JP2004027039A - 難燃性熱伝導電気絶縁粘着体 - Google Patents

難燃性熱伝導電気絶縁粘着体 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導率と難燃性と接着性に優れる難燃性熱伝導電気絶縁粘着体を提供することを目的とする。
【解決手段】i) 炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート系単量体と、ii) 金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径が20〜200μmの粒子と、iii) 平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子と、iv) 光重合開始剤とを含有する組成物を重合することにより、熱伝導率と難燃性、電気絶縁性、接着性に優れる難燃性熱伝導電気絶縁粘着体が得られる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱伝導性粘着体に関し、詳しくは、電子部品等の発熱体とヒートシンク等の放熱部品との伝熱と接着固定等に有用な難燃性熱伝導電気絶縁粘着体に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、エレクトロニクス技術の格段なる進歩により電気、電子機器の高集積化・高性能化が進むに伴い、半導体やCPU等の電子部品やプラズマディスプレイ等の家電製品の熱放散の必要性が高まっている。そのため電子部品や家電製品には、ヒートシンク等の放熱部品を接合部材による接着、又は機械的に固定して熱放散を行っている。この接合部材には、高い熱伝導性と電気絶縁性の他、安全性の面から万一の発火に対して着火・延焼の危険性が無いように高い難燃性が要求される。
【0003】
特開2001−139733号公報には、流動性を有するゴムに、平均粒径の異なるの熱伝導性粒子を添加することで、大きな粒子の隙間に、小さな粒子が充填できるため機械的強度を低下することなく、熱伝導性粒子の充填率を向上できるとある。また、熱伝導性粒子に難燃性を有するものを使用することで難燃性も付与できるとある。難燃性を有する熱伝導性粒子としては炭化珪素を挙げているが、難燃性を付与するためには充填率を上げる必要があり、高価になるという問題点があった。また、小さい粒子に難燃性を有する粒子を、大きい粒子に熱伝導性を有する粒子を使用することも記載されていない。また、CPUの発熱(65℃)でその形状に沿って変形するように、ベース樹脂に流動性を有するゴム(シリコーンゴムやEPDMゴム)を使用している。しかし、元来これらの樹脂は自着性であり充分な接着性を発揮することができない。この熱伝導性シートを用いてCPUにヒートシンクを垂直方向に接合したり、ノートパソコンのように持ち運ぶと、熱によりゴムが可塑化されてヒートシンクが自重で脱落する問題があった。また、流動性を有するゴムにシリコーンゴムを用いた熱伝導性シートで、パソコンのCPUとヒートシンクを接合すると、熱によりシリコーンゴム中のシリコーン系低分子量物が揮発し、HDDのディスク上に析出しディスクを破壊する危険性があった。このように熱伝導性と難燃性と接着性を高次元でバランスさせることについては解決されていない。
【0004】
特開2001−2839号公報には、炭化水素系ポリマーと、平均粒径が相違する2種以上の水和金属化合物を含有する難燃性組成物が提案されている。しかし、炭化水素系ポリマーは固体又は高粘度液体であるため粒子充填率を上げるためには、炭化水素系ポリマーと前記粒子を2本ロール等で混錬しなければ均一に充填することができなかった。このため混錬時に大きな粒子が破壊され、大きい粒子の隙間に小さい粒子が充填されずに充分な熱伝導性が発揮できない。また、得られたシートも硬くなり接着力が不足する問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消すべく、熱伝導率と難燃性と接着性に優れる難燃性熱伝導電気絶縁粘着体を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、(メタ)アルキルアクリレートを主とするアクリル系単量体と、平均粒径が20〜200μmの特定の粒子と、平均粒径が10μm以下の水和金属化合物の粒子とを含有する組成物を重合することにより、熱伝導率と難燃性、電気絶縁性、接着性に優れる難燃性熱伝導電気絶縁粘着体が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、i) 炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート系単量体と、ii) 金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径が20〜200μmの粒子と、iii) 平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子と、iv) 光重合開始剤とを含有する組成物の光重合物であることを特徴とする難燃性熱伝導電気絶縁粘着体である。
炭化水素系ポリマーが固体又は高粘度液体であるのに対し、前記(メタ)アルキルアクリレート系単量体は低粘度な液体であり、前記ii) の粒子の隙間に、前記iii) の粒子が抵抗無く効率的に充填されるため、接着性を低下することなく添加量を増量することができる。また、光重合により重合体とすることで、前記ii) の粒子の隙間に、前記iii) の粒子が充填された状態が固定化され、経時的にも安定な分散状態を維持できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される組成物は、炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレートからなる。
【0009】
前記炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレートとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、エタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは単量体混合物中70〜100質量%、好ましくは90〜99質量%の割合で用いられる。(メタ)アルキルアクリレートの量が70質量%未満であると、初期接着力などが低下する。
【0010】
(分子内に極性基を有する共重合性単量体)
前記の(メタ)アルキルアクリレート単量体とともに、分子内に極性基を有する共重合性単量体を使用することができる。この共重合性単量体は、上記アクリル共重合体の凝集力や接着力を向上するために用いられる。特に限定されるものではないが、例としてアクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、カプロラクタン変性の(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー等のカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド等の窒素含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体などが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら共重合性単量体は、単量体混合物中30〜0.5質量%、好ましくは10〜1質量%の割合で用いられる。30質量%を越えると、初期接着性が低下する。
【0011】
(光重合開始剤)
本発明に使用される光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの置換アセトフェノン類、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換−α−ケトール類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類など公知のものが挙げられる。また、分子内に開裂点が2つ以上ある光重合開始剤、例えば、ビスアシルフォスフィンオキサイド類、ビスマレイミド誘導体を用いると、光重合物の分子量を大きくしやすいので好ましい。
【0012】
これらの光重合開始剤の使用量は種類にもよるが、単量体100質量部に対して、0.01〜3質量部、好ましくは0.1〜1質量部の割合で用いる。0.01質量部より少ないと、光重合物中に未反応の単量体が残存する。また、3質量部より多いと、光重合物の分子量が低下して感圧接着剤の凝集力不足を招く。
なお、生成する光重合物の分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフのポリスチレン換算での重量平均分子量が40万以上、好ましくは80万以上である。
【0013】
(金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれる平均粒径20〜200μmの粒子)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体に含有される、金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径20〜200μmの粒子としては、特に限定されない。例えば金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。水和金属化合物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。金属窒化物としては窒化硼素、窒化アルミニウム等が挙げられる。前記粒子の平均粒径が20μm未満であると、粒子同士の接点の減少により熱伝導性が低下する。平均粒径が200μmを越えると接着性、塗工性が低下する。
【0014】
前記粒子の前記アクリル系単量体への分散性を向上するためカップリング処理、ステアリン酸処理等の表面処理を適宜行っても良い。含有する粒子の形状は、球状、針状、フレーク状が挙げられる。化合物種類及び平均粒径、形状は単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体に含有される、金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径20〜200μmの粒子の添加量は、前記(メタ)アルキルアクリレート単量体100質量部に対して、50〜400質量部含有することが好ましい。50質量部未満では熱伝導性が低下し、400質量部を越えると接着性が低下する。
【0015】
(平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体に含有される平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子としては、特に限定されないが、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。前記粒子の添加量は、前記した(メタ)アルキルアクリレート単量体100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましい。100質量部未満では難燃性が低下する。前記粒子の平均粒径が10μmを越えると、前記平均粒径20〜200μmの粒子の隙間に充填できなくなり、結果的に前記平均粒径20〜200μmの粒子が高充填できなくなる。
【0016】
前記粒子の前記(メタ)アクリレート単量体への分散性を向上するためカップリング処理、ステアリン酸処理等の表面処理を適宜行っても良い。含有する粒子の形状は、球状、針状、フレーク状が挙げられる。化合物種類及び平均粒径、形状は単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0017】
前記した金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径20〜200μmの粒子(大きな粒子)の充填率を上げることで熱伝導性は向上する。その際、大きな粒子間に隙間ができる。その隙間に、難燃性を付与できる10μm以下の水和金属化合物の粒子(小さな粒子)を充填することで、接着性を低下することなく高い熱伝導性と難燃性が両立できる。炭化水素系ポリマー等の固体又は高粘度液体に比べ、前記(メタ)アクリレート単量体は低粘度な液体であるため、より緻密に充填できる。また前記した大きな粒子の種類や組み合わせをかえることで、難燃性と熱伝導性を自由にコントロールできる。
【0018】
(分散剤)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体には、組成物の保存安定性、塗工適性を向上するために、分散剤を含有することが好ましい。分散剤とは、いわゆる界面活性剤であり、その分子内に分散質である難燃性を有する粒子及び非難燃性かつ熱伝導電気絶縁性を有する粒子と親和性が高い極性基と、主な分散媒である(メタ)アルキルアクリレート単量体と親和性の高い疎水基を有する化合物である。例えば、高級アルコールスルホン酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、アルキル(アリル)エーテルリン酸エステル、アルキル(アリル)エーテル硫酸エステル、リン酸エステルなどのイオン性分散剤や、アルキルフェニルエーテル、アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性分散剤が挙げられる。添加量は特に限定されないが、前記難燃性を有する粒子と非難燃性の熱伝導電気絶縁性を有する粒子の総量に対し0.02〜5.0質量%が好ましい。0.02質量%未満では塗工性が低下し、5.0質量%を越えると耐熱性が低下する。
【0019】
(難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の製法)
本発明に使用する組成物は、必要に応じ塗工適性の調整を行うことができる。例えば、まず前記したアクリル系単量体と光重合開始剤とを一緒に混合し、通常はこのプレミックスを部分的に重合することによって、塗布可能なシロップ状にできる。あるいは、上記プレミックスに対して、増粘剤やヒユ―ムドシリカのようなチキソトロ―プ剤を混合することにより、塗布可能なシロップ状にすることもできる。粒子が壊れない範囲で、最も分散性が向上するように粘度を調整することが望ましい。
【0020】
次に、前記アクリル系単量体又は前記シロップ状物に、難燃性を有する粒子、非難燃性かつ熱伝導電気絶縁性を有する粒子、分散剤、光重合開始剤とを混合し、光重合用の組成物を調製する。この組成物には、粘着シートの凝集性や剪断強度を増加させるため、架橋剤を添加することができる。さらに必要により顔料、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、などの公知の各種添加剤を、紫外線などの照射による光重合を妨げない範囲内で添加してもよい。
【0021】
(架橋剤)
架橋剤としては、前記アクリル系単量体と共重合可能な多官能(メタ)アクリレートや、分子内にカルボキシル基や水酸基などの極性基を有する共重合性単量体がある場合は、これと反応する官能基を有する架橋剤を用いることができる。本発明では光重合法を用いて粘着体を作成するので、共重合可能な多官能(メタ)アクリレートとの共重合による架橋は、熟成工程が不要となるので好ましい。
【0022】
共重合可能な多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ―トなどの多官能(メタ)アクリレートがある。また、極性基と反応する官能基を有する架橋剤には、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフエニルメタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート系架橋剤、ポリエチレングリコ―ルジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。
【0023】
(粘着付与樹脂)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体で使用する粘着剤層に用いられる上記アクリル共重合体には、必要に応じ粘着付与樹脂を添加しても良い。粘着付与樹脂としては、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられるが、本発明では光重合法を用いて粘着体を作成するので、粘着付与樹脂中の二重結合による重合阻害を防止するために、二重結合が少なく阻害を起こしにくい粘着付与樹脂を用いる。例えば、高度に不均化したロジンエステルや、高度に水素添加をして二重結合を少なくしたロジンエステルやクマロン−インデン樹脂、テルペンフェノール樹脂、分子骨格に二重結合部位をもたないアクリル系樹脂、飽和脂肪族樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記の組成物に紫外線や放射線などを照射して、光重合物とする。例えば紫外線の照射は、窒素ガスなどの不活性ガスで置換した酸素のない雰囲気中で行うか、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線透過性フィルムによる被覆で空気を遮断した状態で行う。紫外線は、波長範囲が180〜460nmの電磁放射線であるが、これより長波長または短波長の電磁放射線を用いてもよい。紫外線源には、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀ランプ、中・高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライトランプなどの通常の照射装置が用いられる。紫外線の強度は、被照射体までの距離や電圧の調整により適宜設定できるが、通常は、被照射体面で0.1〜100mW/cm 、好ましくは0.3〜20mW/cm光を用いるのが望ましい。紫外線の照射は塗工面の片側又は両側から照射するが、組成物に熱伝導性粒子が配合されているので、生産性などの面から両側から照射することが好ましい。また、放射線としては、活性エネルギー線で、α線、β線、γ線、中性子線、加速電子線のような電離性放射線が用いられ、照射量は1〜10Mrad程度が好ましい。なお、紫外線と放射線を併用してもよい。
【0025】
(塗工法・厚さ)
本発明は、このように形成される光重合物を、常態で感圧接着性を有し、かつ熱伝導性や難燃性などが良好なアクリル系の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体としたものである。本発明の粘着シートは、剥離ライナ上に前記の組成物を塗布し、紫外線や放射線を照射して、光重合物からなる難燃性熱伝導電気絶縁粘着体を形成することにより製造できる。
【0026】
具体的には、組成物をロールコーターやダイコーター等で離型処理したポリエチレンテレフタレート製のフィルム(セパレーター)等に塗布する方法で行う。難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の厚さは、0.1mm〜5mm、好ましくは0.5mm〜2mmである。なお、本発明の組成物は、支持体を有する粘着シート状に加工することもできる。
【0027】
本発明に使用する難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の90°ピール接着力は、0.5N/25mm以上であることが好ましい。0.5N/25mm未満であると、例えば、CPU等の電子部品とヒートシンク等との接合界面に、せん断方向や割裂方向に負荷が掛かるような装着をした場合、経時で剥がれが発生する。このような場合、CPU等の発熱体からシートシンクへの熱伝導が阻害される。
【0028】
(熱伝導率・難燃性)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の熱伝導率は、熱の放散性を十分発現させるために、1W/m・K以上、好ましくは1.5W/m・Kである。難燃性は、着火・延焼の危険性を排除する面からUL94VTM−0 を満足する事が好ましい。
【0029】
(用途)
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体は、半導体やCPU等の電子部品やプラズマディスプレイパネル等の発熱体と、アルミ製ヒートシンク等の放熱部品との接着固定をする用途に使用することができる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例について具体的に説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
[難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の調製]
2−エチルヘキシルアクリレート95質量部、アクリル酸5質量部に対して、光重合開始剤イルガキュア2020[チバスペシャリティケミカル社製]0.3質量部、平均粒径20〜200μmの金属酸化物粒子として平均粒径39μmの球状アルミナ[昭和電工(株)製、AS−10]を250質量部、平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子として、平均粒径8μmの水酸化アルミニウム[昭和電工(株)製、ハイジライトH−32]を150質量部、リン酸エステル系分散剤[楠本化成社製、PW−36]3.0質量部、架橋剤トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部、酸化防止剤イルガノックス1010[チバスペシャリティケミカル社製]1.0質量部を添加し均一になるまで充分攪拌し組成物を調整した。この組成物は、部分重合などのシロップ化を行わなくても良好な塗工適性を有していた。この組成物を脱泡処理後、シリコーン離型処理した厚さ75μmのポリエステルフィルムに硬化後の厚さが1mmになるようにアプリケーターで塗工し、シリコーン離型処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムで被覆したのち、20Wの蛍光ケミカルランプで塗工面の両側から、それぞれ被照射面での照射強度が1.0mW/cmの紫外線を5分間照射し、粘着シート状態で重合させ、難燃性熱伝導電気絶縁粘着シートを得た。
【0032】
(比較例1)
[難燃性粘着体の調整]
ブチルゴム100質量部、石油系粘着付与樹脂10質量部、プロセスオイル5質量部、及び平均粒径26μmの水酸化アルミニウム[昭和電工(株)製、ハイジライトH−21]を300質量部、平均粒径8μmの水酸化アルミニウム[昭和電工(株)製、ハイジライトH−32]を100質量部を金属ローラーで混錬した。次にベント式押し出し機で1mm厚のシート状に成形し、難燃性粘着シートを得た。
【0033】
実施例、比較例の粘着体は離型処理したポリエステルフィルムを剥離し熱伝導率、難燃性、接着力、体積固有抵抗、実装試験を実施し結果を表1に記した。
【0034】
〔熱伝導率〕
実施例、比較例の粘着体を5cm×15cmの大きさに切断し、厚みが約2cmになるまで積層し試験片とした。23℃±2℃の雰囲気温度で、迅速熱伝導率計QTM500(京都電子工業社製)を使用して、熱伝導率を測定した。
【0035】
〔難燃性〕
UL規格(UL94「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験方法」)に準じ、燃焼性試験を行い判断した。「VTM−0」、「VTM−1」は以下の燃焼程度を示す基準である。
【0036】
フィルム状の試料を円筒型に保持し、1組5枚の試料に対して各試料につき3秒間の接炎を2回行い、その場合の燃焼時間の合計、燃焼距離、熱による貫通の有無により下記の如く、クラス分類する。VTM−0 は、VTM−1 よりも燃焼しにくいことを意味する。
【0037】
燃焼クラス判定基準            VTM−1    VTM−0
各試料の残炎燃焼時間−−−−−−−−−− ≦30秒    ≦10秒
5枚の試料の燃焼時間合計 −−−−−−−− ≦250秒   ≦50秒
第2回接炎後の残炎時間+無炎燃焼時間 −− ≦60秒    ≦30秒
滴下物による綿への着火の有無−−−−−−  なし     なし
クランプまでの残炎又は無炎燃焼の有無−−  なし     なし
【0038】
〔接着力〕
厚さ50μmのアルミ箔で一方の粘着面を裏打ちした25mm×100mmの粘着体サンプルを、アルミ板に2kgローラー1往復加圧貼付し、室温で1時間放置後、90°方向に剥離速度300mm/minで引き剥がし接着力を測定した。
【0039】
〔体積固有抵抗値〕
超絶縁/微少電流計 TR8601(タケダ理研(株)製)で測定した。測定温度は30℃、測定電圧は500V・60秒とした。
【0040】
〔実装試験〕
実施例、比較例の粘着体25mm×25mmを、CPUと重さ100gのアルミニウムヒートシンクとの間に挟み、一定の圧力をかけてCPUに押しつけて、アルミニウムヒートシンクの荷重が熱伝導粘着シートのせん断方向にかかるように垂直方向に設置し、CPUに7.0Vの電圧を印加した。24時間後、アルミニウムヒートシンクの装着状態を確認した。
【0041】
評価基準
○:剥がれ無し、△:50%剥がれ、×:アルミヒートシンクが脱落
【0042】
【表1】
Figure 2004027039
【0043】
実施例1の難燃性熱伝導電気絶縁粘着シートは、粒径の大きい酸化アルミニウム粒子が高い熱伝導率を発揮し、粒径の小さい水酸化アルミニウム粒子が、前記酸化アルミニウム粒子の隙間に分散、充填されるため、接着力、電気絶縁性を維持したまま、UL規格で高い難燃性(VTM−0)を示した。また接着力が高いため、実装試験においても剥がれが生じなかった。
【0044】
一方、比較例1の難燃性粘着シートは、粒径の大きい水酸化アルミニウム粒子と粒径の小さい水酸化アルミニウム粒子を含有している。しかし、高粘度のゴム状ポリマーに混練しているため、分散性が十分でなく最適の充填がなされていない。また、混練の過程で、粒径の大きい水酸化アルミニウムが潰され、結果的に小さい粒子の水酸化アルミニウムが増えて意図した熱伝導性が発揮できない。また得られた難燃性粘着体は、水酸化アルミニウムを高充填しているためブチルゴム本来の粘着性を発揮できない。このため難燃性と熱伝導性を示しはするものの、実施例1に比較して接着性、熱伝導性のいずれもが劣っている。接着性は実装試験においてアルミヒートシンクが落下したように、十分なものではない。
【0045】
以上のように、実施例1の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体(粒子総量:400部)は、比較例1の難燃性粘着体(粒子総量:400部)と同じ量の粒子を含有しているにもかかわらず、比較例1よりも高い熱伝導率、難燃性及び高い接着力を同時に有する。
【0046】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体は、特に難燃性と熱伝導性に優れ、且つ電気絶縁性と充分な接着性を併せ持つため、電子部品やプラズマディスプレイ等の家電製品の発熱体と、ヒートシンク等の放熱体との接合用の熱伝導性粘着体として有用である。

Claims (5)

  1. i) 炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート系単量体と、
    ii) 金属酸化物、水和金属化合物及び金属窒化物からなる群から選ばれた平均粒径が20〜200μmの粒子と、
    iii) 平均粒径10μm以下の水和金属化合物の粒子と、
    iv) 光重合開始剤と
    を含有する組成物の光重合物であることを特徴とする難燃性熱伝導電気絶縁粘着体。
  2. 前記(メタ)アクリレート系単量体100質量部に対して、前記ii)の粒子を50〜400質量部含有し、前記iii) の粒子を100質量部以上含有する請求項1記載の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体。
  3. 前記組成物が分子内に極性基を有する共重合性単量体を含有する、請求項1〜2のいずれかに記載の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体。
  4. 前記組成物が前記ii)、iii) の粒子の総量に対して0.02〜5.0質量%の分散剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性熱伝導電気絶縁粘着体。
  5. 前記難燃性熱伝導電気絶縁粘着体の厚みが0.1〜5mmで、熱伝導率が、1W/m・K以上で、難燃性が UL94VTM−0 を満足する請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性熱伝導電気絶縁粘着シート。
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