JP2013026448A - 薄膜トランジスタ及びそれを用いた電子デバイス - Google Patents

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隆徳 田野
Takuji Kato
拓司 加藤
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Daisuke Goto
大輔 後藤
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【課題】特定構造のπ電子共役化合物前駆体を含む薄膜中の該前駆体のπ電子共役化合物への変換が、基板の耐熱温度に制限されることなく、且つ大気下で進行する、有機膜の製造方法。
【解決手段】π電子共役化合物前駆体A−(B)mを含む薄膜中の該前駆体A−(B)mが、活性エネルギー線の照射により、π電子共役系化合物A−(C)mと脱離性化合物X−Yに変換される。A−(B)m→A−(C)m+X−Y
Figure 2013026448

Figure 2013026448

(Aはπ電子共役系置換基、Bは溶媒可溶性置換基、mは自然数である。)
【選択図】図1

Description

本発明は有機膜の製造方法、及びそれにより得られる有機膜と電子デバイスに関する。
近年、有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。有機薄膜トランジスタは、印刷法、塗布法等の生産性に優れたウェットプロセスにて作製できるため、真空プロセスを用いた従来のシリコントランジスタに比べ、製造コストの低減や大面積な電子デバイスへの展開が期待できる。さらに、製造プロセス温度を低温化できることから、耐熱性の低いプラスチック基板を用いた軽量で壊れにくいフレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
これまでに、ペンタセンやテトラセンに代表されるアセン系の有機半導体材料が数多く報告されている(例えば特許文献1)。このアセン系材料を有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、高い電界効果移動度を示すことが知られているが、汎用溶媒に対し極めて溶解性が低いため、薄膜化する際には真空成膜を用いる必要がある。ゆえに、これらアセン系材料は、前述したような塗布法や印刷法などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
そこで、溶解性の低い有機半導体材料をウェットプロセスへ適応させる方法として、半導体材料に熱または光で脱離する可溶性部位を導入した変換型半導体材料に関する検討が行われており、ペンタセンや、ポルフィリンに関する報告例がある。
例えば非特許文献1ではビシクロ構造を有するペンタセン誘導体を基板上に塗布成膜した後、加熱することでペンタセン誘導体からエチレンが脱離し、有機半導体であるペンタセンが生成される例が示されている。しかし、エチレンの脱離には200℃程度での熱処理が必要なため、使用できる基板が限られるという問題がある。またエチレンの脱離が起こりにくいことから、未反応部分が欠陥として残りやすいことや、高温処理によるペンタセンの変性が指摘されている。(特許文献2)
そこで特許文献3では、6位及び13位の間にアゾ結合を有するペンタセン誘導体を光照射によりペンタセンに変換する方法が示されている。かかる方法では、絶縁膜や基板等の周辺材料への熱負荷は抑えることができる。しかし、ペンタセンへの変換反応は窒素ガス雰囲気中で行う必要があり、製造工程の管理が煩雑で高コストなものとなる。また、ペンタセンは大気安定性、電圧連続印加時の安定性、熱的安定性に欠け、実用上多くの問題を有している。(非特許文献2)
また、非特許文献3,4及び特許文献4,5では、有機半導体前駆体にビシクロ環が縮環したポルフィリン誘導体を用いた例が示されている。ビシクロ環が縮環したポルフィリン誘導体は、ビシクロ骨格部位が立体的な分子構造を取り、分子同士のスタッキングを阻害するため、各種有機溶媒に可溶であり、ウェットプロセスでの製膜が可能である。さらに、製膜後に加熱することで、ビシクロ骨格部位からエチレンもしくはエチレン誘導体が脱離し、結晶性の有機半導体膜へと変換されることが報告されている。しかし、この方法においても変換反応が高温、且つ不活性ガス雰囲気下で行う必要があるといった問題点が挙げられる。例えば、非特許文献3では製膜、及び変換の過程は窒素雰囲気下で行い、さらに変換条件は真空下、180℃で行う方法が記載されている。また、多くの例でチャージキャリアの電界効果移動度が低いといった問題点も有している。
本発明は上述の問題を解決するため、特定構造のπ電子共役化合物前駆体を含む薄膜中の該前駆体のπ電子共役化合物への変換が、基板の耐熱温度に制限されることなく、且つ大気下で進行し、さらに変換後得られるπ電子共役系化合物が優れた特性を有することを特徴とする有機膜の製造方法、及びそれにより得られる有機膜と電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、少なくとも特定のπ電子共役化合物前駆体A−(B)mを含む薄膜を形成した後、活性エネルギー線を照射することでπ電子共役系化合物A−(C)mと脱離性化合物X−Yに変換することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の(1)〜(11)に示す有機膜と、その製造方法、この有機膜を用いた電子デバイス、例えばTFTのようなFET、を包含する。
(1)「つぎの一般式(I)で示される反応にしたがって、少なくともπ電子共役化合物前駆体A−(B)mを含む薄膜中の該前駆体A−(B)mが、活性エネルギー線の照射により、π電子共役系化合物A−(C)mと脱離性化合物X−Yに変換される工程を有することを特徴とする有機膜の製造方法。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
Figure 2013026448
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、π電子共役系置換基Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
上記一般式(I)、(II)及び(III)中、X,Yのうち一方は水素原子もしくは脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、Aと共有結合を介して連結している。)」
(2)「前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、エーテル基またはアシルオキシ基であることを特徴とする前記(1)項に記載の有機膜の製造方法。」
(3)「前記活性エネルギー線の照射により、π電子共役化合物前駆体A−(B)mを加熱することを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の有機膜の製造方法。」
(4)「前記活性エネルギー線は、π電子共役化合物前駆体A−(B)mが吸収する波長の光を含むものであることを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれかに記載の有機膜の製造方法。」
(5)「前記活性エネルギー線がレーザー光であることを特徴とする前記(4)項に記載の有機膜の製造方法。」
(6)「前記レーザー光が炭酸ガスレーザーであることを特徴とする前記(5)項に記載の有機膜の製造方法。」
(7)「前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物残基、および、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基、からなる群から選択された少なくとも一種類以上のπ電子共役系化合物残基であることを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の有機膜の製造方法。」
(8)「少なくとも前記π電子共役系置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物から選択されるπ電子共役化合物の残基であることを特徴とする前記(1)項乃至(7)項のいずれかに記載の有機膜の製造方法。」
(9)「前記(1)項乃至(8)項のいずれかに記載の製造方法により得られた有機膜。」
(10)「前記(9)項に記載の有機膜を用いた電子デバイス。」
(11)「前記(9)項に記載の有機膜を用いた電界効果トランジスタ。」
本発明によれば、印刷法、塗布法等の生産性が優れた方法で、耐熱温度の低い基板上であっても、特性が良好なπ電子共役系化合物の膜を大気下で形成することができる。このようにして形成された有機膜を用いることで、軽量且つ柔軟性に優れた安価な電子デバイスが実現できる。
本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体(1)の加熱前,170,180,220,230,240,260℃およびπ電子共役系化合物(2)のIRスペクトルを示す図である。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体(1)の熱分解挙動(TGDTA)の結果である。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物(5)の単結晶を偏光顕微鏡(平行ニコル)で観察したものである。 真空蒸着膜法にて製膜したπ電子共役系化合物(5)の有機膜を走査型電子顕微鏡で観察したものである。 スピンコート法にて製膜したπ電子共役系化合物前駆体(4)の変換膜を走査型電子顕微鏡で観察したものである。 有機薄膜トランジスタの概略図である。 実施例1にて計測した有機薄膜トランジスタの伝達特性である。 実施例1にて観察した偏光顕微鏡写真である。尚、上図はオープンニコル、下図はクロスニコルの状態で観察したものである。 比較例2にて計測した有機薄膜トランジスタの伝達特性である
[π電子共役化合物前駆体および該前駆体から得られるπ電子共役系化合物]
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられるπ電子共役系化合物A−(C)mの特徴は、特定の前記溶媒可溶性置換基C(−C(X)R−C(Y)R)を有するπ電子共役化合物前駆体A−(B)mに対して、外部刺激を加え特定の置換基B(X−Y)を脱離させることにより、π電子共役系化合物が得られることであり、π電子共役化合物前駆体は単に前駆体と表記される。本発明におけるこのπ電子共役化合物前駆体A−(B)mは、この前駆体が吸収する波長の活性エネルギー線、例えば光、を含む活性エネルギー線によりπ電子共役化合物A−(C)mに変化されるものであるが、前記、π電子共役化合物前駆体A−(B)mにおいて、Aはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、XまたはYの置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上のXまたはYの置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と環状を形成している。
これに外部刺激を加えることにより、溶媒可溶性置換基Bは特定の脱離性置換基XおよびYをXYの形で脱離し、代わりに一部がオレフィンに還元された置換基Cへと変換されるとともに、前記一般式(II)のπ電子共役系化合物A−(C)mで表されるπ電子共役化合物が得られる。
本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体は、π電子共役系置換基であるAに、溶媒可溶性置換基Bが結合した構造をしている。
ここで、溶媒可溶性置換基Bおよび置換基Cは、前述のように、下記一般式(II)および(III)で表される。
Figure 2013026448
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ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。R1、及びRは、それぞれ水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
上記一般式(I)〜(III)中、X及びYのうち一方は水素原子もしくは脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、原子と共有結合を介して連結している。)
前記式(I)、(II)、(III)においてXおよびYで表される基は、水素原子または置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基であり、XおよびYのうち少なくとも一方は、脱離性置換基即ち、置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基または置換されていてもよい炭素数1以上のアシルオキシ基などであり、他方は水素原子である。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基としては、炭素数1以上の置換されていても良い直鎖または環状の脂肪族アルコールおよび炭素数4以上の芳香族アルコール等、アルコール由来のエーテル基が挙げられる。また、前記エーテル中の酸素原子が硫黄原子に置き換わったチオエーテル基も含めることができる。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ピバロイル基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、ラウリロキシ基、トリフルオロメトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等が挙げられ、エーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオエーテル類も同様に含まれる。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2以上のハロゲン原子を含んでいてもよい直鎖または環状の脂肪族カルボン酸および炭酸ハーフエステル、炭素数4以上の芳香族カルボン酸等、カルボン酸および炭酸ハーフエステル由来のアシルオキシ基が挙げられる。また、前記カルボン酸の酸素原子が硫黄に置き換わったチオカルボン酸も含めることができる。具体的には、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ、3,3,3−トリフルオロプロピオニルオキシ、ペンタフルオロプロピオニルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロブタノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
加えて、上記例示したアシルオキシ基のカルボニル基とアルキル基あるいはアリール基の間に酸素原子または硫黄原子を挿入した、炭酸ハーフエステル由来の炭酸エステルも挙げることができる。加えて、エーテル結合部位およびカルボニル部位の酸素の一つ以上を硫黄に置き換えた対応するアシルチオオキシ類、チオアシルオキシ類も同様に含まれる。
上記概念の脱離性置換基XおよびYの一部を下記に例示する。
Figure 2013026448
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本発明で用いられる置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基(脱離性を有する基)の導入により、有機溶媒に対する高い溶解性と、化合物の安定性を維持しつつ脱離性基の脱離反応を可能とすることができる。
例えば、脱離性基として、置換または無置換の炭素数1以上のエーテル基およびアシルオキシ基に代えて炭素数1以上の置換されていてもよいスルホニルオキシ基を導入することもできる。
尚、上記置換されていてもよいスルホニルオキシ基としては、炭素数1以上の直鎖または環状の脂肪族スルホン酸、炭素数4以上の芳香族スルホン酸等、スルホン酸由来のスルホニルオキシ基が挙げられる。具体的には、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、ピバロイルスルホニルオキシ基、ペンタノイルスルホニルオキシ基、ヘキサノイルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピオニルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等が挙げられ、エーテル部位の酸素原子が硫黄原子に置き換わったスルホニルチオオキシ基も同様に含むことができる。
また、本発明における前記R、R及びRで表される基としては、前述のように、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、あるいは一価の有機基(但し、R、R及びRにおいては置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基以外の1価の有機基)が用いられるが、該一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオオキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。
これらの例としては、アルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基〕]、シクロアルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基〔例えば、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基〕]が挙げられる。
以下に説明する他の一価の有機基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
上記アルケニル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。これらの例としては、アルケニル基[好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基〕。]、シクロアルケニル基[上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基〕。]等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合からなる混合物であってもよい。
上記アルキニル基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上三重結合としたものが挙げられる。このようなアルキニル基として、例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基〔例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等〕が挙げられる。
上記ヘテロアリール基としては、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物〔例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、2−ベンゾチエニル、2−ピリミジル等〕が挙げられる。
上記アルコキシル基およびチオアルコキシル基としては、好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アミノ基としては、好ましくはアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、〔例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基〕、アシルアミノ基[好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、〔例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基〕]、アミノカルボニルアミノ基[好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、〔例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基〕]等が挙げられる。
上記π電子共役系置換基Aとしては、π電子共役平面を有するものであればいかなるものであっても良いが、具体的にはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環が好ましく、より好ましくは、
(i)1つ以上の前記芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、または前記環同士が縮環された化合物残基、
(ii)上記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基、
上記(i)および(ii)よりなる群から選択された少なくとも2つ以上の基を組み合せてなる基を有するπ電子共役系化合物が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましい。具体例(一部の例について一般式を併記する。)としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン(別名ナフタセン)、クリセン、ピレン〔下記一般式(Ar3)〕、ペンタセン、チエノチオフェン〔下記一般式(Ar1)〕、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン〔下記一般式(Ar2)〕、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン〔BTBT;下記一般式(Ar4)〕、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン〔DNTT〕、ベンゾジチエノチオフェン〔TTPTT;下記一般式(Ar5)〕、ナフトジチエノチオフェン〔TTNTT;下記一般式(Ar6)、(Ar7)〕等の縮合多環化合物、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン等のような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類、等が挙げられる。
Figure 2013026448
前記溶媒可溶性置換基Bとしては、一般式(II)で表した構造を部分的に含むものであれば特に制限はされない。
前記したπ電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として、下記の化合物群を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基Bにはアシルオキシ基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも推察される。
Figure 2013026448
前記前駆体A−(B)mに活性エネルギー線を照射することにより、後述の脱離反応を起こし、特定の置換基を脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)mの具体例を以下に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013026448
さらに、溶媒可溶性置換基Bにおいて、RからRは互いに環状を形成することができ、m≧2の場合、環状を形成する好ましい例として、シクロヘキセン構造を部分的に有する構造が挙げられる。この場合、一般式(I)、(II)、(III)は、それぞれ以下の一般式(IV)、(V)、(VI)のように表すことができる。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
Figure 2013026448
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、B’は上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。
ただし、B’は上記一般式(IV)中、(X,X),(Y,Y)の置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の(X,X),(Y,Y)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。Cは上記一般式(V)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
上記一般式(IV)および(V)中、(X,X)、(Y,Y)のうち少なくともいずれか一対はともに水素原子であり、残りの一対はともに置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。また、(X,X)または(Y,Y)の一対の前記アシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。R乃至Rは水素原子または置換基である。
ただし、(X,X)が前記アシルオキシ基であるとき、(Y,Y)は水素原子であり、(Y,Y)が前記アシルオキシ基であるとき(X,X)は水素原子である。
さらに、一般式(IV)中、構造Bの一例としては下記のような構造が挙げられる。
Figure 2013026448
これらはR乃至Rおよび(X,X)、(Y,Y)の置換位置の炭素原子以外であればπ電子共役系置換基Aと縮環または共有結合を介して連結され得る。
前記π電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として下記の化合物群を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基Bにはアシルオキシ基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも推察される。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
前記前駆体A−(B)mに活性エネルギー線の照射により外部エネルギーを印加することにより、後述の脱離反応を起こし、特定の置換基を脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)mの具体例を以下に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013026448
さらに加えて、溶媒可溶性置換基Bにおいて、R、R及びRは互いに環状を形成することができ,環状を形成する好ましい例として、シクロヘキサジエン構造を部分的に有する構造が挙げられる。この場合、一般式(I)、(II)、(III)は、それぞれ以下の一般式(VII)、(VIII)、(IX)のように表すことができる。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
Figure 2013026448
また、前記Q乃至Qで表される基としては、R乃至Rと同様に定義され、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、あるいは一価の有機基(但し、Q乃至Qにおいては置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基以外の1価の有機基)が用いられるが、該一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオオキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。
これらの例としては、アルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基〕]、シクロアルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基〔例えば、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基〕]が挙げられる。以下に説明する他の一価の有機基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
上記アルケニル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。これらの例としては、アルケニル基[好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基〕。]、シクロアルケニル基[上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基〕。]等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合からなる混合物であってもよい。
上記アルキニル基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上三重結合としたものが挙げられる。このようなアルキニル基として、例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基〔例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等〕が挙げられる。
上記ヘテロアリール基としては、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物〔例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、2−ベンゾチエニル、2−ピリミジル等〕が挙げられる。
上記アルコキシル基およびチオアルコキシル基としては、好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アミノ基としては、好ましくはアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、〔例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基〕、アシルアミノ基[好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、〔例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基〕]、アミノカルボニルアミノ基[好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、〔例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基〕]等が挙げられる。
前記Q乃至Qで表される一価の有機基としては、前述した範囲で表すことが可能であるが、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基であるか、または隣り合う基同士で環状構造を形成していることである。さらに好ましくは、前記環状構造が置換していても良いアリール基またはヘテロアリール基からなることである。
該環の結合、縮環形式の一例としては下記示す構造が挙げられる。
Figure 2013026448
前記、上記環状構造を形成する置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基は具体的には、前記π電子共役系置換基Aの場合に見られるように、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環が好ましく、より好ましくは下記(i)、(ii)である。
(i):1つ以上の前記アリール基およびヘテロアリール基、または前記環同士が縮環された化合物残基。
(ii):上記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基。
また、上記(i)および(ii)よりなる群から選択された少なくとも2つ以上の基を組み合せてなる基を有するπ電子共役系化合物残基が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましい。具体例(一部の例について一般式を併記する。)としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ピレン〔下記一般式(Ar3)〕、ペンタセン、チエノチオフェン〔下記一般式(Ar1)〕、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン〔下記一般式(Ar2)〕、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン〔BTBT;下記一般式(Ar4)〕、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン〔DNTT〕、ベンゾジチエノチオフェン〔TTPTT;下記一般式(Ar5)〕、ナフトジチエノチオフェン〔TTNTT;下記一般式(Ar6)、(Ar7)〕等の縮合多環化合物、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン等のような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類、等が挙げられる。
Figure 2013026448
また、ある主骨格に対して共有結合を介して結合または縮合している、本発明の溶解性置換基の数は、当然いずれも、Ar上の置換あるいは縮環可能な原子の数に依存する。例えば、無置換のベンゼン環においては、最大で6つの置換位置で共有結合を介して結合が可能であり、最大6箇所で縮環可能である。しかしながら、主骨格自体の分子の大きさ、溶解性に応じた置換数、分子の対称性、合成の容易さを考慮すると、下限として1分子内に含まれる本発明の溶解性置換基は2以上がより好ましい。一方、置換数があまり大きいと、溶解性置換基同士が立体的に混み入りすぎて好ましくないため、上限としては、分子の対称性、合成の容易さ、溶解性に応じた十分な置換数を考慮すると4以下が好ましい。
本発明で用いられる、シクロヘキセン構造を部分的に有する置換基脱離化合物の具体的な構造として下記の化合物群を例示するが、本発明における置換基脱離化合物はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基には脱離性置換基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも含む。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
Figure 2013026448
前記置換基脱離化合物に活性エネルギー線の照射により外部エネルギーを付与することにより、後述の脱離反応を起こし、置換基XおよびYを脱離することで、特定化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示した置換基脱離化合物から得られる特定化合物の例を下記特定化合物に示すが、本発明における特定化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013026448
Figure 2013026448
[2.π電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法]
本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いる製造方法の場合、プラスチックス、金属、シリコンウエハ、ガラス等の基質(支持体)上に、例えば塗工により形成された前駆体含有膜中に含まれるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mは、X−Yで示される脱離成分を脱離し、オレフィン構造を有する化合物A−(C)mへと変換する。
Figure 2013026448
π電子共役化合物前駆体A−(B)mから脱離する基であるX,Yは脱離性基と定義され、X−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記沸点としては大気圧(1013 hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ電子共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下にXがアシルオキシ基、Yが水素原子、Rが置換又は無置換のアルキル基である場合を一例として下記に示すが、本発明の製造例は必ずしもこれらに制限されるものではない。
Figure 2013026448
上記の例の場合、外部エネルギーを印加することにより、一般式(XI)で示される脱離反応が進行する。アルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、オレフィン構造を含む構造に変換される。加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合はカルボン酸は気体となる。
上記一般式(XI)で示される化合物から脱離成分が脱離する機構について以下に概略を示す。
Figure 2013026448
上記一般式(XII)に示すように、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸が脱離し、一般式(XI)でも示されるようなオレフィン構造へと変換される。
ここで、β炭素上の水素原子の引き抜きを行えるのは酸素原子に限らず、同じく第16族の元素であるセレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子においても同様のことが起こり得る。
さらに、m≧2の場合、RからRは互いに環状を形成することができる。環状を形成する好ましい例の一例として、シクロヘキサジエン構造を部分的に有する構造が挙げられ、その脱離反応について詳細に説明する。
本発明の前記一般式(A)で表される置換基脱離化合物は、エネルギー付与により前記般式(B)で表される化合物(特定化合物)とX−Yで表される化合物(脱離成分)に変換する。
Figure 2013026448
前記一般式(XIII)で表される化合物には置換基の立体的な配置が異なる異性体が複数存在するが、いずれも前記一般式(B)で示される特定化合物へと変換され、脱離成分は同一であることに変わりはない。
一般式(A)で表される化合物から脱離する基であるXおよびYは脱離性置換基と定義され、それらが結合して生成したX−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記脱離成分の沸点としては大気圧(1013 hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下に、前記一般式(A)におけるXが置換されていても良いアシルオキシ基であり、YおよびQ,Qが水素原子である場合を一例とし、下記にその離脱反応による変換の式を示す。なお、本発明の置換基脱離化合物の離脱反応による変換はこれに限定されるものではない。
Figure 2013026448
上記の例の場合、エネルギー付与(加熱)により、一般式(C)で表されるシクロヘキサジエン環構造から、脱離成分として一般式(E)で表されるアルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、一般式(D)で表されるベンゼン環を含む構造の特定化合物に変換される。
加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合にはカルボン酸は速やかに気体となる。
一般式(F)で表される化合物から脱離成分が脱離する機構について下記反応式(スキーム)により概略を示す。本発明で用いられるシクロヘキサジエン環構造からの脱離成分の脱離機構は下記一般式(F)から下記一般式(H)への変換である。説明を補足するため、シクロヘキセン環[下記一般式(G)]の場合の脱離機構も含めて示す。尚下記式中、Rは置換又は無置換のアルキル基を示す。
Figure 2013026448
上記反応式に示すように、一般式(F)で表されるシクロヘキセン環の場合、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸化合物が脱離し、シクロヘキセン環構造から一般式(H)で表されるようなベンゼン環構造へと変換される。
2つアシルオキシ基を有するシクロヘキセン構造を有する化合物[一般式(F)]の場合、脱離反応は2段階で進行すると考えられ、先ず一つのカルボン酸が脱離して前記一般式(G)で表されるシクロヘキサジエン環構造となる。
この時、一般式(F)で表される2置換体からカルボン酸1分子を脱離させるために必要な活性化エネルギーは、一般式(G)で表される1置換体から同1分子を脱離させるのに要するそれに比べて、十分に大きいため、反応は速やかに2段階進行し、一般式(H)で表される構造まで変換される。
ここで、置換基(アシルオキシ基と水素等)の位置関係の違いによる、複数の立体異性体が存在する場合においても、上記反応は進行する。
上記シクロヘキサジエン骨格の、脱離反応の低温化はアシルオキシ基だけに限られるわけではなく、エーテル基などでも同様の効果が見られる。
上記反応式においてβ炭素上の水素原子の引き抜き、転移が反応の第一段階であるため、酸素原子の水素原子を引きつける力が強いほど反応は起こりやすいと考えられる。その度合いは、例えば、アシルオキシ基側のアルキル鎖によっても変わってくるし、酸素原子を同じく第16族の元素である硫黄、セレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子などに変えることによっても変化する。
この脱離反応を行なうために付与(印加)するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、前記脱離反応には、官能基の構造にも依存するが、反応速度および反応率の観点から加熱が必要となることが多い。脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40℃〜500℃の範囲が好ましく、さらに置換基脱離化合物の合成時の熱安定性を考慮すると、より好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、置換基脱離化合物の反応性、量にもよるが、通常0.5分〜120分、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
前記脱離性置換基の脱離反応において、酸または塩基は触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、置換基脱離化合物に対してそのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行ってもよく、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸等を用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を用いることができる。
また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
また、光塩基発生剤としては、カルバマート類、アシルオキシム類、アンモニウム塩等を用いることができる。
中でも揮発性の酸または塩基の雰囲気中に行うのが、反応後の酸塩基の系外への除去の容易さを考えると好ましい。
脱離反応を行なう際の雰囲気については、上記触媒の有無に関わらず大気下においても行なうことが可能であるが、酸化等の副反応および水分の影響を除くため、さらに脱離した成分の系外への排除を促すために、不活性ガス雰囲気下また減圧下で行なうことが望ましい。
脱離性置換基となるアシルオキシ基等の形成方法については、後述のアルコールとカルボン酸クロライドもしくはカルボン酸無水物を反応させるまたはハロゲン原子とカルボン酸銀もしくはカルボン酸−4級アンモニウム塩の交換反応によってカルボン酸エステルを得る方法以外にも、ホスゲンとアルコールを反応させ炭酸エステルを得る方法、アルコールに二硫化炭素を加えた後、ヨウ化アルキルを反応させキサントゲン酸エステルを得る方法、三級アミンと過酸化水素あるいはカルボン酸を反応させアミンオキシドを得る方法、アルコールにオルトセレノシアノニトロベンゼンを反応させセレノキシドを得る方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[3.置換基脱離化合物の製造方法]
本発明に係わる製造方法は従来の公知の方法によって製造することが可能であるが、その中核となる脱離性置換基および脱離性置換基を含む化合物の製造方法は、本発明者らによって開示された特許文献(特願2009−209911号明細書、特開2009−275032号公報、特願2010−136363号明細書、特願2010−162750号明細書、特願2010−163865号明細書)に明記されており、その製造方法を用いることができる。
本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体の具体的な製造方法の一部を示す。
化合物の同定は、NMRスペクトル〔JNM−ECX(商品名)500MHz、日本電子製〕、質量分析〔GC−MS、GCMS−QP2010 Plus(商品名)、島津製作所製〕、精密質量分析〔LC−TofMS、Alliance−LCT Premier(商品名)、Waters社製〕、元素分析〔(CHN)(CHNレコーダーMT−2、柳本製作所製)、元素分析(硫黄)(イオンクロマトグラフィー;アニオン分析システム:DX320(商品名)、ダイオネクス製〕を用いて行った。
<例示化合物4の合成>
下記合成経路により、例示化合物4を合成した。
Figure 2013026448
100mlフラスコに、Advanced Materials,2009 21213−216.記載の方法で合成したジチエノベンゾジチオフェンを0.500g(1.653mmol)入れ、アルゴン置換した後、THF30mlを加えた。次いで、−20℃に冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液(4.133mmol)を滴下し1時間撹拌した。
さらに、−78℃に冷却し、DMF2.5mlを加えて30分撹拌した後、希塩酸を加え、室温に戻した。析出した固体を濾取し、水、メタノール、酢酸エチルで洗浄した。減圧下乾燥し、ジアルデヒド体を0.392g得た。(収率66%)
次に、25mlフラスコに、上記ジアルデヒド体を0.100g(0.279mmol)入れ、アルゴン置換した後、THFを2ml加えて0℃に冷却した。この溶液に、ベンジルマグネシウムクロライドの2.0MのTHF溶液を0.56ml(1.116mmol)滴下した後、室温に戻して4時間攪拌した。
次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、THFを加え、有機層を飽和食塩水で洗浄した。次いで、溶媒を減圧留去した後、ジオール体を含む残渣を、そのまま次の反応に用いた。
100mlフラスコに、上記残渣、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン3.4mg(0.028mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン2ml及び塩化ピバロイル0.136ml(1.116mmol)を加え、室温で2日間撹拌した。
次いでTHFを加えた後、この溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液の順に用いて洗浄した。次いで溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の例示化合物4を、無色の結晶として0.174g得た。
得られた例示化合物4は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。例示化合物4の同定データを次に示す。
H NMR(CDCl,TMS)δ/ppm:1.14(18H,s),3.25〜3.38(4H,m),6.26〜6.31(2H,m),7.17(2H,s),7.2〜7.3(10H,m),8.23(2H,s).
IR(KBr)ν/cm−1:1717(νC=O)
<例示化合物1の合成>
Figure 2013026448
100mlフラスコに、ジオール体(2.790mmol)、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン34mg(0.279mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン20ml及び塩化ヘキサノイル1.56ml(11.16mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。次いでトルエンを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残渣をリサイクル分取GPC(日本分析工業社製)により精製し、例示化合物1を、無色の結晶として0.44g得た。得られた例示化合物1は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
<例示化合物1の熱分析>
例示化合物1のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜240℃で、ヘキサン酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441号明細書に記載されている、上記特定化合物3の融点に一致した。
<例示化合物86の合成>
Figure 2013026448
塩化ヘキサノイルの代わりにクロロギ酸アミルを用いた以外は、例示化合物1と同様の方法により、例示化合物86を合成した。得られた例示化合物86は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
<例示化合物86の熱分析>
例示化合物86のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜190℃で炭酸エステル部位の脱離に由来する重量減少(ペンタノールと二酸化炭素のそれぞれ2分子に相当、理論減少量34.3%、実測減少量33.3%)が観測された。また、さらに昇温すると360.3℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441号明細書に記載されている、上記特定化合物3の融点に一致した。
<例示化合物87の合成>
Figure 2013026448
50mlフラスコに、2−メチル−6−ニトロ無水安息香酸を1.1g(3.30mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジンを67mg(0.55mmol)入れ、アルゴンガスで置換した後、トリエチルアミンを0.84ml(6.05mmol)、THFを15ml、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を0.291ml(3.3mmol)加えて、室温で30分間攪拌した。次いで、THF20mlにジオール体を600mg(1.1mmol)溶解させた溶液を加えて、室温でさらに24時間攪拌した。次いで反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで4回抽出を行った。
4回の抽出液を併せて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で2回、飽和食塩水(50ml)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで溶媒を減圧留去し、粗生成物として褐色のオイル(収量1.2g)を得た。
これをカラム精製〔固定相:塩基性アルミナ(活性度II)、溶離液:トルエン〕し、黄色の固体(収量350mg)を得た。続いて、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製LC−9104、溶離液:THF)で精製し、黄色の結晶(100mg)を得た。
最後に、この結晶をTHF/MeOHから再結晶することにより、淡黄色の結晶として、目的物である例示化合物87を収量60mgで得た。
この結晶の純度をLC/MS(ピーク面積法)により測定したところ、99.9モル%以上であることが確認された。例示化合物87の同定データを次に示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS)δ/ppm:3.16(q,4H,J=10.3Hz),3.31(dd,2H,J=7.5Hz,J=6.3Hz),3.40(dd,2H,J=6.3Hz,J=8.0Hz),6.38(t,2H,J=7.5Hz),5.93(t,1H,J=5.2Hz),7.21〜7.25(8H),7.28〜7.31(4H),8.25(s,2H)
<例示化合物88の合成>
Figure 2013026448
100mlフラスコに、ジオール体を0.500g入れ、系内をアルゴン置換した。DMF20ml、THF20mlを加え、0℃に冷却した。水素化ナトリウム(55%パラフィン分散)N,N−ジメチルアミノピリジンを17mg及び無水酢酸を0.44ml加えて、室温0.23gを少しずつ加えた後、室温で0.5時間撹拌した。この溶液にヨードメタン0.32mlを滴下した後、さらに室温で5時間撹拌した。反応溶液に水を加えた後、トルエンで抽出した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒減圧留去した。
リサイクル分取GPCで精製し、例示化合物88を無色の結晶として得た。得られた例示化合物88は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に溶解した。
<例示化合物88の熱分析>
例示化合物88のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、170〜320℃で、メタノール2分子に相当する重量減少(理論減少量11.2%、実測減少量13.9%)が観測され、前記特定化合物3へ変換した。
<例示化合物30の合成>
Figure 2013026448
100mLの丸底フラスコに、ヨード体(973mg,2.0mmol)、ジトリチメチルスズ体(466mg,1mmol)、DMF(10mL)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(24.4mg、0.08mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で20時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、セライト濾過で不溶物を除去し、水を加え、有機層を分離した。水層はクロロホルムで3回抽出を行ない、合わせた有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、赤色の液体を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定層:(中性シリカゲル(関東化学製)+10wt%フッ化カリウム,溶媒:ヘキサン/酢酸エチル、9/1→8/2、v/v)にて精製することにより、黄色の固体を得た。これをヘキサン/エタノールから再結晶することにより、黄色の固体として例示化合物30を得た(収量680mg,収率79.3%)。
以下に例示化合物30の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):0.87−0.89(m,12H),1.28−1.33(m,16H),1.61−1.69(m,8H),1.96−2.01(m,4H),2.28−2.36(m,12H),6.08(d,4H,J=12.1Hz),7.37(d,2H,J=8.6Hz),7.48(s,2H),7.57−7.59(m,4H)
元素分析(C5064):C,69.92;H,7.67;O,14.85;S,7.44(実測値)、C,70.06;H,7.53;O,14.93;S,7.48(理論値)
融点:113.7−114.7℃
以上の分析結果から、合成したものが、例示化合物89の構造と矛盾がないことを確認した。
<例示化合物57および58の合成>
Figure 2013026448
100mLの丸底フラスコに、ヨード体(550mg、1.49mmol)、時トリメチルスズ体(346mg、0.74mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略、10mL)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol。濾液を、シリカゲルパッド(厚さ3cm)を通した後、濃縮し、赤色の固体を得た。これをメタノール、ヘキサンで洗浄することで黄緑色の固体を得た(収量235mg)。
リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製、LC−9104)にて分離精製することにより、黄色の結晶として例示化合物57および化合物58を得た[化合物57:収量85mg、化合物58:収量110mg]。
〔化合物57の分析結果〕
以下に化合物57の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):0.86(t,6H,J=6.9Hz),1.21−1.31(m,8H),1.57−1.63(m,4H),2.27(td,2H,J=7.6HzJ=1.7Hz),2.60−2.70(m,4H),5.95(t,1H,J=5.2Hz),6.03−6.09(m,4H),6.63(d,2H,J=9.7Hz),7.40(d,4H,J=8.1Hz),7.49(s,2H),7.491(dd,2H,J=7.7Hz,J=2.3Hz)
精密質量(LC−TofMS)(m/z):624.232(実測値),624.237(計算値)
〔化合物58の分析結果〕
以下に化合物58の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):0.86(t,3H,J=7.5Hz),1.22−1.32(m,4H),1.57−1.64(m,2H),2.28(td,2H,J=7.7HzJ=1.2Hz),2.62−2.72(m,2H),6.03−6.10(m,2H),6.63(d,1H,J=9.8Hz),7.40−7.42(m,2H,),7.46−7.52(m,3H),7.53(s,1H),7.61(s,1H),7.79(dd,2H,J=8.6HzJ=1.7Hz),7.84(d,1H,J=8.1Hz),7.88(d,2H,J=8.1Hz),8.07(d,1H,J=8.1Hz),
精密質量(LC−TofMS)(m/z):508.149(実測値),508.153(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物57、及び、化合物58の構造と矛盾がないことを確認した。
<例示化合物89の合成>
下記反応式(スキーム)に従って例示化合物89を合成した。
Figure 2013026448
100mLの丸底フラスコにジエチニル体(275mg,0.785mmol)、ヨード体(750mg,1.65mmol)、ヨウ化銅(20.0mg)を入れ、THF(30mL)、ジイソプロピルエチルアミン(1.5mL)を加え、アルゴンガスで置換を行った後、PdCl(PPh(16.6mg)を加え、室温で72時間攪拌した。
ジクロロメタン(100mL)、水(100mL)を加えて有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を水、次に飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、溶液をアルミナパッド(活性度II(水分含有量3%))に通じ、再度濃縮し、黄色のオイルを得た。これをリサイクルGPC(日本分析工業社製)により精製を行い、黄色の固体として、例示化合物89を得た。(収量273mg,収率34.7%)
[例示化合物89の分析結果]
以下に例示化合物89の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):0.74−0.83(m,12H),1.10−1.32(m,24H),1.36−1.43(m,4H),1.50−1.60(m,4H),2.2−2.32(m,2H),2.56−2.62(m,2H),2.65−2.71(m,2H),6.03−6.08(m,4H),6.56(d,2H,J=9.0Hz),7.33(s,2H),7.36−7.41(m,4H),7.48(s,2H),8.28(s,2H)
精密質量(LC−TofMS)(m/z):714.336(実測値),714.340(計算値.)
質量分析:GC−MSm/z=1003(M+),603(熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、例示化合物89の構造と矛盾が無いことを確認した。
以下、理解を容易にするため、本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体からπ電子共役系化合物への変換反応について、具体例を用い説明する。
Figure 2013026448
一般式で示したπ電子共役系化合物前駆体(1)(5mg)を、シリコンウエハを介して任意の温度(150,160,170,180,220,230,240,260℃)に設定したホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行った。
上記サンプルおよび加熱前のπ電子共役系化合物前駆体(1)、および別ルートで合成および精製したπ電子共役系化合物(2)のIRスペクトル(KBr法、Spectrum GX(商品名)、Perkin Elmer社製)を測定した。その結果を、図1に示す。
例示化合物30の240℃の加熱条件において、−O−(1156cm−1およびC=O(1726cm−1))の吸収が消失し、新たな吸収(810,738,478cm−1、芳香族)の存在が確認された。そして、これはπ電子共役系化合物(2)のスペクトルと一致する。
また、π電子共役系化合物前駆体(1)の熱分解挙動を、TG−DTA(リファレンスAl,窒素気流下(200mL/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製)を用いて25℃から500℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。その結果を図2に示す。
TG−DTAにおいて160〜290℃にかけて、56.7%の重量減少が見られた。これはカプロン酸4分子(理論値54.2%)とほぼ一致する。また、357.7℃に融点の存在が認められた。これはπ電子共役系化合物(2)の値と一致する。
以上の結果からπ電子共役系化合物前駆体(1)が加熱によりπ電子共役系化合物(2)へと変換されることが示された。
また、脱離反応の閾値は240℃前後であることも示された。
Figure 2013026448
π電子共役系化合物前駆体としては前記(4)に示すものを用い、以下に示す方法で製膜した。基板には、膜厚300nmの熱酸化膜が付いたシリコンウェハー(Nドープ)を用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。その後、π電子共役系化合物前駆体(4)のクロロホルム溶液(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。こうして得られた有機半導体前駆体膜を、230℃に設定されたホットプレート上に2時間、静置することで、π電子共役系化合物(5)への変換を行った。
一方、上記とは別の製膜方法として真空蒸着を用い、π電子共役系化合物(5)の製膜を行った。尚、この製膜方法においてπ電子共役系化合物(5)は、π電子共役系化合物前駆体(4)から変換されたものでは無く、直接π電子共役系化合物(5)を合成し、用いた。また、基板には、上記スピンコートにて使用したものと同様のものを用い、背圧9.2*10^−5Pa、基板温度180℃、蒸着レート0.03Å/sの条件下で、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物膜を作製した。
また、比較のため、真空蒸着法と同様に(π電子共役系化合物前駆体(4)から変換を経ずに)、直接合成したπ電子共役系化合物(5)の単結晶作製を行った。単結晶の作製方法としては、例えば特許文献(特開2008−53659)に示されているような液相成長法や、非特許文献(小野昇 低分子有機半導体の高性能化 サイエンス&テクノロジー p51)にあるような気相成長法が挙げられる。ここでは、一般的な気相成長法であるPhysical Vapor Transport法を用い、π電子共役系化合物(5)の単結晶作製を行った。
図3には前述した気相成長法にて作製したπ電子共役系化合物(5)の単結晶を、光学顕微鏡にて観察した結果を示す。図3の顕微鏡写真から、得られた単結晶は平板状の形状を有していることが分かった。さらに図3中のθ1に示すような、平板結晶の適当な角の角度を測定したところ、θ1=130度であった。
図4には、前述した真空蒸着法にて製膜したπ電子共役系化合物(5)の膜を、走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示す。その結果、分子が2次元状に広がって成長している様子が見られた。また、各ドメインには階段状の構造物が見られ、単分子単位で逐次的に成長していることが推察された。
一方、図5には、前述したスピンコート法にて製膜したπ電子共役系化合物(5)の膜を、走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示す。その結果、平板状の結晶が敷き詰まった様な膜構造が見られた。さらに、図5中のθ2に示すような、平板結晶の適当な角の角度を測定したところ、θ2=130度であった。この値は上述した気相成長法にて作製した単結晶の角度と一致しており、スピンコート膜で見られた平板結晶と、気相成長にて作製した単結晶は同様の晶癖を有することが示唆された。よって、スピンコート膜は、気相成長で作成した単結晶と同様の結晶が敷き詰まった膜であることが推察された。
以上のことから、π電子共役系化合物(5)の膜は蒸着等の真空プロセスを用い製膜することが可能であるが、その外観はπ電子共役系化合物前駆体(4)から変換した膜とは大きく異なり、各種分析法により、その製造方法を判別することは可能である。
尚、上記具体例では、一例としてπ電子共役系化合物前駆体の脱離反応を加熱により実施する方法を挙げたが、本発明においては、活性エネルギー線の照射により脱離反応を行う。活性エネルギー線を用いることで、基板に対して過剰な加熱を行うことなく変換が可能であることから、耐熱性の乏しい基板を使用することが出来る。
本発明が開示する製造方法には、π電子共役系化合物前駆体からなる薄膜の形成行程と、活性エネルギー線の照射行程とが含まれる。以下、各工程について説明する。
薄膜形成工程においては、支持基板上に有機半導体前駆体の薄膜が形成される。本工程に用いられる薄膜形成方法は、π電子共役系化合物前駆体の剥離が容易に生じないように支持基板上に形成可能なものであれば特に限定されるものではない。しかし、先述のとおり有機半導体材料の印刷法、塗布法等の生産性に優れた方法で薄膜形成であるメリットを生かし、π電子共役系化合物前駆体を溶媒に溶解させた溶液を塗布するプロセスを用いることが好ましい。
例えば、塗布方法としては慣用のコーティング方法、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、滴下法等が挙げられる。また、印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティングなどが挙げられる。これらの塗布方法のうち、塗布量を制御して所望の膜厚の成膜ができるという点で好ましい塗布方法は、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット法である。
π電子共役系化合物前駆体を溶解するために用いられる有機溶媒は有機半導体材料が反応したり、析出したりしなければ特に限定されない。また、2種以上の有機溶媒を混合して用いても良い。ここで、溶媒には、塗膜表面の平滑性や膜厚の均一性を考慮に入れた溶媒を選択することが望ましい。例えば、π電子共役系化合物前駆体A−(B)mにおいて可溶性置換基Bが極性基である場合、極性基に親和性の高いメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒等が使用出来る。また、π電子共役系置換基Bと比較的親和性のあるトルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等を用いても良い。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
これらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行うことが望ましい。π電子共役系化合物前駆体と溶媒からなる溶液の濃度は所望の膜厚によって任意に調節されるが、好ましくは0.01重量%以上10重量%以下である。
以上の操作によって得られる有機半導体膜の膜厚は3nm以上10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20nm以上1μm以下である。
次に、本工程で用いられる支持基板について説明する。支持基板の材料としては、前駆体薄膜が剥離することなく形成されるものであれば特に限定はされないが例えば、ガラス、シリコン、樹脂、あるいはそれらの複合素材等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることによりゲート電極を兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできる。
中でも、樹脂材料からなる板やフィルム、樹脂と無機材料の複合材料など各種組み合わせからなる複合材等を用いると、素子に可撓性を持たせることができる上、得られる積層体が軽量かつ柔軟なものになることから特に好ましい材料であるといえる。
本工程に用いられる支持基板は樹脂を含んでいても良く、樹脂の含有量は特に制限されないが、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上である。樹脂材料としては、このような材料としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂が挙げられる。
上記樹脂材料は、1種単独でも2種類以上を組みあせて用いることができる。また、樹脂材料の他にSiO2などの微粒子等を含有させることもできる。充填剤の配合量は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。
支持基板の厚みは、用途により適宜変えることができるが、下限として通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、上限としては、通常1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。支持基板の厚みが1μm以下であると、プロセス上のハンドリングが困難になり、また1mm以上では、デバイス化した際の厚み、重量がともに大きくなるため好ましくない。
支持基板は、加熱による前処理を行ったものが好ましい。加熱による前処理によって、支持基板の寸法変化率の低減が図れるためである。この前処理としては、デバイスを作製する際の加熱処理温度またはそれよりも高い温度で寸法変化率が十分に小さくなるまで加熱することが望ましい。
次に、本発明においては、上記薄膜形成工程において形成されたπ電子共役系化合物前駆体からなる薄膜に対して活性エネルギー線を照射する照射工程が行われる。活性エネルギー線の照射により、π電子共役系化合物前駆体がπ電子共役系化合物へと変換される。
その際、基板に対して過剰な加熱を行うことなく変換が可能であることから、耐熱性の乏しい基板を使用することが出来る。
ここで、活性エネルギー線は、上記π電子共役系化合物前駆体からなる薄膜をπ電子共役系化合物へ変換するこが出来るものであれば特に限定されず、従来公知の線源、照射方法の中から好ましいものを適宜選択すればよい。例えば、活性エネルギー線とはラジオ波、マイクロ波、テラヘルツ波等の電波、紫外線、可視光線、赤外線等の光、X線、γ線等の電波や光以外の電磁波、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。
本発明においては、取扱いの容易性等の観点から活性エネルギー線が光であることが好ましく、中でも光の照射位置、照射強度、照射時間等の照射条件が正確に制御出来る点からレーザー光を用いることが好ましい。
レーザー光としてはルビーレーザー、YAGレーザー、Nd:YAGレーザー等に代表される固体レーザー、色素レーザー等に代表される液体レーザー、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、エキシマレーザー等に代表される気体レーザー、及び半導体レーザー、自由電子レーザー等を用いることが出来る。
一般に大気中に伝播するレーザー光は、気体分子による吸収や散乱により、減衰することが知られている。そのため、大気中で長距離を伝送する用途には、気体分子による吸収の小さな波長領域において発振波長をもつ赤外線レーザーが用いられる。その中でも炭酸ガスレーザーは、大気中を伝送させる用途によく用いられるレーザーのひとつである。本発明は、π電子共役系化合物前駆体を大気下でπ電子共役系化合物へ変換した場合であっても良好な特性を示すといった効果を有している点を踏まえると、大気下で減衰せず効率良く、エネルギー付与が可能な赤外線レーザーが好適である。
一方、活性エネルギー線は、π電子共役系化合物前駆体に直接的または間接的に作用するものである必要がある。直接的に作用させる場合、用いる光の波長はπ電子共役系化合物前駆体が有する吸収波長領域内であれば良い。間接的に作用させる場合、照射された活性エネルギー線はπ電子共役系化合物前駆体から成る層以外で吸収され、熱エネルギーに変換される。その結果、π電子共役系化合物前駆体が加熱され、π電子共役系化合物へ変換されることになる。その際、効率的に活性エネルギー線を吸収し、熱エネルギーへと変換する機能を有する光吸収層を設けても良い。但し、より効率的に変換反応を行うためには、π電子共役系化合物前駆体に活性エネルギー線を直接作用させる方法が好ましく、さらには有機半導体前駆体において脱離反応が生じる部位に直接作用させる方法が好ましい。
このように、活性エネルギー線を脱離反応部位に直接作用させることで、変換時の基板や有機半導体膜に対する熱的な負荷を低減することが出来る。例えば例示化合物1においては、活性エネルギー線の照射により脱離反応が生じるエステル結合部位に、直接作用出来る線源が好ましい。つまり、エステル結合の吸収波長領域に発振波長をもつ活性エネルギー線が好適であり、その例としては炭酸ガスレーザーが挙げられる。
また、活性エネルギー線の発振方式は、断続的にレーザー光を出すパルス発振と、連続的にレーザー光を出す連続発振のどちらでも構わない。さらに、必要であればレンズで集光してエネルギー密度を上げることが出来る。
尚、本発明において、活性エネルギー線は上述した薄膜形成工程において形成された薄 本発明における活性エネルギー線の照射強度、及び照射時間はπ電子共役系化合物前駆体の種類、膜厚、及び層構成等から適宜選択でき、π電子共役系化合物前駆体をπ電子共役系化合物へ変換出来る照射条件であれば構わない。また、活性エネルギー線の照射は必要に応じ、複数回行っても良い。
尚、本発明において、活性エネルギー線は上述した薄膜形成工程において形成された薄膜の全面にわたって照射しても、マスク等を用いパターン状に照射してもよい。さらに、照射後、未照射部分の除去や、脱離成分の除去を目的として、洗浄工程を設けてもよい。
また、上記照射工程は酸または塩基の存在下で行っても良い。酸や塩基は脱離反応の触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加しても良いし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行っても良いし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
本発明が開示する製造方法は、上述した薄膜形成工程および照射工程以外にも、必要に応じて以下に示すような工程が行われてもよい。
例えば、上記薄膜形成工程の前に、基板上に種々の機能層が形成される機能層形成工程が行われていてもよい。具体的には、絶縁体層やゲート電極層、さらには、熱遮断層を形成する工程を有するものであってもよい。熱遮断層は、予めπ電子共役系化合物前駆体を形成し、これに熱を加えてπ電子共役系化合物を形成する場合において、熱エネルギーを基板側に熱が伝わらないようにするといった作用を有する。したがって、比較的耐熱性の低い、安価な汎用樹脂製の基板を用いた場合でも問題無く製造することができるといった利点を有する。また、有機半導体膜に隣接するように光吸収層を形成する光吸収層形成工程を上記照射工程の前に行ってもよい。この光吸収層は、光を照射してπ電子共役系化合物前駆体を加熱する際、照射された光を効率的に吸収して熱に変換することができる機能を有する。
上記製造方法により得られる有機膜、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
以下、電子デバイスの一例として電界効果トランジスタ(FET)について詳細に説明する。
図6(A)〜(D)には、本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を示す。有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)および図示しない支持体(基質)上にゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。ゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできる。有機薄膜トランジスタの利点であるフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等を考慮した場合、プラスチックシートを支持体として用いることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
有機半導体層の製膜方法には、先述の薄膜形成工程と同様、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布する方法が挙げられる。有機溶媒の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、前駆体A−(B)m材料1重量部に対して、10〜200000重量部であることが好ましい。
また、塗工液には、さらに、本発明の目的達成を損なわない程度の若干量の樹脂成分、カルボエステル基分解促進のための揮発性又は自己分解性の酸、塩基材料を含んでしてもよい。また、トリクロロ酢酸(加熱によりクロロホルムと炭酸ガスに分解)、トリフロロ酢酸(揮発性)のような強酸性の溶媒は、弱いルイス酸であるカルボエステル基の追い出しに効果があるので好ましく用いられる。
これら前駆体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
その後に、先述の照射工程を経て、π電子共役系化合物前駆体をπ電子共役系化合物へと変換して、有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層が形成される。
有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。有機半導体薄膜の厚みは、一般に100μm以下、特に5〜1000nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いても良い。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けても良い。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していても良い。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子やICタグ等のデバイスとして利用することが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
[実施例1]
例示化合物1を用いて、以下の要領で、図6−(C)に示す構造の電界効果型トランジスタを作製した。膜厚300nmの熱酸化膜が付いたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、例示化合物1のクロロホルム溶液(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。こうして得られた有機半導体前駆体膜にCO2レーザー(発振波長10.6μm、パワー6W、15s)を大気下で照射することでπ電子共役系化合物前駆体からπ電子共役系化合物への変換を行った。
照射後、シャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa,蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm,チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位のπ電子共役系化合物およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られた素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。その特性図を図7に示す。さらに、有機薄膜トランジスタの電流―電圧(I−V)特性における飽和領域から、電界効果移動度を求めた。電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)^2/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
こうして得られた電界効果移動度は0.41cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは8.93V、ON/OFF比は5.99E+03であった。
図8には、作製した素子の偏向顕微鏡写真を示す。
[実施例2]
例示化合物4を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.11cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは−3.70V、ON/OFF比は1.00E+04であった。
[実施例3]
例示化合物86を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.32cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは−3.96V、ON/OFF比は4.76E+04であった。
[実施例4]
例示化合物88を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.74cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは0.01V、ON/OFF比は5.80E+05であった。
[実施例5]
例示化合物30を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.092cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは4.20V、ON/OFF比は7.72E+05であった。
[実施例6]
例示化合物57を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.10cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは−10.3V、ON/OFF比は4.13E+05であった。
[実施例7]
例示化合物58を用いて、実施例1と同様に、有機薄膜トランジスタを作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、電界効果移動度は0.10cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは−11.2V、ON/OFF比は6.54E+05であった。
[比較例1]
例示化合物1を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例2]
例示化合物1を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、大気化でホットプレートを用い、230℃で2時間の加熱を行った。加熱後、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した。その結果を、図9に示す。電流―電圧(I―V)特性における飽和領域から計算された電界効果移動度μは1.3E−03cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは73.3V、ON/OFF比は2.62E+01であった。実施例1と比較し、移動度及びON/OFF比が大きく低下し、さらに閾値電圧が大きくシフトした。
[比較例3]
例示化合物4を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例4]
例示化合物86を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例5]
例示化合物88を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例6]
例示化合物30を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例7]
例示化合物57を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。
[比較例8]
例示化合物58を用いて、実施例1と同様に、π電子共役系化合物前駆体膜を作成した。
その後、活性エネルギー線の照射は行わず、実施例1と同様にソース、ドレイン電極を形成した。こうして得られた有機薄膜トランジスタの電気特性を評価した結果、半導体特性は示さなかった。これらの結果は、次表に纏められる。
Figure 2013026448
特開平5−55568号公報 特許第4219807号公報 特許第4306254号公報 特開2004−247716号公報 特開2009−81408号公報
Advanced Materials,11,480(1999). Technical report of IEICE. OME,106(439),65(2006). J.Appl.Phys.100,034502(2006) Appl.Phys.Lett.84,12,2085(2004)

Claims (11)

  1. 下記の一般式(I)で示される反応にしたがって、少なくともπ電子共役化合物前駆体A−(B)mを含む薄膜中の該前駆体A−(B)mが、活性エネルギー線の照射により、π電子共役系化合物A−(C)mと脱離性化合物X−Yに変換される工程を有することを特徴とする有機膜の製造方法。
    Figure 2013026448
    Figure 2013026448
    Figure 2013026448
    (ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、π電子共役系置換基Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
    上記一般式(I)、(II)及び(III)中、X,Yのうち一方は水素原子もしくは脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、Aと共有結合を介して連結している。)
  2. 前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、エーテル基またはアシルオキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜の製造方法。
  3. 前記活性エネルギー線の照射により、π電子共役化合物前駆体A−(B)mを加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機膜の製造方法。
  4. 前記活性エネルギー線は、π電子共役化合物前駆体A−(B)mが吸収する波長の光を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の有機膜の製造方法。
  5. 前記活性エネルギー線がレーザー光であることを特徴とする請求項4に記載の有機膜の製造方法。
  6. 前記レーザー光が炭酸ガスレーザーであることを特徴とする請求項5に記載の有機膜の製造方法。
  7. 前記置換基Aが、
    (i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物残基、
    および
    (ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基、
    からなる群から選択される少なくとも一つ以上のπ電子共役系化合物残基であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有機膜の製造方法。
  8. 少なくとも前記π電子共役系置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物から選択されるπ電子共役化合物の残基であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の有機膜の製造方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により得られた有機膜。
  10. 請求項9に記載の有機膜を用いた電子デバイス。
  11. 請求項9に記載の有機膜を用いた電界効果トランジスタ。
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