JP3971651B2 - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の小型化、薄層化が急速に進んできたことから、より一層薄くて欠陥の少ない、誘電体層および内部電極層を積層する方法が必要とされている。
【0003】
従来から、誘電体層に関してはシート成型法、内部電極層に関しては印刷法または各種の薄膜形成法によって形成し、各層に含まれるバインダ成分の接着力を利用して積層する方法が主に用いられている。
【0004】
一般に、成形性を確保する為に使用されるバインダ成分は、焼成工程の初期段階で分解されて除去されるが、このバインダ成分が分解されて除去されることに伴い、体積の収縮が発生して寸法変化を生じることがある。このような焼成過程での寸法変化を抑制し、かつ焼結体内部に生ずる欠陥を防止するためには、バインダ成分の使用量を可能な限り少なくすることが望ましい。バインダ成分の使用量が多くなるにつれて、焼成過程で生じる体積の収縮率が大きくなって寸法変化の度合いが大きくなり、焼結体内部に欠陥を生じやすいからである。このような理由から、バインダ成分の使用量は、一般に体積比率で40%程度以下とされることが多い。
【0005】
また、より薄い誘電体層や内部電極層を実現するためには、より微細(目的とする厚みより小さい)な誘電体原料や導電材の粉末を用いる必要がある。目的とする厚みより大きい粒径を持つ粉末を用いた場合、該目的とする厚みを実現することはできないからである。
【0006】
しかしながら、用いる粉末の粒径が小さくなるにつれて、グリーン状態の誘電体層や内部電極層に占める粉末の比表面積は必然的に増加する。このため、微細な粉末を用いて誘電体層や内部電極層のより一層の薄層化を実現しようとする場合、体積比率で40%程度以下といった少ないバインダ成分の使用量では、誘電体層と内部電極層との各層相互間の接着性を十分に確保することが困難である。
【0007】
実際に、焼成後に誘電体層となるセラミックグリーンシート相互の接着性を評価してみたところ、図6に示すような結果が得られた。図6はセラミックグリーンシートの作製に用いたチタン酸バリウム原料粉の平均粒径と、セラミックグリーンシートの接着強度との関係を表したグラフである。この図6に示すように、用いるチタン酸バリウム原料粉の平均粒径が小さくなるにつれて、セラミックグリーンシートの接着強度が低下していくことが分かる。なお、この評価に際しては、セラミックグリーンシートに含まれる有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用い、有機バインダの体積比率を30%とし、圧着条件として70℃に加温して10MPaの圧力で1分間、加圧した後、垂直に剥離して、セラミックグリーンシートの接着強度を求めた。
【0008】
その一方で、焼成後の誘電体層を形成するために用いられるセラミックグリーンシートは、一般に、離型処理を施したPET等からなるキャリア基材上に形成される。より薄い誘電体層を実現するためには、キャリア基材上に誘電体ペーストをできる限り薄く形成して得られるセラミックグリーンシートを用いる必要があるが、通常の離型処理が施されたキャリア基材上に、誘電体ペーストを薄く形成した場合、はじきによるシート欠陥を生じることがある。このため、誘電体ペーストを薄く形成することを望む場合、キャリア基材に施す離型処理を通常よりも弱くしておく必要がある。
【0009】
しかしながら、キャリア基材に施される離型処理を通常より弱くした場合、はじきによるシート欠陥は防止できるが、はじきを防止しようとする余りに離型処理を弱くしすぎると、セラミックグリーンシートをキャリア基材から剥離することが困難となる。
【0010】
また、セラミックグリーンシートの厚みが薄くなるにつれて、セラミックグリーンシートをキャリア基材から剥離したときに発生する静電気力の影響が大きくなるため、上記各層相互間の接着性の低下と相まって、他の層と接着して一体に積層・成形することが困難になる。
このようなグリーンシートおよび内部電極層の接着性/積層性の低さを改善するための手段として、基本的にバインダ成分のみからなる接着層若しくは粘着層を介在させる方法が提案されている(たとえば特許2970238号(特開平6−61090号)、特許3097007号(特開平6−232000号)、特開平9−293626号、特開2000−31623号など)。
しかしながら、このような方法で積層したグリーン体をそのまま焼成した場合には、セラミック成分を含まない接着層/粘着層が、焼成工程初期の有機バインダの分解除去ステップにおいて空隙となり、焼成体におけるデラミネーション/クラックなどの欠陥原因となりやすいという問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、極めて薄いセラミックグリーンシートと、極めて薄い金属膜などの内部電極層とを、グリーン状態で良好に積層・接着させることができ、かつ焼成時点での体積変化を小さく保つことのできる積層セラミック電子部品の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、各層をグリーン状態で良好に積層・接着させることと、焼成時点での体積変化を小さく保つこととの相反する課題を同時に解決するために種々の可能性を検討した。その結果、特定溶媒にのみ溶解する接着層を間に挟んで各層を積層した後、該特定の溶媒で前記接着層を溶解させて、セラミックグリーンシートと金属膜とを落とし込みつつ積層・接着させ、しかも焼成前に加熱下で加圧することで、たとえば2μm未満の極めて薄いセラミックグリーンシートと、たとえば1μm未満の極めて薄い金属膜とを、グリーン状態で良好に積層・接着させることができ、しかも焼成時点での体積変化を小さく保ちつつ、焼成可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートの表面に、前記第1有機バインダと異なる第2有機バインダを主成分とする第1接着層を介して、金属膜を所定パターンで積層する第1積層工程と、
前記金属膜が形成された前記セラミックグリーンシートの表面に、前記第1有機バインダと異なる第3有機バインダを主成分とする第2接着層を積層する第2積層工程と、
前記第2接着層が形成された前記セラミックグリーンシートの表面に、誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層する第3積層工程と、
前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返して積層体を得る工程と、
前記積層体に、前記第1有機バインダを実質的に溶解せず、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダを実質的に溶解する抽出用溶媒を供給し、前記第1接着層および第2接着層を抽出除去して抽出除去後の積層体を得る工程と、
前記抽出除去後の積層体を焼成する工程とを、有する。
【0014】
本発明では、第2有機バインダと第3有機バインダは、いずれも第1有機バインダと異なっていれば良い。第2有機バインダと第3有機バインダは、同一の材質で構成されていてもよいし、異なった材質で構成されていてもよく、本発明で用いる抽出用溶媒にて実質的に溶解するような材質を適宜選択して用いることができる。
【0015】
本発明では、実質的に溶解とは、必ずしも完全に溶解していなくてもよく、第1接着層および第2接着層を抽出除去できる程度に溶解していればよい、という趣旨である。
【0016】
本発明では、前記積層体の下方から吸引しながら、該積層体に抽出用溶媒を供給することが好ましい。吸引しながら抽出用溶媒を供給することで、溶解した第2有機バインダおよび第3有機バインダを効率よく取り除くことが可能となる。なお、吸引以外にも、たとえばスポンジなどの吸収体を用いて、逐次、吸収させて取り除くことも可能である。
【0017】
本発明では、前記抽出除去後の積層体を他のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧しながら積層して得られる最終積層体を焼成することが好ましい。
【0018】
本発明では、前記第1有機バインダとして非水溶性の樹脂を用い、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いることができる。また、前記第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用い、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダとして有機溶剤可溶性の樹脂を用いることができる。
【0019】
非水溶性の樹脂としては、たとえばエチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。水溶性の樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂などが挙げられる。加水分解性の樹脂としては、アニオン電着型アクリルエマルジョン樹脂、カチオン電着型アクリルエマルジョン樹脂などが挙げられる。
【0020】
有機溶剤不溶性の樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。有機溶剤可溶性の樹脂としては、たとえばエチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0021】
本発明では、積層用基体上に前記第2接着層を形成した後、該第2接着層上に誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層し、しかる後に前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返すことが好ましい。この場合に前記基体として多孔質基体を用いることが好ましい。積層に際して、積層用の基体として多孔質フィルムなどの多孔質基体を用いることにより、積層時の空気巻き込みによる積層欠陥の発生を抑止できると共に、後続する第1、第2接着層の抽出除去処理をより容易にすることが可能となる。
本発明では、また、焼成後に保護層となるところの、誘電体原料及び第1有機バインダを含む50〜150μm程度の厚さのグリーンシート上に直接前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返して積層体を得ることもできる。この場合は、後続する第1、第2接着層の抽出除去処理がやや困難になるため、抽出処理時間を調整する必要がある。
【0022】
本発明では、金属膜は、薄膜形成法によって形成されたものであっても良く、印刷法により形成されたものであっても良い。印刷法により形成する場合には、導電材ペーストを所定パターンで形成するようにすればよい。ただし、より一層の薄層化を実現するためには、薄膜形成法により形成されたものであることが好ましい。
【0023】
本発明では、焼成する工程の前に、前記他のセラミックグリーンシートと共に積層して得られた最終積層体を切断することが好ましい。
【0024】
【作用】
本発明によると、極薄の層間を実現するために必要な、微細誘電体原料を使用して作製されたそれ自体の接着性が比較的低いセラミックグリーンシートと、極薄の電極厚を実現するために必要な、印刷法で作製されたそれ自体の接着性が比較的低い金属膜あるいは薄膜法で作成されたそれ自体は全く接着性を持たない金属膜とを、十分な接着性を持つように設定可能な実質的にバインダ成分で構成される第1〜第2接着層を介在させて積層する。このため、容易に積層・接着させて積層体を得ることができる。すなわち、成形性を確保するために添加されるバインダ成分の使用量をたとえば体積比率で40%程度以下と、焼成時点での体積変化を小さく保つことのできる程度に少なくし、かつより薄い誘電体層や内部電極層を実現するために、目的とする厚みより小さい粒径を持つ微細な誘電体原料や導電材の粉末を用いても、グリーン状態での誘電体層と内部電極層との各層相互間の接着性を十分に確保することができる。
【0025】
焼成の際に余分な層となる第1〜第2接着層は、該第1〜第2接着層を構成する第2有機バインダおよび第3有機バインダ分のみを実質的に溶解するよう選定された抽出用溶媒と、前記積層体とを接触させることにより抽出除去される。この抽出溶媒は、セラミックグリーンシートに含まれる第1有機バインダを実質的に溶解しないので、前記抽出除去処理によってもセラミックグリーンシートは抽出除去されず、金属膜と共に積層体内に残される。
【0026】
第1〜第2接着層が抽出除去される際に生じることが予想される空隙は、好ましくは引き続き行われる最終的な加熱下の加圧成形によって焼成前に消滅させることができ、焼成後の欠陥発生を抑制できる。
【0027】
第1〜第2接着層は、実質的にバインダ成分のみからなるため、粉体を含有するセラミックグリーンシートとは異なり、容易に1μm未満の厚さとすることが可能であり、後述の抽出処理で容易に除去できる。
【0028】
本発明方法によって、従来の方法では実現不可能であった、厚さ2μm未満の誘電体層と、厚さ1μm未満の内部電極層を持つ積層セラミック電子部品を比較的容易に製造することが可能となる。
【0029】
本発明方法の対象となる積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明方法により製造される積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示す一部破断断面図、
図2(A)〜図2(H)は図1の積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す工程図、
図3は実施例1の焼結体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真、
図4は図3の要部拡大写真、
図5は比較例1の焼結体の断面を光学顕微鏡で観察した写真、
図6はセラミックグリーンシートの作製に用いたチタン酸バリウム原料粉の平均粒径と、セラミックグリーンシートの接着強度との関係を表したグラフである。
【0031】
図1に示すように、本発明方法により製造される積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と、第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、第1内部電極層12と、第2内部電極層14とを有し、誘電体層10の間に、第1内部電極層12と第2内部電極層14とが交互に積層してある多層構造を持つ。各第1内部電極層12の一端は、コンデンサ素体4の第1端部4aの外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、各第2内部電極層14の一端は、コンデンサ素体4の第2端部4bの外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0032】
内部電極層12および14は、後述する金属膜54(図2参照)と同じ材質で構成されるが、その厚みは、焼成による水平方向の収縮分だけ金属膜54よりも厚くなる。
【0033】
誘電体層10は、後述するセラミックグリーンシート40(図2参照)に含まれる誘電体原料と同じ材質で構成される。誘電体層10の積層数や厚み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよい。本実施形態では、各誘電体層10の厚みは、数μm程度が一般的である。本実施形態では2μm未満とすることも可能である。
【0034】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みは特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0035】
このような積層型セラミックコンデンサ2の形状やサイズは目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、0.6〜3.2mm×0.3〜1.6mm×0.1〜1.2mm程度である。
【0036】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。本実施形態では、図2(A)〜図2(G)に示すように、積層用基体20上に、第2接着層30を介してセラミックグリーンシート40を積層し、しかる後に第1〜第3積層工程を複数回繰り返して一次積層体60を得る場合を例示する。なお、金属膜54として薄膜形成法により形成される場合を例示する。
【0037】
図2(A)に示すように、本実施形態では、積層用基体20として、たとえば多孔質高密度ポリエチレンフィルムやポリエステル不織布などの多孔質基体を用いることが好ましい。積層用基体20として多孔質基体を用いることにより、積層時の空気巻き込みによる積層欠陥の発生を抑止できると共に、抽出処理をより容易にすることが可能となる。積層用基体20の厚みは特に限定されず、たとえば0.05〜1.0mm程度のものが好適に用いられる。
【0038】
本実施形態では、このような積層用基体20の表面に、キャリア基材(たとえばアルキド系樹脂などによる離型処理を施したPETフィルムなど)32上に剥離可能に形成された第2接着層30を接触するように積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度で押圧する。その結果、第2接着層30は、積層用基体20の表面に良好に接着し、その後、キャリア基材32を引き剥がすことで、積層用基体20の表面に第2接着層30が転写される。
【0039】
第2接着層30は、後述するセラミックグリーンシート40に含まれる第1有機バインダと異なる第3有機バインダを主成分とする。
【0040】
たとえば、後述する第1有機バインダとして非水溶性の樹脂を用いる場合には、第3有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いることができる。第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用いる場合には、第3有機バインダとして有機溶剤可溶性の樹脂を用いることができる。
【0041】
第2接着層30での第3有機バインダの含有量は、実質的には100重量%で構成されていることが好ましい。ただし、必要に応じて可塑剤などの添加物が30重量%程度以下、含有されても良い。
【0042】
第2接着層30の厚みは、好ましくは0.1〜1.0μm程度である。
【0043】
第2接着層30は、キャリア基材32上に、たとえば第3有機バインダのエマルジョンを塗布・乾燥して形成することができる。
【0044】
次に、図2(B)に示すように、第2接着層30の表面に、キャリア基材(たとえばシリコーン系樹脂などによる離型処理を施したPETフィルムなど)42上に剥離可能に形成されたセラミックグリーンシート40を接触するように積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度で押圧する。その結果、第2接着層30に含まれる第3有機バインダの作用により、セラミックグリーンシート40は、第2接着層30の表面に良好に接着し、その後、キャリア基材42を引き剥がすことで、第2接着層30の表面に、セラミックグリーンシート40が転写される。
【0045】
セラミックグリーンシート40は、第1有機バインダと誘電体原料とを含有する。たとえば、第3有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いる場合には、第1有機バインダとして非水溶性の樹脂を用いることができる。第3有機バインダとして有機溶剤可溶性の樹脂を用いる場合には、第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用いることができる。
【0046】
セラミックグリーンシート40での第1有機バインダの含有量は、好ましくは40体積%以下、より好ましくは25〜35体積%程度である。本発明では、セラミックグリーンシート40に含まれるバインダ量を少なくしても、特定の方法を用いて積層していくので、積層時の接着不良を生じるおそれは少ない。
【0047】
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、適宜混合して用いることができる。誘電体原料の平均粒径は、たとえば0.5μm未満程度である。
【0048】
セラミックグリーンシート40での誘電体原料の含有量は、好ましくは40体積%以上、より好ましくは45〜60体積%程度である。
【0049】
セラミックグリーンシート40の厚みは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。
【0050】
セラミックグリーンシート40は、キャリア基材42上に、たとえばドクターブレード法などにより、誘電体原料と第1有機バインダを含む誘電体スラリーを塗布・乾燥して形成することができる。
【0051】
次に、図2(C)に示すように、セラミックグリーンシート40の表面に、金属膜転写用部材50の第1接着層56が接触するように積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度で押圧する。その結果、第1接着層56の作用により、所定パターンの金属膜54は、セラミックグリーンシート40の表面に良好に接着し、その後、キャリア基材52を引き剥がすことでセラミックグリーンシート40の表面に金属膜54が転写される(第1積層工程)。
【0052】
本実施形態で用いる金属膜転写用部材50は、背面を絶縁被覆してあるシート状導電性キャリア基材52の表面に、陽極酸化処理による絶縁性の陽極酸化膜52aが形成してある。陽極酸化膜52aの表面には、剥離可能なように金属膜54が所定パターンで形成してある。金属膜54の表面には、アニオン電着塗装法により形成された第1接着層56が積層してある。
【0053】
本実施形態では、キャリア基材52として、NbまたはTaの板を用いている。キャリア基材52の表面粗さは、形成する金属膜54の厚さと比較して充分に小さいことが望ましい。キャリア基材52の厚みは、10〜100μm程度とすればよい。
【0054】
キャリア基材52の表面に陽極酸化膜52aを形成する陽極酸化処理は、たとえば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ、あるいはこれらの塩の水溶液の中で、キャリア基材52を陽極にして電解処理することによって行うことができる。
【0055】
電解処理は、電解電流がほぼ流れなくなるまで行えば良く、処理時間は1〜5分間程度である。処理後の基体表面は、処理電圧に依存して特有の色を呈し、たとえばNb箔を30Vで処理した場合には、均一な淡青色となる。
【0056】
陽極酸化膜52aの厚さは、好ましくは50〜1000nmである。陽極酸化膜52aの厚さがあまりに薄いと、後工程でのアニオン電着塗装に対するレジスト効果が十分でなく、キャリア基材52の陽極酸化膜52aの表面にも第1接着層56が形成されるおそれがある。また、陽極酸化膜52aの厚さがあまりに厚いと、電解めっき法による金属膜54の形成が困難になる傾向がある。
【0057】
陽極酸化膜52aの表面にパターン化した金属膜54を形成する方法としては、たとえば、予め所望のパターン形状の開口部を有するめっきレジスト層(図示省略)を、キャリア基材52の陽極酸化膜52aの表面に形成した後、前記開口部内に電解めっき法により金属膜54を形成する。めっきレジスト層は、たとえば、感光性レジストを全面に塗布し、所定のパターンのマスクを介して露光した後、現像するいわゆるフォトパターニング法を用いて形成することができる。めっきレジスト層の材質は、金属膜54を形成するのに用いられるめっき液の種類に応じて適宜選択すれば良い。めっきレジスト層の厚さは、1〜30μm程度とすれば良い。
【0058】
電解めっき法により形成する金属膜54の厚さは、用途に応じて適宜設定することができるが、たとえば薄層化が要求されるセラミック積層コンデンサの内部電極用としては、0.1〜1.5μm程度とすれば良い。
【0059】
金属膜54の組成に関しては、たとえばAg,Cu,Pd,Niなどの金属もしくはこれらの合金とすれば良く、表面性/結晶性/内部応力の調整等の目的で添加される各種添加剤に由来するP,B,S,Cなどの元素を含んでいても良い。
【0060】
金属膜54は、単一の層から構成されていても良く、あるいは2以上の組成の異なる金属膜から構成されていても良い。
【0061】
金属膜54を形成する際の電解めっき浴としては、たとえばニッケル金属膜を製膜する場合は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸を主成分とするいわゆるワット浴、スルファミン酸ニッケル、臭化ニッケル、ほう酸を主成分とするスルファミン酸浴が、また、銅金属膜を製膜する場合はピロリン酸銅、ピロリン酸カリウムを主成分とするいわゆるピロ銅浴等の広く使われているめっき浴が使用できる。また、上記主成分以外に、応力調整剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0062】
金属膜54の表面に、アニオン電着塗装法による第1接着層56を形成するに際し、本実施形態ではめっきレジスト層を剥離液を用いて除去する。前記第1接着層56の形成に先立って、めっきレジスト層を除去する場合には、剥離液の選定について第1接着層56への悪影響を考慮する必要はなく、めっきレジスト層に対する影響のみを考慮して有機溶剤、酸、アルカリ溶液等の中から選択すれば良い。そして、金属膜54の表面に、本実施形態ではアニオン電着塗装法による第1接着層56を形成する。
【0063】
第1接着層56は、前記セラミックグリーンシート40に含まれる第1有機バインダと異なる第2有機バインダを主成分とする。
【0064】
たとえば、第1有機バインダとして非水溶性の樹脂を用いる場合には、第2有機バインダとして水溶性の樹脂または加水分解性の樹脂を用いることができる。第1有機バインダとして有機溶剤不溶性の樹脂を用いる場合には、第2有機バインダとして有機溶剤可溶性の樹脂を用いることができる。
【0065】
金属膜54の表面に第1接着層56を形成するには、第2有機バインダのエマルジョンまたは溶液中にキャリア基材52を浸漬し、金属膜54を陽極として電解処理することにより行うことができる。金属膜54の厚みと同等以下の薄さの厚みを持つ第1接着層56を形成するためには、エマルジョンの粒径または分子量が十分小さいものを選択することが望ましい。第2有機バインダの種類は、陽極電解によって析出可能なものを選択するのが望ましい。
【0066】
なお、上述した第2有機バインダと第3有機バインダは、いずれも第1有機バインダと異なっていれば良い。第2有機バインダと第3有機バインダは、同一の材質で構成されていてもよいし、異なった材質で構成されていてもよく、後述する抽出用溶媒にて実質的に溶解するような材質を適宜選択して用いることができる。
【0067】
第1接着層56の厚さは、金属膜54の厚さと同等以下とするのが望ましいが、これは電着電圧の設定により制御することができる。電着塗装では、印加電圧に応じた厚みの絶縁膜が金属の表面に形成された段階で、絶縁膜の成長が停止するからである。なお、前記第2有機バインダのエマルジョンまたは溶液には、通常の電着塗装法と同様に、必要に応じて有機/無機の顔料等を添加することもでき、第1接着層56の着色あるいは積層セラミックコンデンサ2における誘電体層と金属膜との密着性改善、金属膜の酸化防止等の効果を持たせることも可能である。
【0068】
次に、図2(D)に示すように、所定パターンの金属膜54側表面に、図2(A)と同様に、キャリア基材32上に剥離可能に形成された第2接着層30を接触するように積層させ、両者を、常温程度の温度で押圧する。その結果、第2接着層30を構成する第3有機バインダの作用により、第2接着層30は、所定パターンの金属膜54側表面に良好に接着し、その後、キャリア基材32を引き剥がすことで、金属膜54側表面に、第2接着層30が転写される(第2積層工程)。
さらに、図2(B)と同様に、キャリア基材42上に剥離可能に形成されたセラミックグリーンシート40を接触するように積層させ、両者を、たとえば常温程度の温度で押圧する。その結果、第2接着層30を構成する第3有機バインダの作用により、セラミックグリーンシートは、所定パターンの金属膜54を形成した積層体表面に良好に接着し、その後、キャリア基材42を引き剥がすことで、積層体表面に、セラミックグリーンシート40が転写される(第3積層工程)。
【0069】
本実施形態では、前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返すことにより、図2(E)に示す、一次積層体60を得る。
【0070】
次に、図2(F)に示すように、得られた一次積層体60の上部に、たとえば多孔質状の押さえ板22を接触するように積層させ、両者を、好ましくは0.1〜1MPa程度、より好ましくは0.1〜0.2MPa程度の圧力にて加圧し、下方の基体20側から真空吸引しながら、たとえば上部の押さえ板22側から、前記第1有機バインダを実質的に溶解せず、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダを実質的に溶解するよう選定された抽出用溶媒70を供給する。下方の基体20側から真空吸引することにより、溶解した、第2接着層30を構成する第3有機バインダおよび第1接着層56を構成する第2有機バインダを、効率よく抽出除去することができる。その結果、図2(G)に示すように、金属膜54およびセラミックグリーンシート40が落とし込まれ、確実に接着された、抽出除去後の一次積層体80を得ることができる。
【0071】
一次積層体60への抽出用溶媒70の供給方法は、特に限定されず、たとえば上部の押さえ板22側から浸透させるように供給すればよい。
【0072】
本発明において用いられる抽出用溶媒70は、前記第1接着層56および第2接着層30を構成する第2有機バインダおよび第3有機バインダとの関係で適宜決定される。たとえば、第1有機バインダにトルエン/アルコール混合溶剤に可溶で、弱アルカリ水溶液に不溶なポリビニルブチラール樹脂を用い、第2有機バインダおよび第3有機バインダに水溶性アクリル樹脂を用いた場合には、抽出用溶媒70としては、低濃度(たとえば濃度1重量%程度)のアンモニア水を好適に用いることができる。また、第1有機バインダに水溶性のポリビニルアルコールを用い、第2有機バインダおよび第3有機バインダにアルコール可溶性のアクリル系樹脂を用いた場合には、抽出用溶媒70としてはメタノール変性アルコールを好適に用いることができる。
【0073】
そして、抽出用溶媒70の供給を、たとえば5〜20分間程度実施した後、押さえ板22および基体20を除去する。
【0074】
次に、得られた一次積層体80を乾燥させる。一次積層体80の乾燥は、たとえば70〜100℃程度の温度で、60〜120分間程度行えばよい。
【0075】
次に、図2(H)に示すように、乾燥後の一次積層体80を、他のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧して積層して焼成前素子本体(最終積層体)90を得る。具体的には、たとえば乾燥後の一次積層体80の上下から、別途、準備した50〜150μm程度の厚いセラミックグリーンシート30aを挟み、金型に挿入して、70〜100℃程度に加温した後、10〜50MPa程度の圧力で加圧して焼成前素子本体(最終積層体)90を得る。乾燥後の一次積層体80を、他のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧して積層することにより、第1接着層56および第2接着層30が抽出除去される際に生じることが予想される空隙を焼成前に消滅させることができ、焼成後の欠陥発生を抑制することができる。
【0076】
次に、焼成前素子本体90を、個々のチップに切断してグリーンチップを得る。
【0077】
次に、グリーンチップに対して脱バインダ処理および焼成処理を行う。グリーンチップの脱バインダ処理は、焼成前に行われるが、特に金属膜(焼成後には内部電極12,14になる)にNiやNi合金などの卑金属を含む場合には、空気雰囲気において、昇温速度を5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を150〜400℃、より好ましくは200〜300℃、保持時間を0.5〜24時間、より好ましくは5〜20時間とする。
【0078】
グリーンチップの焼成雰囲気は、金属膜の種類に応じて適宜決定すればよいが、NiやNi合金などの卑金属を含む場合には、焼成雰囲気の酸素分圧を10−7〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が低すぎると金属膜の金属が異常焼結を起こして途切れてしまい、酸素分圧が高すぎると金属膜が酸化される傾向にある。また、焼成時の保持温度は1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1380℃である。この保持温度が低すぎると緻密化が不充分となり、保持温度が高すぎると金属膜の金属の異常焼結による電極の途切れまたは内部電極材質の拡散により容量温度特性が悪化する傾向にある。
【0079】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とし、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが望ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを加湿して用いることが望ましい。
【0080】
還元性雰囲気で焼成した場合は、コンデンサチップの焼結体にアニールを施すことが望ましい。上述した脱バインダ処理、焼成およびアニール工程において、窒素ガスや混合ガスを加湿するためには、たとえばウェッターなどを用いることができる。この場合の水温は5〜75℃とすることが望ましい。
【0081】
以上のようにして、図1に示すコンデンサ素体4が得られる。この得られたコンデンサ素体4の両端部に、端子電極6および8を形成すれば、積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ2が得られる。
【0082】
本実施形態によれば、極薄の層間を実現するために必要な、微細誘電体原料を使用して作製されたそれ自体の接着性が比較的低いセラミックグリーンシート40と、極薄の電極厚を実現するために必要な薄膜法で作成されたそれ自体は全く接着性を持たない金属膜54とを、十分な接着性を持つように設定可能な実質的にバインダ成分で構成される第1〜第2接着層30,56を介在させて積層する。このため、容易に積層・接着させて一次積層体60を得ることができる。
【0083】
この得られた一次積層体60は、セラミックグリーンシート40と金属膜54との各層相互間の接着性が十分に確保されている。その結果、本実施形態によれば、厚さ2μm未満の誘電体層10と、厚さ1μm未満の内部電極層12,14を持つ積層セラミックコンデンサ2を比較的容易に製造することが可能となる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0085】
たとえば、上述した実施形態では、一次積層体60の基体20側から真空吸引しながら抽出用溶媒70を供給することとしてあるが、真空吸引を行うことなく、たとえばスポンジなどの吸収体を用いて、溶解した第2有機バインダおよび第3有機バインダを逐次、吸収させて取り除くようにしてもよい。
【0086】
また、金属膜54は印刷法により形成されたものであっても良い。印刷法により形成する場合には、導電材ペーストを所定パターンで形成するようにすればよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、セラミックグリーンシート40の表面に所定パターンの金属膜54を形成する方法として直接転写法を採用しているが、これに限定されず、1種以上の中間媒体を介して間接的に所定パターンの金属膜54を形成する間接転写法を採用してもよい。
【0088】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0089】
実施例1
表面にシリコーン系樹脂による離型処理を施したPETフィルム上に、平均粒径0.2μmのチタン酸バリウム100重量部と、トルエン/アルコール混合溶剤に可溶で、弱アルカリ水溶液に不溶なポリビニルブチラール系樹脂10重量部とを主な成分とした誘電体スラリーを、乾燥厚さ2μmとなるよう塗布・乾燥し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートの見かけ密度と、チタン酸バリウムおよびポリビニルブチラール樹脂の真密度から計算したところ、それぞれの成分の体積比率は、チタン酸バリウム/ ポリビニルブチラール/空隙=52/28/20であった。
【0090】
また、表面にアルキド系樹脂による離型処理を施したPETフィルム上に、平均粒径10nmの水系アクリルエマルジョンを乾燥厚さ0.5μmとなるよう塗布・乾燥し、第2接着層を得た。
【0091】
表面に離型層として陽極酸化膜を形成したニオブ圧延箔を基体として、所定パターンの開口部を持つめっきレジストを印刷し、スルファミン酸ニッケルを主成分とするニッケルめっき浴を使用して、厚さ0.5μmのニッケルめっき膜を形成した後、めっきレジストをアルカリ水溶液で溶解除去した。
【0092】
めっき膜を形成したニオブ基体を、粒子径10nmの水系アクリルエマルジョン中に浸漬し、アニオン電着法によって厚さ0.5μmの第1接着層を形成した。
【0093】
アニオン電着によって得られた第1接着層は、低濃度のアンモニア水やエタノールアミン水溶液、および低級アルコールで容易に溶解除去できるものであった。
【0094】
多孔質高密度ポリエチレン製の一次積層用基体に、前記第2接着層を形成したPETフィルムを常温で押圧し、PETフィルムのみを剥離して第2接着層を転写した(図2(A)参照)。
【0095】
さらに前記セラミックグリーンシートを形成したPETフィルムを、前記第2接着層転写済み積層ベースに常温で押圧し、やはりPETフィルムのみを剥離してセラミックグリーンシートを転写した(図2(B)参照)。
【0096】
転写したセラミックグリーンシート上に、前記第1接着層付きめっき膜を形成したニオブ基体を常温で押圧し、ニオブ基体のみを剥離し、第1接着層を介してめっき膜を転写した。
【0097】
以下、第2接着層、セラミックグリーンシート、第1接着層付きめっき膜の転写を同様にして繰り返し、電極積層数30の一次積層体を得た。
【0098】
上記積層の過程において、各キャリア基体上へのセラミックグリーンシート、第2接着層、めっき膜の残留は全く認められず、転写は完全に行われた。
【0099】
得られた一次積層体の上部に多孔質高密度ポリエチレン製の押さえ板を配置して0.1MPaの圧力を加えつつ、下方の多孔質一次積層用基体側から真空吸引しながら、上部から濃度1重量%のアンモニア水を浸透させ、第1および第2接着層を構成する水系エマルジョン樹脂を解膠・溶解して抽出・除去する処理を10分間実施した後、多孔質押さえ板並びに多孔質一次積層用基体を除去し、得られた一次積層体を乾燥した。
【0100】
抽出処理前後で一次積層体の電極重なり部分の厚さは30μm減少し、接着層がほとんど除去されたことが確認された。
【0101】
十分に乾燥した一次積層体を、別途準備した厚いセラミックグリーンシートのみからなる一次積層体で上下から挟んで金型に挿入し、70℃に加温した後、10MPaの圧力で2分間、加圧成形して最終積層体を得た。
【0102】
最終積層体を、所定の寸法形状に切断し、常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作成した。
【0103】
こうして得られた焼結体の断面を、研磨・エッチングして走査型電子顕微鏡で観察した結果を、図3〜4に示す。図3〜4に示すように、断面の観察から、誘電体層厚は1.75μm、電極厚さは0.75μmであり、ボイド、クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察されなかった。
【0104】
実施例2
表面にアルキド系樹脂による離型処理を施したPETフィルム上に、平均粒径0.2μmのチタン酸バリウム100重量部と、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂10重量部とを主な成分とした誘電体スラリーを、乾燥厚さ2μmとなるよう塗布・乾燥し、セラミックグリーンシートを得た。
【0105】
また、表面にアルキド系樹脂による離型処理を施したPETフィルム上に、アルコール可溶性のメタクリル酸系樹脂を、乾燥厚さ0.5μmとなるよう塗布・乾燥し、第2接着層を得た。
【0106】
実施例1と同様にして、ニオブ基体上にパターン化された第1接着層付きめっき膜を作成した。
【0107】
多孔質高密度ポリエチレン製の一次積層用基体に、前記第2接着層を形成したPETフィルムを常温で押圧し、PETフィルムのみを剥離して第2接着層を転写した(図2(A)参照)。
【0108】
さらに前記セラミックグリーンシートを形成したPETフィルムを、前記第2接着層転写済み積層ベースに常温で押圧し、やはりPETフィルムのみを剥離してセラミックグリーンシートを転写した(図2(B)参照)。
【0109】
転写したセラミックグリーンシート上に、前記第1接着層付きめっき膜を形成したニオブ基体を常温で押圧し、ニオブ基体のみを剥離し、第1接着層を介してめっき膜を転写した。
【0110】
以下、第2接着層、セラミックグリーンシート、第1接着層付きめっき膜の転写を同様にして繰り返し、電極積層数30の一次積層体を得た。
【0111】
実施例1と同様に、上記積層の過程において、各基体上へのセラミックグリーンシート、第2接着層、めっき膜の残留は全く認められず、転写は完全に行われた。
【0112】
得られた一次積層体の上部に多孔質高密度ポリエチレン製の押さえ板を配置して0.1MPaの圧力を加えつつ、下方の多孔質一次積層用基体側から真空吸引しながら、上部からメタノール変性アルコールを浸透させ、第1および第2接着層を構成するメタクリル酸系樹脂および水系エマルジョン樹脂を溶解して抽出・除去する処理を10分間実施した後、多孔質押さえ板並びに多孔質一次積層用基体を除去し、得られた一次積層体を乾燥した。
【0113】
抽出処理前後で一次積層体の電極重なり部分の厚さは、やはり30μm減少し、接着層がほとんど除去されたことが確認された。
【0114】
十分に乾燥した一次積層体を、別途準備した厚いセラミックグリーンシートのみからなる一次積層体で上下から挟んで、金型に挿入し、70℃に加温した後、10MPaの圧力で2分間加圧成形して最終積層体を得た。
【0115】
最終積層体を、所定の寸法形状に切断し、常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作成した。
【0116】
こうして得られた焼結体の断面を、実施例1と同様に研磨・エッチングして走査型電子顕微鏡で観察したところボイド、クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察されなかった。
【0117】
実施例3
100℃に加温した後、10MPaの圧力で2分間加圧成形して最終積層体を得た以外は、実施例1と同様にして得られた焼結体の断面を、実施例1と同様に研磨・エッチングして走査型電子顕微鏡で観察したところボイド、クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察されなかった。
【0118】
実施例4
70℃に加温した後、50MPaの圧力で1分間加圧成形して最終積層体を得た以外は、実施例1と同様にして得られた焼結体の断面を、実施例1と同様に研磨・エッチングして走査型電子顕微鏡で観察したところボイド、クラック、層間の空隙等の構造的な欠陥は観察されなかった。
【0119】
比較例1
第1および第2接着層の溶解抽出処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして作製したサンプルの断面を光学顕微鏡で観察した結果を、図5に示す。
【0120】
図5に示すように、欠陥が非常に多く発生しており、コンデンサとしての機能を果たさないことが確認された。
【0121】
このように欠陥が非常に多く発生したのは、以下の3つの理由によるものと推定される。すなわち第1に、最終成形時の加熱・加圧処理時に、バインダ成分のみからなる第1および第2接着層が存在するため、水平方向の塑性変形が発生したものと考えられる。第2に、焼成前の酸化性雰囲気下での脱バインダ処理の際に、バインダ層のみからなる接着層部分に空隙が生じ、焼成過程で修復されることがなかったものと考えられる。第3に、電極および接着層のバインダが存在する有効層部分と、有効層の上下に配置された電極も接着層も存在しない無効層部分との、脱バインダ及び焼結に伴う面内方向収縮率に大きな差が生じ、有効層部分に大きな応力が発生したことによるものと考えられる。
【0122】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、極めて薄いセラミックグリーンシートと、極めて薄い金属膜などの内部電極層とを、グリーン状態で良好に積層・接着させることができ、かつ焼成時点での体積変化を小さく保つことのできる積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明方法により製造される積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示す一部破断断面図である。
【図2】 図2(A)〜図2(H)は図1の積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】 図3は実施例1の焼結体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
【図4】 図4は図3の要部拡大写真である。
【図5】 図5は比較例1の焼結体の断面を光学顕微鏡で観察した写真である。
【図6】 図6はセラミックグリーンシートの作製に用いたチタン酸バリウム原料粉の平均粒径と、セラミックグリーンシートの接着強度との関係を表したグラフである。
【符号の説明】
2… 積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
4… コンデンサ素体
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 誘電体層
12… 第1内部電極層
14… 第2内部電極層
20… 積層用基体
22… 押さえ板
30… 第2接着層
32… キャリア基材
40… セラミックグリーンシート
42… キャリア基材
50… 金属膜転写用部材
52… キャリア基材
52a… 陽極酸化膜
54… 金属膜
56… 第1接着層
60… 一次積層体
70… 抽出用溶媒
80… 抽出除去後の一次積層体
90… 焼成前素子本体(最終積層体)

Claims (9)

  1. 誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートの表面に、前記第1有機バインダと異なる第2有機バインダを主成分とする第1接着層を介して、金属膜を所定パターンで積層する第1積層工程と、
    前記金属膜が形成された前記セラミックグリーンシートの表面に、前記第1有機バインダと異なる第3有機バインダを主成分とする第2接着層を積層する第2積層工程と、
    前記第2接着層が形成された前記セラミックグリーンシートの表面に、誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層する第3積層工程と、
    前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返して積層体を得る工程と、
    前記積層体に、前記第1有機バインダを実質的に溶解せず、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダを実質的に溶解する抽出用溶媒を供給し、前記第1接着層および第2接着層を抽出除去して抽出除去後の積層体を得る工程と、
    前記抽出除去後の積層体を焼成する工程とを、有する
    積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記積層体の下方から吸引しながら、該積層体に抽出用溶媒を供給する請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記抽出除去後の積層体を他のセラミックグリーンシートと共に加熱下で加圧しながら積層して得られる最終積層体を焼成する請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  4. 前記第1有機バインダが非水溶性であり、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダが水溶性または加水分解性である請求項1から3までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記第1有機バインダが有機溶剤不溶性であり、前記第2有機バインダおよび第3有機バインダが有機溶剤可溶性である請求項1から3までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  6. 基体上に前記第2接着層を形成した後、該第2接着層上に誘電体原料および第1有機バインダを含むセラミックグリーンシートを積層し、しかる後に前記第1〜第3積層工程を複数回繰り返す請求項1から5までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  7. 前記基体として多孔質基体を用いる請求項6に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  8. 薄膜形成法で形成された金属膜を用いる請求項1から7までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  9. 印刷法により形成された金属膜を用いる請求項1から7までのいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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