JP2004002757A - 湿気硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易に製造することが可能であり、建築物若しくは工業製品等のシーリング材若しくは接着剤等に用いた場合、長期にわたる優れた物性、或いは外観の維持が可能で、かつ、溶剤による環境への悪影響のない湿気硬化性組成物を得る。
【解決手段】高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された分子量700〜30,000のアクリル系重合体であって、且つ、1分子中に平均0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を含有することを特徴とする湿気硬化性組成物。
【選択図】なし
【解決手段】高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された分子量700〜30,000のアクリル系重合体であって、且つ、1分子中に平均0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を含有することを特徴とする湿気硬化性組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
建築物、若しくは、工業製品等に用いるシーリング材、或いは、接着剤等として使用した場合、長期にわたる優れた物性、或いは外観の維持等が可能な、加水分解性ケイ素基(以下、反応性ケイ素基ともいう)を有するアクリル系重合体、又は該アクリル系重合体及び加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する湿気硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物、若しくは、工業製品等に用いるシーリング材、或いは、接着剤としては、従来よりシリコーン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、若しくは変成シリコーン系等の湿気硬化性組成物が使用されている。
【0003】
近年、主として外装に使用する、金属系及び窯業系のパネル、若しくは、ボード等の目地、コンクリート目地、又はタイル接着等に、従来より、優れた耐候性を発現する材料が求められており、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)及び/又は加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含有する湿気硬化性組成物が用いられている。
【0004】
アクリル系重合体は、溶剤中、若しくは、水中における種々のラジカル重合性単量体を用いたラジカル重合法や塊状ラジカル重合法により得られることは良く知られており、商業的にも実施されている。1分子中に平均して0.5個以上の加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体も同様な方法で得られることが知られており、例えば、溶剤中で重合する方法は、特許文献1、特許文献2等に開示されている。
【0005】
しかし、シーリング剤や接着剤等として使用するために、前記の重合体を用いて、無溶剤液状の湿気硬化性組成物を作製しようとした場合、塊状重合法による重合体の場合は低分子量化が困難であり、溶剤中若しくは水中における重合法では良好なアクリル系重合体が得られるものの、大量の溶剤、水を用いるため、工程が煩雑になる上、現実的なプロセスで完全に溶剤や水分を除去するためには専用の脱揮工程を準備しなければならない問題があった。
【0006】
また、改善策として提案されているオキシアルキレン系重合体と混合した後、脱揮する方法の場合においては、加熱によりオキシアルキレン系重合体の劣化が起こるため、高温に上げることができず、溶剤が十分除去できないという問題があった。
【0007】
更に、上記の従来重合法では、室温における作業性に優れたアクリル系重合体を得るためには、比較的低分子量領域で分子量調整を行う必要があるが、高価なアゾ系若しくはパーオキサイド系の重合開始剤を大量に使用しなければならないため、高価格になるという問題があった。
【0008】
近年、高温・高圧下でラジカル重合を連続的に行う、いわゆる連続的ラジカル重合法が開発されているが、該重合法により加水分解性ケイ素基を含有する重合体を製造することは未だに検討されていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭54−36395号
【0010】
【特許文献2】特開昭58−157810号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体、または、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体と加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体との混合物を、溶剤脱揮等の複雑な工程を要することなく容易に製造することが可能であり、建築物若しくは工業製品等に用いるシーリング材或いは接着剤等として使用した場合、長期にわたる優れた物性或いは外観の維持等が可能で、かつ、残存溶剤による環境への悪影響のない湿気硬化性組成物を得ることを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を用いることにより、従来のアクリル系重合体を可塑剤として用いた場合にブリードアウト等の発生原因となっていた溶剤抽出成分を低減させた湿気硬化性組成物を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成され、且つ加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を用いた湿気硬化性組成物を用いることにより、従来技術では困難であった優れた耐候性、易生産性等が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明は、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された分子量700〜30,000のアクリル系重合体であって、且つ、1分子中に平均0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を含有することを特徴とする湿気硬化性組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、水酸基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に水酸基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、不飽和基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、前記の1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物の不飽和基と反応し得る基が、ヒドロシリル基、メルカプト基から選ばれる基であることを特徴とする重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0018】
更に好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物において、更に1分子中に少なくとも1個の加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含有する湿気硬化性組成物に関する。
【0019】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が、苛性アルカリを用いるアニオン重合法、オキシアルキレン系重合体を原料とした鎖延長反応方法、複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法、セシウム金属を触媒とする重合法またはポリフォスファゼン塩を触媒とする重合法から選択される少なくとも1種の方法により得られるオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする前記の湿気硬化性成物に関する。
【0020】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)及び/又は加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)の加水分解性ケイ素基が、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物に関する。
【0021】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法により得られるものであって、数平均分子量(Mn)が6,000以上かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された1分子中に平均して0.5個〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を含有する新規な組成物に関する。
【0023】
本発明において、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)および加水分解性ケイ基を含有するオキシアルキレン重合体(B)における加水分解性ケイ素基は特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと、例えば下記一般式(1)で表わされる基が挙げられる。
−(SiR1 2−bXbO)m−SiR2 3−aXa (1)
式中、R1およびR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R′)3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR′は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR′は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示す。また、m個の
−SiR1 2−bXbO− 基
におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。
【0024】
上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基またはアルケニルオキシ基が好ましく、またジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種が加水分解活性の高い点と分解性が穏やかで取扱いやすい点とを勘案すると更に好ましい。(a+Σb)は、硬化性の点から、1〜5であるのが好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
1分子中に平均して0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては種々のものがあるが、たとえば(イ)ラジカル重合性不飽和結合と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を、他の単量体に添加して共重合する方法がある。ラジカル重合性不飽和結合と加水分解性ケイ素基とを有する化合物としては、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、エトキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジプロポキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリイソプロペニルオキシシラン、ジイソプロペニルオキシメチルシラン、メチルジメトキシビニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、α−アリル,ω−トリメトキシプロピルフタレート、α−アリル,ω−メチルジメトキシプロピルフタレート等が挙げられる。上述のアルコキシシラン単量体は単独でも混合して使用することも可能である。
【0026】
(ロ)ラジカル重合性不飽和結合および反応性官能基(以下、Y基という)を有する化合物(たとえば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル)を他の単量体に添加して共重合させ、そののち生成した共重合体を加水分解性ケイ素基およびY基と反応しうる官能基(以下、Y′官能基という)を有する化合物と反応させる方法などがあげられる。
【0027】
例えば、(ロ−1)イソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物と反応させる方法がある。具体的には、水酸基を含有するラジカル重合性単量体を用いて得られたアクリル系重合体の側鎖の水酸基にイソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を反応させる方法があげられる。また別法としては、まずイソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を水酸基を含有するラジカル重合性単量体と反応させた後、該反応物をラジカル共重合させる方法もある。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。イソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物としては、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
(ロ−2)ラジカル重合活性の異なる不飽和基を分子内に少なくとも0.5個以上有する単量体を用いて得られたアクリル系重合体の側鎖の不飽和基へヒドロシリル化反応により加水分解性ケイ素基を導入する方法もある。ラジカル重合活性の異なる不飽和基を分子内に0.5個以上有する単量体としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等をあげることができる。ヒドロシリル基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物の具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシランなどのケトキシメートシラン類;ジメチルシラン、トリメチルシロキシメチルシラン、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルジシロキサンなどのハイドロシラン類;トリ(イソプロペニルオキシ)シラン、メチルジ(イソプロペニルオキシ)シラン、ジメチルイソプロペニルオキシシランなどのアルケニルオキシシラン類などがあげられる。
【0029】
(ロ−3)また、(ロ−2)に記載されている側鎖に不飽和基を有するアクリル系重合体に、メルカプト基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物を付加させる方法がある。該メルカプトシラン化合物としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、ジ(トリメトキシシリル)ジスルフィド、ジ(トリメトキシシリル)オクタスルフィド等が挙げられる。
【0030】
(ハ)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、加水分解性ケイ素基および当該不飽和結合と反応しうる官能基(以下、Z官能基という)を有する化合物と反応させる方法があげられる。
【0031】
(ハ−1)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基へヒドロシリル化反応により加水分解性ケイ素基を導入する方法もある。ヒドロシリル基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物の具体例としては、(ロ−2)記載と同様の化合物を用いることが可能である。
【0032】
(ハ−2)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、メルカプト基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物を付加させる方法がある。該メルカプトシラン化合物としては、(ロ−3)記載と同様の化合物を用いることが可能である。
【0033】
(ハー3)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、メルカプト基と反応性官能基(以下、Z′官能基という)とを含有する化合物を付加させ、しかる後、加水分解性ケイ素基およびZ′官能基と反応しうる官能基を有する化合物と反応させる方法などがあげられる。Z′官能基の例としては、水酸基、アミノ基等が例示され、Z′官能基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基、グリシジル基等が例示される。
【0034】
本発明において、アクリル系重合体(A)への加水分解性ケイ素基の導入は、アクリル系重合体単独で実施する方法、加水分解性ケイ基を含有するオキシアルキレン重合体(B)内で実施する方法、アクリル系重合体(A)、オキシアルキレン重合体(B)を混合し、同時に加水分解性ケイ素基の導入を実施する方法が可能である。
【0035】
本発明におけるアクリル系重合体(A)は、必要に応じてラジカル重合開始剤、或いは溶剤等が添加された単量体混合物を、加熱された反応機に連続的に供給し、比較的短時間例えば数十秒から数十分滞留させることによりラジカル重合反応させ、その後、溶剤と未反応単量体を揮散させる方法によって得られる。上記方法は、例えば、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号、特開平1−313522号、特開平10−195111号に開示されており、簡便で生産性に優れた製法であり、かつ粘度の低い加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A)を得ることが可能である。
【0036】
本発明の高温・高圧下での連続的ラジカル重合法とは、連続的に原料を重合反応器へ供給しながら、原料の供給量に見合う量の反応生成液を抜き出すラジカル重合法であって、前記のとおり、上記重合反応器における単量体等の反応温度を180〜300℃、圧力を1〜3MPaとし、かつ該単量体等の重合反応器における滞留時間を5〜60分間とすることが好ましい。
【0037】
次に、本願のアクリル系重合体(A)に用いる加水分解性ケイ素基を含有しない単量体について説明する。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、下記一般式(2)で示される単量体が好ましい。
CH2=C(R3)COOR4 (2)
式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は置換または非置換の1価の炭化水素基を示す。
【0038】
前記一般式中のR4としては、たとえばメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、アリル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ラウリル基、トリデジル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、グリシジル基、アミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などの置換または非置換の1価の炭化水素基を挙げることができる。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基含有化合物;無水マレイン酸、無水マレイン酸のアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミドなどのアミド基、若しくはアミノエチルビニルエ−テルなどのアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエ−テル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレンなどの単量体が挙げられる。これらの加水分解性ケイ基非含有単量体は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
ラジカル重合開始剤は使用せずに熱活性で重合することも可能であるが、一般的には過酸化物、アゾ系化合物等が使用できる。本発明では、必要に応じて、重合溶媒としてキシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤が使用できる。
【0041】
加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)の1分子あたりのケイ素原子の数は、0.5〜5個であるのが好ましく、更には1〜3個であるのがより好ましい。本発明におけるアクリル系重合体(A)1分子中の反応性ケイ素基の数が0.5個未満になると硬化性が不充分になり、一方、5個を越えると硬化物の脆性を招くため好ましくない。
【0042】
重合体として、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)のみを含有する組成物からも優れた耐候性、易生産性を有する硬化性組成物を得られる。しかし、ラジカル重合により加水分解性ケイ素基を導入する場合、統計的に分子鎖中にランダムに分布し架橋点間分子量の制御が容易でないことが多い。このため、得られた硬化物のゴム物性は際立つものではない場合がある。
【0043】
これに対し、分子末端に加水分解性ケイ素基を有する公知のオキシアルキレン系重合体(B)を、上記アクリル系重合体(A)に混合した場合、架橋点間分子量の大きいゴム状網目が多く形成されるため、硬化物の優れた耐候性と易生産性の特徴を維持しつつ、高強度、高伸びで、低弾性率を示す硬化性組成物が得られる。
【0044】
分子末端に加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体に、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を混合することは、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号に記載されるように公知である。しかし公知の方法では、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体と溶剤に溶解された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体とを混合した後、超真空下で減圧し溶剤揮散させる装置が一般的に必要であるため、簡便で経済的であり生産が容易な方法であるとは言えず、また組成物の粘度が高いという問題もあった。本発明は、生産性に優れた製造法であって、かつ従来のラジカル重合法で得られる重合体より分子量分布が狭くなることに由来して、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を含有する組成物が低粘度になる。
【0045】
一方、本発明におけるアクリル系重合体(A)は、ミキサーで組成物を作成する際、オキシアルキレン系重合体(B)および他の配合剤と任意の割合で容易に混合が可能であるという優れた作業性も有している。複合金属シアン化物錯体触媒を用いて得られた加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(B)は、他の製法により得られるオキシアルキレン重合体(B)と比較して相対的に粘度が低いが、これと本発明におけるアクリル系重合体(A)を組み合せることにより、低粘度化の効果をより一層高くすることができる。
【0046】
加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ基を有するオキシアルキレン系重合体(B)との混合において、両者は分離しない限り併用することが可能で、硬化前後のいずれにおいても、両者が相溶した状態であっても良いし、非相溶の状態であるミクロ分散状態であっても良い。本発明におけるアクリル系重合体(A)の組成を、意図的にオキシアルキレン系重合体(B)の組成よりも極性を高くすることにより、微粒子としてオキシアルキレン重合体(B)中に分散させることも可能である。
【0047】
本発明の加水分解性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖を構成するオキシアルキレン系重合体は下記一般式(3):
−R3−O− (3)
(式中、R5は炭素数1〜4の2価のアルキレン基)に示す構造である。
【0048】
これらの中でも、入手の容易さの点から、一般式(4):
−CH(CH3)CH2O− (4)
で示される繰り返し単位を含有するオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。このオキシプロピレン系重合体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。また、他の単量体単位等が含まれていてもよいが、一般式(4)で表わされる単量体単位が、重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
【0049】
本発明におけるオキシアルキレン系重合体(B)は、特開昭50−13496号等に開示されるオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されるこの重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されるセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示される複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号に開示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等により得ることができる。実用上、触媒入手性、重合の安定性の点から、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製法は公知の方法が利用可能である。例えば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に記載の方法が好ましい。
【0050】
オキシアルキレン系重合体(B)への加水分解性ケイ素基の導入は、アクリル系重合体(A)に加水分解性ケイ素基を導入する方法としてすでに詳述した方法で行なえばよい。具体例として複合金属シアン化物錯体触媒を用いて得られるオキシアルキレン系重合体の場合は特開平3−72527号に、ポリフォスファゼン塩と活性水素を触媒として得られるオキシアルキレン系重合体の場合は特開平11−60723号に記載されている。
【0051】
本発明の組成物は、加水分解性ケイ素基を含有するため湿分存在下では縮合して、増粘若しくはゲル化する可能性がある。従って、重合時及び/又は重合後の貯蔵安定性を改善する目的で、公知の安定剤を重合時及び/又は重合後に添加することができる。例えば、オルト酢酸メチルエステル、オルト蟻酸メチルエステル、メタノール、プロパノール等のアルコール類を単独またはこれらを組合せて使用することが可能である。
【0052】
更に、本発明の組成物には、必要に応じて可塑剤、硬化触媒、充填剤、脱水剤、接着付与剤、又はその他の添加剤などを加えて使用してもよい。
【0053】
前記可塑剤の具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、低分子量のオキシアルキレン系重合体、好ましくは末端の一部若しくは全部が水酸基若しくはアルキル基等であるポリプロピレンオキシド重合体、又はアクリル系重合体が使用可能である。アクリル系重合体である可塑剤の具体例としては、「工業材料」1998年8月号110頁に記載の東亜合成(株)製SGOポリマーも使用できる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの可塑剤は、作業性の確保の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物100重量部に対し5〜100重量部程度の範囲で使用するのが好ましい。
【0054】
前記硬化触媒の具体例としては、スズ金属触媒として、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫などの2価錫カルボン酸塩類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシドなどのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテートなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類;ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体;また、非スズ金属触媒として、オクチル酸、オレイン酸、ナフテン酸若しくはステアリン酸などをカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルなどのカルボン酸金属塩類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレートなどのアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレートなどのジルコニウムアルコキシド類;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートなどのチタンキレート類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテートなどのジルコニウムキレート類;アミン類、アミン塩、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物等の塩基性化合物などが挙げられる。これらは単独もしくは混合して使用できる。これらの硬化触媒は、硬化性、貯蔵安定性の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物の100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
前記充填剤としては、たとえば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラックなどがあげられる。これらの充填剤は、作業性、強度発現の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物100重量部に対して10〜300重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0056】
前記脱水剤としては加水分解性シリコン化合物が好ましい。例えば、Si(OC2H5)4、CH2=CHSi(OAc)3、CH2=CHSi(OCH3)3、HSCH2CH2CH2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3のようなメタクリルオキシシラン化合物または、上記の加水分解性シリコン化合物の縮合物が使用できる。なお、上記でAcとは、CH3COの略である。
【0057】
前記接着付与剤としては、具体的にはH2N(CH2)6NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)8NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)6NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、H2N(CH2)6NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NHCH2−ph−(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)4NHCH2−ph−(CH2)2Si(OCH3)3(ここで、phはパラフェニレン基を示す。)等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記その他の添加剤としては、たとえば水添ヒマシ油、有機ベントナイトなどのタレ防止剤、着色剤、老化防止剤などが挙げられる。
【0059】
このようにして得られる本発明の組成物は、建築物若しくは工業製品等の屋内外の石、金属若しくはガラス等の目地部シーリング剤、又はタイル、パネル若しくはボード類の接着剤若しくはシーラント剤、或いは根太と梁・大引き、床暖房ヒーターと床板・基材との接合に例示される室内部材向けの接着剤若しくはシーリング剤に好適である。
【0060】
【実施例】
(合成例1)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)に、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−1)を得た。
【0061】
(合成例2)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、不飽和基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量1,800のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020) 100部と3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 7.7部との混合物に、65℃で和光純薬製V−65 3部相当分をゆっくり添加した後、添加終了後さらに3時間反応させることにより、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−2)を得た。
【0062】
(合成例3)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、不飽和基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量1,800のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020) 100部を90℃に加熱した後、白金ビニルシロキサン触媒(白金含有量3.1%) 100ppm、メチルジメトキシシラン 14.9部を追加し、反応を追跡しながら18時間反応させた後、減圧脱揮することにより、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−3)を得た。
【0063】
(合成例4)
トルエン中で、アクリル酸ブチル60重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸ステアリル20重量部、メタクリル酸γ−トリメトキシシリルプロピル5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)5重量部の単量体混合物について、105℃でラジカル溶液重合(固形分濃度60%)を実施し、数平均分子量(GPCによるポリスチレン換算)6,000のアクリル系重合体(A−4)を得た。
【0064】
(合成例5)
複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合により得られたポリプロピレンオキサイド(ポリスチレン換算での数平均分子量は16,800、Mw/Mn=1.1)100重量部に、アリルクロライド2.5重量部を加え130℃で5時間反応させた後、未反応のアリルクロライドを減圧脱揮により除去した。その後、精製を行い、得られたアリル末端ポリプロピレンオキサイド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3重量%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.4重量部を添加して90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイドを得た。
【0065】
(合成例6)
複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合により得られたポリプロピレンオキサイド(ポリスチレン換算での数平均分子量は16,800、Mw/Mn=1.1)70重量部に対し、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部を混合し、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を得た。
【0066】
(合成例7)
合成例5で得られた加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド70重量部に対し、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部を混合し、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を得た。
【0067】
(合成例8)
合成例4で合成したラジカル溶液重合によるアクリル系重合体(A−4)と、合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイドを重量比5(固形分換算3)対7で混合後、120℃、10Torrで2時間減圧脱揮することにより、粘度13Pa・sの液体状樹脂を得た。
【0068】
(実施例1)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)30重量部、及び合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部、可塑剤として、ジイソデシルフタレート50重量部、充填剤として、炭酸カルシウム(白石工業(株)製、CCR)120重量部、及び酸化チタン20重量部、老化防止剤として、チヌビン327(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、及びチヌビン765(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、脱水剤、接着性付与剤として、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−171)2重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)2重量部を添加して、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物を、サンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
反応性重合体として、合成例6で合成した加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
反応性重合体として、合成例7で合成した加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
反応性重合体として、合成例8により得たポリプロピレンオキサイドとアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0072】
(実施例4)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)30重量部、及び合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部、可塑剤として、高温・高圧下において連続的ラジカル重合で得られたポリスチレン換算数平均分子量1,200のアクリル系重合体70重量部(東亞合成(株)製ARUFON UP−1020)、充填剤として、炭酸カルシウム(白石工業(株)製、CCR)120重量部、老化防止剤として、チヌビン327(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、チヌビン765(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、脱水剤、接着性付与剤として、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−171)2重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)2重量部を添加して、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0073】
(実施例5)
反応性重合体として、合成例6で合成した、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0074】
(実施例6)
反応性重合体として、合成例7で合成した、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有される溶剤量及び残存するAIBN分解物量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0076】
(比較例2)
反応性重合体として、合成例8により得たポリプロピレンオキサイドとアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0077】
(比較例3)
反応性重合体として合成例5により得たメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド100重量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0078】
(比較例4)
反応性重合体として、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部と、合成例5により得たメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部とを使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
(実施例8)
合成例2で得られたアクリル系重合体(A−2)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物に、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)1重量部を添加したものを厚み2mmのシート状にして、23℃50%RH下で4日間湿気硬化させた。得られた硬化物を、23℃中で24時間アセトン浸漬した後、取り出して、浸漬前後の重量変化を調べることによりゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0080】
(実施例9)
混合物が、合成例3で得られたアクリル系重合体(A−3)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物であること以外は、実施例8と同様にして、ゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0081】
(比較例5)
混合物が、アクリル系重合体として加水分解性ケイ素基を有しないアクリル重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物であること以外は、実施例8と同様にして、ゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
実施例1〜7に示されるように、本発明の高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)、または、このアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)とを含有する湿気硬化性組成物は、製造が容易であり、溶剤やAIBN分解物が大量に残存せず、また、優れた耐候性を有する。
【0083】
一方、比較例1、2に示されるように、従来の重合方法により得られたアクリル系重合体(A)を含有する湿気硬化性組成物は、優れた耐候性を示すものの、製造工程が長く、溶剤であるトルエンが大量に残存する。また、比較例3に示されるように、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を使用しなかったり、比較例4で示されるように、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により重合されているが、加水分解性ケイ素基を有しないアクリル系重合体を使用した場合は、優れた耐候性を得ることができない。
【0084】
また、実施例8、9に示されるように、本発明の高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)、または、このアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)とを含有する湿気硬化性組成物は、比較例5に示される加水分解性ケイ素基を有しないアクリル系重合体に比べて、溶剤抽出成分が少ない硬化物を作製することができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明による湿気硬化性組成物は、容易に製造することが可能であり、かつ得られる硬化物が優れた耐候性を有し、溶剤抽出成分が少ない。また、トルエン溶剤のような環境上問題となりうる成分の含有量が少量である湿気硬化性組成物である。
【発明の属する技術分野】
建築物、若しくは、工業製品等に用いるシーリング材、或いは、接着剤等として使用した場合、長期にわたる優れた物性、或いは外観の維持等が可能な、加水分解性ケイ素基(以下、反応性ケイ素基ともいう)を有するアクリル系重合体、又は該アクリル系重合体及び加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体を含有する湿気硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物、若しくは、工業製品等に用いるシーリング材、或いは、接着剤としては、従来よりシリコーン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、若しくは変成シリコーン系等の湿気硬化性組成物が使用されている。
【0003】
近年、主として外装に使用する、金属系及び窯業系のパネル、若しくは、ボード等の目地、コンクリート目地、又はタイル接着等に、従来より、優れた耐候性を発現する材料が求められており、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)及び/又は加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含有する湿気硬化性組成物が用いられている。
【0004】
アクリル系重合体は、溶剤中、若しくは、水中における種々のラジカル重合性単量体を用いたラジカル重合法や塊状ラジカル重合法により得られることは良く知られており、商業的にも実施されている。1分子中に平均して0.5個以上の加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体も同様な方法で得られることが知られており、例えば、溶剤中で重合する方法は、特許文献1、特許文献2等に開示されている。
【0005】
しかし、シーリング剤や接着剤等として使用するために、前記の重合体を用いて、無溶剤液状の湿気硬化性組成物を作製しようとした場合、塊状重合法による重合体の場合は低分子量化が困難であり、溶剤中若しくは水中における重合法では良好なアクリル系重合体が得られるものの、大量の溶剤、水を用いるため、工程が煩雑になる上、現実的なプロセスで完全に溶剤や水分を除去するためには専用の脱揮工程を準備しなければならない問題があった。
【0006】
また、改善策として提案されているオキシアルキレン系重合体と混合した後、脱揮する方法の場合においては、加熱によりオキシアルキレン系重合体の劣化が起こるため、高温に上げることができず、溶剤が十分除去できないという問題があった。
【0007】
更に、上記の従来重合法では、室温における作業性に優れたアクリル系重合体を得るためには、比較的低分子量領域で分子量調整を行う必要があるが、高価なアゾ系若しくはパーオキサイド系の重合開始剤を大量に使用しなければならないため、高価格になるという問題があった。
【0008】
近年、高温・高圧下でラジカル重合を連続的に行う、いわゆる連続的ラジカル重合法が開発されているが、該重合法により加水分解性ケイ素基を含有する重合体を製造することは未だに検討されていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭54−36395号
【0010】
【特許文献2】特開昭58−157810号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体、または、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体と加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体との混合物を、溶剤脱揮等の複雑な工程を要することなく容易に製造することが可能であり、建築物若しくは工業製品等に用いるシーリング材或いは接着剤等として使用した場合、長期にわたる優れた物性或いは外観の維持等が可能で、かつ、残存溶剤による環境への悪影響のない湿気硬化性組成物を得ることを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を用いることにより、従来のアクリル系重合体を可塑剤として用いた場合にブリードアウト等の発生原因となっていた溶剤抽出成分を低減させた湿気硬化性組成物を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成され、且つ加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を用いた湿気硬化性組成物を用いることにより、従来技術では困難であった優れた耐候性、易生産性等が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明は、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された分子量700〜30,000のアクリル系重合体であって、且つ、1分子中に平均0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を含有することを特徴とする湿気硬化性組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、水酸基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に水酸基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、不飽和基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、前記の1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物の不飽和基と反応し得る基が、ヒドロシリル基、メルカプト基から選ばれる基であることを特徴とする重合体である前記の湿気硬化性組成物に関する。
【0018】
更に好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物において、更に1分子中に少なくとも1個の加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含有する湿気硬化性組成物に関する。
【0019】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が、苛性アルカリを用いるアニオン重合法、オキシアルキレン系重合体を原料とした鎖延長反応方法、複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法、セシウム金属を触媒とする重合法またはポリフォスファゼン塩を触媒とする重合法から選択される少なくとも1種の方法により得られるオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする前記の湿気硬化性成物に関する。
【0020】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)及び/又は加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)の加水分解性ケイ素基が、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物に関する。
【0021】
更に好ましい実施態様としては、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法により得られるものであって、数平均分子量(Mn)が6,000以上かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする前記いずれかに記載の湿気硬化性組成物に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された1分子中に平均して0.5個〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を含有する新規な組成物に関する。
【0023】
本発明において、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)および加水分解性ケイ基を含有するオキシアルキレン重合体(B)における加水分解性ケイ素基は特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと、例えば下記一般式(1)で表わされる基が挙げられる。
−(SiR1 2−bXbO)m−SiR2 3−aXa (1)
式中、R1およびR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R′)3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR′は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR′は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示す。また、m個の
−SiR1 2−bXbO− 基
におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。
【0024】
上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基またはアルケニルオキシ基が好ましく、またジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種が加水分解活性の高い点と分解性が穏やかで取扱いやすい点とを勘案すると更に好ましい。(a+Σb)は、硬化性の点から、1〜5であるのが好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
1分子中に平均して0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては種々のものがあるが、たとえば(イ)ラジカル重合性不飽和結合と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を、他の単量体に添加して共重合する方法がある。ラジカル重合性不飽和結合と加水分解性ケイ素基とを有する化合物としては、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、エトキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジプロポキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリイソプロペニルオキシシラン、ジイソプロペニルオキシメチルシラン、メチルジメトキシビニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、α−アリル,ω−トリメトキシプロピルフタレート、α−アリル,ω−メチルジメトキシプロピルフタレート等が挙げられる。上述のアルコキシシラン単量体は単独でも混合して使用することも可能である。
【0026】
(ロ)ラジカル重合性不飽和結合および反応性官能基(以下、Y基という)を有する化合物(たとえば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル)を他の単量体に添加して共重合させ、そののち生成した共重合体を加水分解性ケイ素基およびY基と反応しうる官能基(以下、Y′官能基という)を有する化合物と反応させる方法などがあげられる。
【0027】
例えば、(ロ−1)イソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物と反応させる方法がある。具体的には、水酸基を含有するラジカル重合性単量体を用いて得られたアクリル系重合体の側鎖の水酸基にイソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を反応させる方法があげられる。また別法としては、まずイソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物を水酸基を含有するラジカル重合性単量体と反応させた後、該反応物をラジカル共重合させる方法もある。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。イソシアネート基と加水分解性ケイ素基とを有する化合物としては、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
(ロ−2)ラジカル重合活性の異なる不飽和基を分子内に少なくとも0.5個以上有する単量体を用いて得られたアクリル系重合体の側鎖の不飽和基へヒドロシリル化反応により加水分解性ケイ素基を導入する方法もある。ラジカル重合活性の異なる不飽和基を分子内に0.5個以上有する単量体としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等をあげることができる。ヒドロシリル基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物の具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシランなどのケトキシメートシラン類;ジメチルシラン、トリメチルシロキシメチルシラン、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルジシロキサンなどのハイドロシラン類;トリ(イソプロペニルオキシ)シラン、メチルジ(イソプロペニルオキシ)シラン、ジメチルイソプロペニルオキシシランなどのアルケニルオキシシラン類などがあげられる。
【0029】
(ロ−3)また、(ロ−2)に記載されている側鎖に不飽和基を有するアクリル系重合体に、メルカプト基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物を付加させる方法がある。該メルカプトシラン化合物としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、ジ(トリメトキシシリル)ジスルフィド、ジ(トリメトキシシリル)オクタスルフィド等が挙げられる。
【0030】
(ハ)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、加水分解性ケイ素基および当該不飽和結合と反応しうる官能基(以下、Z官能基という)を有する化合物と反応させる方法があげられる。
【0031】
(ハ−1)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基へヒドロシリル化反応により加水分解性ケイ素基を導入する方法もある。ヒドロシリル基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物の具体例としては、(ロ−2)記載と同様の化合物を用いることが可能である。
【0032】
(ハ−2)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、メルカプト基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物を付加させる方法がある。該メルカプトシラン化合物としては、(ロ−3)記載と同様の化合物を用いることが可能である。
【0033】
(ハー3)重合反応によりアクリル系重合体の末端に生じる不飽和基に、メルカプト基と反応性官能基(以下、Z′官能基という)とを含有する化合物を付加させ、しかる後、加水分解性ケイ素基およびZ′官能基と反応しうる官能基を有する化合物と反応させる方法などがあげられる。Z′官能基の例としては、水酸基、アミノ基等が例示され、Z′官能基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基、グリシジル基等が例示される。
【0034】
本発明において、アクリル系重合体(A)への加水分解性ケイ素基の導入は、アクリル系重合体単独で実施する方法、加水分解性ケイ基を含有するオキシアルキレン重合体(B)内で実施する方法、アクリル系重合体(A)、オキシアルキレン重合体(B)を混合し、同時に加水分解性ケイ素基の導入を実施する方法が可能である。
【0035】
本発明におけるアクリル系重合体(A)は、必要に応じてラジカル重合開始剤、或いは溶剤等が添加された単量体混合物を、加熱された反応機に連続的に供給し、比較的短時間例えば数十秒から数十分滞留させることによりラジカル重合反応させ、その後、溶剤と未反応単量体を揮散させる方法によって得られる。上記方法は、例えば、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号、特開平1−313522号、特開平10−195111号に開示されており、簡便で生産性に優れた製法であり、かつ粘度の低い加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A)を得ることが可能である。
【0036】
本発明の高温・高圧下での連続的ラジカル重合法とは、連続的に原料を重合反応器へ供給しながら、原料の供給量に見合う量の反応生成液を抜き出すラジカル重合法であって、前記のとおり、上記重合反応器における単量体等の反応温度を180〜300℃、圧力を1〜3MPaとし、かつ該単量体等の重合反応器における滞留時間を5〜60分間とすることが好ましい。
【0037】
次に、本願のアクリル系重合体(A)に用いる加水分解性ケイ素基を含有しない単量体について説明する。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、下記一般式(2)で示される単量体が好ましい。
CH2=C(R3)COOR4 (2)
式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は置換または非置換の1価の炭化水素基を示す。
【0038】
前記一般式中のR4としては、たとえばメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、アリル基、プロピル基、ヒドロキシプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ラウリル基、トリデジル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、グリシジル基、アミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などの置換または非置換の1価の炭化水素基を挙げることができる。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基含有化合物;無水マレイン酸、無水マレイン酸のアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミドなどのアミド基、若しくはアミノエチルビニルエ−テルなどのアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエ−テル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレンなどの単量体が挙げられる。これらの加水分解性ケイ基非含有単量体は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
ラジカル重合開始剤は使用せずに熱活性で重合することも可能であるが、一般的には過酸化物、アゾ系化合物等が使用できる。本発明では、必要に応じて、重合溶媒としてキシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤が使用できる。
【0041】
加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)の1分子あたりのケイ素原子の数は、0.5〜5個であるのが好ましく、更には1〜3個であるのがより好ましい。本発明におけるアクリル系重合体(A)1分子中の反応性ケイ素基の数が0.5個未満になると硬化性が不充分になり、一方、5個を越えると硬化物の脆性を招くため好ましくない。
【0042】
重合体として、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)のみを含有する組成物からも優れた耐候性、易生産性を有する硬化性組成物を得られる。しかし、ラジカル重合により加水分解性ケイ素基を導入する場合、統計的に分子鎖中にランダムに分布し架橋点間分子量の制御が容易でないことが多い。このため、得られた硬化物のゴム物性は際立つものではない場合がある。
【0043】
これに対し、分子末端に加水分解性ケイ素基を有する公知のオキシアルキレン系重合体(B)を、上記アクリル系重合体(A)に混合した場合、架橋点間分子量の大きいゴム状網目が多く形成されるため、硬化物の優れた耐候性と易生産性の特徴を維持しつつ、高強度、高伸びで、低弾性率を示す硬化性組成物が得られる。
【0044】
分子末端に加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体に、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を混合することは、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号に記載されるように公知である。しかし公知の方法では、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体と溶剤に溶解された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体とを混合した後、超真空下で減圧し溶剤揮散させる装置が一般的に必要であるため、簡便で経済的であり生産が容易な方法であるとは言えず、また組成物の粘度が高いという問題もあった。本発明は、生産性に優れた製造法であって、かつ従来のラジカル重合法で得られる重合体より分子量分布が狭くなることに由来して、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体を含有する組成物が低粘度になる。
【0045】
一方、本発明におけるアクリル系重合体(A)は、ミキサーで組成物を作成する際、オキシアルキレン系重合体(B)および他の配合剤と任意の割合で容易に混合が可能であるという優れた作業性も有している。複合金属シアン化物錯体触媒を用いて得られた加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(B)は、他の製法により得られるオキシアルキレン重合体(B)と比較して相対的に粘度が低いが、これと本発明におけるアクリル系重合体(A)を組み合せることにより、低粘度化の効果をより一層高くすることができる。
【0046】
加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ基を有するオキシアルキレン系重合体(B)との混合において、両者は分離しない限り併用することが可能で、硬化前後のいずれにおいても、両者が相溶した状態であっても良いし、非相溶の状態であるミクロ分散状態であっても良い。本発明におけるアクリル系重合体(A)の組成を、意図的にオキシアルキレン系重合体(B)の組成よりも極性を高くすることにより、微粒子としてオキシアルキレン重合体(B)中に分散させることも可能である。
【0047】
本発明の加水分解性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖を構成するオキシアルキレン系重合体は下記一般式(3):
−R3−O− (3)
(式中、R5は炭素数1〜4の2価のアルキレン基)に示す構造である。
【0048】
これらの中でも、入手の容易さの点から、一般式(4):
−CH(CH3)CH2O− (4)
で示される繰り返し単位を含有するオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。このオキシプロピレン系重合体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。また、他の単量体単位等が含まれていてもよいが、一般式(4)で表わされる単量体単位が、重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
【0049】
本発明におけるオキシアルキレン系重合体(B)は、特開昭50−13496号等に開示されるオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されるこの重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されるセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されるポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示される複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号に開示されるポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等により得ることができる。実用上、触媒入手性、重合の安定性の点から、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製法は公知の方法が利用可能である。例えば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に記載の方法が好ましい。
【0050】
オキシアルキレン系重合体(B)への加水分解性ケイ素基の導入は、アクリル系重合体(A)に加水分解性ケイ素基を導入する方法としてすでに詳述した方法で行なえばよい。具体例として複合金属シアン化物錯体触媒を用いて得られるオキシアルキレン系重合体の場合は特開平3−72527号に、ポリフォスファゼン塩と活性水素を触媒として得られるオキシアルキレン系重合体の場合は特開平11−60723号に記載されている。
【0051】
本発明の組成物は、加水分解性ケイ素基を含有するため湿分存在下では縮合して、増粘若しくはゲル化する可能性がある。従って、重合時及び/又は重合後の貯蔵安定性を改善する目的で、公知の安定剤を重合時及び/又は重合後に添加することができる。例えば、オルト酢酸メチルエステル、オルト蟻酸メチルエステル、メタノール、プロパノール等のアルコール類を単独またはこれらを組合せて使用することが可能である。
【0052】
更に、本発明の組成物には、必要に応じて可塑剤、硬化触媒、充填剤、脱水剤、接着付与剤、又はその他の添加剤などを加えて使用してもよい。
【0053】
前記可塑剤の具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、低分子量のオキシアルキレン系重合体、好ましくは末端の一部若しくは全部が水酸基若しくはアルキル基等であるポリプロピレンオキシド重合体、又はアクリル系重合体が使用可能である。アクリル系重合体である可塑剤の具体例としては、「工業材料」1998年8月号110頁に記載の東亜合成(株)製SGOポリマーも使用できる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの可塑剤は、作業性の確保の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物100重量部に対し5〜100重量部程度の範囲で使用するのが好ましい。
【0054】
前記硬化触媒の具体例としては、スズ金属触媒として、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫などの2価錫カルボン酸塩類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシドなどのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテートなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類;ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体;また、非スズ金属触媒として、オクチル酸、オレイン酸、ナフテン酸若しくはステアリン酸などをカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルなどのカルボン酸金属塩類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレートなどのアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレートなどのジルコニウムアルコキシド類;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートなどのチタンキレート類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテートなどのジルコニウムキレート類;アミン類、アミン塩、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物等の塩基性化合物などが挙げられる。これらは単独もしくは混合して使用できる。これらの硬化触媒は、硬化性、貯蔵安定性の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物の100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
前記充填剤としては、たとえば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラックなどがあげられる。これらの充填剤は、作業性、強度発現の点から、アクリル系重合体(A)、又はアクリル系重合体(A)及びオキシアルキレン系重合体(B)との混合物100重量部に対して10〜300重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0056】
前記脱水剤としては加水分解性シリコン化合物が好ましい。例えば、Si(OC2H5)4、CH2=CHSi(OAc)3、CH2=CHSi(OCH3)3、HSCH2CH2CH2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3のようなメタクリルオキシシラン化合物または、上記の加水分解性シリコン化合物の縮合物が使用できる。なお、上記でAcとは、CH3COの略である。
【0057】
前記接着付与剤としては、具体的にはH2N(CH2)6NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)8NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)6NH(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、H2N(CH2)6NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NHCH2−ph−(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)4NHCH2−ph−(CH2)2Si(OCH3)3(ここで、phはパラフェニレン基を示す。)等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記その他の添加剤としては、たとえば水添ヒマシ油、有機ベントナイトなどのタレ防止剤、着色剤、老化防止剤などが挙げられる。
【0059】
このようにして得られる本発明の組成物は、建築物若しくは工業製品等の屋内外の石、金属若しくはガラス等の目地部シーリング剤、又はタイル、パネル若しくはボード類の接着剤若しくはシーラント剤、或いは根太と梁・大引き、床暖房ヒーターと床板・基材との接合に例示される室内部材向けの接着剤若しくはシーリング剤に好適である。
【0060】
【実施例】
(合成例1)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)に、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−1)を得た。
【0061】
(合成例2)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、不飽和基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量1,800のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020) 100部と3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 7.7部との混合物に、65℃で和光純薬製V−65 3部相当分をゆっくり添加した後、添加終了後さらに3時間反応させることにより、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−2)を得た。
【0062】
(合成例3)
高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、不飽和基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量1,800のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020) 100部を90℃に加熱した後、白金ビニルシロキサン触媒(白金含有量3.1%) 100ppm、メチルジメトキシシラン 14.9部を追加し、反応を追跡しながら18時間反応させた後、減圧脱揮することにより、加水分解性ケイ素基を含有するアクリル系重合体(A−3)を得た。
【0063】
(合成例4)
トルエン中で、アクリル酸ブチル60重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸ステアリル20重量部、メタクリル酸γ−トリメトキシシリルプロピル5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)5重量部の単量体混合物について、105℃でラジカル溶液重合(固形分濃度60%)を実施し、数平均分子量(GPCによるポリスチレン換算)6,000のアクリル系重合体(A−4)を得た。
【0064】
(合成例5)
複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合により得られたポリプロピレンオキサイド(ポリスチレン換算での数平均分子量は16,800、Mw/Mn=1.1)100重量部に、アリルクロライド2.5重量部を加え130℃で5時間反応させた後、未反応のアリルクロライドを減圧脱揮により除去した。その後、精製を行い、得られたアリル末端ポリプロピレンオキサイド100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3重量%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.4重量部を添加して90℃で5時間反応させ、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイドを得た。
【0065】
(合成例6)
複合金属シアン化物錯体触媒を用いた重合により得られたポリプロピレンオキサイド(ポリスチレン換算での数平均分子量は16,800、Mw/Mn=1.1)70重量部に対し、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部を混合し、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を得た。
【0066】
(合成例7)
合成例5で得られた加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド70重量部に対し、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部を混合し、水酸基と等モルのイソシアネート基を有するγ―トリエトキシシリルプロピルイソシアネートを無溶剤状態において70℃で3時間反応させて、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を得た。
【0067】
(合成例8)
合成例4で合成したラジカル溶液重合によるアクリル系重合体(A−4)と、合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイドを重量比5(固形分換算3)対7で混合後、120℃、10Torrで2時間減圧脱揮することにより、粘度13Pa・sの液体状樹脂を得た。
【0068】
(実施例1)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)30重量部、及び合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部、可塑剤として、ジイソデシルフタレート50重量部、充填剤として、炭酸カルシウム(白石工業(株)製、CCR)120重量部、及び酸化チタン20重量部、老化防止剤として、チヌビン327(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、及びチヌビン765(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、脱水剤、接着性付与剤として、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−171)2重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)2重量部を添加して、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物を、サンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
反応性重合体として、合成例6で合成した加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
反応性重合体として、合成例7で合成した加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
反応性重合体として、合成例8により得たポリプロピレンオキサイドとアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0072】
(実施例4)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)30重量部、及び合成例5で合成したメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部、可塑剤として、高温・高圧下において連続的ラジカル重合で得られたポリスチレン換算数平均分子量1,200のアクリル系重合体70重量部(東亞合成(株)製ARUFON UP−1020)、充填剤として、炭酸カルシウム(白石工業(株)製、CCR)120重量部、老化防止剤として、チヌビン327(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、チヌビン765(チバスペシャリティーケミカル(株)製)1重量部、脱水剤、接着性付与剤として、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−171)2重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)2重量部を添加して、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0073】
(実施例5)
反応性重合体として、合成例6で合成した、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0074】
(実施例6)
反応性重合体として、合成例7で合成した、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイドと加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7)
反応性重合体として、合成例1で合成したアクリル系重合体(A−1)を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有される溶剤量及び残存するAIBN分解物量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0076】
(比較例2)
反応性重合体として、合成例8により得たポリプロピレンオキサイドとアクリル系重合体の混合物を100重量部使用する以外は、実施例4と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。この組成物中に含有されるトルエン量をガスクロマトグラフィーで測定した。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0077】
(比較例3)
反応性重合体として合成例5により得たメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド100重量部を使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0078】
(比較例4)
反応性重合体として、高温・高圧下において連続的ラジカル重合され、かつ、水酸基を含有し、ポリスチレン換算数平均分子量3,500のアクリル系重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−2000 OHV=20mgKOH/g)30重量部と、合成例5により得たメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキサイド70重量部とを使用する以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化性組成物を得た。また、得られた組成物を3mm厚のシート状にして、23℃で14日間養生させた硬化物をサンシャインウエザオメーターで1000時間照射し、耐候性(表面劣化状態)を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
(実施例8)
合成例2で得られたアクリル系重合体(A−2)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物に、硬化触媒としてジブチル錫化合物(日東化成(株)製、U−220)1重量部を添加したものを厚み2mmのシート状にして、23℃50%RH下で4日間湿気硬化させた。得られた硬化物を、23℃中で24時間アセトン浸漬した後、取り出して、浸漬前後の重量変化を調べることによりゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0080】
(実施例9)
混合物が、合成例3で得られたアクリル系重合体(A−3)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物であること以外は、実施例8と同様にして、ゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0081】
(比較例5)
混合物が、アクリル系重合体として加水分解性ケイ素基を有しないアクリル重合体(東亞合成(株)製ARUFON UH−1020)30重量部と、加水分解性ケイ素基を有するポリプロピレンオキサイド(鐘淵化学工業(株)製サイリルSAT350)70重量部との混合物であること以外は、実施例8と同様にして、ゲル分率の割合を測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
実施例1〜7に示されるように、本発明の高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)、または、このアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)とを含有する湿気硬化性組成物は、製造が容易であり、溶剤やAIBN分解物が大量に残存せず、また、優れた耐候性を有する。
【0083】
一方、比較例1、2に示されるように、従来の重合方法により得られたアクリル系重合体(A)を含有する湿気硬化性組成物は、優れた耐候性を示すものの、製造工程が長く、溶剤であるトルエンが大量に残存する。また、比較例3に示されるように、加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を使用しなかったり、比較例4で示されるように、高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により重合されているが、加水分解性ケイ素基を有しないアクリル系重合体を使用した場合は、優れた耐候性を得ることができない。
【0084】
また、実施例8、9に示されるように、本発明の高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)、または、このアクリル系重合体(A)と加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)とを含有する湿気硬化性組成物は、比較例5に示される加水分解性ケイ素基を有しないアクリル系重合体に比べて、溶剤抽出成分が少ない硬化物を作製することができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明による湿気硬化性組成物は、容易に製造することが可能であり、かつ得られる硬化物が優れた耐候性を有し、溶剤抽出成分が少ない。また、トルエン溶剤のような環境上問題となりうる成分の含有量が少量である湿気硬化性組成物である。
Claims (8)
- 高温・高圧下で連続的ラジカル重合法により合成された分子量700〜30,000のアクリル系重合体であって、且つ、1分子中に平均0.5〜5個の加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)を含有することを特徴とする湿気硬化性組成物。
- 加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、水酸基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に水酸基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である請求項1記載の湿気硬化性組成物。
- 加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)が、不飽和基を含有するアクリル系重合体と、1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物を反応させて得られる重合体である請求項1記載の湿気硬化性組成物。
- 1分子中に不飽和基と反応し得る基及び加水分解性ケイ素基を含有する化合物の不飽和基と反応し得る基が、ヒドロシリル基、メルカプト基から選ばれる基であることを特徴とする請求項3記載の湿気硬化性組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の湿気硬化性組成物において、更に1分子中に少なくとも1個の加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含有する湿気硬化性組成物。
- 加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が、苛性アルカリを用いるアニオン重合法、オキシアルキレン系重合体を原料とした鎖延長反応方法、複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法、セシウム金属を触媒とする重合法またはポリフォスファゼン塩を触媒とする重合法から選択される少なくとも1種の方法により得られるオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求項5記載の湿気硬化性成物。
- 加水分解性ケイ素基を有するアクリル系重合体(A)及び/又は加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)の加水分解性ケイ素基が、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の湿気硬化性組成物。
- 加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体(B)が複合金属シアン化物錯体を触媒とする重合法により得られるものであって、数平均分子量(Mn)が6,000以上かつ分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする請求項6又は7記載の湿気硬化性組成物。
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