JP5807359B2 - 芳香環を有するπ電子共役系化合物を含有する膜状体の製法、及び該π電子共役系化合物の製法 - Google Patents

芳香環を有するπ電子共役系化合物を含有する膜状体の製法、及び該π電子共役系化合物の製法 Download PDF

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Description

本発明は合成が簡便であり有機溶媒に対して溶解性に富み、従来よりも更に低温のエネルギー付与により熱変換可能なシクロヘキサジエン環を含むπ電子共役系化合物前駆体から、特定の置換基を脱離して芳香環(例えばベンゼン環)を含むπ電子共役系化合物を含有する膜状体の製法、及び該化合物を簡便かつ高収率で製造する方法に関し、有機エレクトロニクス分野での応用、例えば、有機エレクトロルミセッセンス(EL)および有機半導体、有機太陽電池などの有機電子デバイス等の製造において有用であり、また有機顔料、有機色素の製膜の製造において有用である。
二重結合と一重結合が交互に並んだ形の部位を有するπ電子共役系化合物は高度に拡張されたπ電子系を有するため、ホール輸送、電子輸送性に優れ、例えば、エレクトロルミセッセンス材料、有機半導体材料(例えば特許文献1の特開平5−055568号公報、特許文献2のWO2006−077888号公報および非特許文献1のAppl.Phys.Lett.72,p1854(1998)、非特許文献2のJ.Am.Chem.Soc.128,p12604(2006)参照)や、有機色素、有機顔料等に広く応用されている。このようにπ電子共役系材料が広く用いられる中で、障害となるのはπ電子共役系化合物の多くは、平面性が高く剛直であるものが多いため、分子間の相互作用が非常に強固であり、水や有機溶媒への溶解性が乏しいことが挙げられる。例えば、有機顔料に関しては顔料の凝集にともない分散が不安定となる。またエレクトロルミネッセンス材料や有機半導体材料を例に取ると、難溶であるため溶液プロセスの適用が難しく、真空蒸着等の気相製膜が必要になるなどの問題があり、製造コスト、製造プロセスが煩雑になるといった問題があげられる。より大面積、高効率を考えると、スピンコート塗布、ブレードコート、グラビア印刷、インクジェット塗布、ディプコーティング塗布などの材料をあらかじめ溶解させることによる塗布によるウェットプロセスへの適応性が求められている。ただし、分子間の相互作用が非常に強固で、分子同士の隣接化、配列化や、凝集乃至結晶化し易いことは、伝導性に寄与するものであるので、概して、塗工製膜容易性と、得られた膜の伝導性とは相容れない場合が多い。この点は、当該技術を難しくしている1つの要因でもある。
これに対して、π電子共役系化合物を含む有機化合物を可溶化するような反応性置換基を導入した前駆体に対して、外部刺激を与えることによって置換基を脱離し、目的の化合物を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3の特開平7−188234号公報、特許文献4の特開2008−226959号公報、非特許文献3のNature,.388,p131,(1997)参照)。この方法は、例えば、顔料分子中のアミノ基やアルコール性又はフェノール性ヒドロキシ基がt−ブトキシカルボニル基(tBoc基)で修飾された構造の顔料前駆体について、加熱等することでtBoc基を脱離させるものである。しかし、この方法は置換基が窒素原子もしくは酸素原子に連結される必要があるため化合物に制限があった。さらに前駆体の保存性の観点からも改善が求められていた。
また、近年レトロディールスアルダー反応を利用して、溶媒可溶性の高い嵩高い置換基を有する前駆体から外部刺激を与えて可溶性付与基を脱離させることによって、ペンタセンやポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物へと変換する方法が精力的に研究されている。(例えば、特許文献5の特開2007−224019号公報、特許文献6の特開2008−270843号公報、特許文献7の特開2009−188386号公報、特許文献8の特開2009−215547号公報、特許文献9の特開2009−239293号公報、特許文献10の特開2009−28394号公報、非特許文献4のAdv.Mater.,11,p480(1999)、非特許文献5のJ.Appl.Phys.100,p034502(2006)、非特許文献6のAppl.Phys.Lett.84,12,p2085(2004)、非特許文献7のJ.Am.Chem.Soc.126,p1596(2004)参照)。
しかし、これらの例のうちペンタセン前駆体からはテトラクロロベンゼン分子等が脱離するが、テトラクロロベンゼンは、沸点が高く反応系外に取り除くことが難しいことに加え、その毒性が懸念される。また、ポルフィリン、フタロシアニンについてはいずれも煩雑な合成を必要とするため適用範囲が狭く、より簡便に合成可能な置換基の開発が必要とされている。
またその他にスルホン酸エステル系置換基を有し溶媒溶解性の高い前駆体に外部刺激を与えることで、置換基を脱離し、水素原子に置き換えることで、フタロシアニンへと変換する方法が提案されている(例えば特許文献11の特開2009−84555号公報、特許文献12の特開2009−88483号公報)。
しかし、この方法はスルホン酸エステルの極性が高いため非極性の有機溶媒への溶解性が十分ではなく、前駆体からの変換に要する温度も250℃〜300℃と比較的高いことが問題であった。
また、オリゴチオフェンの分子末端β位にアルキル鎖を有するカルボン酸エステルを導入することで可溶化し、これに熱を加えて脱離させることでオレフィン置換オリゴチオフェンやオレフィン置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンを得る方法が提案されている(例えば、特許文献13の特開2006−352143号公報、特許文献14の特開2009−275032号公報、前記非特許文献7のJ.Am.Chem.Soc.126,p1596(2004))。この方法は150℃〜250℃程度の加熱で脱離が起こるが、変換後の分子末端にオレフィン基(ビニル基、プロペニル基等)が生成し、これが熱や光によりシスートランスの異性化を伴うため、材料の純度の低下および結晶性が損なわれるという問題があった。また、反応性の高い末端オレフィン基の存在は、酸素や水分に対する安定性が低下すること、加えて高温下においてオレフィン基同士が熱重合反応を起こしてしまうという問題があった。
上記した従来化合物においては前駆体の溶解性、脱離成分の安全性、変換温度、変換後の化合物の安定性に問題が有り、また合成上においても所望の中間体を得ることが難しかった。
本発明者らは、前記課題に対して、脱離性基としてアシルオキシ基(具体的には、カルボン酸エステルを)構造を有するシクロヘキセン骨格をベースとしたπ電子共役系化合物前駆体(前駆体)とすれば、脱離後の構造が前述(オレフィン置換オリゴチオフェンやオレフィン置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)のようなオレフィン基ではなく、ベンゼン環となるためにシスートランスの異性化が生じないという点で上記課題を解決できることを見出し、既に特許文献15の特願2009−209911号明細書において開示している。しかし、エネルギー付与によって前駆体から脱離性基が脱離する温度は典型的には150〜250℃程度であるため、一部のプラスティックなど耐熱性の低い基板を用いる際には依然として課題があった。
本発明は上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、より合成が簡便で有機溶媒に対する高い溶解性を有し、従来よりも低いエネルギー(以降、「外部刺激」と称することがある。)で脱離性基の脱離反応が可能な新規なπ電子共役化合物前駆体を用い、該前駆体に対して、熱などの外部刺激を加えることで、脱離成分を生成しつつ、化学的に不安定な末端オレフィン基を生成することなく、ベンゼン環を含むπ電子共役系化合物を得る製造方法の提供を目的とする。また、この技術を利用し、難溶性π電子共役系化合物の連続した薄膜の効率的な製造方法の提供、加えて該薄膜の有機電子デバイス(特に有機薄膜トランジスタ)への応用を目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔14〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕π電子共役系化合物前駆体A−(B)mを含む溶媒の塗工液を基材に塗布して形成された塗工膜より、下記一般式(II)で示される脱離性置換基を脱離させA−(C)mで示されるπ電子共役系化合物を含有する膜状体を生成することを特徴とする膜状体の製造方法。
Figure 0005807359
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q乃至Q上の任意の原子と、A上の任意の原子とで共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
[式(I)、(Ia)、(II)中、XおよびYは水素原子もしくは脱離性置換基を表し、該XおよびYのうち一方は脱離性置換基であり、他方は水素原子である。Q乃至Qはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または、1価の有機基であり、QとQは水素原子、ハロゲン原子または、前記脱離性置換基以外の一価の有機基である。Q乃至Qは隣り合った基同士でそれぞれ結合して環を形成していてもよい。]
〔2〕前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、該XおよびYのうち一方は置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、他方は水素原子であることを特徴とする〔1〕に記載の膜状体の製造方法。
〔3〕前記塗工液の塗布が、インクジェット塗布、スピンコート法、溶液キャスト法、ディップコーティング法からなる群から選択される方法により行われることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の膜状体の製造方法。
〔4〕前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
〔5〕前記化合物A−(B)mより脱離する一般式(II)で示される脱離成分がハロゲン化水素または置換されていても良いカルボン酸または置換されていても良いアルコール、二酸化炭素のいずれかを含むことを特徴とする〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
〔6〕前記化合物A−(B)mが溶媒可溶性であり、前記脱離性置換基の脱離により生成する前記化合物A−(C)mが溶媒不溶性であることを特徴とする〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
〔7〕π電子共役系化合物前駆体A−(B)mより、下記一般式(II)で示される脱離性置換基を脱離させA−(C)mで示されるπ電子共役系化合物を生成することを特徴とするπ電子共役系化合物の製造方法。
Figure 0005807359
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q乃至Q上の任意の原子と、A上の任意の原子とで共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
[式(I)、(Ia)、(II)中、XおよびYは水素原子もしくは脱離性置換基を表し、該XおよびYのうち一方は脱離性置換基であり、他方は水素原子である。Q乃至Qはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または、1価の有機基であり、QとQは水素原子、ハロゲン原子または、前記脱離性置換基以外の一価の有機基である。Q乃至Qは隣り合った基同士でそれぞれ結合して環を形成していてもよい。]
〔8〕前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、該XおよびYのうち一方は置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、他方は水素原子であることを特徴とする〔7〕に記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
〔9〕前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物であることを特徴とする〔7〕又は〔8〕に記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
〔10〕前記化合物A−(B)mが溶媒可溶性であり、前記脱離性置換基の脱離により生成する前記化合物A−(C)mが溶媒不溶性であることを特徴とする〔7〕乃至〔9〕のいずれかに記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
〔11〕〔7〕乃至〔10〕のいずれかに記載の方法で製造されたものであることを特徴とする前記π電子共役化合物系化合物。
本発明の製造方法によれば、新規な溶媒可溶性のπ電子共役系化合物の前駆体を原料として用いるため、溶液プロセスに好適に対応することが可能であり、加えて熱、光などの外部刺激を与えることにより、該前駆体置換基脱離反応により溶剤可溶性を付与している置換基を脱離させることで、不安定な末端置換基が存在することなく、ベンゼン環を含むπ電子共役系化合物を簡便かつ高収率で製造することができる。加えて、本発明のπ電子共役系化合物前駆体の置換基脱離反応は従来のπ電子共役系化合物前駆体(例えば、シクロヘキセン骨格をベースとしたπ電子共役系化合物前駆体)よりも低いエネルギー(低温)で行うことが可能である。また、π電子共役系化合物の前駆体と溶媒を含む溶液を塗布して有機膜とした後、置換基脱離反応を行うことによりπ電子共役系化合物(有機半導体を含む)からなる有機膜を得ることができる。このような有機膜(有機半導体膜を含む)を用いることにより有機電子デバイス(特に有機薄膜トランジスタ)を提供することが可能である。
本発明に係わる有機薄膜トランジスタの構造例を示す概略図である。 表示画像素子を駆動するためのトランジスタアレイの一例の断面図である。 表示画像素子を駆動するためのトランジスタアレイの一例を表す図である。 実施例26において化合物(実1)の熱分解挙動および相変化挙動を観察した結果を示す図(TG−DTA)である。 実施例27において化合物(実2)の熱分解挙動および相変化挙動を観察した結果を示す図(TG−DTA)である。 実施例28において本発明の化合物(実1)または化合物(実2)を用いて作製した薄膜の偏光顕微鏡写真である。 実施例29で作製した本発明の有機薄膜トランジスタ(FET素子)の電流―電圧(I−V)特性図である。
以下、本発明について実施の形態を示して、説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[π電子共役系化合物前駆体および本発明の製造方法により得られる膜状体、並びにπ電子共役系化合物]
本発明の膜状体、並びにπ電子共役系化合物の製造方法においては、特定の溶媒可溶性置換基を有する「π電子共役系化合物前駆体」に対して、外部刺激を加え特定の置換基を脱離させることにより、目的とする膜状体、並びにπ電子共役系化合物を製造することが特徴である。前記「π電子共役系化合物前駆体」はA−(B)mで表される。
ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q乃至Qの位置において、A上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。これに外部刺激を加えることにより、溶媒可溶性置換基Bは特定の脱離性置換基XおよびをX−Y(XとYが結合した分子)の形で脱離し、代わりに一部がベンゼン環に置き換わった一般式(Ia)で示される置換基Cへと変換されるとともに、π電子共役系化合物A−(C)mで表される化合物膜状体、並びに該化合物が得られる。
Figure 0005807359
(Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
[式(I)、(Ia)、(II)中、XおよびYは水素原子もしくは脱離性置換基を表し、該XおよびYのうち一方は脱離性置換基であり、他方は水素原子である。Q乃至Qはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または、1価の有機基であり、QとQは水素原子、ハロゲン原子または、前記脱離性置換基以外の一価の有機基である。Q乃至Qは隣り合った基同士でそれぞれ結合して環を形成していてもよい。]
まず、溶媒可溶性置換基Bと脱離変換後の置換基Cについて説明する。
前記式(I)、(II)においてXおよびYで表される脱離性置換基は、水素原子または置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基であり、XおよびYのうち少なくとも一方は、脱離性置換基即ち、置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基などであり、他方は水素原子である。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基としては、炭素数1以上の置換されていても良い直鎖または環状の脂肪族アルコールおよび炭素数4以上の芳香族アルコール等、アルコール由来のエーテル基が挙げられる。また、前記エーテル中の酸素原子が硫黄原子に置き換わったチオエーテル基も含めることができる。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ピバロイル基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、ラウリロキシ基、トリフルオロメトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等が挙げられ、エーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオエーテル類も同様に含まれる。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2以上のハロゲン原子を含んでいてもよい直鎖または環状の脂肪族カルボン酸および炭酸ハーフエステル、炭素数4以上の芳香族カルボン酸等、カルボン酸および炭酸ハーフエステル由来のアシルオキシ基が挙げられる。また、前記カルボン酸の酸素原子が硫黄に置き換わったチオカルボン酸も含めることができる。具体的には、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ、3,3,3−トリフルオロプロピオニルオキシ、ペンタフルオロプロピオニルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロブタノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
加えて、上記例示したアシルオキシ基のカルボニル基とアルキル基あるいはアリール基の間に酸素原子または硫黄原子を挿入した、炭酸ハーフエステル由来の炭酸エステルも挙げることができる。加えて、エーテル結合部位およびカルボニル部位の酸素の一つ以上を硫黄に置き換えた対応するアシルチオオキシ類、チオアシルオキシ類も同様に含まれる。
上記概念の脱離性置換基XおよびYの一部を下記に例示する。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
Figure 0005807359
Figure 0005807359
Figure 0005807359
Figure 0005807359
本発明における置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基(脱離性を有する基)の導入により、有機溶媒に対する高い溶解性と、化合物の保存安定性を維持しつつ従来よりも低いエネルギー(加熱)で脱離性基の脱離反応を確実に行うことができる。
例えば、脱離性基として、置換または無置換の炭素数1以上のエーテル基およびアシルオキシ基に代えて炭素数1以上の置換されていてもよいスルホニルオキシ基、を導入することもできる。
尚、上記置換されていてもよいスルホニルオキシ基としては、炭素数1以上の直鎖または環状の脂肪族スルホン酸、炭素数4以上の芳香族スルホン酸等、スルホン酸由来のスルホニルオキシ基が挙げられる。具体的には、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、ピバロイルスルホニルオキシ基、ペンタノイルスルホニルオキシ基、ヘキサノイルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピオニルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等が挙げられ、エーテル部位の酸素原子が硫黄原子に置き換わったスルホニルチオオキシ基も同様に含むことができる。
また、本発明における前記一般式(I)、(Ia)中、Q乃至Qで表される基としては、π電子共役基であるA以外の場合、前述のように、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、あるいは一価の有機基(但し、Q乃至Qにおいては置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基以外の1価の有機基)が用いられるが、該一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロチオアリールオキシ基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。
これらの例としては、アルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基〕]、シクロアルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基〔例えば、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基〕]が挙げられる。
以下に説明する他の一価の有機基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
上記アルケニル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。これらの例としては、アルケニル基[好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素―炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1―オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基〕。]、シクロアルケニル基[上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基〕。]等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合からなる混合物であってもよい。
上記アルキニル基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素―炭素単結合を1つ以上三重結合としたものが挙げられる。このようなアルキニル基として、例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基〔例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等〕が挙げられる。
上記ヘテロアリール基としては、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物〔例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、2−ベンゾチエニル、2−ピリミジル等〕が挙げられる。
上記アルコキシル基およびチオアルコキシル基としては、好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アミノ基としては、好ましくはアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、〔例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基〕、アシルアミノ基[好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、〔例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基〕]、アミノカルボニルアミノ基[好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、〔例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基〕]等が挙げられる。
溶媒可溶性置換基Bおよび置換基Cについて、上記一般式(I)および(Ia)におけるQ乃至Qで表される一価の有機基としては、前述した範囲で表すことが可能であるが、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基であるか、または隣り合う基同士で環状構造を形成していることである。さらに好ましくは、前記環状構造が置換していても良いアリール基またはヘテロアリール基からなることである。置換基Bおよび置換基Cについて、該環の結合、縮環形式の一例としては下記I−(1)〜I−(42)に示すような構造が挙げられる。
Figure 0005807359
前述のように、XおよびYのうち少なくとも一方は置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であるが、このような[エーテル基またはアシルオキシ基]としては下記一般式(III)、(IV)で表される構造を有するものであることができる。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
ここで、Zは、上記一般式で表される構造式において、n=1の時は下記一般式(III−1)、(IV−1)のような構造となる。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
上記一般式で表される構造式において、n=2の時は下記一般式(III−2)、(IV−2)のような構造となる。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
この構造式の場合には、一方のアシルオキシ基が前記XまたはYの位置で置換され、他方のアシルオキシ基が同分子内もしくは他分子のX’またはY’(非表示)の位置で置換された構造を取り得る。
[上記式中、Zは酸素原子または硫黄原子であり、それぞれ同一であっても異なっていても良い。Rは、水素原子〔一般式(III)、(IV)でn=2の時は除く〕、または1価の有機基あるいは2価の有機基を示す。]
特に好ましくは、水素原子[一般式(III)、(IV)でn=2の時は除く]、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換または無置換のチオアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子[一般式(III)、(IV)でn=2の時は除く]、置換または無置換のアルキル基である。最も好ましくは、置換または無置換のアルキル基の時である。
脱離成分X−Yとしては、前記置換されていても良いエーテル基またはアシルオキシ基を構成する置換基の−O−結合または−S−結合部位を切断し末端に水素を置換した対応するアルコールおよびカルボン酸および炭酸ハーフエステルが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール基、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tertブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、トリフルオロメタノール、3,3,3−トリフルオロプロパノール、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロプロパノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロヘキサノール、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、tert−ブチルジメチルシリラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール等が挙げられ、エーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオール類も同様に含まれる。
前記カルボン酸および炭酸ハーフエステルとしては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、トリフルオロ酢酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、メチルハイドロゲンカーボネート、エチルハイドロゲンカーボネート、イソプロピルハイドロゲンカーボネート、ヘキシルハイドロゲンカーボネートなどが挙げられる。これら炭酸ハーフエステルは通常不安定であるため、対応するアルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサノール)と二酸化炭素まで分解されることがある。)また、同様にエーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオカルボン酸、チオ炭酸ハーフエステル類も同様に含まれる。
尚、参考として前述の置換もしくは無置換のスルホニルオキシ基としては下記一般式(V)で表される構造を有するものが例示される。
Figure 0005807359
上記一般式(V)におけるRとしては、前述のおよびQ乃至Qと同様の置換基が挙げられる。
例えば、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換または無置換のチオアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、シアノ基が例示される。
脱離成分X−Yとしては、前記スルホニルオキシ基を構成する置換基の−O−結合または−S−結合部位を切断し末端に水素を置換した対応するスルホン酸およびチオスルホン酸が挙げられ、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、ピバロイルスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサノイルスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3,3,3−トリフルオロプロピオニルスルホン酸基などが挙げられ、エーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオスルホン酸類も同様に含まれる。
上記一般式(III)乃至(V)における置換基R、Rに関しては前述の範囲のもであれば特に制限は無いが、溶媒可溶性や成膜性の観点からは、これら置換基としてある程度分子間相互作用を減少し、溶媒との親和性を高めるようなものであることが有利になってくるため、置換基の脱離前後における体積変化があまりに著しいと脱離反応における薄膜の均一性に問題が生じることが懸念される。そのため、適度な溶解性を維持しつつできるだけ小さい置換基である方が好ましい。
また、未だ定かではないが、R、Rはカルボニル酸素の負の分極の度合いが大きくなるような電子吸引性の置換基(たとえばハロゲンを有するアルキル基や、シアノ基を有する基)であることが脱離反応の効率化という点好ましいと考えられる。
次に、π電子共役系置換基Aについて説明する。置換基Aとしては、π電子共役平面を有するものであればいかなるものであっても良いが、具体的にはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環が好ましく、より好ましくは、
(i) 1つ以上の前記芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、または前記環同士が縮環された化合物、
(ii) (ii)、(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、上記(i)および(ii)より形成される群から少なくとも一つ以上選択される組み合わせで選ばれるπ電子共役系化合物、
が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
上記、縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましい。具体例(一部の例について一般式を併記する。)としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ピレン〔下記一般式(Ar3)〕、ペンタセン、チエノチオフェン〔下記一般式(Ar1)〕、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン〔下記一般式(Ar2)〕、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン〔BTBT;下記一般式(Ar4)〕、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン〔DNTT〕、ベンゾジチエノチオフェン〔TTPTT;下記一般式(Ar5)〕、ナフトジチエノチオフェン〔TTNTT;下記一般式(Ar6)、(Ar7)〕等の縮合多環化合物、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン等のような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類、等が挙げられる。
ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
Figure 0005807359
次に、π電子共役系置換基Aと溶媒可溶性置換基Bとの結合形式について述べる。Bは上記A上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している場合がある。置換位置については、B上の脱離性置換基の位置以外であれば、置換は可能である。ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
また、あるπ電子共役系置換基Aに対して共有結合を介して結合または縮合している、溶解性置換基Bの数は、当然いずれも、A上の置換あるいは縮環可能な原子の数に依存する。例えば、無置換のベンゼン環においては、最大で6つの置換位置で共有結合を介して結合が可能であり、最大6箇所で縮環可能である。しかしながら、A自体の分子の大きさ、溶解性に応じた置換数、分子の対称性、合成の容易さを考慮すると、下限として1分子内に含まれる本発明の溶解性置換基は2以上がより好ましい。一方、置換数があまり大きいと、溶解性置換基同士が立体的に混み入りすぎて好ましくないため、上限としては、分子の対称性、合成の容易さ、溶解性に応じた十分な置換数を考慮すると4以下が好ましい。
本発明の製造方法に用いられるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mは、上述のとおりπ電子共役系置換基Aと溶媒可溶性置換基Bから成り、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q1乃至Q6上の任意の原子と、A上の任意の原子とで共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。そして本発明のπ電子共役系化合物を含む膜状体、並びに該化合物の製造方法においては、上記前駆体の溶媒可溶性置換基Bから特定の化合物X−Yを置換基脱離反応により、脱離させ、ベンゼン環を有する置換基Cへと変換することで、π電子共役系化合物A−(C)mとする。
本発明のπ電子共役化合物前駆体は、上述のとおり脱離性の溶媒可溶性置換基を有し、これにより溶媒可溶化することが特徴である。
本発明において、「溶媒可溶性」とは、溶媒に対して、溶剤を加熱還流した後に室温まで冷却した状態で0.05wt%以上の溶解度を有することをいう。好ましくは0.1wt%以上であり、より好ましくは0.5wt%であり、最も好ましくは1.0wt%以上である。
また、置換基AおよびBの組合せによっては、π電子共役系化合物A−(C)nの溶媒に対する溶解性が変わってくる。
ここで、「溶媒不溶化」とは、前記溶媒可溶性の状態よりも1桁以上溶解度を低下させることをいう。具体的には、溶媒に対して、溶剤を加熱還流した後に室温まで冷却した状態で、0.05wt%以上の溶解度(溶媒可溶性)から0.005wt%以下に溶解度を低下させることが好ましく、0.1wt%以上の溶解度(溶媒可溶性)から0.01wt%以下に溶解度を低下させることがより好ましく、0.5wt%以上の溶解度(溶媒可溶性)から0.05wt%未満に溶解度を低下させることが特に好ましい、さらに最も好ましくは1.0wt%以上の溶解度から0.1wt%未満に低下させることが好ましい。そして、「溶媒不溶性」とは、溶媒に対して、溶剤を加熱還流した後に室温まで冷却した状態で0.01wt%未満の溶解度を有することをいい、0.005wt%以下であることが好ましく、0.001wt%以下であることがより好ましい。
上記「溶媒可溶性」及び「溶媒不溶性」の程度を規定するときの溶媒の種類は特に限定されず、実際に用いる溶媒及び温度により定めてもよいが、例えば、THFやトルエンあるいはクロロホルム、メタノールに対する溶解度(25℃)として特定することができる。ただし、本発明に用いられる溶媒がこれによって限定されるものではない。
前記XおよびYの脱離反応による変換の前後、即ち、前記一般式(I)で表される部分構造を有するπ電子共役化合物前駆体から前記一般式(Ia)で表される化合物部分構造を有する化合物(「特定化合物」あるいは「有機半導体化合物」と呼称する。)への変換により、これら化合物の溶解性が大きく変化する。即ち、特定化合物上に続けて異なる膜を積層する場合に、積層膜形成に用いる溶液の溶媒に侵されにくくなるため、有機薄膜トランジスタ、有機EL、有機太陽電池などのような有機電子デバイスの製造工程において有用である。
前記したπ電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として下記の化合物群(例示化合物1〜例示化合物42)を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基には脱離性置換基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも含む。
本発明のπ電子共役化合物前駆体の保存安定性については、脱離性の溶解性置換基が変換処理を行うまでの間に、意図せず外れることがないという意味である。形態は、固体のままであっても、溶媒に溶かしてインクやウェス状、あるいは前記インクから製膜された膜状であってもよい。
保存安定性の程度を規定するときの指標としては、固体やインクを一定温度(一般には20度程度)で一定条件(湿度50%、遮光下)の基、一定期間(例えば1ヶ月)放置した後の状態を分析することで決めることができる。意図せず脱離変換されてしまった分子を定量すればよい。
脱離反応は、エネルギー付与によるものであるから、低温下(例えば0度〜−100℃)や遮光下、不活性雰囲気下に保存するすることでその保存安定を高めることが可能である。好ましくは、遮光下、−40℃において脱離基の意図しない脱離(例えばLC純度99.5%の前駆体から、保存後に0.5%以上の新たな不純物が検出されないこと)が起こらないことであるが、より好ましくは0−5℃で起こらないこと、もっとも好ましくは5−40℃において起こらないことである。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
前記前駆体A−(B)mに熱などのエネルギーを付与(外部刺激を付与あるいは印加)することにより、後述の脱離反応を起こし、置換基XおよびYを脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)m(特定化合物と称する)の具体例を下記特定化合物1〜特定化合物29に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005807359
Figure 0005807359
[2.π電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法]
本発明のπ電子共役系化合物を含む膜状体の製法における中核部分は、前記脱離反応による該π電子共役系化合物の製造であるともいえるので、前記脱離反応について詳細に説明する。
本発明の製造方法の場合、プラスチックス、金属、シリコンウエハ、ガラス等の基質(支持体)上に、例えば塗工により形成された前駆体含有膜中に含まれ前述のように本発明の前記一般式(I)で表される前駆体は、エネルギー付与により前記一般式(Ia)で表される化合物(特定化合物)と前記一般式(II)で表される化合物(脱離成分)に変換する。
前記一般式(I)で表される化合物には置換基の立体的な配置が異なる異性体が複数存在するが、いずれも前記一般式(Ia)で示される特定化合物へと変換され、脱離成分は同一であることに変わりはない。
一般式(I)で表される化合物から脱離する基であるXおよびYは脱離性置換基と定義され、それらが結合して生成したX−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記脱離成分の沸点としては大気圧(1013hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下に、前記一般式(I)におけるXが置換されていても良いアシルオキシ基であり、YおよびQ,Qが水素原子である場合を一例とし、下記にその離脱反応による変換の式を示す。なお、本発明のπ電子共役化合物前駆体の離脱反応による変換はこれに限定されるものではない。
Figure 0005807359
上記の例の場合、エネルギー付与(加熱)により、一般式(VI)で表されるシクロヘキサジエン環構造から、脱離成分として一般式(VIII)で表されるアルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、一般式(VII)で表されるベンゼン環を含む構造の特定化合物に変換される。加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合にはカルボン酸は速やかに気体となる。
上記一般式(VI)で表される化合物から脱離成分が脱離する機構について下記反応式(スキーム)により概略を示す。なお、下記反応機構において、本発明のシクロヘキサジエン環構造からの脱離成分の脱離機構は下記一般式(VI−a)から下記一般式(VII−a)への変換である。説明を補足するため、シクロヘキセン環[下記一般式(IX)]の場合の脱離機構も含めて示す。尚下記式中、Rは置換又は無置換のアルキル基を示す。
Figure 0005807359
上記反応式に示すように、一般式(VI−a)で表されるシクロヘキセン環の場合、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸化合物が脱離し、シクロヘキセン環構造から一般式(VII−a)で表されるようなベンゼン環構造へと変換される。
2つアシルオキシ基を有するシクロヘキセン構造を有する化合物[一般式(IX)]の場合、脱離反応は2段階で進行すると考えられ、先ず一つのカルボン酸が脱離して前記一般式(VI−a)で表されるシクロヘキサジエン環構造となる。
この時、一般式(IX)で表される2置換体からカルボン酸1分子を脱離させるために必要な活性化エネルギーは、一般式(VI−a)で表される1置換体から同1分子を脱離させるのに要するそれに比べて、十分に大きいため、反応は速やかに2段階進行し、一般式(VII−a)で表される構造まで変換される。つまり、上記反応式の場合には反応系内で一般式(VI−a)で表される1置換体を単離することはできない。
ここで、置換基(アシルオキシ基と水素等)の位置関係の違いによる、複数の立体立体異性体が存在する場合においても、反応の速度は違えど上記反応は進行する。
上記反応式から推察されるように、活性な1置換体を合成することができれば、前記一般式(VI)で表されるシクロヘキセン環に較べて脱離反応に要するエネルギーは少なくて済むことから有利である。即ち、本発明のシクロヘキサジエン環構造は、従来よりも低いエネルギー(外部刺激)で脱離性置換基の脱離反応が確実に行える。
上記シクロヘキサジエン骨格の、脱離反応の低温化はアシルオキシ基だけに限られるわけではなく、エーテル基などでも同様の効果が見られる。エーテル基などは従来のシクロへヘキセン骨格においては、脱離反応に要するエネルギーが高く、用いるのに好適ではなかったが、本発明の骨格を適用することで、エネルギーが低下し、アシルオキシ基と同様に用いることが可能になった。
上記反応式においてβ炭素上の水素原子の引き抜き、転移が反応の第一段階であるため、酸素原子の水素原子を引きつける力が強いほど反応は起こりやすいと考えられる。その度合いは、例えば、アシルオキシ基側のアルキル鎖によっても変わってくるし、酸素原子を同じく第16族の元素である硫黄、セレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子などに変えることによっても変化する。
この脱離反応を行なうために付与(印加)するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、前記脱離反応には、官能基の構造にも依存するが、反応速度および反応率の観点から加熱が必要となることが多い。脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40℃〜500℃の範囲が好ましく、さらにπ電子共役化合物前駆体の合成時の熱安定性を考慮すると、より好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、π電子共役化合物前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5分〜120分、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば、405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
前記脱離性置換基の脱離反応において、酸または塩基は触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、π電子共役化合物前駆体に対してそのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行ってもよく、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸等を用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を用いることができる。
また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
また、光塩基発生剤としては、カルバマート類、アシルオキシム類、アンモニウム塩等を用いることができる。
中でも揮発性の酸または塩基の雰囲気中に行うのが、反応後の酸塩基の系外への除去の容易さを考えると好ましい。
脱離反応を行なう際の雰囲気については、上記触媒の有無に関わらず大気下においても行なうことが可能であるが、酸化等の副反応および水分の影響を除くため、さらに脱離した成分の系外への排除を促すために、不活性ガス雰囲気下また減圧下で行なうことが望ましい。
脱離性置換基となるアシルオキシ基の形成方法については、後述のアルコールとカルボン酸クロライドもしくはカルボン酸無水物を反応させるまたはハロゲン原子とカルボン酸銀もしくはカルボン酸−4級アンモニウム塩の交換反応によってカルボン酸エステルを得る方法以外にも、ホスゲンとアルコールを反応させ炭酸エステルを得る方法、アルコールに二硫化炭素を加えた後、ヨウ化アルキルを反応させキサントゲン酸エステルを得る方法、三級アミンと過酸化水素あるいはカルボン酸を反応させアミンオキシドを得る方法、アルコールにオルトセレノシアノニトロベンゼンを反応させセレノキシドを得る方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、エーテル基についても、アルコールに塩基を作用させ、続けてハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルキルシラン等を作用させる(ウィリアムソンエーテル合成法)方法などで調整することができるが、これらに限定されるものではない。
[3.π電子共役系化合物前駆体の製造方法]
前述のように本発明のπ電子共役化合物前駆体は、シクロヘキサジエン骨格と脱離性置換基を有していることが特徴である(この構造部位全体として溶解性置換基Bと定義される)。
このシクロヘキサジエン骨格と脱離性置換基からなる構造の所謂、溶解性置換基B部分が剛直ではなくまた立体的に嵩高いために結晶性が悪く、このような構造を有する分子は溶解性が良好であり、且つπ電子共役化合物前駆体を溶解した溶液を用いて塗布した際に、結晶性の低い、あるいは無定形の膜が得られやすい性質を有する。
次に、シクロヘキサジエン骨格におけるエーテル基、アシルオキシ基の形成方法について一例を示しながら詳細に述べる。
シクロヘキサジエン骨格におけるエーテル基またはアシルオキシ基の形成方法としては、下記一般式(X)で表されるようなシクロヘキセン−1−オン骨格を有する化合物から誘導が可能である。一般式(X)で表される化合物は従来公知の方法で製造することができ、これを原料として用いることが可能であるが、本発明の脱離反応の形式から考えるとケトンの隣の2位にそれぞれ一つ以上の水素原子を有していることが好ましい。
Figure 0005807359
[式(X)中、Q乃至Qは式(I)で定義した範囲と同一である。]
次に、下記反応式に示すように、還元剤を用いて一般式(X)で表される化合物の1位のケトン基をアルコールに還元し、一般式(XI)で表される化合物とする。
Figure 0005807359
[式(X)、(XI)中、Q乃至Qは式(I)で定義した範囲と同一である。]
上記の還元反応の方法としては、還元剤として水素化ホウ素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどを用いたヒドリド還元や、ニッケル、銅、ルテニウム、白金、パラジウムなどの金属触媒と水素を用いた接触還元などを用いることができるが、官能基選択性や反応の容易さから判断するとヒドリド還元がより好ましい。
還元反応に用いる溶媒は種々の有機溶媒を用いることができ、反応速度の観点から特にメタノールやエタノールなどのアルコール類が好適である。
反応温度は通常0℃近辺で行うが、反応性に応じて室温から溶媒の還流温度までを好適に用いることができる。
続けて下記反応式に示すように、上記反応で得られた一般式(XI)で表される化合物を一般式(XII)で表される化合物に変換し、アルコール体のOH基を保護する。保護基の種類はアセチル基、メチル基、トリメチルシリル基、ベンジル基などが挙げられこれらは、特に限定されないが、後述の反応条件が塩基性であるため塩基条件で脱保護ができる保護基が工程数の減少という点で好ましい。
Figure 0005807359
[式(XI)、(XII)中、Q乃至Qは式(I)で定義した範囲と同一である。RはOH保護基である。]
OH保護基としては、例えば、アセチル基、メチル基、トリメチルシリル基、ベンジル基などが挙げられる。
上記反応式において、塩基条件で脱保護可能な基として用いる例を説明する。
1等量のカルボン酸無水物(例えば、無水酢酸)と塩基存在で反応させることにより、カルボン酸エステルを形成する(XII−1)。塩基は、ピリジンやトリエチルアミンなどの3級アミンを好適に用いることができ、これらを過剰に加え溶媒として用いることもできる。
溶媒は、上記に加え、ジクロロメタンやテトラヒドロフランなど反応性の内多くの有機溶媒を用いることができる。
続けて、下記反応式に示すように、上記反応で得られた一般式(XII−1)の4位を1等量のハロゲン化剤を用いて選択的にハロゲン化して一般式(XIII)で表される化合物を得る。
Figure 0005807359
[式(XII−1)、(XIII)中、Q乃至Qは式(I)で定義した範囲と同一である。Acはアセチル基である。]
上記反応式において、後の工程の反応性からヨウ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましく、特に好ましくは臭素原子である。臭素化剤としては、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドなどが挙げられ、これらとアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどのラジカル開始剤を共存して行なうことが好ましい。溶媒は必ずしも必要ではないが、種々の有機溶媒を用いることができ、特にベンゼン、四塩化炭素などが好適である。反応温度は室温から溶媒の還流温度までを好適に用いることができる。
この工程において、反応条件によっては複数の立体異性体が生成する可能性がある。具体的には、シクロヘキセン環と結合したカルボン酸エステル基とブロモ基との立体配置により、ラセミ混合物と、メソ体が任意の割合で得られることがある。特に分離する必要は無いが、これらは再結晶あるいは光学活性な固定層を用いたクロマトグラフィー等で分離することができる。
続けて、下記反応式に示すように、上記反応で得られた一般式(XIII)で表される化合物を、塩基を用いてブロモ基の脱離による二重結合の形成と、脱保護基による水酸基への変換を行い一般式(XIV)で表される化合物とする。
Figure 0005807359
[式(XIII)、(XIV)中、Acはアセチル基である。]
上記反応式において、塩基としては、ナトリウムメドキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。水酸基の脱保護を同時に行うことができるため、特に強塩基が好ましい。用いる溶媒は、特に限定されないが反応性という観点では、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒が好ましい。
上記アルコール体の合成に関して、活性なK領域(下図における円で囲まれた領域を示す)を有する多環芳香族化合物においては、上記とは別法を用いてその活性領域に比較的容易に水酸基を導入し、脱離性基で置換することができる。そのような多環芳香族化合物の例としては、下図で示されるフェナンスレン、クリセン、ピレン、ベンゾピレンの他に、ピセン、ベンゾピセンなどが挙げられる。
Figure 0005807359
以下、上記一般式(XIV)において(Q,Q)および(Q,Q)の位置で二つのベンゼン環が縮環した構造であるフェナンスレンを例に、そのK領域への水酸基の導入について説明する。
まず、下記反応式に示すように、フェナンスレンのK領域(9,10位)を酸化剤を用いてエポキシ化し、一般式(XV)で表されるエポキシ誘導体とする。
Figure 0005807359
上記のK領域エポキシ化反応の方法としては、従来公知のエポキシ化における酸化剤同様、m−過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、オキソン、ジメチルジオキシラン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの有機および無機過酸化物等を用いることができる。取り扱いの容易さから、m―過安息香酸、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム水溶液などが好ましい。
溶媒は化合物を良く溶かし、自身が酸化を受けないものであれば特に制限されないが、一例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、水などを用いることができる。特に好ましいのは、ジクロロメタン、クロロホルムおよび水である。
また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のような酸化剤を用いる場合は、有機相に化合物を溶解させ、相間移動触媒を加えた二相系での反応を行うことが好ましい。前記相間移動触媒としては、いわゆる界面活性剤を用いることができるが、一例として、4級アンモニウム塩やスルホニウム塩などを主成分とする物が挙げられる。
反応温度は通常0℃近辺で行うが、反応性に応じて室温から溶媒の還流温度までを好適に用いることができる。
まず、下記反応式に示すように、一般式(XV)で表されるエポキシ誘導体を還元剤で還元し、目的とする一般式(XVI)で示されるアルコール体を得る。
Figure 0005807359
上記の還元反応の方法としては、還元剤として水素化ホウ素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム(LAH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)などを用いたヒドリド還元や、ニッケル、銅、ルテニウム、白金、パラジウムなどの金属触媒と水素を用いた接触還元などを用いることができるが、官能基選択性や反応の容易さから判断するとヒドリド還元がより好ましい。ヒドリド還元剤の中でも、エポキシの還元にはある程度の強い還元剤が好適である。一例として、水素化アルミニウムリチウム(LAH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)などが挙げられる。
還元反応に用いる溶媒は種々の有機溶媒を用いることができるが、還元剤と反応しないことが求められ、特にエーテル系溶媒が好ましい。一例として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどである。
反応温度は通常0℃近辺で行うが、反応性に応じて室温から溶媒の還流温度までを好適に用いることができる。
続けて、下記反応式に示すように、上記反応で得られた一般式(XIV)で表される化合物(アルコール体)に、カルボン酸無水物またはカルボン酸クロライドあるいはクロロギ酸アルキルなどの炭酸ハーフエステル類と塩基を作用させることで、一般式(XVII)で表される化合物(1位がアシルオキシ化された目的物)を得ることができる。
Figure 0005807359
[式(XIV)、(XVII)中、Q乃至Qは式(I)で定義した範囲と同一である。Acyはアシル基である。]
上記反応において用いられるカルボン酸無水物およびカルボン酸クロライド、クロロギ酸アルキルなどの炭酸ハーフエステル類としては、カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、吉草酸、プロピオン酸、ピバル酸、カプロン酸、ステアリン酸、トリフルオロ酢酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸)から誘導される化合物が挙げられる。上記反応式において、塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等を用いることができる。アシル化の場合は、反応で発生する塩酸をトラップできれば良いので必ずしも強塩基である必要はない。また、用いられる溶媒としては、前記塩基と兼ねたピリジンおよびトリエチルアミン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエンなど種々の有機溶媒を用いることができるが、反応速度の観点や副反応を防ぐために、溶媒は可能な限り脱水されたものを用いることが好ましい。
反応温度としては、室温から溶媒還流温度までを適用することが可能であるが、脱離反応などの副反応を防ぐためにも50℃以下が好ましく、最も好ましくは室温(25℃近傍)以下で行うことである。
なお、上記工程において、カルボン酸誘導体の代わりに、ハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アルキルシランあるいはスルホン酸誘導体を用いれば、公知の方法において容易にアルキルエーテル基、シリルエーテル基、スルホニルオキシ基を有する骨格が構築も達成できる。
ただし、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化シリルエーテルの場合は、トリエチルアミンやピリジンのような弱塩基ではなく、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどの強塩基を用いたほうが良好な結果を与える。
前述のような反応式に準拠して合成して得られた溶解性置換基Bは、種々の従来公知の方法でπ電子共役化合物Aと縮環させることにより縮環構造を有するπ電子共役化合物前駆体(縮環化合物)を合成することができる。これをπ電子共役化合物前駆体として用いる場合、例えば、ヘテロアセン類の場合は、J.Am.Chem.Soc.2007,129,pp2224−2225等に記載の方法に準じて行うことができる。
下記に具体的な例を挙げてその詳細反応式(スキーム)を示す。
Figure 0005807359
上記反応式において用いる原料の1−アシルオキシ−6−ヨード−1,2−ジヒドロナフタレンは本発明の合成例に従って合成が可能である。
第一段階として、ヨウ素原子とグリニア試薬とのグリニア交換反応を行う。極低温でかつヨウ素の反応性が高いため、選択的にグリニア交換反応が起こりグリニア試薬が得られる。このグリニア試薬にジメチルホルムアミドやモルホリンなどのホルミル化剤を加えることでホルミル化を行う。
第二段階はホルミル基のオルトリチオ化である。同時に加えるアミンとリチウムとホルミル基が錯体を形成するため、他の官能基を損なうことなく選択的にオルト位(1,2−ジヒドロナフタレンの7位)がリチオ化される。これを同様にジメチルスルフィドを加えることで、SMe化される。
続けて、第三段階ではホルミル基同士のマクマリーカップリング反応を行う。亜鉛、四塩化チタンの存在下で反応を行う。これにより、ホルミル基同士がカップリングし、オレフィン構造が形成される。
最終段階では、ヨウ素による閉環反応を行う。ヨウ素が二重結合部位に付加し、続けて、SMe基と反応し、MeIの形で脱離することにより、チオフェン環が二つ形成され、目的の縮環化合物を得ることができる。
また、ペンタセンの場合は、J.Am.ChemSoc.,129,2007,pp.15752に記載の方法に準じて行うことができ、フタロシアニン類の場合の環形成反応は、白井汪芳,小林長夫編・著「フタロシアニン−化学と機能−」(アイピーシー社,1997年刊)の第1〜62頁、廣橋亮,坂本恵一,奥村映子編「機能性色素としてのフタロシアニン」(アイピーシー社,2004年刊)の第29〜77頁に準じて同様に行うことが可能であり、ポルフィリン類の場合は、特開2009−105336号公報等に記載の方法に準じて行うことが可能である。
また、本発明のπ電子共役化合物前駆体において、前述の溶媒可溶性置換基(下記一般式中のB)の、他の骨格との共有結合による連結方法としては、Suzukiカップリング反応による方法、Stilleカップリング反応による方法、Kumadaカップリング反応、Negishiカップリング反応による方法、Hiyamaカップリング反応による方法、Sonogashira反応による方法、Heck反応による方法、Wittig反応による方法、などに代表される種々のカップリング反応を用いて行う、公知の方法が例示される。
これらのうち、Suzukiカップリング反応またはStilleカップリング反応を用いる方法が、中間体の誘導体化が容易であるのと、反応性、収率の観点から特に好ましい。炭素−炭素二重結合の形成に置いては、上記に加えHeck反応による方法、Wittig反応なども好ましい。炭素−炭素三重結合の形成においては、上記に加え、Sonogashira反応が特に好ましい。
以下に、炭素−炭素結合をSuzukiカップリング反応およびStilleカップリング反応によって連結する例を以下に挙げる。
下記一般式(XVIII)、(XIX)で表されるハロゲン体およびトリフルオロトリフラート体またはボロン酸誘導体および有機スズ誘導体の組み合わせで反応を行う。ただし、一般式(XVIII)、(XIXI)で示される化合物が共にハロゲン体およびトリフラート体またはボロン酸誘導体および有機スズ誘導体で有る場合はカップリング反応が起こらないため除外する。
そして、上記混合物にさらにSuzukiカップリング反応の場合においてのみ塩基を追加し、パラジウム触媒の存在下で、反応させることにより製造される。
Figure 0005807359
[式(XVIII)中、Aは前述のπ電子共役系置換基であり、Dはハロゲン原子(塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を表す。)、トリフラート(トリフルオロメタンスルホニル)基または、ボロン酸またはそのエステルもしくは有機スズ官能基を示す。lは1以上の整数である。]
Figure 0005807359
[式(XIX)中、Bは前述の溶媒可溶性置換基、Dはハロゲン原子(塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を表す)、トリフラート(トリフルオロメタンスルホニル)基または、ボロン酸またはそのエステルもしくは有機スズ官能基を示す。kは自然数である。)
Suzukiカップリング、Stilleカップリング反応による合成方法において、前記一般式(XVI)および(XVII)中のハロゲン体またはトリフラート体の中でも、ヨウ素体あるいは臭素体もしくはトリフラート体が反応性の観点から好ましい。
前記一般式(XVIII)および(XIX)中の有機スズ官能基としては、SnMe基やSnBu基などのアルキルスズ基を有する誘導体を用いることができる。これらは所望の位置の水素やハロゲン原子をn−ブチルリチウム等の有機金属試薬をを用いてリチウムやグリニア試薬に置き換え、その後トリメチルスズクロライドやトリブチルスズクロライドなどでクエンチすることで容易に得られる。
また、ボロン酸誘導体としては、ボロン酸のほか、熱的に安定で空気中で容易に扱えるビス(ピナコラト)ジボロンを用いハロゲン化誘導体から合成される、またはボロン酸をピナコール等のジオールで保護することによって合成されるボロン酸エステル誘導体を用いてもよい。
上述の通り、置換基AまたはBのどちらがハロゲンおよびトリフラート体またはボロン酸誘導体および有機スズ誘導体であっても構わないが、誘導体化の容易さや副反応を減らすという意味では、置換基Aの方をボロン酸誘導体および有機スズ誘導体とした方がよい場合が多い。
Stilleカップリング反応においては、特に塩基は不要であるが、Suzukiカップリング反応においては塩基が必ず必要となり、NaCO、NaHCOなどの比較的弱い塩基が良好な結果を与える。立体障害等の影響を受ける場合には、Ba(OH)やKPO、NaOHなどの強塩基が有効である。その他、苛性カリ、金属アルコシド等、例えば、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシドなども用いることができる。トリエチルアミン等の有機塩基も用いることができる。
パラジウム触媒としては、例えば、パラジウムブロマイド、パラジウムクロライド、パラジウムヨージド、パラジウムシアニド、パラジウムアセテート、パラジウムトリフルオロアセテート、パラジウムアセチルアセトナト[Pd(acac)]、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(OAc)(PPh]、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh]、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム[Pd(CHCNCl]、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム[Pd(PhCN)Cl]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl]、ジクロロ[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム[Pd(dppf)Cl]、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〔Pd[P(C11Cl〕、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPhCl]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd(dba)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]、等が挙げられるが、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPhCl]等のホスフィン系触媒が好ましい。
上記の他にパラジウム触媒として、反応系中においてパラジウム錯体と配位子の反応により合成されるパラジウム触媒を用いることができる。配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(n−ブチル)ホスフィン、トリス(tert−ブチル)ホスフィン、ビス(tert−ブチル)メチルホスフィン、トリス(i−プロピル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジフェニルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−メチルビフェニル、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタン、ジフェニルホスフィノエチレン、ジフェニルホスフィノフェロセン、エチレンジアミン、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,3−ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデンが挙げられ、これらの配位子のいずれかが配位したパラジウム触媒をクロスカップリング触媒として用いることができる。
反応溶媒としては、原料と反応し得るような官能基を有さず、かつ原料を適度に溶解させられることができるようなものが望ましく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等をあげることができる。これらの溶媒は単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。またこれらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行うことが望ましい。
上記反応の温度は、用いる原料の反応性、また、反応溶媒により適宜設定され、通常0℃〜200℃の範囲で行うことが可能であるが、いずれの場合も溶媒の沸点以下に抑えることが好ましい。加えて脱離反応が起こる温度以下に抑えることが収率の観点から好ましく、具体的には室温〜150℃の範囲が好ましく、特に好ましくは室温〜120℃の範囲が好ましく、もっとも好ましくは室温〜100℃の範囲である。
上記反応における反応時間は、用いる原料の反応性において適宜設定することができ、1〜72時間が好適であり、さらには、1〜24時間がより好ましい。
以上のようにして下記一般式(XX)で表されるπ電子共役化合物前駆体が得られる。
Figure 0005807359
[式(XX)中、Aは式(XVIII)と、Bは式(XIX)とそれぞれ同義であり、mは1以上の整数である。]
得られるπ電子共役化合物前駆体は、反応に使用した触媒、未反応の原料、また反応時に副生するボロン酸塩、有機スズ誘導体等の不純物を除去して使用される。これらの精製は再沈澱法、カラムクロマト法、吸着法、抽出法(ソックスレー抽出法を含む)、限外濾過法、透析法、触媒を除くためのスカベンジャーの使用等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
溶解性に優れた材料では、これら精製方法の制約が少なくなり、結果的にデバイス特性にも好影響を与える。
上記した製造方法により得られるπ電子共役化合物前駆体を薄膜とするには、例えば、π電子共役化合物前駆体と溶媒を含む溶液(インク等の形態であってもよい。)とし、この溶液を用いてスピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法により製膜したり、あるいは熱変換後のπ電子共役系化合物自体を、真空蒸着、スパッタ等により製膜したりする公知の製膜方法を用いることができる。これらの製膜方法によって、クラックのない、強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能である。
さらに前記の製膜方法により塗布した本発明のπ電子共役化合物前駆体A−(B)mの膜にエネルギーを付与する(外部刺激を加える)ことによって、前記一般式(I)で表される溶解性の脱離性置換基Bから前記一般式(II)で表される化合物(脱離成分)を脱離し、前記一般式(Ia)で表されるCへと変換することで、π電子共役化合物A−C(m)(応用として有機半導体材料等が挙げられる)からなる有機半導体膜を形成することが可能であることから、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子用材料として好適に用いることができる。
[4.π電子共役化合物のデバイスへの応用]
本発明のπ電子共役化合物前駆体から製造したπ電子共役化合物(ここでは有機半導体化合物)は、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、または化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明のπ電子共役化合物前駆体およびそれから製造したπ電子共役化合物(ここでは有機半導体化合物)を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、有機薄膜トランジスタすなわち、有機電界効果トランジスタ(OFET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
「トランジスタ構造」
図1の(A)〜(D)は、本発明に係わる有機薄膜トランジスタの構造例を示す概略図である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明のπ電子共役化合物前駆体にエネルギーを付与して変換された有機半導体化合物[A−C(m)]を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離された第一の電極(ソース電極(2))、第二の電極(ドレイン電極(3))および図示しない支持体(基質)上に第三の電極(ゲート電極(4))が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。
有機薄膜トランジスタはゲート電極への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされるが、スイッチング素子としては、ゲート電極4による電圧の印加状態により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)との間に流れる電流量が大きく変調できることが重要である。これはトランジスタの駆動状態で大きな電流が流れ、非駆動状態では、電流が流れないことを意味する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
「製膜方法:有機半導体層」
前述のように本発明のπ電子共役化合物前駆体を有機半導体前駆体として用い、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して溶液(インク組成物)とし、該溶液を支持体上に塗布することによって有機半導体前駆体からなる薄膜を形成した後、この膜に対してエネルギーを印加し、有機半導体膜に変換することによっても形成することができる。
[インク組成、溶媒]
前記、インク組成物に用いられる溶媒は、次のように決めることができる。
例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。すなわち、前駆体を含む塗工液のための溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が500℃以下であることが好ましい。しかし、揮発性が高ければ高いほど良いという訳ではない。沸点50℃以上のものが好ましい。まだ充分に確認した訳ではないが、伝導性には、前駆体が有する脱離性基の単なる離脱のみでなく、分子相互間の接触のための配置状態変化も重要なためかも知れない。つまり、塗工膜中に存在する前駆体は、それが有する脱離性基が除去されたのち、ランダム状態から、分子の向き又は位置の少なくとも部分的変化により分子同士の隣接化、接触や再配列、凝集、結晶化等が生じるための時間が必要なためかも知れない。
いずれにしても、溶媒としては具体的には、前駆体A−(B)mが有する例えば脱離性基としての極性のカルボエステル基やエーテル基に親和性のあるメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒に加えて、本体構造部分と比較的親和性のあるトルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
また、塗工液には、さらに、本発明の目的達成を損なわない程度で、カルボエステル基分解促進のための揮発性又は自己分解性の酸、塩基材料を含んでしてもよい。また、トリクロロ酢酸(加熱によりクロロホルムと炭酸ガスに分解)、トリフロロ酢酸(揮発性)のような強酸性の溶媒は、弱いルイス酸であるカルボエステル基の追い出しに効果があるので好ましく用いられる。
また前述のように、本発明のπ電子共役化合物前駆体はシクロヘキサジエン構造と置換されていても良いエーテル基またはアシルオキシ基を有しており、この部分が立体的に嵩高いために結晶性が悪く、この構造を有する分子は溶解性が良好でかつ、溶液から塗布した際に結晶性の低いか、あるいは無定形の膜が得られやすい性質を有する。
これら薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法等が挙げられ、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。
そして、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
さらに、熱変換後の有機半導体材料自体は、真空蒸着法等による気相製膜が可能である。
上記、印刷・塗布法のなかでも、インクジェット法に代表される液滴塗布法は、基板の所定の位置にのみ液滴を滴下させるため、材料を無駄なく利用することができ、他の方法に必要な不要部分の材料除去プロセスが必要なくなるので、工程を簡略にすることができる。
安定に吐出させるための条件としては、少なくとも、溶媒の乾燥速度と、溶質の溶解度に対するインクの溶質濃度の二点から検討する必要がある。
乾燥速度については、過度に高い蒸気圧すなわち、沸点が比較的低い溶媒は、インクジェットのノズル周辺での急激な溶媒乾燥によって溶質が析出し、ノズルの目詰まりが生じるという問題が発生するため、工業的製造において不適切である。したがって、一般にインクジェット法に用いる溶媒としては高沸点のものがよいとされているが、本発明においては、少なくとも150℃以上の沸点を有する溶媒を含むことが望ましい。さらに望ましくは、少なくとも200℃以上の沸点を有する溶媒を含むことである。
また、インク溶媒に対する溶質の溶解度としては、本発明で用いられる有機半導体材料を少なくとも0.1重量%以上溶解させる溶媒であることが望ましい。さらに望ましくは0.5重量%以上溶解させる溶媒である。上記を満たす溶媒としては、例えば、クメン、シメン、メシチレン、2,4−トリメチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、アミルベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、テトラリン、1,5−ジメチルテトラリン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル等が挙げられる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜、即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない膜が形成されるような厚みに選択される。有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5nm〜100nmが好ましい。本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極および絶縁膜に接して形成される。
「製膜方法:有機半導体膜の後処理」
上記した前駆体薄膜より変換した有機半導体膜は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、製膜中に生じた膜中のゆがみを緩和することができ、これが結晶性の向上に繋がり、特性の向上や安定化を図ることができる。また、有機溶媒(例えば、トルエン、クロロホルムなど)雰囲気中に置くことにより、加熱処理と同様に膜中のゆがみを緩和し、さらに結晶性を高めることも可能である。
さらに、酸素や水素等の酸化性あるいは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化あるいは還元による特性変化を誘起することもできる。これは膜中のキャリア密度の増加、あるいは減少の目的で利用することができる。
「電極」
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
「絶縁膜」
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
「有機半導体/絶縁膜および電極界面修飾」
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜および電極と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシランや、ベンゼンチオール、トリフルオロベンゼンチオール、パーフルオロベンゼンチオール、ペーフルオロデカンチオールなどを具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していてもよい。
また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していてもよい。
「保護層」
本発明の有機薄膜トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合により要する保護、等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
「応用デバイス」
本発明のπ電子共役化合物前駆体および有機半導体は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機電子デバイスを作製可能であるため有用である。
上述した本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミック、電気泳動等の、従来公知の各種表示画像素子を駆動するための素子として好適に利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
本発明のディスプレイ装置は、例えば、液晶表示装置では液晶表示素子、EL表示装置では有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子、電気泳動表示装置では電気泳動表示素子などの表示素子を1表示画素として、該表示素子をX方向及びY方向にマトリックス状に複数配列して構成される。前記表示素子は、該表示素子に対して電圧の印加又は電流の供給を行うためのスイッチング素子として、図2に示されるように本発明の有機薄膜トランジスタを備えている。本発明のディスプレイ装置としては、前記スイッチング素子が前記表示素子の数、即ち表示画素数に対応して複数備えられる。
前記表示素子は、前記スイッチング素子の他に、例えば、基板、透明電極等の電極、偏光板、カラーフィルタなどの構成部材を備えるが、これらの構成部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知のものを使用することができる。
前記ディスプレイ装置が、所定の画像を形成する場合には、例えば、図3に示すようにマトリックス状に配置されたスイッチング素子の中から任意に選択された前記スイッチング素子が、対応する前記表示素子に電圧の印加又は電流を供給する時のみスイッチがONまたはOFFとなり、その他の時間はOFFまたはONとなるように構成することにより、高速、高コントラストで、前記ディスプレイ装置の表示を行うことができる。なお、前記ディスプレイ装置における画像の表示動作としては、従来から公知の表示動作により画像等が表示される。
例えば、前記液晶表示素子の場合には、液晶に対して電圧を印加することにより、該液晶の分子配列を制御して画像等の表示が行われる。また、前記有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子の場合には、有機若しくは無機膜で形成された発光ダイオードに電流を供給して該有機若しくは無機膜を発光させることにより画像等の表示が行われる。また、前記電気泳動表示素子の場合には、例えば、異なる極性に帯電された白及び黒色の着色粒子に電圧を印加して、電極間で前記粒子を所定方向に電気的に泳動させて画像等の表示が行われる。
前記ディスプレイ装置は、前記スイッチング素子を塗工、印刷等の簡易なプロセスにより作製可能であり、プラスチック基板、紙等の高温処理に耐えない基板を用いることができるとともに、大面積のディスプレイであっても、省エネルギー、低コストで前記スイッチング素子を作製可能となる。
また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
先ず実施例および比較例で用いる化合物に関連する特定化合物中間体等を合成した。
また、下記合成例および実施例における化合物の同定は、NMRスペクトル〔JNM−ECX(商品名)500MHz、日本電子製〕、質量分析〔GC−MS、GCMS−QP2010 Plus(商品名)、島津製作所製〕、精密質量分析〔LC−TofMS、Alliance−LCT Premier(商品名)、Waters社製〕、元素分析〔(CHN)(CHNレコーダーMT−2、柳本製作所製)、元素分析(硫黄)(イオンクロマトグラフィー;アニオン分析システム:DX320(商品名)、ダイオネクス製〕を用いて行った。
[合成例1]
〔特定化合物中間体の合成1〕
〈化合物(2)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(2)を合成した。
Figure 0005807359
上記式(1)の化合物はSIGMA Aldrich社より購入したものをそのまま用いた。
500mLのビーカーに上記式1の化合物(20g、119.0mmol)と15%HCl(96mL)を入れ、氷冷却下5℃以下を維持しながら、亜硝酸ナトリウム水溶液(9.9g、143.0mmol+水42mL)を徐々に滴下した。滴下終了後、そのままの温度で30分間攪拌し、ヨウ化カリウム水溶液(23.7g、143.0mmol+水77mL)を一度に加え、氷浴を外し2.5時間攪拌し、その後60℃で窒素の発生が収まるまで0.5時間加熱した。室温まで冷却した後、反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(100mL×3回)で洗浄し、さらに飽和食塩水(100mL×2回)で洗浄した。さらに、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を濃縮することで赤色のオイルを得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=9/1)にて精製することにより、淡橙色の固体を得た。さらに、2−プロパノールより再結晶することにより、淡橙色の結晶として化合物(2)を得た(収量11.4g、収率35.2%)。
以下に化合物(2)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 2.13 (quint, 2H, J = 5.7 Hz), 2.64 (t, 2H, J = 6.3 Hz ), 2.92 (t, 2H, J =6.0 Hz), 7.66 (d, 1H, J = 8.0 Hz), , 7.67 (s, 1H),7.72 (d, 1H, J = 8.0 Hz)
融点:74.0−75.0℃
質量分析:GC−MS m/z = 272 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(2)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(3)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(3)を合成した。
Figure 0005807359
200mLの丸底フラスコに化合物(2)(4.1g、15mmol)、メタノール(100mL)を入れ、氷冷下0℃にて、水素化ホウ素ナトリウム(850mg、22.5mmol)を徐々に加え、0℃のまま3時間攪拌した。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを希塩酸で中和し、飽和食塩水を加えて、酢酸エチル(50mL)で5回抽出を行った。抽出液を塩化アンモニウム(100mL)で1回、続けて食塩水(100mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。濾液を濃縮し、淡赤色の固体として、化合物(3)を得た(収量3.93g、収率95.5%)。これ以上精製することなく、このまま次の反応に用いた。
以下に化合物(3)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 1.71 (d, 1H, J =5.8 Hz), 1.84−2.02 (m, 4H) , 2.65−2.71 (m, 1H, ), 2.75−2.81 (m, 1H, ), 4.72 (d, 1H, J =4.6 Hz), 7.17 (d, 1H, J = 8.0 Hz), , 7.47 (s, 1H),7.52 (d,t 1H, J = 8.0 Hz, J = 1.2 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 274 (M+)
融点:82.0−84.0℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(3)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(4)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(4)を合成した。
Figure 0005807359
50mLの丸底フラスコに化合物(3)(3.70g、13.5mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAP、10mg)を入れ、アルゴンガスで置換した後、脱水ピリジン(8.1ml)、無水酢酸(6.2ml)を加えて、室温で6時間攪拌した。
反応溶液に水50mLを加えて、酢酸エチル(20mL)で5回抽出し、合わせた有機層を希塩酸(100ml)で3回、続けて飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100ml)で2回洗浄し、最後に飽和食塩水(100ml)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体として化合物(4)を得た(収量4.28g、収率100%)。これ以上精製することなく、このまま次の反応に用いた。
以下に化合物(4)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 1.76−1.83 (m, 1H, ), 1.89−2.10 (m, 1H), 2.07 (s, 3H) , 2.67−2.73 (m, 1H, ), 2.79−2.84 (m, 1H, ), 5.93 (t, 1H, J =5.2 Hz), 7.01 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 7.49 (d, 1H, J = 2.3 Hz),7.52 (s , 1H)
質量分析:GC−MS m/z = 316 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(4)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(5)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(5)を合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに化合物(4)(4.27g、13.5mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBN,25mg)、四塩化炭素(100mL)、N−ブロモスクシンイミド(以下NBS,2.64g、14.8mmol)を入れ、アルゴンガスで置換を行なった後、穏やかに80℃に加熱し、そのまま1時間攪拌し、室温まで冷却した。
沈殿を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することで、薄黄色の固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=8/2)にて精製することにより、淡赤色のオイルとして化合物(5)を得た(収量4.9g、収率92.0%)。化合物(5)はシス体とトランス体の10:7の混合物として得られた。
以下に化合物(5)の分析結果を示す。
精密質量分析:LC−MS m/z = 393.907 (100.0%), 395.904(97.3%)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(5)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(6)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(6)を合成した。
Figure 0005807359
500mLの丸底フラスコに化合物(5)(4.2g、10.6mmol)を入れアルゴンガスで置換した後、THF(300mL)を入れ、氷冷下0℃で、ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(25wt%、24mL)を加えて、そのままの温度で6時間攪拌した。水(300mL)を加えて、酢酸エチル(100mL)で4回抽出し、飽和食塩水(100mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を濃縮することで褐色の液体を得た。これをカラム精製することにより、無色の結晶として化合物(6)を得た(収量1.2g、収率41.0%)。
以下に化合物(6)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 1.70 (d, 1H, J =3.4 Hz), 2.58−2.61 (m, 2H), 4.76 (q , 1H, J =6.3 Hz), 6.04 (q, 1H, J =5.2 Hz), 6.47 (d, 1H, J =9.8 Hz), 7.13 (d, 1H, J =8.1 Hz), 7.47 (d, 1H, J =1.7 Hz), 7.57 (J=8.1 Hz J =1.7 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 272 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(6)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(7−1)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(7−1)を合成した。
Figure 0005807359
50mLの丸底フラスコに化合物(6)(680mg、2.5mmol)、DMAP(15.3mg、0.125mmol)、を入れアルゴンガスで置換した後、ピリジン(15mL)を加えて、氷冷下0℃にて、ヘキサノイルクロライド(370mg、2.75mmol)を滴下し、そのままの温度で3時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサン(95/5)に液体を溶解させ、厚さ3cmのシリカゲルパッドを通し、濾液を濃縮することで無色の液体として化合物(7−1)を得た(収量560g、収率60.5%)。
以下に化合物(7−1)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 0.86 (t, 3H, J =7.2 Hz), 1.21−1.30 (m, 4H) , 1.54−1.60 (m, 2H), 2.23 (td, 2H, J=7.5 Hz J = 2.3 Hz ), 2.58−2.62 (m, 2H), 5.95 (t, 1H, J =5.2 Hz), 6.03 (quint, 1H, J=4.6 Hz), 6.48 (d, 1H, J=9.8 Hz), 7.10 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.48 (d, 1H, J=1.7 Hz), 7.54 (dd, 1H, J1=8.0 Hz, J2=1.8 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 370(M+)、254 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(7−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(7−2)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(7−2)を合成した。
Figure 0005807359
50mLの丸底フラスコに化合物(6)(680mg、2.5mmol)、THF(15mL)、を入れアルゴンガスで置換した後、氷冷下0℃にて、水素化ナトリウム(3.0mmol,72.0mg)を加えて、そのままの温度で30分間攪拌した。ヨウ化メチル(3.0mmol、426mg)を滴下し、そのままの温度で1時間攪拌を行った。反応溶液に水を加え、水層を酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサン(90/10)に液体を溶解させ、厚さ3cmのシリカゲルパッドを通し、濾液を濃縮することで無色の油状固体として化合物(7−2)を得た(収量607mg、収率85.0%)。
以下に化合物(7−2)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 2.57−2.61 (m, 2H),3.38 (s, 3H), 5.90 (t, 1H, J =5.2 Hz), 6.03 (quint, 1H, J=4.6 Hz), 6.48 (d, 1H, J=9.8 Hz), 7.10 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.48 (d, 1H, J=1.7 Hz), 7.54 (dd, 1H, J=1.8 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 286(M+)、254 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(7−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(7−3)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(7−3)を合成した。
Figure 0005807359
50mLの丸底フラスコに化合物(6)(680mg、2.5mmol)、DMAP(15.3mg、0.125mmol)、を入れアルゴンガスで置換した後、ピリジン(15mL)を加えて、氷冷下0℃にて、クロロぎ酸アミル(414mg、2.75mmol)を滴下し、そのままの温度で5時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサン(95/5)に液体を溶解させ、厚さ3cmのシリカゲルパッドを通し、濾液を濃縮することで無色の液体として化合物(7−3)を得た(収量535mg、収率55.5%)。
以下に化合物(7−3)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 0.86 (t, 3H, J =7.2 Hz), 1.21−1.30 (m, 4H) , 1.60−1.65 (m, 2H), 2.58−2.62 (m, 2H), 4.15−4.17 (m, 2H),5.94 (t, 1H, J =5.2 Hz), 6.02 (quint, 1H, J=4.6 Hz), 6.50 (d, 1H, J=9.8 Hz), 7.08 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.47 (d, 1H, J=1.7 Hz), 7.53 (dd, 1H, J=1.8 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 386(M+)、254 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(7−3)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(7−4)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(7−4)を合成した。
Figure 0005807359
50mLの丸底フラスコに化合物(6)(680mg、2.5mmol)、THF(20mL)、を入れアルゴンガスで置換した後、トリエチルアミン(3mL)を加えて、氷冷下0℃にて、トリメチルシリルクロライド(300mg、2.75mmol)を滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。氷浴を外して、室温に戻してさらに7時間攪拌を行った。
反応溶液に水を加え、酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサン(95/5)に液体を溶解させ、厚さ3cmのシリカゲルパッドを通し、濾液を濃縮することで無色の油状固体として化合物(7−3)を得た(収量688mg、収率80.0%)。
以下に化合物(7−4)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 0.04 (s, 9H), 2.50−2.55 (m, 2H), 5.15 (t, 1H, J =5.2 Hz), 6.02 (quint, 1H, J=4.6 Hz), 6.53 (d, 1H, J=9.8 Hz), 7.07 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.44 (d, 1H, J=1.7 Hz), 7.54 (dd, 1H, J=1.8 Hz)
質量分析:GC−MS m/z =344(M+)、254 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(7−4)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(7−5)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(7−5)を合成した。
Figure 0005807359
化合物(7−1)の合成において、カプロン酸クロライドに換えて2−ブチルオクタノイルクロライドを用いて以外は量論比は同様にして合成、精製を行い、淡黄色の液体として化合物(7−5)を得た(収量1.33g、収率97.8%)。
以下に化合物(7−5)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.74−0.83 (m, 6H), 1.10−1.32 (m, 12H) , 1.36−1.43 (m, 2H), 1.50−1.60(m, 2H), 2.27−2.32 (m, 1H), 2.58−2.62 (m, 2H), 5.95 (t, 1H, J =5.2 Hz), 6.03 (quint, 1H, J=4.6 Hz), 6.48 (d, 1H, J=9.8 Hz), 7.10 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.48 (d, 1H, J=1.8 Hz), 7.54 (dd, 1H, J1=8.0 Hz, J2=1.8 Hz)
質量分析:GC−MS m/z = 454(M+)、254 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(7−5)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[合成例2]
〔化合物中間体の合成2〕
〈化合物(8)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(8)を合成した。
Figure 0005807359
十分に乾燥させた200mLの丸底フラスコに、チエノ[3,2−b]チオフェン(2.81g、20.0mmol)を入れ、アルゴン置換を行った後、脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと略)(50mL)を加え、アセトン−ドライアイス浴で−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(2.2eq、28.1mL(1.6Mヘキサン溶液)、44mmol)を15分かけて滴下し、反応系内を室温まで昇温し、そのまま16時間攪拌を行った。再び−78℃に冷却し、トリメチルスズクロリド(2.5eq、50mL(1.0Mヘキサン溶液)、50mmol)を一度に加え、反応系内を室温まで昇温させ、24時間攪拌を行った。水(80mL)を加えて、クエンチし、酢酸エチルを加えて有機層を分離した。有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、さらに硫酸ナトリウムで乾燥を行い、濾液を濃縮し、褐色の固体を得た。これをアセトニトリルから再結晶(繰り返し3回)することにより、無色の結晶として化合物(8)を得た(収量5.0g、54.1%)。
以下に化合物(8)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 0.38 (s, 18H), 7.23 (s, 2H)
質量分析:GC−MS m/z = 466(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(8)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(9)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(9)を合成した。
Figure 0005807359
充分に乾燥させた200mLの丸底フラスコに、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(3.81g,20.0mmol)を入れ、アルゴン置換を行なった後、脱水THF(50mL)を加え、アセトン−ドライアイス浴で−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(2.2eq,28.1mL(1.6Mヘキサン溶液),44mmol)を15分かけて滴下し、反応系内を室温まで昇温し、16時間攪拌を行なった。再び−78℃に冷却し、トリメチルスズクロリド(2.5eq,50mL(1.0Mヘキサン溶液),50mmol)を一度に加え、反応系内を室温まで昇温させ、24時間攪拌を行なった。
水(80mL)を加えて、クエンチし、酢酸エチルを加えて有機層を分離した。有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、さらに硫酸ナトリウムで乾燥を行ない、濾液を濃縮し、褐色の固体を得た。これをアセトニトリルから再結晶(繰り返し3回)することにより、薄黄色の結晶として化合物(9)を得た。(収量7.48g,72.5%)
以下に化合物(9)の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl3,TMS,δ):0.44(s,18H),7.41(s,2H),8.27(s,2H)
質量分析:GC−MS m/z=518(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(9)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(10)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(10)を合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに原料である2−ブロモフェニル酢酸(5.12g,23.8mmol)、トルエン(20mL)、メタノール(10mL)を入れ、そこへトリメチルシリルジアゾメタンの2Mヘキサン溶液(12.5mL)を徐々に滴下し、15分間攪拌を行った。過剰のトリメチルシリルジアゾメタンを酢酸でクエンチし、反応溶液をエバポレーターで減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、溶液を3cm厚のシリカゲルパッドを通じ、再度濃縮することで淡黄色の液体として化合物(10)を得た。
(収量5.1g,94%)
以下に化合物10の分析結果を示す。
精密質量分析:LC−TofMS m/z = 227.966 (実測値), 227.979 (計算値.)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物10の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(11)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(11)を合成した。
Figure 0005807359
充分に乾燥させた200mLの丸底フラスコに、1,6−ジブロモピレン(2.5g,6.9mmol)を入れ、アルゴン置換を行なった後、脱水THF(120mL)を加え、アセトン−ドライアイス浴で−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(2.15eq,9.1mL(1.6Mヘキサン溶液),14.9mmol)を5分かけて滴下し、2時間攪拌を行なった。−78℃で、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.2eq,15.3mmol,3.1mL)を一度に加え、そのままの温度で1時間攪拌した後、反応系内を室温まで昇温させ、さらに2時間攪拌を行なった。
塩化アンモニウム水溶液(50mL)と水(100mL)を加えて、クエンチし、さらにトルエンを加えて有機層を分離した。水層をトルエンで二回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、続けて硫酸ナトリウムで乾燥を行ない、濾液を濃縮し、黄色の固体を得た。これを最少量のトルエンに溶解させて、シリカゲルカラム(3cm)を通じ、濾液を濃縮し淡黄色の固体を得た。これをトルエン/アセトニトリルから再結晶することで、無色の結晶として化合物(11)を得た。(収量2.2g,70%)
以下に化合物(11)の分析結果を示す。
精密質量分析:LC−TofMS m/z = 454.244 (実測値), 454.249 (計算値.)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(11)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(12)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(12)を合成した。
Figure 0005807359
300mLの三口フラスコに、1,4−ベンゼンジメタノール(15.7g,94.6mmol)、ヨウ素(19.2g,75.7mmol)、ヨウ素酸(8.3g,47.3mmol)、クロロホルム(50mL)、酢酸(50mL)、濃硫酸(10mL)をいれ、アルゴンガスで置換した。その後、80℃で3時間攪拌した。その後、ヨウ素、ヨウ素酸をさらに1/4モル追加して、1時間攪拌した。室温まで冷却した後、析出した目的物をPTFEフィルターで濾取した。その残渣に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出を行った。食塩水で洗浄後、溶媒濃縮することで、茶褐色の固体を得た。ろ過物と合せることで、茶褐色固体として、化合物(12)を得た。(収量28.0g,71%)
以下に化合物(12)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 458(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(12)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(13)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(13)を合成した。
Figure 0005807359
500mLのナスフラスコに、化合物(12)(4.18g,10mmol)、アセトン30mLを加え室温で攪拌した。そこにジョーンズ試薬(1.94M)を6.18mL加え、還流条件で加熱した。緑色になったのを確認しつつ、追加でジョーンズ試薬を計30.9mL加えた。TLCで反応が十分進行したことを確認し、室温に戻し、2−プロパノールを20mL加えさらに30分攪拌した。析出物をろ過し、水で十分洗浄することで白色固体(13)を得た。(収量3.16g,71%)
FTIRで確認したところ、1750cm−1付近にカルボン酸のCO伸縮が見られた。
以下に化合物(13)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 446(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(13)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(14)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(14)を合成した。
Figure 0005807359
500mlの4つ口フラスコにTHF(300ml)及び亜鉛粉末(17.23ml、0.263mol)を入れ、氷浴により0℃まで冷却した。そこに四塩化チタン(50.0g,0.263mol)を適下し、1.5時間、還流した。室温に冷却後2‐ブロモベンズアルデヒド(10.16ml、0.0879mol)を加え、5時間還流を行った。
室温に冷却後、飽和炭酸水素ナトリム水溶液(500ml)に反応溶液を加え攪拌し、さらに酢酸エチル(500ml)を加え一夜攪拌した。セライトろ過を行い不溶物をろ別し、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層を水飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチルで再結晶を行ない、化合物(14)を得た。(収量7.0g、収率54%)
以下に化合物(14)の分析結果を示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):7.15(t,2H,J=5.5Hz),7.34(t,2H,J=5.5Hz),7.40(s,2H,),7.60(dd,2H,J1=7.9Hz,J2=1.5Hz),7.73(dd,2H,J1=7.9Hz,J2=1.5Hz)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物14の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(15)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(15)を合成した。
Figure 0005807359
500mlの4つ口フラスコにシクロヘキサン(400ml)、化合物(14)及びヨウ素(0.22g、0.0017mol)を入れた。低圧水銀ランプ(ウシオ社製)を24時間照射した。析出した固体をろ別し、シクロヘキサンで洗浄した。トルエンから再結晶を行い、化合物(15)を得た。(収量1.7g、収率57%)
以下に化合物(15)の分析結果を示す。
H−NMR(CDCl3,TMS)σ:7.53(dd,2H,J=8.1Hz,J=7.7Hz),7.94(d,2H,J=8.1Hz),8.31(s,2H,),8.67(d,2H,J=7.7Hz)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(15)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(16)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(16)を合成した。
Figure 0005807359
200mlの4つ口フラスコにトルエン(60ml)、ビニルトリブチルスズ(1.47ml、0.0050mol)及び、化合物(15)(0.77g、0.0023mol)を入れた。アルゴンガスをバブリングしながら45分攪拌した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.23g、0.00020mol)を加え、4時間還流した。室温まで冷却し、飽和フッ化カリウム水溶液(100ml)に注ぎ攪拌し、さらに酢酸エチル(100ml)を加え攪拌した。セライトろ過を行い、不溶物をろ別し、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層を水飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチルから再結晶を行ない、化合物(16)を得た。(収量0.43g、収率82%)。
以下に化合物(16)の分析結果を示す。
H−NMR(CDCl3,TMS)σ:5.52(dd,2H,J=17.4Hz,J=1.4Hz),5.81(dd,2H,J=10.9Hz,J=1.4Hz)、7.55(dd,2H,J=17.4Hz,J=10.9Hz),7.64(dd,2H,J=8.0Hz,J=7.2Hz),7.74(d,2H,J=7.2Hz),8.10(s,2H,),8.68(d,2H,J=8.0Hz)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(16)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(18)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(18)を合成した。
Figure 0005807359
2L丸底フラスコに、非特許文献Advanced Materials,2009,21,213−216.記載の方法で合成した化合物(17)ジチエノ[2,3−d;2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン(12.7g,42mmol)を入れ、アルゴンガスで置換を行った後、脱水クロロホルム(600mL)、酢酸(600mL)を入れ、氷浴を用いて容器内温を0−3℃に保った。次に、遮光下、N−ヨードスクシンイミド(20.8g,92.4mmol)を徐々に加えた。1時間攪拌後、氷浴を外し、室温に戻し、そのまま一晩攪拌を続けた。沈殿を濾取し、沈殿を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、続けてエタノール、トルエン、エタノールの順で洗浄した。沈殿を真空下乾燥させ、淡黄色の固体を得た。これには、2置換体である化合物(20)の他に、1置換体が僅かに含まれていたが、この段階では分離せず以下の反応で精製せずそのまま用いた。(収量21.5g,収率92.3%)
以下に化合物(18)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 554 (M+),428 (M+ −I)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(18)が主生成物であることを確認した。
〈化合物(19)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(19)を合成した。
Figure 0005807359
300mL丸底フラスコに、化合物(22)(2.55g,4.60mmol)、ヨウ化銅(43.7mg,0.23mmol)を入れ、アルゴンガスで置換を行った後、テトラヒドロフラン(以下THF、100mL)、ジイソプロピルエチルアミン(6.5mL)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(以下、PdCl(PPh97.2mg,0.138mmol)を加え、十分に攪拌しながら、トリメチルシリルアセチレン(1.4mL,10.12mmol)を徐々に加えた。そのまま、室温で一晩攪拌し、赤色の均一溶液を得た。水(200mL)およびトルエン(100mL)を加え、有機層を分離した。水層をトルエン(50mL)で3回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、カラム精製(固定相ト:シリカゲル、移動相:トルエン)に付し、赤色の固体を得た。これをトルエン/アセトニトリルより再結晶することで、黄色の針状結晶として化合物(19)を得た。(収量:1.35g、収率:59.1%)
以下に化合物(19)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z =494.0(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(19)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(20)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(20)を合成した。
Figure 0005807359
300mLの丸底フラスコに化合物(19)(2.3g,4.65mmol)、THF(100mL)、メタノール(30mL)を入れ、水酸化カリウム溶液(1.2gを水15mLに溶解)を加えた。そのまま3時間攪拌し、水(100mL)、メタノール(100mL)を加え、析出した沈殿を濾取した。沈殿を、水、メタノールの順で洗浄し、真空下で乾燥させることで、褐色の固体として化合物(20)を得た。(収量1.62g,99.5%)
以下に化合物(20)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MSm/z=349.9(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(20)の構造と矛盾が無いことを確認した。
〈化合物(21)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(21)を合成した。原料の2,7−ジヨード−9,10−ジヒドロフェナンスレンは、Chem.Mater.,2008,20(20),pp6289−6291に記載の方法に従って、合成したものを用いた。
Figure 0005807359
300mLの丸底フラスコに、2,7−ジヨード−9,10−ジヒドロフェナンスレン(8.21g,19mmol)、AIBN(0.38mmol,62.4mg)、NBS(22.8mmol,4.06g)、四塩化炭素(150mL)を取り、アルゴン雰囲気下、還流温度で2時間攪拌を行った。室温まで冷却した後、沈殿を濾取し、水、続けて熱水、続けてメタノールで洗浄し、減圧下乾燥を行い、淡黄色の固体として化合物(21)を得た。(収量7.41g,収率91%)
以下に化合物(21)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 7.63 (s, 2H), 7.91 (dd, 2H, J=8.5 Hz, J=1.7 Hz), 8.26 (d, 2H, J=1.7 Hz), 8.35 (d, 2H, J=8.5 Hz)
質量分析:GC−fMS m/z = 430(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(21)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(22)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(22)を合成した。
Figure 0005807359
2Lの丸底フラスコに、化合物(21)(14mmol,6.02g)、クロロホルム(300mL)を加え、水浴(20℃)で冷却しながら、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(関東化学製、塩素濃度5%,pH8〜10,750mL)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素ナトリウム(7mmol,2.38g)を加えて、20℃で5時間攪拌を行った。氷水(400mL)を加えて、有機層を分離し、水層をクロロホルムで2回抽出した。合わせた有機層は水、続けて飽和食塩水で洗浄し、炭酸カリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、カラム精製(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン)し、淡黄色の固体として化合物(22)を得た。(収量1.25g,収率20.0%)
以下に化合物(22)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):4.50 (s, 2H), 7.45 (dd, 2H, J1=8.6 Hz, J2=2.3 Hz), 7.65 (d, 2H, J=2.3 Hz), 7.97 (d, 2H, J=8.6 Hz)
質量分析:GC−fMS m/z =446(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(22)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(23)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(23)を合成した。
Figure 0005807359
300mLの丸底フラスコに化合物(22)(4.46g,10mmol)、ジエチルエーテル(200mL)を入れ、アルゴンガスで置換した後、水素化リチウムアルミニウム(12mmol,455mg)を加え、還流下4時間攪拌を行った。水(0.5mL)、続けて1.0N水酸化ナトリウム水溶液(0.5mL)、続けて水(1.5mL)を加え、室温で1時間攪拌を行った。反応溶液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し油状固体を得た。これを精製せず、そのまま次の反応に用いた。
別の200mL丸底フラスコに上記油状固体(4.48g)、THF(30mL),ピリジン(5mL),DMAP(0.5mmol,61mg)を取り、氷冷下カプロン酸クロライド(1.1eq,11mmol,1.48g)を徐々に滴下し、0℃で1時間攪拌し、氷浴を外して室温で6時間攪拌を行った。10%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え30分間攪拌した後、クロロホルム(50mL)を加え、有機層を分離した。水層はクロロホルムで2回抽出を行い、合わせた有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液、続けて水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、淡黄色のオイルとして化合物(23)を得た。(収量3.55g,65%)
以下に化合物(23)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.86 (t, 3H, J =7.2 Hz), 1.21−1.30 (m, 4H) , 1.54−1.60 (m, 2H), 2.20―2.23 (m, 2H), 3.05 (d, 2H), 6.05(t, 1H), 7.45−7.95 (m, 6H)
質量分析:GC−fMS m/z =546(M+)、430(熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(23)の構造と矛盾がないことを確認した。
[合成例3]
〈化合物(比較1)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(比較1)を合成した。
中間体であるヨードテトラリン誘導体(7’)および化合物(比較1)は特願2010−004324号に記載の方法に従って合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに、化合物(7’)(973mg,2.0mmol)、化合物8(466mg,1mmol)、DMF(10mL)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(24.4mg、0.08mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で20時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、セライト濾過で不溶物を除去し、水を加え、有機層を分離した。水層はクロロホルムで3回抽出を行ない、合わせた有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、赤色の液体を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定層:(中性シリカゲル(関東化学製)+10wt%フッ化カリウム,溶媒:ヘキサン/酢酸エチル、9/1→8/2、v/v)にて精製することにより、黄色の固体を得た。これをヘキサン/エタノールから再結晶することにより、黄色の固体として化合物(比較1)を得た(収量680mg,収率79.3%)。
以下に化合物(比較1)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.87−0.89(m,12H),1.28−1.33(m,16H),1.61−1.69(m,8H),1.96−2.01(m,4H),2.28−2.36(m,12H),6.08(d,4H,J=12.1Hz),7.37(d,2H,J=8.6Hz),7.48(s,2H),7.57−7.59(m,4H)
元素分析(C5064):C,69.92;H,7.67;O,14.85;S,7.44(実測値)、C,70.06;H,7.53;O,14.93;S,7.48(理論値)
融点:113.7−114.7℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(比較1)の構造と矛盾がないことを確認した。
次に、上記合成例で合成した特定化合物中間体を用いて、本発明で用いたπ電子共役系化合物前駆体の合成を行った。
次に、上記合成例で合成した特定化合物中間体を用いて、本発明で用いたπ電子共役系化合物前駆体の合成を行った。
〈化合物(実1)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実1)を合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに、化合物(7−1)(550mg、1.49mmol)、化合物(8)(346mg、0.74mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略、10mL)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(24.4mg、0.08mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で24時間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水を加え、有機層を分離した。水槽はジクロロメタンで3回抽出を行い、合わせた有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を、シリカゲルパッド(厚さ3cm)を通した後、濃縮し、赤色の固体を得た。これをメタノール、ヘキサンで洗浄することで黄緑色の固体を得た(収量235mg)。
リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製、LC−9104)にて分離精製することにより、黄色の結晶として化合物(実1)および化合物(実2)を得た[化合物(実1):収量85mg、化合物(実2):収量110mg]。
以下に化合物(実1)の分析結果を示す。
〔化合物(実1)〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 0.86 (t, 6H, J = 6.9 Hz), 1.21−1.31 (m, 8H) , 1.57−1.63 (m, 4H), 2.27 (td, 2H, J=7.6 Hz J = 1.7 Hz ), 2.60−2.70 (m, 4H), 5.95 (t, 1H, J = 5.2 Hz), 6.03−6.09 (m, 4H), 6.63 (d, 2H, J = 9.7 Hz), 7.40 (d, 4H, J = 8.1 Hz), 7.49 (s, 2H), 7.491 (dd, 2H, J = 7.7Hz, J = 2.3 Hz)
精密質量(LC−TofMS) (m/z):624.232 (実測値), 624.237(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実1)および化合物(実2)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(実2)の合成〉
上記反応式(スキーム)に従って、化合物(実1)の合成法により、化合物(実1)と共に化合物(実2)を合成し、上記のように、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製、LC−9104)にて分離精製することにより、黄色の結晶として化合物(実2)を得た化合物(実2):収量110mg]。
以下に化合物(実2)の分析結果を示す。
〔化合物(実2)〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 0.86 (t, 3H, J =7.5 Hz), 1.22−1.32 (m, 4H) , 1.57−1.64 (m, 2H), 2.28 (td, 2H, J=7.7 Hz J = 1.2 Hz ), 2.62−2.72 (m, 2H), 6.03−6.10 (m, 2H), 6.63 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 7.40−7.42 (m, 2H,), 7.46−7.52 (m, 3H), 7.53 (s, 1H), 7.61 (s, 1H), 7.79 (dd, 2H, J = 8.6 Hz J = 1.7 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.88 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 8.07 (d, 1H, J = 8.1 Hz),
精密質量(LC−TofMS) (m/z):508.149(実測値), 508.153(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実2)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(実3)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実3)を合成した。
Figure 0005807359
実施例2において化合物(7−1)を化合物(7−2)に置き換えた以外は同様に反応を行い、精製することで黄色の結晶として化合物(実3)を得た。(収量253mg,収率75%)。
以下に化合物(実3)の分析結果を示す。
〔化合物(実3)〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 2.60−2.70 (m, 4H), 3.38 (s, 6H), 5.90 (t, 2H, J = 5.2 Hz), 6.03−6.09 (m, 4H), 6.63 (d, 2H, J = 9.7 Hz), 7.40 (d, 4H, J = 8.1 Hz), 7.49 (s, 2H), 7.50 (dd, 2H, J = 7.7Hz, J = 2.3 Hz)
精密質量(LC−TofMS) (m/z):456.127 (実測値), 456.122 (計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実3)の構造と矛盾がないことを確認した。
〈化合物(実4)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実4)を合成した。
Figure 0005807359
実施例2において化合物(7−1)を化合物(7−3)に置き換えた以外は同様に反応を行い、精製することで黄色の結晶として化合物(実4)を得た。(収量291mg,収率60%)。
以下に化合物(実4)の分析結果を示す。
〔化合物(実4)〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 0.86 (t, 6H, J = 6.9 Hz), 1.21−1.31 (m, 8H) , 1.57−1.63 (m, 4H), 2.60−2.70 (m, 4H), 4.15−4.17 (m, 2H), 5.95 (t, 2H, J = 5.2 Hz), 6.03−6.09 (m, 4H), 6.63 (d, 2H, J = 9.7 Hz), 7.40 (d, 4H, J = 8.1 Hz), 7.49 (s, 2H), 7.491 (dd, 2H, J = 7.7Hz, J = 2.3 Hz)
精密質量(LC−TofMS) (m/z):656.232 (実測値) 656.227 (計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実4)の構造と矛盾がないこと確認した。
〈化合物(実5)の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実5)を合成した。
Figure 0005807359
実施例2において化合物(7−1)を化合物(7−4)に置き換えた以外は同様に反応を行い、精製することで黄色の結晶として化合物(実5)を得た。(収量193mg,収率45.5%)。
(ここで、上記式中においてTMS基はトリメチルシリル基の略称である。)
以下に化合物(実5)の分析結果を示す。
〔化合物(実5)〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 0.04 (s, 18H), 2.60−2.70 (m, 4H), 5.15 (t, 2H, J =5.2 Hz), 6.00 (t, 2H, J = 5.2 Hz), 6.03−6.09 (m, 4H), 6.63 (d, 2H, J = 9.7 Hz), 7.40 (d, 4H, J = 8.1 Hz), 7.48 (s, 2H), 7.50 (dd, 2H, J = 7.7Hz, J = 2.3 Hz)
精密質量(LC−TofMS) (m/z):572.175 (実測値), 572.170 (計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実5)の構造と矛盾がないことを確認した。
[化合物(実6)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実6)を合成した。
Figure 0005807359
[化合物(実6−1)の合成]
200mLの3つ口フラスコに、化合物9(2.58g,5mmol)、化合物10(2.2eq,11mmol,2.52g)、トルエン(100mL)を取り、アルゴンガスで30分間バブリングを行った後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(229mg、0.25mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(304mg、1.0mmol)を加え、アルゴン雰囲気下8時間還流した。
反応溶液をシリカゲルパッド(厚さ3cm)で濾過し、濾液を濃縮し、褐色の固体を得た。これをトルエンから再結晶することで、淡黄色の結晶として化合物(実6−1)を得た。
(収量1.85g,収率76%)
以下に化合物(実6−1)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 486(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実6−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実6−2)の合成]
300mLの丸底フラスコに、化合物(実6−1)(1.8g,3.7mmol)、水(30mL)、メタノール(30mL)、THF(90mL)をいれ、アルゴンガスで置換した後、水酸化リチウム1水和物(3eq,11.1mmol,466mg)を加え、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後、濃塩酸を加えて系内を酸性にし、析出した沈殿をPTFEフィルターで濾取し、これを水、続けてヘキサンで洗浄し、減圧下で60℃で乾燥を行い淡黄色の固体として、化合物(実6−2)を得た。(収量1.6g,94%)
以下に化合物(実6−2)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 458(M+)
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ) : 3.79 (s, 4H),7.39−7.44 (m, 6H), 7.47 (s, 2H), 7.53 (dd, 2H, J= 6.9 Hz, J= 1.7 Hz), 8.49 (s, 2H), 12.3−12.5 (br, 2H)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実6−2)の構造と矛盾がないことを確認した。
[化合物(実6−3)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実6−2)(2mmol,916mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、氷冷下トリフルオロメタンスルホン酸無水物無水物(10mL)、五酸化二リン(0.5g)を加え、そのままの温度で2時間攪拌した。内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、黄色の固体として、化合物(実6−3)を得た。これ以上精製することなく、次の反応に用いた。
以下に化合物(実6−3)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 422(M+)
IR:1720 (C=O, ketone)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実6−3)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実6)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実6−3)(2mmol,844mg)を取り、メタノール(20mL)、THF(40mL)を加え、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(5eq,10mmol,378mg)を加えて、そのままの温度で2時間攪拌した。内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、淡黄色の固体を得た。これ以上精製することなく、減圧乾燥後、次の反応に用いた。
別の100mLの丸底フラスコに上記固体、DMAP(0.1mmol,12.2mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、THF(20mL)、ピリジン(2mL)を加え、氷冷下カプロン酸クロライド(4eq,8mmol,1.07g)を5分間かけて滴下し、そのままの温度で原料が消失するまで4時間攪拌した。反応溶液に水(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(30mL)で二回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色の固体として化合物(実6)の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン)で生成し、淡黄色の固体を得た。さらに、トルエン/エタノールから再結晶し、淡黄色の結晶として化合物(実6)を得た。(収量149mg,収率12%)
以下に化合物(実6)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS) (m/z):622.228 (実測値), 622.221 (計算値.)
質量分析:GC−MS m/z = 622(M+), 390 (熱分解物)
分解温度:200度以下
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実6)の構造と矛盾がないことを確認した。
[化合物(実7)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実7)を合成した。
Figure 0005807359
[化合物(実7−1)の合成]
200mLの3つ口フラスコに、化合物10(2.0g,8.7mmol)、化合物11(3.92mmol,1.78g)、リン酸カリウム水和物(13g)、DMF/トルエン(1/1,100mL)を取り、アルゴンガスで30分間バブリングを行った後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(383mg、0.42mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(510mg、1.67mmol)を加え、アルゴン雰囲気下85℃で7時間攪拌した。反応溶液に飽和塩化アンモニウム溶液、水、トルエンを加えて、有機層を分離し、水層をトルエンで2回抽出した。合わせた有機層を水、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥を行った。濾液を濃縮し、黄色の固体を得た。
これをカラム精製(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン→トルエン/酢酸エチル=9/1)し、黄色の固体として化合物(実7−1)を得た。
(収量1.09g,収率56%)
以下に化合物(実7−1)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 498 (M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実7−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実7−2)の合成]
300mLの丸底フラスコに、化合物(実7−1)(498mg,1mmol)、水(5mL)、メタノール(5mL)、THF(15mL)をいれ、アルゴンガスで置換した後、水酸化リチウム1水和物(3eq,140mg)を加え、80℃で2時間攪拌した。室温まで冷却した後、1N塩酸を加えて系内を酸性にし、酢酸エチルを加えて、有機層を分離した。水層を繰り返し2回酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色の固体として、化合物実7−2を得た。(収量447mg,収率95%)
以下に化合物(実7−2)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 470(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実7−2)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実7−3)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実7−2)(0.8mmol,376mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、氷冷下トリフルオロメタンスルホン酸無水物(10mL)、五酸化二リン(0.5g)を加え、そのままの温度で2時間攪拌した。内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、黄色の固体として、化合物(実7−3)を得た。これ以上精製することなく、次の反応に用いた。
以下に化合物(実7−3)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 434(M+)
IR:1724 (C=O, ketone)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実7−3)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実7)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実7−3)(0.8mmol,376mg)を取り、メタノール(20mL)、THF(40mL)を加え、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(5eq,4.0mmol,151mg)を加えて、そのままの温度で2時間攪拌した。
内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、淡黄色の固体を得た。これ以上精製することなく、減圧乾燥後、次の反応に用いた。
別の100mLの丸底フラスコに上記固体、DMAP(0.1mmol,12.2mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、THF(20mL)、ピリジン(2mL)を加え、氷冷下2−エチルヘキサノイルクロライド(4eq,3.2mmol,517mg)を5分間かけて滴下し、そのままの温度で原料が消失するまで6時間攪拌した。反応溶液に水(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(30mL)で二回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色の固体として化合物(実7)の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン→トルエン/酢酸エチル=95/5)で精製し、淡黄色の固体を得た。さらに、トルエン/エタノールから再結晶し、淡黄色の固体として化合物(実7)を得た。(収量57.5mg,収率10%)
以下に化合物(実7)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS)(m/z):718.408 (実測値), 718.402 (計算値.)
質量分析:GC−MS m/z = 718(M+), 402 (熱分解物)
分解温度:200度以下
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実7)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実8)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実8)を合成した。
Figure 0005807359
[化合物(実8−1)の合成]
200mLの三口フラスコに、化合物13(1.6g,3.6mmol)、炭酸カリウム飽和水溶液20mL、THF40mLを加え、アルゴンバブリングを30分行った。その後、2−ナフタレンボロン酸(1.55g、9.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)208mg、0.36mM)を加え、75度で8時間加熱攪拌した。TLCで反応が終了していることを確認し、室温まで冷却し、析出した目的物をろ別した。トルエンで再結晶することで実8−1の目的物を得た。収量800mg、収率50%
以下に化合物(実8−1)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 446(M+)
以上の分析結果およびTLCのRf値から、合成したものが、化合物(実8−1)の構造と矛盾がないことを確認した。
100mLの丸底フラスコに、化合物(実8−1)(821mg、2mmol)を取り、アルゴンガスで置換した後、氷冷下トリフルオロメタンスルホン酸無水物無水物(10mL)、五酸化二リン(0.5g)を加え、そのままの温度で2時間攪拌した。内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、黄色の固体として、化合物(実8−2)を得た。化合物(実8−2)以外に互変異性体であるエノール体も見られたが、これ以上精製することなく、次の反応に用いた。
以下に化合物(実8−2)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 410(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実8−2)の構造と矛盾がないことを確認した。
[化合物(実8)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実8−2)(1mmol,410mg)を取り、エタノール(20mL)、THF(40mL)を加え、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(5eq,5mmol,189mg)を加えて、そのままの温度で2時間攪拌した。内容物を氷水(200g)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、淡黄色の固体を得た。これ以上精製することなく、減圧乾燥後、次の反応に用いた。
別の100mLの丸底フラスコに上記固体およびDMAP(0.1mmol,12.2mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、THF(50mL)、ピリジン(2mL)を加え、氷冷下ピバロイルクロライド(4eq,8mmol,1.07g)を5分間かけて滴下し、そのままの温度で原料が消失するまで4時間攪拌した。反応溶液に水(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(30mL)で二回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色の固体として化合物(実8)の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン)で精製し、淡黄色の固体を得た。さらに、トルエン/エタノールから再結晶し、淡黄色の結晶として化合物(実8)を得た。(収量87mg,収率15%)
以下に化合物(実8)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS) (m/z):582.273 (実測値), 582.277 (計算値.)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実8)と矛盾がないことを確認した。
[化合物(実9)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実9)を合成した。
Figure 0005807359
[化合物(実9−1)の合成]
200mLの三口フラスコに、化合物13(1.6g,1.0mmol)、リン酸カリウム0.5g、DMF30mLを加え、アルゴンバブリングを30分行った。その後、1−ピレニルボロン酸(0.62g、2.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(104mg、0.18mM)を加え、70度で8時間加熱攪拌した。室温まで冷却し、析出した目的物をろ別した。ヘキサンで洗浄し、トルエンで再結晶することで実9−1の目的物を得た。収量500mg、収率84.1%。
以下に化合物(実8−1)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 594(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実9−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実9−2)の合成]
100mLの丸底フラスコに、化合物(実9−1)(1.49g、2.5mmol)を取り、アルゴンガスで置換した後、氷冷下トリフルオロメタンスルホン酸無水物無水物(50mL)、五酸化二リン(1g)を加え、そのままの温度で8時間攪拌した。内容物を氷水(計1kg)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、黄色の固体として、化合物(実9−2)を得た。化合物(実9−2)以外に互変異性体であるエノール体も見られたが、これ以上精製することなく、次の反応に用いた。
以下に化合物(実9−2)の分析結果を示す。
質量分析:GC−MS m/z = 558(M+)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実9−2)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実9)の合成]
300mLの丸底フラスコに、化合物(実9−2)(1.3mmol,726mg)を取り、エタノール(50mL)、THF(200mL)を加え、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム(7.8mmol,295mg)を加えて、そのままの温度で2.5時間攪拌した。
内容物を氷水(1Kg)に注ぎ込み、析出した沈殿を濾取し、水、続けてヘキサンで洗浄し、淡黄色の固体を得た。これ以上精製することなく、減圧乾燥後、次の反応に用いた。
別の300mLの丸底フラスコに上記固体およびDMAP(0.13mmol,15.9mg)を取り、アルゴンガスで置換した後、THF(200mL)、ピリジン(10mL)を加え、氷冷下2−ブチルオクタノイルクロライド(1.13g、5.2mmol)をそのまま滴下し、0度で原料が消失するまで4時間攪拌した。室温に戻した後、反応溶液に水(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(30mL)で二回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色の固体として化合物(実9)の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:トルエン)で精製し、淡黄色固体を得た。(収量84mg,収率7%)
以下に化合物(実9)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS)(m/z):926.533 実測値), 926.527 (計算値.)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実9)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実10)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実10)を合成した。
Figure 0005807359
[実10−1の合成]
100mlの4つ口フラスコにDMF(30ml)、化合物(17)(0.20g、0.89mmol)、化合物(7−1)(2.2eq,g、1.96mmol,726mg)、トリフェニルホスフィン(9.1mg、0.034mol)、トリエチルアミン(0.34mL、2.4mmol)を入れた。アルゴンガスをバブリングしながら45分攪拌した。酢酸パラジウム(3.9mg、0.017mmol)を加え、50度で24時間攪拌した。
室温まで冷却し、セライトろ過を行い、得られた溶液をクロロホルムで抽出した。有機層を水飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮して得られた固体を最少量のトルエンに溶解させて、シリカゲルパッド(厚さ2cm)を通じて、再度濃縮した固体をリサイクルGPC(日本分析工業社製)により副生成物との分離、精製を行い、黄色の固体として、化合物(実9−1)を得た。(収量444mg,収率70%)
以下に化合物(実10−1)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS) (m/z):714.378 (実測値), 714.372 (計算値.)
質量分析:GC−MS m/z =714(M+), 483 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実10−1)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実10)の合成]
500mlの4つ口フラスコにシクロヘキサン(300ml)、化合物(実10−1)(130mg、0.182mmol)及びヨウ素(30mg、0.117mmol)を入れた。低圧水銀ランプ(ウシオ社製)を5時間照射した。シクロヘキサンを減圧留去したのち、残渣に水、クロロホルムを加えて、有機層を分離し、水層をクロロホルムで2回抽出した。合わせた有機層を、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄したのち、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、黄色油状固体を得た。これをリサイクルGPC(日本分析工業社製)により副生成物との分離、精製を行い、淡黄色の固体として、化合物(実10)を得た。(収量28.6mg,収率22%)
以下に化合物(実10)の分析結果を示す。
精密質量(LC−TofMS) (m/z):714.336 (実測値), 714.340 (計算値.)
質量分析:GC−MS m/z =714(M+), 479 (熱分解物)
分解温度:200℃以下
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実10)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実11)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(実11)を合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに化合物(24)(275mg,0.785mmol)、化合物(7−5)(750mg,1.65mmol)、ヨウ化銅(20.0mg)を入れ、THF(30mL)、ジイソプロピルエチルアミン(1.5mL)を加え、アルゴンガスで置換を行った後、PdCl(PPh(16.6mg)を加え、室温で72時間攪拌した。
ジクロロメタン(100mL)、水(100mL)を加えて有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を水、次に飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、溶液をアルミナパッド(活性度II(水分含有量3%))に通じ、再度濃縮し、黄色のオイルを得た。これをリサイクルGPC(日本分析工業社製)により精製を行い、黄色の固体として、化合物(実11)を得た。(収量273mg,収率34.7%)
以下に化合物(実11)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ): 0.74−0.83 (m, 12H), 1.10−1.32 (m, 24H) , 1.36−1.43 (m, 4H), 1.50−1.60(m, 4H), 2.2−2.32 (m, 2H), 2.56−2.62 (m, 2H), 2.65−2.71 (m, 2H), 6.03−6.08 (m, 4H), 6.56 (d, 2H, J=9.0 Hz), 7.33 (s, 2H), 7.36−7.41 (m, 4H), 7.48 (s, 2H), 8.28 (s, 2H)
精密質量(LC−TofMS) (m/z):714.336 (実測値), 714.340 (計算値.)
質量分析:GC−MS m/z =1003(M+), 603 (熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実11)の構造と矛盾が無いことを確認した。
[化合物(実12)の合成]
12下記反応式(スキーム)に従って化合物(実12)を合成した。
Figure 0005807359
100mLの丸底フラスコに化合物(23)(546mg,1.0mmol)、エチニルベンゼン(224mg,2.2mmol)、ヨウ化銅(30.0mg)を入れ、THF(30 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(2.5mL)を加え、アルゴンガスで置換を行った後、PdCl(PPh(32.0mg)を加え、室温で72時間攪拌した。ジクロロメタン(100mL)、水(100mL)を加えて有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を水、次に飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、溶液をアルミナパッド(活性度II(水分含有量3%))に通じ、再度濃縮し、黄色のオイルを得た。これをリサイクルGPC(日本分析工業社製)により精製を行い、淡黄色の固体として、化合物(実12)を得た。(収量292mg,収率59.0%)
以下に化合物(実12)の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.86 (t, 3H, J =7.2 Hz), 1.21−1.30 (m, 4H) , 1.54−1.60 (m, 2H), 2.20―2.23 (m, 2H), 3.05 (d, 2H), 6.05(t, 1H), 7.2−7.95 (m, 16H)
質量分析:GC−MS m/z =495 (M+), 378(熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(実12)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
次に、上記実施例で合成したπ電子共役系化合物前駆体の置換基脱離によるπ電子共役系化合物(特定化合物)への変換例を示す。
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(7)の置換基脱離による2−ヨードナフタレンへの変換〕
〈2−ヨードナフタレンの合成〉
下記反応式(スキーム)に従って2−ヨードナフタレンを合成した。
Figure 0005807359
合成例1の<化合物(7−1)の合成>で合成した化合物(7−1)(100mg)を丸底フラスコに入れ、フラスコを内温140℃のまま1時間攪拌した。フラスコを50℃で1時間真空乾燥を行った後、フラスコ内に残った無色の結晶を掻き取った(収量68.5mg、収率99.8%)。
以下にこの結晶の分析結果を示す。
H NMR (400 MHz, CDCl, TMS, δ) :7.46−7.52(m,2H),7.55−7.58(m,1H),7.68−7.74(m,2H),7.76−7.82(m,1H),8.22−8.26(m,1H)
元素分析値(C10I):C,47.11;H,2.94(実測値)、C,47.27;H,2.78(理論値)
質量分析:GC−MS m/z=254(M+)
融点:50.5−52.0℃
以上の結果から、上記反応で得られた無色の結晶が2−ヨードナフタレンであることが確認された。
[比較例1]
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(7’)を用いた場合の2−ヨードナフタレンへの変換の試み〕
実施例13で用いた化合物(7−1)を、合成例3で用いた化合物(7’)に変えた以外は実施例13と同様にして、置換基脱離による2−ヨードナフタレンへの変換を試みた。
フラスコ内に残った薄黄色の液体を分析したところ、置換基脱離による2−ヨードナフタレンへの変換は行われず、化合物(7’)のままであることが確認された。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実1)の置換基脱離による化合物(24)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(24)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(24)を合成した。
Figure 0005807359
前記実施例1で合成した化合物(実1)(50mg,0.159mmol)を丸底フラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、140℃(フラスコ内温)で1時間加熱攪拌を行った。鮮やかな黄色の固体が得られた。これをトルエン、続けてメタノールで洗浄し、真空下乾燥することで黄色の結晶として化合物(24)を得た(収量30.2mg、収率96.1%)。
化合物(24)の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2616):C, 79.54; H, 4.00; S, 16.20 (実測値) C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 392.068 (実測値), 392.069(計算値)
融点:357.7℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(24)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実2)の置換基脱離による化合物(24)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(24)〕の合成〉
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実2)を用いて加熱温度を140℃から130℃に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率97.0%)
得られた黄色の結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2616):C, 79.50; H, 4.01; S, 16.23 (実測値)、C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 392.066 (実測値), 392.069(計算値)
融点:357.9℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(24)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実3)の置換基脱離による化合物(24)への変換〕
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実3)を用いて加熱温度を140℃から180℃に変更し、加熱時間を1時間から4時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率95.5%)
得られた黄色の結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2616):C, 79.50; H, 4.05; S, 16.24 (実測値)、C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 392.072 (実測値), 392.069(計算値)
融点:358.3℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(24)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実4)の置換基脱離による化合物(24)への変換〕
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実4)を用いて同様に反応を行い、目的物を得た。(収率97.3%)
得られた黄色の結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2616):C, 79.51; H, 4.04; S, 16.30 (実測値)、C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 392.075 (実測値), 392.069(計算値)
融点:358.0℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(24)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実5)の置換基脱離による化合物(24)への変換〕
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実5)を用いて加熱温度を140℃から180℃に変更し、加熱時間を1時間から4時間に変更以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率95.0%)
得られた黄色の結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2616):C, 79.51; H, 4.05; S, 16.28 (実測値)、C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 392.073 (実測値), 392.069(計算値)
融点:357.9℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(24)の構造と矛盾がないことを確認した。
[比較例2]
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(比較1)の置換基脱離による化合物(24)への変換の試み〕
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(比較1)を用いて同様に反応を行ったところ、黄色の結晶ではなく薄黄色の固体が得られた。得られた固体をトルエン、続けてメタノールで洗浄したところ、固体は全て溶解してしまい、目的とする結晶は得られなかった。この溶液を濃縮し、得られた固体の分析を行ったところ、その値から未変換の化合物(比較1)であることが確認された。
実施例13乃至18および比較例1、2について、以下のように纏めることができる。
本発明のπ電子共役系化合物前駆体によれば、従来π電子共役系化合物前駆体よりも低い温度(同一骨格での比較で)での加熱(エネルギー付与:外部刺激)で概ね95%以上の高収率で難溶性の有機半導体化合物を高収率、高純度で得ることが可能であることが示された。この結果、ナフタレンの様な低分子だけでなく、本来であれば難溶性であるπ共役系化合物(特に有機半導体化合物)の製造においても有効な方法であることが示唆された。これは、有機半導体以外にも有機顔料、その他多くの分子においても適用が可能である。
同一の脱離基および変換後の骨格を有する、実施例11と比較例1および実施例12と比較例2より、本発明のπ電子共役系化合物前駆体特有の骨格(シクロヘキサジエン骨格)が変換温度の低温化に寄与していることが分かった。従来、置換基脱離には250〜300℃以上の加熱条件が必要とされていた、アシルオキシ基以外のシリルエーテル、アルキルエーテルについても、本発明の主骨格に組み込むことにより、200℃以下での変換が確認された。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実6)の置換基脱離による化合物(25)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(25)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(25)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実6)を用いて加熱温度を140℃から150℃に変更し、加熱時間を1時間から2時間に変更した以外は同様に反応を行った。得られた橙色の結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C2614):C, 79.50; H, 4.01; S, 16.23 (実測値)、C, 79.55; H, 4.11; S, 16.34 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 390.060 (実測値), 390.054(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(25)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実7)の置換基脱離による化合物(26)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(26)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(26)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実7)を用いて加熱温度を140℃から150℃に変更し、加熱時間を1時間から2時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率94.9%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C3218):C, 95.25; H, 4.71 (実測値)、C, 95.49; H, 4.51 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 402.149 (実測値), 402.141(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(26)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実8)の置換基脱離による化合物(27)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(27)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(27)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実8)を用いて加熱温度を140℃から150℃に変更し、加熱時間を1時間から3時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率95.3%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C3018):C, 95.11; H, 4.88 (実測値)、C, 95.21; H, 4.79 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 378.136 (実測値), 378.141(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(27)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実9)の置換基脱離による化合物(28)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(28)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(28)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実9)を用いて加熱温度を140℃から150℃に変更し、加熱時間を1時間から4時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率95.1%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C4242): C, 95.59; H, 4.41(実測値)、C, 95.79; H, 4.21 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 526.167 (実測値), 526.172(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(28)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実10)の置換基脱離による化合物(29)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(29)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(29)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実10)を用いて加熱温度を140℃から150℃に変更し、加熱時間を1時間から2時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率93.3%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C3822): C, 95.25; H, 4.71 (実測値)、C, 95.37; H, 4.63 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 478.165 (実測値), 478.172(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(29)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実11)の置換基脱離による化合物(30)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(30)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(30)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実11)を用いて加熱温度を140℃から160℃に変更し、加熱時間を1時間から4時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率93.3%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C3818):C, 75.79; H, 3.11; S, 21.07 (実測値)、C, 75.71; H, 3.01; S, 21.28 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 602.023 (実測値), 602.029(計算値)

以上の分析結果から、合成したものが、化合物(30)の構造と矛盾がないことを確認した。
<置換基脱離による変換例>
〔π電子共役系化合物前駆体化合物(実12)の置換基脱離による化合物(31)への変換〕
〈有機半導体化合物〔化合物(31)〕の合成〉
下記反応式(スキーム)に従って化合物(31)を合成した。
Figure 0005807359
実施例14において、化合物(実1)に換えて、化合物(実12)を用いて加熱温度を140℃から160℃に変更し、加熱時間を1時間から2時間に変更した以外は同様に反応を行い、目的物を得た。(収率95.4%)
得られた結晶の分析結果を以下に示す。
元素分析値(C3818):C, 95.16; H, 4.60 (実測値)、C, 95.21; H, 4.79 (理論値)
精密質量分析:LC−MS (m/z) = 378.148 (実測値), 378.141(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(31)の構造と矛盾がないことを確認した。
<有機半導体前駆体のインク化(溶解度の評価)>
実施例1、3、5、6、7、8、9、10、11、12で得られた化合物およびそれに対応する特定化合物(24)乃至化合物(33)をそれぞれトルエン、THF、アニソール、クロロホルム(各2.0mg)に溶け残りが出るまで添加し、溶媒還流下で10分間攪拌し、室温まで冷却し、さらに1時間攪拌し、16時間静置した後、上澄みを0.2μmのPTFEフィルターで濾過して飽和溶液を得た。これを減圧下乾燥させることにより、各溶媒に対する該化合物の溶解度を算出した。結果を下記表1に示す。
表1における評価基準は以下のとおりである。
◎:溶解度が0.5wt%以上、
○:0.1wt%以上0.5wt%未満、
△:0.005wt%以上0.1wt%未満、
×:0.005wt%未満
Figure 0005807359
表1の結果より、本発明のπ電子共役系化合物前駆体は複数の極性の異なる溶媒に対して概ね0.1wt%以上の溶解性を有していることが分かり、これは従来のシクロヘキセン骨格に対して二つ脱離基が導入されたものと比べても遜色がなく、引き続き塗布プロセスにおける溶媒の選択性に富むことが明らかとなった。このように高い溶解性を有しているので、インクジェット塗布、スピンコート法、溶液キャスト法、ディップコーティング法やスクリーン印刷、グラビア印刷などの種々の製膜、印刷方法を適用することができる。
一方変換後の材料である化合物(24)乃至化合物(31)はこれら全ての溶媒に0.005wt%以下の溶解性であり、π電子共役系化合物前駆体を構成する溶解性基の寄与が大きいことが分かる。即ち、脱離反応により変換された化合物が不溶化することを示している。また、化合物(33)のように、それほど分子サイズが大きくない場合は、置換基脱離を行った後も溶解性を示すことが分かる。
<化合物(実1)の脱離挙動の観察例>
実施例1で合成した化合物(実1)の熱分解挙動を、TG−DTA[リファレンスAl、窒素気流下(200mL/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製]を用いて25℃から500℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。
また、相変化挙動をDSC[リファレンスAl、窒素気流下(200mL/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製]を用いて25℃から500℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。
上記の結果を図4に示す。なお、図4において横軸は温度[℃]、縦軸左は重量変化[mg]、縦軸右は熱流[mW]である。
TG−DTAにおいて120℃から225℃にかけて、36.4%の重量減少が見られた。これはカプロン酸2分子(理論値37.1%)とほぼ一致する。また、357.4℃に融点の存在が認められた。これは化合物(24)の値と一致する。
以上の結果から、化合物(実1)が加熱によって化合物(24)へと変換されることが示された。
<化合物(実2)の脱離挙動の観察例>
化合物(実1)を化合物(実2)に換えた以外は実施例27と同様にして、熱分解挙動および相変化挙動の観察を行った。結果を図5に示す。なお、図5において、横軸は温度[℃]、縦軸左は重量変化[mg]、縦軸右は熱流[mW]である。
TG−DTAにおいて115℃から200℃にかけて、21.9%の重量減少が見られた。これはカプロン酸1分子(理論値22.7%)とほぼ一致する。また、357.9℃に融点の存在が認められた。これは化合物(24)の値と一致する。
以上の結果から、化合物(実2)が加熱により化合物(24)へと変換されることが示された。
本発明のπ電子共役系化合物前駆体(有機半導体前駆体)は従来[例えば、化合物(比較1)]と比べて100℃以上も低い温度領域において脱離基の脱離が起こり、続けて分子の結晶化が起こっていることが明らかとなった(DSCの発熱ピーク参照)。また、有機半導体前駆体を構成する溶解基(脱離性置換基)の数が1つのものは2つのものと比べて、脱離温度が低温化し、重量減少の完了温度が低いことも分かった。
〈薄膜の作製例〉
実施例1で合成した化合物(実1)、及び、化合物(実2)をそれぞれ(各5mg)THFに0.1wt%の濃度になるように溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過して溶液を調製した。濃硫酸に24時間付けおき洗浄した膜厚300nmの熱酸化膜を有するN型のシリコン基板上に、調製した溶液をピペットを用いて100μL滴下またはインクジェット装置(リコープリンティングシステム製)を用いて5pLの液滴を50回塗出し、シャーレを被せてそのまま溶媒が乾燥するまで静置し、各薄膜を作製した。各薄膜を偏光顕微鏡および走査型プローブ顕微鏡[コンタクトモード、Nanopics(商品名)、Seiko Instruments Inc.製]によって行ったところ、薄膜の形成方法に拠らずいずれも平滑な連続したアモルファス膜が得られていることが分かった。次に前記2つの薄膜を、アルゴン雰囲気下、150℃で30分間アニール処理した後に、前記と同様にして膜の観察を行った。アニール処理後は、偏光顕微鏡で色のついたドメインが複数観測され、平滑な結晶質の膜が得られていることが分かった。これらの膜の偏光顕微鏡写真を図6に示す。これは、前駆体である化合物(実1)および化合物(実2)が溶解性基であるエステル基を脱離することにより、膜中でより分子間相互作用の強い化合物(24)へと変換され、結晶質になったためである。それぞれの薄膜は、25℃のクロロホルム、THF、トルエン等に不溶であった。
[比較例3]
化合物(実1)、化合物(実2)を、化合物(実1)、化合物(実2)から変換された前記化合物(24)に変え、THFの代わりに150℃に加熱したオルトジクロロベンゼンを用いた以外は実施例28と同様にして溶液の調整、薄膜の作製を行った。いずれの膜においても、目視で分かるほどに結晶が析出しており、不連続な膜になっているのが確認された。偏光顕微鏡においても、不連続で色のついたドメインが複数観測された。走査型プローブ顕微鏡で確認したところ100μm以上の表面荒さが認められた。
以上の結果から、一部の高沸点溶媒に対しても難溶性であり、結晶が析出しやすい化合物の薄膜化において、本発明の製造方法が有効であることが示された。
[溶液プロセスによる有機薄膜トランジスタの作製・評価]
実施例28と同様にして、化合物(実1)を含む薄膜を作製した。前記薄膜をアルゴン雰囲気下、150℃で60分間アニール処理をすることで、有機半導体である前記化合物(24)からなる薄膜(膜厚50nm)に変換を行った。
この薄膜上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート:1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)を形成し、図1(D)の構造の電界効果型トランジスタ(FET)素子を作製した。金電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザーB1500Aを用いて(測定条件:ソースドレイン電圧を−100V固定、ゲート電圧−20Vから+100Vまで掃引)評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。このFET素子のI−V特性図を図7に示す。
図7において白丸は縦軸左(ドレイン電流の絶対値)に対応し、黒丸は縦軸右(ドレイン電流の絶対値の平方根)に対応する。横軸は印加したゲート電圧である。
この有機薄膜トランジスタの電流−電圧(I−V)特性における飽和領域から、電界効果移動度を求めた。
尚、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、下記数式(1)を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)2/2L ・・・(1)
(ただし式中、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
また、ゲート電圧40Vにおけるオン電流と同0Vにおけるオフ電流の比をオンオフ比として算出した。その結果を下記表2に示す。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実2)に替えて、有機半導体である化合物(24)からなる薄膜に変換した以外は実施例29と同様にして、FET素子を作製し、特性評価を行った。その結果を下記表2に示す。
[比較例4]
比較例3に記載のオルトジクロロベンゼン溶液を用いて、実施例29と同様の基板上に有機半導体である化合物(24)からなる薄膜を形成し、FET素子を作製して特性評価を行った。その結果を下記表2に示す。
[比較例5]
実施例29において化合物(実1)を化合物(実比較)に換えた以外は、実施例29と同様にしてアニール処理[有機半導体である化合物(24)からなる薄膜への変換を目的とするための処理]を施して薄膜を形成し、FET素子を作製して特性評価を行った。その結果を下記表2に示す。
Figure 0005807359
実施例29における化合物(実1)を化合物(実6)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実7)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実8)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実9)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実10)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実11)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
実施例29における化合物(実1)を化合物(実12)に置き換えて薄膜の形成、トランジスタの作製を行った結果を実施例32とした。この活性層を用いたトランジスタも実施例29,30と同様の良好なp型のトランジスタ特性を示した。
表2に示す特性評価の結果から、難溶性の有機半導体化合物[化合物(24)]を高沸点溶媒に溶かして製膜するのみでは、良好なFET特性は得られず(比較例4)、また前駆体の膜を変換する手法においても従来のもの[化合物(比較1)]では150℃程度の処理では良好なFET特性が得られていない(比較例5)ことが分かった。
一方、本発明のπ電子共役系化合物前駆体を有機半導体前駆体として用い、有機半導体化合物を含む膜に変換することで、溶液プロセスを用い、且つ150℃程度の比較的低温の処理によって良好なFET特性が得られることが明らかとなった(実施例29乃至実施例38)。
即ち、本発明の有機薄膜トランジスタはいずれも良好なホール移動度、電流オンオフ比を示し、有機薄膜トランジスタとして優れた特性を有している。このことから、本発明の製造方法は有機薄膜トランジスタのような有機電子デバイス素子の作製においても有用であることが示された。
上記結果から、本発明のπ電子共役系化合物前駆体は、各種有機溶剤への溶解性に優れ、従来のもの[例えば、化合物(比較1)]より低いエネルギーの付与(加温などの外部刺激の印加)においても起こり得る脱離反応を利用して、末端オレフィンを生成することなく特定の化合物(有機半導体化合物等)を高収率で合成することが可能であるため、エネルギー量の点でも、プロセスアビリティーにおいても優れている。
また、難溶性であるために従来製膜が困難な有機半導体化合物であっても、本発明の置換基脱離化合物を前記有機半導体化合物の前駆体として用い、一旦製膜した後に熱などを加えて目的とする前記有機半導体化合物へと変換させる製造方法も適用することで、容易に連続した有機半導体膜を得ることができる。このように形成された有機半導体膜は、有機電子デバイスへの応用が可能であり、特に半導体などの電子デバイス、EL発光素子などの光学−電子デバイス、電子ペーパー、各種センサー、RFIDs(radio frequency identification)などの分野に応用できると期待される。
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁膜
特開平5−055568号公報 WO2006−077888号公報 特開平7−188234号公報 特開2008−226959号公報 特開2007−224019号公報 特開2008−270843号公報 特開2009−188386号公報 特開2009−215547号公報 特開2009−239293号公報 特開2009−28394号公報 特開2009−84555号公報 特開2009−88483号公報 特開2006−352143号公報 特開2009−275032号公報 特願2009−209911号明細書
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Claims (10)

  1. π電子共役系化合物前駆体A−(B)mを含む溶媒の塗工液を基材に塗布して形成された塗工膜より、下記一般式(II)で示される脱離性置換基を脱離させA−(C)mで示されるπ電子共役系化合物を含有する膜状体を生成することを特徴とする膜状体の製造方法。
    Figure 0005807359

    (ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q乃至Q上の任意の原子と、A上の任意の原子とで共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
    [式(I)、(Ia)、(II)中、XおよびYは水素原子もしくは脱離性置換基を表し、該XおよびYのうち一方は脱離性置換基であり、他方は水素原子である。Q乃至Qはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または、1価の有機基であり、QとQは水素原子、ハロゲン原子または、前記脱離性置換基以外の一価の有機基である。Q乃至Qは隣り合った基同士でそれぞれ結合して環を形成していてもよい。]
  2. 前記脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、該XおよびYのうち一方は置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、他方は水素原子であることを特徴とする請求項1に記載の膜状体の製造方法。
  3. 前記塗工液の塗布が、インクジェット塗布、スピンコート法、溶液キャスト法、ディップコーティング法からなる群から選択される方法により行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜状体の製造方法。
  4. 前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
  5. 前記化合物A−(B)mより脱離する一般式(II)で示される脱離成分がハロゲン化水素または置換されていても良いカルボン酸または置換されていても良いアルコール、二酸化炭素のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
  6. 前記化合物A−(B)mが溶媒可溶性であり、前記脱離性置換基の脱離により生成する前記化合物A−(C)mが溶媒不溶性であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の膜状体の製造方法。
  7. π電子共役系化合物前駆体A−(B)mより、下記一般式(II)で示される脱離性置換基を脱離させA−(C)mで示されるπ電子共役系化合物を生成することを特徴とするπ電子共役系化合物の製造方法。
    Figure 0005807359

    (ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、Q乃至Q上の任意の原子と、A上の任意の原子とで共有結合を介して連結しているか、A上の任意の原子と縮環している。Cは上記一般式(Ia)で表される構造を少なくとも部分構造として有している
    [式(I)、(Ia)、(II)中、XおよびYは水素原子もしくは脱離性置換基を表し、該XおよびYのうち一方は脱離性置換基であり、他方は水素原子である。Q乃至Qはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または、1価の有機基であり、QとQは水素原子、ハロゲン原子または、前記脱離性置換基以外の一価の有機基である。Q乃至Qは隣り合った基同士でそれぞれ結合して環を形成していてもよい。]
  8. 前記脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、該XおよびYのうち一方は置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であり、他方は水素原子であることを特徴とする請求項7に記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
  9. 前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物であることを特徴とする請求項7又は8に記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
  10. 前記化合物A−(B)mが溶媒可溶性であり、前記脱離性置換基の脱離により生成する前記化合物A−(C)mが溶媒不溶性であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のπ電子共役系化合物の製造方法。
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