JP5578414B2 - テトラチアフルバレン誘導体を用いた有機トランジスタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、この電荷移動錯体は他にも多くの応用が期待されており、有機超伝導体、有機磁性体、有機エレクトロクロミック材料、有機エレクトロルミネッセンス等が挙げられる。
従来のシリコンを用いた薄膜トランジスタの製造プロセスは、真空や蒸着などの工程が必要であり、非常に高い製造設備が必要となる欠点があった。
しかし、有機半導体を用いたトランジスタの製造プロセスは、有機半導体材料を溶媒に溶解することでインク化し、印刷プロセスによるオンデマンドなトランジスタの作製により、低コストが可能となる。
さらに、有機半導体を用いた印刷プロセスにより電子回路の大面積化やフレキシブルデバイスなどの製造が可能となる。
しかし、この方法では一つ一つのデバイスに結晶を載せることになり、産業上のデバイス作製には適用できない。
また、非特許文献3及び特許文献1では真空蒸着により半導体層を形成させ、薄膜トランジスタを作製しているが、真空プロセスを経るため、高価な製造設備を必要とし、高コストになる。
また、特許文献2では、デバイスの作製に関して、有機半導体材料を溶媒に溶かし、溶液の塗布やインクジェット等の印刷法によるデバイスの作製が記載されているが、実施例に印刷法を用いたデバイスの作製方法は記載されておらず、また、分子の構造上溶媒への溶解性は低いと推測される。
上記のように、TTF誘導体に関しては、溶解性が困難であるため、製造プロセスが限定されてしまい、応用の用途が限定されるといった問題があった。
すなわち本発明は以下の(1)〜(5)からなる。
(1)「一般式(I)で表わされるテトラチアフルバレン誘導体を含む電子デバイス用インク。
(2)「前記第(1)項に記載のインクを用いてウェットプロセスにより塗布することを特徴とする有機膜の製造方法」、
(3)「前記第(2)項に記載の有機膜の製造方法を用いて、外部刺激により一般式(I)で表わされるテトラチアフルバレン誘導体を下記(式1)に示す化学変換を行なうことで得られた有機膜の製造方法」、
また、印刷プロセス後、簡便な熱処理により溶解基の脱離し、例えば、キャリア移動度の高い有機半導体を提供することができる。
一般的な溶剤としては例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、メシチレン、及びN−メチルピロリドンなどが挙げられる。さらに、粘度を調整するために、高粘度溶剤・高分子材料・増粘剤を添加してもよい。
インクの化合物の含有量は、塗布方法に応じて、粘度、蒸発温度を調整するのが好ましく、例えば、インクジェット溶剤であれば、0.1Wt%〜10Wt%の範囲が好ましく用いられる
本発明のインクは、一般的に知られるウェットプロセス(湿式プロセス)で用いることができ、例えば、インクジェット法、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、ブレードコート、キャスト、ロールコート、バーコート、ダイコートなどに用いられる。
テトラチアフルバレン構造は、ヘテロ環部位のπ電子が7πであり、1個の電子を放出してヒュッケル則を満たす6πになりやすい、つまりテトラチアフルバレン構造は良好なドナー性を示す。このドナー性により、ラジカルカチオンになりやすく、さらにそのラジカルカチオンの状態で安定であり、P型半導体材料として好適である。
しかしながら、このドナー性により、イオン化ポテンシャルの値が低く、酸素に対する耐久性に乏しい。前記一般式(I)に記載の材料は、従来のテトラチアフルバレン誘導体と比較して、分子の共役系を拡張した分子構造になっている。共役系を拡張することにより、テトラチアフルバレンのドナー性を弱める可能性が示唆される。つまり、イオン化ポテンシャルが高くなり、劣化の要因となる酸素に対して従来のテトラチアフルバレン誘導体と比較して安定性が上がる。さらに、分子の共役系を拡張することは、電子移動のパスの面積が広くなり良好な電子及びホール輸送が期待される。
前記一般式(I)のテトラチアフルバレン誘導体は、印刷プロセスへの適応を考慮し、簡便な外部刺激により脱離可能な溶解基を有している。これにより、前記一般式(I)のテトラチアフルバレン誘導体は、有機溶媒に溶解し、低コスト、大面積化が可能な印刷プロセスでの素子作成が可能となる。さらに、印刷プロセス後において光や熱処理により溶解基を脱離させることで(下記式1参照)、分子の相互作用が強くなり、高いキャリア移動が期待できる。
また、溶解基が脱離することで、前記一般式(I)のテトラチアフルバレン誘導体は不溶化し、引き続き行なわれる印刷プロセスの後工程に対して高い安定性が期待できる。
また、作成した薄膜状態においても、溶解基の脱離後にベンゼン環が生成することで、分子の長軸方向と垂直に張り出した水素が隣接する分子のπ電子と相互作用し、異方性の少ないヘリンボーン構造の薄膜を形成することができる。これにより、素子間のばらつき低減が可能となる。
前記一般式(I)中の、R1〜R14としては、以下のものを挙げることができる。
水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基またはアルコシキ基もしくはチオアルコキシ基から選択される基であり同一でも異なっていてもよい。
置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数が1以上の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にハロゲン原子(たとえばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、シアノ基、フェニル基又は直鎖乃至分岐のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、置換もしくは無置換のアルコキシ基、またはチオアルコキシ基である場合は、上記アルキル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
さらに、詳細な本発明に用いられるTTF誘導体を示す。
このDiels−Alder反応は、ジエノフィルのLUMOとジエンのHOMOのエネルギー差が反応性に関わってくる。そのエネルギー差が小さければ反応性は高く、エネルギー差が大きいほど反応性は低くなる。
ジエノフィルのLUMOとジエンのHOMOのエネルギー差が大きい場合は、反応性の向上のためルイス酸を触媒として加えることが望ましい。
ルイス酸がジエノフィルである1−4のカルボニル酸素に配位し、LUMOの準位を下げDiels−alder反応を促進させる。
本反応に用いられるルイス酸としては三フッカホウ素、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第一スズ、塩化第二スズ、四塩化チタン、塩化亜鉛、またはN−(トリメチルシリル)ビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド等が用いられる。
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、ボラン錯体、トリエチルシラン、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素ニッケル、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、または、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム等を用いることができる。
第6段階の反応は分子内脱水により、1−Cを得た。
第7及び8段階の反応は文献J.Org.Chem.,2000,65,5794-5805に記載のように、チオン体1−D経て、カップリング反応により1−Eを製造した。
2−2とp−ベンゾキノンをDiels−Alder反応により付加環化し、DDQにより脱水素を行ない2−3を得た。2−3以降の反応は合成経路1の1−4からの反応と同様の手順により(11)から(20)のテトラチアフルバレン誘導体は合成される。
チオン体3−3以降の反応は、合成経路1の1−Dからの反応と同様の手順により(21)から(30)のテトラチアフルバレン誘導体は合成される。
脱離反応を行なうために印加するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性及び収率、後工程の観点から熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。
脱離反応を行なうための加熱の方法としては、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等、種々の方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
脱離反応を行なう際の雰囲気については、大気下においても行なうことが可能であるが、酸化等の副反応および水分の影響を除くため、加えて脱離した成分の系外への排除を促進するために、不活性ガス雰囲気下または減圧下で行なうことが望ましい。
本発明のテトラチアフルバレン誘導体は、例えば、電子デバイスに用いることができる。
電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。
また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明の特定化合物を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。
以下、このFETについて詳細に説明する。
図1の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。
本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の特定化合物を含有する。
本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)およびゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜5が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
本発明に係わる有機半導体材料は、真空蒸着法等の気相製膜が可能である。加えて、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができるほか、作成した薄膜に対してエネルギーを印加し、化合物を変換することによっても形成することができる。
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成してもよい。
さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。
例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。
有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していてもよい。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していてもよい。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
化合物(2)の合成ルートを以下に示す。
《4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−2の合成》
水素化ホウ素ナトリウム(10.22g)に、塩化リチウム(1.00g)を溶解させたメタノール(100ml)を滴下した。その後にTHF(50ml)を入れた。−10℃に冷却後、THF(100ml)に溶解させた1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジカルボン酸ジメチル:1−1(10.0g)を滴下した。滴下終了後、氷浴で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を氷水(1l)に注いだ。酢酸エチルで抽出を行ない、飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチルで再結晶を行ない、4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−2を収率88%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(DMSO,TMS)σ:4.45(d,2H,J=5.5Hz),5.88(t,1H,J=5.5Hz)
《4,5−ビス(ブロモメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−3の合成》
4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−2(5.20g)とクロロホルム(60ml)及びテトラヒドロフラン(60ml)を入れ、氷浴により冷却した。クロロホルム(60ml)に溶解した臭化リン(3.04ml)を滴下した。5℃以下で3時間攪拌し、その後、酢酸エチルにより抽出を行なった。水、飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチルで再結晶を行ない、4,5−ビス(ブロモメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−3を収率85%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:4.33(s,4H)
《2−チオキソナフト[2,3−d][1,3]ジチオール−5,8−ジオン:1−4の合成》
4,5−ビス(ブロモメチル)−1,3−ジチオール−2−チオン:1−3(1.10g)とヨウ化テトラエチルアンモニウム(0.38g)及びp−ベンゾキノン(2.77g)及びアセトニトリル(60ml)を入れ、1時間還流した。その後、ジクロロジシアノベンゾキノン(1.62g)を入れ、7時間還流を行なった。還流終了後、溶媒を留去し、メタノールを入れ沈殿物をろ過により回収した。メタノール、蒸留水、エーテルの順に洗浄を行ない、得られた残渣をクロロホルムに溶解後、ろ過を行なった。得られたろ液から再結晶を行ない2−チオキソナフト[2,3−d][1,3]ジチオール−5,8−ジオン:1−4を収率78%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:7.04(s,2H),8.15(s,2H)
《6,9−ジヒドロ−6,9−エタノ−2−チオキソアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−5,10−ジオン:1−5の合成》
トルエン(300ml)に2−チオキソナフト[2,3−d][1,3]ジチオール−5,8−ジオン:1−4(0.50g)を入れ、−78℃に冷却した。冷却後、N−(トリメチルシリル)ビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド(1.34g)を加え、その後に1,3−シクロヘキサジエン(0.84g)を入れた。反応終了後、1MNaHCO3水溶液を入れた。有機層を分液後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、トルエンを用いて再結晶を行ない6,9−ジヒドロ−6,9−エタノ−2−チオキソアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−5,10−ジオン:1−5を収率77%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:1.40−1.43(m,2H),1.78−1.81(m,2H),3.24−3.25(m,2H),3.32−3.35(m,2H),6.16(dd,2H,J1=3.2Hz,J2=4.6Hz),8.08(s,2H)
《5,10−ジヒドロキシ−5,10−ジヒドロ−6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−6の合成》
メタノール(60ml)及び、THF(160ml)に、6,9−ジヒドロ−6,9−エタノ−2−チオキソアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−5,10−ジオン:1−5(0.12g)を入れ氷浴により0℃に冷却した。冷却後に水素化ホウ素ナトリウム(0.026g)を溶解させ、4時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を氷水に注ぎ沈殿物を濾別した。水で洗浄後、真空乾燥をし、5,10−ジヒドロキシ−5,10−ジヒドロ−6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−6を収率98%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(DMSO,TMS)σ:1.00(d,2H,J1=7.3Hz),1.42(d,2H,J1=7.3Hz),2.57(s,2H),2.75(s,2H),4.74(s,2H),5.16(s,2H),5.6(s,2H),7.58(s,2H)
《6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−7の合成》
ピリジン(30ml)に5,10−ジヒドロキシ−5,10−ジヒドロ−6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−6(1.03g)を溶解させ、氷浴により0℃に冷却した。冷却後、塩化ホスホニル(0.81ml)を入れ、2時間攪拌した。反応終了後、氷水に注ぎ得られた沈殿物をろ別した。水で洗浄後、クロロホルムに溶解した。硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィにより、6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−7を収率92%で単離した。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:1.55−1.57(m,2H),1.66−1.69(m,2H),4.04−4.06(m,2H),6.56−6.57(dd,2H,J1=3.1Hz,J2=4.6Hz),7.54(s,2H),7.85(s,2H)
《6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−オン:1−8の合成》
クロロホルム(90ml)に6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−チオン:1−7(0.92g)を溶解させ、酢酸に溶解した酢酸水銀を滴下した。室温で4時間攪拌した。反応終了後、セライト濾過を行ない、クロロメチルで洗浄した。濾液をNaHCO3水溶液、蒸留水で洗浄した。洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒を留去し、6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−オン:1−8を収率76%で得た。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:1.54−1.56(m,2H),1.66−1.69(m,2H),4.03−4.06(m,2H),6.56−6.57(dd,2H,J1=3.1Hz,J2=4.6Hz),7.51(s,2H),7.86(s,2H)
IR(KBr)で赤外スペクトルを分析したところC=Oに由来する1718cm−1の吸収を確認した。
《ビス(6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d])テトラチアフルバレン:(2)の合成》
6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−2−オン:1−8(0.20g)を、ホスホン酸トリエチル(2.00ml)と混合し、140℃で9時間攪拌した。反応溶液を放冷後、濾別し、メタノールで洗浄した。その後、クロロホルムで洗浄し、ビス(6,9−ジヒドロ−6,9−エタノアントラ[2,3−d])テトラチアフルバレン:(2)を収率67%で得た。質量分析:GC−MSm/z=281(M2+),元素分析値:C,72.21;H,3.84(実測値)C,72.82;H,4.31(計算値),IR(KBr)の測定を行なった。
結果を図2に示す。
化合物(3)の合成は実施例1の1−4化合物を用いて合成を行なった。
トルエン(1000ml)に2−チオキソナフト[2,3−d][1,3]ジチオール−5,8−ジオン:1−4(1.87g)を入れ、−78℃に冷却した。冷却後、N−(トリメチルシリル)ビス(トリフルオロメタンサルフォニル)イミド(3.06g)を加え、その後に5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサジエン(5.0g)を入れた。反応終了後、1MNaHCO3水溶液を入れた。有機層を分液後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、トルエンを用いて再結晶を行ない6,9−ジヒドロ−6,9−(11,11−ジメチルエタノ)−2−チオキソアントラ[2,3−d][1,3]ジチオール−5,10−ジオン:8−5を収率70%で得た。
NMRにより同定を行なった。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:0.89(s,3H),1.19(s,3H),2.97−2.99(m,1H),3.22(d,2H,J=7.4Hz),3.53−3.56(m,1H),6.06(t,1H,J=6.6Hz,),6.23(t,1H,J=6.6Hz),8.08(s,2H)
得られた化合物8−5を用いて実施例1の合成手順[5]から[8]と同様な操作を行ない。ビス{6,9−ジヒドロ−6,9−(11,11−ジメチルエタノアントラ)[2,3−d]}テトラチアフルバレン:(3)を得た。NMRにより同定を行なった。1H−NMR(CDCl3,TMS)σ:0.66(s,3H),1.08(s,3H),1.33(d,1H,J=6.3Hz),1.49(d,2H,J=6.3Hz),3.41−3.42(m,1H),3.86−3.87(m,1H),7.37(s,2H),7.61(s,2H)元素分析値:C,73.88;H,4.77(実測値)C,71.98;H,5.23(計算値), IR(KBr)の測定を行なった。
結果を図3に示す。
その結果を図4に示す。
240〜280℃にかけて、エチレンの2分子に相当する割合の重量減少が確認された。これにより化合物(2)がOSC1への変換が確認された。(ここでOSCはOrganic SemiConductorの略語である)
その結果を図5に示す。
230〜270℃にかけて、2−メチル−1−プロペンの2分子に相当する割合の重量減少が確認された。これにより化合物(3)がOSC1への変換が確認された。
実施例2で合成したビス{6,9−ジヒドロ−6,9−(11,11−ジメチルエタノアントラ)[2,3−d]}テトラチアフルバレン:(3)を用いて、以下の手順で、図1−(C)の構造の電界効果型トランジスタを作製した。
膜厚300nmの熱酸化膜を絶縁膜として、Nドープのシリコンウェハーを基板およびゲート電極として用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、気相にてHMDS処理を施し、絶縁膜の表面の濡れ性を変化させた。その後、公知のフォトリソグラフィーにより膜厚100nmAu電極パターン(チャネル長10μm,チャネル幅50mm)を形成した。その後、10mMのパーフルオロベンゼンチオールを含むエタノール溶液中に上記基板を18時間浸漬させることで、ソース電極およびドレイン電極の表面の濡れ性を変化させた。
実施例2で得られたビス{6,9−ジヒドロ−6,9−(11,11−ジメチルエタノアントラ)[2,3−d]}テトラチアフルバレン:(3)を90℃に加温したジクロロベンゼンに溶解し、0.1wt%の溶液を調製した。90℃に設定したホットプレート上に上記で作製した基板を置き、調製溶液をキャスト後、ジクロロベンゼン雰囲気下で乾燥させた。
電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。
有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)2/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
作製した有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、1.10×10−4cm2/Vsであった。
この素子のトランジスタ特性を、グローブボックス中で評価したところ、電界効果移動度は3.6×10−3cm2/Vs、であった。
図6に作成した有機TFTのチャネル領域のSEM写真を示す。
実施例5で作成した有機半導体層ではどちらの溶媒を染み込ませたベンコットヘの溶解が確認された。
実施例6で作成した溶解基を脱離させた有機半導体層では剥離やベンコットヘの溶解は確認されず、耐溶剤性に優れていることが確認された。
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜
Claims (5)
- 一般式(I)で表わされるテトラチアフルバレン誘導体を含む電子デバイス用インク。
- 請求項1に記載のインクを用いてウェットプロセスにより塗布することを特徴とする有機膜の製造方法。
- 請求項3に記載の有機膜の製造方法において、一般式(I)で表わされるテトラチアフルバレン誘導体を支持基体上にて加温させることにより、変換することを特徴とした有機膜の製造方法。
- 請求項2乃至4のいずれかに記載の有機膜の製造方法により製造した有機トランジスタ。
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