一方の粒子として含む意味で用いる。すなわち、マンセル表色系の色相環においては、緑の領域(Hが略38〜50)と青の領域(Hが略63〜78)との間に青緑の領域(Hが略50〜63)が存在し、色相Hが30〜80の領域は、略3領域に分類されるが、前記緑色粒子とは前記緑の領域及びこれに隣接する青緑の領域をも含む領域に属する領域の粒子を表し前記色相Hが38以上63未満であり、青色粒子とは前記青の領域に属する領域の粒子を表し前記色相Hが63以上78未満である。有色粒子(C)は有機物又は無機物のいずれも用いることができる。
【0037】
本発明で用いられる緑色粒子としては、例えば緑色顔料の粒子が挙げられる。また、緑色顔料としては、例えば、フタロシアニン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、ジオキサジン系の有機緑色顔料、CuCO・Cu(OH)、Cr、Cr・2HO、Cu(OH)、CuCl・3CuO・6HO、CoCr、CuAsO・Cu(OH)、Cu(C・3Cu(AsO、Cu(C・Cu(OH)、Cr(PO、CoO・nZnO、CuO・SnO、黄鉛と紺青との混合物(クロム緑)、亜鉛黄と紺青との混合物(亜鉛緑)、CrとCoOとAlの混合物(コバルト・クロム緑)、BaMnO、緑土、CuO・SiO、CuSO・3Cu(OH)・4HO、Cu(BO、4CuO・P、鉄緑、マルス緑等の無機緑色顔料が挙げられる。これらの緑色顔料は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明で用いられる青色粒子としては、例えば青色顔料の粒子が挙げられる。また、青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、群青、紺青、Fe(PO・8HO、CoO・nAl、CoO・nSnO、CoTiO、BaMnOとBaSOの混合物(マンガン青)、モリブデン青、W、エジプト青、2CuCO・Cu(OH)、Cu(OH)とCaSOの混合物(石灰青)、CuS、Cu(BO、アンチモン青等が挙げられる。これらの青色顔料は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、有色粒子(C)としては、混合後の色相が前記色相の範囲内となるように調製した複数種類の有色粒子の混合物を用いることができる。該混合物としては、例えば、青色粒子と黄色粒子とを均一に混合して全体として緑色粒子となるように調製したものが挙げられる。
【0040】
このような黄色粒子としては、例えば黄色顔料の粒子が挙げられる。また、黄色顔料としては、例えば、アントラキノン系、イソインドリノン系、β−ナフトール系、ピラゾロン系、モノアゾエロー系、ジスアゾエロー系、縮合アゾ系顔料等が挙げられる。これらの黄色顔料は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明においては、有色粒子(C)のうち、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、三酸化二クロム、群青及び紺青が、赤燐の有する濃い暗赤色を隠蔽する性能が高いため好ましい。
【0042】
また、有色粒子(C)は、適度に微細なものであるとバインダー樹脂(D)の原料(D)に対する分散性と隠蔽力の面で好ましいため、レーザー回折法により求められる平均粒径が通常0.2〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.3〜1μmである。ただし、平均粒径が0.2μm未満であると、微細すぎて逆に隠蔽力が不足するため好ましくない。
【0043】
本発明で用いられるバインダー樹脂(D)は、赤燐含有粒子(A)の粒子表面に白色粒子(B)と有色粒子(C)とを付着させるものであり、このような樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、フルフリルアルコール−ホルマリン系樹脂等の熱硬化性樹脂;メタクリル酸、アクリル酸又はそのエステル類、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等等の不飽和二重結合を有する単量体を重合して得られる有機ポリマー;カチオン性水溶性樹脂と、ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤との反応により得られる不溶性ポリマー等が挙げられる。
【0044】
本発明に係る改質赤燐は、後述の難燃性高分子組成物が優れた難燃効果を得るために必要な量として、赤燐含有率が通常50〜90重量%、好ましくは50〜80重量%である。
【0045】
本発明に係る改質赤燐は、前記赤燐含有粒子(A)の表面に、白色粒子(B)、有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)が形成される。改質樹脂被膜(F)は、白色粒子(B)及び有色粒子(C)がバインダー樹脂(D)により赤燐含有粒子(A)の表面に接着されたものである。
【0046】
改質赤燐の改質樹脂被膜(F)中における白色粉末(B)及び有色粒子(C)の含有量は、改質赤燐全体に対して、白色粒子(B)が通常10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%で、有色粒子(C)が通常0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%であると、赤燐の有する暗赤色を効果的に隠蔽すると共に難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し易いため、改質赤燐を後述の消色化赤燐組成物として用いる場合に好ましい。
【0047】
これに対し、白色粒子(B)の含有量が10重量%未満であると、赤燐の有する暗赤色を隠蔽する効果が不足し、赤燐の色がそのまま残り易いため、また50重量%を越えると、白色粒子(B)を付着させるためのバインダー樹脂(D)量が多く必要になって改質赤燐が改質樹脂被膜(F)同士で付着して凝集し易く、また改質赤燐の難燃性付与効果も不足し易いため、それぞれ好ましくない。
【0048】
また、有色粒子(C)の含有量が0.5重量%未満であると赤燐の有する赤味の色相を隠蔽する効果が不足し易いため、また5重量%を越えると難燃性高分子組成物の色相が青黒くなり易いため、それぞれ好ましくない。
【0049】
本発明に係る改質赤燐の改質樹脂被膜(F)中におけるバインダー樹脂(D)の含有量は、白色粒子(B)及び有色粒子(C)の合計量100重量部に対して、通常1〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。この理由は、バインダー樹脂(D)の含有量が1重量部未満であると、バインダーとしての効果が不足し、白色粒子(B)及び有色粒子(C)を改質する赤燐粒子表面に強固に付着し難いため、また、20重量部を越えると改質赤燐粒子同士が付着し凝集し易いため、それぞれ好ましくないからである。
【0050】
本発明に係る改質赤燐は、レーザー回折法により求められる平均粒径が通常1〜100μmであり、好ましくは1〜30μmである。この理由は、平均粒径が1μm未満であると、赤燐含有粒子(A)の表面活性が大きく、酸化分解され易いため好ましくなく、一方、100μmを越えると高分子化合物と混合したときの改質赤燐の分散性が悪くなり、難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し難いため好ましくないからである。
【0051】
本発明に係る改質赤燐は、後述の消色化赤燐組成物の原料、高分子化合物に配合する赤燐系難燃剤等として使用することができる。
【0052】
(改質赤燐の製造方法)
本発明に係る改質赤燐の製造方法は、赤燐含有粒子(A)、白度が70以上の白色粒子(B)及びマンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)を含む水性スラリー中でバインダー樹脂(D)を生成する硬化反応を行うものである。ここで、バインダー樹脂(D)を生成する硬化反応とは、バインダー樹脂(D)を生成するために行うバインダー樹脂(D)の原料等を生成する硬化反応をいう。
【0053】
本発明に用いられる赤燐含有粒子(A)、白度が70以上の白色粒子(B)及びマンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)としては、前記改質赤燐に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0054】
前記水性スラリーは、水存在下で、赤燐含有粒子(A)、白色粒子(B)及び有色粒子(C)を混合して調製することができる。前記水性スラリーの調製の際における赤燐含有粒子(A)、白色粒子(B)及び有色粒子(C)の添加順序等は、特に限定されるものでなく、適宜選択すればよい。
【0055】
前記水性スラリー中における白色粒子(B)及び有色粒子(C)の配合量は、赤燐含有粒子(A)100重量部に対して、白色粒子(B)が通常11〜100重量部、好ましくは25〜100重量部であり、また、有色粒子(C)が通常0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。この理由は、白色粒子(B)と有色粒子(C)の添加量が前記範囲内であると、前記のとおり、赤燐の有する暗赤色を効果的に隠蔽すると共に難燃性高分子組成物に難燃性を十分に付与し易いため好ましいからである。一方、白色粒子(B)の添加量が11重量部未満であると、赤燐の有する暗赤色を隠蔽する効果が不足し易いため好ましくなく、また100重量部を越えると白色粒子(B)を付着させるためのバインダー樹脂(D)の量が多く必要になり、かかる多量のバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)同士で付着することにより改質赤燐が凝集し、また改質赤燐の難燃性付与効果も不足し易いため好ましくない。また、有色粒子(C)の添加量が0.5重量部未満であると、赤燐の有する赤味の色相を隠蔽する効果が不足し易いため、また5重量部を越えると全体の色相が青黒くなり易いため、それぞれ好ましくない。
【0056】
前記水性スラリー中で行うバインダー樹脂(D)を生成する硬化反応としては、例えば、(1)熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物の重合反応(以下、「第1の硬化反応」ともいう。)、(2)不飽和二重結合を有する単量体のラジカル重合反応「第2の硬化反応」ともいう。)、(3)ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤存在下におけるカチオン性水溶性樹脂の重合反応「第3の硬化反応」ともいう。)が挙げられる。第1〜第3の硬化反応を用いた改質赤燐の製造方法をそれぞれ第1〜第3の改質赤燐の製造方法といい、以下、より詳細に説明する。
【0057】
第1の改質赤燐の製造方法は、バインダー樹脂(D)として熱硬化性樹脂を用いるものであって、前記水性スラリー中で熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物の硬化反応を行い、赤燐含有粒子(A)の表面上に、白色粒子(B)、有色粒子(C)及び熱硬化性樹脂からなる改質樹脂被膜(F)を形成するものである。
【0058】
第1の改質赤燐の製造方法に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、フルフリルアルコール−ホルマリン系樹脂等が挙げられる。
【0059】
本発明において、熱硬化性樹脂の合成原料とは、熱硬化性樹脂の硬化反応が行われていない状態における原料を意味する。例えば、エポキシ樹脂の合成原料としては、ジグリシジル基を複数有するエポキシ樹脂主剤及び、水酸基を複数有するフェノール樹脂系硬化剤が挙げられる。
【0060】
本発明において、熱硬化性樹脂の初期縮合物とは、熱硬化性樹脂の硬化反応は行われているが硬化反応が最終段階まで行われていない状態における原料を意味する。
【0061】
第1の改質赤燐の製造方法の具体例について説明する。まず、水1000重量部に対して赤燐含有粒子(A)の通常50〜150重量部、好ましくは80〜120重量部、白色粒子(B)の通常5〜150重量部、好ましくは8〜120重量部及び有色粒子(C)の通常0.25〜15重量部、好ましくは0.25〜7.5重量部を水に十分に分散させた水性スラリーを調製する。なお、水性スラリー中での赤燐含有粒子(A)に対する白色粒子(B)及び有色粒子(C)の配合比率は、前記範囲内になるようにする。
【0062】
また、前記水性スラリーは、例えば、赤燐含有粒子(A)を水に分散させた水性スラリー(以下「A1液」ともいう。)と、白色粒子(B)及び有色粒子(C)を水に分散させた水性スラリー(以下「B1液」ともいう。)とを調製し、A1液にB1液を添加して調製することができる。なお、この場合において前記配合比率における水1000重量部とは、A1液とB1液との混合液中の水量を示す。このため、A1液及びB1液中の赤燐含有粒子(A)、白色粒子(B)及び有色粒子(C)の配合量は、A1液とB1液との混合液中における赤燐含有粒子(A)等の配合比率が前記範囲内となるように予め換算して配合することが好ましい。
【0063】
なお、A1液、B1液又は水性スラリーの調製後において、各成分を十分に分散させるため、必要に応じて、これらに界面活性剤を添加し、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、デイスパーミル、コロイドミル、ホモジナイザー、振動ミル、サンドグランダー、ナウターミキサー、リボンブレンダー等の強力なせん断力が作用する攪拌機で分散処理しておくことが好ましい。この場合、用いることができる界面活性剤の種類は特に制限はなく、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれであってもよい。
【0064】
次いで、前記水性スラリーに、熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加し、その熱硬化性樹脂の単独重合条件で重合を行い、赤燐含有粒子(A)の粒子表面を白色粒子(B)及び有色粒子(C)を含む熱硬化性樹脂で被覆する。
【0065】
前記水性スラリーに添加する熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物の添加量は、固形分に換算した量が、赤燐含有粒子(A)100重量部に対して、通常0.5〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。
【0066】
例えば、熱硬化性樹脂としてフェノール系樹脂を用いる場合には、前記水性スラリーに、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒又は塩酸、硝酸、硫酸等の酸触媒を添加し、次いでフェノール樹脂(固形分として)を前記所定量添加して60〜90℃で1〜3時間攪拌しながら重合反応を行えばよい。
【0067】
反応終了後、得られた改質赤燐を洗浄し、洗浄終了後、窒素ガス等の不活性雰囲気中で通常60〜160℃の温度で通常1〜24時間、水分が残らないよう十分に乾燥すると改質赤燐の製品が得られる。
【0068】
第2の改質赤燐の製造方法は、バインダー樹脂(D)として不飽和二重結合を有する単量体の重合体を用いるものであって、前記水性スラリー中で不飽和二重結合を有する単量体のラジカル重合反応を行い、赤燐含有粒子(A)の表面上に、白色粒子(B)、有色粒子(C)及び前記重合体からなる改質樹脂被膜(F)を形成するものである。
【0069】
第2の改質赤燐の製造方法に用いられる前記単量体としては、ラジカル重合可能なものであればよく特に制限はないが、例えば、メタクリル酸、アクリル酸又はそのエステル類、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられる。また、アクリル酸エステル類としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸の低級アルキルエステル類が挙げられる。
【0070】
また、改質赤燐を不飽和ポリエステルの難燃剤として用いる際に、被覆がスチレン等に対して耐薬品性を要求されるような場合は、前記単量体と架橋剤とを共重合させることにより、前記重合体が架橋構造を有するものとすることができる。ここで架橋剤とは、1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多官能性モノマーである。このような架橋剤としては、例えば、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。架橋剤を用いる場合、架橋剤の添加量は、モノマー100重量部に対して1〜20重量部とすると耐薬品性に優れるため好ましい。
【0071】
また、第2の改質赤燐の製造方法に用いられるラジカル重合の重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化カリウム、過酸化アンモニウム、過酸化水素等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ニ塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤、亜硫酸水、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、二酸化イオウガス等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
第2の改質赤燐の製造方法の具体例について説明する。まず、第1の改質赤燐の製造方法と同様の水性スラリーを調製する。なお、水性スラリー中での赤燐含有粒子(A)に対する白色粒子(B)及び有色粒子(C)の配合比率は、第1の改質赤燐の製造方法と同様になるようにする。
【0073】
なお、第1の改質赤燐の製造方法と同様の理由により、必要に応じて、第1の改質赤燐の製造方法と同様にして、前記水性スラリーに界面活性剤を添加し、第1の改質赤燐の製造方法で用いるものと同様の強力なせん断力が作用する攪拌機で分散処理しておくことが好ましい。
【0074】
次いで、前記水性スラリーに、例えば、前記不飽和二重結合を有する単量体、重合開始剤、必要により添加される架橋剤を添加し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中において通常30〜90℃でラジカル重合反応を行う。
【0075】
前記水性スラリーへの前記単量体、重合開始剤及び必要により添加される架橋剤の添加量は、前記水性スラリー中の水1000重量部に対して、前記単量体が通常20〜100重量部、好ましくは35〜85重量部、重合開始剤が通常0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜7.2重量部、前記単量体が通常0.9〜22重量部である。
【0076】
なお、前記ラジカル重合反応は、前記水性スラリーがpH2〜6で行うと、効率よく赤燐含有粒子(A)を白色粒子(B)、有色粒子(C)及び前記重合体で強固に被覆することができるため好ましい。このため、前記水性スラリーがpH6を越える場合には塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等を添加しpH調整してラジカル重合反応を行うことが好ましい。
【0077】
反応終了後、得られた改質赤燐を、第1の改質赤燐の製造方法と同様にして、洗浄し、乾燥すると改質赤燐の製品が得られる。
【0078】
第3の改質赤燐の製造方法は、バインダー樹脂(D)としてカチオン性水溶性樹脂と、ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤との反応で得られる不溶性ポリマーを用いるものであって、前記水性スラリー中でカチオン性水溶性樹脂と、ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤との反応を行い、赤燐含有粒子(A)の表面上に、白色粒子(B)、有色粒子(C)及び前記不溶性ポリマーからなる改質樹脂被膜(F)を形成するものである。
【0079】
第3の改質赤燐の製造方法に用いることができるカチオン性水溶性樹脂としては、例えば、ポリアミドエポキシ樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンポリエーテルエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンポリエステルポリエーテルエピクロロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン重合体、ポリビニルアミンポリアクリルアミドエピクロロヒドリン樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
第3の改質赤燐の製造方法に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリエチレングリコール牛脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、グリセロールモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0081】
第3の改質赤燐の製造方法に用いることができるアニオン系界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、脂肪族ソーダ石鹸、脂肪酸カリ石鹸、ステアリン酸石鹸、アルキルエーテルサルフェート(Na塩)、スルホン酸ナトリウム、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル(硫酸)メチルタウリン酸ナトリウム、オレイルメチルタウリン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリカルボン酸、ナフタリンスルホコハク酸塩のホルマリン縮合物、ポリオキシサルフェート塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、前記ノニオン系界面活性剤及びアニオン系活性剤は併用することができる。
【0082】
第3の改質赤燐の製造方法の具体例について説明する。まず、水1000重量部に対して赤燐含有粒子(A)の通常50〜150重量部、好ましくは80〜120重量部、カチオン性水溶性樹脂の固形分に換算した量が通常0.25〜3重量部、好ましくは0.5〜2重量部を含む水性スラリー(以下、「A3液」ともいう。)と、水1000重量部に対して白色粒子(B)の通常5〜150重量部、好ましくは8〜120重量部、有色粒子(C)の通常0.25〜15重量部、好ましくは0.25〜7.5重量部、ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤の通常0.25〜3重量部、好ましくは0.25〜2重量部を含む水性スラリー(以下、「B3液」ともいう。)を調製する。ここで、水1000重量部とは、A3液とB3液との混合液中の水量を示す。このため、A3液及びB3液中の赤燐含有粒子(A)、白色粒子(B)及び有色粒子(C)の配合量は、A3液とB3液との混合液中における赤燐含有粒子(A)等の配合比率が前記範囲内となるように予め換算して配合することが好ましい。
【0083】
なお、A3液及びB3液は各成分が十分に分散した状態で用いることが好ましく、また、第1の改質赤燐の製造方法と同様の理由により、必要に応じて、第1の改質赤燐の製造方法と同様にして、前記水性スラリーに界面活性剤を添加し、第1の改質赤燐の製造方法で用いるものと同様の強力なせん断力が作用する攪拌機で分散処理しておくことが好ましい。
【0084】
次に、A3液にB3液を添加して通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃で通常0.1〜2時間、好ましくは0.5〜1時間反応を行う。
【0085】
なお、A3液を赤燐含有粒子(A)及びノニオン系界面活性剤を含むスラリーとすると共に、B3液を白色粒子(B)、有色粒子(C)及びカチオン性水溶性樹脂を含むスラリーとし、B3液にA3液を添加して前記反応を行ってもよい。
【0086】
反応終了後、得られた改質赤燐を、第1の改質赤燐の製造方法と同様にして、洗浄し、乾燥すると改質赤燐の製品が得られる。
【0087】
なお、前記第1〜第3の改質赤燐の製造方法において、反応終了後の洗浄は、得られる改質赤燐の10%スラリーとした時の電気伝導度が通常1000μS/cm以下になるまで行うことが好ましい。電気伝導度を通常1000μS/cm以下になるまで行うことにより、改質赤燐を建築材料、塗料、壁紙、家庭用等の汎用品の難燃剤として用いることができる。また、さらに、50〜300μS/cmまで洗浄したものは、上記用途に加え、例えば電線、フェノール樹脂成形材料、合板用接着剤、発砲ポリエチレン等の難燃剤として用いることができる。また、特に、この電気伝導度を30μS/cm以下、好ましくは10〜25μS/cmまで洗浄したものは、例えば封止材、積層板、プリント配線板、フラットケーブル、コイルボビン、スイッチ、トランス部材、コネクター等の特に厳しい電気絶縁性が要求される電子部品の難燃剤として用いることができる。
【0088】
(消色化赤燐組成物)
次に、本発明に係る消色化赤燐組成物について説明する。本発明に係る消色化赤燐組成物は、前記改質赤燐及び白度が70以上の白色粒子(B)を含む混合粉末である。なお、前記改質赤燐は、以下、改質赤燐(G)と表す。消色化赤燐組成物に用いられる白色粒子(B)としては、改質赤燐(G)に用いられるものと同様のものが挙げられる。この中、白色粒子(B)としては、赤燐の有する濃い暗赤色を隠蔽する性能が高いために、二酸化チタン、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイトの正塩又は塩基性塩が好ましく、また二酸化チタンの正塩又は塩基性塩がさらに好ましい。
【0089】
白色粒子(B)の配合量は、改質赤燐(G)100重量部に対して通常67〜200重量部であり、好ましくは67〜167重量部である。この理由は、白色粒子(B)の配合量が67重量部未満であると赤燐の赤味の色相を隠蔽する効果が不足し易く、一方、200重量部を越えると赤燐含有率が低くなり難燃効果が不足し易いため好ましくないからである。
【0090】
本発明に係る消色化赤燐組成物において、更に有色粒子(C)を配合すると赤燐の消色化をより効果的に行うことができるため好ましい。消色化赤燐組成物に用いられる有色粒子(C)としては、改質赤燐(G)に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0091】
消色化赤燐組成物においては、有色粒子(C)のうち、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、三酸化二クロム、群青及び紺青が、赤燐の有する濃い暗赤色を隠蔽する性能が高いため好ましい。
【0092】
また、有色粒子(C)は、適度に微細なものであると改質赤燐(G)に対する分散性と隠蔽力の面で好ましいため、通常レーザー回折法により求められる平均粒径が通常0.2〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.3〜1μmである。ただし、平均粒径が0.2μm未満であると、微細すぎて逆に隠蔽力が不足するため好ましくない。
【0093】
有色粒子(C)の添加量は、特に制限されるものではないが消色化赤燐組成物中に通常0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0094】
本発明に係る消色化赤燐組成物の好ましい物性は、前記粉体用白度計で測定した白度が通常65以上、好ましくは70以上で、マンセル表色系の色相環における色相Hが通常20〜80、好ましくは30〜80である。白度及び色相Hが該範囲内にあると、この領域の色は赤燐の有する赤褐色と補色関係にあることから有色粒子(C)が赤燐の赤味を消色化することができるため好ましい。
【0095】
更に、前記物性に加えて、消色化赤燐組成物中の赤燐含有率が通常20重量%以上、好ましくは25〜40重量%であると、少ない添加量で難燃効果を高めることができることから好ましい。
【0096】
本発明に係る消色化赤燐組成物は、改質赤燐(G)、白色粒子(B)、所望により添加する有色粒子(C)とを前記割合に配合し、均一に分散した混合粉末として使用する。例えば、ナウターミキサーやリボコーン等の円錐型混合機により、改質赤燐(G)、白色粒子(B)、所望により添加する有色粒子(C)を投入し、窒素雰囲気下で混合することにより前記成分が均一に分散した消色化赤燐組成物とすることができる。
【0097】
更に、本発明に係る消色化赤燐組成物において、前記範囲内の白度と色相Hにおいて、例えば、活性アルミナや無機イオン交換体等のリン酸イオンや亜リン酸イオン等のオキソ酸イオンのトラップ剤を含有させることができる。
【0098】
本発明に用いることができる活性アルミナは、BET比表面積が通常50m/g以上、好ましくは70〜400m/gのものが好ましく、また、微細なものが樹脂との均一分散及び溶出するリンのオキソ酸との反応性の面で好ましい。通常レーザー回折法により求められる平均粒径が通常15μm以下、好ましくは0.5〜10μmのものが好ましい。
【0099】
無機イオン交換体としては、ハイドロカルマイト系無機アニオン交換体、ハイドロタルサイト系無機アニオン交換体、BiO (OH)Y (NO3 (X=0.9〜1.1、Y=0.6〜0.8、Z=0.2〜0.4)、Mg4.3 Al2 (OH)12.6CO3.5 O、Sb2  ・2H O、SbSiBi O (OH)(NO・nHO(V=0.1〜0.3、w=1.5〜1.9、x=4.1〜4.5、y=1.2〜1.6、z=0.2〜0.3、n=1〜2)の無機アニオン交換体等を例示することができる。本発明に係る消色化赤燐組成物は、各種樹脂に配合し、難燃剤として用いることができる。
【0100】
(難燃性高分子組成物)
本発明に係る難燃性高分子組成物は、前記消色化赤燐組成物及び高分子化合物(I)を含むことを特徴とするものである。なお、前記消色化赤燐組成物は、以下、消色化赤燐組成物(H)と表す。
【0101】
本発明に用いられる高分子化合物(I)としては、一般的に市販されているものであれば特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリールフタレート樹脂等の硬化性樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、熱可塑性ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらの変性物等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0102】
本発明において、硬化性樹脂とは、熱、触媒、あるいは紫外線などの作用により化学変化をおこして架橋構造が発達し、分子量が増大して三次元網状構造を有して、硬化して半永久的に不溶性・不融性となる合成樹脂を示す。すなわち、硬化性樹脂とは、熱硬化性樹脂、触媒硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂を含むものである。また、熱可塑性樹脂とは、加熱により流動性を示し、これにより賦形が可能である樹脂を示す。
【0103】
また、本発明に用いられる高分子化合物(I)は、ゴムであってもよく、例えば天然ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、アクロニトリル−ブタジエン系ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン系ゴム(EPDM)、クロロブチレンゴム(CR)、ポリイソブチレンゴム、アルリルゴム、水素化アクロニトリル−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、クリリスルホン化ゴム、シリコーンゴム及びこれらの変性物等が挙げられ、これらは、2種以上のブレンドゴムであってもよい。
【0104】
本発明に用いられる高分子化合物(I)は、前記硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる2種以上のブレンド品であってもよい。
【0105】
本発明に係る難燃性高分子組成物中、消色化赤燐組成物(H)の配合割合は、高分子化合物(I)100重量部に対して、Pとして通常2〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。該範囲内であると、高分子組成物を用いた製品の難燃性が高いため好ましい。
【0106】
また、本発明に係る難燃性高分子組成物には、消色化赤燐組成物(H)以外の他の難燃剤を配合することができる。他の難燃剤としては、水和金属化合物、リン系難燃剤、含窒素系難燃剤等が挙げられる。
【0107】
水和金属化合物としては、吸熱反応による燃焼抑制作用のあるMm  ・xH2 O(Mは金属、m、nは金属の原子価によって定まる1以上の整数、xは含有結晶水を示す。)で表される化合物または該化合物を含む複塩であり、具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、ドーソナイト、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、塩基性炭酸亜鉛、ホウ砂、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、カオリン、タルク、セリサイト、パイロフィライト、ベントナイト、カオリナイト、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0108】
含窒素系難燃剤としては、メラミン、メラミンシアヌレート、メチロール化メラミン、(イソ)シアヌール酸、メラム、メレム、メロン、サクシノグアミン、硫酸メラミン、硫酸アセトグアナミン、硫酸メラム、硫酸グアニルメラミン、メラミン樹脂、BTレジン、シアヌール酸、イソシアネール酸、イソシアヌール酸誘導体、メラミンイソシアヌレート、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のメラミン誘導体、グアニジン系化合物等が挙げられる。
【0109】
リン系難燃剤としては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸クレジルフェニル、リン酸オクチルジフェニル、ジエチレンリン酸エチルエステル、ジヒドロキシプロピレンリン酸ブチルエステル、エチレンリン酸ジナトリウムエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル―プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、エチレンジアミンリン酸塩、ホスファゼン、メチルホスホン酸メラミン塩等が挙げられる。
【0110】
前記他の難燃剤は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、前記他の難燃剤は、消色化赤燐組成物(H)中の改質赤燐(G)との併用による相乗効果を発揮させるため、水和金属化合物が好ましい。また、前記他の難燃剤の添加量は、消色化赤燐組成物(H)100重量部に対して通常20〜100重量部、好ましくは20〜60重量部とすることが、難燃性高分子組成物の成形体の物理特性を損なわないため好ましい。なお、これら他の難燃剤の粒径等は特に制限はないが、通常レーザー回折法から求められる平均粒径が通常100μm以下、好ましくは1〜30μmである。
【0111】
また、本発明に係る難燃性高分子組成物は、使用する用途に応じた他の成分を配合して用いることができる。他の成分としては、例えば、りん系、イオン系、ヒンダートフェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料、顔料を含む着色剤、架橋剤、軟化剤、分散剤等が挙げられるが特にこれらの添加剤に制限されるものではない。
【0112】
また、必要に応じて、繊維状および/または粒状の充填剤を添加して、高分子化合物(I)の剛性を大幅に向上させることができる。このような充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド樹脂、アスベスト、チタン酸カリウムウイスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、溶融シリカ、結晶性シリカ、マグネシア、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0113】
前記高分子化合物(I)に配合するその他の成分や充填剤は、通常用いられる配合割合とすればよい。
【0114】
なお、消色化赤燐組成物(H)と高分子化合物(I)とを混合する方法は、特に制限されるものではなく、予め必要に応じて前記他の難燃剤や他の配合剤を混合した後、必要により加熱しながら混合した後、他の成分と混合するマスターバッチ法や、そのまま配合して混合する方法が挙げられるが、いずれの方法をとるかは、工業的に有利な方法を適宜選択すればよい。
【0115】
本発明に係る難燃性高分子組成物は通常公知の方法で成形することができ、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形などを施して、シート、フィルムなどのあらゆる形状の成形品とすることができる。これらの成形品は、例えば、積層板、封止材、フラットケーブル、電線ケーブル被覆材、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、壁紙などの各種用途に有用であるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0116】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
【0117】
<赤燐含有粒子>
製造例1
塊状の赤燐を粉砕、分級して、平均粒径20μmで最大粒径が45μm、粒径1μm未満の粒子の含有量が2重量%の赤燐粒子Aを500g得た。
【0118】
製造例2
赤燐粒子A20gを純水180gに分散させ、攪拌しながらここにアンモニア水を加え、pH10に調製した。次いで、フェノール樹脂(大日本インキ社製、初期縮合物、フェノライトTD2388;固形分26%)2gを添加し、添加終了後、10分間攪拌したのち、塩酸を滴下しpH6〜6.5に調製した。
次いで、90℃で1時間反応させ、放冷した後、20℃の10%スラリーの電気伝導度が100μS/cm以下になるまで純水でろ過、洗浄を行った。ろ過ケーキは軽く分散させながら減圧乾燥したのち、硬化処理として140℃で2時間加熱し、放冷後、100メッシュのフルイを通過させて安定化赤燐Bを得た。
【0119】
製造例3
赤燐粒子A200gを純水1800mlに懸濁させて赤燐スラリーを調製した。次いで、硫酸亜鉛を0.02モル含む硫酸亜鉛水溶液100mlを添加した後、温度80℃において攪拌しながらアンモニア水溶液をpHが8になるまで添加した。添加終了後、更にpHを7.0〜7.5の範囲となるようにアンモニア水溶液を用いて、pH管理を行いながら80℃で1時間攪拌を継続して、水酸化亜鉛の沈着処理を行った。
次いで、放冷した後、20℃の10%スラリーの電気伝導度が50μS/cm以下になるまで純水でろ過、洗浄を行った。ろ過ケーキは軽く分散させながら減圧乾燥したのち、100メッシュのフルイを通過させて安定化赤燐Cを得た。
【0120】
<白色粒子>
白色粒子は、二酸化チタン(タイペークCR−50:石原産業社製)平均粒径0.4μmを用いた。
また、該二酸化チタンを粉体用白度計C−100((株)ケット科学研究所)で測定したところ、白度は87.6であった。
【0121】
<有色粒子>
有色粒子としては以下の2種類の緑色顔料を用いた。
【0122】
・緑色顔料
フタロシアニングリーン(商品名;ファーストゲングリーンS、大日本インキ社製);平均粒径;一次粒径の平均粒径0.06μm、二次粒子の粒径0.2〜2μm、マンセル表色系の色相環における色相Hが54.4、白度が21.7。
【0123】
【表1】
Figure 2004051402
【0124】
実施例1
赤燐粒子A100gを水500mlに分散させた(A液)。
別に、ノニオン性界面活性剤(デモールN:花王〔株〕)1gを水50mlに溶解させ、前記白色粉末20gと前記緑色顔料1.0gを分散させ、ペイントシェーカーにより、良く分散させた(B液)。
A液にB液をゆっくりと約1分間かけて添加し、添加後室温で5分間攪拌したのち、アンモニア水を加えてスラリーのpHを9〜10に調製した。ここへフェノール樹脂(フェノライトTD2388:大日本インキ、固形分26%)12.0gを添加し、塩酸でpHを5〜7に調製し、更に塩化アンモニウムを2.0g添加して、90℃で1時間攪拌した。反応終了後、常法により純水で濾過し、さらに20℃の10%スラリーの電気伝導度が100μS/cm以下になるまで純水で洗浄を行った。洗浄後、真空乾燥機にて140℃で4時間乾燥した。得られた改質赤燐は、赤燐含有率=82.6%のものであった。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で測定した。
【0125】
実施例2
安定化赤燐B100gを水500mlに分散させた(A液)。この水溶液にカチオン性水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650:住友化学工業〔株〕)を樹脂分で1.2gを添加して30分攪拌した。
別に、ノニオン性界面活性剤(デモールN(花王〔株〕)1gを水50mlに溶解させ、前記白色粉末20gと前記緑色顔料1gを分散させ、ペイントシェーカーにより良く分散させた(B液)。
A液にB液をゆっくりと約1分間かけて添加し、添加後80℃に加温して60分間反応させた。反応終了後、常法により純水で濾過し、さらに20℃の10%スラリーの電気伝導度が100μS/cm以下になるまで純水で洗浄を行った。洗浄後、110℃で6時間乾燥させた。得られた改質赤燐は赤燐含有率=80.2%のものであった。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で測定した。
【0126】
実施例3
実施例2と同様に、安定化赤燐B100gを水500mlに分散させた。この水溶液にカチオン性水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650:住友化学工業(株))を樹脂分で1.2g添加して30分間攪拌した(A液)。
別にノニオン性界面活性剤(デモールN:花王(株))1gを水50mlに溶解させ、前記白色粉末20gと前記緑色顔料3gを分散させ、ペイントシェーカーにより良く分散させた(B液)。
A液にB液を約1分間で添加して、添加後80℃に加温して60分間反応させた。反応終了後、常法により純水で濾過し、さらに20℃の10%スラリーの電気伝導度が100μS/cm以下になるまで純水で洗浄を行った。洗浄後、110℃で6時間乾燥させた。得られた改質赤燐は、リン含有量が約80%であった。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で測定した。
【0127】
実施例4
実施例3において、B液の緑色顔料の添加量を2gとし、他は全て実施例3と同様の操作を行い、改質赤燐を得た。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で行った。
【0128】
実施例5
安定化赤燐C100gを水500mlに分散させた(A液)。この水溶液に実施例2と同様にカチオン性水溶液ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650:住友化学工業(株))を樹脂分で1.2gを添加して30分攪拌した。
別に、ノニオン性界面活性剤(デモールN:花王(株))1gを水50mlに溶解させ、前記白色粉末20gと前記緑色顔料1gを分散させ、ペイントシェーカーにより良く分散させた(B液)。
A液にB液をゆっくり約1分間で添加し、添加後80℃に加温して60分間反応させた。反応終了後、常法により濾過、洗浄し、20℃での10%スラリーの電気伝導度が100μS/cm以下になるまで洗浄を行った。洗浄後、110℃で6時間乾燥させた。得られた改質赤燐は赤燐含有率80.2%のものであった。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で行った。
【0129】
比較例1
実施例3において、B液の緑色顔料を添加せずに、白色粉末のみを添加し他は全て実施例3と同様の操作を行い、改質赤燐を得た。得られた改質赤燐の主物性を表2に示す。なお、白度と色相は前記と同様に白度計付マンセル色差計で行った。
【0130】
【表2】
Figure 2004051402
【0131】
表2の結果より、本発明に係る改質赤燐は、色相が黄色(Y)で赤味がないのに対して、比較例1の緑色顔料を被覆成分中に含有しない改質赤燐は色相が橙(YR)で赤味が残っていることが分かる。
【0132】
<消色化赤燐組成物>
実施例6〜11及び比較例2
実施例1〜5及び比較例1で得られた改質赤燐100重量部に対して、表3の添加量で前記の白色粉末と緑色顔料とを添加し、消色化赤燐組成物を得た。得られた消色化赤燐組成物の主物性を表3に示す。
【0133】
【表3】
Figure 2004051402
【0134】
表3の結果より、本発明に係る消色化赤燐組成物は、色相が黄緑(GY)〜青(PB)で、赤味がなく、消色化され、また白色性に優れているのに対して、比較例2のものは、色相が橙(YR)でなおも赤味を帯びていることが分かる。
【0135】
また、実施例6〜11、比較例2の消色化赤燐組成物、製造例2で調製した安定化赤燐B及び製造例3で調製した安定化赤燐Cの各0.5gをアルミナボードに採取し、試験管に入れて窒素ガス中で250℃、1時間加熱した。発生したPH量をテドラーバックに捕集して検知管で測定した。その結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
Figure 2004051402
【0137】
表4の結果から本発明に係る消色化赤燐組成物は、ホスフィンガスの発生量がいずれも30ppm以下であり、その使用に対して特に問題のないレベルであった。
【0138】
<難燃性高分子組成物>
実施例12〜17、比較例3〜5
実施例6〜11、比較例2で得られた消色化赤燐組成物、製造例2で得られた安定化赤燐B又は製造例3で得られた安定化赤燐Cと、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE樹脂)とをそれぞれ樹脂中のP含有率が20重量%となるように混合し、押出機で樹脂ぺレットを作成して、このペレットを射出成形して1mmの厚さの成形シートを作成した。この成形シートを前記と同じように白度計付マンセル色差計で白度と色相を測定した。その結果を表5に示す。
なお、樹脂成形条件は以下のとおりである。
LDPE樹脂30gと試料45.9gをロール上で100〜105℃で5分間混練したのち、ロールより剥離した。次いで、このシートを2枚重ねて1mm厚さの金型にて200kg/cm、105℃で3分間プレスした。
【0139】
【表5】
Figure 2004051402
【0140】
表5の結果より、本発明に係る消色化赤燐組成物を配合したLDPE樹脂は、明るい薄い赤色であるのに対して、比較例2のものは赤紫(PR)であった。
【0141】
実施例18〜23、比較例6〜8
実施例6〜11で得られた消色化赤燐組成物、安定化赤燐B又は安定化赤燐Cと、軟質塩化ビニルコンパウンドとをそれぞれ樹脂中のP含有率が1重量%となるように配合し熱ロールで混練した後、155℃、100kg/cmで、4分間プレスして1mmの厚さの成形シートを作成した。この成形シートをマンセル色差計で白度と色相を測定した。その結果を表6に示す。
【0142】
【表6】
Figure 2004051402
【0143】
表6の結果より、本発明に係る消色化赤燐組成物を配合した軟質塩化ビニル樹脂は、橙(YR)で消色化されているのに対して、比較例2のものは赤(R)であった。
【0144】
(難燃性の評価)
実施例24及び25、比較例9
EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合)樹脂(三井デュポンポリケミカル エバフレックスEV270)と実施例7の消色化赤燐組成物を下記の割合で配合し、熱ロール(200℃)で混練したのち、シート状に成形して、1mm厚さ×縦125mm×横12.5mmの試験片を作成した。
この試験片について、UL−94による難燃性試験を行った。その結果を併せて表7に示す。
【0145】
【表7】
Figure 2004051402
【0146】
実施例26及び27、比較例10
表8に示す配合割合でエポキシ樹脂(油化シェル YX−4000H)にフェノール樹脂硬化剤(群栄化学 PSM261)、硬化触媒(トリフェニルホスフィン、北興化学)、離型剤(ワックス クラリアント社製)、着色剤(カーボンブラック 三菱化学)、無機フィラー(溶融シリカ、日本化学工業社製)及び実施例7の消色化赤燐組成物をミキサーで常温混合し、2軸熱ロールで80〜85℃で7分間混練したのち、トランスファー成型機で、成型温度175℃、成型樹脂圧7MPa(70kg/cm )、成型時間120秒の条件で成型して、1mm厚さ×縦125mm×横12.5mmの試験片を作成した。
この試験片について、UL−94による難燃性試験を行った。その結果を併せて表8に示す。
【0147】
【表8】
Figure 2004051402
【0148】
【発明の効果】
前記のとおり、本発明に係る改質赤燐を用いて、消色化赤燐組成物としたものはホスフィンガスの発生が抑制され、また、特に樹脂等の高分子化合物の成形に練りこんだ場合においても赤燐特有の暗赤色の樹脂の着色を抑制することができることから、これまで改質赤燐の使用が制限されてきた各種分野への難燃剤として使用することができる。

Claims (22)

  1. 赤燐含有粒子(A)の表面が、白度が70以上の白色粒子(B)、マンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)及びバインダー樹脂(D)を含む改質樹脂被膜(F)で被覆されたことを特徴とする改質赤燐。
  2. 前記赤燐含有粒子(A)が、赤燐粒子(A1)、該赤燐粒子(A1)の表面を無機物で被覆した安定化赤燐(A2)、前記赤燐粒子(A1)の表面を熱硬化性樹脂で被覆した安定化赤燐(A3)、及び前記赤燐粒子(A1)の表面を前記無機物で被覆した後に更に前記熱硬化性樹脂で被覆処理した二重被覆安定化赤燐(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の改質赤燐。
  3. 改質赤燐中、前記白色粒子(B)の含有量が10〜50重量%で、且つ前記有色粒子(C)の含有量が0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の改質赤燐。
  4. 平均粒径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の改質赤燐。
  5. 赤燐含有率が50〜90重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の改質赤燐。
  6. 前記白色粒子(B)が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の改質赤燐。
  7. 前記有色粒子(C)が、緑色粒子又は青色粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の改質赤燐。
  8. 前記有色粒子(C)が、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、三酸化二クロム、群青及び紺青からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の改質赤燐。
  9. 赤燐含有粒子(A)、白度が70以上の白色粒子(B)及びマンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)を含む水性スラリー中でバインダー樹脂(D)の硬化反応を行うことを特徴とする改質赤燐の製造方法。
  10. 前記バインダー樹脂(D)の硬化反応が、熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物の重合反応であることを特徴とする請求項9記載の改質赤燐の製造方法。
  11. 前記バインダー樹脂(D)の硬化反応が、不飽和二重結合を有する単量体のラジカル重合反応であることを特徴とする請求項9記載の改質赤燐の製造方法。
  12. 前記バインダー樹脂(D)の硬化反応が、ノニオン系界面活性剤又はアニオン系界面活性剤存在下におけるカチオン性水溶性樹脂の重合反応であることを特徴とする請求項9記載の改質赤燐の製造方法。
  13. 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項10記載の改質赤燐の製造方法。
  14. 前記カチオン性水溶性樹脂がポリアミドエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項12記載の改質赤燐の製造方法。
  15. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の改質赤燐及び白度が70以上の白色粒子(B)を含む混合粉末であることを特徴とする消色化赤燐組成物。
  16. 更に、マンセル表色系の色相環における色相Hが30〜80の有色粒子(C)を含む混合粉末であることを特徴とする請求項15記載の消色化赤燐組成物。
  17. 白度が65以上であることを特徴とする請求項15又は16記載の消色化赤燐組成物。
  18. マンセル表色系の色相環における色相Hが20〜80であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項記載の消色化赤燐組成物。
  19. 赤燐含有率が20重量%以上であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項記載の消色化赤燐組成物。
  20. 前記白色粒子(B)が二酸化チタンであることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項記載の消色化赤燐組成物。
  21. 前記有色粒子(C)が緑色粒子又は青色粒子であることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項記載の消色化赤燐組成物。
  22. 請求項15〜21のいずれか1項記載の消色化赤燐組成物及び高分子化合物(I)を含むことを特徴とする難燃性高分子組成物。
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