JP4213978B2 - 積層型電子部品およびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子部品およびその製法に関し、特に、積層セラミックコンデンサのように、内部電極層が薄層化された積層型電子部品およびその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、積層型電子部品、例えば、積層セラミックコンデンサは、小型、高容量、および高い信頼性が求められており、このため、▲1▼誘電体層の薄層化と積層数の増加、▲2▼内部電極層の薄層化、▲3▼誘電体層の高誘電率化が図られており、例えば、誘電体層の厚みを5μm以下、誘電体層の積層数を100層以上とした高容量の積層型電子部品が開発されている。
【0003】
従来、積層型電子部品の内部電極層は導電性ペーストを用いてスクリーン印刷法により形成され、導電性ペーストの成分として金属成分以外にセラミック粉末からなる共材成分や樹脂成分、および有機溶剤成分等を含有しており、焼成収縮により内部電極層が網目状に形成されるため、本来、内部電極層を形成すべき領域を完全に被覆することが困難となり、このため内部電極層の有効面積が低下し、静電容量が得られないという問題があった。
【0004】
このような内部電極層の薄層化に対する問題を解決するため、例えば下記の特許文献1に開示された積層型電子部品では、内部電極層となる金属膜を、スパッタや蒸着のような物理的薄膜形成法、あるいは無電解めっきのような化学的薄膜形成法によりフィルム上に形成し、これを誘電体グリーンシート上に転写することによって内部電極パターンを形成して積層型電子部品が作製されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2000−243650号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された積層型電子部品の製法によれば、内部電極層となる金属膜をスパッタや蒸着のような物理的薄膜形成法、あるいは無電解めっきのような化学的薄膜形成法によりフィルム上に均一厚みになるように形成し、これを誘電体グリーンシート上に転写することによって内部電極パターンを形成して積層型電子部品を作製するものであるが、このような均一厚みの内部電極パターンを用いた場合には、内部電極層の有効面積は大きくできるものの、内部電極パターンの薄層化に伴う端縁の断面積の減少のために、内部電極層と外部電極との電気的接続性が低下しやすくなり、結果的に設計どおりの静電容量が発現しにくく、また、これにより静電容量のばらつきが大きくなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、内部電極層を薄層化しても高い静電容量が得られる積層型電子部品およびその製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、誘電体層と内部電極層と交互に積層され前記内部電極層が対向する端面に交互に露出する電子部品本体と、該電子部品本体の対向する端面にそれぞれ設けられ、該端面に露出した前記内部電極層と電気的に接続された外部電極を具備してなる積層型電子部品において、前記内部電極層は、前記外部電極との接続端側の厚みが該接続端側に対向する非接続端側の厚みよりも厚く、かつ前記接続端側から前記非接続端側に向けて漸次薄層化されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、内部電極層を薄層化しても、この内部電極層の外部電極との接続端側の厚みが厚いことから、内部電極層と外部電極との電気的接続性を高めることができ、結果的に設計どおりの静電容量を得ることができ、かつ、静電容量のばらつきをも小さくできる。また、内部電極層は厚みの変化により傾斜面を有することから有効面積も大きくできる。
【0011】
上記積層型電子部品では、内部電極層の平均厚みが1μm以下であることが望ましい。本発明の内部電極層は、少なくとも外部電極との接続端側を厚くすることで外部電極との接続を確実に行うことができるものであることから、平均厚みが1μm以下と極めて薄い場合である場合に好適に用いることができる。
【0012】
本発明における内部電極層の平均厚みとは、この内部電極層の最大厚みをtmax、最低厚みをtminとしたときに、(tmax+tmin)/2の関係を満足する厚みのことをいう。
【0013】
上記積層型電子部品では、誘電体層の厚みが5μm以下であることが望ましい。
【0014】
本発明の内部電極層を用いれば、内部電極層の少なくとも一方側の端縁側が薄くなっていることから、誘電体層厚みが5μm以下と薄い場合であっても内部電極層による段差を低減でき、このためデラミネーション等の欠陥も抑制できる。
【0015】
上記積層型電子部品では、内部電極層の接続端から非接続端までの距離をL、前記内部電極層の最大厚みをt、としたときに、L/t≧500(例えば、長寸が0.5mm、厚み1μmの場合)の関係を満足することが望ましい。
【0016】
外部電極との接続端側を厚くするという本発明の内部電極層であっても、平面方向には緩やかな傾斜を有するように漸次厚くなっている方が、内部電極層の厚み差による段差を低減し、かつ誘電体層の厚み変化を緩やかなものにする上で望ましく、このようなL/tの条件で規定された内部電極層ならではこそ外部電極との接続性を高めることができるとともに、デラミネーション等の欠陥もさらに抑制できる。
【0017】
上記積層型電子部品では、内部電極層が電気めっき膜により形成されたものであることが望ましい。
【0018】
内部電極層がめっき膜により形成されたものであれば、より高精度の厚み差を有する内部電極層を形成でき、また、内部電極層を薄層化しても有効面積をより大きくできることから静電容量を高めることができる。
【0019】
上記積層型電子部品では、内部電極層が卑金属であることが望ましい。内部電極層が卑金属であれば低コストの積層型電子部品を作製できる。
【0020】
本発明の積層型電子部品の製法は、マスクパターンを有する基板プレートを準備する工程と、前記マスクパターンが俯角方向に向くように前記基板プレートを傾斜させ電気めっきを行い、前記基板プレート表面の前記マスクパターンによって仕切られた凹部内に端縁同士の厚みが異なる内部電極パターンを形成する工程と、前記基板プレート表面の前記内部電極パターンを誘電体グリーンシート上に転写する工程と、前記内部電極パターンの端縁のトータル厚みが積層方向に相殺されるように積層して積層成形体を形成する工程と、該積層成形体を積層方向に切断して、前記内部電極パターンの一方端縁が露出するとともに、前記一方端縁側から該一方端縁に対向する非導出端縁側に向けて前記内部電極パターンが漸次薄層化された電子部品本体成形体を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0022】
このような製法によれば矩形状の内部電極パターンを形成する場合において、対面にある一対の端縁同士の厚みが異なり、しかも、その厚みが漸次変化するような内部電極パターンを容易に形成できる。
【0023】
そして、このような内部電極パターンを用いることにより、外部電極との接続端側の厚みを厚くできる内部電極パターンを積層成形体中に容易に形成できる。
【0024】
さらに、本発明の製法によれば、厚み差の異なる内部電極パターンを用いたとしても、多層に積層された内部電極パターンの積層方向のトータルの厚みをほぼ均一にできる。
【0025】
上記積層型電子部品の製法では、内部電極パターンの最大厚みが1μm以下であることが望ましい。本発明では内部電極パターンを電気めっき法によって形成することから最大厚みが1μmと極めて薄い場合であっても容易に厚み差の異なる金属膜を形成できる。
【0026】
上記積層型電子部品の製法では、内部電極パターンの主成分が卑金属であることが望ましい。この場合、内部電極パターンとなる金属膜として卑金属を選定することにより高純度で低コストの内部電極パターンを容易に形成できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の積層型電子部品である積層セラミックコンデンサの一形態について、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。
【0028】
本発明の積層型電子部品は、図1に示すように、直方体状の電子部品本体1の両端部に外部電極3が形成されている。
【0029】
電子部品本体1は、内部電極層5と誘電体層7とが交互に積層され構成されている。
【0030】
内部電極層5は電子部品本体1の対向する端面11において交互に露出され、外部電極3と交互に電気的に接続されている。
【0031】
本発明の内部電極層5は、外部電極3との接続端21側の厚みが、対向する非接続端23側の厚みよりも厚いことが重要である。
【0032】
また、この内部電極層5は、接続端21側から非接続端23側に向けて漸次薄層化されている。なお、本発明でいうところの厚み差を有する内部電極層5というのは、内部電極層5の面内での最大と最小の厚み差が少なくとも0.1μm以上有するものをいい、この厚み差よりも小さい範囲のものは、ほぼ均一な厚みを有するものとする。
【0033】
そして、本発明では、内部電極層5の厚み差による段差を低減し、かつ誘電体層7の厚み変化を緩やかなものにするという理由から、接続端21から非接続端23までの距離をL、前記内部電極層5の最大厚みをt、としたときに、L/t≧500の関係を満足することが望ましく、このL/tは、4000以上であることがより望ましい。
【0034】
そして、本発明では、内部電極層5の平均厚みが1μm以下であることが望ましく、特に、0.8μm以下である場合に好適に用いることができる。
【0035】
また、内部電極層5と外部電極3との接続性を高めるという理由から、内部電極層5の外部電極3との接続端21の最小厚みが0.3μm以上であることが望ましく、特に、0.5μm以上、さらには0.7μm以上であることが望ましい。
【0036】
ただし、内部電極層5の最大厚みは、積層型電子部品の小型、高積層化を可能とし、かつ、内部電極層5による段差の影響を軽減すると言う理由から、2μm以下であることが望ましく、特に、1.5μm以下であることがより望ましい。
【0037】
また、本発明の内部電極層5は、薄層化しても有効面積をより大きくできるとともに、より高精度に厚み差を制御できると言う理由から、電気めっき膜により形成されたものであることが望ましい。
【0038】
そして、このように内部電極層5を構成する電気めっき膜は、内部電極層5の低コスト化を図るという理由から、Ni、Cu、Co、Fe等の群から選ばれる少なくとも1種の卑金属であることが望ましく、さらに、誘電体層7との同時焼成を可能とする点で、NiあるいはCuを用いることがより望ましい。
【0039】
一方、本発明の積層型電子部品を構成する誘電体層7は、積層セラミックコンデンサの小型、高積層化を図り、高容量化できるという理由から、その厚みは5μm以下であることが望ましく、特に、3μm以下、さらには2μm以下であることがより望ましい。
【0040】
本発明の誘電体層7となる誘電体材料としては、内部電極層5にNiを用いる場合、主成分としてBaTiO3が好適に用いられ、これの焼結性や誘電特性を向上させるための助剤を含有することが望ましく、さらに、内部電極層5にCuを用いる場合には、上記した助剤を含む誘電体材料に対して、ガラス成分などの低温焼成化のための助剤をさらに含有させることが好ましい。
【0041】
次に、本発明の積層型電子部品の製法について具体例を説明する。図2は、本発明の積層型電子部品を製造するための工程図である。
【0042】
(a)先ず、キャリアフィルム25上に誘電体層7となる厚さ1.5〜5μmの誘電体グリーンシート27を作製する。この誘電体グリーンシート27は、例えば、比表面積の大きなBaTiO3原料粉末を用いて調製したスラリを用いて、ドクターブレード法、引き上げ法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法などの群から選ばれる1種の成形法が好適に用いられる。
【0043】
このような工法で形成された誘電体グリーンシート27の厚みは12μm以下であり、特に、積層型電子部品の小型大容量化という理由から1.5〜5μmの範囲に形成されることが望ましい。
【0044】
次に、本発明の積層型電子部品に用いられる内部電極層5は電気めっき法により形成される。
【0045】
図3は本発明の内部電極パターンの形成工程を示す模式図である。
【0046】
この場合、図3(a)に示すように、成膜用の基板プレート31として、表面を鏡面加工したステンレス板やチタン板等が用いられる。この基板プレート31の表面の全面に感光性レジスト樹脂を塗布し、内部電極層5となる内部電極パターンを形成する部分を感光させないようにマスクを当て、露光、現像を行う。
【0047】
その後、未硬化のレジストを洗浄除去することにより、内部電極層5が形成される部分のレジストが除かれた電気めっき用のマスクパターン33を形成する。
【0048】
この場合、基板プレート31上においてマスクパターン33は、内部電極パターンとなる金属膜が形成される領域は切り立った凹部35状になるように形成されることが好ましく、特に、その凹部35の傾斜角度θ1は60〜100°、特に、70〜90°であることが好ましい。
【0049】
次に、図3(b)に示すように、上記のマスクパターン33が形成された基板プレート31に対して、Niメッキ液を用いて電気メッキを行う。
【0050】
本発明では、電気めっき法により形成される内部電極パターンに厚み変化を付けるために、電気めっきを行う場合に、上記のマスクパターン33が付与された基板プレート31を、メッキ液中に傾斜させて浸せきする工法を採る。
【0051】
即ち、本発明では、前記マスクパターン33がθ2の角度だけ俯角方向に向くように前記基板プレート31を傾斜させて電気めっきを行うことが重要である。
【0052】
こうすると、電気めっき時に発生するガス(水素)がマスクパターン33の凹部35の底面角部37に溜まるようになり、このように溜まったガスの存在のために、この底面角部37のメッキの付きが悪くなり、凹部35内において厚みの異なるメッキ膜、即ち、矩形状のめっき膜の向かい合う一対の端縁同士の厚みが異なることを特徴とする本発明の内部電極パターン41が形成される(図3(c))。
【0053】
つまり、このように基板プレート31を傾斜させることで、厚みを漸次変化させた内部電極パターン41を得ることができる。
【0054】
一方、厚みの均一な内部電極パターン41を得る場合には、基板プレート31を仰角に向け、かつマスクパターン33の凹部35底面角部37にガスが溜まらないように充分な攪拌を行えばよい、
その後、洗浄によりマスクパターン33の除去を行うことによって、基板プレート31上に内部電極パターン41となるNi金属膜が形成される。この場合、内部電極パターンとなる金属膜の平均厚みは1μm以下であることが望ましく、特に、0.8μm以下がより望ましい。
【0055】
本発明では、このように内部電極パターン41を電気めっき法を用いて形成することにより、厚み差の制御とともに、例えば、平均厚み1μm以下に極めて薄層化しても穴などの欠陥が殆ど無い金属膜を作製することが可能となる。
【0056】
(b)次に、この内部電極パターン41が形成された基板プレート31を、誘電体グリーンシート27上に熱圧着転写する。
【0057】
(c)この転写工程により、誘電体グリーンシート27の一方主面上に内部電極パターン41を形成することができる。
【0058】
この場合、誘電体グリーンシート27上に形成された内部電極パターン41による段差を解消するために、その内部電極パターン41の周囲に沿って有機樹脂などを塗布してもよい。なお、この有機樹脂の塗布厚みは内部電極パターン41の厚みに相当するように形成されることが望ましい。
【0059】
(d)次に、この内部電極パターン41を形成した誘電体グリーンシート27を複数積層する。この積層工程において、本発明では、前記内部電極パターン41の端縁43a、43bのトータル厚みが積層方向に相殺されるように積層することが重要である。
【0060】
即ち、本発明においては、内部電極パターン41の厚い側の端縁43aの上下方向に薄い側の端縁43bが配置されるように、つまり、内部電極パターン41の厚みの薄い側の端縁43bが対向するように積層されるものである。
【0061】
また、本発明では、対向して積層された内部電極パターン41は、この内部電極パターン41の最大厚みを有する端縁43aが、その上下に配置積層された内部電極パターン41の最小厚みを有する端縁43bに重ならない非重畳部45を残すように積層されるものである。
【0062】
次いで、この上下面に、さらに内部電極パターン41が形成されていない誘電体グリーンシート27を複数積層し、加熱加圧によって積層成形体47を作製する。
【0063】
(e)次に、この積層成形体47を所定の寸法毎に切断して電子部品本体成形体を作製する。この場合、積層成形体47は、この図に切断線Cで表されるように、この積層成形体47の内部に規則的に配置された内部電極パターン41の前記非重畳部45の厚みの厚い側の一部を除くように切断される。
【0064】
次にこの電子部品本体成形体を大気中250〜300℃または酸素分圧0.1〜1Paの低酸素雰囲気中500〜800℃で脱バイした後、非酸化性雰囲気で1250〜1350℃で2〜3時間焼成し、電子部品本体1を作製する。
【0065】
さらに、所望の誘電特性を得るために、酸素分圧が0.1〜10-4Pa程度の低酸素分圧下、900〜1100℃で5〜15時間熱処理を行う。
【0066】
最後に、得られた電子部品本体1の端面11に外部電極ペーストを塗布し、焼き付けて外部電極3を形成する。尚、外部電極ペーストを電子部品本体成形体67の端面に塗布し、同時焼成して外部電極3を形成しても良い。
【0067】
本発明では、電子部品本体1の端面に導出された内部電極層5の接続端21の厚みが電子部品本体1の内部よりも必ず厚くなるように形成されているために、内部電極層5をより薄層化した場合においても外部電極3との接続を確実にすることができる。
【0068】
なお、外部電極ペーストは、Cu粉末、粘結剤、および溶剤を用いて調製される。より薄層化した内部電極層5との接続性を高めるために、このCu粉末には、内部電極層5の厚みよりも小さい平均粒径を有するCuの微粉末がCu粉末全量中に10重量%以上含まれることが望ましい。
【0069】
さらに、このような外部電極3では、金属粉末や有機樹脂以外に、ペースト中に焼結助剤としてガラスを含むことが、電子部品本体1と外部電極3との接着接合性を高める上で望ましい。
【0070】
さらに、この外部電極3上にNiめっき膜およびSnめっき膜を形成し、積層セラミックコンデンサを作製する。
【0071】
【実施例】
積層型電子部品の一つである積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。
【0072】
先ず、BaTiO3を主成分とする誘電体粉末に有機粘結剤、可塑剤、分散剤、および溶媒を所定量混合し、振動ミルを用いて、粉砕、混練し、スラリーを調製した後、ダイコーターにより、ポリエステルよりなるキャリアフィルム上に厚み2.4μmの誘電体グリーンシートを作製した。
【0073】
次に、鏡面加工を施したステンレス板製の基板プレートを用いて、その表面に感光性レジスト樹脂を塗布してレジストパターンを形成した。
【0074】
その後、この基板プレートをマスクパターンが俯角方向に向くようにメッキ浴中に置き、種々、電流密度やめっき時間を調整して電気めっきを行い、対向する一対の端縁の厚みの異なるNiめっき膜をステンレス板製の基板プレート上に形成した。平均厚みは0.7μmとした。
【0075】
次に、このNiめっき膜からなる内部電極パターンを誘電体グリーンシート上に載置し、80℃、80kg/cm2の条件で熱圧着転写して、内部電極パターンが転写された誘電体グリーンシートを作製した。
【0076】
次に、この内部電極パターンを転写した誘電体グリーンシートを、図2(d)に示す構成のように400枚積層し、温度100℃、圧力200kgf/cm2の条件での積層プレスにより積層成形体を作製した。
【0077】
この後、この積層成形体を図2(e)に示す所定の位置で切断して、電子部品本体成形体を得、次にこの電子部品本体成形体を非酸化性雰囲気中500℃〜800℃で脱バイした後、同雰囲気中1300℃で2時間焼成し電子部品本体を作製した。
【0078】
なお、この電子部品本体の両端面には、内部電極層の他の部分よりも厚みの厚い接続端が導出され、厚み方向に重畳して積層された内部電極層は位置ずれもなく形成されていた。
【0079】
最後に、このようにして得られた電子部品本体に対し、内部電極層が露出した各端面にガラス粉末を含んだCuペーストを塗布した後、窒素雰囲気中で焼き付けを行い、さらに、この外部電極の表面にNiめっき膜およびSnめっき膜を形成して、内部電極層と電気的に接続された外部電極を有する積層セラミックコンデンサを作製した。
【0080】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.25mm、長さ2.0mm、厚さ1.25mmであり、内部電極層間に介在する誘電体層の厚みは2μmであった。内部電極層の外部電極接続端から非接続端までの間隔は1.7mmとした。L/tは表1に示す値になるようにめっき条件を調整した。内部電極パターンに漸次厚み差を付けない場合には、一度薄くめっきを行った後に部分的にレジストを設け、再度の電気めっきを行って厚み差のあるめっき膜を形成した。
【0081】
焼成後に、得られた積層セラミックコンデンサについて、各100個の初期の静電容量(C)を測定し、そのばらつきを評価した。測定は、基準温度25℃で行い、周波数1.0kHz、入力信号レベル0.5Vrmsの条件で測定した。また、各100個の試料について焼成後のデラミネーションおよび耐熱衝撃試験後の発生数を評価した。全試料とも内部電極層の被覆率は95%とした。なお、耐熱衝撃試験は365℃に加熱したはんだ浴を用いた。
【0082】
比較例として、面内での厚み差が0.1μmよりも小さく、本発明でいえば、ほぼ均一厚みの内部電極パターンを用いて形成した積層セラミックコンデンサを作製し、本発明と同様の評価を行った。このような厚みの均一な内部電極パターンは、マスクパターンの凹部の底面角部にガスが溜まらないように、基板プレートを仰角方向に向けかつ充分な攪拌を行って作製した。
【0083】
【表1】
Figure 0004213978
【0084】
表1の結果から明らかなように、外部電極との接続端を他の面内の部分よりも厚くした内部電極層を有する試料No.2〜5では、内部電極層の平均厚みを0.7μmと極めて薄くした場合においても、静電容量が目標の10μFに近い9.7μF以上の値が得られ、また、静電容量のばらつきも0.55%以下にできた。また、本発明の試料では、焼成後および耐熱衝撃試験後のデラミネーションも見られなかった。
【0085】
特に、内部電極層を外部電極との接続端から非接続端にかけて漸次薄層化した試料No.3〜5では、静電容量が9.8μF以上で、そのばらつきが0.53%以下であった。
【0086】
一方、均一厚みの内部電極層を有する試料No.1では、静電容量が9.3μF以下と低く、静電容量のばらつきも0.7%と大きかった。また、この試料では、焼成後および耐熱衝撃試験後にデラミネーションの発生が見られた。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の積層型電子部品によれば、内部電極層を薄層化しても、この内部電極層の外部電極との接続端側の厚みが厚いことから、内部電極層と外部電極との電気的接続性を高めることができるとともに、静電容量のばらつきをも小さくできる。また、内部電極層は厚みの変化により傾斜面を有することから有効面積も大きくできる。
本発明の積層型電子部品の製法によれば、矩形状の内部電極パターンを形成する場合において、対向する一対の端縁同士の厚みが異なり、しかも、その厚みが漸次変化するような内部電極パターンを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品の概略断面図である。
【図2】本発明の積層型電子部品を製造するための工程図である。
【図3】本発明の内部電極パターンの形成工程を示す模式図である。
【符号の説明】
1 電子部品本体
3 外部電極
5 内部電極層
7 誘電体層
21 接続端
23 非接続端
27 誘電体グリーンシート
31 基板プレート
33 マスクパターン
41 内部電極パターン
47 積層成形体

Claims (9)

  1. 誘電体層と内部電極層と交互に積層され前記内部電極層が対向する端面に交互に露出する電子部品本体と、該電子部品本体の対向する端面にそれぞれ設けられ、該端面に露出した前記内部電極層と電気的に接続された外部電極を具備してなる積層型電子部品において、前記内部電極層は、前記外部電極との接続端側の厚みが該接続端側に対向する非接続端側の厚みよりも厚く、かつ前記接続端側から前記非接続端側に向けて漸次薄層化されていることを特徴とする積層型電子部品。
  2. 前記内部電極層の平均厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
  3. 前記誘電体層の厚みが5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電子部品。
  4. 前記内部電極層の前記接続端から前記非接続端までの距離をL、前記内部電極層の最大厚みをtとしたときに、L/t≧500の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか記載の積層型電子部品。
  5. 前記内部電極層が電気めっき膜により形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか記載の積層型電子部品。
  6. 前記内部電極層が卑金属からなることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか記載の積層型電子部品。
  7. マスクパターンを有する基板プレートを準備する工程と、前記マスクパターンが俯角方向に向くように前記基板プレートを傾斜させ電気めっきを行い、前記基板プレート表面の前記マスクパターンによって仕切られた凹部内に端縁同士の厚みが異なる内部電極パターンを形成する工程と、前記基板プレート表面の前記内部電極パターンを誘電体グリーンシート上に転写する工程と、前記内部電極パターンの端縁のトータル厚みが積層方向に相殺されるように積層して積層成形体を形成する工程と、該積層成形体を積層方向に切断して、前記内部電極パターンの一方端縁が露出するとともに、前記一方端縁側から該一方端縁に対向する非導出端縁側に向けて前記内部電極パターンが漸次薄層化された電子部品本体成形体を形成する工程と、を具備することを特徴とする積層型電子部品の製法。
  8. 前記内部電極パターンとして、平均厚みが1μm以下であるものを用いることを特徴とする請求項に記載の積層型電子部品の製法。
  9. 前記内部電極パターンとして、主成分が卑金属であるものを用いることを特徴とする請求項7または8に記載の積層型電子部品の製法。
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