JP2012193316A - π電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途 - Google Patents

π電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】脱離反応時の前駆体膜の流動化を抑制すること。また、変換後の半導体材料の不連続化を低減すること。その結果として、特性の低下が抑えられ、ばらつきの抑えられた電気特性を得ることが可能な電子デバイス用インク組成物ならびにそれを用いた電子デバイス、電界効果トランジスタ、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】電子デバイス用インク組成物であって、高分子材料と、π電子共役系化合物前駆体と、前記高分子材料および前記前駆体を溶解させる溶媒を少なくとも含有することを特徴とするインク組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は脱離可能な溶解性基を有するπ電子共役系化合物前駆体を用いた電子デバイス用インク組成物ならびにその用途、およびその製造方法に関する。本発明の電子デバイス用インク組成物は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機エレクトロニクス用素材として有用である。
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
これまでに、低分子の有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている(特許文献1)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対し極めて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経るのが一般的である。また、大気安定性にも乏しいため、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスでデバイスを作製できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
最近では、アセン系の縮合多環材料の一つである2,7―ジアルキル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(非特許文献1)は、高い溶解性を有し、スピンコート、キャストなどで塗布可能であり、比較的低温の熱処理により、ペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm/V・s程度)を示すことが報告されている。しかしながら、上記化合物は液晶相を有し、液晶相への転移温度が100℃程度と比較的低く、製膜後の熱処理により膜構造の変化が生じ得るため、有機半導体デバイス作製におけるプロセス適応性に問題がある。また、有機半導体層の溶解性が高いと、その後のデバイス製造工程において耐溶剤性が低くなるという課題を持つ。
このようななか、低分子の有機半導体材料と共に高分子材料を用いて有機半導体膜を形成するポリマーブレンド法が提案されている。例えば、特許文献2では、ペンタセンと環状ポリオレフィンの混合溶液を塗布して半導体膜を形成する方法を開示している。しかしながら、上述のようにペンタセンは汎用溶媒に対する溶解性が低いため、溶媒選択や製造方法に制限を受けることが懸念される。これに対し、溶解性の高い低分子化合物と高分子材料を混合して半導体膜を形成する方法も開示されている。例えば、特許文献3、4では、溶解基を有するペンタセン誘導体と高分子材料を混合した溶液を塗布して半導体層を形成する方法を開示している。また、特許文献5では、非特許文献1記載の溶解性低分子化合物と高分子材料を混合して半導体膜を形成する方法を開示している。これらの文献では、ポリマーブレンドにより製膜後の熱処理に対する耐熱性が向上することや、半導体薄膜層の安定性が改善されることを報告している。一般に低分子化合物は分子間力が強く、溶液から均質な膜を得ることが難しいことが知られているが、高分子を混合することで低分子の移動を制限することや下地との濡れ性を改善すること、また、溶液が乾燥する過程で、低分子と高分子が相分離することなどにより、上記の効果が得られると考えられている。
しかしながら、上記の相分離を利用する方法では、溶媒乾燥過程における残留溶媒量が低分子と高分子の相分離の構成に影響を与えるため、材料の処方や作製プロセスを複雑にすることが懸念される。また、用いる低分化合物と混合するポリマーの耐溶剤性や耐熱性が混合膜の性質を左右するため、デバイス製造の後工程に対しては、さらなる適応性の向上が望まれている。
一方で、溶媒溶解性の高い低分子化合物を半導体前駆体(以下前駆体)とし、これを溶剤などに溶解し塗布プロセスで膜を形成し、そののち半導体に変換して有機半導体膜を得、電界効果トランジスタを作製する方法が報告されている。例えば、ペンタセンあるいは類似の芳香族炭化水素(非特許文献2、3)、ポルフィリン(例えば、非特許文献4、5)、オリゴチオフェン(非特許文献6)等を用いた例がある。上記のペンタセンやポルフィリンは変換後の半導体分子が酸素や水に対して安定ではないため、大気下での取り扱いが難しいという課題はあるものの、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスによる製膜が可能で、比較的高い移動度を示し、かつ、耐溶剤性や耐熱性が高くなるという利点がある。
本発明者らは、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で有機半導体膜を製膜できる溶解性を示し、成膜後は簡単な不溶化処理により不溶化し、その後のデバイス製造の後工程におけるダメージを軽減すると共に、不溶化処理後は良好な半導体特性を示す有機半導体前駆体材料の開発を試みてきた。鋭意検討の結果、良好な移動度を有する縮合多環系の有機半導体材料の開発(特許文献6)、および、溶媒溶解性の高い前駆体の開発(特許文献7、8、9)を報告している。前駆体から半導体へ変換させる方法としては、例えば熱エネルギーを与える方法がある。
しかしながら、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスを用いて、上記の前駆体を塗布形成後、加熱により前駆体を変換させて有機半導体膜を形成しても、良好な特性を安定して得ることは難しい。一般に、半導体層を塗布で形成する場合には、製膜する際の構造形成が半導体特性に影響を及ぼすことが知られており、塗布溶媒、塗布乾燥速度などを上手く選ぶ必要がある。同様に、上記の前駆体を半導体へ変換して半導体層を形成する場合にも、変換および結晶化の制御が重要となる(非特許文献7参照)。前駆体から半導体への変換は、重量変化や体積変化を伴う脱離反応で、変換後の分子間の凝集力が半導体膜構造形成の駆動力となるのが特徴である。そのため、例えば、ペンタセン前駆体については、前駆体膜が均質な連続膜を形成していても、脱離反応に伴い膜密度が減少し、かつ、ペンタセン分子が動きながら凝集することでミクロなペンタセン結晶の集合状態となるため、膜の不連続化や空隙が存在することを確認している。これらの存在は特性の低下やばらつきを生む原因となる。また、脱離反応が外部から付与された熱エネルギーにより進む場合には、前駆体および変換後の半導体は加熱状態にある。そのため、前駆体がその温度において軟化もしくは溶融する場合には、前駆体膜そのものが流動して膜構造を維持できないことがある。その結果、所望の位置に半導体膜を形成できず、膜の連続性や均質性が損なわれることで、良好な特性が得られず、特性ばらつきが大きいという課題があることを見出した。
そこで本発明は、脱離反応時の前駆体膜の流動化を抑制することを目的とする。また、変換後の半導体材料の不連続化を低減することを目的とする。その結果として、特性の低下が抑えられ、ばらつきの抑えられた電気特性を得ることが可能な電子デバイス用インク組成物ならびにそれを用いた電子デバイス、電界効果トランジスタ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の電子デバイス用インク組成物は、少なくとも高分子材料と前駆体材料と前記高分子材料および前駆体材料を溶解させる溶媒を含有すること特徴とする。前記インク組成物を用いた電子デバイスならびに電界効果トランジスタは、前記インク組成物を塗布して溶媒を乾燥させた後、熱エネルギーにより前駆体を半導体に変換させ、半導体層を形成することを特徴とする。加熱変換時に、溶融状態となり流動する前駆体に対しては、高分子材料はアンカー材として機能する。高分子材料は、加熱時に大きく流動することはないため、所望の領域に半導体膜を得ることが可能となる。また、高分子材料は低分子化合物よりも密度が低いため、加熱状態での半導体分子の熱運動の場を与えることができ、半導体分子の凝集に起因する膜の不連続化を抑制することができる。
而して、上記課題は、つぎの(1)項〜(9)項記載のインク組成物、
有機膜、電子デバイス及び電界効果トランジスタを包含する本発明によって、解決される。
(1)「電子デバイス用インク組成物であって、高分子材料と、π電子共役系化合物前駆体と、前記高分子材料および前記前駆体を溶解させる溶媒を少なくとも含有することを特徴とするインク組成物」。
(2)「前記π電子共役系化合物前駆体が下記一般式(I)中のA−(B)mで表され、下記一般式(I)で示される工程で、前記π電子共役系化合物前駆体A−(B)mが、π電子共役化合物A−(C)mと脱離性置換基X−Yに変換することを特徴とする、前記第(1)項に記載のインク組成物。
Figure 2012193316
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは下記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは下記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよい。)
Figure 2012193316
Figure 2012193316
(上記一般式(I)〜(III)中、X,Yのうち一方は水素原子であり、他方は置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。XまたはYのアシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、m>2の場合、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。
ただし、Bは上記一般式(I)中、(X、Y)の置換位置の炭素原子を除き、A上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、B上の(X、Y)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。)」
(3)「前記XまたはYで表されるアシルオキシ構造が、下記一般式(IV)で示されるエステル構造であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載のインク組成物。
Figure 2012193316
(式中、Rは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよい。)
(4)「前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物である前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のインク組成物。」
(5)「前記置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物から選択されるπ電子共役化合物である前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のインク組成物。」
(6)「前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載のインク組成物を支持体上に付着させた後、外部刺激により前記一般式(I)で示される工程を用いて得られた有機膜。」
(7)「前記外部刺激が熱エネルギーであることを特徴とする前記第(6)項に記載の有機膜。」
(8)「前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機膜を用いた電子デバイス。」
(9)「前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機膜をトランジスタの活性層として用いたことを特徴とする、電界効果トランジスタ。」
以上説明したように、本発明によれば、印刷法やスピンコート法等のウェットプロセスを用いて前駆体を塗布形成後、加熱変換してなる半導体膜を活性層とする電界効果トランジスタにおいて、以降の実施例で説明するように、高分子を含まない前駆体膜から形成されたものと比較して、所望の領域で膜の連続性や均質性が向上していることが確認された。その結果、特性の低下やばらつきが低減されていることが確認された。
本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体(1)及びπ電子共役系化合物(2)の加熱前及び加熱後のIRスペクトル図である。 本発明における前駆体(1)の熱分解挙動を示すTG−DTAチャートである。 本発明におけるπ電子共役系化合物(5)の単結晶の顕微鏡観察写真である。 本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体(4)の変換膜であるπ電子共役化合物(5)を含む有機膜のSEM写真である。 π電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜のSEM写真である。 本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を説明する図である。 本発明における前駆体化合物(1)を用いたサンプル4の塗布膜の顕微鏡写真を示す。 サンプル4の顕微鏡写真を示す。 サンプル1の顕微鏡写真を示す。 サンプル4のトランジスタ特性伝達特性)を示す。 サンプル1のトランジスタ特性伝達特性)を示す。
以下、本発明について実施の形態を示して、説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
ここで本発明でもちいるπ電子共役化合物前駆体および該化合物から得られるπ電子共役系化合物について、具体的に説明する。
[π電子共役化合物前駆体および該化合物から得られるπ電子共役系化合物]
本発明で用いられるπ電子共役系化合物の特長は、特定の溶媒可溶性置換基を有する「π電子共役化合物前駆体」に対して、外部刺激を加え特定の置換基を脱離させることにより、π電子共役系化合物を得られることが特徴であり、π電子共役化合物前駆体は単に前駆体と表記される。前記「π電子共役化合物前駆体」はA−(B)mの式で表される。すなわち、式中Aはπ電子共役系置換基であり、Bは前記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基であり、mは自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、XまたはYの置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上のXまたはYの置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。
これに外部刺激を加えることにより、溶媒可溶性置換基Bは特定の脱離性置換基XおよびYをXYの形で脱離し、代わりに一部がオレフィンに還元された置換基Cへと変換されるとともに、前記一般式(II)のπ電子共役系化合物A−(C)mで表されるπ電子共役化合物が得られる。
本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体は、π電子共役系置換基であるAに、溶媒可溶性置換基Bが結合した構造をしている。
ここで、溶媒可溶性置換基Bおよび置換基Cは下記一般式(II)および(III)で表される。
Figure 2012193316
Figure 2012193316
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよい。
上記一般式(I)〜(III)中、X,Yのうち一方は水素原子であり、他方は置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。XまたはYのアシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。
ただし、Bは上記一般式(I)中、(X、Y)の置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の(X、Y)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。Cは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。}
XまたはYで示される置換基の例としては、水素原子、炭素数1以上の置換もしくは無置換のアシルオキシ基が挙げられる。
置換もしくは無置換のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2以上のハロゲン原子を含んでいても良い直鎖または環状の脂肪族カルボン酸および炭素数4以上の芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来のアシルオキシ基が挙げられる。具体的には、例えばホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ、3, 3, 3−トリフルオロプロピオニルオキシ、ペンタフルオロプロピオニルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロブタノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
また、前記一般式(II)乃至(III)においてR乃至Rで示される置換基の例としては、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。これらは、アルキル基(好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基)、シクロアルキル基(好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基)が含まれる。以下に説明する置換基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
アルケニル基[直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基]を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基)であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素―炭素単結合を1つ以上二重結合としたものがあげられる。例えばエテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1―ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基)、シクロアルケニル基(上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものがあげられる。例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
アルキニル基(好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上三重結合としたもの)があげられる。例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
アリール基(好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基)であり、例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等が挙げられる。
ヘテロアリール基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物残基)であり、例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、−2−ベンゾチエニル2−ピリミジル等が挙げられる。
アルコキシル基およびチオアルコキシル基(好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基)であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基(好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基)であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基(好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基)であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。また、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基が挙げられる。
アミノ基[好ましくは、アミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)等が挙げられる)]が挙げられる。
前記一般式(I)および(II)において、アシルオキシ基XまたはYは下記一般式(VI)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2012193316
m>2の場合には下記一般式(VI−1)のような、環状のアシルオキシ基を有する構造を取ることが可能であり、XまたはYの位置で置換され、環を形成している。
Figure 2012193316
前記Rの範囲は前述のとおりであるが、その中においても水素原子(環状のアシルオキシ基の場合は除く)、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアルコキシル基、置換または無置換のチオアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、シアノ基が特に好ましく、より好ましくは水素原子(環状のアシルオキシ基の場合は除く)、置換または無置換のアルキル基である。最も好ましくは、置換または無置換のアルキル基の時である。
脱離成分X−Yとしては前記アシルオキシ基を構成する置換基の−O−結合部位を切断し末端に水素を置換した対応するカルボン酸があげられる(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、トリフルオロ酢酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、シクロプロパン酸、シクロブタン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸などが挙げられる。)
上記一般式(VI)における置換基Rには特に制限はないが、溶媒可溶性や成膜製という観点からは、置換基としてある程度分子間相互作用を減少し、溶媒との親和性を高めるようなものであることが有利になってくるが、置換基の脱離前後における体積変化があまりに著しいと脱離反応における薄膜の均一性に問題が生じることが懸念されるため、適度な溶解性を維持しつつできるだけ小さい置換基である方が好ましい。
上記π電子共役系置換基Aとしては、π電子共役平面を有するものであればいかなるものであっても良いが、具体的にはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環が好ましく、より好ましくは、
(i)1つ以上の前記芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、または前記環同士が縮環された化合物、
(ii)(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、
上記(i)および(ii)より形成される群から少なくとも一つ以上選択される組み合わせで選ばれるπ電子共役系化合物が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましく、具体的には、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペンタセン、チエノチオフェン、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン(DNTT)、ベンゾジチエノチオフェン(TTPTT)などの縮合多環化合物、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェンなどのような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類などが挙げられる。
前記溶媒可溶性置換基Bとしては、一般式(I)で表した構造を部分的に含むものであれば特に制限はされない。また、RからRは互いに環状を形成することができる。環状を形成する好ましい例として、シクロヘキセン構造を部分的に有する構造が挙げられる。この場合、一般式(I)、(II)、(III)は、それぞれ以下の一般式(VII)、(VIII)、(IX)のように表すことができる。
Figure 2012193316
Figure 2012193316
Figure 2012193316
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、B’は上記一般式(I)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。
ただし、B’は上記一般式(I)中、(X,X),(Y,Y)の置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の(X,X),(Y,Y)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。Cは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
上記一般式(I)および(II)中、(X,X)、(Y,Y)のうち少なくともいずれか一対はともに水素原子であり、残りの一対はともに置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。また、(X,X)または(Y,Y)の一対の前記アシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。R乃至Rは水素原子または置換基である。
ただし、(X,X)が前記アシルオキシ基であるとき、(Y,Y)は水素原子であり、(Y,Y)が前記アシルオキシ基であるとき(X,X)は水素原子である。
さらに、一般式(I)中、m>2でRからRが互いに環状を形成する場合、構造Bの一例としては下記のような構造が挙げられる。
Figure 2012193316
これらはR乃至Rおよび(X,X)、(Y,Y)の置換位置の炭素原子以外であればπ電子共役系置換基Aと縮環または共有結合を介して連結され得る。
前記したπ電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として下記の化合物群を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基Bにはアシルオキシ基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも推察される。
Figure 2012193316
Figure 2012193316
Figure 2012193316
前記前駆体A−(B)mに外部エネルギーを印加することにより、後述の脱離反応を起こし、特定の置換基を脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)mの具体例を以下に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2012193316
Figure 2012193316
Figure 2012193316
[2.π電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法]
本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いる製造方法の場合、プラスチックス、金属、シリコンウエハ、ガラス等の基質(支持体)上に、例えば塗工により形成された前駆体含有膜中に含まれるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mは、X−Yで示される脱離成分を脱離し、オレフィン構造を有する化合物A−(C)mへと変換する。
Figure 2012193316
π電子共役化合物前駆体A−(B)mから脱離する基であるX,Yは脱離性基と定義され、X−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記沸点としては大気圧(1013 hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ電子共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下にXがアシルオキシ基、Yが水素原子、Rが置換又は無置換のアルキル基である場合を一例として下記に示すが、本発明の製造例は必ずしもこれらに制限されるものではない。
Figure 2012193316
上記の例の場合、外部エネルギーを印加することにより、一般式(XI)で示される脱離反応が進行する。アルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、オレフィン構造を含む構造に変換される。加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合はカルボン酸は気体となる。
上記一般式(XI)で示される化合物から脱離成分が脱離する機構について以下に概略を示す。
Figure 2012193316
上記一般式(XII)に示すように、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸が脱離し、一般式(XI)でも示されるようなオレフィン構造へと変換される。
ここで、β炭素上の水素原子の引き抜きを行えるのは酸素原子に限らず、同じく第16族の元素であるセレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子においても同様のことが起こり得る。
さらに、ここで本発明でもちいるπ電子共役化合物前駆体および該化合物から得られるπ電子共役系化合物について、理解を容易にするための簡潔な開示として、その中核たる前駆体A−(B)mからの脱離性基の脱離による目的化合物A−(C)mへの変換の内容ついて具体例により詳細に説明する。
Figure 2012193316
一般式(XI)でしめしたπ電子共役系化合物前駆体(1)(5mg)を、シリコンウエハを介して任意の温度(150,160,170,180,220,230,240,260℃)に設定したホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行った。
上記サンプルおよび加熱前のπ電子共役系化合物前駆体(1)、および別ルートで合成および精製したπ電子共役系化合物(2)のIRスペクトル(KBr法、Spectrum GX(商品名)、Perkin Elmer社製)を測定した。その結果を、図1に示す。
前駆体(1)の240℃の加熱条件において、―O―(1156cm−1およびC=O(1726cm−1))の吸収が消失し、新たな吸収(810,738,478cm−1、芳香族)の存在が確認された。そして、これは化合物(2)のスペクトルと一致する。
また、前駆体(1)の熱分解挙動を、TG−DTA(リファレンスAl,窒素気流下(200mL/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製)を用いて25℃から500℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。その結果を図2に示す。
TG−DTAにおいて160〜290℃にかけて、56.7%の重量減少が見られた。これはカプロン酸4分子(理論値54.2%)とほぼ一致する。また、357.7℃に融点の存在が認められた。これは化合物(2)の値と一致する。
以上の結果から化合物(1)が加熱により化合物(2)へと変換されることが示された。
また、脱離反応の閾値は240℃前後であることも示された。
[π電子共役系化合物前駆体からの変換膜]
本発明でもちいるπ電子共役系化合物前駆体からの変換膜について、理解を容易にするため、一般式(XIV)で示す具体例を開示し説明する。但し、具体例を以下に示すが、π電子共役系化合物前駆体からの変換膜はこれらに限定されるものではない。
ここで、具体的な本発明で用いる変換膜の製造方法の一例を示す。
Figure 2012193316
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、一般式(XIV)で示したπ電子共役系化合物前駆体(4)のクロロホルム溶液インク(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。その後、不活性雰囲気で230度5分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(4)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(6)に変換された膜を得た。
ここで、図3にπ電子共役系化合物(5)の単結晶の顕微鏡観察写真を示す。さらに、図4に、上記製造方法によって製造されたπ電子共役系化合物前駆体(4)の変換膜であるπ電子共役化合物(5)を含む有機膜のSEM写真を示す。さらに、比較のため、他の有機膜の製造方法として、π電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜のSEM写真を示す。
面外・面内X線回折によって、図4と図5の薄膜では、一致した回折ピークを有していることが明らかとなっている(図示しない)。そのため、変換膜はπ電子共役系化合物(5)を主として含む膜であることが明らかとなっている。
図3に示すように、溶液成長乃至気相成長で得られたπ電子共役系化合物の単結晶には、その製法における晶癖が見られる。たとえばπ電子共役系化合物(5)では、板状結晶であり、θ1=約130度の角度を有している。π電子共役系化合物(5)の結晶格子から推定できる角度である。
図4の本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からの変換膜では、同一方向のドメインができており、クラックまたは前駆体変換による晶癖が見えている。θ2=約130度の角度を有しており、本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からの変換膜であることを意味している。図5で示したπ電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜を異なることは明らかであり、ドメインの大きさ、ドメインの形、ドメインが形成する角度の様子に差異が見られる。また、本発明で製造された有機膜は、真空蒸着膜と異なる特性(たとえば、トランジスタ特性)を有する。
このように、本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からπ電子共役系化合物に変換された有機膜は、真空蒸着法などで別の方法で製造された膜と異なる場合があり、膜の形状、種々の解析方法から容易に本発明で用いられる変換膜であるかどうか判断できる。
脱離反応を行なうために印加するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、上記脱離反応には、官能基の構造に依存するが、加熱が必要となることが多い。
脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40−500℃の範囲が好ましく、さらに前駆体の合成の熱安定性を考慮するとより好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
上記の酸または塩基は脱離反応の触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加しても良いし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行っても良いし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
[電子デバイス]
本発明の特定化合物は、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明の特定化合物を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
[トランジスタ構造]
図6の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の特定化合物を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)および図示しない支持体(基質)上にゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
「製膜方法:有機半導体層」
[インク組成、溶媒]
本発明のインク組成物に用いられる溶媒は、次のように決めることができる。
例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。すなわち、前記前駆体A−(B)mを含む塗工液のための溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が500℃以下であることが好ましい。しかし、揮発性が高ければ高いほど良いという訳ではない。沸点50℃以上のものが好ましい。まだ充分に確認した訳ではないが、伝導性には、前駆体が有する脱離性基の単なる離脱のみでなく、分子相互間の接触のための配置状態変化も重要なためかも知れない。つまり、塗工膜中に存在する前駆体は、それが有する脱離性基が除去されたのち、ランダム状態から、分子の向き又は位置の少なくとも部分的変化により分子同士の隣接化、接触や再配列、凝集、結晶化等が生じるための時間が必要なためかも知れない。
いずれにしても、溶媒としては具体的には、前駆体A−(B)mが有する例えば脱離性基としての極性のカルボエステル基に親和性のあるメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒に加えて、本体構造部分と比較的親和性のあるトルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
また、塗工液には、さらに、本発明の目的達成を損なわない程度で、カルボエステル基分解促進のための揮発性又は自己分解性の酸、塩基材料を含んでしてもよい。また、トリクロロ酢酸(加熱によりクロロホルムと炭酸ガスに分解)、トリフロロ酢酸(揮発性)のような強酸性の溶媒は、弱いルイス酸であるカルボエステル基の追い出しに効果があるので好ましく用いられる。
[高分子材料]
本発明のインク組成物に用いられる高分子材料とは、高分子化合物、もしくは高分子化合物を主要成分とし、その他に種々の素材を混合した材料である。高分子化合物とは、非常に多数の原子が化学結合してできる巨大分子のことであり、単量体の繰り返し構造単位を有する重合体も高分子化合物に含まれる。一般的に分子量が約一万以上のものは高分子材料とみなされるが、広義においてはオリゴマーと呼ばれる分子量の低い重合体も高分子材料と呼ばれる。本発明における高分子化合物とは、上記の分子量が高い化合物だけでなく、比較的分子量の小さい重合体も含まれる。本発明の高分子材料は、室温で固体であり、かつ溶媒に溶解する材料であることが好ましい。本発明の高分子材料の具体例としては、有機系合成高分子化合物、有機系天然高分子化合物、無機系高分子化合物に大別される。具体例として、以下に示す材料およびこれらの誘導体、共重合体、混合体が挙げられるが、下記のこれら全ての高分子化合物は一種又は二種以上を任意に組み合わせて使用することも出来る。有機系合成高分子化合物として、合成樹脂、プラスチック、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリエチレン系高分子、フェノール樹脂系高分子、ポリスチレン系高分子、アクリル樹脂系高分子、アミド樹脂系高分子、エステル樹脂系高分子、ナイロン系高分子、ビニロン系高分子、ポリエチレンテレフタレート系高分子、合成ゴム系高分子、ポリイソプレン系高分子、アクリルゴム系高分子、アクリロニトリルゴム系高分子、ウレタンゴム系高分子などが挙げられるが、好ましくは合成樹脂、プラスチック、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリエチレン系高分子、フェノール樹脂系高分子、ポリスチレン系高分子、アクリル樹脂系高分子、アミド樹脂系高分子、エステル樹脂系高分子、ナイロン系高分子、ビニロン系高分子、ポリエチレンテレフタレート系高分子などが挙げられ、さらに好ましくは合成樹脂、プラスチック、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレン系高分子、フェノール樹脂系高分子、アクリル樹脂系高分子などが挙げられる。有機系天然高分子として、たんぱく質、核酸、脂質、セルロース、デンプン、天然ゴム等が挙げられる。セルロースやデンプンなどがより好ましい。無機系高分子化合物として、シリコン樹脂、シリコンゴムなどが挙げられる。
本発明高分子材料を電気特性の観点から分類すると、導電性高分子化合物、半導体性高分子化合物、絶縁性高分子化合物に大別される。
導電性高分子化合物とは、分子中に発達したπ電子骨格を有し、電気伝導性を示すことを特徴とする高分子化合物である。導電性高分子化合物の具体例として、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の混合物(一般名、PEDOT−PSS)、核酸やこれらの誘導体が挙げられ、その多くがドーピングにより導電性が向上する。これらの導電性高分子化合物の中でも、ポリアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子などがより好ましい。
半導体性高分子化合物とは、半導体性を示すことを特徴とする高分子化合物である。半導体性高分子化合物の具体例として、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、核酸やこれらの誘導体が挙げられる。その具体例として、ポリアセチレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子などがより好ましい。半導体性高分子化合物はドーピングにより導電性を発現し、そのドーピング量によって導電性を有する事もある。
絶縁性高分子化合物とは、絶縁性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、上記の導電性または半導体性高分子材料以外の高分子材料の大部分は絶縁性高分子材料である。その具体例として、アクリル系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリメタクリレート系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンテレフタレート系高分子、ナイロン系高分子、ポリアミド系高分子、ポリエステル系高分子、ビニロン系高分子、ポリイソプレン系高分子、セルロース系高分子、共重合系高分子およびこれらの誘導体などがより好ましい。
本発明組成物で得られる効果を損なわない限りにおいて、適宜その他の添加物、例えば、キャリア発生剤、導電性物質、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、浸透剤、濡れ調製剤、レオロジー調整剤などを加えてもよい。
[濃度、割合]
本発明のインク組成物における前駆体の添加量は、通常0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.05重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲で使用するのが良い。
本発明のインク組成物における高分子材料の添加量は、通常0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.05重量%〜5重量%の範囲で使用するのが良い。
本発明のインク組成物は、その他の添加物は含有してもよいが、含有しなくても本発明の効果が得られる。
本発明組成物は、例えば、前記含有量になるように、有機半導体材料と高分子化合物を溶媒に溶解もしくは分散させ、それぞれの材料の溶解度に応じた熱処理および攪拌することにより調製できるが、組成物の調製方法はこの限りではない。また、前述のように、その他の添加物を使用してもしなくてもよい。前記のその他の添加物を添加する場合には、未溶解成分を残さないように適宜添加するか、または未溶解成分をろ過などの処理により除去すればよい。
[膜厚など]
本発明の有機半導体膜とは、本発明のインク組成物から形成された薄膜であり、半導体素子の一つの構成要素である。半導体薄膜の膜厚は、必要な機能を損なわない限り薄いほど好ましく、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜1μmである。
[変換プロセス]
上記有機半導体膜は、前駆体からなる膜に対して外部エネルギーを印加し、前駆体を半導体に変換することによって形成することができる。前駆体膜および有機半導体薄膜の作成は、大気雰囲気下、水蒸気下、減圧下、真空下、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気下、あるいは水素などの活性ガス雰囲気下など、目的により適宜選択できるが、簡便な大気雰囲気下が好ましい。前駆体膜および有機半導体膜作成後は、溶媒を除去する工程を経てもよい。溶媒除去工程としては、加熱による熱処理、乾燥ガス雰囲気下、大気雰囲気下での自然乾燥など、目的により適宜選択できるが、簡便な自然乾燥が好ましい。
[印刷法、ウェットプロセス]
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
[電極]
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
[絶縁膜]
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いても良い。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
[HMDS等 有機半導体/絶縁膜界面修飾]
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けても良い。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していても良い。
[チオール等、有機半導体/電極界面修飾]
電極表面の濡れ性の制御や有機半導体層との電気的接触を良好にすることを目的として、あらかじめ電極の表面処理を施しても良い。表面処理材料としては、例えばチオール化合物であり、具体的には、飽和もしくは不飽和アルキルチオール、パーフルオロアルキルチオール、置換又は無置換のベンゼンチオールなどが挙げられる。また、電荷注入層を適宜設けてもよい。
[保護層]
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
[応用デバイス]
上述した本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミック、電気泳動等の、従来公知の各種表示画像素子を駆動するための素子として好適に利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
本発明のディスプレイ装置は、例えば、液晶表示装置では液晶表示素子、EL表示装置では有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子、電気泳動表示装置では電気泳動表示素子などの表示素子を1表示画素として、該表示素子をX方向及びY方向にマトリックス状に複数配列して構成される。前記表示素子は、該表示素子に対して電圧の印加又は電流の供給を行うためのスイッチング素子として、本発明の有機薄膜トランジスタを備えている。本発明のディスプレイ装置としては、前記スイッチング素子が前記表示素子の数、即ち表示画素数に対応して複数備えられる。
前記表示素子は、前記スイッチング素子の他に、例えば、基板、透明電極等の電極、偏光板、カラーフィルタなどの構成部材を備えるが、これらの構成部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知のものを使用することができる。
前記ディスプレイ装置が、所定の画像を形成する場合には、例えば、マトリックス状に配置されたスイッチング素子の中から任意に選択された前記スイッチング素子が、対応する前記表示素子に電圧の印加又は電流を供給する時のみスイッチがON又はOFFとなり、その他の時間はOFF又はONとなるように構成することにより、高速、高コントラストで、前記ディスプレイ装置の表示を行うことができる。なお、前記ディスプレイ装置における画像の表示動作としては、従来から公知の表示動作により画像等が表示される。例えば、前記液晶表示素子の場合には、液晶に対して電圧を印加することにより、該液晶の分子配列を制御して画像等の表示が行われる。また、前記有機若しくは無機のエレクトロルミネッセンス表示素子の場合には、有機若しくは無機膜で形成された発光ダイオードに電流を供給して該有機若しくは無機膜を発光させることにより画像等の表示が行われる。また、前記電気泳動表示素子の場合には、例えば、異なる極性に帯電された白及び黒色の着色粒子に電圧を印加して、電極間で前記粒子を所定方向に電気的に泳動させて画像等の表示が行われる。
前記ディスプレイ装置は、前記スイッチング素子を塗工、印刷等の簡易なプロセスにより作製可能であり、プラスチック基板、紙等の高温処理に耐えない基板を用いることができるとともに、大面積のディスプレイであっても、省エネルギー、低コストで前記スイッチング素子を作製可能となる。
また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
以下に前駆体の合成例、実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
初めに、本発明で用いる前駆体の合成例を説明する。
[合成例1]
下記合成経路により、合成例1の前駆体(例示化合物2)を合成した。
Figure 2012193316
100mlフラスコに、Advanced Materials,2009 2121
3−216.記載の方法で合成したジチエノベンゾジチオフェンを0.500g(1.6
53mmol)入れ、アルゴン置換した後、THF30mlを加えた。次いで、−20℃
に冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液(4.133mmol)を滴下し1時間撹拌した
。さらに、−78℃に冷却し、DMF2.5mlを加えて30分撹拌した後、希塩酸を加
え、室温に戻した。析出した固体を濾取し、水、メタノール、酢酸エチルで洗浄した。減
圧下乾燥し、化合物1を0.392g得た。(収率66%)
次に、25mlフラスコに、上記化合物1を0.100g(0.279mmol)入れ
、アルゴン置換した後、THFを2ml加えて0℃に冷却した。この溶液に、ベンジルマ
グネシウムクロライドの2.0MのTHF溶液を0.56ml(1.116mmol)滴
下した後、室温に戻して4時間攪拌した。
次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、THFを加え、有機層を飽和食塩水で
洗浄した。次いで、溶媒を減圧留去した後、化合物2を含む残渣を、そのまま次の反応に
用いた。
100mlフラスコに、上記残渣、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン3.4mg
(0.028mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン2ml及び塩化ピバロイ
ル0.136ml(1.116mmol)を加え、室温で2日間撹拌した。
次いでTHFを加えた後、この溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナト
リウム水溶液の順に用いて洗浄した。次いで溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマ
トグラフィーにより精製し、目的の合成例1の前駆体(例示化合物2)を、無色の結晶として0.174g得た。
得られた合成例1の前駆体は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。合成例1の前駆体の同定データを次に示す。
1H NMR(CDCl3,TMS)δ/ppm:1.14(18H,s),3.25
〜3.38(4H,m),6.26〜6.31(2H,m),7.17(2H,s),7
.2〜7.3(10H,m),8.23(2H,s).
IR(KBr)ν/cm−1:1717(νC=O)
[合成例1の前駆体(例示化合物1)の熱分析]
合成例1の前駆体のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、240〜260℃で、ピバル酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量28.7%、実測減少量29.7%)が観測された。また、さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441号明細書に記載されている、下記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
Figure 2012193316
[合成例2;合成例2の前駆体(例示化合物1)の合成]
Figure 2012193316
100mlフラスコに、合成例1に記載の化合物2(2.790mmol)、及び、N
,N−ジメチルアミノピリジン34mg(0.279mmol)を入れ、アルゴン置換し
た後、ピリジン20ml及び塩化ヘキサノイル1.56ml(11.16mmol)を加
えて、室温で一晩撹拌した。次いでトルエンを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し
た後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残渣をリサイクル分取G
PC(日本分析工業社製)により精製し、目的の合成例2の前駆体(例示化合物1)を、無色の結晶として0.44g得た。得られた前駆体は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
[例示化合物1の熱分析]
例示化合物1のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜240℃で、ヘキサン酸の2分子に相
当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、
さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−17144
1に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
[合成例3;合成例3の前駆体(例示化合物11)の合成]
Figure 2012193316
50mlフラスコに、2−メチル−6−ニトロ無水安息香酸を1.1g(3.30mm
ol)、N,N−ジメチルアミノピリジンを67mg(0.55mmol)入れ、アルゴ
ンガスで置換した後、トリエチルアミンを0.84ml(6.05mmol)、THFを
15ml、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を0.291ml(3.3mmol)
加えて、室温で30分間攪拌した。次いで、THF20mlに実施例1に記載の化合物2
を600mg(1.1mmol)溶解させた溶液を加えて、室温でさらに24時間攪拌し
た。次いで反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで4回抽出を行った

4回の抽出液を併せて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で2回、飽和食塩
水(50ml)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで溶媒を減圧留去し、粗
生成物として褐色のオイル(収量1.2g)を得た。
これをカラム精製〔固定相:塩基性アルミナ(活性度II)、溶離液:トルエン〕し、黄
色の固体(収量350mg)を得た。続いて、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社
製LC−9104、溶離液:THF)で精製し、黄色の結晶(100mg)を得た。
最後に、この結晶をTHF/MeOHから再結晶することにより、淡黄色の結晶として
、目的物である合成例3の前駆体(例示化合物11)を収量60mgで得た。
この結晶の純度をLC/MS(ピーク面積法)により測定したところ、99.9モル%
以上であることが確認された。合成例3の前駆体(例示化合物11)の同定データを次に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3,TMS)δ/ppm:3.16(q,4H
,J=10.3Hz),3.31(dd,2H,J1=7.5Hz,J2=6.3Hz)
,3.40(dd,2H,J1=6.3Hz,J2=8.0Hz),6.38(t,2H
,J=7.5Hz),5.93(t,1H,J=5.2Hz),7.21〜7.25(8
H),7.28〜7.31(4H),8.25(s,2H)
[合成例3の前駆体(例示化合物11)の熱分析]
(実−3)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜200℃で、トリフルオロプロピオン
酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量33.6%、実測減少量32.6%)が観測
された。また、さらに昇温すると361℃に吸熱ピークが観測された。これは特願200
9−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
[合成例4;合成例4の前駆体(例示化合物10)の合成]
Figure 2012193316
ベンジルマグネシウムクロライドの代りに4−メチルベンジルマグネシウムクロライド
を用いた点以外は、実施例1と同様の方法により、合成例4の前駆体(例示化合物10)を得た。
次いで、合成例2に記載の化合物2の代わりに、化合物3を用いた点以外は実施例2と
同様の方法により、合成例4の前駆体(例示化合物10)を合成した。
[合成例4の前駆体(例示化合物10)の熱分析]
(例示化合物10)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、190〜250℃で、ヘキサン酸2分子に相当
する重量減少(理論減少量29.5%、実測減少量30.0%)が観測された。また、さ
らに昇温すると369℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441
に記載されている、下記化合物(実−4−2)の融点に一致した。
Figure 2012193316
[合成例5;合成例5の前駆体(例示化合物9)の合成]
Figure 2012193316
合成例4に記載の化合物3とアセチルクロライドを用いて、合成例2に記載の化合物2
の代わりに化合物3を用い、塩化ヘキサノイルの代わりにアセチルクロライドを用いた点
以外は、実施例2と同様の方法により前駆体化合物(例示化合物−9)を合成した。
[例示化合物−9の熱分析]
例示化合物−9のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、200〜230℃で、酢酸2分子に相当する重
量減少(理論減少量18.3%、実測減少量17.9%)が観測され、前記化合物(実−
4−2)に変換されることが確認された。
[合成例6;合成例6の前駆体(例示化合物3)の合成]
Figure 2012193316
25mlフラスコに、マグネシウムを0.855g(35.16mmol)入れ、系内
をアルゴン置換し、ジエチルエーテルを2.5ml加えた。次いでヨウ素一粒及び1,2
−ジブロモエタン3滴を加えた後、室温で30分撹拌した。この溶液に、4−ヘキシルベ
ンジルマグネシウムクロライド2.470g(11.72mmol)のジエチルエーテル
溶液11mlを5時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間撹拌した。この溶液をア
ルゴン置換した200mlフラスコに移し、THF 13ml及び塩化亜鉛57mgを加
えて1時間撹拌した。この溶液に合成例1に記載の化合物1を0.500g(1.395
mmol)加えて、室温で3日間撹拌した。反応溶液を0℃の希塩酸に滴下した後、析出
した固体を、水、エタノール、ヘキサンの順に用いて洗浄した。次いで真空乾燥し、ジオ
ール0.820gを得た(収率83%)。
続いて、50mlフラスコに、上記ジオールを0.820g入れ、系内をアルゴン置換
した。THFを10ml、ピリジンを0.75ml、N,N−ジメチルアミノピリジンを
17mg及び無水酢酸を0.44ml加えて、室温で一晩撹拌した。次いでジクロロメタ
ンを加え、溶液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、
リサイクル分取GPCで精製し、目的の(合成例6の前駆体(例示化合物3)を無色の結晶として得た。
[合成例6の前駆体(例示化合物3)の熱分析]
合成例6の前駆体(例示化合物3)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、110〜200℃で、酢酸2分子に相当する重
量減少(理論減少量15.1%、実測減少量15.1%)が観測された。また、さらに昇
温すると272℃及び295℃に相転移及び融点に帰属される吸熱ピークが観測され、下
記化合物(実−6−2)に変換されていることが確認された。
Figure 2012193316
[合成例7;合成例7の前駆体の合成]
合成例6の第一段階の反応で得られたジオールを合成例7の前駆体とした。
Figure 2012193316
例示化合物1の前駆体を使用して、表6に示すインクを作製した。また、溶媒にはメシチレンを用いた。
Figure 2012193316
次の方法で図6(A)で示されるボトムコンタクト型トランジスタ素子を作製した。
膜厚300nmの熱酸化膜を絶縁膜として、Nドープのシリコンウェハーを基板およびゲート電極として用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、気相にてHMDS処理を施し、絶縁膜の表面の濡れ性を変化させた。その後、公知のフォトリソグラフィーにより、チャネル長10μm、膜厚100nmのAu電極パターンを形成した。その後、10mMのパーフルオロベンゼンチオールを含むエタノール溶液中に上記基板を18時間浸漬させることで、ソース電極およびドレイン電極の表面の濡れ性を変化させた。前記の各種インクをインクジェット装置により、およそ50ピコリットルのインクをチャネル部に塗布した。図7にサンプル4の塗布膜の顕微鏡写真を示す。
上記で得られた素子をグローブボックス中のホットプレートで加熱して前駆体を変換させ、有機半導体膜を得た。図8にサンプル4、図9にサンプル1の顕微鏡写真を示す。サンプル4では、インクジェット塗布時には、チャネル領域に連続膜が形成できているにもかかわらず、加熱変換後では、不連続領域が多数存在することがわかる。一方、サンプル1では、チャネル領域を全て連続的に被覆できていることがわかる。
前記サンプル1〜4について、連続膜の形成率を評価するため、加熱前後でのチャネル幅Wの比(Wafter/Wbefore*100)を測定した。その結果、サンプル1〜3では90%以上の高い被覆率を示したのに対し、サンプル4では70%未満であった。例示化合物1について、DSC測定(SII社製:DSC180)を行った結果、5℃/minの速度で昇温したところ、130−180℃で複数の吸熱ピークが観測された。サンプル4のインクジェット塗布サンプルを5℃/minの速度で昇温した過程を観察した結果、上記の温度領域で前駆体が溶融していることが確認された。また、前駆体が溶融している間に膜が流動し、塗布時とは異なる領域に前駆体が移動することがわかった。以上の観察結果から、例示化合物1は、加熱変換する温度で溶融状態を経ており、変換前はチャネル領域を連続的に被覆していても、加熱変換後のチャネル形成率が低下することがわかった。それに対し、高分子材料が混合されているサンプル1〜3については、高分子材料が流動する前駆体に対してアンカーとして働くため、変換膜の不連続化が抑制できることがわかった。
前記サンプル1〜4について、トランジスタ特性を評価した。サンプル4の伝達特性を図10に、サンプル1の伝達特性を図11にそれぞれ示す。このように、サンプル4ではデバイスごとの特性ばらつきが大きいことが確認された。
これは、実施例1の結果から判断すると、前駆体単独のインクを用いて作製した半導体膜では、前駆体からの変換時に膜が流動した結果、チャネル幅がばらつくためと考えられる。一方、サンプル1〜3については、図11に示すように、ばらつきの抑えられた特性が得られた。これは、インクに前駆体とともに高分子材料が混合されていることで、前駆体からの変換時に膜の不連続化が抑制され、その結果、チャネル領域の連続膜の形成率が向上したためと考えられる。
前駆体として以下の表7に示す例示化合物を用いて、下記のインクを作製し、実施例1と同様のボトムコンタクト型トランジスタ素子上にインクジェット装置を用いてインクを塗布した。なお、例示化合物6は特許文献7に記載の方法で、例示化合物8、9、10、11、12は特許文献9に記載の方法で、例示化合物13は非特許文献6記載の方法で、例示化合物30、31、34、37、43は特許文献8記載の方法を用いて、合成したものを用いた。その後、グローブボックス中のホットプレートで加熱して、前駆体を変換させて有機半導体膜を得た。連続膜の形成率は、加熱前後での実効的なチャネル幅のW比(Wafter/Wbefore*100)を測定して評価した。チャネル幅の比(Wafter/Wbefore*100)が90%以上の場合を◎、70%以上90%未満の場合を〇、70%未満△とした。その結果を表7に示す。
下記の結果からわかるように、高分子材料を混合した場合は連続膜の形成率が高いのに対し、前駆体単独では加熱変換時に低下することがわかった。
Figure 2012193316
(図6について)
1 有機半導体層、
2 ソース電極、
3 ドレイン電極、
4 ゲート電極、
5 絶縁膜
6 基板
特開平5−55568号公報 特開2006−344895号公報 特表2007−519227号公報 特開2009−177135号公報 特開2009−283786号公報 特願2009−171441号公報 特開2009−275032号公報 特願2010−061591号明細書 特願2009−08261号明細書
J.Am.Chem.Soc.129, p15732(2007) Adv. Mater. 11,p480(1999) J.Am.Chem.Soc.124, p8812(2002) Appl.Phys.Lett.84,p2085(2004) J.Appl.Phys.100, p034502(2006) J.Am.Chem.Soc.126, p1596(2004) 小野昇監修「低分子有機半導体の高性能化」 p139 サイエンス&テクノロジー株式会社

Claims (9)

  1. 電子デバイス用インク組成物であって、高分子材料と、π電子共役系化合物前駆体と、前記高分子材料および前記前駆体を溶解させる溶媒を少なくとも含有することを特徴とするインク組成物。
  2. 前記π電子共役系化合物前駆体が下記一般式(I)中のA−(B)mで表され、下記一般式(I)で示される工程で、前記π電子共役系化合物前駆体A−(B)mが、π電子共役化合物A−(C)mと脱離性置換基X−Yに変換することを特徴とする、請求項1に記載のインク組成物。
    Figure 2012193316
    (ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは下記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。Cは下記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよい。)
    Figure 2012193316
    Figure 2012193316
    (上記一般式(I)〜(III)中、X,Yのうち一方は水素原子であり、他方は置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。XまたはYのアシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、m>2の場合、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。
    ただし、Bは上記一般式(I)中、(X、Y)の置換位置の炭素原子を除き、A上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、B上の(X、Y)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。)
  3. 前記XまたはYで表されるアシルオキシ構造が、下記一般式(IV)で示されるエステル構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
    Figure 2012193316
    (式中、Rは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよい。)
  4. 前記置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物、及び(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物である請求項1乃至3のいずれかに記載のインク組成物。
  5. 前記置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物から選択されるπ電子共役化合物である請求項1乃至4のいずれかに記載のインク組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のインク組成物を支持体上に付着させた後、外部刺激により前記一般式(I)で示される工程を用いて得られた有機膜。
  7. 前記外部刺激が熱エネルギーであることを特徴とする請求項6に記載の有機膜。
  8. 請求項6又は7に記載の有機膜を用いた電子デバイス。
  9. 請求項6又は7に記載の有機膜をトランジスタの活性層として用いたことを特徴とする、電界効果トランジスタ。
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