JP5708980B2 - 有機電子デバイスの製造方法および有機電子デバイス - Google Patents
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Description
下で後処理することで、有機膜を得る有機電子デバイスの製造方法、およびそれによって
得られた有機電子デバイスに関する。
本発明の製造方法は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機
電子デバイスの製造において有用である。
これまでに、低分子誘導体の有機半導体材料として、ペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対しきわめて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
しかしながら、これは、ペンタセン同様真空蒸着工程を経る必要があり、塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
トプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利
用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。こ
れにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ
等のエレクトロニクスデバイスが軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板
のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
能であり、同じくペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm2/V・s程度)を示す同
じ誘導体である下記式(2)の構造の2,7−ジアルキル[1]ベンゾチエノ[3,2−
b][1]ベンゾチオフェンを塗工法により用いることが提案(非特許文献3参照)され
ている
例えば、ペンタセンあるいは類似の芳香族炭化水素(特許文献3、非特許文献4、5参照)、ポルフィリン(例えば、非特許文献6、7参照)、オリゴチオフェン(例えば特許文献3、非特許文献8参照)等を用いた例がある。
非特許文献4に記載されるように、有機半導体材料における電荷移動性(mobility)は、有機材料被膜の規則的な分子配列性(結晶化等のordering)に依存するので蒸着法によれば膜中の材料の分子配列性を確保することはできるが、他方、分子配列性を持つ有機材料は一般的に有機溶媒可溶性が低い。つまり、有機材料膜の半導体特性と膜成形容易性(塗工法による)とは一般的に相容れ難い。したがって、双方を両立させるには、唯一、可溶性基を有する前駆体を用いた塗工液により塗膜を形成後、塗膜中の前駆体を有機半導体材料に変換することが考えられる。これら文献の開示するところをそのような意味のものまで演繹して思考解釈すると、これら文献の貢献度は低くない。
しかしながら、これら特許文献3、非特許文献4〜5の具体例におけるペンタセン前駆体からはテトラクロロベンゼン分子が脱離するが、テトラクロロベンゼンは、沸点が高く反応系外に取り除くことが難しいことに加え、その毒性が懸念される。
加えて、これらのいずれの例も変換後の半導体分子が酸素や水に対して安定ではないため、大気下での取り扱いが難しいことに加え、前駆体膜を半導体膜に変換するためには、少なくとも150℃〜200℃程度の加熱処理が必要であるため、この加熱温度に耐える絶縁膜や樹脂基板材料などの支持体はポリイミドなどの耐熱性を有するものに限られてしまうことに問題があった。
すなわち、有機半導体層の製膜に限っても、上記したプロセス上での耐熱性の問題があり、変換する温度の低温化が求められているのが現状である、さらに加えて、この低温化の課題は絶縁膜、保護膜の形成時においても同様である。
すなわち、上記課題は以下の(1)〜(3)により達成される。
(1)「支持基板上に前駆体を成分として含む薄膜を形成する工程と、前記薄膜の後処理工程を含む有機電子デバイスの製造方法であって、
前記前駆体が、下記一般式(I)からなる基を少なくとも一つ有している化合物であり、前記後処理工程における前記薄膜の後処理を、酸の存在下加熱することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法
(2)「前記第(1)項に記載の製造方法により形成された薄膜が、半導体膜、絶縁膜、保護膜のいずれかであることを特徴とする有機電子デバイスの製造方法」、
(3)「前記第(1)項に記載の製造方法により製造された有機電子デバイス」。
本発明で用いる前駆体は、必ずしも変換後に有機半導体として用いられる有機薄膜に限られるものではなく、保護膜、絶縁膜として用いる材料の前駆体であってもよい。
本発明の製造方法によれば、薄くて可撓性のある電界効果トランジスタが製造できるため、これを各画素のスイッチング素子に応用することで、可撓性のあるアクティブマトリックス表示素子が作製可能であるなど、幅広い応用ができる。
本発明の製造方法には、上記のように、特定範囲の前駆体薄膜の形成工程と特定の後処理工程とが含まれる。
以下、本発明で用いられる前駆体が有機半導体前駆体である場合の各工程について詳細に説明するが、特に、別記ない限り、絶縁膜、保護膜についても同様の方法を用いることができる。ここで、保護膜とは、有機半導体層の上部に形成され、酸素・水等の透過、暴露を防ぐ膜のことを指す。
薄膜形成工程においては、支持基板上に有機半導体の前駆体薄膜が形成される。
本工程に用いられる薄膜形成法は、前駆体薄膜の剥離が容易に生じないように支持基板上に形成可能なものであれば特に限定されるものではない。
しかし、先述のとおり有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、製造プロセス温度を低温化できるという利点を生かし、有機半導体の前駆体を溶媒に溶解させる等して、液状にし、これを塗布するプロセスを用いることが好ましい。
スプレーコート、スピンコート、ブレードコート、ディップコート、キャストティング、ロールコート、バーコート、ダイコート等の各種コーティング法、インクジェット印刷、ディスペンス、スクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法等が挙げられ、さらに上記各手法を複数組み合わせて用いることができる。また、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
これらの溶媒は単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。またこれらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行なうことが望ましい。
形成される前駆体薄膜の厚みは、用途に応じて変えることが可能であるが、下限としては通常3nm以上、好ましくは5nm以上、上限が通常10μm以下、好ましくは1μm以下とされる。
以上は、絶縁膜、保護層の各前駆体についても同様である。
本工程に用いられる有機半導体膜および絶縁膜および保護膜の前駆体は、下記一般式(I)乃至(III)からなる群から選択される基を少なくとも一つ有していることを特徴とする。
ここで、一般式(I)においてはR1はArで示される基と環を形成していてもよく、例えば、ArとR1でテトラリンのような芳香環と脂肪族炭化水素環が縮合したものであってもよい。
ベンゼン、ナフタレン、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、(フラン、ベンゾフラン、カルバゾール)、ベンゾジチアゾール等の2価基が挙げられ、これらは置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ハロゲン基を置換基として有していてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはチオアルコキシ基である場合は、上記アルキル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記(I)乃至(III)で表わされる基を有していることにより、上記有機半導体の前駆体は溶解性が高く、配列化(例えば典型的には結晶化)しにくいため、溶液から塗布することによりアモルファス状態ないしはアモルファスに近い良好な前駆体薄膜を形成することができるためである。
このようにして形成された前駆体薄膜は、後述の加熱工程において、エステル分解反応を行なうことにより、容易に分子配列性(例えば典型的には結晶性)の高い有機半導体膜に変換することができる。
上記した官能基を有する前駆体の具体例としては、下記のものが挙げられるが、本発明の要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
次に、本工程で用いられる支持基板について説明する。
支持基板の材料としては、前駆体薄膜が剥離することなく形成されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ガラス、シリコン、樹脂、あるいはそれらの複合素材等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできる。
中でも、樹脂材料からなる板やフィルム、樹脂と無機材料の複合材料など各種組み合わせからなる複合材等を用いると、素子に可撓性を持たせることができるうえ、得られる積層体が軽量かつ柔軟なものになることから特に好ましい材料であるといえる。
樹脂材料としては、このような材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂が挙げられる。
上記樹脂材料は、1種単独でも2種類以上を組みあせて用いることができる。
また、樹脂材料の他にSiO2などの微粒子等を含有させることもできる。充填剤の配合量は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。
また加熱処理後の支持基板の平滑性を示す指標であるRaは、0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下である。電気伝導を担うキャリア(ホールおよび電子)は半導体と絶縁膜の界面近傍を移動するため、界面の凹凸は、移動度を下げる要因となり得、好ましくないためである。
一方で、表面荒さは好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。ロール等で搬送する場合においては、密着しないように多少の表面荒さを持たせる必要があるためである。
本後処理工程においては、前記薄膜形成工程によって形成された有機半導体および絶縁膜、保護膜の前駆体薄膜を後処理する。
本発明における後処理工程とは、薄膜形成工程で得られた前駆体薄膜を酸または塩基の存在下で処理することを特徴とする。処理とは、酸または塩基と前駆体薄膜を接触させることができる方法であれば特に限定はされない。この処理を行なう際に、必要であれば、同時に熱を加えてもよく、この後処理に伴い、前記一般式(I)乃至(III)で示される基において、エステル分解反応が生じ、脱離成分を脱離して、下記一般式(IV)乃至(VI)で示されるように置換基の構造変化が生じる。
脱離成分としては、二酸化炭素、アルコール、カルボン酸、スルホン酸、チオールおよび硫化カルボニル、オレフィン構造を有する誘導体等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
上記脱離成分を脱離することによって得られる化合物が有する官能基は、アルケニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基等が挙げられ、下記に例示する。
ここでR6はArで示される基と環を形成していてもよい。
加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行なってもよいし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
光塩基発生剤としては、カルバマート類、アシルオキシム類、アンモニウム塩等を挙げることができる。
加熱時間については、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。0.5分以下であると、前駆体薄膜から有機半導体薄膜への変換が不充分になり得、120分以上は基板等へのダメージやタクトタイムの点から考えて好ましくない。
前記前駆体を含む膜が加熱による前記脱離反応を経て、半導体膜、あるいは絶縁膜、保護膜へと変換された際に含有する成分の構造を以下に例示(例示中のOSCはOrganic Semi−Conductor材料の略であるがその用途は半導体に限られるものではない)する。
本発明の製造方法は、例えば、電子デバイスに適用することができる。
電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。
また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明の製造方法を適用するのに特に好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
図3の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。
本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の製造方法で得られた有機半導体薄膜から成る。この有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)およびゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
先述の薄膜形成工程と同様、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって前駆体薄膜を形成することができる。
これら前駆体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
その後に、先述の後処理工程を経て、前駆体薄膜を有機半導体膜へと変換して、有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層が形成される。
有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極および絶縁膜に接して形成される。
有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、およびこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極およびドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
また、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフィーやレーザアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。
例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。絶縁膜の前駆体を製膜し、その膜を後処理することにより絶縁膜を得てもよい。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性の向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。
また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していてもよい。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していてもよい。
有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。保護膜の前駆体を製膜し、その膜を後処理することで保護膜を得てもよい。
有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
以下の実施例で用いるPrecursor 1乃至6は特願2008−107581に記載の方法に従って、合成を行なった。この出願に記載の合成法を援用して、以下、具体的に説明する。
Stilleカップリング反応によって合成する例を以下に挙げる。
下記一般式(VII)で表わされる[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン誘導体(2,7−ハロゲン化[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)と、下記一般式(VIII)で表わされる有機スズ誘導体とをパラジウム触媒の存在下で、反応させることにより本発明で用いた前駆体Precursorが製造される。
前記一般式(VIII)で表わされる有機スズ誘導体としては、SnMe3基やSnBu3基などのアルキルスズ基を有する誘導体を用いることができる。
パラジウム触媒としては例えばパラジウムブロマイド、パラジウムクロライド、パラジウムヨージド、パラジウムシアニド、パラジウムアセテート、パラジウムトリフルオロアセテート、パラジウムアセチルアセトナト[Pd(acac)2]、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(OAc)2(PPh3)2]、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム[Pd(CH3CN)2Cl2]、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム[Pd(PhCN)2Cl2]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl2]、ジクロロ[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム[Pd(dppf)Cl2]、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〔Pd[P(C6H11)3]2Cl2〕、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)2Cl2]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd2(dba)3]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)2]等が挙げられるが、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl2]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)2Cl2]等のホスフィン系触媒が好ましい。
上記の他にパラジウム触媒として、反応系中においてパラジウム錯体と配位子の反応により合成されるパラジウム触媒を用いることができる。配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(n−ブチル)ホスフィン、トリス(tert−ブチル)ホスフィン、ビス(tert−ブチル)メチルホスフィン、トリス(i−プロピル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジフェニルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−メチルビフェニル、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタン、ジフェニルホスフィノエチレン、ジフェニルホスフィノフェロセン、エチレンジアミン、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,3−ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデンが挙げられ、これらの配位子のいずれかが配位したパラジウム触媒をクロスカップリング触媒として用いることができる。
反応溶媒としては、原料と反応し得るような官能基を有さず、かつ原料を適度に溶解させられるようなものが望ましく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等をあげることができる。これらの溶媒は単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。またこれらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行なうことが望ましい。
上記反応における反応時間は、用いる原料の反応性において適宜設定することができ、2〜72時間が好適であり、さらには、6〜24時間がより好ましい。
以上のようにして得られた前駆体Precursorは反応に使用した触媒、未反応の原料、また、反応時に副生する有機スズ誘導体等の不純物を除去して使用される。これらの精製は再沈澱法、カラムクロマト法、吸着法、抽出法(ソックスレー抽出法を含む)、限外濾過法、透析法、触媒を除くためのスカベンジャーの使用等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
([1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンユニットの合成1)
表記[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンのジハロゲン誘導体は、Zh.Org.Khim.,16,2,383(1980)およびJ.Am.Chem.Soc.128,12604(2006)を参考にして下記の反応式(式中のDMFはジメチルホルムアミド)で行ない、下記誘導体7のジハロゲン体を得た。(収量5g、収率30.5%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.62 (d, 2H, J=8 Hz), 7.75 (dd, 2H, J1=8 Hz J2=4 Hz), 8.26 (d, 2H, J=4 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 492 (M+)
元素分析値:C,34.40;H,1.19(実測値)C,34.17;H,1.23(計算値)
融点300℃以上
以上の分析結果から、合成したものが、誘導体7の構造と矛盾がないことを確認した。
本発明で用いる前駆体Precursorを製造する際に用いられる溶解性の脱離性基ユニットは、Chem. Mater. 16, 4783(2004)およびJ.Am.Chem.Soc.126,1596(2006)を参考にして下記の反応式(式中のLAHはリチウムアルミニウムヒドライド、DMAPは4−ジメチルアミノピリジン、LDAはリチウムジイソプロピルアミド)に従って行ない、下記誘導体11のトリブチルスズ誘導体を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.13 (d, 1H, J=4 Hz), 7.00 (d, 1H, J=4 Hz), 6.03 (t, 1H, J=4 Hz), 2.23−2.39 (m, 1H), 1.92−2.05 (m, 2H), 0.78−1.53 (m, 55H)
質量分析:GC−MS m/z = 614.3 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、誘導体11の構造と矛盾がないことを確認した。
以下の反応式に従って、上記目的物の合成を行なった。
カラム精製(溶離液:トルエン)を行ない、オレンジ色の固体(800mg)を得た。
さらに、リサイクルGPC(溶離液:THF、日本分析社製)により精製を行ない、オレンジ色の結晶(収量500mg、収率56.5%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, TMS, δ):8.09 (d, 2H, J =0.85 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 4.2 Hz), 7.4(dd, 2H, J1 = 0.85 Hz, J2 = 4.2 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 1.9 Hz), 7.04 (d, 2H, J = 1.9 Hz), 5.97 (t, 2H, J = 6.9), 2.34−2.37 (m, 2H), 1.96−2.07 (m, 4H), 1.60−1.63 (m, 4H), 1.43−1.46 (m, 4H), 1.17−1.26 (m, 24H), 1.00 (t, 6H, J =7.2 Hz), 0.78−0.85 (m, 12H)
元素分析値:C,70.40;H,7.94;S,14.2(実測値)C,0.54;H,7.74;S,14.49(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、上記前駆体Precursor 1の構造と矛盾がないことを確認した。
(溶解性脱離ユニットの合成2)
表記溶解性脱離ユニットは特願2009-209911に記載の方法に従って下記スキームに基づいて合成することが可能である。アルキル鎖の異なるものについても、対応するアルキル鎖を有するカルボン酸を用いることで合成が可能である。詳細は上記文献を参照。 式中、NBSはN-ブロモスクシンイミド、AIBNはアゾビスイソブチロニトリル、DMFはジメチルホルムアミドの略称である。
100mLの丸底フラスコにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物 (3.62 g, 20 mmol)、カプロン酸 (2.51 mL, 20 mmol)、DMF (30 mL)を入れ、アルゴン置換した後、室温で2.5時間攪拌した。そこへ、化合物14 (4.16 g, 10 mmol)を加え、さらに室温で16時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチル100 mLで希釈し、純水200 mLを加え、有機層を分離した。水層は酢酸エチル30 mLで4回抽出し合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、オレンジ色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン→酢酸エチル/トルエン (5/95, v/v))にて精製することにより、無色のオイルとして化合物15を得た。(収量2.44 g, 収率50.2 %)
以下に化合物15の分析結果を示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ): 0.87-0.90 (m, 6H), 1.24-1.34 (m, 8H), 1.60-1.67 (m, 4H), 1.90-1.94 (m, 2H), 2.23-2.34 (m, 6H), 5.98 (d, 2H, J =3.5 Hz), 7.06 (d, 2H, J =8.0 Hz), 7.63-7.66 (m, 2H)
質量分析:GC-MS m/z = 486 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物15の構造と矛盾がないことを確認した。
表記ジトリメチルスタニルユニットは特願2009-209911に記載の方法に従って下記スキームに基づいて合成することが可能である。チエノチオフェン以外の骨格(ジベンゾチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)についても同様に反応を行うことが可能であり、水素置換体以外にも臭素やヨウ素などのハロゲン体を用いることができる。詳細は上記文献を参照。
十分に乾燥させた200 mLの丸底フラスコに、チエノ[3, 2-b]チオフェン(2.81 g, 20.0 mmol)を入れ、アルゴン置換を行った後、脱水テトラヒドロフラン(以下THF) (50 mL)を加え、アセトン-ドライアイス浴で-78 ℃まで冷却し、n-ブチルリチウム(2.2eq, 28.1 mL (1.6 Mヘキサン溶液), 44 mmol)を15分かけて滴下し、反応系内を室温まで昇温し、そのまま16時間攪拌を行った。再び-78℃に冷却し、トリメチルスズクロリド (2.5 eq, 50 mL (1.0 Mヘキサン溶液), 50 mmol)を一度に加え、反応系内を室温まで昇温させ、24時間攪拌を行った。
水(80 mL)を加えて、クエンチし、酢酸エチルを加えて有機層を分離した。有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、さらに硫酸ナトリウムで乾燥を行い、濾液を濃縮し、褐色の固体を得た。これをアセトニトリルから再結晶(繰り返し3回)することにより、無色の結晶として化合物16を得た。(収量5.0 g, 収率54.1 %)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ): 0.38 (s, 18H), 7.23 (s, 2H)
質量分析:GC-MS m/z = 466(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物16の構造と矛盾がないことを確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ): 0.87-0.89 (m, 12H), 1.28-1.33 (m, 16H), 1.61-1.69 (m, 8H), 1.96-2.01 (m, 4H), 2.28-2.36 (m, 12H), 6.08 (d, 4H, J =12.1 Hz), 7.37 (d, 2H, J =8.6 Hz), 7.48 (s, 2H), 7.57-7.59 (m, 4H)
元素分析(C50H64O8S2):C, 69.92; H, 7.67; O, 14.85; S, 7.44(実測値)、C, 70.06; H, 7.53; O, 14.93; S, 7.48(理論値)
融点:113.7-114.7 ℃
以上の分析結果から、合成したものが、前駆体Precusor8の構造と矛盾がないことを確認した。
以下、Precursor9、10についても対応する溶解性ユニットとジトリメチルスタニル体とのStilleカップリングにて合成が可能である。
前駆体Precursor 1(5mg)を、シリコンウェハ上に乗せ、シャーレ内に添加剤としての酸または塩基を満たした状態で、130℃または150℃のホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行なった。
上記サンプルおよび加熱前の前駆体、加えて脱離反応によって発生する2−ブチルオクタン酸のIRスペクトル(KBr法、パーキンエルマー社製)を測定した。これらの結果を表1に示す。
図1に無添加の場合と、トリフルオロ酢酸を加えたもの、遊離のカルボン酸である2−ブチルオクタン酸のIRスペクトルを示す。
このIRスペクトルによって、前駆体分子とのエステル結合が切断され、カルボン酸が遊離し、末端がオレフィン構造の有機半導体OSC1へと変換されているかどうかが分かる。
IRスペクトルにおいて、−O−の吸収(1166cm−1)が消失し、C=Oの吸収のシフト(1730cm−1から1710cm−1への)が見られた。このことより、前駆体分子中より2−ブチルオクタン酸が遊離していることを示す。
トリフルオロ酢酸添加時のアニール処理前後の偏光顕微鏡像を比較すると、アニール前は一面が暗い像が得られ、等方的な膜であった。従って、アニール処理を施す前の膜は非晶質であることが分かる。
一方アニール処理後は、色のついたドメインが複数観測された。従って、アニール処理を施した膜は結晶質であることが分かる。これは、前駆体分子が、溶解性基を脱離することにより、有機半導体分子に変換され、結晶質になったためである。
前駆体Precursor 1を用いて、以下の要領で、図3−(A)の構造の電界効果型トランジスタを作製した。
濃硫酸に24時間浸漬洗浄した膜厚300nmの熱酸化膜を有するN型のシリコン基板をフェニルトリクロロシランのトルエン溶液(濃度1mM、液量8mL)に浸漬し、密封した容器に超音波を30分当てることでシリコン酸化膜表面を単分子膜処理した。
単分子膜処理を施したシリコン基板上に、例示した前駆体Precursor 1のクロロホルム溶液(0.2wt%)を滴下し、クロロホルムが蒸発することで、厚さ100nmの連続した前駆体膜が形成された。
この基板をトリフルオロ酢酸1mLを入れたシャーレに入れ、上部をもう一つのシャーレで覆い、130℃のホットプレート上で30分加熱することで、前駆体膜を有機半導体OSC1の膜へと変換した。
この有機半導体膜上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa,蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm,チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。有機薄膜トランジスタの電流−電圧(I−V)特性における飽和領域から、電界効果移動度を求めた。特性図を図3に示す。また、特性の結果を表2に示す。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)2/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 2を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 3を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 4を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 5を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 6を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 8を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 9を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
実施例2において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 10を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、実施例1に記載の方法により、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例2に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
[比較例1]
<有機薄膜トランジスタの作製・評価>
実施例2において、前駆体膜から有機半導体膜への加熱変換を行なう際に、トリフルオロ酢酸を添加しないこと以外は、実施例2に記載の方法と同様に電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
<有機薄膜トランジスタの作製・評価>
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 2を使用した以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 3を使用した以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 4を使用した以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 5を使用した以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 6を使用した以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。
結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 8を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 9を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
比較例1において、有機半導体膜の形成に際して、前駆体Precursor 1を使用する代わりに、前駆体Precursor 10を使用し、加熱温度を150℃にした以外は、比較例1に記載の方法と同様に、対応する有機半導体膜を有する電界効果型トランジスタを作製し、同様に比較例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表2に示す。
一方、本発明の製造方法で作製した電界効果トランジスタは従来よりも低い加熱温度にも関わらず、いずれも高いホール移動度、電流オンオフ比を有し、有機トランジスタとして優れた特性を有しており、本発明の製造方法の有用性が明らかとなった。
(保護膜前駆体Precurosr7の合成)
下記反応スキーム1に示されるブロモ体18は特願2008−107581に記載の方法で合成した。下記スキームに従って保護膜前駆体Precursor 7の合成を行なった。
得られた前駆体Precursor 7の分析結果を示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.94 (s, 1H), 7.8 (d, J= 8.6 Hz, 2H), 7.68 (dd, J=8.6 Hz, J2 = 1.8 Hz, 1H), 7.65 (d, J= 8.0 Hz, 2H), 7.42 (d, J= 8.0 Hz, 2H), 7.15−7.18 (m, 2H), 5.73 (t, J =6.3 Hz, 1H), 4.17 (q, J= 3.6 Hz, 2H), 2.36−2.39 (m, 1H), 1.95−2.01 (m, 1H), 1.85−1.89 (m, 1H), 1.55−1.67 (m, 2H), 1.49 (t, J= 6.9 Hz, 3H), 1.45−1.48 (m, 2H), 1.13−1.32 (m, 12H), 0.95 (t, J= 7.5 Hz, 3H), 0.91−0.88 (m, 6H)
質量分析:GC−MS m/z = 488 (M+)
元素分析値:C, 81.40; H, 9.25; O, 9.99 (実測値) C, 81.10; H, 9.07; O, 9.82 (計算値)
融点:75.5−78.0 ℃
以上の分析結果より、合成した化合物がPrecursor7であることを確認した。
実施例2において、有機トランジスタの作製までは同様にして、さらに金電極上部に、前記製造例3で合成した保護膜の前駆体Precursor 7のトルエン溶液(4wt%)をスピンコーティング(回転条件:3000回転×30秒)し、100℃で30分乾燥を行ない、膜厚300nmの前駆体Precursor 7からなる膜を得た。
この基板をトリフルオロ酢酸1mLを入れたシャーレに入れ、上部をもう一つのシャーレで覆い、130℃のホットプレート上で30分加熱することで、前駆体膜をOSC6からなる保護膜へと変換した。以下、実施例2と同様にトランジスタ特性を測定し、移動度を算出した。また、大気中(気温25℃、湿度50%)で30日放置した後のトランジスタ特性の測定も同様に行なった。結果を表3に示す。
実施例11において、保護膜の前駆体膜から保護膜への加熱変換を行なう際に、トリフルオロ酢酸を添加しないこと以外は、実施例11に記載の方法と同様に電界効果型トランジスタを作製し、同様に実施例1に記載の方法によりトランジスタ素子特性を測定し、移動度の算出を行なった。結果を表3に示す。
一方、従来の方法で得た保護層に置いては、30日経過後において、トランジスタ特性の低下がより顕著であった。温度が低く変換が不十分であったため、保護膜としての性能が発揮されていないと考えられる。
このことより、本発明の製造法は保護膜の製膜においても、有用であるといえる。
この製造法は有機電子デバイスへの適用が考えられ、特に半導体などの電子デバイス、EL発光素子などの光学−電子デバイスへの適用が考えられる。
また、本発明の製造方法で作成した有機半導体層および絶縁膜および保護膜を有する有機トランジスタは、高い移動度、大きな電流オンオフ比を有しているため、液晶表示素子、EL発光素子、電子ペーパー、各種センサー、RFIDs(radio frequency identification)などに応用できる可能性がある。
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜
Claims (3)
- 支持基板上に前駆体を成分として含む薄膜を形成する工程と、前記薄膜の後処理工程を含む有機電子デバイスの製造方法であって、
前記前駆体が、下記一般式(I)からなる基を少なくとも一つ有している化合物であり、前記後処理工程における前記薄膜の後処理を、酸の存在下加熱することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により形成された薄膜が、半導体膜、絶縁膜、保護膜のいずれかであることを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により製造された有機電子デバイス。
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JP2011071501A (ja) | 2011-04-07 |
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