JP2016069561A - 熱可塑性樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異物量を低減しつつ、良好な生産性で工業的に連続生産することが可能な熱可塑性樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、1つ以上の単量体を単独重合又は共重合して熱可塑性樹脂を製造する方法であって、少なくとも一部の単量体と重合溶媒とを反応釜に仕込み、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温し、次いで任意のジャケット温度Toutで反応釜の内温Tinをさらに上昇させて、重合開始剤の存在下で、全ての単量体を重合反応させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学材料等に好適に用いることができる熱可塑性樹脂を工業的に高い生産性で製造する方法に関するものである。
一般に、光学材料等の用途に用いられる熱可塑性樹脂には、光学的欠点となりうる異物の含有量が少ないことが求められる。熱可塑性樹脂に含まれる異物としては、製造過程で環境から混入する外来性の異物のほか、重合時等に生成するゲル化物がある。この重合時に生成するゲル化物は、熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂であるときに生成し易く、特に主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂である場合には顕著となる。
熱可塑性樹脂中の異物を低減する方法としては、熱可塑性樹脂溶液をフィルタで濾過することが考えられる。
しかし、この方法では、濾過に用いるフィルタユニットが経時的に徐々に目詰まりするため、熱可塑性樹脂を工業的に連続生産する場合には、一定時間ごとにフィルタを交換しなければならず、生産効率を低下させる原因となっていた。
また熱可塑性樹脂を工業的に連続生産する場合には、通常、重合に使用する反応釜はバッチごとに洗浄することなく同じ釜を用いて重合バッチが繰り返されることが多く、この重合バッチの繰り返し数が増すほど、1バッチあたりのゲル化物の生成数は増大する傾向がある。この点でも、連続生産においては経時的なフィルタの目詰まりを誘発し易い。
そこで、熱可塑性樹脂溶液をフィルタ濾過する際にフィルタユニットが目詰まりするまでの時間(連続濾過時間)を延ばし、異物量が低減された熱可塑性樹脂を連続生産する方法として、熱可塑性樹脂溶液を、濾過精度15μm以上100μm以下の第1のフィルタユニットに通過させた後、濾過精度5μm以下の第2のフィルタユニットに通過させる方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、フィルタ濾過の連続濾過時間はそれ以前に比べて明らかに長くなり、熱可塑性樹脂を工業的に連続生産する際の生産効率は向上した。
特開2012−201729号公報
本発明では、ゲル化物の除去をして熱可塑性樹脂を製造するに際し、その生産効率をさらに高めることを目的に掲げた。すなわち、本発明の目的は、異物量を低減しつつ、良好な生産性で工業的に連続生産することが可能な熱可塑性樹脂の製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂を得る際の重合反応において、重合溶媒をリフラックスさせて単量体を重合する際に、初期に反応釜に仕込んだ単量体および重合溶媒の加熱の仕方を緩やかに制御すること、具体的には、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温することによって、ゲル化物の生成を大幅に抑えることができることを見出した。そして、そのようにして得た熱可塑性樹脂の溶液であれば、たとえ重合工程の生産効率が若干低下したとしても、フィルタ濾過したときの連続濾過時間が従来よりも更に長くなるため、総合的には生産効率は却って高まり、異物数の少ない熱可塑性樹脂を良好な生産性で工業的に連続生産できることを確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂の製造方法は、1つ以上の単量体を単独重合又は共重合して熱可塑性樹脂を製造する方法であって、少なくとも一部の単量体と重合溶媒とを反応釜に仕込み、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温し、次いで任意のジャケット温度Toutで反応釜の内温Tinをさらに上昇させて、重合開始剤の存在下で、全ての単量体を重合反応させる。
本発明の製造方法においては、反応釜の内温が重合溶媒の沸点bp−10℃以上に到達した後に重合開始剤を反応釜に仕込んで重合することが好ましい。
本発明の製造方法においては、重合溶媒と共に反応釜に仕込まれる前記少なくとも一部の単量体が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、エポキシ基、アミド基からなる群より選ばれる1種以上の極性官能基を有する単量体であることが好ましい。このような極性官能基を有する単量体が重合溶媒とともに初期に反応釜に仕込まれていると、ゲル化物がより生成し易く、本発明のゲル化物抑制効果がより有意となる。
本発明の製造方法においては、前記熱可塑性樹脂が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂である事が好ましい。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、耐熱性が高く、光学材料等として好適に用いることができる。また主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、重合時等にゲル化物がより生成し易いので、本発明のゲル化物抑制効果がより有意となる。特に、前記主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、主鎖にラクトン環構造を有する樹脂であることが好ましい。
本発明の製造方法においては、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでのジャケットの温度Toutが、140℃以下であることが好ましい。これにより、ゲル化物の生成をより効率よく抑えることができる。
本発明の製造方法においては、前記重合溶媒が、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの重合溶媒は、重合反応に適しているとともに、重合反応により得られた熱可塑性樹脂溶液から脱揮させ易いという利点がある。
本発明の製造方法においては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が110℃以上であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、耐熱性が高く、光学材料等として好適に用いることができる。
本発明の製造方法においては、重合後に得られた樹脂溶液をフィルタ濾過することが好ましい。本発明の製造方法によれば、重合後に得られた樹脂溶液中のゲル化物の生成量が少なく抑えられているので、かかるフィルタ濾過では、長時間の連続濾過が可能であり、良好な生産性で異物量の少ない熱可塑性樹脂が得られる。
本発明によれば、熱可塑性樹脂を得る際の重合反応において、初期に反応釜に仕込んだ単量体および重合溶媒の加熱の仕方を緩やかに制御する、具体的には、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温するので、得られる熱可塑性樹脂溶液中のゲル化物の生成が大幅に抑えられ、その結果、フィルタ濾過したときの連続濾過時間が長くなり、異物数の少ない熱可塑性樹脂を良好な生産性で工業的に連続生産することが可能になる。
1.熱可塑性樹脂の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、1つ以上の単量体を単独重合又は共重合して熱可塑性樹脂を製造する方法であり、この単独重合又は共重合(以下、単独重合および共重合を纏めて「重合」と称する)の際に、初期に反応釜に仕込んだ単量体および重合溶媒の加熱の仕方を所定の範囲に制御する。具体的には、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温する。ジャケットの温度をこのように緩やかに昇温するよう制御すると、重合時のゲル化物の生成が抑えられ、その結果、後述するフィルタ濾過の際の連続濾過時間をより長く延ばすことができ、異物数の少ない熱可塑性樹脂を良好な生産性で工業的に連続生産することが可能になる。
なお本発明では、反応釜の加熱開始時に必須成分として存在するのは、単量体と重合溶媒だけであって、重合開始剤は必須ではなく、例えば重合開始剤は昇温過程の終了時に添加してもよい。このように重合開始剤が存在しない場合であっても、その昇温過程を敢えて緩やかに制御する点に本発明の特徴がある。加えて、このように昇温過程を緩やかに制御することは、重合工程の生産効率の低下に繋がるところ、敢えて緩やかに昇温することで、製造工程全体の生産効率を逆に高めている点にも、本発明の特徴がある。
1.1.重合工程
1.1.1.加熱制御
本発明の製造方法では、反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温する。ジャケットの温度Toutは、好ましくは(重合溶媒の沸点bp+25)℃以下の範囲、より好ましくは(重合溶媒の沸点bp+20)℃以下の範囲に維持するのがよい。一方、ジャケットの温度Toutがあまりに低すぎると、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでに要する時間が長くなり、重合工程の生産性が低くなり過ぎるので、ジャケットの温度Toutの下限は、(重合溶媒の沸点bp−25)℃とするのが好ましく、より好ましくは(重合溶媒の沸点bp−20)℃である。
反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでのジャケットの温度Toutは、140℃以下であることが好ましく、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。一方、ジャケットの温度Toutの下限は、好ましくは85℃、より好ましくは90℃である。
反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでに要する時間は、やジャケットの温度や実施スケール等にもよるが、例えば、60分以上が好ましく、より好ましくは70分以上、さらに好ましくは80分以上である。反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでに要する時間が短すぎると、重合時のゲル化物の生成が抑えられ難くなる場合がある。一方、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでに要する時間があまりに長すぎると、生産性を損なうことになるので、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでに要する時間は、300分以下が好ましく、より好ましくは250分以下がよい。
本発明の製造方法においては、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達した後には、任意のジャケット温度Toutで反応釜の内温Tinをさらに上昇させる。このときの任意のジャケット温度Toutとしては、例えば、(重合溶媒の沸点bp−10)℃以上、(重合溶媒の沸点bp+20)℃以下とするのが好ましく、より好ましくは(重合溶媒の沸点bp−5)℃以上、(重合溶媒の沸点bp+15)℃以下である。具体的には、100℃以上、130℃以下とすることが好ましく、より好ましくは110 ℃以上、125℃以下である。反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達した後のジャケット温度Toutが高すぎると、ゲル化物が生成する虞があり、一方、低すぎると、重合溶媒がリフラックスするまでに要する時間が長くなり、生産性が低下する虞がある。
本発明の製造方法においては、上記のような加熱制御の下、反応釜の内温Tinを上昇させ、反応釜の内温が重合溶媒の沸点bp−10℃以上に到達した後に、重合開始剤の存在下で、全ての単量体を重合反応させる。このときの反応釜の内温としては(重合溶媒の沸点bp−10)℃以上が好ましく、より好ましくは(重合溶媒の沸点bp−5)℃以上である。具体的には、100℃以上とすることが好ましく、より好ましくは105℃以上である。
なお、本発明の製造方法において、ジャケット温度を昇温するための加熱媒体は、特に制限されるものではなく、例えば、温水などの液相熱媒、シリコンオイルなどの熱媒油、蒸気など、公知の加熱媒体を使用することができる。中でも、シリコンオイル、蒸気が好ましく、より好ましくは蒸気である。
1.1.2.単量体
本発明における熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系樹脂;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有樹脂;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド類;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;マレイミド系樹脂;等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂などのビニルカルボン酸誘導体の重合体が、透明性に優れ光学材料として適している点、そしてそれ故ゲル化物を生産効率よく除去する必要性が高い点で、本発明に適している。以下、(メタ)アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂を構成する単量体について詳述する。
(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの(メタ)アクリル酸とヒドロキシ炭化水素とのエステル類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アラルキルなど);(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチルなどのエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどのハロゲン導入誘導体;のほか、ヒドロキシ基導入誘導体等が挙げられる。前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなど)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなど)等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル;等が含まれる。
(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;クロトン酸などのアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などのヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類;等が挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、上記の中でも、透明性および耐熱性の観点から、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。なお(メタ)アクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
マレイミド系樹脂を構成する単量体としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類が挙げられる。好ましいN−置換マレイミド類には、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが含まれる。
(メタ)アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂などのビニルカルボン酸誘導体の重合体は、それぞれ上記以外の他のモノマーを含んで構成されていてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;メタリルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン等のアルケン類;酢酸ビニル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等の複素環類;などの重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。これらの中でもスチレン類が好ましい。これら他のモノマーは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂又はマレイミド系樹脂を構成する全単量体中、(メタ)アクリル系モノマー又はN−置換マレイミド類の占める割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特になく、100質量%であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂などのビニルカルボン酸誘導体の重合体は、主鎖に環構造を有する樹脂であることが、耐熱性を高めるなどの観点から好ましい。主鎖の環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、N−置換マレイミド構造などが挙げられるが、中でも、ラクトン環構造またはN−置換マレイミド構造が好ましく、特にラクトン環構造が好ましい。主鎖に環構造を有するビニルカルボン酸誘導体の重合体、とりわけ主鎖に環構造(特にラクトン環構造)を有する(メタ)アクリル系樹脂は、重合時等にゲル化物がより生成し易いので、本発明のゲル化物抑制効果がより有意となる。
(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、上記(メタ)アクリル系モノマーの中から、重合して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とが導入されるような1種または2種以上のモノマーを選択し、これを含む単量体成分を重合した後、これらヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基との間で脱アルコールまたは脱水環化縮合を生じさせることで、主鎖にラクトン環構造を導入できる。分子鎖にヒドロキシ基を導入するには、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体、ヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などを選択すればよく、ヒドロキシアリル部位を有するモノマーも好ましく用いることができる。分子鎖にエステル基またはカルボキシル基を導入するには、上述した(メタ)アクリル系モノマーのうち、ビニル基とエステル基またはカルボキシル基とを有するモノマーを選択すればよい。
ラクトン環構造の構成員数は特に制限されず、例えば4員環から8員環のいずれであってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造としては、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造が挙げられる。
さらに詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
一方、マレイミド系樹脂は、マレイミド単位自体が環構造を有しているので、上記N−置換マレイミド類を含む単量体を重合することで、主鎖にN−置換マレイミド構造が導入される。さらに詳しくは、主鎖にN−置換マレイミド構造を有するマレイミド系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
本発明において、上述したような熱可塑性樹脂を構成する単量体は、1種であってもよいし2種以上であってもよい。
本発明において、上述したような熱可塑性樹脂を構成する単量体は、i)全部を初期(すなわち、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温する前)に反応釜に仕込んでもよいし、ii)一部を初期に反応釜に仕込み、残部は前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温し始めた後で添加してもよい。ii)の場合、残部の単量体は、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達する前後、いずれで添加してもよいが、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達した後に添加することが好ましく、重合溶媒がリフラックスした後に添加することがより好ましい。さらにii)の場合、残部の単量体は、重合開始剤の添加と同時か、あるいは重合開始剤の添加よりも前に添加しておくことが望ましい。なお、ここで言う「一部(の単量体)」とは、種類が異なる単量体を複数用いる中での一部の種類を意味する場合と、種類にかかわらず全使用量のうちの一部を意味する場合の両方を包含する。
本発明の製造方法においては、初期に反応釜に仕込まれる単量体(すなわち、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温する前に、重合溶媒と共に反応釜に仕込まれる少なくとも一部の単量体)が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、エポキシ基、アミド基からなる群より選ばれる1種以上の極性官能基を有する単量体であることが好ましい。このような極性官能基を有する単量体が重合溶媒とともに初期に反応釜に仕込まれていると、ゲル化物がより生成し易くなるので、本発明のゲル化物抑制効果がより有意となる。例えば、熱可塑性樹脂が主鎖にラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂である場合、ラクトン環形成に必要となるヒドロキシ基を分子鎖に導入するためのモノマー((メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体、ヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類、ヒドロキシアリル部位を有するモノマー等)、および、ラクトン環形成に必要となるエステル基またはカルボキシル基を分子鎖に導入するためのモノマー(ビニル基とエステル基またはカルボキシル基とを有する(メタ)アクリル系モノマー等)が極性官能基を有する単量体に該当する。つまり、熱可塑性樹脂が主鎖にラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂である場合には、上述のようなラクトン環形成に寄与する単量体は、重合溶媒とともに初期に反応釜に仕込んでおくことが望ましい。
1.1.3.重合溶媒
本発明の製造方法で用いることのできる重合溶媒は、単量体の重合反応に影響しない非重合性の溶媒であればよく、例えば、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、イソブチルアセテート、アミルアセテートなどのエステル系溶媒; ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの重合溶媒は、重合反応に適しているとともに、重合反応により得られた熱可塑性樹脂溶液から脱揮させ易いという利点がある。重合溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
重合溶媒の沸点bpは、特に限定されないが、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは100〜130℃である。重合溶媒の沸点bpが前記範囲より低いと、重合率が低くなったり、樹脂溶液の粘度が増大し取扱いが困難となったりする虞があり、一方、前記範囲よりも高いと、脱揮工程での脱揮効率が低下して、製品中の残存溶媒が増え、樹脂物性に悪影響を及ぼす虞がある。
なお、本発明においては、2種以上の重合溶媒を混合して用いる場合、それらが共沸混合物となるときには当該共沸混合物の沸点を「重合溶媒の沸点bp」とし、それらが共沸混合物とならないときには、混合溶媒の組成(体積比)において最も多い割合を占める単独溶媒の沸点を「重合溶媒の沸点bp」とする。
重合溶媒は、少なくとも一部の単量体とともに、初期(すなわち、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温する前)に反応釜に仕込まれる。また、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温し始めた後にも、必要に応じて、重合溶媒を添加することができる。
重合溶媒の使用量は、特に制限されないが、重合時のゲル化物の生成を抑制する上では、重合液中に生成した重合体(樹脂)の濃度が50質量%以下(より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下)となるよう、調整することが好ましい。ただし、重合液中の重合体(樹脂)の濃度があまりに低すぎると、生産性が低下するため、重合液中の重合体(樹脂)の濃度は、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上とすることがより好ましい。
1.1.4.重合開始剤
重合反応は、重合開始剤の存在下で行われる。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の種類や量、反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合開始剤の添加時機は、特に制限されず、例えば、初期(すなわち、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温する前)に単量体の一部又は全部とともに反応釜に仕込んでおいてもよいし、前記加熱制御の下、反応釜の内温を昇温し始めた後で添加してもよい。さらに後者の場合には、重合開始剤は、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達する前後、いずれで添加してもよいが、反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃以上に到達した後に添加することが好ましく、より好ましくは反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−5)℃以上に到達した後に添加することが好ましく、特に好ましくは重合溶媒がリフラックスした状態で添加するのがよい。なお、重合開始剤は、全使用量を一括して添加(仕込み)してもよいし、分割して添加(仕込み)してもよい。
なお、本発明の製造方法は、工業的なスケールで行われることが好ましく、重合反応はバッチ式で連続して行われることが多い。その場合、通常、重合反応後に内容物を抜き出して空になった反応釜は、その内部を洗浄することなく、再び次のバッチの原料(単量体、重合溶媒)を仕込み、次の生産を開始してもよい。
1.1.5.重合反応
重合工程における重合温度、重合時間は、使用する単量体および重合溶媒の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が70〜140℃の範囲内、重合時間が0.5〜20時間の範囲内であり、より好ましくは、重合温度が80〜135℃の範囲内、重合時間が1〜10時間の範囲内である。重合は、重合溶媒がリフラックスした状態で行うのが好ましい。
1.1.6.環化縮合反応
熱可塑性樹脂として主鎖にラクトン環を有する(メタ)アクリル系樹脂を得る場合、上記重合反応に引き続き、環化縮合反応を行うことができる。重合体へラクトン環構造を導入するための環化縮合反応は、加熱により、重合体の分子鎖中に存在するヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とが環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。
環化縮合反応は、通常、上記重合反応を終了した時点で得られる重合液をそのまま加熱することで行われるが、必要な場合には、重合液から一旦重合体を固体状態で取り出した後に、再度、適当な溶媒(例えば、前記重合溶媒)を添加して行ってもよい。
環化縮合反応を行う際には、公知の閉環触媒(エステル化触媒、エステル交換触媒のほか、有機カルボン酸類、塩基性化合物、炭酸塩など)を用いて環化縮合を促進させることができる。閉環触媒としては、特に有機リン化合物が好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られる(メタ)アクリル系樹脂の着色および分子量低下を抑制することができる。
有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、重合液に含まれる重合体に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。
環化縮合反応は、副生するアルコールを強制的に脱揮、除去するため、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて行うことが好ましい。その場合、環化縮合反応は、後述する脱揮工程と同時に(脱揮と兼ねて)行うことができる。
1.1.7.各種添加剤
重合工程においては、必要に応じて、公知の各種添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;等が挙げられる。これら添加剤は1種のみを用いてよいし2種以上であってもよい。
前記添加剤の使用量は、特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂中における添加剤の含有割合が、好ましくは5質量%%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下となるように調整するのがよい。
なお、前記添加剤は、重合工程の後の任意の工程で添加してもよい。
1.1.8.原料濾過処理
重合反応(環化縮合反応を含む)において使用する原料(単量体、重合溶媒、重合開始剤、触媒、その他添加物など)は、可能な限り使用前に濾過処理を施しておくことが、異物を低減する上で好ましい。勿論、このような原料由来の異物は、重合後のフィルタ濾過によっても除去できるが、重合反応に供する前の低粘度の段階で行う濾過処理の方が容易であり、また重合反応前に可能な限り異物数を減らしておくことにより、重合後のフィルタ濾過の負荷を低減し、連続濾過時間を延ばすことができる。
濾過処理の方法としては、液体であればそのまま、固体であれば重合溶媒等に溶解して、メンブレンフィルタや中空糸膜フィルタなどの各種フィルタに通せばよく、それぞれ別々に濾過してもよいし、混合物としてから濾過してもよい。このときの濾過の精度は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。
1.2.フィルタ濾過工程
本発明の製造方法においては、重合後に得られた樹脂溶液をフィルタ濾過することが好ましい。本発明の製造方法によれば、重合後に得られた樹脂溶液中のゲル化物の生成量が少なく抑えられているので、かかるフィルタ濾過では、長時間の連続濾過が可能であり、高い生産性で異物量の少ない熱可塑性樹脂が得られる。フィルタ濾過工程は、重合工程(環化縮合反応を含む)に引き続いて連続的に実施することができる。なお本発明においては、樹脂溶液の濾過を「フィルタ濾過」、後述する溶融樹脂の濾過を「ポリマーフィルタ濾過」と称する。
フィルタ濾過に用いるフィルタユニットとしては、従来公知のフィルタユニットを使用することができ、特に制限されないが、例えば、リーフディスクフィルタ、キャンドルフィルタ、パックディスクフィルタ、円筒型フィルタ等が挙げられる。なかでも、有効濾過面積が高いリーフディスクフィルタおよびキャンドルフィルタが好ましい。
フィルタ濾過に用いるフィルタユニットの濾材は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、コットン、ポリエステル、ビスコースレーヨン、グラスファイバーなどの各種の繊維で構成された不織布もしくはロービングヤーン巻回体からなる濾材、フェノール樹脂含浸セルロースからなる濾材、金属繊維の不織布を焼結した濾材、金属粉末を焼結した濾材、複数の金網を積層した濾材、これらの濾材を組み合わせたいわゆるハイブリッド型濾材等が挙げられる。なかでも、耐久性および耐圧性に優れることから、金属繊維の不織布を焼結した濾材が好ましい。
樹脂溶液を濾過する精度(濾過精度)は、通常は例えば15μm以下であればよいが、得られた熱可塑性樹脂を光学フィルムなどの光学材料に使用することを想定すると、その光学的欠点低減のためには、5μm以下が好ましい。濾過精度の下限は特に限定されないが、例えば0.2μmである。
フィルタ濾過に供する樹脂溶液の温度は、重合溶媒の沸点等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合溶媒の沸点bp以下が好ましく、より好ましくは(重合溶媒の沸点bp−10)℃以下がよい。一方、フィルタ濾過に供する樹脂溶液の温度が低すぎると、樹脂溶液の粘度が増大し、ギアポンプ等の装置への負荷が増加する虞があるので、フィルタ濾過に供する樹脂溶液の温度は、50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。
フィルタ濾過に供する樹脂溶液の粘度は、85℃において、100Pa・秒以下であることが好ましく、より好ましくは80Pa・秒以下である。フィルタ濾過に供する樹脂溶液の粘度が高すぎると、フィルタ濾過時の圧損が増大し、フィルタユニットが破損したり、粘度上昇によるフィルタ濾過時の処理の能力が低下したりする虞がある。
フィルタ濾過における圧力損失は、2.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0MPaの範囲、さらに好ましくは0.5〜1.5MPaの範囲である。
本発明の製造方法においては、重合時のゲル化物の生成を抑制できるので、圧力損失が2.5MPaとなるまでの濾過時間を連続濾過時間としたときに、当該連続濾過時間が、好ましくは550時間以上、より好ましくは600時間以上となる。
1.3.脱揮工程(溶媒除去工程)
本発明の製造方法においては、目的とする熱可塑性樹脂を、溶液として(すなわち樹脂溶液として)得ることもできるが、必要に応じて、溶媒を除去する脱揮工程を行い、所定の形状に成形された固体(例えばペレット、フィルムなど)として得ることもできる。
脱揮工程では、重合工程(必要に応じて環化縮合反応を含む)で得られた熱可塑性樹脂溶液を減圧下加熱すればよい。
脱揮の際の減圧度は、除去しようとする溶媒量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、好ましくは5hPa〜1000hPa、より好ましくは10hPa〜800hPa、さらに好ましくは13hPa〜500hPaである。
脱揮の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、好ましくは50〜400℃、より好ましくは100〜300℃である。
脱揮工程で用いる装置としては、減圧下加熱できるものであればよく特に制限されないが、例えばベント付押出機が好ましく用いられる。押出機としては、シリンダとシリンダの内部で回転するスクリューとを備え、シリンダの一端側から供給された原料をスクリューで混練しながらシリンダの他端側へと送り、シリンダの先端に備えた口金あるいは押出型とも呼ばれるダイから原料を押し出すものが挙げられる。スクリューは単軸あるいは二軸のものがあるが二軸が好ましい。シリンダには、通常、供給原料を加熱するヒータなどの加熱手段、内部に発生するガス等を逃がすための排気口すなわちベントが設けられている。ベントはシリンダの後端などに1個所だけ設けることもできるが、シリンダの長さ方向に沿って複数個所に設けられることが好ましい。押出機が有するベントの数は、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上である。
このような押出機では、シリンダの上流側の原料供給口から樹脂溶液を供給し、シリンダ内で樹脂を加熱しスクリューの回転とともに溶融混練してダイから熱可塑性樹脂が押し出される。なおダイから押し出された熱可塑性樹脂は、ダイに対応する形状に押出成形され、フィルム状、棒状、その他の形状を有する樹脂製品を直接に押出成形することが可能である。また押出成形された樹脂を細かく切断すればペレットを製造することができる。
前記脱揮工程では、例えば押出機の先端に設けたポリマーフィルタによって、溶融状態の樹脂を濾過(ポリマーフィルタ濾過)することが好ましい。これにより、脱揮工程で生じる微量のゲル化物をも除去することができ、得られる熱可塑性樹脂の異物含有量をさらに低減できる。
ポリマーフィルタとしては、従来公知のポリマーフィルタを使用することができ、特に制限されないが、例えば、リーフディスクタイプのポリマーフィルタ、パックディスクフィルタ、円筒型フィルタ、キャンドル状フィルタなどが挙げられる。これらの中では、濾過面積が広く、高粘度の樹脂を濾過した場合でも圧力損失が少ないため、リーフディスクタイプのポリマーフィルタが好ましい。ポリマーフィルタがリーフディスクタイプである場合、フィルタとしては、金属繊維不織布を焼結した材料からなるもの、金属粉末を焼結した材料からなるもの、金網を数枚積層したものなどが挙げられる。これらの中では、金属繊維不織布を焼結した材料からなるものがより好ましい。
ポリマーフィルタ濾過の精度は、通常は10μm以下程度であればよいが、得られた熱可塑性樹脂を光学フィルムなどの光学材料に使用することを想定すると、その光学的欠点低減のためには、5μm以下が好ましい。濾過精度の下限は特に限定されないが、例えば0.2μmである。
ポリマーフィルタ濾過の際の熱可塑性樹脂の温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば260〜330℃が好ましく、より好ましくは270〜300℃である。
ポリマーフィルタ濾過の際の圧力損失は、1〜15MPaの範囲内であることが好ましい。
1.4.熱可塑性樹脂
本発明の製造方法で得られる熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、耐熱性が高く、光学材料等として好適に用いることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは115〜160℃、より好ましくは120〜150℃である。ガラス転移温度は、例えば、熱可塑性樹脂を構成する単量体の種類や量によって調整することができる。なお熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明の製造方法によれば、重合時のゲル化物の生成を抑制できるので、得られる熱可塑性樹脂は異物の含有量が少ないものとなる。例えば、本発明の好ましい態様においては、長径2μm以上5μ未満である異物の数は、熱可塑性樹脂1g当たり、好ましくは8000個以下、より好ましくは6000個以下、さらに好ましくは4000個以下である。
2.光学用熱可塑性樹脂組成物
本発明の製造方法で得られた熱可塑性樹脂は、光学的欠点となりうる異物数が少ないので、得られた熱可塑性樹脂は光学材料(光学用熱可塑性樹脂組成物)として好適なものとなる。
前記光学用熱可塑性樹脂組成物は、本発明に係る熱可塑性樹脂のみからなるものであってもよいし、本発明に係る熱可塑性樹脂とともに、他の樹脂や各種添加剤を含有していてもよい。
他の樹脂としては、本発明の製造方法とは異なる方法で製造されたものであれば、特に制限されず、その種類としては、熱可塑性樹脂として上述したものが挙げられる。それらの中でも、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂が好ましい。
前記光学用熱可塑性樹脂組成物が他の樹脂をも含有する場合、その含有量としては、本発明に係る熱可塑性樹脂の含有割合が、樹脂組成物100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上となるように設定するのがよい。
前記光学用熱可塑性樹脂組成物が他の樹脂をも含有する場合、他の樹脂は、固体として得られた本発明に係る熱可塑性樹脂と混合されてもよいし、樹脂溶液として得られた本発明に係る熱可塑性樹脂(樹脂溶液)と混合されてもよい。最終的に得られる光学用熱可塑性樹脂組成物の異物含有量を低減する上では、他の樹脂は、例えば上記脱揮工程において添加し、混合物をポリマーフィルタ濾過に供することが好ましい。
前記光学用熱可塑性樹脂組成物は、例えば、光学的欠点となりうる異物の含有量が少ないので、光学材料、光学部材として好適であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどの画像表示装置に用いられる複屈折フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、画素部(発光部)保護フィルム、偏光子保護フィルム、紫外線吸収フィルム等の光学フィルム;等の用途に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例では、特に断りのない限り「質量部」を単に「部」と、「質量%」を単に「%」と記す。
実施例、比較例で得られた熱可塑性樹脂は下記の方法で分析、評価した。
[粘度]
樹脂溶液の粘度は、B型粘度計(東機産業社製)、ローターNo.6を用いて、ローターを樹脂溶液中に浸し、10rpmの回転数で測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製「DSC−8230」)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、得られたDSC曲線から、始点法により求めた。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[異物数の測定]
各サンプルの異物数は、得られたサンプル10gを100mLのクロロホルムに溶解させた後、パーティクルカウンタ(パマス社製、型式:SVSS−C、センサー仕様:HCB−LD−50/50)を用いて、長径が2μm以上5μm未満のものを異物として、その数を測定した。なお、異物数は、樹脂1g当りの数に換算した値で示した。
[実施例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管とともに、その周囲に温度調整用のジャケット(加熱媒体:蒸気)を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10部、および重合溶媒としてトルエン(bp:110℃)50部を仕込んだ。次に、反応釜に窒素ガスを導入しながら、ジャケット温度Toutを90℃以上、108℃以下の温度域に140分以上維持しつつ反応釜の内温Tinを100℃まで昇温させ、100℃に到達後は、ジャケット温度Toutを任意の温度に上昇させて、反応釜の内温Tinを105℃まで昇温させた。この際、反応釜の内温が100℃に到達するまでに要した時間は150分であった。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.03部を添加した。これと同時に、上記ターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート0.06部を2時間かけて滴下しながら約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。滴下終了後、反応釜を4時間加温し続けて、熟成を行った。次いで、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒としてリン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A−18」)0.05部を添加し、約90℃〜110℃の還流下で2時間、ラクトン環構造を形成する環化縮合反応を進行させて、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の溶液(樹脂溶液A−1)を得た。この環化縮合反応で得られた樹脂溶液A−1は、反応釜からバッファータンクへ移動させ、バッファータンク内で、続くフィルタ濾過の温度である85℃に保持した。
以上の重合反応、環化縮合反応、およびバッファータンクへの樹脂溶液の移動を1バッチとして、連続的にバッチを繰り返し、樹脂溶液A−1の製造を連続的に行った。なお、1バッチを終了した後の反応釜、すなわち樹脂溶液をバッファータンクに移動させた後の空になった反応釜には、その内部を洗浄することなく、再び上記単量体および重合溶媒を仕込み、同じ重合反応および環化縮合反応を行った。1バッチに要する時間は、およそ10時間であった。
次に、上記のようにして連続的に製造した樹脂溶液A−1を、引き続き、連続的にフィルタ濾過した。フィルタ濾過は、バッファータンクから排出した樹脂溶液を、ギヤポンプによって加圧し、濾過精度60μmの第1のフィルタユニットと濾過精度5μmの第2のフィルタユニットとをこの順で直列に配置した流路(バッファータンクと第1フィルタユニットの間、第1フィルタユニットと第2フィルタユニットの間はそれぞれ配管で繋がれている)に通過させることにより行った。第1および第2フィルタユニットには、SUS316Lの焼結繊維からなるキャンドルフィルタを用い、第1および第2フィルタユニットともに濾過面積は0.42m2とした。第1および第2のフィルタユニットを通過する樹脂溶液の量(処理速度)は、52部/時とし、各フィルタユニットを通過する際の樹脂溶液の温度は85℃に保持した。フィルタ濾過を開始した時点において、第1および第2のフィルタユニットで発生した樹脂溶液の圧力損失は、双方のフィルタユニットの合計で1.0MPaであった。この第1および第2のフィルタユニットの合計の圧力損失が2.5MPaとなった時点でフィルタ濾過を中止した。
樹脂溶液A−1の粘度は、85℃において25Pa・秒であり、フィルタ濾過の開始から中止までの時間(連続濾過時間)は653時間であった。また連続濾過時間が480時間となった時点でのフィルタ濾過後の樹脂溶液の異物量は1715個/gであった。
次に、フィルタ濾過後の樹脂溶液A−1を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度が250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4フォアベントと称する)を備え、先端部にギアポンプを介してリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、6.24部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、脱揮処理を行うと同時にポリマーフィルタ処理を行い、ペレット化した。その際、第3フォアベントと第4フォアベントとの中間で、発泡抑制剤(失活剤)としてオクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製「ニッカオクチックス亜鉛18%」)のトルエン溶液を、得られる熱可塑性樹脂組成物に対してオクチル酸亜鉛が質量比で700ppmとなるように注入した。脱揮完了後、得られたペレットを60℃の乾燥エアー中で24時間乾燥させて、主鎖にラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(B−1)を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のTgは125.2℃であった。
[実施例2]
実施例1と同様にして単量体および重合溶媒を仕込んだ後、ジャケット温度Toutを100℃以上、120℃以下の温度域に95分以上維持しつつ反応釜の内温Tinを100℃まで昇温させたこと(この際、反応釜の内温が100℃に到達するまでに要した時間は約110分であった)以外は、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の溶液(樹脂溶液A−2)を得、これを実施例1と同様にしてフィルタ濾過した。
樹脂溶液A−2の粘度は、85℃において25Pa・秒であり、フィルタ濾過の開始から中止までの時間(連続濾過時間)は607時間であった。また連続濾過時間が480時間となった時点でのフィルタ濾過後の樹脂溶液の異物量は3180個/gであった。
またフィルタ濾過後の樹脂溶液A−1に代えて、フィルタ濾過後の樹脂溶液A−2を用いたこと以外、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(B−2)を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のTgは125.1℃であった。
[実施例3]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管とともに、その周囲に温度調整用のジャケット(加熱媒体:蒸気)を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)230部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33部、重合溶媒としてトルエン(bp:110℃)250部、酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.15部、およびn−ドデシルメルカプタン0.2部を仕込んだ。次に、反応釜に窒素ガスを導入しながら、ジャケット温度Toutを100℃以上、135℃以下の温度域に50分以上維持しつつ反応釜の内温Tinを100℃まで昇温させ、100℃に到達後は、ジャケット温度Toutを任意の温度に上昇させて、反応釜の内温Tinを105℃まで昇温させた。この際、反応釜の内温が100℃に到達するまでに要した時間は約80分であった。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.28部を添加した。これと同時に、上記ターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート0.56部とスチレン12部をそれぞれ2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。滴下終了後、反応釜を4時間加温し続けて、熟成を行った。次いで、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒としてリン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A−18」)0.2部を添加し、約90〜110℃の還流下で2時間、ラクトン環構造を形成する環化縮合反応を進行させて、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の溶液(樹脂溶液A−3)を得た。この環化縮合反応で得られた樹脂溶液A−3は、反応釜からバッファータンクへ移動させ、バッファータンク内で、続くフィルタ濾過の温度である95℃に保持した。
次に、得られた樹脂溶液A−3を、各フィルタユニットを通過する際の樹脂溶液の温度を95℃に保持したこと以外、実施例1と同様にしてフィルタ濾過した。
樹脂溶液A−3の粘度は、95℃において28Pa・秒(85℃においては49Pa・秒)であり、フィルタ濾過の開始から中止までの時間(連続濾過時間)は614時間以上であった。また連続濾過時間が480時間となった時点でのフィルタ濾過後の樹脂溶液の異物量は3870個/gであった。
またフィルタ濾過後の樹脂溶液A−1に代えて、フィルタ濾過後の樹脂溶液A−3を用い、脱揮の際の処理速度を20.17部/時(樹脂量換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(B−3)を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のTgは121.5℃であった。
[比較例1]
実施例1と同様にして単量体および重合溶媒を仕込んだ後、ジャケット温度Toutを100℃以上、150℃以下の温度域に25分以上維持しつつ反応釜の内温Tinを100℃まで昇温させたこと(この際、反応釜の内温が100℃に到達するまでに要した時間は約40分であった)以外は、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の溶液(樹脂溶液A−4)を得、これを実施例1と同様にしてフィルタ濾過した。
樹脂溶液A−4の粘度は、85℃において25Pa・秒であり、フィルタ濾過の開始から中止までの時間(連続濾過時間)は528時間であった。また連続濾過時間が480時間となった時点でのフィルタ濾過後の樹脂溶液の異物量は8749個/gであった。
またフィルタ濾過後の樹脂溶液A−1に代えて、フィルタ濾過後の樹脂溶液A−4を用いたこと以外、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(B−4)を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のTgは125.1℃であった。

Claims (9)

  1. 1つ以上の単量体を単独重合又は共重合して熱可塑性樹脂を製造する方法であって、
    少なくとも一部の単量体と重合溶媒とを反応釜に仕込み、
    反応釜の周囲に設けた温度調整用のジャケットの温度Toutを(重合溶媒の沸点bp+30)℃以下の範囲に維持しつつ、反応釜の内温Tinを(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまで昇温し、
    次いで任意のジャケット温度Toutで反応釜の内温Tinをさらに上昇させて、重合開始剤の存在下で、全ての単量体を重合反応させる熱可塑性樹脂の製造方法。
  2. 反応釜の内温が重合溶媒の沸点bp−10℃以上に到達した後に重合開始剤を反応釜に添加して重合する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  3. 重合溶媒と共に反応釜に仕込まれる前記少なくとも一部の単量体が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、エポキシ基、アミド基からなる群より選ばれる1種以上の極性官能基を有する単量体である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  5. 前記主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が、主鎖にラクトン環構造を有する樹脂である、請求項4に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  6. 反応釜の内温Tinが(重合溶媒の沸点bp−10)℃に到達するまでのジャケットの温度Toutが、140℃以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  7. 前記重合溶媒が、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  8. 熱可塑性樹脂のガラス転移温度が110℃以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
  9. 重合後に得られた樹脂溶液をフィルタ濾過する、請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
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