JP3936875B2 - 積層セラミック電子部品の製造方法および積層電子部品 - Google Patents

積層セラミック電子部品の製造方法および積層電子部品 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜法により形成される金属薄膜をグリーンシート上に転写して形成する工程を有する積層セラミック電子部品を製造する方法に係り、さらに詳しくは、金属薄膜の転写時におけるグリーンシートまたは中間媒体へのダメージが少なく、金属薄膜積層部分と金属薄膜非積層部分との段差が少なく、誘電体層および内部電極層の薄層化に寄与する積層セラミック電子部品の製造方法および積層電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミック電子部品の小型化および薄層化に伴い、より一層薄くて欠陥の少ない内部電極の形成方法が求められている。これまでに、蒸着法、スパッタ法等の気相法、電解若しくは無電解メッキ法等の液相法によって作製された金属薄膜を、セラミックグリーンシートを介して積層して内部電極とする方法が、数多く提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の方法では、ほとんどの場合、所定パターンに形成された金属薄膜を転写して電極として用いるか、一様な厚さの金属薄膜から所定パターンをもって転写した金属薄膜を電極として用いている。このため、これらの金属膜のパターンの外周部の断面を見ると、その角度は略90度をなしており、これを脆弱なグリーンシートと重ね合わせて加圧成形を行った場合、金属膜の外周部において、グリーンシートに破壊が発生する可能性が高い。
【0004】
なお、特開平8−279438号公報には、PETシートの全面に、焼成温度よりも低い融点の金属から成る第一種の薄い金属膜を形成し、その上に最終的に内部電極となる比較的に融点の高い第二種の金属膜を所定のパターンをもって形成する方法が開示してある。この方法では、第一種の金属膜と第二種の金属膜とから成る多層金属膜をカレンダーロールなどを用いてグリーンシート上に転写して金属膜一体化グリーンシートを形成する。その後、これらの金属膜一体化グリーンシートを積層した後に焼成し、焼成中に第一種の金属を酸化させてセラミック中に拡散させる。
【0005】
しかしながら、この公報に示す方法では、その公報の図4に示すように、従来の方法と同様に、パターン化された第二種の金属膜の外周部の断面は略90度の角度をなしている。このため、この金属膜をグリーンシートに対して転写した後に重ね合わせて加圧する際に、金属膜パターンの角部によりグリーンシートが破壊するおそれがあり、グリーンシートの破壊・短絡不良が発生する可能性が高い。特に、グリーンシートの厚みが薄くなるほど、その傾向が強くなる。
【0006】
また、この公報に示す方法では、電極部分とそれ以外の部分の厚さの差異(段差)は、金属ペーストを印刷する方法と比較すると小さいものの、実際には、それほど段差を小さくできない。なぜなら、比較的に薄い第一種の金属膜は焼成の際に酸化・拡散されて電極の一部には成らないからである。このため、第二種の金属膜は、最終的に必要とされる電極厚さから、焼成時の厚さ方向に直交する面内の収縮率を考慮して逆算される厚さが必要とされ、第二種の金属膜の厚みを、従来の金属膜の厚みと同程度にする必要がある。その結果、その金属膜の厚みに相当する段差が存在し、このことは、従来の電極部分のみに金属膜が存在する場合と同様であり、段差を効果的に解消することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、金属薄膜の転写時におけるグリーンシートまたは中間媒体へのダメージが少なく、金属薄膜積層部分と金属薄膜非積層部分との段差が少なく、誘電体層および内部電極層の薄層化に寄与する積層セラミック電子部品の製造方法および積層電子部品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は既に、陽極酸化処理したバルブ金属基体上に電解メッキ法によって金属薄膜を形成し、さらにその表面に電着法によって接着層を形成した上で、直接または間接に金属薄膜をグリーンシートに転写し、これらを積層・焼成して極めて薄い内部電極厚さのセラミック積層部品を製造する方法を提案している。そして、本発明者は、さらに実験を進める内に、使用する金属薄膜を非常に薄くした場合、焼成過程で金属薄膜が孤立化して、球状に変形し、電気的導通を満足しなくなる現象が発生することを見出した。本発明者は、この現象に着目し、この現象と、前述した金属薄膜のパターン角部に発生しやすいグリーンシートへのダメージとを併せて考察した結果、下記の構成を取ることが可能であることに思い至り、各種検討を加えた結果、種々の利点がある本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
基体上に所定パターンの第1層目の第1金属膜を形成する工程と、
前記基体上の少なくとも前記第1層目の第1金属膜を全て含む領域を覆うように、前記第1金属膜とその主成分が同一である第2層目の第2金属膜を形成して前記基体上に部分多層金属膜を形成する工程と、
前記部分多層金属膜をセラミックグリーンシートに転写して部分多層金属膜一体化グリーンシートを得る工程と、
前記部分多層金属膜一体化グリーンシートを、セラミックグリーンシートまたは他の部分多層金属膜一体化グリーンシートと積層し、焼成前積層体を形成する工程と、
前記焼成前積層体を焼成する工程と、を有する。
【0010】
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、所定のパターンで形成される第1金属膜の側面を含む全表面上に第2金属膜が成膜されるため、第1金属膜のパターン角部の断面形状に、微小ではあるが、Rがつく。このため、第1金属膜と第2金属膜とから成る部分多層金属膜を、セラミックグリーンシートまたは中間媒体に転写する際に、グリーンシートまたは中間媒体に対するダメージが少ない。また、部分多層金属膜の表面は、第2金属膜で覆われており、全体が連続膜であるので、この点からも、転写時に欠陥がおきにくい。さらに、表面全体が連続膜であるので、転写時に、第1金属膜パターン相互間の位置ズレがない。
【0011】
また、本発明では、第1金属膜と第2金属膜との主成分を同一金属としてあるので、これらの金属膜が重なっている部分では、金属膜が誘電体層に拡散することなく、これらの積層厚みに対応する厚みが内部電極の厚みとなる。しかも、内部電極となるべき部分以外は、第2金属膜が単独で存在するのみであり、膜厚が薄いので、焼成時に孤立化、球状化して、電極としては機能しなくなる。さらに、球状化して、厚さ方向の寸法が増加するため、焼結によるセラミック部分の厚さ減少を補填する効果があり、構造欠陥の防止に効果がある。これらのことから、従来と同じ電極厚さを実現する場合には、段差が小さくなり、積層が容易になるとともに、焼成時に発生する構造欠陥も抑制できる。
【0012】
これらのことは、全面に薄い金属膜を形成した後に、マスクを通して所定パターンの金属膜を形成する方法(特開平8−279438号公報)に対して著しい対比を成す。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記第1金属膜および第2金属膜がそれぞれ薄膜形成法により形成される。薄膜形成法としては、特に限定されず、蒸着法、スパッタリング法などの気相成長法と、メッキ法などの液層成長法などが例示される。本発明において、好ましくは、前記第1金属膜を形成する薄膜形成法が電解メッキ法である。好ましくは、前記第2金属膜を形成する薄膜形成法が、電解メッキ又は無電解メッキ法である。メッキ法により第2金属膜を形成することで、第1金属膜のパターン角部に丸み(R)を形成しやすい。
【0014】
好ましくは、前記第2金属膜の厚さは、平均200nm以下、さらに好ましくは10〜200nm、特に好ましくは50〜150nmである。第2金属膜の厚みが薄すぎると、金属膜の角部を丸める効果が少ないと共に、段差低減の効果が少ない。また、第2金属膜の厚みが厚すぎると、第1金属膜と重なっていない部分の焼成による球状化が困難になる傾向にある。
【0015】
好ましくは、前記第2金属膜の融点が、前記第1金属膜の融点より50℃以上低い。第1金属膜と第2金属膜との主成分を同じにして、第2金属膜の融点を低くするための方法としては、第2金属膜を構成する材料に、P、B、S等のいわゆるメタロイド元素や他種の金属を含有させる方法が例示される。このようにして第2金属膜の融点を第1金属膜の融点より低く設定すれば、第2金属単独の部分において、より確実に第2金属膜の孤立化および球状化を実現できる。
【0016】
好ましくは、前記第1金属膜および第2金属膜を構成する主成分金属が、前記焼成前積層体を焼成する焼成温度よりも高い融点を有する。第1金属膜および第2金属膜が重なる部分において、第2金属膜がセラミック誘電体層の内部に拡散させないようにして、積層厚みに対応する所望厚みの内部電極層を得るためである。本発明において、前記第1金属膜および第2金属膜を構成する主成分金属としては、特に限定されないが、好ましくはニッケル、あるいはニッケル合金などが例示される。
【0017】
好ましくは、前記部分多層金属膜における前記第2金属膜の表面に接着層を形成する。接着層を形成することで、転写が、より確実になる。
【0018】
好ましくは、前記第1層目の第1金属膜は、前記基体の表面に形成された陽極酸化膜から成るバリア層の上に形成する。第1金属膜をバリア層の上に形成することで、第1金属膜の成膜が容易であると共に、第1金属膜がバリア層から容易に剥がれることになり、転写が、より確実になる。
【0019】
本発明では、前記部分多層金属膜を、直接にセラミックグリーンシートに転写しても良いが、中間媒体に転写した後、前記中間媒体に転写された前記部分多層金属膜をセラミックグリーンシートに転写しても良い。中間媒体としては、グリーンシートに比較して脆くない材質であれば特に限定されず、たとえば紙シート、高密度多孔質ポリエチレンシートなどが例示される。中間媒体に転写した後に、グリーンシートに転写することで、直接にグリーンシートに転写する方法に比較して、グリーンシートに対するダメージが少ない。
【0020】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、
セラミック誘電体層と、第1内部電極層と、第2内部電極層とを有し、前記セラミック誘電体層の間に、第1内部電極層と第2内部電極層とが交互に積層してある多層積層構造の部品本体を持ち、
各第1内部電極層の一端は、前記部品本体の一方の第1端部に到達して、前記第1端部に装着された第1端子電極に対して電気的に接続してあり、各第1内部電極層の他端には、その第1内部電極層の延長面上に、前記第1内部電極層と同一の金属を主成分とした第1金属粒が分散して存在してあり、前記部品本体における前記第1端部と反対側の第2端部に装着してある第2外部端子に対して、各第1内部電極層の他端が電気的に接続されておらず、
各第2内部電極層の一端は、前記部品本体における前記第2端部に到達して、前記第2端子電極に対して電気的に接続してあり、各第2内部電極層の他端には、その第2内部電極層の延長面上に、前記第2内部電極層と同一の金属を主成分とした第2金属粒が分散して存在してあり、前記部品本体における前記第1端部に装着してある第1外部端子に対して、各第2内部電極層の他端が電気的に接続されていないことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法により容易に製造することができ、たとえば積層セラミックコンデンサなどとして用いられる。
【0022】
前記第1金属粒および第2金属粒の平均粒径は、100〜500nmであることが好ましい。前記第1金属粒および第2金属粒の平均粒径は、前記第2金属膜の厚みの二倍以上となる。第1金属膜と重なっていない部分の薄い第2金属膜は、セラミック誘電体層の内部で焼成により球状化して局在化するからである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、図2(A)および(B)、図3および図4は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す要部断面図、図5(A)は本発明の実施例に係るコンデンサ本体の要部断面図、図5(B)は本発明の比較例に係るコンデンサ本体の要部断面図、図6は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおける非電極部分の球状化を示す平面写真である。
【0024】
まず、本発明に係る方法により製造される電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。素子本体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の第1内部電極層12−1は、素子本体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の第2内部電極層12−2は、素子本体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0025】
本実施形態では、内部電極層12は、後で詳細に説明するように、図3に示す第1金属膜12aおよび第2金属膜12bから成る部分多層金属膜120をセラミックグリーンシート10aに転写して形成され、金属膜12aおよび12bの主成分と同じ材質で構成される。
【0026】
本実施形態では、第1端子電極6に接続する第1内部電極層12−1の他端には、その第1内部電極層12−1の延長面上に、その内部電極層12−1と同一の金属を主成分とした第1金属粒12c1が分散して存在してある。そのため、第1内部電極層12−1は、第2外部端子8に対して、電気的に接続されていない。また、第2端子電極8に接続する第2内部電極層12−2の他端には、その第2内部電極層12−2の延長面上に、その内部電極層12−2と同一の金属を主成分とした第2金属粒12c2が分散して存在してある。そのため、第2内部電極層12−2は、第1外部端子6に対して、電気的に接続されていない。
【0027】
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
【0028】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0029】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
【0030】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
【0031】
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
【0032】
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の粉末として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉末を使用することが望ましい。
【0033】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いられる。また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。また、水系ペーストにおけるビヒクルは、水に水溶性バインダを溶解させたものである。水溶性バインダとしては特に限定されず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5質量%程度、溶剤(または水)は10〜50質量%程度とすればよい。
【0034】
誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。ただし、これらの総含有量は、10質量%以下とすることが望ましい。
【0035】
そして、この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図3に示すように、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、グリーンシート10aを形成する。
【0036】
(2)上記のグリーンシート10aとは別に、図2(A)に示す薄膜作製用基体25を準備する。本実施形態の薄膜形成用基体25は、基体フィルム20により背面を絶縁被覆してある基体金属シート22の表面に、陽極酸化処理による絶縁性の陽極酸化膜から成るバリア層24が形成してある。
【0037】
基体金属シート22は、NbまたはTaの金属シートなどで構成される。NbまたはTaは、フッ素化合物の溶液以外には溶解しないため、陽極酸化および電解メッキの処理液として種々のものを選択できるとともに、冷間圧延による加工が可能なため、長尺の箔状基体を用意することができ、また、ZrおよびHfと比較した場合には安価である。なお、基体金属シート22の表面粗さは、形成する金属膜の厚さと比較して充分に小さいことが望ましい。基体金属シート22の厚みは、10〜100μm程度とすればよい。
【0038】
基体金属シート22の表面に陽極酸化膜から成るバリア層24を形成する陽極酸化処理は、たとえば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ、あるいはこれらの塩の水溶液の中で、基体金属シート22を陽極にして電解処理することによって行うことができる。これらの水溶液の中でも、電解中の有害ガスやミストの発生が少なく、処理後の洗浄性が良好で、廃水処理が容易な硫酸または硫酸塩の水溶液が特に好適である。電解処理は、電解電流がほぼ流れなくなるまで行えば良く、処理時間は1〜5分間程度である。
【0039】
このような陽極酸化処理により形成されるバリア層24の厚さは、好ましくは50〜1000nmである。バリア層24の厚さがあまりに薄いと、後工程でのアニオン電着塗装に対するレジスト効果が不十分になる傾向にある。また、陽極酸化膜から成るバリア層24の厚さがあまりに厚いと、後工程での電解メッキ法による第1金属膜12aおよび第2金属膜12bの形成が困難になる傾向がある。
【0040】
バリア層24の表面にパターン化した第1金属膜12aを形成するために、図2(A)に示すように、予め所望のパターン形状の開口部を有するメッキレジスト層26を、基体金属シート22のバリア層24の表面に形成した後、電解メッキ法により第1金属膜12aを形成する。
【0041】
メッキレジスト層26は、本実施形態では、感光性レジストを全面に塗布し、所定のパターンのマスクを介して露光した後、現像するいわゆるフォトパターニング法を用いて形成する。
【0042】
メッキレジスト層26の材質は、第1金属膜12aを形成するのに用いられるメッキ液の種類に応じて適宜選択すれば良い。メッキレジスト層26の厚さは、1〜30μm程度とすれば良い。
【0043】
第1金属膜12aを形成した後、メッキレジスト層26を、アルカリ剥離液にて除去洗浄した後、図2(B)に示すように、第1金属膜12aが形成された薄膜形成用基体25の全面に、第2金属膜12bを、電解メッキ法により成膜する。
【0044】
第1金属膜12aおよび第2金属膜12bの主成分金属は同じであるが、その組成に関しては、制限はなく、セラミック積層電子部品の内部電極用としては、Ag,Cu,Pd,Niなどの金属もしくはこれらの合金とすれば良く、P,B,S,Cなどの元素を含んでいても良い。
【0045】
ただし、好ましくは、第2金属膜12bの融点が、第1金属膜12aの融点より50℃以上低い。第1金属膜12aと第2金属膜12bとの主成分を同じにして、第2金属膜12bの融点を低くするための方法としては、第2金属膜12bを構成する材料に、P、B、S等のいわゆるメタロイド元素や他種の金属を含有させる方法が例示される。このようにして第2金属膜12bの融点を第1金属膜12aの融点より低く設定すれば、後述するように、第2金属12b単独の部分において、焼成時に、より確実に第2金属膜12bの孤立化および球状化を実現できる。
【0046】
第1金属膜12aおよび第2金属膜12bを形成する際の電解メッキ浴としては、たとえばニッケル金属膜を成膜する場合は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ほう酸を主成分とするいわゆるワット浴、スルファミン酸ニッケル、臭化ニッケル、ほう酸を主成分とするスルファミン酸浴が、また、銅金属膜を成膜する場合はピロリン酸銅、ピロリン酸カリウムを主成分とするいわゆるピロ銅浴等の広く使われているメッキ浴が使用できる。また、上記主成分以外に、応力調整剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0047】
電解メッキ法により形成する第1金属膜12aの厚さT1(図(B)参照)は、第2金属膜12bの厚さT2との合計厚さT3が焼成後の内部電極層12の厚みを決定することから、第2金属膜12bの厚さT2との関係で決定される。たとえば、第1金属膜12aの厚さT1は、第2金属膜12bの厚さT2との合計厚さT3が0.1〜1.5μmとなるように決定される。
【0048】
第2金属膜12bの厚みT2は、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは50〜150nmである。第2金属膜12bの厚みが薄すぎると、第1金属膜12aにおけるパターンの断面角部を丸める効果が少ないと共に、段差低減の効果が少ない。また、第2金属膜12bの厚みが厚すぎると、後述する第1金属膜12aと重なっていない部分の焼成による球状化が困難になる傾向にある。これらの所定パターンの第1金属膜12aと、その全面を覆う第2金属膜12bとが、部分多層金属膜120を構成する。
【0049】
次に、図2(B)に示すように、第2金属膜12bの表面全体に、接着層30を形成する。接着層30は、本実施形態では、アニオン電着塗装法による熱可塑性有機高分子を含む接着層である。
【0050】
接着層30を形成するには、有機高分子エマルジョンまたは溶液中に、部分多層金属膜120が形成された薄膜作製用基体25を浸漬し、第2金属膜12bを陽極として電解処理すればよい。
【0051】
有機高分子エマルジョンまたは溶液としては、エポキシ系、アクリル系、酢酸ビニル系、アクリル共重合系等が利用可能であるが、セラミック積層体を焼成する際の熱分解性も考慮すると、アクリル系またはアクリル共重合系の中から、陽極電解によって析出可能なものを選択するのが望ましい。
【0052】
接着層30の厚さT4(図2(B)参照)は、厚さT3と同等以下とするのが望ましいが、これは電着電圧の設定により制御することができる。電着塗装では、印加電圧に応じた厚みの絶縁膜が金属の表面に形成された段階で、絶縁膜の成長が停止するからである。なお、有機高分子エマルジョンまたは溶液には、通常の電着塗装法と同様に、必要に応じて有機/無機の顔料等を添加することもでき、接着層の着色あるいはセラミック積層電子部品におけるセラミック層と金属膜との密着性改善、金属膜の酸化防止等の効果を持たせることも可能である。
【0053】
(3)次に、図3に示すように、中間媒体40として高密度多孔質ポリエチレンシートまたは紙シートを準備し、これに接着層30が形成済みの部分多層金属膜120を、接着剤層30を介して接触させて加圧接着する。その後、基体金属シート22およびバリア層24から成る薄膜作製用基体25を、部分多層金属膜120から剥離して、中間媒体40上に、部分多層金属膜120をすべて転写する。
【0054】
その後、前述の(1)工程で準備したグリーンシート10aの表面に、部分多層金属膜120を保持した中間媒体40を、重ね合わせて固定し、その後に、アンモニア水などの接着剤溶解液を供給してアクリル系接着層30を溶解することによって、図4に示すように、グリーンシート10aの全面に、部分多層金属膜120を転写し、部分多層金属膜一体化グリーンシート200を得る。
【0055】
次に、全面に部分多層金属膜120が転写された部分多層膜一体化グリーンシート200を、各第1金属膜12aの電極パターンが部分的に重なるように、位置を交互にずらしながら多数枚積層する。さらにその上下に、部分多層金属膜120を転写していない比較的に厚膜のグリーンシートを積層して、その積層体を、所定圧力と所定温度で加圧成形して、グリーン積層体を得る。その後、グリーン積層体を、所定の寸法形状に切断し、常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体から成る素子本体4を作製する。
【0056】
脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電体材料にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好ましい。
【0057】
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜50℃/時間、
保持温度:200〜400℃、特に250〜350℃、
保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、
雰囲気 :加湿したNとHとの混合ガス。
【0058】
焼成条件は、下記の条件が好ましい。
昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜1250℃、
保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等。
【0059】
ただし、焼成時の空気雰囲気中の酸素分圧は、10−2Pa以下、特に10 〜10−8 Paにて行うことが好ましい。
【0060】
このような焼成を行った後の熱処理は、保持温度または最高温度を、好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1000〜1100℃として行うことが好ましい。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であり、好ましくは10−3Pa〜1Pa、より好ましくは10−2Pa〜1Paである。そして、そのほかの熱処理条件は下記の条件が好ましい。
【0061】
保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300℃/時間、
雰囲気用ガス:加湿したNガス等。
【0062】
なお、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行っても、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、熱処理の保持温度に達したときに雰囲気を変更して熱処理を行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、熱処理時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。また、熱処理に際しては、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、熱処理の全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
【0063】
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドプラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0064】
実施形態の作用
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法では、図2(B)に示すように、所定のパターンで形成される第1金属膜12aの側面を含む全表面上に第2金属膜12bが成膜される。このため、第1金属膜12aのパターン角部の断面形状に、微小ではあるが、Rがつく。このため、第1金属膜12aと第2金属膜12bとから成る部分多層金属膜120を、セラミックグリーンシート10aに直接に転写する際、または中間媒体40に転写する際に、グリーンシート10aまたは中間媒体40に対するダメージが少ない。また、部分多層金属膜120の表面は、第2金属膜12bで覆われており、全体が連続膜であるので、この点からも、転写時に欠陥がおきにくい。さらに、表面全体が連続膜であるので、転写時に、第1金属膜パターン12a相互間の位置ズレがない。
【0065】
また、本実施形態では、第1金属膜12aと第2金属膜12bとの主成分を同一金属としてあるので、これらの金属膜12aと12bとが重なっている部分では、金属膜が誘電体層10に拡散することなく、これらの積層厚みに対応する厚みが内部電極層12の厚みとなる。しかも、内部電極層12となるべき部分以外の単独層部分12cは、第2金属膜12bが単独で存在するのみであり、膜厚が薄いので、焼成時に孤立化、球状化して、電極としては機能しなくなる。さらに、球状化して、厚さ方向の寸法が増加するため、焼結によるセラミック部分の厚さ減少を補填する効果があり、構造欠陥の防止に効果がある。これらのことから、従来と同じ電極厚さを実現する場合には、段差が小さくなり、積層が容易になるとともに、焼成時に発生する構造欠陥も抑制できる。
【0066】
これらのことは、全面に薄い金属膜を形成した後に、マスクを通して所定パターンの金属膜を形成する方法(特開平8−279438号公報)に対して著しい対比を成す。
【0067】
また、本実施形態では、メッキ法により第2金属膜12bを形成するので、第1金属膜12aのパターン角部に丸み(R)を形成しやすい。
【0068】
さらに、本実施形態では、第1金属膜12aと第2金属膜12bとの主成分を同じにして、第2金属膜12bの融点を低く設定してあるので、単独層部分12cが、より確実に孤立化および球状化して、金属粒子12c1および12c2となり、他方の端子電極6または8との絶縁を実現できる。
【0069】
さらに、本実施形態では、第1金属膜12aおよび第2金属膜12bを構成する主成分金属が、焼成前のグリーン積層体を焼成する焼成温度よりも高い融点を有する。そのため、第1金属膜12aおよび第2金属膜12bが重なる部分において、第2金属膜12bがセラミック誘電体層10の内部に拡散することなく、積層厚みに対応する所望厚みの内部電極層12を得ることができる。
【0070】
さらにまた、本実施形態では、部分多層金属膜120における第2金属膜12bの表面に接着層30を形成するので、部分多層金属膜120の転写が、より確実になる。
【0071】
また、本実施形態では、中間媒体に転写した後に、グリーンシートに転写することで、直接にグリーンシートに転写する方法に比較して、グリーンシートに対するダメージが少ない。
【0072】
その他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0073】
また、第1金属膜12aおよび第2金属膜12bが形成される薄膜形成用基体25としては、図2に示すものに限定されず、種々の基体を用いることができる。
【0074】
【実施例】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0075】
実施例1
図2(A)に示す基体フィルム20として、PETフィルムを準備し、その表面にラミネートしたニオブ圧延箔から成る基体金属シート22の表面を鏡面研磨した後、5%硫酸中でステンレス板を対極にして電圧30Vにて、基体金属シート22の表面を陽極処理し、表面に陽極酸化膜によるバリア層24を形成した。そのバリア層24の表面に、所定パターンの開口部を持つメッキレジスト層26を形成し、スルファミン酸ニッケルメッキ浴を使用して、平均厚さT1=0.25μmのニッケルメッキ膜から成る所定パターンの第1金属膜12aを成膜した。第1金属膜12aのパターンは、図1に示す素子本体4の内部電極層12を形成するためのパターンであり、バリア層24の上に、複数のパターンを形成した。
【0076】
次に、メッキレジスト層26を、アルカリ剥離液にて除去洗浄した後、基体全面にスルファミン酸ニッケルメッキ浴を使用して、図2(B)に示すように、平均厚さT2=0.15μmのニッケルメッキ膜から成る第2金属膜12bを成膜した。第1金属膜12aと第2金属膜12bとが、部分多層金属膜120を構成する。
【0077】
内部電極層12となる電極パターン部分のニッケルメッキ膜の厚さT3は、第1金属膜12aと第2金属膜12bとの合計厚さ0.4μmとなり、第2金属膜12bにおける単独層部分12cの厚みT2は、0.15μmであり、電極パターン部分とそれ以外の部分との厚さの差は、0.25μmとなっていることを、蛍光X線微小部膜厚計にて確認した。
【0078】
メッキ膜から成る第1金属膜12aおよび第2金属膜12bを形成した基体を、粒子径10nmのアクリルエマルジョン中に浸漬し、アニオン電着法によって、第2金属膜12bの表面に厚さT4=0.5μmのアクリル系接着層30を形成した。
【0079】
一方、図3に示すように、中間媒体40として高密度多孔質ポリエチレンシートを準備し、これに接着層30が形成済みの部分多層金属膜120を、接着剤層30を介して接触させて加圧した。しかる後に、基体フィルム20、基体金属シート22およびバリア層24から成る薄膜作製用基体25を、部分多層金属膜120から剥離して、中間媒体40上に、部分多層金属膜120をすべて転写した。
【0080】
部分多層金属膜120を保持した中間媒体40を、別途準備した厚さ2.5μmのセラミックグリーンシート10a上に重ね合わせて固定し、1%アンモニア水を供給してアクリル系接着層30を溶解することによって、図4に示すように、グリーンシート10aの全面に、部分多層金属膜120を転写した。このようにして得られた、全面に部分多層金属膜120が転写されたグリーンシート10aを、各第1金属膜12aの電極パターンが部分的に重なるように、位置を交互にずらしながら301枚積層した。さらにその上下に、部分多層金属膜120を転写していない厚さ100μmのグリーンシートを積層して、その積層体を、成形温度120℃、成形圧力10Mpaにて加圧成形して、厚さ約1mmのグリーン積層体を得た。グリーン積層体を、所定の寸法形状に切断し、常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作製した。
【0081】
こうして得られた焼結体の研磨断面を観察したところ、図5(A)に示す結果が得られた。全体形状としては内部電極層12が重なっている部分と、重なっていない部分のとの厚さの差は、ほとんど認められず、クラック等の構造的な欠陥も観察されなかった。交互に積層される各内部電極層12において、素子本体4の各端面にまで達している側の反対側の延長線上には、その断面形状が楕円形のニッケルから成る金属粒子12c1および12c2が分散して分布しているのが観察された。金属粒子が分散している状態の平面写真を図6に示す。この写真の倍率は、3000倍である。
【0082】
焼結体である素子本体4の両端面に、銅粉末、ガラスフリット、バインダ、有機溶剤等からなる端子電極形成用金属ペーストを塗布し、焼き付け処理を行って、端子電極6,8を有する図1に示す積層セラミックコンデンサ2を得た。得られたコンデンサ素子は、その95%が短絡しておらず、コンデンサとして有効に機能した。
【0083】
実施例2
薄膜作製のための基体として、片面を絶縁したステンレス板を使用し、その表面に所定パターンの開口部を持つメッキレジスト層26を形成した後、スルファミン酸ニッケルメッキ浴を使用して、平均厚さ0.25μmのニッケルメッキ膜から成る第1金属膜12aを成膜した。次に、メッキレジスト層26をアルカリ剥離液にて除去・洗浄し、10容量%の塩酸溶液にて活性化処理した後、基体全面にリン含有量が2質量%、融点が約1300℃のメッキ膜が得られる無電解ニッケルメッキ浴を使用して、平均厚さ0.2μmのニッケル−リンメッキ膜から成る第2金属膜12bを成膜した。
【0084】
得られた部分多層金属膜120に対して、実施例1と同様にして、接着層の形成、セラミックグリーンシートへの転写、積層、切断、脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作製した。こうして得られた焼結体の研磨断面を観察したところ、図1に示す結果と同様な結果が得られた。全体形状としては電極が重なっている部分と、重なっていない部分のとの厚さの差は、ほとんど認められず、クラック等の構造的な欠陥も観察されなかった。それぞれの内部電極層12において、各端面にまで達している側の反対側の延長線上には、その断面形状がほぼ円形のニッケルから成る金属粒子12c1および12c2が分散して分布しているのが観察された。
【0085】
この焼結体の両端面に、銅粉末、ガラスフリット、バインダ、有機溶剤等からなる端子電極形成用金属ペーストを塗布し、焼き付け処理を行って、図1に示す積層セラミックコンデンサ2を得た。得られたコンデンサ素子は、その97%が短絡しておらず、コンデンサとして有効に機能した。
【0086】
比較例1
実施例1と同様にして準備した薄膜作製用基体(20,22,24)の表面に、所定パターンの開口部を持つメッキレジスト層26を形成し、スルファミン酸ニッケルメッキ浴を使用して、平均厚さ0.4μmのニッケルメッキ膜(第1金属膜12a単独)を成膜した。メッキレジスト層をアルカリ剥離液にて除去洗浄した後、第2金属膜12bを形成することなく、第1金属膜12aのみのメッキ膜を形成した基体を、粒子径10nmのアクリルエマルジョン中に浸漬し、アニオン電着法によって厚さ0.5μmの接着層を形成した。
【0087】
得られた所定パターンのメッキ膜を、実施例1と同様の操作により、中間媒体を経由して、厚さ2.5μmのセラミックグリーンシート上に転写した。このようにして得られた、所定パターンのメッキ膜が転写されたグリーンシートを301枚積層した。さらにその上下にメッキ膜を転写していない厚さ100μmのグリーンシートを積層して、成形温度120℃、成形圧力10Mpaにて加圧成形して厚さ約1mmのグリーン積層体を得た。このグリーン積層体を、所定の寸法形状に切断し、常法に従って脱バインダー処理、焼成処理、アニール(再酸化)処理を行い、チップ形状の焼結体を作製した。
【0088】
こうして得られた焼結体の研磨断面を観察したところ図5(B)に示す結果が得られた。全体形状としては、内部電極層12が重なっている部分と、重なっていない部分との厚さの段差50が、約100μmあり、部分的にはクラックも発生していた。
【0089】
この焼結体の両端面に、端子電極形成用金属ペーストを塗布し、焼き付け処理を行って、積層セラミックコンデンサを得た。得られたコンデンサ素子は、その80%が短絡しており、短絡していないものも、誘電体層10の誘電率・層間距離・電極重なり面積から計算される静電容量の、60〜70%の静電容量しか得られなかった。
【0090】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、金属薄膜の転写時におけるグリーンシートまたは中間媒体へのダメージが少なく、金属薄膜積層部分と金属薄膜非積層部分との段差が少なく、誘電体層および内部電極層の薄層化に寄与する積層セラミック電子部品の製造方法および積層電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】 図2(A)および(B)は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を示す要部断面図である。
【図3】 図3は図2(B)の続きの工程を示す要部断面図である。
【図4】 図4は図3の続きの工程を示す要部断面図である。
【図5】 図5(A)は本発明の実施例に係るコンデンサ本体の要部断面図、図5(B)は本発明の比較例に係るコンデンサ本体の要部断面図である。
【図6】 図6は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおける非電極部分の球状化を示す平面写真である。
【符号の説明】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… 素子本体(部品本体)
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
12… 内部電極層
12−1… 第1内部電極層
12−2… 第2内部電極層
12a… 第1金属膜
12b… 第2金属膜
12c… 単独層部分
12c1,12c2… 金属粒子
120… 部分多層金属膜
20… 基体フィルム
22… 基体金属シート
24… バリア層
25… 薄膜形成用基体
26… メッキレジスト層
30… 接着層
40… 中間媒体

Claims (11)

  1. 基体上に、その主成分金属が焼成前積層体を焼成する焼成温度よりも高い融点を有し、所定パターンの第1層目の第1金属膜を形成する工程と、
    前記基体上の少なくとも前記第1層目の第1金属膜の側面を含む全表面上を覆うように、前記第1金属膜とその主成分金属が同一である第2層目の第2金属膜を形成して前記基体上に部分多層金属膜を形成する工程と、
    前記部分多層金属膜をセラミックグリーンシートに転写して部分多層金属膜一体化グリーンシートを得る工程と、
    前記部分多層金属膜一体化グリーンシートを、セラミックグリーンシートまたは他の部分多層金属膜一体化グリーンシートと積層し、前記焼成前積層体を形成する工程と、
    前記焼成前積層体を焼成する工程と、
    を有する積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記第1金属膜および第2金属膜がそれぞれ薄膜形成法により形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記第1金属膜がメッキレジスト層を用いる薄膜形成法により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  4. 前記第1金属膜を形成する薄膜形成法が電解メッキ法である、請求項2または3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記第2金属膜を形成する薄膜形成法が、電解メッキ又は無電解メッキ法である、請求項2〜4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  6. 前記第2金属膜の厚さが、平均200nm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  7. 前記第2金属膜の融点が、前記第1金属膜の融点より50℃以上低いことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記部分多層金属膜における前記第2金属膜の表面に接着層を形成する工程をさらに有する請求項1〜7のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  9. 前記第1層目の第1金属膜は、前記基体の表面に形成された陽極酸化膜から成るバリア層の上に形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  10. 前記部分多層金属膜を中間媒体に転写した後、前記中間媒体に転写された前記部分多層金属膜をセラミックグリーンシートに転写して部分多層金属膜一体化グリーンシートを得ることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  11. セラミック誘電体層と、第1内部電極層と、第2内部電極層とを有し、前記セラミック誘電体層の間に、第1内部電極層と第2内部電極層とが交互に積層してある多層積層構造の部品本体を持ち、
    各第1内部電極層の一端は、前記部品本体の一方の第1端部に到達して、前記第1端部に装着された第1端子電極に対して電気的に接続してあり、各第1内部電極層の他端には、その第1内部電極層の延長面上に、前記第1内部電極層と同一の金属を主成分とした第1金属粒が分散して存在してあり、前記部品本体における前記第1端部と反対側の第2端部に装着してある第2外部端子に対して、各第1内部電極層の他端が電気的に接続されておらず、
    各第2内部電極層の一端は、前記部品本体における前記第2端部に到達して、前記第2端子電極に対して電気的に接続してあり、各第2内部電極層の他端には、その第2内部電極層の延長面上に、前記第2内部電極層と同一の金属を主成分とした第2金属粒が分散して存在してあり、前記部品本体における前記第1端部に装着してある第1外部端子に対して、各第2内部電極層の他端が電気的に接続されていないことを特徴とする積層セラミック電子部品であって、
    前記第1金属粒および第2金属粒の平均粒径は、100〜500nmであることを特徴とする積層セラミック電子部品。
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