JP2003347154A - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

積層セラミック電子部品の製造方法

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JP2003347154A
JP2003347154A JP2002150390A JP2002150390A JP2003347154A JP 2003347154 A JP2003347154 A JP 2003347154A JP 2002150390 A JP2002150390 A JP 2002150390A JP 2002150390 A JP2002150390 A JP 2002150390A JP 2003347154 A JP2003347154 A JP 2003347154A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 グリーン状態で良好に積層・接着させること
ができ、かつ焼成時点での体積変化を小さく保つことの
できる積層セラミックス電子部品の製造方法の提供。 【解決手段】セラミックグリーンシート40の表面に、
第1接着層56を介して、金属膜54を所定パターンで
積層する第1積層工程と、セラミックグリーンシート4
0の表面に、第2接着層30を積層する第2積層工程
と、セラミックグリーンシート40の表面に、セラミッ
クグリーンシート40を積層する第3積層工程と、前記
第1〜第3積層工程を複数回繰り返して積層体60を得
る工程と、前記第1接着層および第2接着層を抽出除去
して抽出除去後の積層体80を得る工程と、前記積層体
80を他のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加
圧しながら積層して最終積層体90を得る工程と、前記
最終積層体90を焼成する工程とを、有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層セラミックコ
ンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、積層セラミックコンデンサなどの
積層セラミック電子部品の小型化、薄層化が急速に進ん
できたことから、より一層薄くて欠陥の少ない、誘電体
層および内部電極層を積層する方法が必要とされてい
る。
【0003】従来から、誘電体層に関してはシート成型
法、内部電極層に関しては印刷法または各種の薄膜形成
法によって形成し、各層に含まれるバインダ成分の接着
力を利用して積層する方法が主に用いられている。
【0004】一般に、成形性を確保する為に使用される
バインダ成分は、焼成工程の初期段階で分解されて除去
されるが、このバインダ成分が分解されて除去されるこ
とに伴い、体積の収縮が発生して寸法変化を生じること
がある。このような焼成過程での寸法変化を抑制し、か
つ焼結体内部に生ずる欠陥を防止するためには、バイン
ダ成分の使用量を可能な限り少なくすることが望まし
い。バインダ成分の使用量が多くなるにつれて、焼成過
程で生じる体積の収縮率が大きくなって寸法変化の度合
いが大きくなり、焼結体内部に欠陥を生じやすいからで
ある。このような理由から、バインダ成分の使用量は、
一般に体積比率で40%程度以下とされることが多い。
【0005】また、より薄い誘電体層や内部電極層を実
現するためには、より微細(目的とする厚みより小さ
い)な誘電体原料や導電材の粉末を用いる必要がある。
目的とする厚みより大きい粒径を持つ粉末を用いた場
合、該目的とする厚みを実現することはできないからで
ある。
【0006】しかしながら、用いる粉末の粒径が小さく
なるにつれて、グリーン状態の誘電体層や内部電極層に
占める粉末の比表面積は必然的に増加する。このため、
微細な粉末を用いて誘電体層や内部電極層のより一層の
薄層化を実現しようとする場合、体積比率で40%程度
以下といった少ないバインダ成分の使用量では、誘電体
層と内部電極層との各層相互間の接着性を十分に確保す
ることが困難である。
【0007】実際に、焼成後に誘電体層となるセラミッ
クグリーンシート相互の接着性を評価してみたところ、
図6に示すような結果が得られた。図6はセラミックグ
リーンシートの作製に用いたチタン酸バリウム原料粉の
平均粒径と、セラミックグリーンシートの接着強度との
関係を表したグラフである。この図6に示すように、用
いるチタン酸バリウム原料粉の平均粒径が小さくなるに
つれて、セラミックグリーンシートの接着強度が低下し
ていくことが分かる。なお、この評価に際しては、セラ
ミックグリーンシートに含まれる有機バインダとしてポ
リビニルブチラール樹脂を用い、有機バインダの体積比
率を30%とし、圧着条件として70℃に加温して10
MPaの圧力で1分間、加圧した後、垂直に剥離して、
セラミックグリーンシートの接着強度を求めた。
【0008】その一方で、焼成後の誘電体層を形成する
ために用いられるセラミックグリーンシートは、一般
に、離型処理を施したPET等からなるキャリア基材上
に形成される。より薄い誘電体層を実現するためには、
キャリア基材上に誘電体ペーストをできる限り薄く形成
して得られるセラミックグリーンシートを用いる必要が
あるが、通常の離型処理が施されたキャリア基材上に、
誘電体ペーストを薄く形成した場合、はじきによるシー
ト欠陥を生じることがある。このため、誘電体ペースト
を薄く形成することを望む場合、キャリア基材に施す離
型処理を通常よりも弱くしておく必要がある。
【0009】しかしながら、キャリア基材に施される離
型処理を通常より弱くした場合、はじきによるシート欠
陥は防止できるが、はじきを防止しようとする余りに離
型処理を弱くしすぎると、セラミックグリーンシートを
キャリア基材から剥離することが困難となる。
【0010】また、セラミックグリーンシートの厚みが
薄くなるにつれて、セラミックグリーンシートをキャリ
ア基材から剥離したときに発生する静電気力の影響が大
きくなるため、上記各層相互間の接着性の低下と相まっ
て、他の層と接着して一体に積層・成形することが困難
になる。このようなグリーンシートおよび内部電極層の
接着性/積層性の低さを改善するための手段として、基
本的にバインダ成分のみからなる接着層若しくは粘着層
を介在させる方法が提案されている(たとえば特許29
70238号(特開平6−61090号)、特許309
7007号(特開平6−232000号)、特開平9−
293626号、特開2000−31623号など)。
しかしながら、このような方法で積層したグリーン体を
そのまま焼成した場合には、セラミック成分を含まない
接着層/粘着層が、焼成工程初期の有機バインダの分解
除去ステップにおいて空隙となり、焼成体におけるデラ
ミネーション/クラックなどの欠陥原因となりやすいと
いう問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、極め
て薄いセラミックグリーンシートと、極めて薄い金属膜
などの内部電極層とを、グリーン状態で良好に積層・接
着させることができ、かつ焼成時点での体積変化を小さ
く保つことのできる積層セラミック電子部品の製造方法
を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、各層をグリ
ーン状態で良好に積層・接着させることと、焼成時点で
の体積変化を小さく保つこととの相反する課題を同時に
解決するために種々の可能性を検討した。その結果、特
定溶媒にのみ溶解する接着層を間に挟んで各層を積層し
た後、該特定の溶媒で前記接着層を溶解させて、セラミ
ックグリーンシートと金属膜とを落とし込みつつ積層・
接着させ、しかも焼成前に加熱下で加圧することで、た
とえば2μm未満の極めて薄いセラミックグリーンシー
トと、たとえば1μm未満の極めて薄い金属膜とを、グ
リーン状態で良好に積層・接着させることができ、しか
も焼成時点での体積変化を小さく保ちつつ、焼成可能で
あることを見出し、本発明に到達した。
【0013】すなわち、本発明に係る積層セラミック電
子部品の製造方法は、誘電体原料および第1有機バイン
ダを含むセラミックグリーンシートの表面に、前記第1
有機バインダと異なる第2有機バインダを主成分とする
第1接着層を介して、金属膜を所定パターンで積層する
第1積層工程と、前記金属膜が形成された前記セラミッ
クグリーンシートの表面に、前記第1有機バインダと異
なる第3有機バインダを主成分とする第2接着層を積層
する第2積層工程と、前記第2接着層が形成された前記
セラミックグリーンシートの表面に、誘電体原料および
第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積
層する第3積層工程と、前記第1〜第3積層工程を複数
回繰り返して積層体を得る工程と、前記積層体に、前記
第1有機バインダを実質的に溶解せず、前記第2有機バ
インダおよび第3有機バインダを実質的に溶解する抽出
用溶媒を供給し、前記第1接着層および第2接着層を抽
出除去して抽出除去後の積層体を得る工程と、前記抽出
除去後の積層体を焼成する工程とを、有する。
【0014】本発明では、第2有機バインダと第3有機
バインダは、いずれも第1有機バインダと異なっていれ
ば良い。第2有機バインダと第3有機バインダは、同一
の材質で構成されていてもよいし、異なった材質で構成
されていてもよく、本発明で用いる抽出用溶媒にて実質
的に溶解するような材質を適宜選択して用いることがで
きる。
【0015】本発明では、実質的に溶解とは、必ずしも
完全に溶解していなくてもよく、第1接着層および第2
接着層を抽出除去できる程度に溶解していればよい、と
いう趣旨である。
【0016】本発明では、前記積層体の下方から吸引し
ながら、該積層体に抽出用溶媒を供給することが好まし
い。吸引しながら抽出用溶媒を供給することで、溶解し
た第2有機バインダおよび第3有機バインダを効率よく
取り除くことが可能となる。なお、吸引以外にも、たと
えばスポンジなどの吸収体を用いて、逐次、吸収させて
取り除くことも可能である。
【0017】本発明では、前記抽出除去後の積層体を他
のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧しなが
ら積層して得られる最終積層体を焼成することが好まし
い。
【0018】本発明では、前記第1有機バインダとして
非水溶性の樹脂を用い、前記第2有機バインダおよび第
3有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の
樹脂を用いることができる。また、前記第1有機バイン
ダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用い、前記第2有機バ
インダおよび第3有機バインダとして有機溶剤可溶性の
樹脂を用いることができる。
【0019】非水溶性の樹脂としては、たとえばエチル
セルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂など
が挙げられる。水溶性の樹脂としては、たとえばポリビ
ニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチル
セルロース、水溶性アクリル樹脂などが挙げられる。加
水分解性の樹脂としては、アニオン電着型アクリルエマ
ルジョン樹脂、カチオン電着型アクリルエマルジョン樹
脂などが挙げられる。
【0020】有機溶剤不溶性の樹脂としては、たとえば
ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロースなどが挙げられる。有機溶剤可溶性の
樹脂としては、たとえばエチルセルロース、ポリビニル
ブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0021】本発明では、積層用基体上に前記第2接着
層を形成した後、該第2接着層上に誘電体原料および第
1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層
し、しかる後に前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返
すことが好ましい。この場合に前記基体として多孔質基
体を用いることが好ましい。積層に際して、積層用の基
体として多孔質フィルムなどの多孔質基体を用いること
により、積層時の空気巻き込みによる積層欠陥の発生を
抑止できると共に、後続する第1、第2接着層の抽出除
去処理をより容易にすることが可能となる。本発明で
は、また、焼成後に保護層となるところの、誘電体原料
及び第1有機バインダを含む50〜150μm程度の厚
さのグリーンシート上に直接前記第1〜第3積層工程を
複数回繰り返して積層体を得ることもできる。この場合
は、後続する第1、第2接着層の抽出除去処理がやや困
難になるため、抽出処理時間を調整する必要がある。
【0022】本発明では、金属膜は、薄膜形成法によっ
て形成されたものであっても良く、印刷法により形成さ
れたものであっても良い。印刷法により形成する場合に
は、導電材ペーストを所定パターンで形成するようにす
ればよい。ただし、より一層の薄層化を実現するために
は、薄膜形成法により形成されたものであることが好ま
しい。
【0023】本発明では、焼成する工程の前に、前記他
のセラミックグリーンシートと共に積層して得られた最
終積層体を切断することが好ましい。
【0024】
【作用】本発明によると、極薄の層間を実現するために
必要な、微細誘電体原料を使用して作製されたそれ自体
の接着性が比較的低いセラミックグリーンシートと、極
薄の電極厚を実現するために必要な、印刷法で作製され
たそれ自体の接着性が比較的低い金属膜あるいは薄膜法
で作成されたそれ自体は全く接着性を持たない金属膜と
を、十分な接着性を持つように設定可能な実質的にバイ
ンダ成分で構成される第1〜第2接着層を介在させて積
層する。このため、容易に積層・接着させて積層体を得
ることができる。すなわち、成形性を確保するために添
加されるバインダ成分の使用量をたとえば体積比率で4
0%程度以下と、焼成時点での体積変化を小さく保つこ
とのできる程度に少なくし、かつより薄い誘電体層や内
部電極層を実現するために、目的とする厚みより小さい
粒径を持つ微細な誘電体原料や導電材の粉末を用いて
も、グリーン状態での誘電体層と内部電極層との各層相
互間の接着性を十分に確保することができる。
【0025】焼成の際に余分な層となる第1〜第2接着
層は、該第1〜第2接着層を構成する第2有機バインダ
および第3有機バインダ分のみを実質的に溶解するよう
選定された抽出用溶媒と、前記積層体とを接触させるこ
とにより抽出除去される。この抽出溶媒は、セラミック
グリーンシートに含まれる第1有機バインダを実質的に
溶解しないので、前記抽出除去処理によってもセラミッ
クグリーンシートは抽出除去されず、金属膜と共に積層
体内に残される。
【0026】第1〜第2接着層が抽出除去される際に生
じることが予想される空隙は、好ましくは引き続き行わ
れる最終的な加熱下の加圧成形によって焼成前に消滅さ
せることができ、焼成後の欠陥発生を抑制できる。
【0027】第1〜第2接着層は、実質的にバインダ成
分のみからなるため、粉体を含有するセラミックグリー
ンシートとは異なり、容易に1μm未満の厚さとするこ
とが可能であり、後述の抽出処理で容易に除去できる。
【0028】本発明方法によって、従来の方法では実現
不可能であった、厚さ2μm未満の誘電体層と、厚さ1
μm未満の内部電極層を持つ積層セラミック電子部品を
比較的容易に製造することが可能となる。
【0029】本発明方法の対象となる積層セラミック電
子部品としては、特に限定されないが、積層セラミック
コンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリ
スタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実
装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。図1は本発明方法により製造さ
れる積層セラミック電子部品としての積層セラミックコ
ンデンサを示す一部破断断面図、図2(A)〜図2
(H)は図1の積層セラミックコンデンサの製造方法の
一例を示す工程図、図3は実施例1の焼結体の断面を走
査型電子顕微鏡で観察した写真、図4は図3の要部拡大
写真、図5は比較例1の焼結体の断面を光学顕微鏡で観
察した写真、図6はセラミックグリーンシートの作製に
用いたチタン酸バリウム原料粉の平均粒径と、セラミッ
クグリーンシートの接着強度との関係を表したグラフで
ある。
【0031】図1に示すように、本発明方法により製造
される積層セラミック電子部品としての積層セラミック
コンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6
と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、
誘電体層10と、第1内部電極層12と、第2内部電極
層14とを有し、誘電体層10の間に、第1内部電極層
12と第2内部電極層14とが交互に積層してある多層
構造を持つ。各第1内部電極層12の一端は、コンデン
サ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子
電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、各
第2内部電極層14の一端は、コンデンサ素体4の第2
端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に
対して電気的に接続してある。
【0032】内部電極層12および14は、後述する金
属膜54(図2参照)と同じ材質で構成されるが、その
厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ金属膜54よ
りも厚くなる。
【0033】誘電体層10は、後述するセラミックグリ
ーンシート40(図2参照)に含まれる誘電体原料と同
じ材質で構成される。誘電体層10の積層数や厚み等の
諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよい。本実
施形態では、各誘電体層10の厚みは、数μm程度が一
般的である。本実施形態では2μm未満とすることも可
能である。
【0034】端子電極6および8の材質も特に限定され
ないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金な
どが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使
用することができる。端子電極6および8の厚みは特に
限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0035】このような積層型セラミックコンデンサ2
の形状やサイズは目的や用途に応じて適宜決定すればよ
い。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合
は、通常、0.6〜3.2mm×0.3〜1.6mm×
0.1〜1.2mm程度である。
【0036】次に、本実施形態に係る積層セラミックコ
ンデンサ2の製造方法の一例を説明する。本実施形態で
は、図2(A)〜図2(G)に示すように、積層用基体
20上に、第2接着層30を介してセラミックグリーン
シート40を積層し、しかる後に第1〜第3積層工程を
複数回繰り返して一次積層体60を得る場合を例示す
る。なお、金属膜54として薄膜形成法により形成され
る場合を例示する。
【0037】図2(A)に示すように、本実施形態で
は、積層用基体20として、たとえば多孔質高密度ポリ
エチレンフィルムやポリエステル不織布などの多孔質基
体を用いることが好ましい。積層用基体20として多孔
質基体を用いることにより、積層時の空気巻き込みによ
る積層欠陥の発生を抑止できると共に、抽出処理をより
容易にすることが可能となる。積層用基体20の厚みは
特に限定されず、たとえば0.05〜1.0mm程度の
ものが好適に用いられる。
【0038】本実施形態では、このような積層用基体2
0の表面に、キャリア基材(たとえばアルキド系樹脂な
どによる離型処理を施したPETフィルムなど)32上
に剥離可能に形成された第2接着層30を接触するよう
に積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度で押圧す
る。その結果、第2接着層30は、積層用基体20の表
面に良好に接着し、その後、キャリア基材32を引き剥
がすことで、積層用基体20の表面に第2接着層30が
転写される。
【0039】第2接着層30は、後述するセラミックグ
リーンシート40に含まれる第1有機バインダと異なる
第3有機バインダを主成分とする。
【0040】たとえば、後述する第1有機バインダとし
て非水溶性の樹脂を用いる場合には、第3有機バインダ
として水溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いるこ
とができる。第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の
樹脂を用いる場合には、第3有機バインダとして有機溶
剤可溶性の樹脂を用いることができる。
【0041】第2接着層30での第3有機バインダの含
有量は、実質的には100重量%で構成されていること
が好ましい。ただし、必要に応じて可塑剤などの添加物
が30重量%程度以下、含有されても良い。
【0042】第2接着層30の厚みは、好ましくは0.
1〜1.0μm程度である。
【0043】第2接着層30は、キャリア基材32上
に、たとえば第3有機バインダのエマルジョンを塗布・
乾燥して形成することができる。
【0044】次に、図2(B)に示すように、第2接着
層30の表面に、キャリア基材(たとえばシリコーン系
樹脂などによる離型処理を施したPETフィルムなど)
42上に剥離可能に形成されたセラミックグリーンシー
ト40を接触するように積層させ、両者を、たとえば常
温程度の温度で押圧する。その結果、第2接着層30に
含まれる第3有機バインダの作用により、セラミックグ
リーンシート40は、第2接着層30の表面に良好に接
着し、その後、キャリア基材42を引き剥がすことで、
第2接着層30の表面に、セラミックグリーンシート4
0が転写される。
【0045】セラミックグリーンシート40は、第1有
機バインダと誘電体原料とを含有する。たとえば、第3
有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の樹
脂を用いる場合には、第1有機バインダとして非水溶性
の樹脂を用いることができる。第3有機バインダとして
有機溶剤可溶性の樹脂を用いる場合には、第1有機バイ
ンダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用いることができ
る。
【0046】セラミックグリーンシート40での第1有
機バインダの含有量は、好ましくは40体積%以下、よ
り好ましくは25〜35体積%程度である。本発明で
は、セラミックグリーンシート40に含まれるバインダ
量を少なくしても、特定の方法を用いて積層していくの
で、積層時の接着不良を生じるおそれは少ない。
【0047】誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物
となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化
物、有機金属化合物などから適宜選択され、適宜混合し
て用いることができる。誘電体原料の平均粒径は、たと
えば0.5μm未満程度である。
【0048】セラミックグリーンシート40での誘電体
原料の含有量は、好ましくは40体積%以上、より好ま
しくは45〜60体積%程度である。
【0049】セラミックグリーンシート40の厚みは、
好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下
である。
【0050】セラミックグリーンシート40は、キャリ
ア基材42上に、たとえばドクターブレード法などによ
り、誘電体原料と第1有機バインダを含む誘電体スラリ
ーを塗布・乾燥して形成することができる。
【0051】次に、図2(C)に示すように、セラミッ
クグリーンシート40の表面に、金属膜転写用部材50
の第1接着層56が接触するように積層させ、両者を、
たとえば常温程度の温度で押圧する。その結果、第1接
着層56の作用により、所定パターンの金属膜54は、
セラミックグリーンシート40の表面に良好に接着し、
その後、キャリア基材52を引き剥がすことでセラミッ
クグリーンシート40の表面に金属膜54が転写される
(第1積層工程)。
【0052】本実施形態で用いる金属膜転写用部材50
は、背面を絶縁被覆してあるシート状導電性キャリア基
材52の表面に、陽極酸化処理による絶縁性の陽極酸化
膜52aが形成してある。陽極酸化膜52aの表面に
は、剥離可能なように金属膜54が所定パターンで形成
してある。金属膜54の表面には、アニオン電着塗装法
により形成された第1接着層56が積層してある。
【0053】本実施形態では、キャリア基材52とし
て、NbまたはTaの板を用いている。キャリア基材5
2の表面粗さは、形成する金属膜54の厚さと比較して
充分に小さいことが望ましい。キャリア基材52の厚み
は、10〜100μm程度とすればよい。
【0054】キャリア基材52の表面に陽極酸化膜52
aを形成する陽極酸化処理は、たとえば、硫酸、塩酸、
硝酸、リン酸などの無機酸あるいは水酸化ナトリウム、
水酸化カリウムなどの無機アルカリ、あるいはこれらの
塩の水溶液の中で、キャリア基材52を陽極にして電解
処理することによって行うことができる。
【0055】電解処理は、電解電流がほぼ流れなくなる
まで行えば良く、処理時間は1〜5分間程度である。処
理後の基体表面は、処理電圧に依存して特有の色を呈
し、たとえばNb箔を30Vで処理した場合には、均一
な淡青色となる。
【0056】陽極酸化膜52aの厚さは、好ましくは5
0〜1000nmである。陽極酸化膜52aの厚さがあ
まりに薄いと、後工程でのアニオン電着塗装に対するレ
ジスト効果が十分でなく、キャリア基材52の陽極酸化
膜52aの表面にも第1接着層56が形成されるおそれ
がある。また、陽極酸化膜52aの厚さがあまりに厚い
と、電解めっき法による金属膜54の形成が困難になる
傾向がある。
【0057】陽極酸化膜52aの表面にパターン化した
金属膜54を形成する方法としては、たとえば、予め所
望のパターン形状の開口部を有するめっきレジスト層
(図示省略)を、キャリア基材52の陽極酸化膜52a
の表面に形成した後、前記開口部内に電解めっき法によ
り金属膜54を形成する。めっきレジスト層は、たとえ
ば、感光性レジストを全面に塗布し、所定のパターンの
マスクを介して露光した後、現像するいわゆるフォトパ
ターニング法を用いて形成することができる。めっきレ
ジスト層の材質は、金属膜54を形成するのに用いられ
るめっき液の種類に応じて適宜選択すれば良い。めっき
レジスト層の厚さは、1〜30μm程度とすれば良い。
【0058】電解めっき法により形成する金属膜54の
厚さは、用途に応じて適宜設定することができるが、た
とえば薄層化が要求されるセラミック積層コンデンサの
内部電極用としては、0.1〜1.5μm程度とすれば
良い。
【0059】金属膜54の組成に関しては、たとえばA
g,Cu,Pd,Niなどの金属もしくはこれらの合金
とすれば良く、表面性/結晶性/内部応力の調整等の目
的で添加される各種添加剤に由来するP,B,S,Cな
どの元素を含んでいても良い。
【0060】金属膜54は、単一の層から構成されてい
ても良く、あるいは2以上の組成の異なる金属膜から構
成されていても良い。
【0061】金属膜54を形成する際の電解めっき浴と
しては、たとえばニッケル金属膜を製膜する場合は、硫
酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸を主成分とするいわ
ゆるワット浴、スルファミン酸ニッケル、臭化ニッケ
ル、ほう酸を主成分とするスルファミン酸浴が、また、
銅金属膜を製膜する場合はピロリン酸銅、ピロリン酸カ
リウムを主成分とするいわゆるピロ銅浴等の広く使われ
ているめっき浴が使用できる。また、上記主成分以外
に、応力調整剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤
を含んでいても良い。
【0062】金属膜54の表面に、アニオン電着塗装法
による第1接着層56を形成するに際し、本実施形態で
はめっきレジスト層を剥離液を用いて除去する。前記第
1接着層56の形成に先立って、めっきレジスト層を除
去する場合には、剥離液の選定について第1接着層56
への悪影響を考慮する必要はなく、めっきレジスト層に
対する影響のみを考慮して有機溶剤、酸、アルカリ溶液
等の中から選択すれば良い。そして、金属膜54の表面
に、本実施形態ではアニオン電着塗装法による第1接着
層56を形成する。
【0063】第1接着層56は、前記セラミックグリー
ンシート40に含まれる第1有機バインダと異なる第2
有機バインダを主成分とする。
【0064】たとえば、第1有機バインダとして非水溶
性の樹脂を用いる場合には、第2有機バインダとして水
溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いることができ
る。第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用
いる場合には、第2有機バインダとして有機溶剤可溶性
の樹脂を用いることができる。
【0065】金属膜54の表面に第1接着層56を形成
するには、第2有機バインダのエマルジョンまたは溶液
中にキャリア基材52を浸漬し、金属膜54を陽極とし
て電解処理することにより行うことができる。金属膜5
4の厚みと同等以下の薄さの厚みを持つ第1接着層56
を形成するためには、エマルジョンの粒径または分子量
が十分小さいものを選択することが望ましい。第2有機
バインダの種類は、陽極電解によって析出可能なものを
選択するのが望ましい。
【0066】なお、上述した第2有機バインダと第3有
機バインダは、いずれも第1有機バインダと異なってい
れば良い。第2有機バインダと第3有機バインダは、同
一の材質で構成されていてもよいし、異なった材質で構
成されていてもよく、後述する抽出用溶媒にて実質的に
溶解するような材質を適宜選択して用いることができ
る。
【0067】第1接着層56の厚さは、金属膜54の厚
さと同等以下とするのが望ましいが、これは電着電圧の
設定により制御することができる。電着塗装では、印加
電圧に応じた厚みの絶縁膜が金属の表面に形成された段
階で、絶縁膜の成長が停止するからである。なお、前記
第2有機バインダのエマルジョンまたは溶液には、通常
の電着塗装法と同様に、必要に応じて有機/無機の顔料
等を添加することもでき、第1接着層56の着色あるい
は積層セラミックコンデンサ2における誘電体層と金属
膜との密着性改善、金属膜の酸化防止等の効果を持たせ
ることも可能である。
【0068】次に、図2(D)に示すように、所定パタ
ーンの金属膜54側表面に、図2(A)と同様に、キャ
リア基材32上に剥離可能に形成された第2接着層30
を接触するように積層させ、両者を、常温程度の温度で
押圧する。その結果、第2接着層30を構成する第3有
機バインダの作用により、第2接着層30は、所定パタ
ーンの金属膜54側表面に良好に接着し、その後、キャ
リア基材32を引き剥がすことで、金属膜54側表面
に、第2接着層30が転写される(第2積層工程)。さ
らに、図2(B)と同様に、キャリア基材42上に剥離
可能に形成されたセラミックグリーンシート40を接触
するように積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度
で押圧する。その結果、第2接着層30を構成する第3
有機バインダの作用により、セラミックグリーンシート
は、所定パターンの金属膜54を形成した積層体表面に
良好に接着し、その後、キャリア基材42を引き剥がす
ことで、積層体表面に、セラミックグリーンシート40
が転写される(第3積層工程)。
【0069】本実施形態では、前記第1〜第3積層工程
を複数回繰り返すことにより、図2(E)に示す、一次
積層体60を得る。
【0070】次に、図2(F)に示すように、得られた
一次積層体60の上部に、たとえば多孔質状の押さえ板
22を接触するように積層させ、両者を、好ましくは
0.1〜1MPa程度、より好ましくは0.1〜0.2
MPa程度の圧力にて加圧し、下方の基体20側から真
空吸引しながら、たとえば上部の押さえ板22側から、
前記第1有機バインダを実質的に溶解せず、前記第2有
機バインダおよび第3有機バインダを実質的に溶解する
よう選定された抽出用溶媒70を供給する。下方の基体
20側から真空吸引することにより、溶解した、第2接
着層30を構成する第3有機バインダおよび第1接着層
56を構成する第2有機バインダを、効率よく抽出除去
することができる。その結果、図2(G)に示すよう
に、金属膜54およびセラミックグリーンシート40が
落とし込まれ、確実に接着された、抽出除去後の一次積
層体80を得ることができる。
【0071】一次積層体60への抽出用溶媒70の供給
方法は、特に限定されず、たとえば上部の押さえ板22
側から浸透させるように供給すればよい。
【0072】本発明において用いられる抽出用溶媒70
は、前記第1接着層56および第2接着層30を構成す
る第2有機バインダおよび第3有機バインダとの関係で
適宜決定される。たとえば、第1有機バインダにトルエ
ン/アルコール混合溶剤に可溶で、弱アルカリ水溶液に
不溶なポリビニルブチラール樹脂を用い、第2有機バイ
ンダおよび第3有機バインダに水溶性アクリル樹脂を用
いた場合には、抽出用溶媒70としては、低濃度(たと
えば濃度1重量%程度)のアンモニア水を好適に用いる
ことができる。また、第1有機バインダに水溶性のポリ
ビニルアルコールを用い、第2有機バインダおよび第3
有機バインダにアルコール可溶性のアクリル系樹脂を用
いた場合には、抽出用溶媒70としてはメタノール変性
アルコールを好適に用いることができる。
【0073】そして、抽出用溶媒70の供給を、たとえ
ば5〜20分間程度実施した後、押さえ板22および基
体20を除去する。
【0074】次に、得られた一次積層体80を乾燥させ
る。一次積層体80の乾燥は、たとえば70〜100℃
程度の温度で、60〜120分間程度行えばよい。
【0075】次に、図2(H)に示すように、乾燥後の
一次積層体80を、他のセラミックグリーンシートと共
に加熱下で加圧して積層して焼成前素子本体(最終積層
体)90を得る。具体的には、たとえば乾燥後の一次積
層体80の上下から、別途、準備した50〜150μm
程度の厚いセラミックグリーンシート30aを挟み、金
型に挿入して、70〜100℃程度に加温した後、10
〜50MPa程度の圧力で加圧して焼成前素子本体(最
終積層体)90を得る。乾燥後の一次積層体80を、他
のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧して積
層することにより、第1接着層56および第2接着層3
0が抽出除去される際に生じることが予想される空隙を
焼成前に消滅させることができ、焼成後の欠陥発生を抑
制することができる。
【0076】次に、焼成前素子本体90を、個々のチッ
プに切断してグリーンチップを得る。
【0077】次に、グリーンチップに対して脱バインダ
処理および焼成処理を行う。グリーンチップの脱バイン
ダ処理は、焼成前に行われるが、特に金属膜(焼成後に
は内部電極12,14になる)にNiやNi合金などの
卑金属を含む場合には、空気雰囲気において、昇温速度
を5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃
/時間、保持温度を150〜400℃、より好ましくは
200〜300℃、保持時間を0.5〜24時間、より
好ましくは5〜20時間とする。
【0078】グリーンチップの焼成雰囲気は、金属膜の
種類に応じて適宜決定すればよいが、NiやNi合金な
どの卑金属を含む場合には、焼成雰囲気の酸素分圧を1
〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧
が低すぎると金属膜の金属が異常焼結を起こして途切れ
てしまい、酸素分圧が高すぎると金属膜が酸化される傾
向にある。また、焼成時の保持温度は1100〜140
0℃、より好ましくは1200〜1380℃である。こ
の保持温度が低すぎると緻密化が不充分となり、保持温
度が高すぎると金属膜の金属の異常焼結による電極の途
切れまたは内部電極材質の拡散により容量温度特性が悪
化する傾向にある。
【0079】これ以外の焼成条件としては、昇温速度を
50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300
℃/時間、温度保持時間を0.5〜8時間、より好まし
くは1〜3時間、冷却速度を50〜500℃/時間、よ
り好ましくは200〜300℃/時間とし、焼成雰囲気
は還元性雰囲気とすることが望ましく、雰囲気ガスとし
てはたとえば窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを加湿し
て用いることが望ましい。
【0080】還元性雰囲気で焼成した場合は、コンデン
サチップの焼結体にアニールを施すことが望ましい。上
述した脱バインダ処理、焼成およびアニール工程におい
て、窒素ガスや混合ガスを加湿するためには、たとえば
ウェッターなどを用いることができる。この場合の水温
は5〜75℃とすることが望ましい。
【0081】以上のようにして、図1に示すコンデンサ
素体4が得られる。この得られたコンデンサ素体4の両
端部に、端子電極6および8を形成すれば、積層セラミ
ック電子部品としての積層セラミックコンデンサ2が得
られる。
【0082】本実施形態によれば、極薄の層間を実現す
るために必要な、微細誘電体原料を使用して作製された
それ自体の接着性が比較的低いセラミックグリーンシー
ト40と、極薄の電極厚を実現するために必要な薄膜法
で作成されたそれ自体は全く接着性を持たない金属膜5
4とを、十分な接着性を持つように設定可能な実質的に
バインダ成分で構成される第1〜第2接着層30,56
を介在させて積層する。このため、容易に積層・接着さ
せて一次積層体60を得ることができる。
【0083】この得られた一次積層体60は、セラミッ
クグリーンシート40と金属膜54との各層相互間の接
着性が十分に確保されている。その結果、本実施形態に
よれば、厚さ2μm未満の誘電体層10と、厚さ1μm
未満の内部電極層12,14を持つ積層セラミックコン
デンサ2を比較的容易に製造することが可能となる。
【0084】以上、本発明の実施形態について説明して
きたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0085】たとえば、上述した実施形態では、一次積
層体60の基体20側から真空吸引しながら抽出用溶媒
70を供給することとしてあるが、真空吸引を行うこと
なく、たとえばスポンジなどの吸収体を用いて、溶解し
た第2有機バインダおよび第3有機バインダを逐次、吸
収させて取り除くようにしてもよい。
【0086】また、金属膜54は印刷法により形成され
たものであっても良い。印刷法により形成する場合に
は、導電材ペーストを所定パターンで形成するようにす
ればよい。
【0087】また、上述した実施形態では、セラミック
グリーンシート40の表面に所定パターンの金属膜54
を形成する方法として直接転写法を採用しているが、こ
れに限定されず、1種以上の中間媒体を介して間接的に
所定パターンの金属膜54を形成する間接転写法を採用
してもよい。
【0088】
【実施例】以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0089】実施例1 表面にシリコーン系樹脂による離型処理を施したPET
フィルム上に、平均粒径0.2μmのチタン酸バリウム
100重量部と、トルエン/アルコール混合溶剤に可溶
で、弱アルカリ水溶液に不溶なポリビニルブチラール系
樹脂10重量部とを主な成分とした誘電体スラリーを、
乾燥厚さ2μmとなるよう塗布・乾燥し、セラミックグ
リーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシー
トの見かけ密度と、チタン酸バリウムおよびポリビニル
ブチラール樹脂の真密度から計算したところ、それぞれ
の成分の体積比率は、チタン酸バリウム/ ポリビニル
ブチラール/空隙=52/28/20であった。
【0090】また、表面にアルキド系樹脂による離型処
理を施したPETフィルム上に、平均粒径10nmの水
系アクリルエマルジョンを乾燥厚さ0.5μmとなるよ
う塗布・乾燥し、第2接着層を得た。
【0091】表面に離型層として陽極酸化膜を形成した
ニオブ圧延箔を基体として、所定パターンの開口部を持
つめっきレジストを印刷し、スルファミン酸ニッケルを
主成分とするニッケルめっき浴を使用して、厚さ0.5
μmのニッケルめっき膜を形成した後、めっきレジスト
をアルカリ水溶液で溶解除去した。
【0092】めっき膜を形成したニオブ基体を、粒子径
10nmの水系アクリルエマルジョン中に浸漬し、アニ
オン電着法によって厚さ0.5μmの第1接着層を形成
した。
【0093】アニオン電着によって得られた第1接着層
は、低濃度のアンモニア水やエタノールアミン水溶液、
および低級アルコールで容易に溶解除去できるものであ
った。
【0094】多孔質高密度ポリエチレン製の一次積層用
基体に、前記第2接着層を形成したPETフィルムを常
温で押圧し、PETフィルムのみを剥離して第2接着層
を転写した(図2(A)参照)。
【0095】さらに前記セラミックグリーンシートを形
成したPETフィルムを、前記第2接着層転写済み積層
ベースに常温で押圧し、やはりPETフィルムのみを剥
離してセラミックグリーンシートを転写した(図2
(B)参照)。
【0096】転写したセラミックグリーンシート上に、
前記第1接着層付きめっき膜を形成したニオブ基体を常
温で押圧し、ニオブ基体のみを剥離し、第1接着層を介
してめっき膜を転写した。
【0097】以下、第2接着層、セラミックグリーンシ
ート、第1接着層付きめっき膜の転写を同様にして繰り
返し、電極積層数30の一次積層体を得た。
【0098】上記積層の過程において、各キャリア基体
上へのセラミックグリーンシート、第2接着層、めっき
膜の残留は全く認められず、転写は完全に行われた。
【0099】得られた一次積層体の上部に多孔質高密度
ポリエチレン製の押さえ板を配置して0.1MPaの圧
力を加えつつ、下方の多孔質一次積層用基体側から真空
吸引しながら、上部から濃度1重量%のアンモニア水を
浸透させ、第1および第2接着層を構成する水系エマル
ジョン樹脂を解膠・溶解して抽出・除去する処理を10
分間実施した後、多孔質押さえ板並びに多孔質一次積層
用基体を除去し、得られた一次積層体を乾燥した。
【0100】抽出処理前後で一次積層体の電極重なり部
分の厚さは30μm減少し、接着層がほとんど除去され
たことが確認された。
【0101】十分に乾燥した一次積層体を、別途準備し
た厚いセラミックグリーンシートのみからなる一次積層
体で上下から挟んで金型に挿入し、70℃に加温した
後、10MPaの圧力で2分間、加圧成形して最終積層
体を得た。
【0102】最終積層体を、所定の寸法形状に切断し、
常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール
(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作成し
た。
【0103】こうして得られた焼結体の断面を、研磨・
エッチングして走査型電子顕微鏡で観察した結果を、図
3〜4に示す。図3〜4に示すように、断面の観察か
ら、誘電体層厚は1.75μm、電極厚さは0.75μ
mであり、ボイド、クラック、層間の空隙等の構造的な
欠陥は観察されなかった。
【0104】実施例2 表面にアルキド系樹脂による離型処理を施したPETフ
ィルム上に、平均粒径0.2μmのチタン酸バリウム1
00重量部と、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂1
0重量部とを主な成分とした誘電体スラリーを、乾燥厚
さ2μmとなるよう塗布・乾燥し、セラミックグリーン
シートを得た。
【0105】また、表面にアルキド系樹脂による離型処
理を施したPETフィルム上に、アルコール可溶性のメ
タクリル酸系樹脂を、乾燥厚さ0.5μmとなるよう塗
布・乾燥し、第2接着層を得た。
【0106】実施例1と同様にして、ニオブ基体上にパ
ターン化された第1接着層付きめっき膜を作成した。
【0107】多孔質高密度ポリエチレン製の一次積層用
基体に、前記第2接着層を形成したPETフィルムを常
温で押圧し、PETフィルムのみを剥離して第2接着層
を転写した(図2(A)参照)。
【0108】さらに前記セラミックグリーンシートを形
成したPETフィルムを、前記第2接着層転写済み積層
ベースに常温で押圧し、やはりPETフィルムのみを剥
離してセラミックグリーンシートを転写した(図2
(B)参照)。
【0109】転写したセラミックグリーンシート上に、
前記第1接着層付きめっき膜を形成したニオブ基体を常
温で押圧し、ニオブ基体のみを剥離し、第1接着層を介
してめっき膜を転写した。
【0110】以下、第2接着層、セラミックグリーンシ
ート、第1接着層付きめっき膜の転写を同様にして繰り
返し、電極積層数30の一次積層体を得た。
【0111】実施例1と同様に、上記積層の過程におい
て、各基体上へのセラミックグリーンシート、第2接着
層、めっき膜の残留は全く認められず、転写は完全に行
われた。
【0112】得られた一次積層体の上部に多孔質高密度
ポリエチレン製の押さえ板を配置して0.1MPaの圧
力を加えつつ、下方の多孔質一次積層用基体側から真空
吸引しながら、上部からメタノール変性アルコールを浸
透させ、第1および第2接着層を構成するメタクリル酸
系樹脂および水系エマルジョン樹脂を溶解して抽出・除
去する処理を10分間実施した後、多孔質押さえ板並び
に多孔質一次積層用基体を除去し、得られた一次積層体
を乾燥した。
【0113】抽出処理前後で一次積層体の電極重なり部
分の厚さは、やはり30μm減少し、接着層がほとんど
除去されたことが確認された。
【0114】十分に乾燥した一次積層体を、別途準備し
た厚いセラミックグリーンシートのみからなる一次積層
体で上下から挟んで、金型に挿入し、70℃に加温した
後、10MPaの圧力で2分間加圧成形して最終積層体
を得た。
【0115】最終積層体を、所定の寸法形状に切断し、
常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール
(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作成し
た。
【0116】こうして得られた焼結体の断面を、実施例
1と同様に研磨・エッチングして走査型電子顕微鏡で観
察したところボイド、クラック、層間の空隙等の構造的
な欠陥は観察されなかった。
【0117】実施例3 100℃に加温した後、10MPaの圧力で2分間加圧
成形して最終積層体を得た以外は、実施例1と同様にし
て得られた焼結体の断面を、実施例1と同様に研磨・エ
ッチングして走査型電子顕微鏡で観察したところボイ
ド、クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察され
なかった。
【0118】実施例4 70℃に加温した後、50MPaの圧力で1分間加圧成
形して最終積層体を得た以外は、実施例1と同様にして
得られた焼結体の断面を、実施例1と同様に研磨・エッ
チングして走査型電子顕微鏡で観察したところボイド、
クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察されなか
った。
【0119】比較例1 第1および第2接着層の溶解抽出処理を実施しなかった
以外は、実施例1と同様にして作製したサンプルの断面
を光学顕微鏡で観察した結果を、図5に示す。
【0120】図5に示すように、欠陥が非常に多く発生
しており、コンデンサとしての機能を果たさないことが
確認された。
【0121】このように欠陥が非常に多く発生したの
は、以下の3つの理由によるものと推定される。すなわ
ち第1に、最終成形時の加熱・加圧処理時に、バインダ
成分のみからなる第1および第2接着層が存在するた
め、水平方向の塑性変形が発生したものと考えられる。
第2に、焼成前の酸化性雰囲気下での脱バインダ処理の
際に、バインダ層のみからなる接着層部分に空隙が生
じ、焼成過程で修復されることがなかったものと考えら
れる。第3に、電極および接着層のバインダが存在する
有効層部分と、有効層の上下に配置された電極も接着層
も存在しない無効層部分との、脱バインダ及び焼結に伴
う面内方向収縮率に大きな差が生じ、有効層部分に大き
な応力が発生したことによるものと考えられる。
【0122】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、極めて薄いセラミックグリーンシートと、極めて薄
い金属膜などの内部電極層とを、グリーン状態で良好に
積層・接着させることができ、かつ焼成時点での体積変
化を小さく保つことのできる積層セラミック電子部品の
製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明方法により製造される積層セラ
ミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示
す一部破断断面図である。
【図2】 図2(A)〜図2(H)は図1の積層セラミ
ックコンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】 図3は実施例1の焼結体の断面を走査型電子
顕微鏡で観察した写真である。
【図4】 図4は図3の要部拡大写真である。
【図5】 図5は比較例1の焼結体の断面を光学顕微鏡
で観察した写真である。
【図6】 図6はセラミックグリーンシートの作製に用
いたチタン酸バリウム原料粉の平均粒径と、セラミック
グリーンシートの接着強度との関係を表したグラフであ
る。
【符号の説明】
2… 積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子
部品) 4… コンデンサ素体 6… 第1端子電極 8… 第2端子電極 10… 誘電体層 12… 第1内部電極層 14… 第2内部電極層 20… 積層用基体 22… 押さえ板 30… 第2接着層 32… キャリア基材 40… セラミックグリーンシート 42… キャリア基材 50… 金属膜転写用部材 52… キャリア基材 52a… 陽極酸化膜 54… 金属膜 56… 第1接着層 60… 一次積層体 70… 抽出用溶媒 80… 抽出除去後の一次積層体 90… 焼成前素子本体(最終積層体)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体原料および第1有機バインダを含
    むセラミックグリーンシートの表面に、前記第1有機バ
    インダと異なる第2有機バインダを主成分とする第1接
    着層を介して、金属膜を所定パターンで積層する第1積
    層工程と、 前記金属膜が形成された前記セラミックグリーンシート
    の表面に、前記第1有機バインダと異なる第3有機バイ
    ンダを主成分とする第2接着層を積層する第2積層工程
    と、 前記第2接着層が形成された前記セラミックグリーンシ
    ートの表面に、誘電体原料および第1有機バインダを含
    むセラミックグリーンシートを積層する第3積層工程
    と、 前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返して積層体を得
    る工程と、 前記積層体に、前記第1有機バインダを実質的に溶解せ
    ず、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダを実
    質的に溶解する抽出用溶媒を供給し、前記第1接着層お
    よび第2接着層を抽出除去して抽出除去後の積層体を得
    る工程と、 前記抽出除去後の積層体を焼成する工程とを、有する積
    層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記積層体の下方から吸引しながら、該
    積層体に抽出用溶媒を供給する請求項1に記載の積層セ
    ラミック電子部品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記抽出除去後の積層体を他のセラミッ
    クグリーンシートと共に加熱下で加圧しながら積層して
    得られる最終積層体を焼成する請求項1または2に記載
    の積層セラミック電子部品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1有機バインダが非水溶性であ
    り、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダが水
    溶性または加水分解性である請求項1から3までのいず
    れかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記第1有機バインダが有機溶剤不溶性
    であり、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダ
    が有機溶剤可溶性である請求項1から3までのいずれか
    に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  6. 【請求項6】 基体上に前記第2接着層を形成した後、
    該第2接着層上に誘電体原料および第1有機バインダを
    含むセラミックグリーンシートを積層し、しかる後に前
    記第1〜第3積層工程を複数回繰り返す請求項1から5
    までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記基体として多孔質基体を用いる請求
    項6に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  8. 【請求項8】 薄膜形成法で形成された金属膜を用いる
    請求項1から7までのいずれかに記載の積層セラミック
    電子部品の製造方法。
  9. 【請求項9】 印刷法により形成された金属膜を用いる
    請求項1から7までのいずれかに記載の積層セラミック
    電子部品の製造方法。
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