JP2004002066A - コバルト酸化物粒子粉末及びその製造法、非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造法並びに非水電解質二次電池 - Google Patents
コバルト酸化物粒子粉末及びその製造法、非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造法並びに非水電解質二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子粉末は、コバルト塩とNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の塩とを含有する溶液をアルカリ水溶液により中和し、次いで、酸化反応を行って得ることができる。該コバルト酸化物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、熱処理して得られる正極活物質は、前記異種金属元素を含有するコバルト酸リチウム粒子粉末であり、平均粒子径が1.0〜20μmであり、c軸の格子定数が0.177x+14.051(Å)で示される値以上である。
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、二次電池としての初期放電容量を維持し、且つ、高温下での充放電サイクル特性が改善された非水電解質二次電池を得ることができる正極活物質及び該正極活物質の前駆体であるコバルト酸化物粒子粉末を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、AV機器やパソコン等の電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池への要求が高くなっている。このような状況下において、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいという長所を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn2O4、ジグザグ層状構造のLiMnO2、層状岩塩型構造のLiCoO2、LiCo1−XNiXO2、LiNiO2等が一般的に知られており、なかでもLiCoO2を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電電圧と充放電容量を有する点で優れているが、更なる特性改善が求められている。
【0004】
即ち、LiCoO2を用いたリチウムイオン二次電池は充放電の繰り返しを行うと放電容量が低下する傾向がある。この原因として、リチウムイオンのインサーション反応の際にLiCoO2の格子が膨張・収縮することによって、LiCoO2の結晶構造が崩壊し、充放電サイクル特性の劣化につながっているものと推定されている。
【0005】
ノートパソコンなど二次電池で作動する装置はその使用に伴って高温になるため、二次電池として高温下での充放電サイクル特性に優れた二次電池が要求されている。
【0006】
また、LiCoO2を用いた二次電池は高い電圧で作動することができるが、高電圧のため電解液との反応が起こりやすく、充放電サイクル特性が低下しやすい。
【0007】
そこで、高温下での充放電サイクル特性に優れたLiCoO2が要求されている。
【0008】
従来、結晶構造の安定化、充放電サイクル特性などの諸特性改善のために、コバルト酸リチウム粒子粉末にアルミニウムやニッケル、チタン、カルシウム、鉄を含有させる方法(特開昭62−264560号公報、特開昭63−211564号公報、特開昭63−299056号公報、特開平3−201368号公報、特開平11−7958号公報、特開2000−12022号公報、特開2000−123834号公報等)、湿式法によって異種金属元素を含有させる方法(特開平10−1316号公報)及びコバルト酸リチウムの格子定数を制御することによって特性を向上させる方法(特開平6−181062号公報)等が知られている。
【0009】
また、前記諸特性を満たすコバルト酸リチウム粒子粉末を得るためには、前駆体であるコバルト酸化物粒子粉末が反応性に優れていることが必要とされている。そこで、湿式反応によって微細な酸化コバルト粒子粉末を得る製造法(特開平10−324523号公報、特開2002−68750号公報)が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記諸特性を満たす正極活物質及びコバルト酸化物粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0011】
即ち、前出特開昭62−264560号公報、特開昭63−211564号公報、特開昭63−299056号公報、特開平3−201368号公報、特開平11−7958号公報、特開2000−12022号公報及び特開2000−123834号公報には、コバルト化合物、リチウム化合物及び異種金属塩を乾式で混合させて、異種金属元素を含有するコバルト酸リチウム粒子粉末を得ることが記載されているが、異種金属の組成分布が不均一になり、リチウムイオンの出入りに伴い結晶構造の収縮膨張が起こって結晶格子が崩壊しやすく、充放電サイクル特性に優れるとは言い難いものである。
【0012】
また、前出特開平10−1316号公報には、コバルト化合物と、異種金属元素を水酸化リチウム水溶液中に分散させて、加熱処理を行ってコバルト酸リチウム粒子を得ることが記載されているが、水熱処理を行う必要があり粒子サイズが小さく粉体特性に優れるとは言い難いものである。
【0013】
また、特開平6−181062号公報には、c軸の格子定数が14.05Å以上であるコバルト酸リチウムが記載されているが、異種金属元素を含有させた場合と比較して充放電サイクル特性の改善効果が小さい。
【0014】
また、前出特開平10−324523号公報及び特開2002−68750号公報には湿式反応によって微細な酸化コバルト粒子粉末を得る製造法が記載されているが、酸化コバルト粒子粉末には、Ni、Al、Fe、Ti、Ca等の異種金属元素が含有されておらず、当該酸化コバルト粒子粉末を用いて得られるコバルト酸リチウム粒子粉末からなる正極活物質は、本発明に係る正極活物質に対して熱安定性が十分とは言い難いものである。
【0015】
そこで、本発明は、初期放電容量に優れ、且つ、高温下での充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用正極活物質及び該正極活物質の前駆体であるコバルト酸化物粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0016】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0017】
即ち、本発明は、Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子粉末であり、組成(Co(1−x)Mx)3O4(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素である。)であって、BET比表面積値が0.5〜50m2/g、平均粒子径が0.01〜0.1μmであることを特徴とするコバルト酸化物粒子粉末である(本発明1)。
【0018】
また、本発明は、コバルト塩とNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の塩とを含有する溶液をアルカリ水溶液により中和し、次いで、酸化反応を行って前記異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子を得ることを特徴とする本発明1のコバルト酸化物粒子粉末の製造法である(本発明2)。
【0019】
また、本発明は、コバルト酸化物粒子の粒子表面が、Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の水酸化物で被覆されているコバルト酸化物粒子であり、組成(1−x)Co3O4・3xM(OH)y(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素、yは異種金属元素Mの価数である。)であって、BET比表面積値が0.5〜50m2/g、平均粒子径が0.01〜0.1μmであることを特徴とするコバルト酸化物粒子粉末である(本発明3)。
【0020】
また、本発明は、コバルト塩を含有する溶液をアルカリ水溶液により中和した後、酸化反応を行ってコバルト酸化物粒子を得、次いで、当該コバルト酸化物粒子を含有する水懸濁液にNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の塩を添加し、次いで、水懸濁液のpHを調整してコバルト酸化物粒子の粒子表面にNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の水酸化物を被覆処理することを特徴とする本発明3のコバルト酸化物粒子粉末の製造法である(本発明4)。
【0021】
また、本発明は、組成がLiCo(1−x)MxO2(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素である。)であり、平均粒子径が1.0〜20μmであり、c軸の格子定数が0.177x+14.051(Å)で示される値以上であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質である(本発明5)。
【0022】
また、本発明は、本発明1又は本発明3のコバルト酸化物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、熱処理することを特徴とする本発明5の非水電解質二次電池用正極活物質の製造法である(本発明6)。
【0023】
また、本発明は、本発明5の非水電解質二次電池用正極活物質を含有する正極を用いたことを特徴とする非水電解質二次電池である(本発明7)。
【0024】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0025】
先ず、本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末について述べる。
【0026】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末は、Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子粉末であり、組成は(Co(1−x)Mx)3O4(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素)である。
【0027】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末の異種金属元素の含有量xが0.001未満の場合には、コバルト酸化物粒子粉末を用いて得られる正極活物質の高温下での充放電サイクル特性が十分とは言い難いものとなる。0.15を越える場合には、コバルト酸リチウム単相を得ることが困難であり、工業的に生産するのが困難である。
【0028】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末の平均粒子径は0.01〜1.0μmであり、0.01μm未満及び1.0μmを越える場合には工業的に生産することが困難である。好ましくは0.01〜0.15μmであり、より好ましくは0.05〜0.12μmである。
【0029】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末のBET比表面積値は0.5〜50m2/gであり、0.5m2/g未満の場合には、工業的に生産することが困難であり、50m2/gを越える場合には、混合及び熱処理等における工程での粉体特性が優れるとは言い難い。より好ましくは1.0〜40m2/gであり、更により好ましくは5.0〜30m2/gである。
【0030】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子は、コバルトと異種金属元素が原子レベルで均一に分布しているため、リチウム化合物と混合し熱処理を行った場合、異種金属元素が均一にコバルトサイトに置換することが可能となる。
【0031】
まず、本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末の製造法(本発明2)について述べる。
【0032】
本発明1に係るコバルト酸化物粒子粉末は、コバルト塩を含有する溶液に異種金属元素塩の水溶液を添加し、更に、アルカリ水溶液を加えて中和反応を行った後、酸化反応を行って得ることができる。
【0033】
アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液であり、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又はそれらの混合溶液を用いるのが好ましい。
【0034】
異種金属元素の添加量は、コバルトに対して0.01〜20mol%である。好ましくは2〜18mol%である。
【0035】
中和反応に用いるアルカリ量は、含有する全金属塩の中和分に対して当量比1.0〜1.2を添加することが好ましい。
【0036】
酸化反応は、酸素含有ガスを通気することによって行う。反応温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは30〜95℃である。反応時間は5〜20時間行うことが好ましい。
【0037】
次に、本発明3に係るコバルト酸化物粒子粉末について述べる。
【0038】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子粉末は、粒子表面が異種金属元素の水酸化物で被覆されたコバルト酸化物粒子であって、組成(1−x)Co3O4・3xM(OH)y(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素、yは異種金属元素Mの価数)である。
【0039】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子粉末の異種金属元素の含有量xが0.001未満の場合には、コバルト酸化物粒子粉末を用いて得られる正極活物質の高温下での充放電サイクル特性が十分とは言い難いものとなる。0.15を越える場合には、コバルト酸リチウム単相を得ることが困難であり、工業的に生産するのが困難である。
【0040】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子の平均粒子径は0.01〜5.0μmであり、0.01μm未満及び5.0μmを越える場合には工業的に生産するのが困難である。好ましくは0.01〜0.15μmであり、より好ましくは0.05〜0.12μmである。
【0041】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子粉末のBET比表面積値は0.5〜50m2/gであり、0.5m2/g未満の場合には、工業的に生産するのが困難であり、50m2/gを越える場合には、混合及び熱処理等における工程での粉体特性が優れるとは言い難い。より好ましくは1.0〜40m2/gである。更により好ましくは5.0〜30m2/gである。
【0042】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子粉末は、異種金属元素の水酸化物をコバルト酸化物粒子に表面処理しており、サブミクロンのコバルト酸化物粒子を用いているので、リチウム化合物と混合し熱処理を行った場合、均一にコバルトサイトに置換することが可能となる。
【0043】
次に、本発明3に係る正極活物質の製造法(本発明4)について述べる。
【0044】
本発明3に係るコバルト酸化物粒子は、コバルト塩を含有する水溶液に、アルカリ水溶液を加えて中和反応を行った後、酸化反応を行いコバルト酸化物粒子を得、次いで、前記コバルト酸化物粒子を含有する溶液に異種金属元素の水溶液を添加し、更に、アルカリ水溶液を加えて異種金属元素の水酸化物によってコバルト酸化物粒子の粒子表面を被覆することによって得ることができる。
【0045】
アルカリ水溶液としては、前記アルカリ水溶液と同様である。
【0046】
異種金属元素の添加量はコバルトに対して0.1〜20mol%である。好ましくは1〜18mol%である。
【0047】
コバルト酸化物粒子を得る中和反応に用いるアルカリ水溶液の添加量は、コバルト塩の中和分に対して当量比1.0〜1.2を添加することが好ましい。
【0048】
酸化反応は、酸素含有ガスを通気することによって行う。反応温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは30〜95℃である。反応時間は5〜20時間が好ましい。
【0049】
また、異種金属元素の水酸化物の表面処理に用いるアルカリ水溶液の添加量は、異種金属塩の中和分に対して当量比1.0〜1.2を添加することが好ましい。
【0050】
表面処理を行う場合の反応溶液のpH値は8〜14が好ましい。
【0051】
次に、本発明5に係る非水電解質リチウム二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」という)について述べる。
【0052】
本発明においては、組成をLiCo(1−x)MxO2とした場合、異種金属元素含有量xは0.001〜0.15である。0.001未満の場合は充放電サイクル特性の向上に対する効果が小さく、0.15を超える場合には初期放電容量が著しく低下する。好ましくは0.01〜0.10である。
【0053】
本発明における異種金属元素は、Ni、Al、Fe、Ti、Caである。異種金属元素をコバルトサイトに置換することによって、c軸の格子定数が伸長し充放電サイクル特性が向上する。
【0054】
本発明に係る正極活物質のc軸の格子定数は0.177x+14.051(Å)で示される値以上である。c軸の格子定数が前記範囲未満の場合には、リチウムイオンの脱挿入反応に伴う格子の伸縮膨張が顕著になり、充放電サイクル特性が低下する。c軸の格子定数の上限値は14.180Å程度であり、異種元素の置換量を増加させることによって14.180Åを超える正極活物質を得ることができるが、初期放電容量も低下することになるため好ましくない。また、a軸の格子定数は2.810〜2.830Åが好ましく、より好ましくは2.815〜2.825Åである。
【0055】
本発明に係る正極活物質の平均粒子径は1.0〜20μmが好ましい。平均粒子径が1μm未満の場合には、充填密度の低下や電解液との反応性が増加するため好ましくない。20μmを超える場合には、工業的に生産することが困難となる。好ましくは2.0〜10μmである。
【0056】
本発明に係る正極活物質のBET比表面積は0.1〜2.5m2/gが好ましい。BET比表面積値が0.1m2/g未満の場合には、工業的に生産することが困難となる。2.5m2/gを超える場合には充填密度の低下や電解液との反応性が増加するため好ましくない。より好ましくは0.1〜2.0m2/g、更により好ましくは0.1〜1.7m2/gである。
【0057】
本発明に係る正極活物質の結晶子サイズは、400〜1200Åであることが好ましい。
【0058】
次に、本発明5に係る正極活物質の製造法(本発明6)について述べる。
【0059】
本発明5に係る正極活物質は、前記本発明1又は本発明3のコバルト酸化物とリチウム化合物とを混合し、熱処理を行う。
【0060】
本発明1又は本発明3のコバルト酸化物とリチウム化合物の混合は、均一に混合することができれば乾式、湿式のどちらでもよい。
【0061】
リチウムの混合比は、コバルト及び異種金属元素に対してモル比で0.95〜1.05であることが好ましい。
【0062】
熱処理温度は、高温規則相であるLiCoO2が生成する600℃〜900℃であることが好ましい。600℃以下の場合には擬スピネル構造を有する低温相であるLiCoO2が生成し、900℃以上の場合にはリチウムとコバルトの位置がランダムである高温不規則相のLiCoO2が生成する。
【0063】
次に、本発明7に係る二次電池について述べる。
【0064】
本発明に係る正極活物質を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等が好ましく、結着剤としてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が好ましい。
【0065】
本発明に係る正極活物質を用いて二次電池を製造する場合には、前記正極、負極及び電解質から構成される。
【0066】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、グラファイトや黒鉛等を用いることができる。
【0067】
また、電解液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの組み合わせ以外に、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等のカーボネート類や、ジメトキシエタン等のエーテル類の少なくとも1種類を含む有機溶媒を用いることができる。
【0068】
さらに、電解質としては、六フッ化リン酸リチウム以外に、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩の少なくとも1種類を上記溶媒に溶解して用いることができる。
【0069】
本発明に係る正極活物質を用いて製造した二次電池は、初期放電容量が140〜160mAh/gが好ましく、より好ましくは145〜160mAh/g、60℃での50サイクル後の容量維持率が90%以上が好ましく、より好ましくは92〜99%である。
【0070】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0071】
正極活物質の同定は、粉末X線回折(RIGAKU Cu−Kα 40kV 40mA)を用いた。また、前記粉末X線回折の各々の回折ピークから格子定数を計算した。
【0072】
正極活物質の結晶子サイズは、前記粉末X線回折の各々の回折ピークから計算した。
【0073】
また、元素分析にはプラズマ発光分析装置(セイコー電子工業製 SPS4000)を用いた。
【0074】
正極活物質の電池特性は、下記製造法によって正極、負極及び電解液を調製しコイン型の電池セルを作製して評価した。
【0075】
<正極の作製>
正極活物質と導電剤であるアセチレンブラック及び結着剤のポリフッ化ビニリデンを重量比で85:10:5となるように精秤し、乳鉢で十分に混合してからN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを調整した。次に、このスラリーを集電体のアルミニウム箔に150μmの膜厚で塗布し、150℃で真空乾燥してからφ16mmの円板状に打ち抜き正極板とした。
【0076】
<負極の作製>
金属リチウム箔をφ16mmの円板状に打ち抜いて負極を作製した。
【0077】
<電解液の調製>
炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの体積比50:50の混合溶液に電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル混合して電解液とした。
【0078】
<コイン型電池セルの組み立て>
アルゴン雰囲気のグローブボックス中でSUS316製のケースを用い、上記正極と負極の間にポリプロピレン製のセパレータを介し、さらに電解液を注入してCR2032型のコイン電池を作製した。
【0079】
<電池評価>
前記コイン型電池を用いて、二次電池の充放電試験を行った。測定条件としては、60℃の温度下で、正極に対する電流密度を0.2mA/cm2とし、カットオフ電圧が3.0Vから4.25Vの間で充放電を繰り返した。
【0080】
<コバルト酸化物粒子粉末の製造(本発明2による製造)>
コバルトを含有する溶液に、硫酸アルミニウム(コバルトに対して5.3mol%)を添加し、コバルト及びアルミニウムの中和分に対して1.05当量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し中和反応させた。次いで、空気を吹き込んで90℃で20時間酸化反応を行った。得られたアルミニウム含有コバルト酸化物粒子は、Co3O4単相であり、Al含有量が5.3mol%((Co(1−x)Alx)3O4におけるxは、0.05)、平均粒子径が0.05μm、BET比表面積値が23m2/gであった。
【0081】
<正極活物質の製造>
前記アルミニウム含有コバルト酸化物とリチウム化合物とを、リチウム/(コバルト+アルミニウム)のモル比が1.03となるよう所定量を十分混合し、混合粉を酸化雰囲気下、900℃で10時間焼成してアルミニウム含有コバルト酸リチウム粒子粉末を得た。
【0082】
得られたアルミニウム含有コバルト酸リチウム粒子粉末は、平均粒子径5.0μm、BET比表面積値は0.5m2/g、a軸の格子定数が2.817Å、c軸の格子定数が14.064Å、結晶子サイズは642Åであった。Al含有量はLiCo(1−x)AlxO2とした場合にxが0.05であった。
【0083】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が150mAh/g、60℃での50サイクル後の容量維持率が95%/50cycleであった。
【0084】
【作用】
本発明において最も重要な点は、異種金属元素を含有するコバルト酸リチウム粒子粉末からなる正極活物質を用いた二次電池は、二次電池としての初期放電容量を維持し、充放電反応に伴う充放電サイクル特性に優れ、しかも、高温下でも充放電サイクル特性が劣化しないという点である。
【0085】
本発明において正極活物質のc軸の格子定数が大きいのは、コバルト酸化物粒子を合成する段階であらかじめ異種金属元素を含有させるか、又は、異種金属元素の水酸化物をコバルト酸化物粒子の表面に付着させることによって、原子レベルでコバルトと異種金属元素が均一に分布し、該コバルト酸化物粒子を用いて得られる正極活物質は、異種金属元素がコバルトサイトに均一に置換することによるものと本発明者は推定している。
【0086】
また、正極活物質のc軸の格子定数があらかじめ大きいので、リチウムイオンの脱挿入反応が容易に行われ、リチウムイオンの脱挿入反応に伴う結晶構造のc軸方向の収縮膨張による格子の崩壊を抑制することができるものと推定している。従って、高温下での充放電サイクル特性も優れるものと考えている。
【0087】
一方、リチウム化合物、コバルト化合物及び異種金属元素を乾式混合し仮焼した場合には、異種金属元素の組成分布が不均一となり、本発明の効果は得られない。
【0088】
本発明において初期放電容量を保持できるのは、本来のLiCoO2が有する初期放電容量を低下させない範囲で異種金属元素を含有させたことによる。
【0089】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0090】
実施例1〜6
異種金属元素の種類及び含有量を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にしてコバルト酸化物粒子粉末を得た。
【0091】
このときの製造条件及び得られたコバルト酸化物粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例7〜12
コバルト酸化物粒子粉末の種類、リチウムの混合割合及び焼成温度を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして正極活物質を得た。
【0094】
このときの製造条件を表2に、得られた正極活物質の諸特性及びコイン型電池の電池特性を表3に示す。
【0095】
比較例1は異種金属元素を含有しないコバルト酸化物粒子粉末であり、比較例3は異種金属元素を含有しないコバルト酸リチウムである。比較例4〜11は、比較例2に示した特性を有するコバルト酸化物粒子粉末、異種金属元素の原料及びリチウム原料を乾式法により混合し、900℃で焼成して異種金属元素を含有するコバルト酸リチウムを得た。
【0096】
このときの製造条件を表2に、得られた正極活物質の諸特性及びコイン型電池の電池特性を表3に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
実施例13(本発明3による製造)
0.5mol/lのコバルトを含有する溶液に、コバルトの中和分に対して1.05当量の水酸化ナトリウム水溶液を添加し中和反応させた。次いで、空気を吹き込みながら90℃で20時間酸化反応を行ってコバルト酸化物粒子を得た。得られたコバルト酸化物粒子を含有する溶液中に、硫酸ニッケルをコバルトに対して5.3mol%を添加し、さらに中和分の水酸化ナトリウム水溶液を添加してコバルト酸化物粒子の粒子表面を水酸化ニッケルによって表面処理した。このときの反応溶液のpHは11であった。得られた水酸化ニッケルを表面処理したコバルト酸化物粒子はCo3O4単相であって、Ni含有量が5.3mol%((1−x)Co3O4・3xNi(OH)2におけるxは0.05)、平均粒子径が0.05μm、BET比表面積値が27.5m2/gであった。
【0100】
実施例23
前記水酸化ニッケルを表面処理したコバルト酸化物粒子とリチウム化合物とを、リチウム/(コバルト+ニッケル)のモル比が1.03mol%となるように所定量を十分混合し、混合粉を酸化雰囲気下、900℃で10時間焼成してニッケル含有コバルト酸リチウム粒子粉末を得た。
【0101】
得られたニッケル含有コバルト酸リチウム粒子粉末はX線回折の結果、コバルト酸リチウム単相であり不純物相は存在しなかった。また、平均粒子径5.0μm、BET比表面積値は0.5m2/g、a軸の格子定数が2.820Å、c軸の格子定数が14.075Å、結晶子サイズは653Åであった。Ni含有量はLiCo1−xNixO2とした場合にxが0.05であった。
【0102】
前記正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量が158mAh/g、60℃での50サイクル後の容量維持率が98%/50cycleであった。
【0103】
実施例14〜22
各種金属元素の水酸化物による表面処理における異種金属元素の種類及び含有量を種々変化させた以外は前記実施例13と同様にしてコバルト酸化物粒子粉末を得た。
【0104】
このときの製造条件及び得られたコバルト酸化物粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0105】
実施例24〜32
コバルト酸化物粒子粉末の種類及びリチウムの混合割合を種々変化させた以外は前記実施例23と同様にして正極活物質を得た。
【0106】
このときの製造条件を表5に、得られた正極活物質の諸特性及びコイン型電池の電池特性を表6に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
本発明に係る正極活物質を用いて作製したコイン型電池は、初期放電容量140〜160mAh/gを保持し、60℃での50サイクル後の容量維持率が91%以上と高いレベルにある。
【0111】
また、比較例に示す通り、各元素を乾式法により混合して含有した場合では、高温時の充放電サイクル特性の改善効果が見られない。
【0112】
【発明の効果】
本発明に係る正極活物質を用いることで、二次電池としての初期放電容量を維持し、且つ、高温下での充放電サイクル特性が改善された非水電解質二次電池を得ることができる。
Claims (7)
- Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子粉末であり、組成(Co(1−x)Mx)3O4(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素である。)であって、BET比表面積値が0.5〜50m2/g、平均粒子径が0.01〜0.1μmであることを特徴とするコバルト酸化物粒子粉末。
- コバルト塩とNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の塩とを含有する溶液をアルカリ水溶液により中和し、次いで、酸化反応を行って前記異種金属元素を含有するコバルト酸化物粒子を得ることを特徴とする請求項1記載のコバルト酸化物粒子粉末の製造法。
- コバルト酸化物粒子の粒子表面が、Ni、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の水酸化物で被覆されているコバルト酸化物粒子であり、組成(1−x)Co3O4・3xM(OH)y(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素、yは異種金属元素Mの価数である。)であって、BET比表面積値が0.5〜50m2/g、平均粒子径が0.01〜0.1μmであることを特徴とするコバルト酸化物粒子粉末。
- コバルト塩を含有する溶液をアルカリ水溶液により中和した後、酸化反応を行ってコバルト酸化物粒子を得、次いで、当該コバルト酸化物粒子を含有する水懸濁液にNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の塩を添加し、次いで、水懸濁液のpHを調整してコバルト酸化物粒子の粒子表面にNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素の水酸化物を被覆処理することを特徴とする請求項3記載のコバルト酸化物粒子粉末の製造法。
- 組成がLiCo(1−x)MxO2(0.001≦x≦0.15、MはNi、Al、Fe、Ti、Caから選ばれる一種又は二種以上の異種金属元素である。)であり、平均粒子径が1.0〜20μmであり、c軸の格子定数が0.177x+14.051(Å)で示される値以上であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項1又は請求項3記載のコバルト酸化物粒子粉末とリチウム化合物とを混合し、熱処理することを特徴とする請求項5記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造法。
- 請求項5記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含有する正極を用いたことを特徴とする非水電解質二次電池。
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