JP6069971B2 - 有機膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、π電子共役系化合物からなる有機膜の製造方法、及びこれにより得られた有機膜を用いた電子デバイス、電界効果トランジスタに関する。
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。
これまでに、低分子誘導体の有機半導体材料として、ペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対しきわめて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
さらに、ペンタセンと同様のアセン系材料の一つとして、例えば、ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンの誘導体である下記式(1)で表される構造の2,7−ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(特許文献2、非特許文献2参照)は、オクタデシルトリクロロシランで処理した基板上に蒸着することにより、ペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm/V・s程度)を示し、また大気下での長期安定性も有する。しかしながら、この化合物は、ペンタセン同様真空蒸着工程を経る必要があり、塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
ところで、有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法、インクジェット法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスが軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
そこで、液晶性を有し、かつ高い溶媒溶解性を有し、スピンコート、キャストなどで塗布可能であり、液晶相温度(100℃程度)以下の熱処理により、同じくペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm/V・s程度)を示す同じ誘導体である下記式(2)で表される構造の2,7−ジアルキル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンを塗工法により用いることが提案(特許文献2、非特許文献3参照)されている。しかしながら、この場合は液晶相を発現する温度が100℃程度と比較的低く、製膜後も熱処理により膜構造の変化が生じ得るため、有機半導体デバイス作製におけるプロセス適応性に問題がある。
そこで、近年、溶媒溶解性の高い低分子化合物を半導体前駆体とし、これを溶剤などに溶解して塗布プロセスにより膜を形成し、そののち半導体に変換して有機半導体膜を得、電界効果トランジスタを作製する方法が近年報告されている。例えば、レトロディールスアルダー反応を利用して、ペンタセンやポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物へと変換する方法が精力的に研究されている(例えば、特許文献3〜9、非特許文献4〜7参照)。
非特許文献4に記載されるように、有機半導体材料における電荷移動性(mobility)は、有機材料被膜の規則的な分子配列性(結晶化等のordering)に依存するので蒸着法によれば膜中の材料の分子配列性を確保することはできるが、他方、分子配列性を持つ有機材料は一般的に有機溶媒可溶性が低い。つまり、有機材料膜の半導体特性と膜成形容易性(塗工法による)とは一般的に相容れ難い。したがって、双方を両立させるには、唯一、溶媒に対して可溶性の基を有する半導体前駆体を用いた塗工液により塗膜を形成後、塗膜中の前駆体を有機半導体材料に変換することが考えられる。
しかし、これらの例のうちペンタセン前駆体からはテトラクロロベンゼン分子等が脱離するが、テトラクロロベンゼンは、沸点が高く反応系外に取り除くことが難しいことに加え、その毒性が懸念される。また、ポルフィリン、フタロシアニンについてはいずれも煩雑な合成を必要とするため適用範囲が狭く、より簡便に合成可能なπ電子共役系化合物前駆体(可溶性の基を有する半導体前駆体)の開発が必要とされている。
また、スルホン酸エステル系置換基を有する溶媒溶解性の高い前駆体に外部刺激を与えることで、置換基を脱離し、水素原子に置き換えることで、フタロシアニンへと変換する方法が提案されている(例えば、特許文献10、11参照)。
しかし、この方法はスルホン酸エステルの極性が高いため非極性の有機溶媒への溶解性が十分ではなく、前駆体からの変換に要する温度も少なくとも250℃〜300℃以上と比較的高いことが問題であった。
また、オリゴチオフェンの分子末端β位にアルキル鎖を有するカルボン酸エステルを導入することで可溶化し、これに熱を加えて脱離させることでオレフィン置換オリゴチオフェンやオレフィン置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンを得る方法が提案されている(例えば、特許文献12、13、非特許文献7参照)。この方法は150℃〜250℃程度の加熱で脱離が起こることが報告されている。
さらに、本発明者らは、脱離性基としてアシルオキシ基(具体的には、カルボン酸エステルを)構造を有するシクロヘキセン骨格をベースとした置換基脱離化合物(前駆体)とすれば、脱離後の構造が前述(オレフィン置換オリゴチオフェンやオレフィン置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)のようなオレフィン基ではなく、ベンゼン環となるためにシスートランスの異性化が生じないという点でより優位な方法を見出し、既に特許文献14において開示している。
さらに、これらの脱離可能な溶解基を外部刺激により変換して形成される薄膜は、外部刺激に伴う脱離反応で自発的に結晶またはアモルファス膜が形成される。そのため、形成される薄膜の結晶性を意図的に制御することができない。よって、変換後の化合物と基板との表面エネルギーの違いによる成膜性の低下や、結晶ドメインの大きさの制御などの問題があった。
本発明は上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、複数のπ電子共役系化合物前駆体の脱離可能な溶媒可溶性置換基の脱離反応のエネルギー差を利用し、形成される薄膜の結晶性を制御することを目的とする。
上記課題は、以下の「有機膜」、「有機膜の製造方法」、「有機電子デバイス」を包含する本発明によって解決される。
(1)「下記一般式(I)に示されるように、少なくとも2種以上のπ電子共役系化合物前駆体A−(Bn)mを含む塗工液を塗布して形成された塗工膜を、単一のπ電子共役化合物A−(C)mと脱離性置換基X−Yに変換する工程を含むことを特徴とする有機膜の製造方法;
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。nは前記溶媒可溶性置換基の種類を表わす2以上の自然数であり、mは前記溶媒可溶性置換基に結合する脱離性置換基数を表わす自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
上記一般式(I)及び(II)中、X,Yのうち一方は水素原子、他方は脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、A上の任意の原子と共有結合を介して連結している。)」。
(2)「前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であることを特徴とする前記(1)項に記載の有機膜の製造方法」。
(3)「前記π電子共役系置換基Aが、(i)1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物残基、および、(ii)前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物残基である前記(1)項または(2)項に記載の有機膜の製造方法。」
(4)「前記置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物残基または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基から選択されるπ電子共役化合物残基である前記(1)項乃至(3)項のいずれかに記載の有機膜の製造方法。」
(5)「前記(1)項乃至(4)項のいずれかに記載の製造方法によって得られた有機膜。」
(6)「前記(5)項に記載の有機膜を用いた有機電子デバイス。」
(7)「有機電子デバイスが、電界効果トランジスタであることを特徴とする前記(6)項に記載の有機電子デバイス。」
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、複数のπ電子共役系化合物前駆体の脱離可能な溶媒可溶性置換基の脱離反応のエネルギー差を利用し、形成される薄膜の結晶性を制御することにより、半導体特性に優れた有機材料膜を、例えば塗工法によって有機材料薄膜を容易に成形することができるという極めて優れた効果が発揮される。
本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体(1)の加熱前,170,180,220,230,240,260℃およびπ電子共役系化合物(2)のIRスペクトルを示す図である。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体(1)の熱分解挙動(TGDTA)の結果である。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物(5)の単結晶を偏光顕微鏡(平行ニコル)で観察したものである。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体(4)を変換して得られたπ電子共役化合物(5)のSEM写真である。 本発明で用いられるπ電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜のSEM写真である。 π電子共役系化合物前駆体(9)と(11)の混合膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(9)の単独膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(11)の単独膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(4)のTGDTAの熱分析(TG)の結果である。 π電子共役系化合物前駆体(13)のTGDTAの熱分析(TG)の結果である。 π電子共役系化合物前駆体(4:10wt%)π電子共役系化合物前駆体(13:90wt%)の混合膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(4:50wt%)π電子共役系化合物前駆体(13:50wt%)の混合膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(4:90wt%)π電子共役系化合物前駆体(13:10wt%)の混合膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(4:99wt%)π電子共役系化合物前駆体(13:1wt%)の混合膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 π電子共役系化合物前駆体(4)の単独膜を変換して得られたπ電子共役化合物(5)の顕微鏡観察写真である。 本発明で得られた有機膜を有する有機薄膜トランジスタの概略図である。
以下、本発明について実施の形態を示して、説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
ここで本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体および該化合物から得られるπ電子共役系化合物について、具体的に説明する。
[π電子共役化合物前駆体および該化合物から得られるπ電子共役系化合物]
本発明で用いられるπ電子共役系化合物の特長は、特定の溶媒可溶性置換基を有する「π電子共役化合物前駆体」に対して、外部刺激を加え特定の置換基を脱離させることにより、π電子共役系化合物を得られることが特徴であり、π電子共役化合物前駆体は単に前駆体と表記される。前記「π電子共役化合物前駆体」はA−(B)mで表される。すなわち、Aはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは前記溶媒可溶性置換基に結合する脱離性置換基数を表わす自然数である。ただし、Bは上記一般式(I)中、XまたはYの置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、π電子共役系置換基A上の脱離性置換基XまたはYの置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と環状を形成している。
これに外部刺激を加えることにより、溶媒可溶性置換基Bは特定の脱離性置換基XおよびYをXの形で脱離し、代わりに一部がオレフィンに還元された置換基Cへと変換されるとともに、前記一般式(II)のπ電子共役系化合物A−(C)mで表されるπ電子共役化合物が得られる。
本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体は、π電子共役系置換基であるAに、溶媒可溶性置換基Bが結合した構造をしている。
ここで、溶媒可溶性置換基Bおよび置換基Cは下記一般式(II)および(III)で表される。
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。nは前記溶媒可溶性置換基の種類番号を表わす2以上の自然数であり,mは前記溶媒可溶性置換基に結合する脱離性置換基数を表わす自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
上記一般式(I)及び(II)中、X,Yのうち一方は水素原子、他方は脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、原子と共有結合を介して連結している。)
「X基およびY基」
前記式(I)、(II)においてXおよびYで表される基は、水素原子または、脱離性置換基[即ち、置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基、アシルオキシ基若しくは置換されていてもよいスルホニルオキシ基など]であり、XおよびYのうち少なくとも一方は、脱離性置換基であり、他方は水素原子である。前記脱離性置換基は、置換又は無置換のエーテル基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基が好ましく、このうち、置換又は無置換のエーテル基、置換又は無置換のアシルオキシ基がより好ましく、置換又は無置換のアシルオキシ基が特に好ましい。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基としては、炭素数1以上の置換されていても良い直鎖または環状の脂肪族アルコールおよび炭素数4以上の芳香族アルコール等、アルコール由来のエーテル基が挙げられる。また、前記エーテル中の酸素原子が硫黄原子に置き換わったチオエーテル基も含めることができる。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ピバロイル基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、ラウリロキシ基、トリフルオロメトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロヘキシロキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等が挙げられ、エーテル結合部位の酸素を硫黄に置き換えた対応するチオエーテル類も同様に含まれる。
上記、置換されていても良い炭素数1以上のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2以上のハロゲン原子を含んでいてもよい直鎖または環状の脂肪族カルボン酸および炭酸ハーフエステル、炭素数4以上の芳香族カルボン酸等、カルボン酸および炭酸ハーフエステル由来のアシルオキシ基が挙げられる。また、前記カルボン酸の酸素原子が硫黄に置き換わったチオカルボン酸も含めることができる。具体的には、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ、3,3,3−トリフルオロプロピオニルオキシ、ペンタフルオロプロピオニルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロブタノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。加えて、上記例示したアシルオキシ基のカルボニル基とアルキル基あるいはアリール基の間に酸素原子または硫黄原子を挿入した、炭酸ハーフエステル由来の炭酸エステルも挙げることができる。加えて、エーテル結合部位およびカルボニル部位の酸素の一つ以上を硫黄に置き換えた対応するアシルチオオキシ類、チオアシルオキシ類も同様に含まれる。
上記置換されていてもよいスルホニルオキシ基としては、炭素数1以上の直鎖または環状の脂肪族スルホン酸、炭素数4以上の芳香族スルホン酸等、スルホン酸由来のスルホニルオキシ基が挙げられる。具体的には、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、ピバロイルスルホニルオキシ基、ペンタノイルスルホニルオキシ基、ヘキサノイルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピオニルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等が挙げられ、エーテル部位の酸素原子が硫黄原子に置き換わったスルホニルチオオキシ基も同様に含むことができる。
本発明で用いられる脱離性置換基Xn及びYn(置換されていてもよい炭素数1以上のエーテル基、アシルオキシ基など)の導入により、有機溶媒に対する高い溶解性と、化合物骨格の安定性を維持しつつ脱離性基の脱離反応を可能とすることができる。
上記概念の脱離性置換基XおよびYの一部を下記に例示する。
「R基乃至R基」
また、本発明における前記R乃至Rで表される基としては、前述のように、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、あるいは一価の有機基(但し、R乃至Rにおいては置換されていても良い炭素数1以上のエーテル基またはアシルオキシ基以外の1価の有機基)が用いられるが、該一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオオキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。
これらの例としては、アルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基〕]、シクロアルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基〔例えば、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基〕]が挙げられる。
以下に説明する他の一価の有機基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
上記アルケニル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。これらの例としては、アルケニル基[好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基〕。]、シクロアルケニル基[上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基〕。]等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合からなる混合物であってもよい。
上記アルキニル基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上三重結合としたものが挙げられる。このようなアルキニル基として、例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基〔例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等〕が挙げられる。
上記ヘテロアリール基としては、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物〔例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、2−ベンゾチエニル、2−ピリミジル等〕が挙げられる。
上記アルコキシル基およびチオアルコキシル基としては、好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アミノ基としては、好ましくはアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、〔例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基〕、アシルアミノ基[好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、〔例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基〕]、アミノカルボニルアミノ基[好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、〔例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基〕]等が挙げられる。
上記π電子共役系置換基Aとしては、π電子共役平面を有するものであればいかなるものであっても良いが、具体的にはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環を有するものが好ましく、より好ましくは、
(i) 1つ以上の前記芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、または前記環同士が縮環された化合物残基、
(ii) (i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基、
上記(i)および(ii)より形成される群から少なくとも一つ以上選択される組み合わせで選ばれるπ電子共役系化合物残基が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましい。具体例(一部の例について一般式を併記する。)としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン(別名ナフタセン)、クリセン、ピレン〔下記一般式(Ar3)〕、ペンタセン、チエノチオフェン〔下記一般式(Ar1)〕、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン〔下記一般式(Ar2)〕、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン〔BTBT;下記一般式(Ar4)〕、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン〔DNTT〕、ベンゾジチエノチオフェン〔TTPTT;下記一般式(Ar5)〕、ナフトジチエノチオフェン〔TTNTT;下記一般式(Ar6)、(Ar7)〕等の縮合多環化合物の残基、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン等のような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマーの残基、フタロシアニン類、ポルフィリン類の残基、等が挙げられる。下記一般式(Ar1)〜(Ar7)は2価の残基のものであるが、本発明においては、無論、2価の残基のものに限らず、1価のもの、或いはより多価の残基のものを使用することができる。)
前記溶媒可溶性置換基Bとしては、一般式(II)で表した構造を部分的に含むものであれば特に制限はされない。
前記したπ電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として下記の化合物前駆体群を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基Bにはアシルオキシ基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物前駆体はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも推察される。
前記前駆体A−(B)mに外部エネルギーを印加することにより、後述の脱離反応を起こし、特定の置換基を脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)mの具体例を以下に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
さらに、溶媒可溶性置換基Bにおいて、RからRは互いに環状を形成することができ、m≧2の場合、環状を形成する好ましい例として、シクロヘキセン構造を部分的に有する構造が挙げられる。この場合、一般式(I)、(II)、(III)は、それぞれ以下の一般式(IV)、(V)、(VI)のように表すことができる。
(ここでAはπ電子共役系置換基であり、B’、B’、・・B’は上記一般式(IV)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。mは自然数である。
ただし、B’、B’、・・B’は上記一般式(IV)中、(Xn1,Xn2),(Yn1,Yn2)の置換位置の炭素原子を除くA上の任意の原子と共有結合を介して連結しているか、A上の(Xn1,Xn2),(Yn1,Yn2)の置換位置の炭素原子を除く任意の炭素原子と縮環している。C’は上記一般式(VI)で表される構造を少なくとも部分構造として有している。
上記一般式(IV)および(V)中、(Xn1,Xn2)、(Yn1,Yn2)のうち少なくともいずれか一対はともに水素原子であり、残りの一対はともに置換または無置換の炭素数1以上のアシルオキシ基である。また、(Xn1,Xn2)または(Yn1,Yn2)の一対の前記アシルオキシ基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記アシルオキシ基を形成していても良い。R乃至Rは水素原子または置換基である。)
ただし、(Xn1,Xn2)が前記アシルオキシ基であるとき、(Yn1,Yn2)は水素原子であり、(Yn1,Yn2)が前記アシルオキシ基であるとき(Xn1,Xn2)は水素原子である。
さらに、一般式(IV)中、構造B’の一例としては下記の様な構造が挙げられるが、但し、これらは一部の例であって、本発明は、これら例に限られない(これら例は1価の置換基であるが、本発明は多価の置換基の場合を除外する理由がない)。
これらはR乃至Rおよび(Xn1,Xn2)、(Yn1,Yn2)の置換位置の炭素原子以外であればπ電子共役系置換基Aと縮環または共有結合を介して連結され得る。
前記したπ電子共役系置換基Aと、溶媒可溶性置換基Bを組み合わせることでできるA−(B)mの具体的な構造として下記の化合物前駆体群を例示するが、本発明におけるπ電子共役系化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基Bにはアシルオキシ基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物前駆体はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも推察される。
前記前駆体A−(B)mに外部エネルギーを印加することにより、後述の脱離反応を起こし、特定の置換基を脱離することで、π電子共役系化合物A−(C)mを含む膜状体、並びに該化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したA−(B)mから製造されるA−(C)mの具体例を以下に示すが、本発明におけるπ電子共役系化合物はこれらに限定されるものではない。
さらに加えて、溶媒可溶性置換基Bにおいて、RからRは互いに環状を形成することができ,環状を形成する好ましい例として、シクロヘキサジエン構造を部分的に有する構造が挙げられる。この場合、一般式(I)、(II)、(III)は、それぞれ以下の一般式(VII)、(VIII)、(IX)のように表すことができる。
また、前記Q乃至Qで表される基としては、R乃至Rと同様に定義され、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、又は、一価の有機基が挙げられる(但し、Q2乃至Q5は隣り合う基と共に環構造の一部を構成する一価の有機基残基であってもよい)が、該一価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオオキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
上記アルキル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルキル基を表す。
これらの例としては、アルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数1以上のアルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデカン基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロドデシル基、トリフルオロオクタデシル基、2−シアノエチル基〕]、シクロアルキル基[好ましくは置換または無置換の炭素数3以上のアルキル基〔例えば、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ペンタフルオロシクロヘキシル基〕]が挙げられる。
以下に説明する他の一価の有機基においても、アルキル基は上記概念のアルキル基を示す。
上記アルケニル基は、直鎖または分岐または環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。これらの例としては、アルケニル基[好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルケニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(アリル基)、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、1,1,1−トリフルオロ−2−ブテニル基〕。]、シクロアルケニル基[上記した炭素数2以上のシクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上二重結合としたものが挙げられる〔例えば、1−シクロアリル基、1−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、3−フルオロ−1−シクロヘキセニル基〕。]等が挙げられる。なお、該アルケニル基はトランス(E)体及びシス(Z)体等の立体異性体が存在する場合は、その何れであってもよく、またそれらの任意の割合からなる混合物であってもよい。
上記アルキニル基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数2以上のアルキニル基であり、上記した炭素数2以上のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合を1つ以上三重結合としたものが挙げられる。このようなアルキニル基として、例えば、エチニル基、プロパギル基、トリメチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基が挙げられる。
上記アリール基としては、好ましくは置換または無置換の炭素数6以上のアリール基〔例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、p−クロロフェニル、p−フルオロフェニル、p−トリフルオロフェニル、ナフチル等〕が挙げられる。
上記ヘテロアリール基としては、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物〔例えば、2−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−チエノチエニル、2−ベンゾチエニル、2−ピリミジル等〕が挙げられる。
上記アルコキシル基およびチオアルコキシル基としては、好ましくは置換または無置換のアルコキシル基およびチオアルコキシル基であり、上記に例示したアルキル基およびアルケニル基およびアルキニル基の結合位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアルコキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アリールオキシ基およびチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のアリールオキシ基およびアリールチオオキシ基であり、上記に例示したアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してアリールオキシ基あるいはチオアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記ヘテロアリールオキシ基およびヘテロチオアリールオキシ基としては、好ましくは置換または無置換のヘテロアリールオキシ基およびヘテロアリールチオオキシ基であり、上記に例示したヘテロアリール基の結合部位に酸素原子あるいは硫黄原子を挿入してヘテロアリールオキシ基あるいはヘテロアリールチオアリールオキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記アミノ基としては、好ましくはアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリノ基、〔例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基〕、アシルアミノ基[好ましくは、ホルミルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、〔例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基〕]、アミノカルボニルアミノ基[好ましくは、炭素置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、〔例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基〕]等が挙げられる。
前記Q乃至Qで表される一価の有機基としては、前述した範囲で表すことが可能であるが、好ましくは置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基であるか、または隣り合う基同士で環状構造を形成していることである。さらに好ましくは、前記環状構造が置換していても良いアリール基またはヘテロアリール基からなることである。
該環の結合、縮環形式の一例としては、下記示す構造(但し、該構造中、1価又は多価の結合手は記載を省略)が挙げられる。
前記、上記環状構造を形成する置換基を有していてもよいアリール基またはヘテロアリール基は具体的にはベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環が好ましく、より好ましくは下記(i)、(ii)である。
(i):1つ以上の前記アリール基およびヘテロアリール基、または前記環同士が縮環された化合物残基
(ii):(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基
また、上記(i)および(ii)より形成される群から少なくとも一つ以上選択される組み合わせで選ばれるπ共役系化合物が好ましく、それらの芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環がそれぞれ有するπ電子が、縮環及び共有結合を介した連結による相互作用によって縮環または連結環全体に非局在化した構造であることが好ましい。
ここでの共有結合とは、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、オキシエーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられるが、好ましくは前記単結合、二重結合、三重結合のいずれかである。
縮環または共有結合で連結された芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環の数は2以上が好ましい。具体例(一部の例について一般式を併記する。)としては、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、クリセン、ピレン〔下記一般式(Ar3)〕、ペンタセン、チエノチオフェン〔下記一般式(Ar1)〕、チエノジチオフェン、トリフェニレン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾチオフェン〔下記一般式(Ar2)〕、ベンゾジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン〔BTBT;下記一般式(Ar4)〕、ジナフト[2,3−b:2’,3’−f][3,2−b]チエノチオフェン〔DNTT〕、ベンゾジチエノチオフェン〔TTPTT;下記一般式(Ar5)〕、ナフトジチエノチオフェン〔TTNTT;下記一般式(Ar6)、(Ar7)〕等の縮合多環化合物、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン等のような芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環のオリゴマー、フタロシアニン類、ポルフィリン類、等が挙げられる。
また、ある主骨格に対して共有結合を介して結合または縮合している、本発明の溶解性置換基の数は、当然いずれも、Ar上の置換あるいは縮環可能な原子の数に依存する。例えば、無置換のベンゼン環においては、最大で6つの置換位置で共有結合を介して結合が可能であり、最大6箇所で縮環可能である。しかしながら、主骨格自体の分子の大きさ、溶解性に応じた置換数、分子の対称性、合成の容易さを考慮すると、下限として1分子内に含まれる本発明の溶解性置換基は2以上がより好ましい。一方、置換数があまり大きいと、溶解性置換基同士が立体的に混み入りすぎて好ましくないため、上限としては、分子の対称性、合成の容易さ、溶解性に応じた十分な置換数を考慮すると4以下が好ましい。
本発明で用いられる、シクロヘキセン構造を部分的に有するπ電子共役化合物前駆体の具体的な構造として下記の化合物前駆体群を例示するが、本発明におけるπ電子共役化合物前駆体はこれらに限定されるものではない。また、溶媒可溶性置換基には脱離性置換基の立体異性体が複数存在することが容易に推察でき、下記化合物前駆体はそれら立体配置の異なる異性体の混合物であることも含む。
前記π電子共役化合物前駆体に熱などのエネルギーを付与(外部刺激を付与あるいは印加)することにより、後述の脱離反応を起こし、置換基XおよびYを脱離することで、特定化合物を得ることができる。
以下に、前記具体例に示したπ電子共役化合物前駆体から得られる特定化合物の例を下記特定化合物1〜特定化合物29に示すが、本発明における特定化合物はこれらに限定されるものではない。
[π電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法]
本発明で用いるπ電子共役化合物前駆体の脱離反応によるπ電子共役系化合物の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いる製造方法の場合、プラスチックス、金属、シリコンウエハ、ガラス等の基質(支持体)上に、π電子共役化合物前駆体A−(B)mを複数含む溶液を用いて、例えば塗工により前駆体含有膜形成する。この前駆体含有膜を外部刺激により、X−Yで示される脱離成分を脱離し、オレフィン構造を有する化合物A−(C)mへと変換する。この変換過程において、複数含まれるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mの脱離反応の起こりやすさの違いにより、それぞれの脱離反応が起こる時間に差が生じる。
ここで低外部刺激(例えば熱エネルギー)により脱離反応が起こるπ電子共役化合物前駆体をA−(B)mとし、前記A−(B)mよりも高外部刺激(例えば熱エネルギー)で脱離反応が起こるπ電子共役化合物前駆体をA−(B)mとすると、これらに同一の外部刺激(例えば熱エネルギーを印加する)を与えたとき、先に脱離反応が起こったπ電子共役化合物前駆体A−(B)mがπ電子共役系化合物A−(C)mに変換され、これが種結晶を形成する。その後に脱離反応が起こるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mが変換したπ電子共役系化合物A−(C)mは、先の種結晶に倣い結晶化が起こることで、種結晶に依存した結晶膜の形成が可能となる。
π電子共役化合物前駆体A−(B)mは脱離成分X−Yがそれぞれ異なる脱離成分を有することで、異なる反応温度、脱離反応エネルギーを有する。一方で、反応の結果得られる同一のA−(C)mを生成するといった本質的な特徴を用いることで達成される。
つまり、π電子共役化合物前駆体A−(B)mがそれぞれ異なる核発生速度、結晶成長速度を有しており、それらを混合することにより、単一の前駆体を用いたのでは困難な良質な結晶成膜に必要不可欠な核発生速度、結晶成長速度を制御することが可能となる。
本発明で用いる製造方法の場合、プラスチックス、金属、シリコンウエハ、ガラス等の基質(支持体)上に、例えば塗工により形成された前駆体含有膜中に含まれるπ電子共役化合物前駆体A−(B)mは、X−Yで示される脱離成分を脱離し、オレフィン構造を有する化合物A−(C)mへと変換する。
π電子共役化合物前駆体A−(B)mから脱離する基であるX,Yは脱離性基と定義され、X−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記沸点としては大気圧(1013hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ電子共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下にXがアシルオキシ基、Yが水素原子、Rが置換又は無置換のアルキル基である場合を一例として下記に示すが、本発明の製造例は必ずしもこれらに制限されるものではない。
上記の例の場合、外部エネルギーを印加することにより、一般式(XI)で示される脱離反応が進行する。アルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、オレフィン構造を含む構造に変換される。加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合はカルボン酸は気体となる。
上記一般式(XI)で示される化合物から脱離成分が脱離する機構について以下に概略を示す。
上記一般式(XII)に示すように、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸が脱離し、一般式(XI)でも示されるようなオレフィン構造へと変換される。
ここで、β炭素上の水素原子の引き抜きを行えるのは酸素原子に限らず、同じく第16族の元素であるセレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子においても同様のことが起こり得る。
さらに、m>2の場合、RからRは互いに環状を形成することができる。環状を形成する好ましい例の一例として、シクロヘキサジエン構造を部分的に有する構造が挙げられ、その脱離反応について詳細に説明する。
本発明の前記一般式(A)で表されるπ電子共役系化合物前駆体は、エネルギー付与により前記般式(B)で表される化合物(特定化合物)とX−Yで表される化合物(脱離成分)に変換する。
前記一般式(XIII)で表される化合物には置換基の立体的な配置が異なる異性体が複数存在するが、いずれも前記一般式(B)で示される特定化合物へと変換され、脱離成分は同一であることに変わりはない。
一般式(A)で表される化合物から脱離する基であるXおよびYは脱離性置換基と定義され、それらが結合して生成したX−Yは脱離成分と定義される。脱離成分は固体、液体、気体の3態を取りえるが、系外への除去を考えると、脱離成分が液体または気体であることが好ましく、特に好ましくは常温で気体であることまたは、脱離反応を行う温度において気体となることである。
前記脱離成分の沸点としては大気圧(1013hPa)において、500℃以下であることが好ましく、系外への除去の容易さと生成するπ共役化合物の分解・昇華温度を考えると、400℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは300℃以下である。
以下に、前記一般式(A)におけるXが置換されていても良いアシルオキシ基であり、YおよびQ,Qが水素原子である場合を一例とし、下記にその離脱反応による変換の式を示す。なお、本発明のπ電子共役系化合物前駆体の離脱反応による変換はこれに限定されるものではない。
上記の例の場合、エネルギー付与(加熱)により、一般式(C)で表されるシクロヘキサジエン環構造から、脱離成分として一般式(E)で表されるアルキル鎖を有するカルボン酸が脱離し、一般式(D)で表されるベンゼン環を含む構造の特定化合物に変換される。
加熱温度がカルボン酸の沸点を超えている場合にはカルボン酸は速やかに気体となる。
一般式(F)で表される化合物から脱離成分が脱離する機構について下記反応式(スキーム)により概略を示す。本発明でもちいられるシクロヘキサジエン環構造からの脱離成分の脱離機構は下記一般式(F)から下記一般式(H)への変換である。説明を補足するため、シクロヘキセン環[下記一般式(G)]の場合の脱離機構も含めて示す。なお、下記式中、Rは置換又は無置換のアルキル基を示す。
上記反応式に示すように、一般式(F)で表されるシクロヘキセン環の場合、六員環状の遷移状態を取ることで、β−炭素上の水素原子がカルボニルの酸素原子上へと1,5−転位することで協奏的な脱離反応が起こり、カルボン酸化合物が脱離し、シクロヘキセン環構造から一般式(H)で表されるようなベンゼン環構造へと変換される。
2つアシルオキシ基を有するシクロヘキセン構造を有する化合物[一般式(F)]の場合、脱離反応は2段階で進行すると考えられ、先ず一つのカルボン酸が脱離して前記一般式(G)で表されるシクロヘキサジエン環構造となる。
この時、一般式(F)で表される2置換体からカルボン酸1分子を脱離させるために必要な活性化エネルギーは、一般式(G)で表される1置換体から同1分子を脱離させるのに要するそれに比べて、十分に大きいため、反応は速やかに2段階進行し、一般式(H)で表される構造まで変換される。
ここで、置換基(アシルオキシ基と水素等)の位置関係の違いによる、複数の立体異性体が存在する場合においても、反応の速度は違えど上記反応は進行する。
上記シクロヘキサジエン骨格の、脱離反応の低温化はアシルオキシ基だけに限られるわけではなく、エーテル基などでも同様の効果が見られる。
上記反応式においてβ炭素上の水素原子の引き抜き、転移が反応の第一段階であるため、酸素原子の水素原子を引きつける力が強いほど反応は起こりやすいと考えられる。その度合いは、例えば、アシルオキシ基側のアルキル鎖によっても変わってくるし、酸素原子を同じく第16族の元素である硫黄、セレン、テルル、ポロニウムなどのカルコゲン原子などに変えることによっても変化する。
この脱離反応を行なうために付与(印加)するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、前記脱離反応には、官能基の構造にも依存するが、反応速度および反応率の観点から加熱が必要となることが多い。脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40℃〜500℃の範囲が好ましく、さらにπ電子共役系化合物前駆体の合成時の熱安定性を考慮すると、より好ましくは60℃〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、π電子共役系化合物前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5分〜120分、好ましくは1分〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば、405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
前記脱離性置換基の脱離反応において、酸または塩基は触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、π電子共役系化合物前駆体に対してそのまま添加してもよいし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行ってもよく、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸、蟻酸、リン酸等、2−ブチルオクタン酸等を用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を用いることができる。
また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
また、光塩基発生剤としては、カルバマート類、アシルオキシム類、アンモニウム塩等を用いることができる。
中でも揮発性の酸または塩基の雰囲気中に行うのが、反応後の酸塩基の系外への除去の容易さを考えると好ましい。
脱離反応を行なう際の雰囲気については、上記触媒の有無に関わらず大気下においても行なうことが可能であるが、酸化等の副反応および水分の影響を除くため、さらに脱離した成分の系外への排除を促すために、不活性ガス雰囲気下また減圧下で行なうことが望ましい。
脱離性置換基となるアシルオキシ基等の形成方法については、後述のアルコールとカルボン酸クロライドもしくはカルボン酸無水物を反応させるまたはハロゲン原子とカルボン酸銀もしくはカルボン酸−4級アンモニウム塩の交換反応によってカルボン酸エステルを得る方法以外にも、ホスゲンとアルコールを反応させ炭酸エステルを得る方法、アルコールに二硫化炭素を加えた後、ヨウ化アルキルを反応させキサントゲン酸エステルを得る方法、三級アミンと過酸化水素あるいはカルボン酸を反応させアミンオキシドを得る方法、アルコールにオルトセレノシアノニトロベンゼンを反応させセレノキシドを得る方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
[π共役系化合物前駆体の製造方法]
本発明に係わる製造方法は従来の公知の方法によって製造することが可能であるが、その中核となる脱離性置換基および脱離性置換基を含む化合物の製造方法は、本発明者らによって開示された特許文献(特願2009−209911号明細書、特開2009−275032号明細書、特願2010−136363号明細書、特願2010−162750号明細書、特願2010−163865号明細書)に明記されており、その製造方法を用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細かつ具体的に説明するが、これら実施例は、本発明についての理解を容易にするためのものであって、本発明を制限するためのものではない。各例中、「部」は別段の断わりないかぎり、「質量部」を表わす。初めに、本発明で用いるπ電子共役系化合物前駆体の具体的な製造方法の一部を示す。
化合物の同定は、NMRスペクトル〔JNM−ECXL(商品名)500MHz、日本電子製〕、質量分析〔GC−MS、GCMS−QP2010 Plus(商品名)、島津製作所製〕、精密質量分析〔LC−TofMS、Alliance−LCT Premier(商品名)、Waters社製〕、元素分析〔(CHN)(CHNレコーダーMT−2、柳本製作所製)、元素分析(硫黄)(イオンクロマトグラフィー;アニオン分析システム:DXL320(商品名)、ダイオネクス製〕を用いて行った。
[合成例1:例示化合物前駆体4の合成]
下記合成経路により、例示化合物4を合成した。
100mlフラスコに、Advanced Materials,2009 21213−216.記載の方法で合成したジチエノベンゾジチオフェンを0.500g(1.653mmol)入れ、アルゴン置換した後、THF30mlを加えた。次いで、−20℃に冷却し、n−Biのヘキサン溶液(4.133mmol)を滴下し1時間撹拌した。
さらに、−78℃に冷却し、DMF2.5mlを加えて30分撹拌した後、希塩酸を加え、室温に戻した。析出した固体を濾取し、水、メタノール、酢酸エチルで洗浄した。減圧下乾燥し、ジアルデヒド体を0.392g得た。(収率66%)
次に、25mlフラスコに、上記ジアルデヒド体を0.100g(0.279mmol)入れ、アルゴン置換した後、THFを2ml加えて0℃に冷却した。この溶液に、ベンジルマグネシウムクロライドの2.0MのTHF溶液を0.56ml(1.116mmol)滴下した後、室温に戻して4時間攪拌した。
次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、THFを加え、有機層を飽和食塩水で洗浄した。次いで、溶媒を減圧留去した後、ジオール体を含む残渣を、そのまま次の反応に用いた。
100mlフラスコに、上記残渣、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン3.4mg(0.028mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン2ml及び塩化ピバロイル0.136ml(1.116mmol)を加え、室温で2日間撹拌した。
次いでTHFを加えた後、この溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液の順に用いて洗浄した。次いで溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の例示化合物前駆体4を、無色の結晶として0.174g得た。
得られた例示化合物前駆体4は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。例示化合物前駆体4の同定データを次に示す。
H NMR(CDCl,TMS)δ/ppm:1.14(18H,s),3.25〜3.38(4H,m),6.26〜6.31(2H,m),7.17(2H,s),7.2〜7.3(10H,m),8.23(2H,s).
IR(KBr)ν/cm−1:1717(νC=O)
〔合成例2:1Y例示化合物前駆体1の合成〕
100mlフラスコに、ジオール体(2.790mmol)、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン34mg(0.279mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン20ml及び塩化ヘキサノイル1.56ml(11.16mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。次いでトルエンを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残渣をリサイクル分取GPC(日本分析工業社製)により精製し、例示化合物前駆体1を、無色の結晶として0.44g得た。得られた例示化合物前駆体1は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
(例示化合物前駆体1の熱分析)
例示化合物前駆体1のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜240℃で、ヘキサン酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441号明細書に記載されている上記特定化合物3の融点に一致した。
〔合成例3:例示化合物前駆体10の合成〕
塩化ヘキサノイルの代わりにクロロギ酸アミルを用いた以外は、例示化合物前駆体1と同様の方法により、例示化合物前駆体10を合成した。得られた例示化合物前駆体10は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
(例示化合物前駆体10の熱分析)
例示化合物前駆体10のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜190℃で炭酸エステル部位の脱離に由来する重量減少(ペンタノールと二酸化炭素のそれぞれ2分子に相当、理論減少量34.3%、実測減少量33.3%)が観測された。また、さらに昇温すると360.3℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441号明細書に記載されている上記特定化合物3の融点に一致した。
〔合成例4:例示化合物前駆体11の合成〕
50mlフラスコに、2−メチル−6−ニトロ無水安息香酸を1.1g(3.30mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジンを67mg(0.55mmol)入れ、アルゴンガスで置換した後、トリエチルアミンを0.84ml(6.05mmol)、THFを15ml、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を0.291ml(3.3mmol)加えて、室温で30分間攪拌した。次いで、THF20mlにジオール体を600mg(1.1mmol)溶解させた溶液を加えて、室温でさらに24時間攪拌した。次いで反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで4回抽出を行った。
4回の抽出液を併せて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50m)で2回、飽和食塩水(50ml)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで溶媒を減圧留去し、粗生成物として褐色のオイル(収量1.2g)を得た。
これをカラム精製〔固定相:塩基性アルミナ(活性度II)、溶離液:トルエン〕し、黄色の固体(収量350mg)を得た。続いて、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製LC−9104、溶離液:THF)で精製し、黄色の結晶(100mg)を得た。
最後に、この結晶をTHF/MeOHから再結晶することにより、淡黄色の結晶として、目的物である例示化合物前駆体11を収量60mgで得た。
この結晶の純度をC/MS(ピーク面積法)により測定したところ、99.9モル%以上であることが確認された。例示化合物前駆体11の同定データを次に示す。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS)δ/ppm:3.16(q,4H,J=10.3Hz),3.31(dd,2H,J=7.5Hz,J=6.3Hz),3.40(dd,2H,J=6.3Hz,J=8.0Hz),6.38(t,2H,J=7.5Hz),5.93(t,1H,J=5.2Hz),7.21〜7.25(8H),7.28〜7.31(4H),8.25(s,2H)
〔合成例5:例示化合物前駆体86の合成〕
100mlフラスコに、ジオール体を0.500g入れ、系内をアルゴン置換した。DMF20ml、THF20mlを加え、0℃に冷却した。水素化ナトリウム(55%パラフィン分散)N,N−ジメチルアミノピリジンを17mg及び無水酢酸を0.44ml加えて、室温0.23gを少しずつ加えた後、室温で0.5時間撹拌した。この溶液にヨードメタン0.32mlを滴下した後、さらに室温で5時間撹拌した。反応溶液に水を加えた後、トルエンで抽出した。溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒減圧留去した。リサイクル分取GPCで精製し、例示化合物前駆体86を無色の結晶として得た。得られた例示化合物前駆体86は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に溶解した。
(例示化合物前駆体86の熱分析)
例示化合物前駆体86のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、170〜320℃で、メタノール2分子に相当する重量減少(理論減少量11.2%、実測減少量13.9%)が観測され、前記特定化合物3へ変換した。
〔合成例6:例示化合物前駆体30の合成〕
100mの丸底フラスコに、ヨード体(973mg,2.0mmol)、ジトリチメチルスズ体(466mg,1mmol)、DMF(10m)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(24.4mg、0.08mmol)を加え、アルゴン雰囲気下室温で20時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、セライト濾過で不溶物を除去し、水を加え、有機層を分離した。水層はクロロホルムで3回抽出を行ない、合わせた有機層を飽和フッ化カリウム水溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、赤色の液体を得た。これをカラムクロマトグラフィー(固定層:(中性シリカゲル(関東化学製)+10wt%フッ化カリウム,溶媒:ヘキサン/酢酸エチル、9/1→8/2、v/v)にて精製することにより、黄色の固体を得た。これをヘキサン/エタノールから再結晶することにより、黄色の固体として例示化合物前駆体30を得た(収量680mg,収率79.3%)。
以下に例示化合物前駆体30の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.87−0.89(m,12H),1.28−1.33(m,16H),1.61−1.69(m,8H),1.96−2.01(m,4H),2.28−2.36(m,12H),6.08(d,4H,J=12.1Hz),7.37(d,2H,J=8.6Hz),7.48(s,2H),7.57−7.59(m,4H)
元素分析(C5064):C,69.92;H,7.67;O,14.85;S,7.44(実測値)、C,70.06;H,7.53;O,14.93;S,7.48(理論値)
融点:113.7−114.7℃
以上の分析結果から、合成したものが、例示化合物前駆体30の構造と矛盾がないことを確認した。
〔合成例7及び8:例示化合物前駆体57および58の合成〕
100 mの丸底フラスコに、ヨード体(550mg、1.49mmol)、時トリメチルスズ体(346mg、0.74mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略、10m)を入れ、アルゴンガスを30分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18.3mg、0.02mmol。濾液を、シリカゲルパッド(厚さ3cm)を通した後、濃縮し、赤色の固体を得た。これをメタノール、ヘキサンで洗浄することで黄緑色の固体を得た(収量235mg)。
リサイクル分取HPC(日本分析工業社製、C−9104)にて分離精製することにより、黄色の結晶として例示化合物前駆体57および前駆体58を得た[化合物前駆体57:収量85mg、化合物前駆体58:収量110mg]。
以下に化合物前駆体57の分析結果を示す。
〔化合物前駆体57〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.86(t,6H,J=6.9Hz),1.21−1.31(m,8H),1.57−1.63(m,4H),2.27(td,2H,J=7.6Hz J=1.7Hz),2.60−2.70(m,4H),5.95(t,1H,J=5.2Hz),6.03−6.09(m,4H),6.63(d,2H,J=9.7Hz),7.40(d,4H,J=8.1Hz),7.49(s,2H),7.491(dd,2H,J=7.7Hz,J=2.3Hz)
精密質量(C−TofMS)(m/z):624.232(実測値),624.237(計算値)
以下に化合物前駆体58の分析結果を示す。
〔化合物前駆体58〕;
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.86(t,3H,J=7.5Hz),1.22−1.32(m,4H),1.57−1.64(m,2H),2.28(td,2H,J=7.7Hz J=1.2Hz),2.62−2.72(m,2H),6.03−6.10(m,2H),6.63(d,1H,J=9.8Hz),7.40−7.42(m,2H,),7.46−7.52(m,3H),7.53(s,1H),7.61(s,1H),7.79(dd,2H,J=8.6Hz J=1.7Hz),7.84(d,1H,J=8.1Hz),7.88(d,2H,J=8.1Hz),8.07(d,1H,J=8.1Hz),
精密質量(C−TofMS)(m/z):508.149(実測値),508.153(計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物前駆体57、及び、同前駆体58の構造と矛盾がないことを確認した。
〔合成例9:例示化合物前駆体87の合成〕
下記反応式(スキーム)に従って例示化合物前駆体87を合成した。
100mの丸底フラスコにジエチニル体(275mg,0.785mmol)、ヨード体(750mg,1.65mmol)、ヨウ化銅(20.0mg)を入れ、THF(30m)、ジイソプロピルエチルアミン(1.5m)を加え、アルゴンガスで置換を行った後、PdCl(PPh(16.6mg)を加え、室温で72時間攪拌した。
ジクロロメタン(100m)、水(100m)を加えて有機層を分離し、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を水、次に飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、溶液をアルミナパッド(活性度II(水分含有量3%))に通じ、再度濃縮し、黄色のオイルを得た。これをリサイクルGPC(日本分析工業社製)により精製を行い、黄色の固体として、例示化合物前駆体87を得た。(収量273mg,収率34.7%)
以下に例示化合物前駆体87の分析結果を示す。
H NMR (500 MHz, CDCl, TMS, δ):0.74−0.83(m,12H),1.10−1.32(m,24H),1.36−1.43(m,4H),1.50−1.60(m,4H),2.2−2.32(m,2H),2.56−2.62(m,2H),2.65−2.71(m,2H),6.03−6.08(m,4H),6.56(d,2H,J=9.0Hz),7.33(s,2H),7.36−7.41(m,4H),7.48(s,2H),8.28(s,2H)
精密質量(C−TofMS)(m/z):714.336(実測値),714.340(計算値.)
質量分析:GC−MSm/z=1003(M+),603(熱分解物)
以上の分析結果から、合成したものが、例示化合物前駆体87の構造と矛盾がないことを確認した。
[π電子共役系化合物前駆体からの変換膜]
さらに、ここで本発明でもちいるπ電子共役化合物前駆体および該前駆体から得られるπ電子共役系化合物について、理解を容易にするための簡潔な開示として、その中核たる前駆体A−(B)mからの脱離性基の脱離による目的化合物A−(C)mへの変換の内容ついて具体例により詳細に説明する。
一般式で示したπ電子共役系化合物前駆体(1)(5mg)を、シリコンウエハを介して任意の温度(150,160,170,180,220,230,240,260℃)に設定したホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行った。
上記サンプルおよび加熱前のπ電子共役系化合物前駆体(1)、および別ルートで合成および精製したπ電子共役系化合物(2)のIRスペクトル(KBr法、Spectrum GX(商品名)、Perkin Elmer社製)を測定した。その結果を、図1に示す。
例示化合物30の240℃の加熱条件において、−O−(1156cm−1およびC=O(1726cm−1))の吸収が消失し、新たな吸収(810,738,478cm−1、芳香族)の存在が確認された。そして、これはπ電子共役系化合物(2)のスペクトルと一致する。
また、π電子共役系化合物前駆体(1)の熱分解挙動を、TG−DTA(リファレンスAl,窒素気流下(200m/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製)を用いて25℃から500℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。その結果を図2に示す。
TG−DTAにおいて160〜290℃にかけて、56.7%の重量減少が見られた。これはカプロン酸4分子(理論値54.2%)とほぼ一致する。また、357.7℃に融点の存在が認められた。これはπ電子共役系化合物(2)の値と一致する。
以上の結果からπ電子共役系化合物前駆体(1)が加熱によりπ電子共役系化合物(2)へと変換されることが示された。
また、脱離反応の閾値は240℃前後であることも示された。
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、π電子共役系化合物前駆体(4)のクロロホルム溶液インク(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。その後、不活性雰囲気で230度5分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(4)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(6)に変換された膜を得た。
ここで、図3にπ電子共役系化合物(5)の単結晶の顕微鏡観察写真を示す。さらに、図4に、上記製造方法によって製造されたπ電子共役系化合物前駆体(4)の変換膜であるπ電子共役化合物(5)を含む有機膜のSEM写真を示す。さらに、比較のため、他の有機膜の製造方法として、π電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜のSEM写真を示す。
面外・面内X線回折によって、図4と図5の薄膜では、一致した回折ピークを有していることが明らかとなっている(図示しない)。そのため、変換膜はπ電子共役系化合物(5)を主として含む膜であることが明らかとなっている。
図3に示すように、溶液成長乃至気相成長で得られたπ電子共役系化合物の単結晶には、その製法における晶癖が見られる。たとえばπ電子共役系化合物(5)では、板状結晶であり、θ1=約130度の角度を有している。π電子共役系化合物(5)の結晶格子から推定できる角度である。
図4の本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からの変換膜では、同一方向のドメインができており、クラックまたは前駆体変換による晶癖が見えている。θ2=約130度の角度を有しており、本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からの変換膜であることを意味している。図5で示したπ電子共役系化合物(5)の真空蒸着膜を異なることは明らかであり、ドメインの大きさ、ドメインの形、ドメインが形成する角度の様子に差異が見られる。また、本発明で製造された有機膜は、真空蒸着膜と異なる特性(たとえば、トランジスタ特性)を有する。
このように、本発明で用いられるπ電子共役系化合物前駆体からπ電子共役系化合物に変換された有機膜は、真空蒸着法などで別の方法で製造された膜と異なる場合があり、膜の形状、種々の解析方法から容易に変換膜であるかどうか判断できる。単独でのπ電子共役系化合物前駆体からπ電子共役系化合物に変換された有機膜に対して説明したが、本発明で用いられる複数のπ電子共役系化合物前駆体から、単一のπ電子共役系化合物に変換された有機膜に対しても、同様に変換膜であるかどうか判断が可能である。
[電子デバイス]
本発明で用いられる特定化合物は、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
現在シリコン等の無機半導体で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、光により起電力を生じる太陽電池や、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子も挙げることができる。
本発明で用いられる特定化合物を適用するのに好適な電子デバイスの例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。以下、このFETについて詳細に説明する。
「トランジスタ構造」
図3の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の特定化合物を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)および図示しない支持体(基質)上にゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
本発明で製造される有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
「製膜方法:有機半導体層」
本発明に係わる有機半導体材料は、真空蒸着法等の気相製膜が可能である。
加えて、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。すなわち、前記前駆体A−(B)mを含む塗工液のための溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が500℃以下であることが好ましい。しかし、揮発性が高ければ高いほど良いという訳ではない。沸点50℃以上のものが好ましい。まだ充分に確認した訳ではないが、伝導性には、前駆体が有する脱離性基の単なる離脱のみでなく、分子相互間の接触のための配置状態変化も重要なためかも知れない。つまり、塗工膜中に存在する前駆体は、それが有する脱離性基が除去されたのち、ランダム状態から、分子の向き又は位置の少なくとも部分的変化により分子同士の隣接化、接触や再配列、凝集、結晶化等が生じるための時間が必要なためかも知れない。
いずれにしても、溶媒としては具体的には、前駆体A−(B)mが有する例えば脱離性基としての極性のカルボエステル基に親和性のあるメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒に加えて、本体構造部分と比較的親和性のあるトルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
有機溶媒の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、前駆体A−(B)m材料1重量部に対して、200〜200000重量部であることが好ましい。
また、塗工液には、さらに、本発明の目的達成を損なわない程度の若干量の樹脂成分、カルボエステル基分解促進のための揮発性又は自己分解性の酸、塩基材料を含んでしてもよい。また、トリクロロ酢酸(加熱によりクロロホルムと炭酸ガスに分解)、トリフロロ酢酸(揮発性)のような強酸性の溶媒は、弱いルイス酸であるカルボエステル基の追い出しに効果があるので好ましく用いられる。
そして、有機半導体前駆体からなる膜に対してエネルギーを印加し、有機半導体膜に変換することによって形成することができる。
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
「電極」
本発明に係わる有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
「絶縁膜」
本発明に係わる有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いても良い。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
「HMDS等 有機半導体/絶縁膜界面修飾」
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けても良い。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
図16には、本発明により得られる有機膜を用いた有機薄膜トランジスタ例の概略図を示す。図中、符号(1)は有機半導体層、符号(2)はゲート絶縁膜、符号(3)はソース電極、符号(4)はドレイン電極、符号(5)はゲート電極、符号(6)は基板である。
有機分子膜としては、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、フェニルトリクロロシラン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していても良い。
「保護層」
本発明に係わる有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
「応用デバイス」
本発明に係わる有機薄膜トランジスタは、液晶、有機E、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
[実施例1]
実施例を以下に示すが、π電子共役系化合物前駆体からの変換膜はこれらに限定されるものではない。
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂(化合物(7)及び化合物(8)の共重合体)のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、π電子共役系化合物前駆体(9)のクロロホルム溶液インク(1wt%)とπ電子共役系化合物前駆体(11)のクロロホルム溶液インク(1wt%)を重量比1:1で混合し、スピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。その後、不活性雰囲気で230度10分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(9)及びπ電子共役系化合物前駆体(11)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(10)及び脱離成分(12)に変換された。
ここで、図6にπ電子共役系化合物の顕微鏡観察写真を示す。図6のように、基板表面に均一な膜が形成された。
[比較例1]
π電子共役系化合物前駆体(9)のクロロホルム溶液インク(1wt%)を単独でスピンコートすること以外は、実施例1と同様に製膜し、その後、不活性雰囲気で230度10分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(9)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(10)に変換された。
ここで、図7に基板表面上におけるπ電子共役系化合物(5)の顕微鏡観察写真を示す。図7のように、基板表面に均一な膜は形成されず、π電子共役系化合物(5)が点在している。
[比較例2]
π電子共役系化合物前駆体(11)のクロロホルム溶液インク(1wt%)を単独でスピンコートすること以外は、実施例1と同様に製膜し、その後、不活性雰囲気で230度10分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(9)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(12)に変換された。
ここで、図8に基板表面上におけるπ電子共役系化合物(5)の顕微鏡観察写真を示す。図8のように、基板表面に均一な膜は形成されず、寄り集まったπ電子共役系化合物(5)が点在している。
[実施例2]
実施例1で作製した結晶膜に対して、シャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて大気下で評価した。その結果を次表に示す。
[比較例3]
比較例1で作製した結晶膜を用いた以外は、実施例2と同様に有機半導体デバイスを作製し、電気特性(移動度)の評価を行った。その結果を次表に示す。
[比較例4]
比較例2で作製した結晶膜を用いた以外は、実施例2と同様に有機半導体デバイスを作製し、電気特性(移動度)の評価を行った。その結果を次表に示す。
[実施例3]
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂(CT4112 京セラケミカル社製)のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、π電子共役系化合物前駆体(4)のクロロホルム溶液インク(1wt%)とπ電子共役系化合物前駆体(13)のクロロホルム溶液インク(1wt%)を次表に表す重量比で混合し、それぞれの調整液をスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。その後、それぞれのπ電子共役系化合物前駆体膜を不活性雰囲気で230度10分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、π電子共役系化合物前駆体(4)及びπ電子共役系化合物前駆体(13)からπ電子共役系化合物(5)および脱離成分(6)及び脱離成分(14)に変換された。
ここで、図11から図15にπ電子共役系化合物の薄膜1から6の顕微鏡観察写真を示す。
さらにここで、π電子共役系化合物前駆体(4)のTGDTAの熱分析(TG)の結果を図9に表す。160℃から250℃にかけての重量減少が脱離反応に相当し、350℃以上での重量減少は分解反応によるものである。脱離反応に伴う重量減少は分子量から推定される理論値と一致しており、良好な脱離反応が行われていることが解かる。
π電子共役系化合物前駆体(13)のTGDTAの熱分析(TG)の結果を図10に表す。140℃から180℃にかけての重量減少が脱離反応に相当し、350℃以上での重量減少は分解反応によるものである。脱離反応に伴う重量減少は分子量から推定される理論値と一致しており、良好な脱離反応が行われていることが解かる。
図4及び図5の熱分析の結果より共役系化合物前駆体(13)の方が低温で脱離反応が起こっていることが解かる。
上記のπ電子共役系化合物前駆体(4)と(13)を混合し、薄膜を作成した場合においては、図9及び図10の熱分析の結果からπ電子共役系化合物前駆体(13)の方が先に脱離反応が起こり、種結晶として寄与し、π電子共役系化合物前駆体(4)は、その後に脱離反応が起こり、結晶成長に寄与する。薄膜1:図11及び薄膜2:図12は種結晶となるπ電子共役系化合物前駆体(13)が多いため、他の薄膜に比べ、結晶のドメインが小さい。薄膜4:図14の重量比条件のときに、最も大きい結晶ドメインが形成されており、薄膜5:図15の化合物(4)だけの条件よりも大きいドメイン形成が見られる。
[実施例4]
実施例3で作成した薄膜4に対して、シャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて大気下で評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。その結果をまとめて次表に示す。
[比較例5]
実施例3、4で用いたπ電子共役系化合物前駆体(4)を用いて作製した結晶膜を用いた以外は、実施例4と同様に有機半導体デバイスを作製し、電気特性(移動度)の評価を行った。その結果を次表に示す。
[比較例6]
実施例3、4で用いたπ電子共役系化合物前駆体(13)を用いて作製した結晶膜を用いた以外は、実施例4と同様に有機半導体デバイスを作製し、電気特性(移動度)の評価を行った。その結果を次表に示す。
[実施例5、6、及び7]
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂(CT4112 京セラケミカル社製)のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、π電子共役系化合物前駆体(58)、(57)、(30)のクロロホルム溶液インク(1wt%)を表15に表す重量比で混合し調整インクを作製した。それぞれの調整インクをスピンコートすることで、厚さ約100nmのπ電子共役系化合物前駆体膜を得た。その後、それぞれのπ電子共役系化合物前駆体膜を不活性雰囲気で180度10分の加熱を行うことで、π電子共役系化合物(特定化合物17)および脱離成分脱離成分(6)に変換した。
それぞれの薄膜に対して、シャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて大気下で評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。その結果をまとめて表15に示す。
[比較例7、8、9]
比較例として、それぞれ前駆体(58)、前駆体(57)、前駆体(30)の単独の場合の結果を表15に示す。
1 有機半導体層
2 ゲート絶縁膜
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 基板
特開平5−055568号公報 WO2006−077888号公報 特開2007−224019号公報 特開2008−270843号公報 特開2009−105336号公報 特開2009−188386号公報 特開2009−215547号公報 特開2009−239293号公報 特開2009−28394号公報 特開2009−84555号公報 特開2009−88483号公報 特開2006−352143号公報 特開2009−275032号公報 特願2009−209911号明細書
Appl.Phys.lett. 72,p1854 (1998) J.Am. Chem.Soc. 128,p12604 (2006) J.Am. Chem.Soc. 129,p15732(2007) Adv. Mater.,11, p480 (1999) J.Appl.Phys.100, p034502 (2006) Appl.Phys. lett. 84,12, p2085 (2004) J.Am.Chem.Soc.126, p1596 (2004)

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)に示されるように、少なくとも2種以上のπ電子共役系化合物前駆体A−(Bn)mを含む塗工液を塗布して形成された塗工膜を、単一のπ電子共役化合物A−(C)mと脱離性置換基X−Yに変換する工程を含むことを特徴とする有機膜の製造方法。
    (ここでAはπ電子共役系置換基であり、Bは上記一般式(II)で表される構造を少なくとも部分構造として有している溶媒可溶性置換基である。nは前記溶媒可溶性置換基の種類を表わす2以上の自然数であり,mは前記溶媒可溶性置換基に結合する脱離性置換基数を表わす自然数である。Cは上記一般式(III)で示されている構造を少なくとも部分構造として有している。RからRは水素原子または置換基であり、互いに環状を形成していてもよく、Aと共有結合を介して環状を形成していてもよい。
    上記一般式(I)及び(II)中、X,Yのうち一方は水素原子、他方は脱離性置換基を表し、m≧2の場合、XまたはYの脱離性置換基は互いに同一であっても異なっていても良く、環状の前記脱離性置換基を形成していても良い。ただし、Bは上記一般式(I)中、A上の任意の原子と共有結合を介して連結している。)
  2. 前記、脱離性置換基XまたはYが、置換されていてもよい炭素数1以上の、[エーテル基またはアシルオキシ基]であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜の製造方法。
  3. 前記π電子共役系置換基Aが、
    (i) 1つ以上の芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環、若しくは2つ以上の前記環が縮環された化合物残基、
    および
    (ii) 前記(i)の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基
    、からなる群から少なくとも一つ以上選択されるπ電子共役系化合物残基である請求項1または2に記載の有機膜の製造方法。
  4. 前記置換基Aが、チオフェン環とベンゼン環から選択される縮環化合物残基または該化合物の環同士が共有結合を介して連結された化合物残基から選択されるπ電子共役化合物残基である請求項1から3のいずれかに記載の有機膜の製造方法。
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