JP2003327588A - 新規化合物とその合成方法、インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、液体組成物、パターン形成方法、物品、環境履歴検知方法及び記録媒体 - Google Patents
新規化合物とその合成方法、インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、記録方法、液体組成物、パターン形成方法、物品、環境履歴検知方法及び記録媒体Info
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Abstract
新規化合物及びその合成方法を提供し、これを利用した
インク等の応用技術を提供する。 【解決手段】 所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有す
ることにより該溶媒に可溶であり、逆ディールス・アル
ダー反応によって該親溶媒性の基が脱離して該溶媒に対
する溶解度が不可逆的に低下可能である化合物。この化
合物の合成方法。この技術を利用したインク、インクカ
ートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、
記録方法、記録媒体、液体組成物、パターン形成方法、
物品および環境履歴検知方法。
Description
ルダー反応を用いて分子構造を変化させ、溶媒に対する
溶解性を変化させることのできる化合物とその製造方
法、インクジェット記録等の記録において用いられるイ
ンク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェ
ット記録装置、記録方法、記録媒体、またDNAチップ
の製造等に用いられるパターン形成方法とこれに用いる
液体組成物、物品が加熱等を経ているか否かを検知する
環境履歴検知方法及び環境履歴検知が可能な物品に関す
る。
に応じてコントロールすることは、様々な技術分野にお
いて、切望されている技術である。
みると、インクジェット用インクの安定性としては、当
該インク中に色材が溶解状態で存在していること、即ち
単分子レベルで溶媒中に存在していることが好ましい。
その一方で、当該インクが記録媒体上に付与された後に
は、色材を速やかに溶媒と分離させて記録媒体表面若し
くは表面近傍に留めることが、高品位な画像を形成する
上では好ましいとされている。前者の性能は、所謂染料
インクによって達成でき、一方後者の性能は所謂顔料イ
ンクによって達成できるものの、それらの両方を同時に
達成することは困難である。近年、顔料を微細化した
り、顔料表面に水分散性の官能基を導入したりすること
で、顔料に染料的な性質を付与する様々な技術が提案さ
れているが、未だ改良の余地が残されているのが実情で
ある。また近年のインクジェットプリンタの性能の大幅
な向上に伴って、インクジェットプリンタを単なる文字
や画像の形成手段としてではなく、微細なパターンを有
するデバイス、例えばDNAチップなどの製造装置とし
て用いることが提案されてきている。
うな技術的背景に鑑み検討を重ねた結果、インク中では
溶媒に対して溶解状態を維持して安定なインクを与え、
ひとたび記録媒体に付与された後には、該溶媒に対する
溶解性を失って、記録媒体の表面や表面とその近傍にと
どまるような化合物、具体的には例えばインクジェット
記録において、インク中の色材に対して染料の性質と顔
料の性質とをその局面に応じて変化させることのできる
性質を有する化合物の開発が、インクジェット技術のよ
り一層の発展に有効であるとの認識を得るに至った。
性を制御することのできる新規な化合物及びその製造方
法を提供する点にある。
でき、また物品に対して例えば当該物品が経てきた環境
の履歴を知ることのできる環境履歴検知等の機能を付与
することのできるインクを提供することを他の目的とす
る。
ことのできるインクジェット記録装置、及びそれに用い
ることのできるインクカートリッジ、記録ユニットを提
供することを他の目的とする。
録方法、記録媒体を提供することを他の目的とする。
する様々な機能、例えば当該物品が経てきた環境の履歴
を知ることのできる環境履歴検知機能、記録物の堅牢
性、濃度、彩度、記録によって構築された分子素子など
の反応応答性、電気伝導性などの諸特性を制御する機能
などの付与に用いることのできる液体組成物を提供する
ことを他の目的とする。
ーやピコメートルオーダーの微細なパターンを正確に形
成することのできるパターン形成方法を提供することを
他の目的とする。
を検知する方法を提供すること、このような検知が可能
な物品を提供することを他の目的とする。
媒に対する親溶媒性の基を有することにより該溶媒に可
溶であり、逆ディールス・アルダー反応によって該親溶
媒性の基が脱離して該溶媒に対する溶解度が不可逆的に
低下可能であることを特徴とする化合物が提供される。
ン骨格を有していることが好ましい。
有している化合物としては、下記式(I)ないしは(I
I)で示される構造を有している化合物が好ましい。
溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、Y
はハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2の
整数を示す) また、前記化合物として、ポルフィリン骨格を有してい
る化合物が好ましい。
化合物としては、下記式(III)ないしは(IV)で
示される構造を有している化合物が好ましい。
該親溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原
子、Yはハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0
〜2の整数を示す) また本発明により、逆ディールス・アルダー反応によっ
て脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有する
テトラアザポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法
であって、 (i) 該親溶媒性の基あるいは該親溶媒性の基へと変
換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノ
フィルとしてのジシアノ化合物とをディールス・アルダ
ー反応させて下記式(V)で示される化合物を得る工
程;および
基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表わす) (ii) 上記式(V)で示される化合物を4量環化せ
しめてテトラアザポルフィリン骨格を形成した後、金属
原子を該テトラアザポルフィリン骨格中に配位させる工
程、を有することを特徴とするテトラアザポルフィリン
骨格を有する化合物の合成方法が提供される。
ダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒
性の基を有するポルフィリン骨格を有する化合物の合成
方法であって、 (i) ジエンとして該親溶媒性の基あるいは該親溶媒
性の基への変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエ
ンと、ジエノフィルとしてのフェニルスルホニル化合物
とをディールス・アルダー反応させて下記式(VI)で
示される化合物および下記式(VII)で示される化合
物の少なくとも一方を得る工程;
独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能
な基を示す。) (ii) 上記式(VI)で示される化合物および上記
式(VII)で示される化合物の少なくとも一方と、C
NCH2COOR5(R5は炭素数1〜4の直鎖状もしく
は分岐鎖状のアルキル基を示す)で示されるイソニトリ
ルとを付加環化反応させて下記式(VIII)で示され
る化合物を得る工程;および、
媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表し、
R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキ
ル基を示す) (iii) 上記式(VIII)で示される化合物を4
量環化せしめてポルフィリン骨格を形成せしめた後、金
属原子をポルフィリン骨格中に配位させる工程、を有す
ることを特徴とするポルフィリン骨格を有する化合物の
合成方法が提供される。
の何れかおよび溶媒を含むことを特徴とするインクが提
供される。
れかおよび溶媒を含み、更に他の化合物として色材を含
むことを特徴とするインクも提供される。
である。
インク収容部を具備していることを特徴とするインクカ
ートリッジが提供される。
いるインク収容部と、該インクを吐出するインクジェッ
トヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニッ
トが提供される。
ているインク収容部と、該インクを吐出するインクジェ
ットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジ
ェット記録装置が提供される。
媒体に付与する工程と、(ii) 該記録媒体に付与し
た該インクに含まれる該化合物を逆ディールス・アルダ
ー反応させる工程と、を有することを特徴とする記録方
法が提供される。
のいずれかおよび溶媒を含んでいることを特徴とする液
体組成物が提供される。
出させるためのものとして好適である。
基材に位置選択的に付与する工程と、(ii) 該基材
に付与した該液体組成物に含まれる該化合物を逆ディー
ルス・アルダー反応させて該液体組成物に含まれる該溶
媒に対して不溶化せしめる工程と、を有することを特徴
とするパターン形成方法が提供される。
の化合物、もしくは上記した本発明の化合物の逆ディー
ルスアルダー反応物が付着していることを特徴とする物
品が提供される。
た本発明の化合物を付着させた物品の、該化合物が逆デ
ィールス・アルダー反応しているか否かを検知する工程
を有することを特徴とする物品の環境履歴検知方法が提
供される。
しくは上記した本発明の化合物の逆ディールスアルダー
反応物を含む表面を具備していることを特徴とする記録
媒体が提供される。
て〕本発明にかかる化合物は、所定の溶媒に対して親溶
媒性の基を有し、この溶媒に可溶であり、且つ該親溶媒
性の基は、逆ディールス・アルダー反応によって該化合
物の分子から脱離し、その結果として該溶媒に対する溶
解度が低下するものである。
性有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒、グリコール系
溶媒、グリセリン等)からなる水系媒体である場合にお
いては、水に対する溶解度(25℃)が少なくとも1質
量%以上となるように親溶媒性基、つまり親水性基とし
て、例えば水酸基やスルホン酸基、カルボキシル基、ア
ミノ基などを導入しておき、これらの親水性基を逆ディ
ールス・アルダー反応により分子から脱離させることに
より、溶解度を殆どゼロにすることができる。ここで親
水性基としては、上記した水酸基やスルホン酸基に限ら
ず、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のうちの少なくとも
1つを含む極性置換基であれば良い。
溶性の有機溶媒である場合には、これらの溶媒に対する
溶解度が少なくとも1質量%以上となるように親油性の
基、例えばアルキル基やアルコキシ基、好ましくはC4
以上のアルキル基やアルコキシ基を導入し、この基を逆
ディールス・アルダー反応で脱離させて、非水溶性、も
しくは難水溶性の有機溶媒に対する溶解度を殆どゼロに
まで低下させることができる。
てより詳細に説明する。
により親溶媒性基を脱離させることで、その溶媒への溶
解度を有効に制御することのできる化合物の例として、
例えば下記式(I)ないしは(II)で示されるような
テトラアザポルフィリン化合物や下記式(III)ない
しは(IV)で示されるようなポルフィリン化合物が挙
げられる。
基を表し、溶媒が水系溶媒の場合は酸素原子、窒素原子
および硫黄原子の少なくとも1つを含む極性基が好まし
く、具体的には水酸基、スルホン酸基、カルボキシル
基、アミノ基などを挙げることができ、中でも水酸基が
より好適である。また、溶媒が非水溶性もしくは難水溶
性の有機溶媒である場合は、親油性の基、例えばメチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、
あるいはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基等の
アルコシキ基が挙げられ、より好ましくは炭素数4以上
のアルキル基、ないしはアルコシキ基が挙げられる。
具体的にはZn、Cu、Fe、Mg、Al、Ga、T
i、Snなどが挙げられる。またYは塩素、臭素、ヨウ
素等のハロゲン原子、酸素原子または水酸基を表す。n
は0〜2の整数である。
る化合物〕次に、上記式(IV)にかかり、水に対する
溶解性を変化させることのできるポルフィリン化合物の
具体例について説明する。
物は、親水性の基として水酸基を有し、該水酸基によっ
て水系溶媒に可溶であり(25℃における水に対する溶
解度1質量%以上)、該水酸基は逆ディールス・アルダ
ー反応によって該化合物の分子から脱離して、その結果
として水系溶媒への溶解性が低下するものである。
平面性が高く、パイ−パイスタッキングにより溶媒に難
溶(例えば、25℃における水に対する溶解度1質量%
未満)なものが多いが、上記式(IX)で示される水酸
基が結合しているビシクロ[2,2,2]オクタジエン
骨格が縮環したポルフィリンは、嵩高いビシクロ[2,
2,2]オクタジエン骨格並びに水酸基の存在によって
水系溶媒に対して可溶化されている。そして上記式(I
X)の化合物を逆ディールス・アルダー反応させて架橋
部分のエチレンを脱離させると、水酸基の脱離並びに嵩
高さの減少による分子のスタッキングとが相まって、水
系溶媒に対する溶解性が低下し、例えば25℃の水に対
して溶解しない、或いは殆ど溶解しない化合物となる。
本発明のポルフィリン系化合物においては(IV)の一
例を示したものであり、中心金属として亜鉛、溶媒親和
性基として水酸基を用いているものを挙げているが、本
発明はこれに限定されるものではなく、前述したように
親和性を持たせたい溶媒に対する極性などを考慮して適
宜選択されてよい、また中心金属については亜鉛の他に
銅、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられるが、必
要とされる化合物の電子状態、構造に由来する因子(吸
収スペクトル等)を目的のものに調整する目的で合成の
し易さ等を考慮して適宜選択されてよい。親溶媒性へと
変換可能な置換基については特に限定されるものではな
いが、例えば、合成のし易さから水酸基などをエーテル
基やエステル基に変換して長鎖アルキル基、エチレング
リコール基などの種々の置換基に変成することができ
る。
本発明にかかるポルフィリン系化合物の合成方法につい
て説明する。
反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性基
を有するポルフィリン骨格を有する化合物は、 (i) ジエンとして該親溶媒性基あるいは該親溶媒性
基への変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエン
と、ジエノフィルとしてのフェニルスルホニル化合物と
をディールス・アルダー反応させて下記式(VI)で示
される化合物および下記式(VII)で示される化合物
の少なくとも一方を得る工程;
独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能
な基を示す。) (ii) 上記式(VI)で示される化合物および上記
式(VII)で示される化合物の少なくとも一方と、C
NCH2COOR5(R5は炭素数1〜4の直鎖状もしく
は分岐鎖状のアルキル基を示す)で示されるイソニトリ
ルとを付加環化反応させて下記式(VIII)で示され
る化合物を得る工程;および、
くは分岐鎖状のアルキル基を示す) (iii) 上記式(VIII)で示される化合物を4
量環化せしめてポルフィリン骨格を形成せしめた後、金
属原子をポルフィリン骨格中に配位させる工程、により
合成することができる。なお、上記式(VI)及び(V
II)において、R3及びR4は、親溶媒性の基、即ち上
記式(I)〜(IV)におけるR1、R2と同義のもの、
あるいは親溶媒性の基に変換可能な基を表す。親溶媒性
の基に変換可能な基とは、例えばポルフィリン化合物の
合成の過程において、R1及びR2の少なくとも一方が反
応してしまうのを防ぐためにR1、R2が保護基によって
保護されている形態を包含する。
リン化合物の合成方法についてより詳細に説明する。こ
の化合物は例えば図1に示すスキームに従って合成する
ことができる。図中、化学式に付された符号は、その化
学式が示す化合物の番号を表し、矢印に付された符号は
工程の番号を表す。
ジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−トルエン
スルホン酸の存在下で反応させ、水酸基を保護した化合
物2を得る(i)。化合物2と、ジエノフィルとしての
2−ニトロ−1−(フェニルスルホニル)エチレンをト
ルエンの存在下でディールス・アルダー反応させて化合
物3a、3bを得る(ii)。こうして得た化合物3
a、3bを窒素置換した環境下で、ドライTHF(テト
ラヒドロフラン)に溶解させ、氷冷下、ドライーエチル
イソシアノアセテートを加えた後、ドライ−1、8−ジ
アザビシクロー[5,4,0]ウンデセン−7(以降
「DBU」と称す。)を加えて改良Barton−Za
rd法により反応させることによってポルフィリン前駆
体としての化合物4を得る(iii)。
とは、N.Ono、H.Hironaga、K.On
o、S.Kaneko、T.Murashima、T.
Ueda、C.Tsukamura and T.Og
awaらの執筆にかかるJ.Chem.Soc.Per
kin Trans.1、1996、417に開示され
ているようなニトロアルケンと芳香族ニトロ化合物とイ
ソシアノ酢酸エチルからのピロール骨格の構築法を改良
し、より多様な芳香環構築法として確立したものであ
る。本発明ではディールス・アルダー反応と組み合わせ
ることによって新しい機能を有する化合物の合成に成功
し、本発明の完成に至った。Barton−Zard法
は、これまでアルキル基が置換したピロール骨格の構築
法として知られていたものであるが、本発明ではこれを
改良し芳香環置換前駆体(アリール置換前駆体)ピロー
ル骨格の構築を可能とした反応を用いている。具体的に
はディールス・アルダー反応で親溶媒性基が置換された
スルホニル化合物、ニトロスルホニル化合物を出発原料
を合成し、それをイソシアノ酢酸エチルと反応させるこ
とによって前駆体ピロール環を構築する過程の反応とし
て用いている。
溶解し、氷冷下で水素化リチウムアルミニウムを加え反
応させて、化合物4の4量体であるところの、ポルフィ
リン骨格を有する化合物5を得る(iv)。化合物5
を、金属塩例えば酢酸亜鉛と共にクロロホルム−メタノ
ール等に溶かし、反応させることによって、金属元素を
ポルフィリン骨格中に配位させて化合物6を得る
(v)。次いで化合物6に対して水酸基の脱保護反応を
行なうことで上記式(IX)にかかる化合物7を得る
(vi)。こうして得られた化合物7の、25℃におけ
るメタノール1gに対する溶解度は1.4g、イソプロ
ピルアルコール1gに対する溶解度は2.55g、水/
イソプロピルアルコール混合溶媒1gに対する溶解度
0.8g程度である。
反応させて得られる水酸基が脱離した化合物8は、25
℃における水系溶媒に対する溶解度が殆どない化合物と
なる。
ールス・アルダー反応について〕ディールス・アルダー
反応は、共役二重結合の1,4位に二重結合又は三重結
合を持った化合物が付加して6員環のヒドロ芳香環を生
成する反応をいう。逆ディールス・アルダー反応とは、
ディールス・アルダー反応の逆反応のことを指す。例え
ば、ビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格の縮環部
分を有する化合物を逆ディールス・アルダー反応させる
ことで、架橋部分のエチレンを脱離させることができ
る。そして当該エチレン部分に、当該化合物が溶媒に対
する溶解性を増すような基を結合させておくことによっ
て、溶解度のコントロールが可能となる。また、本発明
にかかる逆ディールス・アルダー反応によるエチレンの
脱離の結果、パイ共役系が構築される化合物の場合、パ
イ共役系の構築の結果として分子の立体構造が嵩高い構
造から、平坦な構造に変化するように分子構造を構築し
ておくことは、当該化合物を逆ディールス・アルダー反
応させた結果として得られる化合物の凝集性や会合性を
も制御することができ、好ましい態様である。
ールス・アルダー反応後に分子間で水素結合や、ファン
デルワールス力、静電相互作用、極性による相互作用が
大きくなる系を設計することがより好ましい。従来であ
れば会合状態が大きくなっているため制御が困難であっ
た系においても、反応前後の化合物の性質を設計するこ
とによって効果的に凝集性や会合性を制御することが可
能となる。
アルダー反応によって脱離した架橋部分の置換基を極め
て安定で安全性の高いものにすることが可能である。言
い換えれば、系に悪影響を与えるような可逆的な反応や
副次的な反応が起こらないように、反応系を設計するこ
とが好ましい。一般的にジエン化合物とジエノフィル化
合物間でのディールス・アルダー反応は、発熱反応(デ
ィールス・アルダー反応)、吸熱反応(逆ディールス・
アルダー)の平衡反応であることから可逆性反応である
ことが知られている。この点を利用して特開平11−3
49877号公報にインクジェットインク・キャリアー
の粘度温度制御に利用されている例が開示されている。
しかし、該発明に使用されている反応は可逆反応である
ため本発明に適用した場合、溶解性が減少した状態で、
冷却をされると再度、環化反応を誘発し、溶解性が再び
増加することが考えられる。また、逆ディールス・アル
ダー反応した状態では不安定なジエン化合物とジエノフ
ィル化合物で存在するため、副反応として酸化反応を誘
発することが懸念され、本発明のような用途には不適で
あると考えられる。さらに、特開平10−31275号
公報ではトリアリルメタン系の化合物の紫外線・熱によ
る分解反応や、フォトクロミック化合物のような光・熱
可逆性化合物を使用して極性(溶解性、凝集性)の制御
をしている例が開示されている。しかし、該発明に利用
されている極性制御部はラジカルイオン開裂的に分解す
る系であるため、非可逆的な状態を形成することは可能
であるが、副生成物が極めて不安定であり、酸化劣化反
応を誘発し、悪影響を与える恐れが考えられる。また、
フォトクロミック反応は可視・紫外光線、および熱に対
する可逆反応であるため、1つの状態を維持することが
極めて困難であり、本発明のような用途には不適当であ
ると考えられる。
・アルダー反応によって前駆体から脱離した化合物と前
駆体から生成した化合物とが再びディールス・アルダー
反応を起こすジエンとジエノフィルの関係となることが
ない様に反応系を設計することが好ましい。本態様にお
いては、逆ディールス・アルダー反応によって脱離した
化合物(1,2−エチレンジオール)は、ジエノフィル
となることはない。また、1,2−エチレンジオール自
体が不安定な化合物であり、反応系内においてヒドロキ
シアセトアルデヒドに変化してしまうと考えられる。そ
のため、反応系内には、非水溶化した化合物8と再び反
応するような化合物は存在せず、その結果として逆ディ
ールス・アルダー反応は非可逆的に進行する。このよう
に、逆ディールス・アルダー反応により脱離した化合物
が、酸化、還元、異性化等によって反応性2重結合を持
たない、ディールス・アルダー反応が不可能な物質に変
換されるように、反応系を設計することは、逆ディール
ス・アルダー反応を非可逆的に進行させるうえで好まし
い。
本発明にかかる化合物、例えば図1のスキーム中の化合
物7を逆ディールス・アルダー反応させる具体的な方法
としては、例えば、加熱、光、電磁波や放射線の照射等
から選ばれる少なくとも1つの手段によるこれらエネル
ギーの付与などが挙げられる。
骨格を有する化合物〕本発明にかかる化合物の他の例と
して、下記構造式(X)で示されるテトラアザポルフィ
リン化合物を挙げることができる。
同様に、ビシクロ[2,2,2]オクタジエン骨格に結
合してなる水酸基によって水系溶媒に対する溶解性を保
持しており、逆ディールス・アルダー反応によってエチ
レンを脱離させることによって、当該化合物の分子から
脱離する結果、水系溶媒に対する良好な溶解性を失うこ
とになる。
方法〕次に、本発明にかかるテトラアザポルフィリン系
化合物の合成方法について説明する。
応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性基を
有するテトラアザポルフィリン骨格を有する化合物は、 (i) 該親溶媒性基あるいは該親溶媒性基へと変換可
能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノフィ
ルとしてのジシアノ化合物とをディールス・アルダー反
応させて下記式(V)で示される化合物を得る工程;お
よび
基、又は該親溶媒性基に変換可能な基を表わす) (ii) 上記式(V)で示される化合物を4量環化せ
しめてテトラアザポルフィリン骨格を形成した後、金属
原子を該テトラアザポルフィリン骨格中に配位させる工
程、により合成することができる。なお、上記式中、R
3及びR4は、親溶媒性の基、即ち上記式(I)〜(I
V)におけるR1、R2と同義のもの、あるいは親溶媒性
の基に変化可能な基を表す。親溶媒性の基に変換可能な
基とは、例えばポルフィリン化合物の合成の過程におい
て、R1及びR2の少なくとも一方が反応してしまうのを
防ぐためにR1、R2が保護基によって保護されている形
態を包含する。
ザポルフィリン化合物の合成方法について詳細に説明す
る。この化合物は例えば図2に示すスキームに従って合
成することができる。まず、1,2−ジヒドロキシシク
ロヘキサジエンをアセトン、ジメトキシプロパン、p−
トルエンスルホン酸存在下で反応させ、水酸基を保護し
た化合物2’を得る(i’)。化合物2’とジシアノア
セチレンをトルエンの存在下でディールスアルダー反応
させて、ジシアノ化合物3’を得る(ii’)。こうし
て得た化合物3’を窒素置換した環境下で、例えばジ−
n―ブトシキマグネシウムとともに、n―ブタノール等
に溶かし、反応させることによって、4量体化してテト
ラアザポルフィリン骨格を形成させると共に、金属元素
をテトラアザポルフィリン骨格中に配位させて化合物
4’を得る(iii’)。次いで化合物4’に対して水
酸基の脱保護反応を行なうことで上記式(X)にかかる
化合物5’を得る(iv’)。こうして得られた化合物
5’の、25℃における水に対する溶解度は50質量%
程度である。
合物5’を逆ディールス・アルダー反応させて得られる
水酸基が脱離した化合物6’は、25℃における水に対
する溶解性を持たない(溶解度ゼロ)化合物となる。
で水系媒体に対して優れた溶解性を示す化合物について
説明してきたが、本発明にかかる技術は、これに限定さ
れず、油性の有機溶媒に対して優れた溶解性を示す化合
物を逆ディールスアルダー反応させて油性溶媒に対する
溶解性を低下させることも可能である。このような化合
物としては、例えば下記式(XI)で示されるような構
造の化合物を挙げることができる。このような化合物は
前述した化合物群の水酸基をアルキル基等の溶媒可溶化
基によって変成することや合成時における出発物質を工
夫することよって容易に合成することが可能である。
各種化合物の各種用途への応用例を以下に説明する。
溶媒に対する溶解性を制御することができることから、
インクに適用することで高品位な印刷を行うことができ
る。具体的には、例えば、染料型の色材から顔料型の色
材へと変化させることができるものである。より具体的
に述べれば、インク中では溶解状態で存在し、記録媒体
上において逆ディールス・アルダー反応させて溶媒に対
する溶解性を低下させることによって、記録媒体上での
色材と溶媒との分離を迅速化させることができる。ま
た、本発明にかかる技術によれば、逆ディールス・アル
ダー反応させた結果として得られる化合物(色材)を、
耐久性(耐光性、耐ガス性を含む)に優れている構造の
ものとすることによって、染料インクの優れている点と
顔料インクの優れている点との双方を享受することが可
能となる。本発明にかかるインクの組成に含まれてよい
色材としては特に限定されるものではないが、一般的に
会合状態が強固であって溶解性、分散性が低いとされて
いる色材で効果が大きく特に好適である。例えば、アゾ
色材、キノン系色素、キナクリドン系色素などの多環式
色材、各種キレート色材、ニトロ色材、ニトロソ色材、
アニリンブラック等が好適である。これらの色材は分子
間相互作用が大きく溶解性、分散性が低いとされている
化合物が多い。
れているものとするためには前述した通り、分子間相互
作用によって外部の劣化要因(光、ガス)からの影響を
受けに難い構造にする必要がある。このために相互作用
を制御することが重要である。
や(X)で示した、本発明にかかる、水溶性の化合物を
色材として用いることによって、水性のインクジェット
用インクを得ることができる。
と水溶性有機溶剤との混合物が挙げられる。水と水溶性
有機溶剤との混合物を用いる場合、水溶性有機溶剤の含
有量は、特に限定されないが、インク全質量に対して、
好ましくは3〜50質量%の範囲である。また、インク
に含有される水の含有量は、インク全質量に対して、好
ましくは50〜95質量%の範囲にある。
えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロ
ピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチル
アルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブ
チルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノ
ールなどの炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメ
チルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド
類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又は
ケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンな
どのエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレン
グリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエ
チレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、トリメチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサント
リオールなどのアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含
むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリ
コールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレン
グリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエ
チレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルな
どの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコール
ジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリ
コールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アル
コールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールア
ミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど
のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2
−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2
−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶
性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用す
ることができる。また、本発明の水系インク(溶媒が水
系溶媒であるインク)は、所望の物性値を有するインク
とするために、上述した成分の他に必要に応じて、添加
剤として例えば粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ
剤、界面活性剤、酸化防止剤等を添加することができ
る。
は、何れも本発明にかかる化合物を色材として用いた場
合を説明してきたが、本発明にかかるインクにおいて、
逆ディールス・アルダー反応によってインク中の溶媒に
対する溶解性が低下する化合物が必ずしも色材である必
要はない。例えばインクを構成するあらゆる成分から選
ばれる少なくとも1つとして、本発明にかかる化合物を
用いることもできる。例えば、水溶性のバインダー用ポ
リマーとして、逆ディールスアルダー反応によって溶媒
に対する溶解性が変化するものを、色材と共にインク中
に添加することで、インク中では当該ポリマーを溶解状
態としておき、記録媒体に付与された時点で逆ディール
ス・アルダー反応によって非水溶性に変化させること
で、耐水性の良好な記録物を得ることもできる。
(IX)で示されるポルフィリン化合物や式(X)で示
されるテトラアザポルフィリン化合物を含む水系インク
は、インクジェット記録に好適に用いることができる。
具体的には、例えば、当該インクを市販のオンデマンド
型インクジェットプリンタ(例えばBJ−F900(商
品名)、キヤノン社製)用のインクタンクに充填し、そ
のインクタンクをプリンタに搭載して、記録媒体上に、
当該インクを付与した後、逆ディールス・アルダー反応
を誘起せしめるために、記録媒体上のインクにエネルギ
ーを印加する。ここで印加するエネルギーとしては、前
記したように、熱、光等を用いることができる。インク
の記録媒体への付与と、記録媒体上のインクへのエネル
ギーの印加のタイミングとしては、記録媒体が、水に対
する良好な浸透性を有するもの、例えば普通紙等の場合
には、インクが記録媒体に十分に浸透してしまうより前
であることが好ましく、例えば普通紙(キヤノン製PB
用紙)の場合には、浸透性がよいことから、インク付与
とエネルギー付与とは1秒程度以内とすることが好まし
い。従って、ここで用いるインクジェット記録装置に
は、記録媒体へのインクの付与と、記録媒体に付与され
たインクへのエネルギーの印加とが、時間的に殆ど同
時、或いはインク付与後のできるだけ短時間の後に行わ
れるように、記録ヘッドの下流側に近接してエネルギー
付与手段を設けたり、或いは記録ヘッドに隣接してエネ
ルギー付与手段を配置してもよい。
ィールス・アルダー反応誘起手段としてのプレヒータ、
ハロゲンヒータを含む記録装置に関して図3を使用して
説明する。
及び該記録ヘッドに対して着脱可能に装着されているイ
ンクタンクCを具備しているフルカラーシリアルタイプ
のプリンタの概略斜視図である。インクタンクCは本発
明のインクを収容するインク収容部の一形態である。記
録ヘッドおよびインクタンクCはキャリッジ3に対して
脱着自由に装着される。キャリッジ3はガイド軸11に
沿って摺動方向に係合し、また、主走査モータ(不図
示)によって移動する駆動ベルト52の一部と接続す
る。これにより記録ヘッド及びインクタンクはガイド軸
に沿った方向に走査が可能となる。記録ヘッド、インク
カートリッジの走査による記録領域の奥側および手前側
においてガイド軸とほぼ平行に延在する搬送ローラ16
がある。プレヒート加熱を兼ねた搬送ローラ16は制御
回路と副走査モータ(何れも不図示)によって駆動さ
れ、記録媒体Pおよび記録媒体上に付与されるインクに
含まれる本発明の新規化合物を加熱し、逆ディールス・
アルダー反応を誘起するとともに、記録媒体Pを搬送す
る。この搬送されていた記録媒体Pはプラテン部におい
て印字下面側から赤外線加熱ヒータユニット500によ
ってメインヒート加熱が行われ、記録媒体Pおよび本発
明の新規化合物を所望の温度まで高め、急速に逆ディー
ルス・アルダー反応を進行させる。赤外線ヒータユニッ
ト500は、例えばハロゲンヒータ501と、記録媒体
進入防止と効率的加熱を可能にした網目状のプラテン5
02と赤外線を記録媒体側に集光するための反射板(不
図示)と、温度センサー(サーミスター)(不図示)お
よびそれを制御する回路(不図示)で構成している。ま
た、上述したインクジェット記録装置における加熱手段
としてはハロゲンヒータによる赤外線加熱をもって説明
したが、これは本発明の新規化合物が有する逆ディール
ス・アルダー反応特性によって温風加熱方式や光開裂の
ための半導体レーザー等の別誘起手段で構成することも
可能である。
ットとしては、インクジェット記録装置に必要な、記録
ヘッド、インクカートリッジ(インク収容部)、キャリ
ッジ装置、紙搬送装置を有し、さらに本発明の新規化合
物の逆ディールス・アルダー反応を誘起するために必要
な外部エネルギー付与装置(加熱装置、光照射装置、電
磁波照射装置等)を有するものである。これら装置をシ
ーケンス的にコントロールするコントローラ、インク回
復系装置等は適宜選択されて装備される。
ンクカートリッジとしては、一般的なインクジェット記
録方式に使用されている方式のインクカートリッジが適
宜選択されて使用される。これには記録ヘッドの上部に
装着されてヘッドにインク供給可能とされるもの、チュ
ーブを使ってヘッドにインク供給可能とされるもの、記
録ヘッドと一体化されているものなどが挙げられる。
化合物は、また記録媒体、例えばインクジェット記録な
どに用いる記録媒体に含有させることもできる。そして
そのような記録媒体をインクジェット記録に適用するこ
とで、高品位なインクジェット記録物を得ることが可能
である。本発明にかかる新規化合物を記録媒体に含有さ
せる例としては、例えば本発明にかかる化合物を水溶性
のバインダーとして記録媒体上に塗布することが考えら
れる。このような記録媒体に水系インクで記録した後、
当該化合物の水溶性可溶化基を逆ディールス・アルダー
反応により脱離することによって、記録媒体表面を疎水
化することが可能である。そしてこのとき、逆ディール
ス・アルダー反応を生じさせる程度を、記録媒体に与え
るエネルギーを制御することで調整できるため、疎水化
の程度もまた調整することができる。よって記録媒体に
付与された水性インクの良好な定着と少ない滲みとの両
立を高いレベルで満足させることが可能である。
れる記録媒体は、水系インクによるインクジェット記録
方法に適用しうる記録媒体の中から適宜選択されるもの
であるので特に限定されるものではないが、例えば紙、
フィルム等の情報伝達用シート、繊維および皮革等が挙
げられる。情報伝達用シートについては、表面処理をさ
れたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設
けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材
にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することによ
り、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミック
をポリビニルアルコール等の親水性ポリマーと共に上記
基材表面に塗工することによって設けられる。なお、普
通紙も記録媒体として用いることができるのはもちろん
である。
は記録媒体に添加剤等を加えることもできる。添加剤等
の具体例としては特に限定されるものではないが、ヒン
ダードアミン、ヒンダードフェノール等の代表される抗
酸化剤、サリチル酸系、ベンゾトリアゾール系に代表さ
れる紫外線吸収剤が挙げられる。これらの添加剤は一般
的に非水溶性のものであり、インクジェットインク、イ
ンクジェット記録媒体に含有させようとする場合、水溶
性の置換基(水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基
等)を添加剤に導入するのが、一般的である。しかし、
この場合、高湿度等の水分の影響により添加剤のマイグ
レーション(流れ出し)等が生じ、効果が低下すること
が予想される。それを防止するために分子量を大きくす
ると、添加剤の溶解性が低下し、当初期待する効果が出
ない可能性がある。このような場合において、本発明の
可溶化基脱離、構造変化の機構を用いることにより、溶
解性をコントロールすることにより、マイグレーション
を停止することができ、溶解性とマイグレーションを両
立することが可能である。溶解性とマイグレーションを
両立させるためには脱離する置換基と、前駆体から生成
する化合物に残存する置換基の大きさ、極性、位置を設
計することが好ましい。
物に逆ディールス・アルダー反応させる一手段として加
熱する方法があることは前記したが、このような性質を
用いて、当該化合物を熱履歴を検出するための手段とし
て用いることもできる。即ち、逆ディールス・アルダー
反応による化合物の構造変化、特にはパイ共役系の構築
によって、逆ディールス・アルダー反応前後で、変色さ
せることができる。この変色を利用して、例えばある物
品に対して所定の温度以上の熱が加わったか否かを知る
ことができる。例えば前記した、本発明にかかる、ポル
フィリン骨格あるいはテトラアザポルフィリン骨格を有
する化合物は、逆ディールス・アルダー反応を誘起する
温度以上に加熱された場合に変色する。この温度は設計
される化合物によって異なるが、例えば上記の新規化合
物の場合は120℃以上の熱履歴で変色が認められる。
従って、物品に、本発明にかかる化合物を付着させてお
き、その化合物が逆ディールス・アルダー反応により変
化したか否かを観察することで、当該物品に対する熱履
歴を知ることができる。
用いることで、化合物の精製を行うことも可能であると
考えられる。例えば、様々な有機機能性材料において、
パイ電子の拡張された化合物は有用と考えられている
が、かかる化合物、例えばテトラアザポルフィリン系化
合物(フタロシアニンなど)においては、分子のスタッ
キングによって溶媒に溶け難いものが多く、分子間に含
まれているような不純物を除去し、精製することが困難
である。しかし、本発明にかかる技術を用いて、フタロ
シアニンの合成段階では、例えば親水性基が結合した嵩
高いビシクロオクタジエン骨格を導入することで水系溶
媒に対して高い溶解性を確保しておき、この段階におい
てろ過や抽出などの定法に従って精製を行ない、不純物
を除去したのちに、逆ディールス・アルダー反応でエチ
レンを脱離させてパイ電子系を拡張することで、所望の
化合物、例えばフタロシアニン化合物を得ることで、高
純度なフタロシアニン化合物を容易に得られる。
物に、逆ディールス・アルダー反応させ有機半導体特性
を持つ化合物の製膜も可能になる。一般にアントラセ
ン、テトラセン、ポリチオフェン、ポルフィリン、テト
ラアザポルフィリン系(フタロシアニンなど)の化合物
は有機半導体特性を持つことが知られているが、この様
な化合物は、パイ共役系が広い平面構造を持つことによ
り、溶媒に溶け難い物が多く、製膜するには蒸着以外に
は出来ないのが一般的であった。蒸着による製膜は、バ
ッチ式でかつ製膜条件に制約される点が多く、大面積に
均質な製膜を行うのが難しくかつコスト的にも不利であ
った。
で、上記したアントラセン、テトラセン、ポリチオフェ
ン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロ
シアニンなど)の化合物に溶剤可溶性を担持させること
が出来、これらの溶液をキャスト法などの方法を用いる
ことで製膜が可能となる。製膜後、逆ディールス・アル
ダー反応でエチレンを脱離させてパイ共役系を拡張する
ことで、所望の化合物からなる有機半導体薄膜を得るこ
とができる。製膜法としては、スピンコート、ディップ
コートなどのキャスト方法や、これらの溶剤可溶性の付
与してなるアントラセン、テトラセン、ポリチオフェ
ン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロ
シアニンなど)などの化合物は、スクリーン印刷やイン
クジェット方式で印刷することも可能である。これらの
製膜法は大面積を低コストで製膜することが可能であ
る。さらにインクジェット方式による印刷を用いれば、
記録媒体上の所望の位置に極めて高精度に選択的にイン
クを付与することができ、当該基板上で逆ディールスア
ルダー反応により溶媒不溶化させることで、記録媒体上
に、有機半導体の高精度なパターンを形成することがで
きる。またこれらの化合物は、基材(記録媒体)に付与
されて初めて溶媒に対する溶解性を低下させることがで
きる為、記録媒体上における溶媒の挙動と有機半導体材
料(ここではアントラセン、テトラセン、ポリチオフェ
ン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン系(フタロ
シアニンなど)化合物)の挙動とを独立させることが可
能となる。つまり、溶媒が基材上に無秩序に拡散してし
まった場合においても、当該溶媒に対して不溶化した有
機半導体材料は、溶媒の拡散に追従して拡散してしまう
ことを抑制できる。このことも、パターンの高精度化に
寄与しているものである。
の効果をより明らかにするが、本発明はこの実施例に限
定されるものではない。
デセン−7 〔実施例1(ポルフィリン系化合物の合成)〕図1に記
載のスキームに従って、逆ディールスアルダー反応で脱
離可能な水酸基を有する本発明のポルフィリン系化合物
を色材として合成した。
ン(化合物1)の20%酢酸エチル溶液(25ml)を
用意し、溶媒を減圧下濃縮し、そこにアセトン(30m
l)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕跡
量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で4時間攪拌
した。10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、飽
和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止し、
ジエチルエーテル(3×30ml)で抽出、有機層を飽
和食塩水(3×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥させ、減圧下濃縮することで化合物1の水酸基
を保護した化合物2が8.33gの収率で得られた。
l)と2−ニトロ−1−(フェニルスルホニル)エチレ
ン(230mg、1.08mmol)を入れ、トルエン
(2.00ml)を加えて、90℃で3時間攪拌した。
反応終了後、反応溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグ
ラフィ(20−30容量% 酢酸エチル/ヘキサン)で
分離し、Rf0.24(20容量% 酢酸エチル/ヘキ
サン)とRf0.18(20容量% 酢酸エチル/ヘキ
サン)のフラクションを濃縮した。これらをそれぞれ再
結晶することにより、化合物3aと3bが124mg
(0.339mmol、32.6質量%)、62mg
(0.17mmol、16.3質量%)の収率で得られ
た。 mp 151.9−152.6℃1 HNMR(溶媒:CDCl3 単位:δppm 7.8
7(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59
(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(d
d、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(d
d、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(d
d、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(d
d、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、
1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、
1.22(s、3H) IR(KBr)/cm-1 2981w、1552s、1
313s、1151s、1056s、727.0m、6
01.7m。
ニトロ−9−フェニルスルホニル−3a、4、7、7a
−テトラヒドロ−4、7−エタノ−1、3−ベンゾジオ
キソール)を365mg(1mmol)を入れ窒素置換
し、ドライTHF(5.00ml)に溶解させ、反応容
器を氷浴に浸した。ドライ−エチルイソシアノアセテー
ト(0.110ml、1.00mmol)を加えた後、
水素化カルシウムにより蒸留したDBU(0.370m
l、2.50mmol)を5分かけて滴下し、氷浴を取
り除き、室温で17時間攪拌した。反応終了後、2%塩
酸(10.0ml)を加え、酢酸エチル(3×20.0
ml)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮し、シリカゲルカラ
ムクロマトグラフィ(5容量%酢酸エチル/クロロホル
ム)で分離し、Rf0.41(5容量%酢酸エチル/ク
ロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶すること
により化合物4を283mg(97.8mmol、9
7.8重量%)の収率で得られた。 mp 114.9−146.3℃1 HNMR(溶媒:CDCl3、単位:δppm) 8.
58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、
1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)
4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0H
z、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3
H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.3
0(s、3H) IR(KBr)/cm-1 3345s、2892w、1
681s、1297m、1141s、1039s。
を入れ窒素置換し、ドライTHF(5.00ml)に溶
解させ、反応容器を氷浴に浸した。水素化リチウムアル
ミニウム(114mg、3.00mmol)を加えて氷
浴を取り除き、室温で1時間攪拌した。還元終了後、飽
和食塩水(20.0ml)を加え、不溶物をセライト濾
過し、クロロホルム(3×100ml)で抽出し、無水
硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液にp−トルエンスル
ホン酸(80.0mg)を加え、1日攪拌した。さらに
クロラニル(223mg、0.907mmol)を加え
さらに1日撹拌した。反応終了後、反応溶液を1%チオ
硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、飽和食塩水
(50.0ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥後、減圧下濃縮し、カラムクロマトグラフィで
精製し再結晶することで、化合物5(収率39.8重量
%)を得た。
l)−メタノール(3ml)に溶かし、室温で3時間撹
拌した。反応終了後、水(100ml×2)、飽和食塩
水(40ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウム
で乾燥後、減圧下濃縮し、クロロホルム−メタノールか
ら再結晶することによって赤紫色結晶(化合物6)を得
た。
り脱保護基反応を行い、目的とする水溶性化合物7を得
た。
および画像記録)、参考例〕実施例1で得られた水溶性
化合物7を限界濾過膜を用いて脱塩処理したもの、およ
び参考例としてフタロシアニン色素(C.I.ダイレク
トブルー199)を用いて以下の組成でインクジェット
インク(水系インク)を作成した。 1)脱塩処理した水溶性化合物7 あるいは、C.I.ダイレクトブルー199 5.0部 2)グリセリン 5.0部 3)尿素 5.0部 4)エチレングリコール 5.0部 5)水 80.0部 計 100.0部 このインクをキヤノン株式会社製 インクジェットプリ
ンタ 商品名:BJ−F870を用いて記録媒体(商品
名:PR−101;キヤノン株式会社製)に縦−横1c
m四方の赤紫色のカラーパッチを印刷した。実施例2の
カラーパッチは、120℃・1分間で熱処理することに
よって、化合物7を逆ディールスアルダー反応させて、
シアン色のカラーパッチに加熱変換した。こうして得た
実施例2並びに参考例のパッチに関して耐光堅牢性、耐
ガス堅牢性、耐水堅牢性、耐湿堅牢性の試験を行った。
キセノンフェードメーターを用いて、耐光暴露試験を行
った。本試験は室内における窓越し太陽光を考慮した画
像堅牢性試験である。 試験条件: 照射強度:70Klx 試験時間520時間 試験槽内温湿度条件:24℃・60%RH フィルタ:ソーダライム(アウター)、ボロシリケート
(インナー) 耐光堅牢性を以下の様に評価した。 A:濃度残存率90%以上 B:濃度残存率89〜80% C:濃度残存率79%以下。
I/ISA−S71.04−1985)に従って、ガス
腐食試験機を用いて、ガス暴露試験を行った。本試験は
室内における各種のガスの影響を考慮した画像堅牢性試
験である。
b、NO2:1250ppb、Cl2:10ppb、
O3:1200ppb 試験時間:72時間、試験槽内温湿度条件:24℃・6
0%RH 耐ガス堅牢性を以下の様に評価した。 A:濃度残存率90%以上 B:濃度残存率89〜80% C:濃度残存率79%以下。
5分間浸漬した後、引き上げ乾燥し、試験前との濃度変
化を測定した。 A:濃度残存率1%以下 B:濃度残存率2〜4% C:濃度残存率5%以上。
80%RHの恒温恒湿槽に1週間保管し、取り出し乾燥
し、試験前との濃度変化を測定した。 A:濃度残存率1%以下 B:濃度残存率2〜4% C:濃度残存率5%以上。
変換後および参考例のインク(ダイレクトブルー19
9)でまとめた結果を表1に示す。
よって、インクを記録媒体上で溶媒溶解系から非溶解系
へと変換することができる。記録媒体上で、溶解特性を
変化(低下)させることによって、色材の自己凝集を誘
起し、優れた画像堅牢性を達成することが可能となっ
た。一方、インクに対しては、従来の顔料インクのよう
に高分子分散剤等をインクに添加する必要がない。即
ち、本発明は、従来の染料インクと、顔料インクとの双
方の効果を享受することができるものである。
合物)の合成〕図2に記載のスキームに従ってテトラア
ザポルフィリン骨格を有する本発明にかかる化合物を合
成した。
ン(化合物1’)の20%酢酸エチル溶液(25ml)
を用意し、溶媒を減圧下濃縮し、そこにアセトン(30
ml)、2,2−ジメトキシプロパン(69ml)、痕
跡量のp−トルエンスルホン酸を加え、室温で4時間攪
拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液(30ml)、
飽和食塩水(30ml)を加えて攪拌し、反応を停止
し、ジエチルエーテル(3×30ml)で抽出、有機層
を飽和食塩水(3×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナト
リウムで乾燥させ、減圧下濃縮することで化合物1’の
水酸基を保護した化合物2が8.33g得られた。
レン(230mg)を入れ、トルエン(2.00ml)
を加えて、90℃で3時間攪拌した。反応終了後、反応
溶液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィ(20−3
0容量% 酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、Rf0.
24(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)とRf0.
18(20容量% 酢酸エチル/ヘキサン)のフラクシ
ョンを濃縮した。これらをそれぞれ再結晶することによ
り、化合物3’が184mg得られた。 mp:151.9−152.6℃1 HNMR(溶媒:CDCl3 単位:δppm 7.8
7(m、2H)、7.71(m、1H)、7.59
(m、2H)、6.16(m、2H)、4.81(d
d、J=5.6、2.4Hz、1H)、4.33(d
d、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.19(d
d、J=6.8、2.9Hz、1H)、4.04(d
d、J=5.6、1.5Hz、1H)、3.70(m、
1H)、3.48(m、1H)1.28(s、3H)、
1.22(s、3H) IR(KBr)/cm-1 2981w、1552s、1
313s、1151s、1056s、727.0m、6
01.7m。
し、ドライTHF(5.00ml)に溶解させた。そこ
にn−ブトシキマグネシウムのn−ブタノール溶液を加
え、150℃の温度で加熱撹拌し、4量環化、金属錯体
化を行った。反応終了後、酢酸エチル(3×20.0m
l)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫
酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮し、シリカゲルカラム
クロマトグラフィ(5容量%酢酸エチル/クロロホル
ム)で分離し、Rf0.41(5容量%酢酸エチル/ク
ロロホルム)のフラクションを濃縮し、再結晶すること
により化合物4’が283mgの収率で得られた。 mp 114.9−146.3℃1 HNMR(溶媒:CDCl3、単位:δppm) 8.
58(Br、1H)、6.68(d、J=2.4Hz、
1H)、6.50(m、2H)、4.56(m、1H)
4.34(m、2H)、4.32(q、J=7.0H
z、2H)、4.06(m、1H)、1.42(s、3
H)、1.38(t、J=7.0Hz、3H)、1.3
0(s、3H) IR(KBr)/cm-1 3345s、2892w、1
681s、1297m、1141s、1039s。
し、THF(5.00ml)に溶解させた。1N塩酸
(114mg)を加えて室温で1時間攪拌した。反応終
了後、飽和食塩水(20反応終了後、反応溶液を1%チ
オ硫酸ナトリウム水溶液(50.0ml)、飽和食塩水
(50.0ml)でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥後、減圧下濃縮し、カラムクロマトグラフィで
精製し再結晶することで、水酸基が脱保護された水溶性
フタロシアニン化合物5’(収率39.8%)を得た。
溶解性と、それが記録媒体に付与された後の高速な固液
分離、という従来の技術では両立が困難であると考えら
ていた2つの特性を共に極めて高いレベルで満足するこ
とができる。
ターニング後に溶媒非溶解系へと変換するというような
化合物の特性を変化させることが可能となり、画像堅牢
性を劇的に向上させるということが可能となる。
法を示すスキームである。
物の合成方法を示すスキームである。
斜視図である。
Claims (27)
- 【請求項1】 所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有す
ることにより該溶媒に可溶であり、逆ディールス・アル
ダー反応によって該親溶媒性の基が脱離して該溶媒に対
する溶解度が不可逆的に低下可能であることを特徴とす
る化合物。 - 【請求項2】 テトラアザポルフィリン骨格を有してい
る請求項1に記載の化合物。 - 【請求項3】 下記式(I)ないしは(II)で示され
る構造を有している請求項2に記載の化合物: 【化1】 【化2】 (式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ該親
溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、Y
はハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2の
整数を示す)。 - 【請求項4】 ポルフィリン骨格を有している請求項1
に記載の化合物。 - 【請求項5】 下記式(III)ないしは(IV)で示
される構造を有している請求項4記載の化合物: 【化3】 【化4】 (式(III)及び(IV)中、R1及びR2はそれぞれ
該親溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原
子、Yはハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0
〜2の整数を示す)。 - 【請求項6】 該溶媒が水溶性溶媒である請求項1〜5
のいずれかに記載の化合物。 - 【請求項7】 該親溶媒性の基が、酸素原子、窒素原子
および硫黄原子の少なくとも1つを含む極性基である請
求項6に記載の化合物。 - 【請求項8】 該親溶媒性の基が、水酸基、スルホン酸
基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる請求項
7に記載の化合物。 - 【請求項9】 下記式(I)ないしは(II)で示され
る構造を有していることを特徴とする化合物: 【化5】 【化6】 (式(I)及び(II)中、R1及びR2はそれぞれ親溶
媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、Yは
ハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2の整
数を示す)。 - 【請求項10】 下記式(III)ないしは(IV)で
示される構造を有していることを特徴とする化合物: 【化7】 【化8】 (式(III)及び(IV)中、R1及びR2はそれぞれ
親溶媒性の基を示し、Mは2価〜4価の配位金属原子、
Yはハロゲン原子、酸素原子または水酸基、nは0〜2
の整数を示す)。 - 【請求項11】 上記式(I)〜(IV)中、R1〜R4
の各々が、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なく
とも1つを含む極性基である請求項9又は10に記載の
化合物。 - 【請求項12】 上記式(I)〜(IV)中、R1〜R4
が、各々独立して、水酸基、スルホン酸基、カルボキシ
ル基、アミノ基から選ばれる基である請求項9〜11の
何れかに記載の化合物。 - 【請求項13】 逆ディールス・アルダー反応によって
脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するテ
トラアザポルフィリン骨格を有する化合物の合成方法で
あって、 (i) 該親溶媒性の基あるいは該親溶媒性の基へと変
換可能な置換基を有するシクロヘキサジエンと、ジエノ
フィルとしてのジシアノ化合物とをディールス・アルダ
ー反応させて下記式(V)で示される化合物を得る工
程;および 【化9】 (式(V)中、R3およびR4は、各々独立に該親溶媒性
の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表わす) (ii) 上記式(V)で示される化合物を4量環化せ
しめてテトラアザポルフィリン骨格を形成した後、金属
原子を該テトラアザポルフィリン骨格中に配位させる工
程、を有することを特徴とするテトラアザポルフィリン
骨格を有する化合物の合成方法。 - 【請求項14】 逆ディールス・アルダー反応によって
脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するポ
ルフィリン骨格を有する化合物の合成方法であって、 (i) ジエンとして該親溶媒性の基あるいは該親溶媒
性の基への変換可能な置換基を有するシクロヘキサジエ
ンと、ジエノフィルとしてのフェニルスルホニル化合物
とをディールス・アルダー反応させて下記式(VI)で
示される化合物および下記式(VII)で示される化合
物の少なくとも一方を得る工程; 【化10】 【化11】 (式(VI)および(VII)中、R3及びR4は、各々
独立に該親溶媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能
な基を表す。) (ii) 上記式(VI)で示される化合物および上記
式(VII)で示される化合物の少なくとも一方と、C
NCH2COOR5(R5は炭素数1〜4の直鎖状もしく
は分岐鎖状のアルキル基を示す)で示されるイソニトリ
ルとを付加環化反応させて下記式(VIII)で示され
る化合物を得る工程;および、 【化12】 (式(VIII)中、R3及びR4は、各々独立に該親溶
媒性の基、又は該親溶媒性の基に変換可能な基を表し、
R5は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキ
ル基を示す) (iii) 上記式(VIII)で示される化合物を4
量環化せしめてポルフィリン骨格を形成せしめた後、金
属原子をポルフィリン骨格中に配位させる工程、を有す
ることを特徴とするポルフィリン骨格を有する化合物の
合成方法。 - 【請求項15】 請求項1〜12の何れかに記載の化合
物および溶媒を含むことを特徴とするインク。 - 【請求項16】 更に他の化合物として色材を含む請求
項15に記載のインク。 - 【請求項17】 インクジェット用である請求項15又
は16に記載のインク。 - 【請求項18】 請求項15〜17の何れかに記載のイ
ンクを収容しているインク収容部を具備していることを
特徴とするインクカートリッジ。 - 【請求項19】 請求項17に記載のインクを収容して
いるインク収容部と、該インクを吐出するインクジェッ
トヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニッ
ト。 - 【請求項20】 請求項17に記載のインクを収容して
いるインク収容部と、該インクを吐出するインクジェッ
トヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェ
ット記録装置。 - 【請求項21】 (i) 請求項15〜17の何れかに
記載のインクを記録媒体に付与する工程と、(ii)
該記録媒体に付与した該インクに含まれる該化合物を逆
ディールス・アルダー反応させる工程と、を有すること
を特徴とする記録方法。 - 【請求項22】 請求項1〜12の何れかに記載の化合
物および溶媒を含んでいることを特徴とする液体組成
物。 - 【請求項23】 インクジェット法で吐出させるための
ものである請求項22に記載の液体組成物。 - 【請求項24】 (i)請求項22又は23に記載の液
体組成物を基材に位置選択的に付与する工程と、(i
i)該基材に付与した該液体組成物に含まれる該化合物
を逆ディールス・アルダー反応させて該液体組成物に含
まれる該溶媒に対して不溶化せしめる工程と、を有する
ことを特徴とするパターン形成方法。 - 【請求項25】 表面に請求項1〜12の何れかに記載
の化合物、もしくは請求項1〜12のいずれかに記載の
化合物の逆ディールスアルダー反応物が付着しているこ
とを特徴とする物品。 - 【請求項26】 物品の表面に請求項1〜12の何れか
に記載の化合物を付着させた物品の、該化合物が逆ディ
ールス・アルダー反応しているか否かを検知する工程を
有することを特徴とする物品の環境履歴検知方法。 - 【請求項27】 請求項1〜12の何れかに記載の化合
物、もしくは請求項1〜12のいずれかに記載の化合物
の逆ディールスアルダー反応物を含む表面を具備してい
ることを特徴とする記録媒体。
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