JP2007224019A - ビシクロポルフィリン化合物、ビシクロピロール化合物、化合物の製造方法、有機半導体及びその製造方法 - Google Patents

ビシクロポルフィリン化合物、ビシクロピロール化合物、化合物の製造方法、有機半導体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機溶媒に対する溶解度が良好なポルフィリン化合物を提供する。
【解決手段】式(I)又は(II)で表わされる構造を有するビシクロポルフィリン化合物。
Figure 2007224019

(式(I)(II)中、R5〜R16は1価の原子又は1価の原子団を表わし、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のうちの少なくとも一つの組は一体となって下記式(III)で表される基を形成したものを表わす。また、Mは金属原子を
表わす。
Figure 2007224019

(式(III)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基である。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。)
【選択図】なし

Description

本発明は、ビシクロポルフィリン化合物、ビシクロピロール化合物、化合物の製造方法、有機半導体及びその製造方法に関する。
有機半導体を用いた電界効果トランジスタは、そのほとんどが無機半導体よりも低温プロセスで製造できるため、プラスチック基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を作製することができる。また、有機半導体を用いた電界効果トランジスタのなかには塗布法や印刷法を用いた素子作製が可能なものもあり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。さらに、材料のバリエーションが豊富であり、分子構造の最適化により、容易に材料特性を変化させることが可能である。
特許文献1や特許文献2には、電界効果トランジスタの有機半導体としてポルフィリン化合物が挙げられており、中でも平面性の高いポルフィリン化合物を用いたものが高い特性を示すことが記載されている。また、有機半導体であるポルフィリン化合物は、ビシクロ構造を有するポルフィリン化合物の溶液を塗布し、これを熱変換することによって得られることも記載されている。
また、特許文献3には、ビシクロ構造を有するポルフィリン化合物において、ビシクロ部分に置換基を導入することで溶解度を改良させる事が記載されている。なお、特許文献3では、段落0073,0074において、エーテル基を含有する置換基を含む所定の化合物を逆ディールスアルダー反応させることにより、油性溶媒に対する溶解性を低下させることも記載されている。
特開2003−304014号公報 特開2004−6750号公報 特開2003−327588号公報
特許文献1,2に記載の技術では、有機半導体の原料となるポルフィリン化合物を塗布する際に、ポルフィリン化合物をクロロホルムやクロロベンゼン等の塩素系の溶媒に溶解して塗布を行なっていた。しかし、溶媒として塩素系の溶媒を使用することは、その毒性の面から実用上好ましくない。さらに、ポルフィリン化合物を原料として他の化合物を合成する場合にも、当該ポルフィリン化合物は溶解性が悪いため、当該合成反応に適した反応溶媒を選択するのに制限があり、実用上不便であった。
また、特許文献3記載の技術では、ポルフィリン化合物の親水性を向上させることは可能であるものの、これを有機半導体の分野に適用することは困難である。一般に、水は有機半導体の半導体特性を阻害するためで、溶媒に水を用いたり、親水性を上げて吸湿性が上がることは好ましくない。
さらに、特許文献3ではエーテル基を含有する置換基を含む所定の化合物が記載されている。この所定の化合物の場合、逆ディールスアルダー反応を生じるとエーテル基を含有した化合物が脱離することになる。エーテル基を含有する化合物はアルキル基に比べて極性が高いため、特許文献3記載の所定の化合物を有機半導体の原料として使用した場合、有機半導体の膜内に極性が高い化合物が残存することになり、有機半導体の電気的特性に悪影響を及ぼすことが考えられる。したがって、この点からも、特許文献3記載の技術を有機半導体の分野に適用することは困難である。
また、特許文献3記載のポルフィリン化合物は、そのビシクロ環の炭素に1個だけしか置換されていない分子構造を有するものである。このため、当該ポルフィリン化合物の原料(中間体)であるシクロヘキサジエンの合成が困難である。即ち、1置換のシクロヘキサジエン誘導体は、容易に2重結合の位置が移動した異性体に変換し、所望の中間体を得るのが非常に難しいのである。
以上のように、ビシクロ構造を有する従来のポルフィリン化合物は、有機溶媒に対する溶解度が十分でないことから、塗布プロセスに制限がでてしまっていた。また、合成上も所望の中間体を得るのが難しかった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、有機溶媒に対する溶解度が良好なポルフィリン化合物、及び、その合成に中間体として用いることができるビシクロピロール化合物、並びに、所定の化合物の製造方法、その製造方法で製造された化合物を含む有機半導体、及び、その有機半導体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、ビシクロ構造中の1つの炭素に2つの置換基を有するビシクロポルフィリン化合物が、溶解性の向上、変換温度の低減、合成上の問題の無い前駆体になりうる事などの利点を有することを見出して、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、下記式(I)又は(II)で表わされる構造を有することを特徴とするビシクロポルフィリン化合物に存する(請求項1)。
Figure 2007224019
(式(I)(II)中、R5〜R16は1価の原子又は1価の原子団を表わし、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のうちの少なくとも一つの組は一体となって下記式(III)で表される基を形成したものを表わす。また、Mは金属原子を表わす。
Figure 2007224019
(式(III)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基である。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。))
このとき、前記のMは、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群より選ばれるいずれか1種であることが好ましい(請求項2)。
本発明の別の要旨は、下記式(IV)で表わされる構造を有することを特徴とする、ビシクロピロール化合物に存する(請求項3)。
Figure 2007224019
(式(IV)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R22は1価の原子又は1価の原子団を表わし、R23は水素原子またはアルキル基を表わす。)
本発明の更に別の要旨は、下記式(V)又は(VI)で表されるビシクロ化合物から、式(VII)で表わされるエチレン化合物を脱離することにより、下記式(Va)又は(VIa)で表わされる化合物を得ることを特徴とする、化合物の製造方法に存する(請求項4)。
Figure 2007224019
(式(V)、(VI)、(Va)、(VIa)及び(VII)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。さらに、Q1及びQ2は2価の有機基を表わし、Q3及びQ4は1価の有機基を表わす。)
このとき、前記ビシクロ化合物がポルフィリン系化合物であることが好ましい(請求項5)。
本発明の更に別の要旨は、前記の製造方法で得られる化合物を含むことを特徴とする有機半導体に存する(請求項6)。
本発明の更に別の要旨は、前記の化合物の製造方法により前記化合物を得る工程を有することを特徴とする、有機半導体の製造方法に存する(請求項7)。
本発明によれば、有機溶媒に対する溶解度が良好なポルフィリン化合物、及び、その合成に中間体として用いることができるビシクロピロール化合物、並びに、所定の化合物の製造方法、その製造方法で製造された化合物を含む有機半導体、及び、その有機半導体の製造方法を提供することが可能である。
以下、本発明について実施の形態を示して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[I.ビシクロポルフィリン化合物]
本発明のビシクロポルフィリン化合物は、下記式(I)又は(II)で表わされる構造を有する化合物である。
Figure 2007224019
(式(I)(II)中、R5〜R16は水素原子又は1価の原子又は1価の原子団を表わし、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のうちの少なくとも一つの組は一体となって下記式(III)で表される基を形成したものを表わす。また、Mは金属原子を表わす。
Figure 2007224019
(式(III)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基である。また、R17〜R20は水素原子又は1価の原子又は1価の原子団を表わす。)
以下、詳細に説明する。
式(I)(II)中、R5、R6、R7及びR8は、1価の原子又は1価の原子団を表わす。R5、R6、R7及びR8となる1価の原子及び1価の原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、R5、R6、R7及びR8が大きな基であると、ポルフィリン環が歪んで平面性が阻害されたり、その原子又は原子団自体がπ共役系の重なりを阻害する原因になりやすい。このため、R5、R6、R7及びR8として好適な原子又は原子団としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子及び1価の有機基のいずれかが好ましい。好ましいものの具体例を挙げると、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、プロパニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基などの1価の有機基などが挙げられる。中でも、特に水素原子、フッ素原子、塩素原子が好ましい。この際、これらのアルキル基及びアルケニル基は、ポルフィリン環に結合している炭素以外は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、アルキル基等の置換基で置換されていてもよい。
また、R9〜R16は、1価の原子又は1価の原子団を表わす。この際、1価の原子団としては、例えば、1価の有機基等が挙げられる。
ただし、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のうちの少なくとも一つの組、好ましくは2組以上、さらに好ましくは4組は、一体となって式(III)で表される基(式(III)で表わされるビシクロ構造を有するビシクロ基)を形成したものを表わす。
式(III)において、R1〜R4は、水素原子又はアルキル基を表わす。ここで、R1〜R4がアルキル基である場合、R1〜R4の炭素数が長すぎると脱離するエチレン誘導体(後述する式(VII)のエチレン化合物)の分子量が大きくなり、蒸気圧が下がるために脱離して系外に除去することが難しくなる場合がある。したがって、当該アルキル基の炭素数は、通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である。
また、R1〜R4がアルキル基である場合、当該アルキル基は直鎖状でもよく、分岐鎖を有していてもよい。例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等が挙げられる。
なお、これらのアルキル基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、R1〜R4がアルキル基である場合、当該アルキル基は環を形成していてもよく、置換基を有していてもよい。R1〜R4の置換基としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。なお、これらの置換基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組は、どちらも炭素数10以下のアルキル基である。この際、炭素数10以下のアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖を有していてもよい。また、置換基を有していてもよく、環を形成してもよい。このように、ビシクロ構造中の1つの炭素に炭素数10以下のアルキル基置換基を2個有することにより、多様な有機溶媒に対して本発明のビシクロポルフィリン化合物の溶解性を高めることが可能となっている。
また、式(III)において、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。R17〜R20となる1価の原子又は1価の原子団は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、あまりに立体的な障害が大きいものや、大きな置換基を有するものは、本発明のビシクロポルフィリン化合物から有機半導体を製造した場合に、得られる有機半導体の特性を発現するためのπ共役系の分子間の重なりを阻害する可能性がある。
17〜R20の例を挙げると、1価の有機基が挙げられる。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−へプチル基等の置換されていても良い炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の置換されていても良い炭素数3〜18の環状アルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の置換されていても良い炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の置換されていても良い炭素数3〜18の環状アルケニル基;プロピニル基、ヘキシニル基等の置換されていても良い炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルキニル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の置換されていても良い複素環基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の置換されていても良い炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の置換されていても良い炭素数7〜20のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の置換されていても良い炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の置換されていても良い炭素数3〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の置換されていても良い炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基などが挙げられる。
また、その他、R17〜R20の例としては、1価の原子として、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。さらに、1価の原子団として、ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;メルカプト基;ヒドロキシ基;ヒドロキシアミノ基;ホルミル基;スルホン酸基;カルボキシル基;−COR24で表されるアシル基、−NR2526で表されるアミノ基、−NHCOR27で表されるアシルアミノ基、−NHCOOR28で表されるカーバメート基、−COOR29で表されるカルボン酸エステル基、−OCOR30で表されるアシルオキシ基、−CONR3132で表されるカルバモイル基、−SO233で表されるスルホニル基、−SO2NR3435で表されるスルファモイル基、−SO336で表されるスルホン酸エステル基、−NHSO237で表されるスルホンアミド基、−SOR38で表されるスルフィニル基が挙げられる。ここでR24、R27、R28、R29、R30、R33、R36、R37及びR38は置換されていても良い炭化水素基又は置換されていても良い複素環基を表わし、R25、R26、R31、R32、R34及びR35は水素原子、置換されていても良い炭化水素基及び置換されていても良い複素環基のいずれかを表わす。
このR24〜R38で表される炭化水素基とは、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、環状アルケニル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18の環状アルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。
またR24〜R38で表される複素環基は、4−ピペリジル基、モルホリノ基、2−モルホリニル基、ピペラジル基等の飽和複素環でも、2−フリル基、2−ピリジル基、2−チアゾリル基、2−キノリル基等の芳香族複素環でも良い。これらは複数のヘテロ原子を含んでいても、さらに置換基を有していても良く、また結合位置も問わない。複素環として好ましい構造のものは、5〜6員環の飽和複素環、5〜6員環の単環及びその2縮合環の芳香族複素環である。
さらに、本発明のビシクロポルフィリン化合物から有機半導体を製造することを考慮すると、R17〜R20としては、有機半導体の製造の際に脱離するエチレン誘導体(後述する式(VII)のエチレン化合物)が、通常は常圧200℃、好ましくは常温常圧において、通常は気体又は液体、好ましくは気体となるものが好ましい。
さらに、R17〜R20は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の置換基で置換されていても良い。置換基の具体例を挙げると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、メトキシブトキシ基等の炭素数2〜12のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、エトキシメトキシメトキシ基、エトキシエトキシメトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜12のアリール基(これらは任意の置換基でさらに置換されていても良い。);フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の炭素数2〜12のアルケニルオキシ基などが例示される。
さらに、他の置換基として、2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピペリジル基、モルホリノ基等の複素環基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;アミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の炭素数1〜10のアルキルアミノ基;メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基なども挙げられる。
なお、これらの置換基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、あまりに立体的な障害が大きいものや、大きな置換基を有するものを除く観点からは、上述したR17〜R20の中でも、例えば、水素原子、ハロゲン原子及び1価の有機基のいずれかが好ましい。好ましいものの具体例を挙げると、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、プロパニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基などの1価の有機基などが挙げられる。中でも、特に水素原子、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
また、R9〜R16のうち、式(III)で表されるビシクロ基を形成しないものは、1価の原子又は1価の原子団であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、R17〜R20と同様に、あまりに立体的な障害が大きいものや、大きな置換基を有するものは、本発明のビシクロポルフィリン化合物から有機半導体を製造した場合に、得られる有機半導体の特性を発現するためのπ共役系の分子間の重なりを阻害する可能性がある。
9〜R16のうち、式(III)で表されるビシクロ基を形成しないものの例を挙げると、R17〜R20と同様のものが挙げられる。
また、R9〜R16のうち式(III)で表されるビシクロ基を形成しないものは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の置換基で置換されていても良い。その置換基の具体例としては、R17〜R20の置換基として例示したものと同様の基が挙げられる。
また、式(II)において、Mは金属原子を表わす。Mは本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Fe等の単一金属原子;AlCl、TiO、FeCl、SiCl2等の3価以上の金属と他の元素とが結合して2価になっている原子団などが挙げられる。中でも、Mとしては、Cu、Zn及びNiからなる群より選ばれるいずれか1種が好ましい。特にCu及びZnは半導体特性が良好だからである。また、Niは、ビシクロ基にアルキル基が置換していない場合、特に溶解性が低く、ビシクロ基にアルキル基を置換することで特に溶解性が向上するという本発明の効果が顕著であり、好ましい。
以下、本発明のビシクロポルフィリン化合物の例を挙げる。なお、以下の例示物ではR1=R2=Me(Meはメチル基を表わす)、R3=R4=Hの例を示しているが、その他の例も容易に類推できる。また、合成上、(R1,R2)と(R3,R4)とが入れ替わったものも生じ、メチル基で置換された位置の異なる異性体あるいはそれらの混合物も合成時には得られる事も容易に推察できる。
Figure 2007224019
Figure 2007224019
Figure 2007224019
Figure 2007224019
また、本発明のビシクロポルフィリン化合物は、有機溶媒に対する溶解性に優れている。具体的には、常温常圧(25℃1013hPa)において、本発明のビシクロポルフィリンは、トルエン1リットルに対し、通常1g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上溶解する。なお、上限に制限は無いが、通常500g以下である。
[II.ビシクロピロール化合物]
本発明のビシクロピロール化合物は、下記式(IV)で表わされる構造を有する化合物である。
Figure 2007224019
(式(IV)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R22は1価の原子又は1価の原子団を表わし、R23は水素原子またはアルキル基を表わす。)
以下、詳細に説明する。
式(IV)中、R1〜R4及びR17〜R20は、前記式(III)において説明したものと同様である。
また、R21及びR22は、R17〜R20と同様である。なかでも、本発明のビシクロピロール化合物を本発明のビシクロポルフィリン化合物、それに対応するポリピロール、又はアゾ色素等を合成するための中間体として用いる観点からは、R21及びR22は、水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、メチル基が特に有用である。
さらに、式(IV)中、R23は水素原子又はアルキル基を表わす。このアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状でも良い。ただし、本発明のビシクロピロール化合物を本発明のビシクロポルフィリン化合物、それに対応するポリピロール、又はアゾ色素等の原料として用いるには、R23は水素原子が好ましい。
また、R23がアルキル基である場合、当該アルキル基は置換基を有していてもよい。その置換基の例としては、R17〜R20の置換基として挙げたものと同様の基が挙げられる。なお、置換基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
式(IV)で表わされる本発明のビシクロピロール化合物は、上述した本発明のビシクロポルフィリン化合物を合成するための原料又は中間体に使用することができる。また、本発明のビシクロピロール化合物は、重合して導電性高分子であるポリピロールを合成したり、ピロール環を含む半導体、導電体、色素の合成に有用である。
[III.ビシクロポルフィリン化合物の製造方法]
本発明のビシクロポルフィリン化合物の製造方法に制限は無いが、例えば、以下の要領で、本発明のビシクロピロール化合物を経て製造することができる。具体的な手法としては、J.Am.Chem.Soc.4762−4768(1968)、Synthesis 108−110(1976)に記載されている方法を用いることができる。
ここでは、R5〜R8、R17〜R20、R22及びR23がいずれも水素原子であり、R21が−COOEtであり、且つ、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のいずれもが式(III)で表わされるビシクロ基を形成している場合を例に挙げて説明を行なう。なお、Tsはトシル基を表わし、Etはエチル基を表わし、Phはフェニル基を表わし、t−Buは3級ブチル基を表わす。
まず、ピロール誘導体(本発明のビシクロピロール化合物)の合成法を例に説明する。
下記反応式(i)に示すように、置換シクロヘキサジエン誘導体のディールスアルダー反応により、各種ビシクロ化合物を誘導できる。
Figure 2007224019
合成したビシクロ化合物から、下記反応式(ii)に示す合成ルートにより、ビシクロピロール化合物を合成することができる。ここで例示したビシクロピロール化合物は、式(IV)を満たす本発明のビシクロピロール化合物の一例である。このビシクロピロール化合物は、特許文献3記載の技術とは異なり異性体に変換しにくいため、容易に合成が可能である。
Figure 2007224019
合成された本発明のビシクロピロール化合物を原料として用い、下記反応式(iii)に示すようにして、本発明のビシクロポルフィリン化合物を製造することができる。なお、ここで例示したビシクロポルフィリン化合物は、式(I)を満たす本発明のビシクロポルフィリン化合物の一例である。
Figure 2007224019
また、反応式(iii)の要領で製造したビシクロポルフィリン化合物から、さらに、下記反応式(iv)に示すようにしてポルフィリンの金属錯体を合成することもできる。なお、ここで例示したポルフィリンの金属錯体は、式(II)を満たす本発明のビシクロポルフィリン化合物の一例である。
Figure 2007224019
以上のような手法によれば、シクロヘキサジエン誘導体から、中間体である本発明のビシクロピロール化合物を経て、本発明のビシクロポルフィリン化合物を合成することができる。この方法によれば、中間体である本発明のビシクロピロール化合物を安定して容易に製造することが可能であるため、本発明のビシクロポルフィリン化合物を容易に製造することができる。なお、このシクロヘキサジエン誘導体から本発明のビシクロポルフィリン化合物までの合成法は、特許文献2に記載されている方法を用いることができる。
[IV.有機半導体の製造]
下記式(V)又は(VI)で表されるビシクロ化合物から、式(VII)で表わされるエチレン化合物を脱離することにより、下記式(Va)又は(VIa)で表わされる化合物(以下適宜、「特定化合物」という)を得ることができる。式(V)又は(VI)で表されるビシクロ化合物としては本発明のビシクロポルフィリン化合物を用いることができる。また、製造される式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物は、有機半導体としての性質を発揮しうるものであり、有機半導体として用いることが可能である。
Figure 2007224019
(式(V)、(VI)、(Va)、(VIa)及び(VII)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。さらに、Q1及びQ2は2価の有機基を表わし、Q3及びQ4は1価の有機基を表わす。)
以下、詳細に説明する。
式(V)、(Va)、(VI)、(VIa)及び(VII)において、R1〜R4及びR17〜R20は、それぞれ、式(III)において説明したものと同様である。
また、式(V)及び(Va)において、Q1及びQ2は2価の有機基を表わす。Q1とQ2とは同様の基であってもよく、また、異なっていても良い。更に、Q1とQ2とは結合して環を形成していても良い。
さらに、(VI)及び(VIa)において、Q3及びQ4は1価の有機基を表わす。Q3とQ4とは同様の基であってもよく、また、異なっていても良い。更に、Q3とQ4とは結合して環を形成していても良い。
また、(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物を有機半導体として機能させる観点からは、Q1〜Q4は、式(VII)で表わされるエチレン化合物の脱離後に形成されるπ電子共役分子が機能を発揮する有機基を用いることが好ましい。このようなQ1〜Q4の例としては、テトラベンゾポルフィリン類及びその金属錯体;フタロシアニン類及びその金属錯体;ナフタセン(テトラセン)、ペンタセン等の縮合芳香族炭化水素;オリゴチオフェン、ポリチオフェン等の共役チオフェン化合物などが挙げられる。中でも、式(V)で表わされる化合物、及び、式(VI)で表わされる化合物としてはポルフィリン系化合物が好ましく、特に、上述した本発明のビシクロポルフィリン化合物を用いることが好ましい。これにより、有機半導体製造時の塗布液の塗布性を向上させ、有機半導体の製造を簡単に行なうことが可能となる。
式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物のうち好適なものの例を挙げると、本発明のビシクロポルフィリンの具体例として上述したものの他、以下のものが挙げられる。
Figure 2007224019
式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物から、逆ディールスアルダー反応により式(VII)で表わされるエチレン化合物を脱離することにより、ビシクロ化合物を平面性の高い分子(式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物)に変換することができる。この特定化合物のように平面性の高い分子は半導体として性質を有する。これを利用すれば、特定化合物を有機半導体として製造することが可能である。
例えば、適切な溶媒に式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物を溶解した塗布液を用意し、この塗布液を基板等に塗布して塗布膜を作製し、加熱などによって塗布膜中のビシクロ化合物に前記の逆ディールスアルダー反応を進行させれば、式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物を含む有機半導体の層を容易に作製することができる。さらに、この際、原料となるビシクロ化合物として本発明のビシクロポルフィリン化合物を使用すれば、塗布液に用いる溶媒の選択の幅を広げ、より安全且つ効率的に有機半導体を製造することが可能となる。このように、上記の逆ディールスアルダー反応により式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物から式(VII)で表わされるエチレン化合物を脱離する工程を有する製造方法により、有機半導体を製造することが可能である。
なお、特定化合物を有機半導体として用いる場合、その他の有機半導体を併用しても良い。即ち、(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物を含む有機半導体は、本発明の範囲に収まるものである。併用可能な有機半導体に制限は無く、任意のものを用いることが可能である。また、併用する有機半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の逆ディールスアルダー反応の反応条件は、逆ディールスアルダー反応が進行する限り任意であるが、通常は、以下の通りである。
即ち、温度条件は、通常100℃以上、好ましくは130℃以上、また、通常400℃以下、好ましくは300℃以下である。高温ほど反応時間は短く、低温ほど反応時間を長く要することが多い。
さらに、反応雰囲気は、真空中、或いは、窒素、希ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
また、逆ディールスアルダー反応による変換率は、通常100%である。なお、変換率は、例えば、加熱による重量変化を測定することにより反応進行現象を調べて測定することができる(TG法)。
なお、逆ディールスアルダー反応については、例えば、Chem.Commun.,1998,P1661−P1662、HETEROCYCLES,vol52,No.1,2000,P399−P411などを参照することができる。
[V.電子デバイス]
式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物は、例えば、電子デバイスなどに用いることができる。
電子デバイスの構成の例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
特定化合物は、これらの電子デバイスにおいて、有機半導体として用いることができる。なお、特定化合物を有機半導体として使用する場合、特定化合物以外の有機半導体を併用してもよい。
さらに、特定化合物は、電子デバイスにおいて有機化合物以外の用途で用いてもよい。例えば、特定化合物を用いて電子デバイスの所望の位置に膜を形成し、当該特定化合物の膜の導電率を分子構造あるいはドーピング等で制御することにより、当該膜を配線に用いたりコンデンサやFET中の絶縁層に用いたりすることもできる。
電子デバイスのより具体的な例は、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley−Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。
特定化合物を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
図1は、FETの構造の例を模式的に示す図である。図1において、1が半導体層、2が絶縁体層、3及び4がソース電極及びドレイン電極、5がゲート電極、6が基板をそれぞれ示す。
ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極の各電極には、例えば、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属の他、InO2、SnO2、ITO等の導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子、及び、それに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーパントを添加したもの、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料等の、導電性を有する材料が用いられる。
また、絶縁体層に用いられる材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、窒化珪素等の窒化物、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム等の強誘電性酸化物、あるいは、上記酸化物や窒化物、強誘電性酸化物等の粒子を分散させたポリマー等が挙げられる。
一般に絶縁膜の静電容量が大きくなるほどゲート電圧を低電圧で駆動できることになるので、有利になる。これには、誘電率の大きな絶縁材料を用いるか、絶縁体層の厚さを薄くする事に対応することができる。絶縁体層は、塗布(スピンコーティングやブレードコーティング)、蒸着、スパッタ、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、アルミ上のアルマイトの様に金属上に酸化膜を形成する方法等、材料特性に合わせた方法で作製することができる。
また、FETは、通常基板上に作製する。基板としては任意のものを用いることができ、例えば、ポリマーの板、フィルム、ガラス、あるいは金属をコーティングにより絶縁膜を形成したもの、ポリマーと無機材料の複合材等を用いることができる。
さらに、基板には基板処理を施すことにより、FETの特性を向上させることができる。これは基板の親水性/疎水性を調整して、成膜の際に得られる膜質を向上させること、特に基板と半導体層の界面部分の特性を改良することがその原因と推定される。このような基板処理としては、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等の疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等のアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、ラングミュアブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理が挙げられる。
さらに、このFETにおいては、半導体層を、式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物を含む有機半導体により形成する。半導体層は、基板上に直接又は他の層を介して有機半導体を膜状に形成したものである。ここで、半導体層には、特定化合物以外にも、他の化合物(他の有機半導体など)を含有させても良い。また、半導体層は、特定化合物の層と、それ以外の半導体の層とを積層した積層構造で構成しても良い。
半導体層の膜厚に制限は無く、例えば横型の電界効果トランジスタの場合、素子の特性は必要な膜厚以上であれば膜厚には依存しない。ただし、膜厚が厚くなりすぎると漏れ電流が増加してくることが多いため、半導体層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは500nm以下である。また、半導体層の形状は基板上に形成された均一な膜の状態以外にも、例えば塗布液(有機半導体を適切な溶媒に溶解させた溶液)が液滴として付着した場合であっても、その付着物の厚さが上記範囲であるのが好ましい。
上記の半導体層は、例えば、式(V)又は(VI)で表されるビシクロ化合物を必要に応じて溶媒に溶解して溶液(塗布液)とし、当該塗布液を塗布対象(基板等)に塗布し、塗布されたビシクロ化合物の層内のビシクロ化合物に脱エチレン誘導体反応(逆ディールスアルダー反応)を進行させることによって形成することができる。特に、逆ディールスアルダー反応により生成する特定化合物が、塗布液の溶媒に難溶なものが、塗布法で膜形成するのに有用である。この際、ビシクロ化合物として本発明のビシクロポルフィリン化合物を用いると、溶媒の選択の幅を広げ、より好適な溶媒を使用することが可能である。
ビシクロ構造は立体的にかさ高いため、結晶性が悪く、この構造を有する分子は溶解性が良好で、かつ、溶液から塗布した際に、結晶性の低い、あるいは無定形の膜が得やすい性質を有することが多い。さらに、加熱により逆ディールスアルダー反応を生じてベンゼン環に変化すると平面性の良好な分子構造になるために、結晶性の良好な分子に変化する。したがって、式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物からの化学変化を利用することにより、塗布法という簡便な方法により結晶性の良好な有機半導体層を得ることが出来る。また、式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物中でも、加熱処理によりベンゾポルフィリン及びその金属錯体に変換するものが、有機半導体として高特性を有するので、特に望ましい。
塗布液の溶媒、即ち、式(V)又は(VI)で表わされるビシクロ化合物を溶解させる溶媒としては、例えば有機溶媒が挙げられる。中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及びハロゲン非含有芳香族系溶媒からなる群より選ばれるいずれかが好ましい。
ケトン系溶媒の具体例を挙げると、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ等が挙げられる。これらの中で、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが更に好ましい。
また、エステル系溶媒の具体例を挙げると、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸エステル、イソ酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、ステアリン酸エステル、安息香酸エステル、桂皮酸エチル、アビエチン酸エステル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、γ−ブチロラクトン、シュウ酸エステル、マロン酸エステル、マレイン酸エステル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、エチレングリコールモノアセタート、二酢酸エチレン、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールモノアセタート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ホウ酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中で、安息香酸エステル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールモノアセタートが更に好ましく、安息香酸エステルが特に好ましく、安息香酸エチルが最も好ましい。
さらに、ハロゲン非含有芳香族系溶媒の具体例を挙げると、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラリン、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、メトキシトルエン、アニリン、ベラトロール、ニトロベンゼン等が挙げられる。これらの中で、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソールが更に好ましい。
なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、塗布液を塗布する方法としては、溶媒をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。さらに、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入する方法等も挙げられる。
さらに、式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物は、真空プロセスにより基板上に成膜してFETを作製することもできる。この場合には、ビシクロ化合物をルツボや金属のボートに入れて真空中で加熱し、基板に付着させる真空蒸着法を用いることが出来る。この際、真空度としては、通常1×10-3Torr以下、好ましくは1×10-5Torr以下が望ましい。なお、1Torr=1.33322×102Paである。
また、真空度と蒸着源であるビシクロ化合物の加熱温度の条件を調節することにより、種々の方法を採用できる。例えば、ビシクロ化合物を蒸着源でまず脱エチレンさせた後に蒸着する事もできるし、この反応温度より低温でビシクロ化合物のまま蒸着した後に、基板上に成膜された膜の加熱処理を行ない、脱エチレン反応により有機半導体層に変換することもできる。このような方法を採用することにより、式(Va)又は(VIa)で表わされる特定化合物を高純度で含む半導体層を得ることができる。
また、基板温度でデバイスの特性が変化するので、最適な基板温度を選択することが好ましい。具体的には、蒸着時の温度は0℃から200℃の範囲が好ましい。また、蒸着速度は通常0.01Å/秒以上、好ましくは0.1Å/秒以上、また、通常100Å/秒以下、好ましくは10Å/秒以下である。材料を蒸発させる方法としては、加熱の他、加速したアルゴン等のイオンを衝突させるスパッタ法も用いることが出来る。なお、1Å=10-10mである。
さらに、ビシクロ化合物の脱エチレン反応は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上加熱処理により引き起こされる。また、上限は400℃以下、好ましくは300℃以下であり、高温ほど反応時間は短く、低温ほど反応時間を長く取ることが多い。
また、FETの用途によっては、成膜したビシクロ化合物の膜を部分的に変換して特性を調整することも可能である。この際には、例えば、低温あるいは短時間での処理で行われる。また、加熱には、ヒーターを用いて伝熱による加熱の他、炭酸ガスレーザーや赤外線ランプ、あるいはこのビシクロ化合物の吸収する波長の光を照射する事も利用できる。この際、ビシクロ化合物の近傍に光を吸収する層を設け、光をこの層で吸収させることにより、加熱することも可能である。
さらに、作製された半導体層は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、特性の向上や安定化を図ることができる。さらに、酸素や水素等の酸化性あるいは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化あるいは還元による特性変化を誘起することもできる。これは例えば膜中のキャリア密度の増加あるいは減少の目的で利用することができる。
また、ドーピングと呼ばれる微量の原子や原子団、分子、高分子を加えることにより、特性を変化させて望ましいものにすることができる。例えば、酸素、水素、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等をドーピングする事が挙げられる。これは、これらのガスに接触させたり、溶液に浸したり、電気化学的なドーピング処理をすることにより達成できる。これらのドーピングは膜の形成後でなくても、材料合成時に添加したり、溶液からの作製プロセスでは、その溶液に添加したり、前駆体膜の段階で添加することができる。また蒸着時に添加する材料を共蒸着したり、膜形成時の雰囲気に混合したり、さらにはイオンを真空中で加速して膜に衝突させてドーピングすることも可能である。
これらのドーピングの効果は、キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性の変化(p型、n型)、フェルミ準位の変化等が挙げられ、半導体デバイスでは良く利用されているものである。ドーピング処理は同様にFET以外の他の電子デバイスでも利用することができる。
また、FETをはじめとした電子デバイス作製の為の電極や配線には、金、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、等の金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、等の導電性高分子及びそのドーピングされた材料、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、等の半導体及びそのドーピングされた材料、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、を用いることができる。これらを形成する方法も、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いることができる。また、そのパターニング方法も、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法の複数の組み合わせた手法を利用することができる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり材料の導電性を変化させる事により、直接パターンを作製することも利用できる。
さらに、電子デバイスは、半導体特性を改良したり、外気の影響を最小限にするために、保護膜を形成することができる。これには、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート樹脂等のポリマー膜、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜等が挙げられる。ポリマー膜は、溶液の塗布乾燥する方法、モノマーを塗布あるいは蒸着して重合する方法が挙げられ、さらに架橋処理や多層膜を形成することも可能である。無機物の膜の形成には、スパッタ法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。半導体に接するポリマー膜は、半導体特性の改良にはポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリベンジルメタクリレート、ポリアセナフチレン、ポリカーボネート樹脂等の芳香環を含むものが好ましく、その上にガスバリア性を有する膜、例えば窒化珪素や酸化ケイ素等の無機膜、アルミニウムやクロム等の金属膜を積層するのが好ましい。
また、用途などに応じて、電子デバイスには上述した以外の層や部材を設けても良い。
以下、本発明の実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例の説明において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わし、t−Buは3級ブチル基を表わし、Phはフェニル基を表わし、THFはテトラヒドロフランを表わし、Tsはトシル基を表わし、LAHはリチウムアルミニウムハイドライドを表わす。
[実施例1:ジメチルビシクロピロールの合成]
(1)4,4,−Dimethyl−1,3−cyclohexadieneの合成
Figure 2007224019
4,4−dimethylcyclohex−2−en−1−one3.72g、CeCl3・7H2O11.269gを75mlのメタノールに溶解したものに、1.166gのNaBH4を窒素雰囲気下0℃で添加し、同じ温度下20分間撹拌した。反応溶液を3Mの水酸化ナトリウム水溶液20mlに注入し、さらに100mlの水を加えて希釈した。セライトで不溶物をろ過したあとに、ろ液をエーテルで抽出し、無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥した。溶媒を蒸発させて、95重量%以上の純度の4,4−dimethylcyclohex−2−en−1−olを得た。それをベンゼン200mlに溶解して硫酸銅3.747gを加え、窒素下でDean−Stark器具を用いて水を除きながら還流した。残渣として4,4−Dimethyl−1,3−cyclohexadieneが得られた。
得られた残渣が4,4,−Dimethyl−1,3−cyclohexadieneであることを、1H NMRで確認した。1H NMRの結果を以下に示す。
1H NMR 5.7-5.8 (3H), 5.5 (1H), 2.1 (2H), and 1.0 (6H)
(2)2,3−Bis(phenylsulfonyl)−7,7−dimethylbicyclo[2.2.2]oct−5−eneの合成
Figure 2007224019
4,4,−Dimethyl−1,3−cyclohexadieneを0.39gと、トランス1,2−ビス(フェニルスルホニル)エチレン1.04gとを20mlのo−キシレン中、窒素下1日間加熱還流した。溶媒を減圧蒸留して除き、残渣を20mlのクロロホルムに溶解し、ろ過した。ろ液を減圧で濃縮し、2回のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒クロロホルム、10%酢酸エチル/クロロホルム)により精製し、445mgの2,3−Bis(phenylsulfonyl)−7,7−dimethylbicyclo[2.2.2]oct−5−eneが得られた。
得られた物質が2,3−Bis(phenylsulfonyl)−7,7−dimethylbicyclo[2.2.2]oct−5−eneであることを、1H NMR及び13C NMRで確認した。1H NMR及び13C NMRの結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) 7.95 (m, 2H, C2',6'), 7.83 (m, 2H, C2',6'), 7.67(m, 2H, C4'), 7.58 (m, 2H, C3',5'), 7.56 (m, 2H, C3',5'), 6.29 (1H, H6), 6.20 (1H, H5), 4.37 (1H, H2), 3.67 (1H, H3), 3.12 (1H, H4), 2.57 (1H, H1), 2.16 (1H, H8), 1.15 (s, 3H, 7-Me), 1.00 (1H, H8), and 0.86 (s, 3H, 7-Me).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) 139.60 (C1'), 138.84 (C1'), 134.77 (C6), 133.79 (C4'), 133.75 (C4'), 130.22 (C5), 129.12 (C3',5'), 129.06 (C3',5'), 128.49 (C2',6'), 128.48 (C2',6'), 63.76 (C3), 62.35 (C2), 44.08 (C1), 34.09 (C7'), 33.87 (C8), 33.24 (C4), 31.56 (7-Me), and 26.83 (7-Me).
Anal. calcd for C22H24O4S2: C, 63.43; H, 5.81.
Found: C, 63.21; H, 5.78.
(3)Dimethylbicyclopyrrole誘導体の合成
Figure 2007224019
2,3−Bis(phenylsulfonyl)−7,7−dimethylbicyclo[2.2.2]oct−5−eneの2.78gとイソシアノ酢酸エチル1.0mlとをTHF20mlに溶解し、撹拌しながら、t−ブトキシカリウム2.36gをTHF30mlに溶解したものを0℃で滴下した。その後反応液を室温Ar雰囲気下1日撹拌した。反応液を1M塩酸に滴下し、クロロホルムで抽出した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をクロロホルムを溶媒に用いてシリカゲルカラムクロマトで精製し、1.4gの目的物(上記反応式の生成物)が得られた。
得られた目的物がDimethylbicyclopyrrole誘導体であることを、1H NMRで確認した。1H NMRの結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) 8.50 (NH), 6.47-6.59 (3H), 4.22-4.37 (2H), 3.81 (1H), 3.73 (1H), 1.33-1.41 (4H), 1.22 (1H), 1.07 (s, 3H), and 0.70 (s, 3H).
Anal. calcd for C15H19NO2: C, 73.44; H, 7.81; N, 5.71.
Found: C, 73.53; H, 7.82; N, 5.67.
[実施例2:ポルフィリン化合物の製造]
Figure 2007224019
実施例1で合成したDimethylbicyclopyrrole誘導体0.74gをTHF80mlに溶解し、これにAr雰囲気下0℃で436mgのLiAlH4を添加した。同じ温度で2時間撹拌した。反応溶液を水に注入し、セライトでろ過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有気相を水、食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濃縮した。残渣を300mlのクロロホルムに溶解し、パラトルエンスルホン酸30mgを添加した。室温で1日撹拌後、パラクロラニル455mgを添加してさらに1日撹拌した。反応液を水に注入し、有機相を分離して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリムで乾燥した。その後減圧で濃縮し、残渣をクロロホルムを溶媒としてアルミナのカラムクロマトグラフィーで精製し、メタノール/クロロホルムで再結晶することにより、ジメチルビシクロ構造を有する目的ポルフィリン化合物(無金属ポルフィリン)が164mg得られた。
また、この無金属ポルフィリンに、酢酸亜鉛を作用させて亜鉛錯体を得た。
[実施例3:溶解度評価]
実施例2で合成した無金属ポルフィリンをアセトニトリルに溶け残りが出るまで添加し、2時間撹拌後、0.2μmのフィルターでろ過して飽和溶液(以下「溶液A」と呼ぶ)を作製した。
同様に、比較用として対応するジメチル基を有しない無置換体を用意し、この無置換体のアセトニトリル溶液の飽和溶液(以下「溶液B」と呼ぶ)を作製した。溶液Aはさらにアセトニトリルで50倍に希釈し、溶液Bはそのまま1cmのガラスセルで可視吸収スペクトルを測定した。
この2つの吸収スペクトルはほとんど同じであり、ジメチル置換が電子状態にほとんど影響が無く、モル吸光係数もほとんど同じである事が推定され、これはジメチル置換が可視吸収帯に関係するπ電子共役部分から遠い位置にあることから説明される。
また、波長491nmにピークを有する吸収帯の吸光度を比較すると、溶液Aの希釈率で補正して、溶液Aの吸光度は溶液Bの吸光度の115倍であった。従って、アセトニトリルに対するジメチル置換帯の溶解度は、ジメチル基を有しないものよりも100倍以上高いことが分かった。
さらに、得られたジメチルビシクロポルフィリンは、ジメチル置換体を有しない無置換体よりも有機溶媒に対する溶解性が向上していることが分かり、塗布する際に、幅広い濃度の溶液が利用できるために溶液プロセスの条件の制限が緩和されたり、溶液からの析出も抑制される等の有利な点が認められた。
[実施例4:有機半導体の作製及び評価]
実施例2,3で得られたジメチルビシクロポルフィリンを加熱して逆ディールスアルダー反応により、テトラベンゾポルフィリン(TBP)に変換した。変換時の様子を、以下の条件で熱分析した。また、変換後の生成物につき、吸収スペクトルの測定を行なった。
<熱分析>
・装置:Seiko Instruments Inc. TG/DTA6200 EXSTAR6000
・サンプル量:約2mg
・アルミパン使用
<吸収スペクトル>
・装置:JASCO UV/VIS/NIR Spectrophotometer V−570
・溶媒:クロロホルム
・サンプル(TBPは熱分析後のものをそのまま使用)を溶媒に溶かし、Soret帯の吸収が1になる程度の濃度に調製。
その変換時の熱分析と吸収スペクトルの測定結果を図2及び図3に示す。なお、図2は熱分析の結果を示すグラフであり、縦軸はサンプルの変化量を示し、横軸は雰囲気温度を示す。また、図2において、A、Bはそれぞれ実施例2、3で得られたジメチル置換ビシクロ構造を有するポルフィリンを表わし、C、DはそれぞれA、Bに対応するジメチル基を有さないビシクロ構造を有するポルフィリンを表わす。また、図3は、サンプルB、並びに、B、Dをそれぞれ熱変換して生成する化合物(テトラベンゾポルフィリン亜鉛)の吸収スペクトルの測定結果を表わす図である。なお、図3においては、Bの熱変換生成物を表わすスペクトルとDの熱変換生成物を表わすスペクトルとは大部分において重複しており、重複部は実線(Bの熱変換生成物を指すスペクトル)で示してある。
図2に示す結果から、ジメチル置換体(図2のA,B)は無置換体(図2のC,D)よりもやや低温側で逆ディールスアルダー反応が進行することが分かる。これはテトラベンゾポルフィリン膜の作製が低温で可能になり、より耐熱性の低い材料との組み合わせでも成膜でき、成膜条件として有利である。
また、図3に示す結果から、生じるテトラベンゾポルフィリンは、ジメチル置換体(図3の「Bの熱変換生成物」)でも無置換体(図3の「Dの熱変換生成物」)でも同じ物である事が吸収スペクトルの比較から分かる。
なお、ジメチル置換体の逆ディールスアルダー反応による重量減が理論値よりも大きいのは、結晶状態で溶媒を含んでいるからと推定される。これは、ジメチル部分の立体的な嵩高さから、ポルフィリン分子を密にパッキングする構造が取りにくくなり、溶媒を含みやすくなったためと考えられる。
[実施例5:電界効果トランジスタの評価]
実施例2で合成したジメチルビシクロポルフィリンを用いて、以下の要領で、電界効果トランジスタを作製し、評価した。
膜厚300nmの酸化膜を形成したN型のシリコン(Si)基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)上に、フォトリソグラフィーで長さ(L)10μm、幅(W)500μmのギャップを有する金電極(ソース、ドレイン電極)を形成した。また、この電極と異なる位置の酸化膜を削り取ってむき出しになったSi部分にクロムを蒸着して、この部分を利用してゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
実施例2で得られたポルフィリン化合物7mgをクロロホルム1mLに溶解し、これを、この基板上にスピンコートすることにより良好な膜を得た。その後に160℃で30分、170℃で10分加熱処理することにより、半導体層を、電極を形成した基板上に作製した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製半導体パラメータアナライザ4155Cを用いて評価した結果、FET特性を示し、飽和移動度1.5×10-2cm2/Vs、オンオフ比6×104が得られた。
[実施例6:電界効果トランジスタの評価]
実施例5において、スピンコートする溶液の溶媒としてトルエンを使用した以外は、全く同様にして素子を作製し、評価を行なった。その結果、飽和移動度1.2×10-3cm2/Vs、オンオフ比4.5×102が得られ、トルエンを溶媒にしてもクロロホルムと同様に成膜できることが分った。
[実施例7:ポルフィリン銅錯体の合成]
酢酸亜鉛の代わりに酢酸銅を用いた他は実施例2と同様にして、ジメチルビシクロポルフィリンの銅錯体を合成した。無置換体と比較してクロロホルムへの溶解度の大幅な向上が認められ、ジメチル基を有しないものでは得られない5重量%のクロロホルム溶液が得られた。
[実施例8:ポルフィリン銅錯体の電気特性]
実施例7で得られたポルフィリン銅錯体を用いて、実施例5と同様に電界効果トランジスタ素子を作製し、電気特性の評価を行なった。その結果、飽和移動度0.46cm2/Vs、オンオフ比2.8×105というジメチル基を有しないものと遜色ない高い特性が得られた。従って、ビシクロ環のジメチル置換により、電気特性を損なうことなく溶解度を改良することができることが分かった。
[実施例9:ポルフィリンニッケル錯体の合成]
酢酸亜鉛の代わりに酢酸ニッケルを用いた他は実施例2と同様にして、ジメチルビシクロポルフィリンのニッケル錯体を合成した。無置換体のニッケル錯体は、他の亜鉛錯体や銅錯体と比較して特に溶解度が悪く、クロロホルムに0.7重量%溶解させようとすると、濁りが見られ完溶せずに、成膜性に支障があるが、ジメチルビシクロポルフィリンのニッケル錯体は濁りの無い0.7重量%の溶液が得られ、溶解度の大幅な向上が認められ、その成膜性の改良が認められた。
本発明は、産業上の任意の分野において使用可能であるが、特に、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー、太陽電池、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスターなどの、有機半導体を適用しうる素子に用いて好適である。
FETの構造の例を模式的に示す図である。 本発明の実施例4について説明するもので、熱分析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例4について説明するもので、吸光スペクトルの測定結果を表わす図である。
符号の説明
1 半導体層
2 絶縁体層
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 基板

Claims (7)

  1. 下記式(I)又は(II)で表わされる構造を有する
    ことを特徴とする、ビシクロポルフィリン化合物。
    Figure 2007224019
    (式(I)(II)中、R5〜R16は1価の原子又は1価の原子団を表わし、(R9,R10)、(R11,R12)、(R13,R14)及び(R15,R16)のうちの少なくとも一つの組は一体となって下記式(III)で表される基を形成したものを表わす。また、Mは金属原子を表わす。
    Figure 2007224019
    (式(III)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基である。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。))
  2. 前記Mが、銅、ニッケル及び亜鉛からなる群より選ばれるいずれか1種である
    ことを特徴とする、請求項1記載のビシクロポルフィリン化合物。
  3. 下記式(IV)で表わされる構造を有する
    ことを特徴とする、ビシクロピロール化合物。
    Figure 2007224019
    (式(IV)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R22は1価の原子又は1価の原子団を表わし、R23は水素原子またはアルキル基を表わす。)
  4. 下記式(V)又は(VI)で表されるビシクロ化合物から、式(VII)で表わされるエチレン化合物を脱離することにより、下記式(Va)又は(VIa)で表わされる化合物を得る
    ことを特徴とする、化合物の製造方法。
    Figure 2007224019
    (式(V)、(VI)、(Va)、(VIa)及び(VII)中、R1〜R4は水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表わし、(R1,R2)及び(R3,R4)のうちの少なくとも一つの組はどちらも炭素数10以下のアルキル基を表わす。また、R17〜R20は1価の原子又は1価の原子団を表わす。さらに、Q1及びQ2は2価の有機基を表わし、Q3及びQ4は1価の有機基を表わす。)
  5. 前記ビシクロ化合物がポルフィリン系化合物である
    ことを特徴とする、請求項4記載の化合物の製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5記載の製造方法で得られる化合物を含む
    ことを特徴とする有機半導体。
  7. 請求項4又は請求項5記載の化合物の製造方法により前記化合物を得る工程を有する
    ことを特徴とする、有機半導体の製造方法。
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