JP2004018422A - 脂環式スピロ酸二無水物及びその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、式[1]で表される4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、又その製造における中間体である式[2]及び式[3]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン化合物及びそれらの製造法に関する。
(式中、破線部を含む炭素間結合は単結合又は二重結合を表し、各R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂環式スピロ酸二無水物及びその製造法に関する。更に詳しくは式[1]
【0002】
【化27】
【0003】
で表される4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)(以下、ODSFと略記する。)、及びその製造における中間体化合物並びにそれらの製造法に関する。
【0004】
ODSFは、ポリイミドやエポキシ硬化剤等のモノマーとして溶媒に対する溶解性や光透過性等の点で新しい用途が期待される。
【0005】
【従来の技術】
ODSFは、従来合成されたことのない新規な化合物である。従来電子機器分野等に広く用いられて来たポリイミドの主なテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸であり、その芳香族性のために樹脂が着色し光学性分野の用途には限界があった。また、そのポリイミドは耐熱性は高いものの溶媒に対する溶解性がなく加工性にも問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光を用いた電子材料分野等にも耐熱性の高いポリイミドの使用が要望されて来た。本発明の目的は、紫外線領域に吸収がなく光透過性が高く、更に加工性が改善され、溶媒に対する溶解性に優れた液晶配向膜や光通信用光導波路等の光学材料用ポリイミドの原料モノマーとなり得る脂環式テトラカルボン酸二無水物及びそのポリイミドの提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題の特に有機溶媒に対する溶解性を解決する目的でスピロ構造を有する新規脂環式テトラカルボン酸二無水物の合成研究を鋭意重ねた結果、シクロオレフィンジカルボン酸無水物とアセチレンジカルボン酸ジアルキルからシクロテトラカルボン酸誘導体を得、更に新規なODSFヘ誘導する方法を見い出した。
【0008】
即ち,本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1) 式[1]
【0009】
【化28】
【0010】
で表される4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)に関する。
(2) 式[2]
【0011】
【化29】
【0012】
(式中、破線部を含む炭素間結合は単結合又は二重結合を表し、各R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−スピロテトラカルボン酸モノ無水物化合物又はトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−7−スピロテトラカルボン酸モノ無水物化合物に関する。
(3) 式[3]
【0013】
【化30】
【0014】
(式中、破線部を含む炭素間結合は単結合又は二重結合を表し、各R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−(3−エン)−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸化合物及びそれらのアルキルエステル化合物に関する。
(4) 式[4]
【0015】
【化31】
【0016】
で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)と式[5]
【0017】
【化32】
【0018】
(式中、各R2はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表されるアセチレンジカルボン酸ジアルキルをルテニウム触媒を用いることを特徴とする式[6]
【0019】
【化33】
【0020】
(式中、R2は前記と同じ意味を表す。)
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物の製造法に関する。
(5) 前記式[6]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物を還元することを特徴とする式[7]
【0021】
【化34】
【0022】
(式中、R2は前記と同じ意味を表す。)
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物の製造法に関する。
(6) 上記式[7]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物を、加水分解又は有機酸分解することを特徴とする式[8]
【0023】
【化35】
【0024】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)又は式[9]
【0025】
【化36】
【0026】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸の製造法に関する。
(7) 前記式[8]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)又は前記式[9]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸を脱水することを特徴とする式[1]
【0027】
【化37】
【0028】
で表される4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)の製造法に関する。
(8) 式[6]
【0029】
【化38】
【0030】
(式中、R2は前記と同じ意味を表す。)
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物を加水分解、又は有機酸分解し、式[10]
【0031】
【化39】
【0032】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)又は式[11]
【0033】
【化40】
【0034】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸を得た後、これを還元することを特徴とする式[8]
【0035】
【化41】
【0036】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)又は式[9]
【0037】
【化42】
【0038】
で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸の製造法に関する。以下本発明を詳細に説明する。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の前記式[2]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−スピロテトラカルボン酸モノ無水物化合物又はトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−7−スピロテトラカルボン酸モノ無水物化合物は、具体的には、以下の4種の化合物を表す。
▲1▼前記式[6]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物(NESF化合物と略す)。
▲2▼前記式[7]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物(NASF化合物と略す。)
▲3▼前記式[10]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)(NECFと略す)。
▲4▼前記式[8]で表されるトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)(NCAFと略す)。
【0040】
本発明の4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)(ODSF)の製造法は、下記のルートで表される。
【0041】
【化43】
【0042】
(式中、R2は前記と同じ意味を表す。)
第1工程の付加反応から順に説明する。
【0043】
式[4]のビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)(BHSFと略す)は、イタコン酸無水物とシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンとのディ−ルズ・アルダ−反応による公知の方法で容易に製造される(Ann.,1928,460,98;J.Am.Chem.Soc.,1957,79,6519)。
【0044】
式[5]のアセチレンジカルボン酸ジアルキル化合物(DMA化合物と略す)としては、種々の化合物が使用できる。例えば、具体的には、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、ジエチルアセチレンジカルボキシレート、ジプロピルアセチレンジカルボキシレート、ジブチルアセチレンジカルボキシレート、ジペンチルアセチレンジカルボキシレート、ジヘキシルアセチレンジカルボキシレート、ジシクロペンチルアセチレンジカルボキシレート及びジシクロヘキシルアセチレンジカルボキシレート等が挙げられる。
【0045】
触媒として用いる周期律表第8族金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、鉄、ニッケル及びコバルト等である。特に好ましいのはルテニウムである。触媒の形態としては、金属錯体、金属塩、金属単身、担持金属及び金属酸化物等が使用できる。
【0046】
金属錯体としては、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)金属、ジヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ハロゲノヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノトリス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノテトラキス(トリフェニルホスフィン)金属、ジハロゲノビスベンゾニトリル金属、トリス(アセチルアセトナト)金属、ジハロゲノシクロジエン金属、ホルマトジカルボニル金属、ドデカカルボニル三金属、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)金属及びテトラキストリフェニルホスフィン金属等が使用できる。
【0047】
更に、具体的にはジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヨウドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ジクロロ(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ホルマトジカルボニルルテニウム及びドデカカルボニル三ルテニウム、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等が挙げられる。
【0048】
これらの金属錯体の触媒の中で好ましいのは、空気中で安定で経済的な式[12]
【0049】
【化44】
【0050】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは3又は4を表す。)
で表されるジハロゲノトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、又はジハロゲノテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムであり、より具体的にはジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヨウドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジブロモテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム及びジヨウドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
【0051】
金属塩としては、塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸等の鉱酸塩、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸塩が挙げられる。中でも好ましいのは、式[13]
【0052】
【化45】
【0053】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表されるトリハロゲノルテニウムで、具体的には三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三沃化ルテニウム等が挙げられる。実用的には安価な三塩化ルテニウム及び三臭化ルテニウムが挙げられる。
【0054】
担持金属としては、炭素、アルミナ及び珪藻土等の担体に担持させた金属が使用できる。具体的にはルテニウム/活性炭、ルテニウム/アルミナ、パラジウム/活性炭等である。金属単身としては、ルテニウム黒及びパラジウム黒である。更に金属酸化物としては、ルテニウム黒及びパラジウム黒である。
【0055】
触媒の使用量は、原料のノルボルナジエンに対し、0.1〜30モル%、特には、0.5〜20モル%が好ましい。
【0056】
また、前記式[13]で表されるトリハロゲノルテニウムはトリフェニルホスフィン存在下で使用することもできる。トリハロゲノルテニウムとしては、三塩化ルテニウム及び三臭化ルテニウムが好ましい。トリフェニルホスフィンの添加量は、トリハロゲノルテニウムに対して1〜10モル当量が好ましく、特には3〜6モル当量が好ましい。
【0057】
本反応では溶媒を使用しなくとも、反応は進行するが、使用する事もできる。溶媒としては例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン及びキュメン等の芳香族炭化水素類及びテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、12−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル等の環状エーテル類等が特に好ましいが、他の溶媒例えばヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素類でも進行する。特にはアミド系溶媒が好ましい。更にこれらの溶媒を組み合わせて使用することもできる。
【0058】
その使用量は、溶媒量が多くなると反応進行が遅くなるが、無溶媒では、反応進行に伴い高粘稠になることから、BHSFに対し1〜20質量倍、特には1〜10質量倍が経済的にも好ましい。また、本反応の原料であるBHSFやジアルキルアセチレンジカルボキシレートの反応中の重合を抑制するために重合禁止剤を添加することもできる。
【0059】
重合禁止剤としては例えば、ジフェニルピクリルヒドラジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0060】
重合禁止剤の添加量は、BHSFやジアルキルアセチレンジカルボキシレートに対して0.01〜1モル%が好ましい。
【0061】
前記式[6]で表されるNESF化合物を得る反応方法は、反応溶媒中にルテニウム触媒と、前記式[4]で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン(BHSF)を加えて反応温度に昇温してから前記式[5]で表されるアセチレンジカルボン酸ジアルキル(DMA化合物)を滴下して仕込む方法が好ましい。その理由は、反応熱の制御とDMA化合物の重合副生物の抑制のためである。基質や触媒と同時にDMA化合物を仕込んでから昇温すると、重合物を副生し発熱が激しく危険な場合があり好ましくない。
【0062】
反応温度は、高温ほど反応が速いが重合等の副反応を伴うので、通常50〜200℃の範囲、好ましくは60〜180℃の範囲である。
【0063】
このBHSF1モルとジアルキルアセチレンジカルボキシレート1モルの付加反応で得られる目的の前記式[6]で表されるNESF化合物とジアルキルアセチレンジカルボキシレート3モルから得られるヘキサ(アルコキシカルボニル)ベンゼンや未反応原料との分離は、再結晶法やカラムクロマトグラフィー法で精製した後、次の第2工程の還元反応や第5工程の加水分解反応に用いられる。
【0064】
次に第2工程のNESF化合物(前記式[6])の前記式[7]のNASF化合物への還元反応は、二重結合を単結合に変換する種々の一般的還元法が適用できる。
【0065】
例えば、(1)金属および金属塩による還元、(2)金属水素化物による還元、(3)金属水素錯化合物による還元、(4)ジボランおよび置換ボランによる還元、(5)ヒドラジンによる還元、(6)ジイミド還元、(7)リン化合物による還元、(8)電解還元及び(9)接触還元等を挙げることができる。
【0066】
これらの中で、最も実用的方法は接触還元方法である。本発明で採用できる接触還元法は以下の通りである。触媒金属としては、周期律表第8族のパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、ニッケル、コバルト及び鉄、又は第1族の銅等が使用できる。これらの金属は単独で、又は他の元素と複合させた多元系で使用される。それらの使用形態は、各金属単身、ラネー型触媒、ケイソウ土、アルミナ、ゼオライト、炭素及びその他の担体に担持させた触媒及び錯体触媒等が挙げられる。
【0067】
具体的には、パラジウム−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−炭素、白金−炭素、パラジウム−アルミナ、ルテニウム−アルミナ、ロジウム−アルミナ、白金−アルミナ、還元ニッケル、還元コバルト、ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅、酸化銅、銅クロマト、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム及びヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものはパラジウム−炭素及びルテニウム−炭素等である。
【0068】
触媒の使用量は、5%金属担持触媒として基質に対し0.1〜30質量%が、特には、0.5〜20質量%が好ましい。溶媒は、メタノール、エタノール及びプロパノール等に代表されるアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等に代表されるエーテル類及び酢酸エチル及び酢酸プロピル等に代表されるエステル類等が使用できる。
【0069】
その使用量は、原料に対し1〜50質量倍の範囲が、特には、3〜10質量倍の範囲が好ましい。水素圧は常圧から10MPa(100kg/cm2)の範囲が、特には、常圧から5MPa(50kg/cm2)の範囲が好ましい。反応温度は、0〜150℃の範囲が、特には、10〜100℃の範囲が好ましい。
【0070】
反応は、水素吸収量によって追跡することができ、理論水素量の吸収後サンプリングしガスクロマトグラフィーで分析し確認することができる。本反応は、回分式でも連続反応でも可能である。反応後は、濾過により触媒を除いた後、濃縮後、再結晶法又はカラムクロマトグラフィー法で精製することができる。
【0071】
又、第6工程の前記式[11]のトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸(NETCと略す)又は前記式[10]のNECFの還元反応も上記と同様に行うことができ、前記式[9]のトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸(NATCと略す)又は前記式[8]のNCAFが高収率で得られる。
【0072】
次に第3工程の前記式[7]のNASF化合物より前記式[9]のNATCへの加水分解反応条件は、通常のアルキルエステルを加水分解してアルキルカルボン酸にする方法が適用できる。一法として、塩基による方法が高収率である。塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を用いるのが経済的に好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等であり、特には、水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0073】
その使用量は、基質に対し2〜3当量が、特には2〜2.4当量が好ましい。溶媒としては、アルコールと水の混合系が一般的である。アルコールの種類としては、メタノール、エタノール及びプロパノール等の低級アルコールが好ましい。その使用量は、基質に対し、1〜20質量倍が、特には、2〜10質量倍が好ましい。水の添加量は、基質に対し0.1〜20質量倍が特には、1〜10質量倍が好ましい。アルコールと水の混合比は、質量比で1対20から20対1の間で選択でき、特には1対5から5対1間で選択するのが好ましい。
【0074】
反応後は、アルコールを留去した後、水を加えてから酸沈させてNATCの粗結晶が得られる。これを再結晶法又はカラムクロマトグラフィー法で精製することにより、NATCの純品が得られる。
【0075】
もう一法として、酸による方法も高収率でNATCを与える。酸の種類としては、塩酸、硫酸及び燐酸等の無機酸類、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸等の脂肪酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。これらの中で、蟻酸による方法が簡便である。その使用量は、NASF化合物に対して2モル当量以上が好ましく、副生する蟻酸メチルを蟻酸の一部に同伴させて留出さることが反応促進させることから、蟻酸は10〜50モル当量の過剰量存在させることが好ましい。生成物のNATC又はNCAFは、結晶として析出するので、反応終了後ろ過により単離することができる。あるいは、反応終了後のNATC又はNCAF・蟻酸スラリーをそのまま次の脱水工程に供することができる。
【0076】
又、第5工程のNESF化合物の塩基又は酸によるNETC又はNECFへの加水分解反応も同様にして行うことができ、NETC又はNECFが高収率で得られる。
【0077】
次に、第4工程のNETC又はNECFのODSFへの脱水法について述べる。脱水剤としては、例えば脂肪族カルボン酸無水物、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCと略記)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMCと略記)等が用いられるが、好ましくは安価な脂肪族カルボン酸無水物、特に無水酢酸が用いられる。使用量は、NETC又はNECFに対し1〜20当量、好ましくは1〜5当量である。
【0078】
溶媒は、脱水剤自身を過剰量加えて使用する場合もあるが、反応に直接関与しない有機溶媒を用いることもできる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類、更に1,4−ジオキサン等が挙げられる。使用量は、NATC(NCAF)に対し1〜20質量倍、好ましくは1〜10質量倍である。
【0079】
反応温度は、通常脱水剤又は溶媒の沸点付近で行うのが一般的であるが、50〜200℃間で行うことができる。より好ましくは、60〜150℃である。反応時間は、反応温度との相関になるが、実用的には、1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。本反応は、常圧又は加圧で行うこともでき、又回分式又は連続式でも可能である。
【0080】
反応後、脱水剤を、場合により溶媒も一緒に留去すると高純度のODSFが得られる。必要に応じ、再結晶法により精製することもできる。
【0081】
又、前述した様に前工程で蟻酸を用いる場合は、その反応混合物であるNATC(NCAF)・蟻酸スラリーをそのまま次の脱水工程に供し、蟻酸や副生する酢酸(脱水剤として無水酢酸を用いた場合)を、場合により共存させた有機溶媒と共に留去させながら転化率を上げて、目的のODSFを得ることができる(第3工程・第4工程ワンポット法)。
【0082】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【実施例】
実施例1(第1工程)
【0084】
【化46】
【0085】
100mlガラス製四つ口反応器に、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(BHSF)5.34g(30mmol)、RuCl2(PPh3)31.15g(4mol%)及び1,4−ジオキサン16gを仕込み110℃油浴で攪拌しながら加温した。内温91℃になってからジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMA)4.69g(33mmol)を1.5時間かけて滴下した。7時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSFが残余していた。そこで更にDMA4.69g(33mmol)を1.5時間かけて滴下し、内温91℃で16時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSFが消失した。反応終了後濃縮してから残渣にメタノールを加え加温し溶解後、冷却した。結晶が晶析したので、濾過、メタノール洗浄、乾燥すると純度96.4%の褐色結晶7.00g(収率70.3%)が得られた。
【0086】
この結晶を1,4−ジオキサンに溶解し、不溶分をセライト濾過除去してからやや濃縮後メタノールを加え冷却した。晶析した結晶を濾過、メタノール洗浄、乾燥すると純度99.6%の褐色結晶3.7gが得られた。
【0087】
この結晶の構造は、下記の分析結果からトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(NESF)であることを確認した。
【0088】
MASS(FAB+,m/z):321([M+H]+,92),289(100),129(60).
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.23(dd,J1=3.05Hz,J2=12.82Hz,1H),1.51(d,J=11.91Hz,1H),2.16(d,J=11.91Hz,1H),2.35(dd,J=4.58Hz,J2=12.82Hz,1H),2.42(d,J=4.28Hz,1H),2.53(s,1H),2.75(dd,J1=7.64Hz,J2=10.69Hz,2H),2.86(d,J=2.75Hz,1H),3.11(d,J=18.64Hz,1H),3.75(d,J=6.41Hz,6H).
13C−NMR(125MHz,CDCl3,δppm):29.76,34.49,38.20,41.50,42.34,42.44,45.66,50.10,52.06(2),140.39,142.60,160.74,160.86,168.97,176.11.
Mp.(℃):130〜131.
【0089】
実施例2(第1工程)
100mlガラス製四つ口反応器に、RuCl3・3H2O0.53g(4mol%)、トリフェニルホスフィン1.57g(12mol%)及び1,4−ジオキサン27gを仕込み内温84℃(油浴90℃)で2時間攪拌した。続いてBHSF8.90g(50mmol)を添加してから、DMA14.2g(100mmol)を2時間かけて滴下した。内温84℃(油浴90℃)で20時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSF26.3%が残余しNESFが73.7%生成していた。そこで更に内温を103℃(油浴120℃)に昇温し20時間攪拌した結果、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSF9.4%が残余しNESFが90.6%生成していた。
【0090】
実施例3(第1工程)
100mlガラス製四つ口反応器に、BHSF5.34g(30mmol)、RuCl3・3H2O0.314g(4mol%)及び1,4−ジオキサン17gを仕込み内温100℃(油浴130℃)でDMA8.5g(60mmol)を45分かけて滴下した。更に内温100℃(油浴130℃)で24時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSF9.5%が残余し、NESFが90.5%生成していた。反応後濃縮してから得られた残渣にトルエンを加えて加温溶解させた。不溶分は濾過にて除去した後、濾液を濃縮すると油状物10.2gが得られた。酢酸エチルとn−ヘプタンから晶析させるとNESF4.12gが得られた。
【0091】
実施例4(第1工程)
100mlガラス製四つ口反応器に、BHSF5.34g(30mmol)、RuCl3・3H2O0.314g(4mol%)及び1,4−ジオキサン48gを仕込み内温100℃(油浴120℃)でDMA6.4g(45mmol)を1時間かけて滴下した。更に内温100℃(油浴120℃)で6時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSF26.9%が残余し、NESFが73.1%生成していた。そこで更にDMA2.13g(15mmol)を滴下し、内温100℃(油浴120℃)で20時間攪拌後、ガスクロマトグラフィー分析すると未反応BHSF6.2%が残余し、NESFが93.8%生成していた。反応後濃縮してから得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/n−ヘプタン)で主留分8.69gを得た。この留分を酢酸エチルとn−ヘプタンから晶析させるとNESF4.63gが得られた。
実施例5(第2工程)
【0092】
【化47】
【0093】
100mlハステロイ製オートクレーブに、NESF2.20g(6.87mmol)、5%Pd/C(54.4%含水品)0.20g(4.1質量%)、及び酢酸エチル22gを仕込んだ後、窒素置換後水素初圧3MPaで撹拌を開始しながら昇温し、80℃で4時間反応させた。室温まで冷却すると結晶が析出していたので、1,4−ジオキサンを加えて溶解してから、濾過により触媒を除去してから濃縮・乾燥させると、ガスクロマトグラフィー分析で原料と異なる単一成分の白色結晶1.80g(5.59mmol)(収率81.4%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(NASF)であることを確認した。
【0094】
MASS(FAB+,m/z):323([M+H]+,49),289(100),113(40).
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.09(dd,J1=2.90Hz,J2=12.98Hz,1H),2.18(dd,J1=1.22Hz,J2=12.23Hz,1H),2.21(dd,J1=4.78Hz,J2=13.03Hz,1H),2.31(d,J=12.22Hz,1H),2.52(t,J=7.33Hz,1H),2.65〜2.71(m,3H),2.85(s,1H),2.97(d,J=18.33Hz,1H),3.62(d,J=2.75Hz,6H),3.63〜3.66(m,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl3,δppm):33.65,37.85,38.27,38.63,39.07,39.90,41.44,42.11,45.53,50.05,51.44,51.59,169.26,170.71,170.79,176.03.
Mp.(℃):136〜137.
【0095】
実施例6(第2工程)
100mlハステロイ製オートクレーブに、NESF4.10g(12.8mmol)、5%Pd/C(54.4%含水品)0.36g(4.0質量%)及び酢酸エチル41gを仕込んだ後、窒素置換後水素初圧5MPaで撹拌を開始しながら昇温し、80℃で8時間反応させた。室温まで冷却すると結晶が析出していたので、1,4−ジオキサンを加えて溶解してから、濾過により触媒を除去してから濃縮、乾燥させると、NASF結晶4.080g(12.6mmol)(収率98.4%)が得られた。
【0096】
実施例7(第3工程)
【0097】
【化48】
【0098】
50mlガラス製四つ口反応器に、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ビス(メトキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(NASF)1.78g(5.5mmol)、パラトルエンスルホン酸0.089g(5質量%)及びギ酸17.8gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら120℃油浴で1時間還流させた後、水分離器から生成したギ酸メチルとギ酸の一部を3時間かけて留去させた。一夜室温で放冷すると結晶が析出した。これを濾過後トルエン洗浄し、更に乾燥させると白色結晶1.24g(4.21mmol)(収率77.2%)が得られた。この結晶に水とメチルエチルケトン(MIBK)を加え加温溶解後、水層を濃縮、乾燥すると白色結晶1.2gが得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸(NATC)であることを確認した。
【0099】
MASS(FAB−,m/z):311([M−H]+,72),171(100).
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):0.781(dd,J1=2.14Hz,J2=2.83Hz,1H),1.48(d,J=11.00Hz,1H),2.04(d,J=11.00Hz,1H),2.19(dd,J1=4.73Hz,J2=12.98Hz,1H),2.37〜2.51(m,4H),2.64(s,1H),2.74(t,J=7.79Hz,1H),3.50〜3.62(m,2H),12.08(brs,4H).13C−NMR(125MHz,CDCl3,δppm):32.79,36.75,37.36,38.76(2),39.59,40.18,40.99,44.36,49.38,172.25,172.58,172.87,177.28.
Mp.(℃):189〜190.
実施例8(第5工程)
【0100】
【化49】
【0101】
50mlガラス製四つ口反応器に、NESF1.80g(5.6mmol)、パラトルエンスルホン酸0.18g(5質量%)及びギ酸36gを仕込んだ後、撹拌を開始しながら130℃油浴で4時間還流させた後、水分離器から生成したギ酸メチルとギ酸を留去させ結晶が析出した。更にメチルエチルケトン30gを加えて室温で攪拌してから濾過し、更に乾燥させると白色結晶1.10g(3.76mmol)(収率67.3%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果からトリシクロ[4.2.1.02,5]ノネ−3−エン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン(NECF)であることを確認した。
【0102】
MASS(FAB−,m/z):293([M+H]+,80),275(46),185(100),92(100),74(87).
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):1.35〜1.39(m,2H),1.96(d,J=11.00Hz,1H),2.13(dd,J1=4.74Hz,J2=12.99Hz,1H),2.24(d,J=4.28Hz,1H),2.50(t,J=1.68Hz,1H),2.75(d,J=3.05Hz,1H),2.92〜2.97(m,2H),3.28(d,J=18.64Hz,1H),11.80(brs,2H).
13C−NMR(125MHz,CDCl3,δppm):29.28,33.95,37.77,41.09,41.55,42.13,44.74,49.83,141.98,143.04,162.60,162.68,170.90,177.54.
Mp.(℃):270〜272.
【0103】
実施例9(第6工程)
【0104】
【化50】
【0105】
100mlハステロイ製オートクレーブに、NECF1.46g(5.00mmol)、5%Pd/C(54.4%含水品)0.16g(5.0質量%)、及び酢酸エチル44gを仕込んだ後、窒素置換後水素初圧5MPaで撹拌を開始しながら昇温し、80℃で6時間反応させた。室温まで冷却すると結晶が析出していたので、1,4−ジオキサンを加えて溶解してから、濾過により触媒を除去してから濃縮・乾燥させると、白色結晶1.40g(4.76mmol)(収率95.2%)が得られた。
【0106】
この結晶の構造は、下記の分析結果からトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(NCAF)であることを確認した。
MASS(FAB−,m/z):293([M−H]+,100),249(36),177(25),111(15).
1H−NMR(500MHz,d6−DMSO,δppm):1.24(dd,J1=1.83Hz,J2=12.83Hz,1H),2.00(dd,J1=4.58Hz,J2=12.83Hz,1H),2.07(d,J=9.16Hz,1H),2.25(d,J=11.31Hz,1H),2.45〜2.49(m,2H),2.66(d,J=8.55Hz,1H),2.84(d,J=18.02Hz,2H),3.16(d,J=18.33Hz,1H),3.60(t,J=4.28Hz,2H),12.11(brs,2H).
13C−NMR(125MHz,d6−DMSO,δppm):37.40,37.54,38.25,38.70,39.92,40.44,42.00,49.75,66.37,170.96,172.07,172.23,177.54.
Mp.(℃):213〜214.
実施例10(第4工程)
【0107】
【化51】
【0108】
50mlガラス製四つ口反応器に、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸(NATC)1.03g(3.30mmol)及び無水酢酸10.2g(100mmol)を仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し120℃油浴で4時間還流させた。終了後、氷冷すると結晶が析出した。この結晶を濾過、トルエン洗浄後乾燥させると、白色結晶0.520g(1.88mmol)(収率57.1%)が得られた。この結晶の構造は、下記の分析結果から4−オキサテトラシクロ[5.4.0.02,6.18,11]ドデカン−3,5−ジオン−9−スピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(ODSF)であることを確認した。
【0109】
MASS(FAB−,m/z):275([M−H]+,21),171(100).
1H−NMR(500MHz,d6−DMSO,δppm):1.30(dd,J1=2.90Hz,J2=12.98Hz,1H),1.67(dd,J1=1.22Hz,J2=13.14Hz,1H),2.01〜2.05(m,1H),2.22(d,J=13.14Hz,1H),2.35(d,J=3.97Hz,1H),2.70(s,1H),2.83(dd,J1=6.87Hz,J2=9.62Hz,1H),2.90(d,J=18.33Hz,1H),3.05(t,J=8.25Hz,1H),3.20(d,J=18.33Hz,1H),3.73〜3.78(m,2H).
13C−NMR(125MHz,d6−DMSO,δppm):31.98,36.59,37.94,38.38,40.22,40.71,40.96,42.09,44.01,49.38,170.53,172.79,173.09,177.06.
Mp.(℃):251〜252
アセトニトリルに室温溶解。
【0110】
実施例11(第4工程)
50mlガラス製四つ口反応器に、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−7−カルボキシメチル−3,4,7−トリカルボン酸(NATC)1.56g(5.00mmol)及び無水酢酸20.4g(200mmol)を仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し125℃(130℃油浴)で2時間還流させた。終了後、濃縮してから残渣にトルエン30gを加えて加温し、再び濃縮した後残渣にトルエン15gを再び加えて加温後、結晶を熱濾過し、トルエン洗浄後乾燥させると、ODSFの白色結晶0.886g(3.21mmol)(収率64.2%)が得られた。
実施例12(第4工程)
【0111】
【化52】
【0112】
50mlガラス製四つ口反応器に、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4−ジカルボキシ−7ースピロ−3’−(テトラハイドロフラン−2’,5’−ジオン)(NCAF)0.98g(3.33mmol)及び無水酢酸10.2g(100mmol)を仕込んだ後、撹拌を開始しながら昇温し130℃油浴で4時間還流させた。終了後、濃縮してから残渣にトルエン30mlを加えて濃縮した。この操作を2回繰り返して粗結晶0.89gが得られた。この結晶をトルエンを加えて加温後熱濾過し、トルエン洗浄後乾燥させると、粗結晶0.890gが得られた。この結晶をトルエンを加えて加温後熱濾過し、トルエン洗浄後乾燥させると、白色結晶0.609g(1.94mmol)(収率66.3%)が得られた。この結晶はMASS、1H−NMRおよび13C−NMRから目的のODSFであることを確認した。
【0113】
【発明の効果】
紫外線領域に吸収がなく光透過性が高く、溶媒に対する溶解性に優れ加工性が改善された液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、更に光導波路等の光通信用材料としての用途が期待される光学材料用ポリイミドの原料モノマーとなり得る新規脂環式テトラカルボン酸二無水物を提供できる。
Claims (15)
- 反応溶媒が、なし、アミド系化合物又は環状エーテル化合物である請求項4乃至請求項7の何れかの請求項に記載のトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物の製造法。
- 反応温度が、60〜180℃である請求項4乃至請求項8の何れかの請求項に記載のトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−3−エン−3,4−ビス(アルコキシカルボニル)−7−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)化合物の製造法。
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