JP2004043527A - オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物の製造方法 - Google Patents

オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塩化ビニル等の懸濁重合用分散助剤フィルム等の成形用途などに有用なオキシアルキレン基含有ビニルエステル重合体およびそのケン化物を提供すること。
【解決手段】ジャケットを有する反応缶を用いてオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーを共重合するにあたり、重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温して重合してなる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体、特にそのケン化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体やそのケン化物(オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂)、特に該ケン化物については、塩化ビニル等のビニル系重合体の懸濁重合用分散剤(主分散剤や分散助剤)として、またフィルム等の成形用途などに利用されている。
かかるビニル系化合物(特に塩化ビニル)の懸濁重合用分散助剤として、例えば本出願人は、▲1▼特開平9−100301号公報でオキシアルキレン基の含有量が0.5〜10モル%でケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を10〜50重量%含有する水性液を、▲2▼特開2002−69105号公報では末端に炭素数5以上のアルキルメルカプト基を有し、かつオキシアルキレン基を含有するポリビニルアルコール系樹脂をそれぞれ提案した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼、▲2▼に開示の樹脂を用いた懸濁重合用分散助剤についてその後詳細に検討したところ、得られた塩化ビニル系樹脂の可塑剤吸収性、フィッシュアイ、嵩密度、残存モノマー等については満足しうる結果が得られるものの、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の安定性の点(特に30℃前後での水溶液の放置安定性等)において改善の余地があることが判明した。
すなわち、水溶液の放置安定性に優れ、かつ塩化ビニル系樹脂の懸濁重合用分散助剤として有用なオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂が求められるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、これらの要求性能に応えられるオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得るべく、製造面からの検討を行った結果、ジャケットを有する反応缶を用いてオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーを共重合するにあたり、重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温して重合することにより、上記の目的に合致するオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物が得られることを見いだし本発明の完成に至った。
なお、本発明で言う重合開始時とは、初期の重合開始剤の添加時期で、また重合停止直前とは、希釈溶媒および/または重合禁止剤の添加直前である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明に用いるオキシアルキレン基含有モノマーとは、下記の一般式(4)で表されるオキシアルキレン基を含有するものである。
【化1】
Figure 2004043527
(但し、R,Rは水素又はアルキル基、Rは水素、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、スルホン酸基、フェニル基または置換フェニル基のいずれか、nは正の整数を示す。)
【0007】
上記の一般式(4)において、nの数、即ちオキシアルキレン基の平均鎖長は2〜300程度で、重合時の作業性等を考慮すれば、5〜60程度が好ましい。かかるオキシアルキレン基として具体的には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられる。
【0008】
オキシアルキレン基を有するモノマーとしては次の様なものが例示される。但し、本発明ではこれらのみに限定されるものではない。
[(メタ)アクリル酸エステル型]
下記の一般式(5)で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【化2】
Figure 2004043527
(但し、Rは水素又はメチル基、Aはアルキレン基,置換アルキレン基,フェニレン基,置換フェニレン基のいずれかで、mは0又は1以上の整数、R、R、R、nは前記と同様。)
【0009】
[(メタ)アクリル酸アミド型]
下記の一般式(6)で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル等が挙げられる。
【化3】
Figure 2004043527
(但し、A、m、R、R、R、R、nは前記と同様、Rは水素又は上記一般式(4)で示されるもの。)
【0010】
[(メタ)アリルアルコール型]
下記の一般式(7)で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【化4】
Figure 2004043527
(但し、R、R、R、R、nは前記と同様。)
【0011】
[ビニルエーテル型]
下記の一般式(8)で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等が挙げられる。
【化5】
Figure 2004043527
(但し、A、R、R、R、m、nは前記と同様。)
これらのオキシアルキレン基含有モノマーの中でも一般式(7)で示される(メタ)アリルアルコール型のものが好適に使用される。
上記以外にも、テトラヒドロフルフリロキシポリアルキレンオキサイドアルケニルエーテルやポリアルキレンオキサイドアルケニルエーテルを挙げることができる。
なお、本発明においては、オキシアルキレン基含有モノマーが上記の(メタ)アリルアルコール型やビニルエーテル型のときに本発明の作用効果を顕著に得ることが可能となる。
【0012】
オキシアルキレン基含有モノマーと(共)重合するビニルエステルモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等を挙げることができるが、工業的には酢酸ビニルが好適に用いられる。
【0013】
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲で、前述した如きオキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマー以外に、他の一般のモノマーを50モル%以下共存させても良い。これらのモノマーを以下に例示する。
[エチレン性不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル等]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0014】
[飽和カルボン酸のアリルエステル]
ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酪酸アリル等。
[α−オレフィン]
エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキサデセン、α−オクタデセン等。
[エチレン性不飽和カルボン酸]
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ならびにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等。
【0015】
[アルキルビニルエーテル]
プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等。
【0016】
[アルキルアリルエーテル]
プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等。
その他、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アリルスルホン酸塩、エチレン性不飽和スルホン酸塩、スチレン、塩化ビニルやアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アルキル基等を含有するチオール系の連鎖移動剤などの使用も可能である。
【0017】
本発明の最大の特徴は、上記の如きオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーをジャケットを有する反応缶を用いて共重合するにあたり、重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温して重合反応を行うことであり、かかる方法について具体的に説明する。
【0018】
まず、重合系(通常は重合缶)に、全仕込量あるいは一部仕込量のオキシアルキレン基含有モノマー、全仕込量あるいは一部仕込量のビニルエステルモノマーおよびメタノール等の溶剤を仕込んで反応缶のジャケットを加熱して還流状態を一定時間維持した後、重合開始剤を仕込んで重合を開始する。
【0019】
オキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーのそれぞれの全仕込量は、目的とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体あるいはそのケン化物中のオキシアルキレン基含有量により、任意に決定すればよく、かかる含有量としては、0.1〜15モル%程度の範囲から選択することが好ましく、かかる含有量が0.1モル%未満ではオキシアルキレン基含有の効果(例えば、ケン化物の水溶性、成形性、結晶性低下効果等)を充分に得られないことがあり、逆に15モル%を越えるとケン化物を水溶液として使用する際に水溶液の粘度が上がりすぎて作業性が低下したり、熱安定性が低下して製造工程中において多量の不溶解物が生成することがあり好ましくない。
【0020】
また、オキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーのそれぞれの仕込み方法は特に限定されないが、例えばオキシアルキレン基含有モノマーの全量と一部のビニルエステルモノマーを初期仕込みして残りのビニルエステルモノマーを分割仕込みあるいは連続滴下仕込みする方法、一部のオキシアルキレン基含有モノマーと一部のビニルエステルモノマーを初期仕込みして残りのオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーをそれぞれ分割仕込みあるいは連続滴下仕込みする方法、ビニルエステルモノマーの全量と一部のオキシアルキレン基含有モノマーを初期仕込みして残りのオキシアルキレン基含有モノマーを分割仕込みあるいは連続滴下仕込みする方法などがある。オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体あるいはそのケン化物の要求性能によりこれらの仕込み方法は任意に決定すればよい。
【0021】
オキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマーの追加仕込み時間は特に限定されないが、一括仕込みの場合で30秒〜5分程度、分割仕込みや連続滴下仕込みの場合で5分〜15時間程度である。さらに追加仕込み終了後に必要に応じて1分〜120分程度の追い込み工程を設けても良い。
【0022】
追加仕込するオキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマーを系内に仕込む方法としては特に限定されないが、シャワー方式で仕込む方法、コンデンサー還流液に混合して仕込む方法、直接流し込んで仕込む方法等を挙げることができる。また、追加仕込するオキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマーは、そのまま系内に仕込んでもよいが、メタノール等の重合溶媒に混合して仕込むことも可能である。
【0023】
オキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマーを分割仕込みする場合、通常は等量分割する方法を採るが、分割量を変化させることも可能である。また、オキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマーを連続滴下仕込みする場合については通常、一定速度で仕込む方法を採るが、連続滴下速度を変化させることも可能である。
【0024】
上記のモノマーを共重合するにあたっては、重合開始剤(触媒)および重合溶媒の存在下に行われる。
本発明においては、かかる重合開始剤の仕込み方法については特に制限はなく、重合開始時に一括仕込みする方法、反応途中に重合開始剤の一部を分割仕込みする方法、反応途中に重合開始剤の一部を連続滴下する方法などがあるが、生産効率を考慮すれば、重合開始時と重合開始後に分けて仕込むことが好ましく、重合開始時に仕込む重合開始剤とその後に仕込む重合開始剤は、同じであっても異なるものであってもよく、異なる重合開始剤を使用するときの重合開始後に添加する開始剤は、より活性の高い重合開始剤を選択することが好ましく、その10時間半減期温度が70℃以下のものを選択することが好ましい。
【0025】
本発明に用いる重合開始剤としては、例えば2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、ジベンゾイルパーオキシド、ジステアロイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジオクタノイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ジプロピルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
なお、これらの重合開始剤は、通常後述の重合溶媒に溶解して仕込まれる。
また、本発明においては、重合開始時の重合開始剤の添加量を全添加量の10〜90重量%(さらには20〜80重量%、特には30〜70重量%)とすることが好ましく、かかる添加量が10重量%未満では初期の重合速度が小さすぎ、逆に90重量%を越えると重合中期以降の重合速度が小さくなって好ましくない。
【0027】
重合溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類などの有機溶剤が用いられ、通常はメタノールが好適に用いられる。
【0028】
また、連鎖移動剤としてアセトアルデヒド、エチルアルデヒド、ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド等のアルデヒド類、n−ペンチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグルコール酸及びその塩、2−メルカプトプロピオン酸及びその塩、3−メルカプトプロピオン酸及びその塩等のメルカプタン類を好適に使用することができる。
【0029】
かくして、重合が開始されるのであるが、重合開始時の重合温度は、特に制限はなく、30℃程度から加圧下においては沸点を超える温度で実施してもよいが、通常40℃〜85℃の範囲が好適である。本発明においては、かかる重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃(さらには7〜45℃、特には10〜40℃)となるようにすることが必要で、重合開始時のジャケット温度(T℃)は特に規定されないが、上記の重合開始温度を考慮すれば、40〜85℃(さらには42〜85℃、特には45〜85℃)の範囲から選択すればよい。
【0030】
そして、重合を開始するのであるが、本発明においては上述のように、重合開始時の反応缶のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温しながら重合反応を行うことが重要であり、かかる温度差が上記の範囲を外れるときは、該ビニルエステル系重合体をケン化して得られるオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の安定性が低下して本発明の目的を達成することが困難となる。
【0031】
本発明においては、上記のように重合開始時の反応缶のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにすれば、その昇温方法(パターン)については特に制限はないが、下記の▲1▼〜▲3▼の昇温方法のいずれかを採用することが好ましい。
【0032】
▲1▼重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が下式(1)を満足するように連続的にジャケット温度を昇温する方法(図1参照)。
=T+kt ・・・(1)
[但し、kは1時間あたりの昇温速度(℃)で0.3≦k≦5の範囲であり、Tは重合開始時のジャケット温度(℃)で40≦T≦85の範囲である]
この昇温方法は、連続的にジャケット温度を昇温していく方法で、具体的には一定時間経過後のジャケット設定温度をコンピューターにプログラミングしておいて、ジャケット温度が時間の経過とともに直線的に上昇するように制御する方法である。なお、この場合、実際のジャケット温度が設定温度から僅かに外れるときがあるが、全体として直線的に昇温していれば良い。
【0033】
なお、上記の(1)式を満足しない時、具体的には急激にジャケット温度を上昇させたときやジャケット温度の上昇が少ないときには、得られるオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体水溶液の放置安定性が低下する傾向にあり、また成形用途に供したときには耐着色性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0034】
▲2▼重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が下式(2)〜(3)を満足するようにn回(n≧2)にわたって段階的にジャケット温度を昇温する方法(図2参照)。
−Tn−1≧1 ・・・(2)
[但し、Tはn回目に昇温したときのジャケット温度(℃)で、Tn−1はn回目に昇温する前のジャケット温度(℃)である]
t/(n+12)<t<t/(n−1) ・・・(3)
[但し、tは重合開始時から重合停止時までの時間(min)、tは昇温してから次に昇温を開始するまでの時間(min)である]
この昇温方法は、段階的にジャケット温度を昇温していく方法で、具体的にはジャケット昇温開始時刻と昇温の温度幅、昇温終了時間をn回それぞれにつきコンピューターにプログラミングしておいて、ジャケット温度を段階的に上昇するように制御する方法である。
【0035】
なお、上記の(2)式を満足しない時、具体的には昇温幅が1℃未満の場合にも上記と同様に得られるオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体水溶液の放置安定性が低下する傾向にあり、また成形用途に供したときには耐着色性が低下する傾向にあり好ましくない。また、上記の(3)式において、tがt/(n+12)以下の時やtがt/(n−1)以上の時には、重合速度が遅くなりすぎて生産効率の点で好ましくない。なお、この場合、実際のジャケット温度が設定温度から僅かに外れるときがあるが、全体として段階的に昇温していればよい。
【0036】
▲3▼重合開始t時間後のジャケット温度が曲線的な昇温挙動を示し、かつ重合開始t時間後における1時間あたりの昇温速度(該曲線の微分定数)が0.03〜20℃/hrであるようにジャケット温度を昇温する方法(図3参照)。
この昇温方法は、温度変化が曲線的になるようにジャケット温度を昇温していく方法で、具体的には逐次ジャケット温度が上昇するようにコンピューターにプログラミングしておいて、ジャケット温度が時間とともに曲線的に上昇するように制御する方法である。
【0037】
この方法において、1時間あたりの昇温速度(該曲線の微分定数)が0.03℃/hr未満では、重合速度が遅くなりすぎて生産効率の点で好ましくなく、逆に20℃/hrを越える時は、重合速度が速くなりすぎて得られる製品の品質が安定せず好ましくない。なお、この場合、実際のジャケット温度が設定温度から僅かに外れる場合があるが全体として曲線的に昇温していれば良い。
【0038】
上記の如き本発明の昇温方法により目的とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体が得られるのであるが、かかる重合体は増粘剤、有機系顔料のフィラー等の用途に有用で、かかる重合体のケン化物(オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂)も、後述する各種用途に大変有用で、かかるケン化物の製造方法についてさらに説明する。
【0039】
上記で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体は、必要に応じて脱モノマー処理が行われた後にケン化される。
ケン化方式は特に限定されず、バッチ式および連続式のいずれの方法も実施することができる。
【0040】
ケン化に当たっては、該重合体をアルコール等に溶解してケン化触媒の存在下にケン化が行なわれる。該アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の該重合体の濃度は20〜70重量%(さらには20〜60重量%)の範囲から選ばれる。
【0041】
ケン化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることが好ましい。かかる触媒の使用量はビニルエステルモノマー1モルに対して1〜100ミリモルにすることが必要である。また、必要に応じて水をケン化反応系に加えることもできる。さらに硫酸、塩酸等の酸触媒を用いてケン化反応を行うことも可能である。また、必要とするケン化度に応じて酢酸等を添加してケン化反応を停止する。
【0042】
かくして得られるケン化物のケン化度については特に制限はないが、懸濁重合用分散助剤用途に用いる場合は70モル%未満(さらには10モル%〜65モル%、特には20〜60モル%)が好ましく、かかるケン化度が70モル%を越えると懸濁重合で得られるポリ塩化ビニルのポロシティや可塑剤吸収性が低くなって成形時にフィッシュアイが多発する傾向にあり好ましくない。また、懸濁重合用分散安定剤用途に用いる場合は、ケン化度を65〜90モル%(さらには67〜88モル%、特には70〜85モル%)とすることが好ましく、かかるケン化度が65モル%未満では重合安定性が低下し、逆に90モル%を越えると懸濁重合で得られるポリ塩化ビニルのポロシティや可塑剤吸収性が低くなって成形時にフィッシュアイが多発する傾向にあり好ましくない。
なお、本発明で言うケン化度とは、オキシアルキレン基含有ビニルエステル共重合体の酢酸ビニル成分が水酸基に変換される割合をモル%で示したものである。
【0043】
また、得られるケン化物の平均重合度も特に制限されないが、懸濁重合用分散助剤用途においては100〜900(さらには150〜800、特には150〜700)が好ましく、かかる平均重合度が100未満では塩化ビニル等の懸濁重合終了後の脱モノマー工程で発泡の原因となり、逆に900を越えると得られる水溶液の粘度が高くなりすぎて作業性が低下して好ましくない。また、懸濁重合用分散安定剤においては、平均重合度を400〜2500(さらには500〜2000、特には600〜1500)とすることが好ましく、かかる平均重合度が400未満では保護コロイド性が低下し、逆に2500を越えると水溶液粘度が高く作業性が低下して好ましくない。
なお、本発明における平均重合度は、JIS K6726に準じて測定されるものである。
【0044】
かくして本発明の方法で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体のケン化物は、特に塩化ビニルをはじめとする塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散助剤や主分散剤(安定剤)用途に有用で、かかる用途に供したときには、得られた塩ビ樹脂のポロシティが高く、嵩密度が大きく、残存モノマーが少なく、フィッシュアイが少ないという特徴を有し、かつ該ケン化物の水溶液の安定性がきわめて良好であるというものである。
【0045】
また、本発明の方法で得られるオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体のケン化物は、フィルム等の成形用途においても有用で耐着色性に優れた成形物を得ることができる。
かかるフイルム等の成形用途に用いる場合は、ケン化度を70モル%以上(さらには80モル%以上、特には85モル%以上)とすることが好ましく、かかるケン化度が70モル%未満ではフィルム等の成形物の熱安定性が低下して好ましくない。
【0046】
また、この時の平均重合度は、400〜2000(さらには400〜1800、特には400〜1500)が好ましく、かかる平均重合度が400未満ではフィルム等の成形物の強度が低下する傾向にあり、逆に2000を越えると溶融粘度や水溶液粘度が高くなりすぎて作業性が低下して好ましくない。
【0047】
本発明の方法で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体やそのケン化物は、上記の用途以外にも、増粘剤、コーティング剤、建材用バインダー、造粒用バインダー、接着剤、感圧接着剤、紙サイズ剤、紙コーティング剤、暫定塗料、親水性付与剤、塗料、顔料分散安定剤、記録媒体(感熱記録紙、インクジェット紙、OHPシート等)加工剤、中子、外子などの成形加工材料として用いることもできる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお,実施例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0049】
実施例1
反応(重合)缶にオキシエチレン基の平均鎖長(n)が10のポリオキシエチレンモノアリルエーテル11.6部と酢酸ビニル100部、イソプロピルアルコール50部を仕込み、反応缶のジャケット温度を昇温して還流状態になるまで昇温した後30分間還流させてから、アゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.10モル%仕込んで重合を開始した。このときのジャケット温度(T)は71℃であった。その後、図1に示されるような昇温パターンでジャケット温度を一定速度で昇温した(1時間あたりの昇温速度は1.5℃/hr)。
重合開始後3時間目にアゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.05モル%追加した。
【0050】
重合開始9時間目に冷却用イソプロピルアルコールと重合禁止剤を加え、反応缶のジャケットを冷却して重合を停止して、ポリオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。なお、重合を停止する直前の反応缶のジャケット温度(T)は84.5℃であった。かかる重合体の重合率は約96%であった。
【0051】
次いで、上記で得られたオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体(樹脂分約52%の溶液)を残存モノマー量が0.12%になるまでモノマーを追いだし、メタノールに溶媒置換した後バッチ式ケン化機に仕込みメタノールを添加してポリ酢酸ビニル濃度を50%に調整してから、6ミリモル(対酢酸ビニル1モル)の水酸化ナトリウムをメタノール溶液で加えて、ケン化反応(温度35℃)を行った。ケン化後に酢酸を加えて中和した後、溶媒を追い出して脱イオン水を仕込み均一になるまで撹拌して、オキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は40モル%で、重合度は220、水溶液濃度は30重量%であった。
【0052】
得られた水溶液について、以下の要領で水溶液の安定性の評価を行った。
〈水溶液の安定性〉
得られたオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(濃度30重量%)を30℃の恒温槽に6ヶ月間静置して沈殿物の有無を調べた。評価基準は以下の通り。
○・・・沈殿物は全くなし
△・・・沈殿物が僅かに発生
×・・・沈殿物が多量に発生
【0053】
上記で得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を用いて、以下の要領で塩化ビニルの懸濁重合用分散助剤としての評価を行った。
リフラックスコンデンサー(RC)を装備した反応缶に塩化ビニル500部、脱気したイオン交換水500部を供給し、更に塩化ビニル100部に対して上記で得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を分散助剤として0.066部(固形分換算0.02部)を供給すると共に主分散剤としてケン化度79.5モル%、平均重合度2400の未変性ポリビニルアルコールを0.08部導入した。反応缶内温度を57℃に昇温した後、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシル−オキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシネオカーボネートを各々塩化ビニル100部に対して0.03部仕込み、これと同時にRCを稼働させて、400rpmで撹拌しながら4時間重合を行ってポリ塩化ビニルを得た。重合中は、RCの冷却水温度及び反応缶のジャケット温度を制御し、重合反応熱をRCと反応缶のジャケットで除熱した。重合終了後、反応缶と同じ大きさの未反応モノマー回収容器にポリ塩化ビニルを移送した。かかる移送は反応缶の圧力より回収容器の圧力をより減圧下にして実施した。移送時に反応缶中に発泡はほとんどなく、移送は25分未満で終了した。移送中と移送後に反応缶及び未反応モノマー回収容器に接続したガスホルダーに未反応モノマーを回収し、移送したポリ塩化ビニルスラリーは脱水、乾燥し、ポリ塩化ビニルを得た。
【0054】
〈嵩密度〉
JIS K6721に準拠して評価した。
【0055】
〈可塑剤吸収性〉
プラストグラフに接続されたプラネタリー型ミキサーに得られたポリ塩化ビニル粒子60部とDOP(ジオクチルフタレート)40部の混合物を投入して、80℃で攪拌しながら各時間毎の混練りトルクを測定し、混練りトルクが低下するまでの経過時間を調べた。評価基準は以下の通り。
A・・・3分未満
B・・・3〜5分未満
C・・・5分以上
【0056】
〈フィッシュアイ〉
得られたポリ塩化ビニル粒子100部、DOP(ジオクチルフタレート)50部、ジオクチル錫ジラウレート3部及びステアリン酸亜鉛1部を155℃でロール練りして0.3mm厚のシートを作成し100mm×100mm当たりのフィッシュアイの数を測定した。評価基準は以下の通り。
A・・・0〜4個
B・・・5〜10個
C・・・11個以上
【0057】
〈残存モノマー〉
得られたポリ塩化ビニル粒子の一定量をテトラヒドロフランに溶解させて、ガスクロマトグラフにより残存する塩化ビニルモノマーを定量した。
【0058】
実施例2
実施例1においてn=16のポリオキシエチレンモノアリルエーテルを17.7部、重合開始時のジャケット温度(T)を70℃、ジャケットの昇温速度を1.0℃/時間として、重合を停止する直前の反応缶のジャケット温度(T)を79℃とした以外は同様に重合を実施してオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は45モル%で、重合度は230で、実施例1と同様に評価を行った。
【0059】
実施例3
酢酸ビニル100部、メタノール30部ポリオキシエチレンアリルエーテル(n=8)11.7部を反応缶に仕込み、反応缶内部を十分に窒素置換した後、ジャケット温度を68℃にした。重合(反応)液の還流が始まった後、重合度目標を230として初期に2−メルカプトエタノールを反応缶内部に加えた。続いて重合開始剤AIBN0.65部を反応液に加えて重合を開始した。重合開始時の反応缶のジャケット温度(T)を68℃として、図2に示される昇温パターンでその後ジャケット温度を4回(n=4)にわたって2.5℃(T−Tn−1)ずつ上げた。なお、昇温時のインターバルは115分(t)とし、1回の昇温にかかった時間は約5分であった。重合停止直前のジャケット温度(T)は78℃であった。
AIBNを仕込んだ3分後に1時間あたり0.0867部の2−メルカプトエタノールを重合終了まで連続滴下した。なお、メルカプタンは酸化されやすいので滴下ロート内の雰囲気は窒素雰囲気とした。重合開始2時間目と4時間目にそれぞれにAIBN0.2部を追加し、重合開始約10時間後にメタノールと0.05部のパラベンゾキノンを添加して重合を停止した。
【0060】
また、同様にケン化を行って、メタノールを追い出して脱イオン水を加えてポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は48モル%で、平均重合度は225で、実施例1と同様に評価を行った。
【0061】
実施例4
実施例1において、ジャケットの昇温方法を段階的昇温方法とした。具体的には、重合開始時の反応缶のジャケット温度(T)を71℃として、その後ジャケット温度を3回(n=3)にわたって4.5℃(T−Tn−1)ずつ上げた。なお、昇温時のインターバルは127.5分(t)とし、1回の昇温にかかった時間は約10分であった。重合停止直前のジャケット温度(T)は84.5℃であった。その他は同様に行って、ケン化度40モル%、平均重合度は230のポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得て、同様に評価を行った。
【0062】
実施例5
実施例2において、ジャケットの昇温方法を段階的昇温方法とした。具体的には、重合開始時の反応缶のジャケット温度(T)を70℃として、その後ジャケット温度を4回(n=4)にわたって2.0℃(T−Tn−1)ずつ上げた。なお、昇温時のインターバルは104分(t)とし、1回の昇温にかかった時間は約5分であった。重合停止直前のジャケット温度(T)は78℃であった。その他は同様に行って、ケン化度45モル%、平均重合度は225のポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得て、同様に評価を行った。
【0063】
実施例6
実施例1において、ジャケットの昇温方法を2次曲線的昇温方法とした。具体的には、重合開始時の反応缶のジャケット温度(T)を71℃として、重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が、T=1/9t+71となるように昇温した。重合停止直前のジャケット温度(T)は80℃であった。その他は同様に行って、ケン化度40モル%、平均重合度は225のポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得て、同様に評価を行った。
【0064】
実施例7
実施例2において、ジャケットの昇温方法を2次曲線的昇温方法とした。具体的には、重合開始時の反応缶のジャケット温度(T)を70℃として、重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が、T=1/18t+70となるように昇温した。重合停止直前のジャケット温度(T)は74.5℃であった。その他は同様に行って、ケン化度45モル%、平均重合度は230のポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得て、同様に評価を行った。
【0065】
比較例1
実施例1において反応缶のジャケット温度を重合開始時の71℃のまま一定に保った以外は同様に重合を行った後、ケン化を同様に行い、オキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は40モル%で、平均重合度は220、水溶液濃度は30重量%であった。
得られたオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。
【0066】
比較例2
実施例1において、還流状態を30分間保った後、ジャケット温度を40℃に一旦下げて、その後1時間あたり6℃の割合で昇温した。重合停止直前の反応缶のジャケット温度(T)を94℃とした以外は同様に重合を行った後、ケン化を同様に行い、オキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は40モル%で、平均重合度は220、水溶液濃度は30重量%であった。
得られたオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。
【0067】
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2004043527
【0068】
実施例8
重合缶にオキシエチレン基の平均鎖長(n)が20のポリオキシエチレンモノアリルエーテル21.8部と酢酸ビニル100部、メタノール10部を仕込み、反応缶のジャケット温度を昇温して還流状態になるまで昇温した後30分間還流させてから、アゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.25モル%仕込んで重合を開始した。このときのジャケット温度(T)は68℃であった。その後、ジャケット温度を一定速度で昇温した(1時間あたりの昇温速度は1.2℃/hr)。
重合開始後3時間目にアゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.15モル%追加した。
【0069】
重合開始9時間後に冷却用メタノールと禁止剤を加え、反応缶のジャケットを冷却して重合を停止して、ポリオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。なお、重合を停止する直前の反応缶のジャケット温度(T)は78.8℃であった。かかる重合体の重合率は約96%であった。
【0070】
次いで、上記で得られたオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を残存モノマー量が0.12%になるまでモノマーを追いだし、バッチ式ケン化機に仕込みメタノールを添加してポリ酢酸ビニル濃度を45重量%に調整してから、6ミリモル(対酢酸ビニル1モル)の水酸化ナトリウムをメタノール溶液で加えて、ケン化反応(温度35℃)を行った。ケン化後に酢酸を加えて中和した後、固液分離を行い、乾燥してオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は93モル%で、重合度は750であった。
【0071】
得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂についてフイルムの着色度を評価した。評価方法は以下の通り。
該ポリビニルアルコール系樹脂の15%水溶液を調製し、PETフイルムを敷いた水平なガラス板上に該水溶液を流延して温度20℃、絶対湿度65%の条件下で1週間乾燥し、厚み100μmのフイルムを得た。
得られた該フイルムを180℃で10分間熱処理を行って、フィルムの着色性(YI値)を色差計で測定し、以下のように評価した。
○・・・YI値が15未満
×・・・YI値が15以上
【0072】
比較例3
実施例8において反応缶のジャケット温度を重合開始時の68℃のまま一定に保った以外は同様に重合反応を実施した。また、ケン化反応も同様に実施した。得られたポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は93モル%で、平均重合度は770であった。
得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂のフイルム着色度を実施例8と同様に評価した。
【0073】
実施例8及び比較例3の評価結果を表2に示す。
Figure 2004043527
【0074】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、ジャケットを有する反応缶を用いてオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーを共重合するにあたり、重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温して重合しているため、得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル重合体およびそのケン化物、特に該ケン化物は、塩化ビニル等の懸濁重合用分散助剤として使用したときは塩ビ樹脂の嵩密度が大きくフィッシュアイが少なく可塑剤吸収性に優れ残存モノマーが少ないという特徴を有しながら、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液安定性が良好であるという利点を兼ね備えるものである。またフィルム等の成形用途に供したときは耐着色性に優れるという利点を有するものである。
さらに、該ポリビニルアルコール系樹脂は塩ビ懸濁用主分散剤、増粘剤、コーティング剤、建材用バインダー、造粒用バインダー、接着剤、感圧接着剤、紙サイズ剤、紙コーティング剤、暫定塗料、親水性付与剤、塗料、顔料分散安定剤、記録媒体(感熱記録紙、インクジェット紙、OHPシート等)加工剤、中子、外子などの成形加工材料としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のジャケット温度の昇温パターン
【図2】実施例3のジャケット温度の昇温パターン
【図3】実施例6のジャケット温度の昇温パターン

Claims (8)

  1. ジャケットを有する反応缶を用いてオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーを共重合するにあたり、重合開始時のジャケット温度(T℃)と重合停止直前のジャケット温度(T℃)の差が5〜50℃となるようにジャケット温度を昇温して重合することを特徴とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
  2. 重合開始時の重合開始剤(触媒)の添加量を全添加量の10〜90重量%とすることを特徴とする請求項1記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
  3. 重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が下式(1)を満足するように連続的にジャケット温度を昇温することを特徴とする請求項1または2記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
    =T+kt ・・・(1)
    [但し、kは1時間あたりの昇温速度(℃)で0.3≦k≦5の範囲であり、Tは重合開始時のジャケット温度(℃)で40≦T≦85の範囲である]
  4. 重合開始t時間後のジャケット温度(T℃)が下式(2)〜(3)を満足するようにn回(n≧2)にわたって段階的にジャケット温度を昇温することを特徴とする請求項1または2記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
    −Tn−1≧1 ・・・(2)
    [但し、Tはn回目に昇温したときのジャケット温度(℃)で、Tn−1はn回目に昇温する前のジャケット温度(℃)である]
    t/(n+12)<t<t/(n−1) ・・・(3)
    [但し、tは重合開始時から重合停止時までの時間(min)、tは昇温してから次に昇温を開始するまでの時間(min)である]
  5. 重合開始t時間後のジャケット温度が曲線的な昇温挙動を示し、かつ重合開始t時間後における1時間あたりの昇温速度(該曲線の微分定数)が0.03〜20℃/hrになるようにジャケット温度を昇温することを特徴とする請求項1または2記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
  6. オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体のオキシアルキレン基含有量が0.1〜15モル%であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
  7. オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の平均重合度が100〜2000であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の製造方法で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体をさらにケン化してなることを特徴とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体ケン化物の製造方法。
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