JP2014136700A - 含フッ素化合物および該含フッ素化合物を用いた有機薄膜トランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用なピセン系化合物を提供する。
【解決手段】下式(1)で表される含フッ素化合物。
【化1】
[上記式において、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30の1価芳香族炭化水素基または炭素数4〜30の1価複素環基である。]
【選択図】なし
【解決手段】下式(1)で表される含フッ素化合物。
【化1】
[上記式において、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30の1価芳香族炭化水素基または炭素数4〜30の1価複素環基である。]
【選択図】なし
Description
本発明は、新規な含フッ素化合物および該含フッ素化合物を用いた有機薄膜トランジスタに関する。
近年、有機化合物を半導体材料として用いた有機半導体素子は、従来のシリコン等の無機半導体材料を用いた半導体素子と比べて、その加工性が容易であることから、低価格なデバイスの実現が期待されている。また、有機化合物の半導体材料は、構造的に柔軟であることから、プラスチック基板と組み合わせて用いることで、フレキシブルなディスプレイ等のデバイスを実現することが期待されている。
半導体の加工プロセスは、プラズマやイオンビームなどの蒸着によるドライプロセスと、塗布やプリンタブル、インクジェットなど、有機溶媒を用いたウェットプロセスとが知られている。従来の有機半導体材料は有機溶媒に対して溶解性が低く、ウェットプロセスの適用が困難であったため、ドライプロセスが広く利用されてきた。一方、ウェットプロセスは、半導体結晶にダメージを与えることなく加工できる等の長所がある。
有機半導体材料において、価電子帯及び伝導帯の位置は半導体がp型となるかn型となるかを決め、バンドギャップの大きさがキャリア濃度を決め、さらに、バンドの幅がキャリア移動度の大きさに影響を与える。なお、有機半導体では、HOMOとLUMOの準位差がバンドギャップに相当する。
有機半導体材料のキャリア移動度を向上するためには、未だ有効な手段は確立していないものの、分子間相互作用を強くすることや、分子の配列を制御することが重要と考えられている。例えば、縮合多環系化合物は、平面構造により共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つとして、有機半導体材料としての利用が試みられている(非特許文献1)。
有機半導体材料のキャリア移動度を向上するためには、未だ有効な手段は確立していないものの、分子間相互作用を強くすることや、分子の配列を制御することが重要と考えられている。例えば、縮合多環系化合物は、平面構造により共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つとして、有機半導体材料としての利用が試みられている(非特許文献1)。
縮合多環系化合物のなかに、5つのベンゼン環がジグザグ状に縮合結合した構造を有するピセンと、ピセンの炭素原子に置換基が結合した化合物(以下、ピセンと該化合物とを総称して「ピセン系化合物」という)等がある。このピセン系化合物は、HOMO−LUMOバンドギャップが広く、大気安定性、化学的安定性に優れた有機半導体材料として期待される(特許文献1)。
ピセンのデバイスへの利用形態としては、蒸着膜が挙げられ、例えばトランジスタや太陽電池、レーザーへの応用が検討されている(非特許文献2)。
ピセンのデバイスへの利用形態としては、蒸着膜が挙げられ、例えばトランジスタや太陽電池、レーザーへの応用が検討されている(非特許文献2)。
D.J.Gundlach,S.F.Nelson,T.N.Jachson et al.,Appl.Phys.Lett.,(2002),80,2925.
Y.R.Leroux,C.Fave,D.Zigah,G.Trippe−Allard and J.C.Lacroix,Journal of the American Chemical Society 2008,130,10470.
ピセン系化合物等の縮合多環系化合物は溶媒への溶解性が低いことから、有機半導体材料として、ウェットプロセスを適用することは困難であった。
本発明では、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに、高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用なピセン系化合物を提供することを第一の課題とする。
また、当該化合物を利用した有機薄膜トランジスタを提供することを第二の課題とする。
本発明では、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに、高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用なピセン系化合物を提供することを第一の課題とする。
また、当該化合物を利用した有機薄膜トランジスタを提供することを第二の課題とする。
本発明者らは、ピセンの13位の炭素原子に結合した水素原子をフッ素原子に置換した13−フルオロピセンおよび該化合物の残余の水素原子を置換した化合物が、溶媒に対する優れた溶解性を有することを見い出し、該化合物を用いてウェットプロセスを適用した高移動度の有機半導体材料を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<8>に関するものである。
<1>下式(1)で表される含フッ素化合物。
<1>下式(1)で表される含フッ素化合物。
[上記式において、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30の1価芳香族炭化水素基または炭素数4〜30の1価複素環基である。]
<2>R1〜R6がいずれも水素原子である、上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<3>上記<1>または<2>に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
<4>上記<3>に記載される有機半導体材料を含む有機半導体薄膜。
<5>上記<4>に記載の有機半導体薄膜の半導体層を含む有機半導体素子。
<6>上記<5>に記載の有機半導体素子を含む有機薄膜トランジスタ。
<7>上記<1>または<2>に記載される含フッ素化合物と、有機溶媒とを含む溶液組成物。
<8>上記<7>に記載の溶液組成物を基板上に塗布した後に乾燥する、有機半導体薄膜の製造方法。
<2>R1〜R6がいずれも水素原子である、上記<1>に記載の含フッ素化合物。
<3>上記<1>または<2>に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
<4>上記<3>に記載される有機半導体材料を含む有機半導体薄膜。
<5>上記<4>に記載の有機半導体薄膜の半導体層を含む有機半導体素子。
<6>上記<5>に記載の有機半導体素子を含む有機薄膜トランジスタ。
<7>上記<1>または<2>に記載される含フッ素化合物と、有機溶媒とを含む溶液組成物。
<8>上記<7>に記載の溶液組成物を基板上に塗布した後に乾燥する、有機半導体薄膜の製造方法。
本発明に係る含フッ素化合物は、芳香族環により形成される平面構造によって共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つ。さらには芳香族環がジグザグ状に縮合したピセン骨格を有するために、他の縮合化合物と比べてHOMO−LUMOバンドギャップが広く大気安定性、化学的安定性に優れた有機半導体材料として有用である。
該含フッ素化合物中は、特定位置(13位)の水素原子がフッ素原子に置換された構造により、有機溶媒への溶解性が飛躍的に向上し、ウェットプロセスを用いて薄膜を形成することができる。該含フッ素化合物から得られた薄膜は、有機半導体薄膜、有機半導体素子、及び有機薄膜トランジスタに適用されうる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本明細書においては、本発明に係る含フッ素化合物、および、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも称する。
なお、本明細書においては、本発明に係る含フッ素化合物、および、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」とも称する。
<含フッ素化合物>
本発明に係る含フッ素化合物は、下式(1)で表される化合物である。
本発明に係る含フッ素化合物は、下式(1)で表される化合物である。
上記式において、R1〜R6は、各々独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30の1価芳香族炭化水素基または炭素数4〜30の1価複素環基である。
縮合多環系化合物は、縮合環のπ−πスタックによる強い分子間相互作用により、キャリア移動度が向上するが、一方で有機溶媒への溶解性が低下する。しかし、本発明における化合物(1)の場合、ピセン骨格の13位にフッ素原子を有することにより、有機溶媒に可溶になる。ここで可溶であるとは、室温の有機溶媒に溶解させた場合の濃度が0.5重量%以上であることをいう。本発明の化合物(1)はフッ素原子を有するため、イオン化ポテンシャルがピセンと比べて低くなり、大気中での耐酸化性も向上しうる。
化合物(1)におけるR1〜R6のうち、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の構造は、直鎖構造でも分岐構造でもよい。
アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基であるR1〜R6において、炭素数が多すぎると立体障害により、ピセンを形成する芳香族環のπ−πスタッキングが弱くなり、デバイス特性が低下する可能性がある。
アルキル基の炭素数は1〜30であり、1〜12が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の炭素数は2〜30であり、2〜12が好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。二重結合の位置は特に限定されない。
アルキニル基の炭素数は2〜30であり、2〜12が好ましい。アルキニル基としては、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。三重結合の位置は特に限定されない。
アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基であるR1〜R6において、炭素数が多すぎると立体障害により、ピセンを形成する芳香族環のπ−πスタッキングが弱くなり、デバイス特性が低下する可能性がある。
アルキル基の炭素数は1〜30であり、1〜12が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
アルケニル基の炭素数は2〜30であり、2〜12が好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。二重結合の位置は特に限定されない。
アルキニル基の炭素数は2〜30であり、2〜12が好ましい。アルキニル基としては、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。三重結合の位置は特に限定されない。
R1〜R6が1価芳香族炭化水素基である場合の1価芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素の水素原子の1つが、結合手となった1価の基であり、環の数は1個であっても2個以上であってもよく、1個または2個が好ましく、1個が特に好ましい。1価芳香族炭化水素基の具体例としては、アリール基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基、2−アントラニル基、9−アントラニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。1価芳香族炭化水素基の炭素原子数は6〜30であり、6〜10が特に好ましい。
R1〜R6が1価複素環基である場合、1価複素環基とは炭素原子とヘテロ原子を含む環構造を有する化合物の水素原子の1個が結合手になった1価の基をいい、1価複素環基は、3員環から10員環までの環基が好ましい。1価複素環基の炭素数は4〜30であり、6〜10が好ましい。1価複素環基としては、2−チエニル基、3−チエニル基等が分子の平面性が高くなる点から好ましい。
R1〜R6が1価複素環基である場合、1価複素環基とは炭素原子とヘテロ原子を含む環構造を有する化合物の水素原子の1個が結合手になった1価の基をいい、1価複素環基は、3員環から10員環までの環基が好ましい。1価複素環基の炭素数は4〜30であり、6〜10が好ましい。1価複素環基としては、2−チエニル基、3−チエニル基等が分子の平面性が高くなる点から好ましい。
化合物(1)におけるR1〜R6は、化合物(1)の結晶性の観点から、各々独立して、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、特に全てが水素原子であるのが好ましい。
化合物(1)としては、下記式で表される化合物が好ましい。ただし、下式における置換基の置換位置は、式(1)のR1〜R6の結合位置に該当する選ばれる1つの位置であり、特に限定されない。本明細書における式中の破線部分は、2重結合に置換するアルキル基の位置がシスであってもトランスであってもよいことを示す。化合物はシス体とトランス体の混合物であってもよく、より好ましくはトランス体の化合物である。式中の基のうち−CbH2b+1におけるbが0である場合は、該基が水素原子であることを示す。他の基においても同様である。アルキル基が炭素数3以上の基である場合の構造は、直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、直鎖構造が好ましい。
上記式において、アルキル基、フェニル基、チエニル基は、式(1)におけるR1〜R6のいずれかの位置に相当する位置に存在し、1位と12位には水素原子が結合している。
化合物(1)としては、下記式で表される化合物がより好ましい。
化合物(1)は、フッ素原子の存在によりLUMO準位を下げ、その結果、電子受容性の向上(n型化)や発光波長の短波長化が期待される。また、フッ素原子の導入と分子自体の化学的安定性により耐光性や耐酸化性の向上も期待される。さらに、化合物(1)は一分子内で親フッ素性の部分と疎フッ素性の部分を持っていること、および平面構造を保持していることから、高い秩序構造(密なパッキング)による高キャリア移動度や、アモルファス材料由来の平滑性による発光の高効率化が望まれる。
そのため、化合物(1)はフッ素の特徴を活かした有機エレクトロニクス材料の開発だけでなく、有機薄膜太陽電池、有機EL、有機半導体といったデバイスに応用できる。
そのため、化合物(1)はフッ素の特徴を活かした有機エレクトロニクス材料の開発だけでなく、有機薄膜太陽電池、有機EL、有機半導体といったデバイスに応用できる。
また、化合物(1)は、構造中にフッ素原子を有することから、有機溶媒への溶解性が著しく向上し、さまざまな有機溶媒との溶液組成物を形成することができる。
該溶液組成物に含ませる有機溶媒としては、化合物(1)を含む有機半導体材料を溶解する有機溶媒であって、塗工、適宜処理をした後に結晶性を確保できるものから選択するのが好ましい。有機溶媒は、用いる塗工方法により適宜選択することが好ましい。
該溶液組成物に含ませる有機溶媒としては、化合物(1)を含む有機半導体材料を溶解する有機溶媒であって、塗工、適宜処理をした後に結晶性を確保できるものから選択するのが好ましい。有機溶媒は、用いる塗工方法により適宜選択することが好ましい。
前記溶液組成物を用いて、ウェットプロセスで基板上に塗布しようとする場合、該溶液組成物を基材表面に塗布した後に乾燥する方法により、有機半導体薄膜を得るのが好ましい。ウェットプロセスで有機半導体薄膜を形成できることで、半導体基板にダメージを与えることなく、有機半導体薄膜を形成することができるようになる。
<化合物(1)の製造方法>
化合物(1)は、つぎの方法により製造できる。出発原料となる2−ブロモ−1−ナフトール、あるいはその誘導体は、既知法またはその類似法により容易に合成できる。例えば、J.Velderらによる「アドバンスド・シンセシス・アンド・キャタリシス」,2008年,第350巻,第9号,p.1309.に記載の方法により、1−ナフトールのハロゲン化により合成できる。
化合物(1)は、つぎの方法により製造できる。出発原料となる2−ブロモ−1−ナフトール、あるいはその誘導体は、既知法またはその類似法により容易に合成できる。例えば、J.Velderらによる「アドバンスド・シンセシス・アンド・キャタリシス」,2008年,第350巻,第9号,p.1309.に記載の方法により、1−ナフトールのハロゲン化により合成できる。
次に、2−ブロモ−1−ナフトールのヒドロキシル基をトリフルオロメタンスルホン酸に置換し、2−ナフチルボロン酸または2−ナフチルボロン酸誘導体と反応させる。これにより、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチルを得ることができる。
2−ナフチルボロン酸(誘導体)との反応は、鈴木カップリング等の公知の手法を用いて、行うことができる。
2−ナフチルボロン酸(誘導体)との反応は、鈴木カップリング等の公知の手法を用いて、行うことができる。
上記で反応により得られたトリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチルのトリフルオロメタンスルホン酸基をジフルオロビニルに置換する。この反応は、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチルを2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体存在下でCF2=CH2のLi塩と反応させることにより実施できる。この反応により、ジフルオロビニル基を有するジナフタレン誘導体が得られる。これらの反応は、「ケミストリー・レターズ」,2011年,第40巻,第9号,p.986.や、オーガンら,「ケミストリー・ヨーロピアン・ジャーナル」,2006年,第12巻,第18号,p.4749.に記載の方法によって行うことができる。
最後に、上記で得られた化合物を脱フッ素化反応し、閉環することで化合物(1)を合成することができる。閉環反応はナフタレン部位を有するジフルオロビニルアルケンに対し、等モル量程度の三フッ化ホウ素・エーテル錯体存在下に、塩化パラジウムと各種銀塩を作用させることにより実施できる。
<有機半導体材料>
化合物(1)は、芳香族環に存在するπ電子に起因したπ−πスタッキングによる秩序構造のために半導体としての特性を示す。ここで、5つの芳香環からなるピセンと、芳香族環の数が同じであるペンタセンのバンドギャップを分光測定により比較すると、ペンタセンは2eV程度であるのに対して、ピセンは3eV以上の値となる。そのため、ペンタセン系化合物と比べてピセン系化合物は、優れた有機半導体材料として機能しうる。
化合物(1)は、芳香族環に存在するπ電子に起因したπ−πスタッキングによる秩序構造のために半導体としての特性を示す。ここで、5つの芳香環からなるピセンと、芳香族環の数が同じであるペンタセンのバンドギャップを分光測定により比較すると、ペンタセンは2eV程度であるのに対して、ピセンは3eV以上の値となる。そのため、ペンタセン系化合物と比べてピセン系化合物は、優れた有機半導体材料として機能しうる。
本発明に係る有機半導体材料とは、化合物(1)を含み、有機半導体用に用いられる材料をいう。本発明に係る有機半導体材料は、他の有機半導体材料に混合して用いてもよく、また、種々の公知のドーパントを含んでいてもよい。化合物(1)を有機EL素子の発光層として用いる場合のドーパントとしては、クマリン、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体、蛍光色素等が挙げられる。
化合物(1)において、R1〜R6がすべて水素原子である場合の化合物(1)はp型半導体としてふるまう。一方、R1〜R6の種類、すなわち価電子帯および伝導帯の位置によっては、n型半導体特性を示しうる。そのため、R1〜R6を任意に選択すれば導電型を制御できる。
<有機半導体薄膜>
本発明に係る有機半導体材料は、ドライプロセスまたはウェットプロセスを用い、通常使用される方法により、基板等のベース上に有機半導体薄膜や厚膜、結晶を形成することができる。
ドライプロセスで薄膜を形成する場合、真空蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、気相輸送成長法等の公知の方法を用いて製膜することができる。
この有機半導体薄膜は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能し、多様な電子デバイスを作製することが可能である。
本発明に係る有機半導体材料は、ドライプロセスまたはウェットプロセスを用い、通常使用される方法により、基板等のベース上に有機半導体薄膜や厚膜、結晶を形成することができる。
ドライプロセスで薄膜を形成する場合、真空蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、気相輸送成長法等の公知の方法を用いて製膜することができる。
この有機半導体薄膜は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能し、多様な電子デバイスを作製することが可能である。
ドライプロセスとして、真空蒸着法、MBE法、または気相輸送成長法を用いて薄膜を形成する場合には、有機半導体材料を加熱して昇華した蒸気を、高真空、真空、低真空、または常圧で基板表面に輸送する。これらは公知の方法や条件に従って薄膜を形成することができるが、具体的には、基板温度20〜200℃、薄膜成長速度0.001〜1000nm/secの範囲内であればよい。0.001nm/sec未満の速度では結晶性が低下しやすく、1000nm/secを超えると薄膜の表面平滑性が低下する。
また、基板温度が低すぎると薄膜がアモルファス状になりやすく、一方高すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。また、薄膜成長速度が遅いと結晶性が低下しやすく、一方速すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。
また、有機半導体層を蒸着する際の圧力は有機半導体の蒸気圧によって決まる。通常10−7〜10−3Paの範囲で蒸着すると、蒸着時に抵抗加熱を用いたとしても、蒸着ボートにかかる熱が150℃以下となり、有機半導体自身の熱分解を抑えることができるため好ましい。
また、基板温度が低すぎると薄膜がアモルファス状になりやすく、一方高すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。また、薄膜成長速度が遅いと結晶性が低下しやすく、一方速すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。
また、有機半導体層を蒸着する際の圧力は有機半導体の蒸気圧によって決まる。通常10−7〜10−3Paの範囲で蒸着すると、蒸着時に抵抗加熱を用いたとしても、蒸着ボートにかかる熱が150℃以下となり、有機半導体自身の熱分解を抑えることができるため好ましい。
ウェットプロセスを適用する場合、化合物(1)を含む有機半導体材料を有機溶媒に溶解して溶液化し、基板表面を被覆することによって有機半導体薄膜を形成することができる。
従来の有機半導体材料は有機溶媒に対して溶解性が低く、ウェットプロセスの適用は困難であった。しかし、化合物(1)は、フッ素原子がひとつしかないにも関わらず、親油性を示すようになり、種々の有機溶媒に可溶となる。そのため、本発明に係る有機半導体材料はウェットプロセスの適用が可能となり、半導体結晶にダメージを与えることなく有機半導体薄膜を形成することができる。
なお、ウェットプロセスを適用するためには、有機溶媒に対して、化合物(1)を含む有機半導体材料が、室温で0.2重量%以上溶解すればよい。
従来の有機半導体材料は有機溶媒に対して溶解性が低く、ウェットプロセスの適用は困難であった。しかし、化合物(1)は、フッ素原子がひとつしかないにも関わらず、親油性を示すようになり、種々の有機溶媒に可溶となる。そのため、本発明に係る有機半導体材料はウェットプロセスの適用が可能となり、半導体結晶にダメージを与えることなく有機半導体薄膜を形成することができる。
なお、ウェットプロセスを適用するためには、有機溶媒に対して、化合物(1)を含む有機半導体材料が、室温で0.2重量%以上溶解すればよい。
ウェットプロセスにおける製膜方法(基板を被覆する方法)としては、塗布、噴霧、接触等が挙げられる。より具体的には、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の方法を用いることができる。また、公知の湿式製膜法による薄膜の作製や、キャスト法等による平板状結晶や厚膜状態の形態を取ることも可能である。
適した製膜方法及び溶媒の組み合わせは、作製するデバイスに応じて選択することが好ましい。
適した製膜方法及び溶媒の組み合わせは、作製するデバイスに応じて選択することが好ましい。
化合物(1)を含む有機半導体材料を溶解させた溶液と基板との界面には、温度勾配、電場勾配および磁場勾配のうち少なくとも1つを形成して、結晶成長を制御することができる。これらの方法により高結晶性の有機半導体薄膜を製造できる。また、ウェットプロセス製膜時の環境雰囲気を溶媒雰囲気にすることにより、溶媒乾燥における蒸気圧を制御して、高結晶性の有機半導体薄膜を製造することができる。
ウェットプロセスを適用する場合において、化合物(1)を溶解することができる有機溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;ブチルセルソルブ等のエーテルアルコール類;N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホン・スルホキシド類;またはこれらの混合物などが挙げられる。
有機溶媒としては、その他に含ハロゲン溶媒が挙げられる。例えば、塩素化炭化水素類、フッ素化炭化水素類、塩素化フッ素化炭化水素類、含フッ素エーテル化合物が例示できる。具体的には、ジクロロメタン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,3,3−トリクロロヘプタフルオロブタン、1,1,1,3−テトラクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、n−C6F13−C2H5、n−C4F9OCH3、n−C4F9OC2H5等を用いることができる。
上記有機溶媒は1種を用いても、2種の混合溶媒を用いてもよい。たとえば、上記溶媒の1種では化合物(1)が溶解しない場合でも、混合溶媒とすることで溶解させうる。これら溶媒は、目的に合わせて任意に選択、混合することができる。
有機溶媒に対して化合物(1)が高溶解性である場合には、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な方法によって、化合物(1)を容易に精製し、高純度化することもできる。
有機溶媒に対して化合物(1)が高溶解性である場合には、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な方法によって、化合物(1)を容易に精製し、高純度化することもできる。
ウェットプロセスによる基板の被覆は、大気下または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。前記半導体材料の溶液が酸化しやすい場合には、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下にすることが好ましい。
基板を被覆した後、溶媒を揮発させることで有機半導体薄膜が形成される。当該薄膜中の溶媒残存量が多いと薄膜の安定性や半導体特性が低下するおそれがあるため、薄膜形成の後に、再度加熱処理や減圧処理を施し、残存している溶媒を除去することが好ましい。
基板を被覆した後、溶媒を揮発させることで有機半導体薄膜が形成される。当該薄膜中の溶媒残存量が多いと薄膜の安定性や半導体特性が低下するおそれがあるため、薄膜形成の後に、再度加熱処理や減圧処理を施し、残存している溶媒を除去することが好ましい。
ウェットプロセスにおいて使用し得る基板の形状は特に限定されるものではなく、通常はシート状や板状の基板が用いられる。基板に用いられる材料も、通常用いられるものであればよく、例えばセラミックス、金属基板、半導体、樹脂、紙、不織布等が挙げられる。
より具体的には、セラミックスとしては、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等の基板が挙げられる。金属基板としては金、銅、銀等の基板が挙げられる。半導体としては、シリコン(結晶性シリコン、アモルファスシリコン)、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガリウムリン、チッ化ガリウム等の基板が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン等の基板が挙げられる。
ドライプロセスとして蒸着により薄膜を作製した場合の蒸着膜や、ウェットプロセスで薄膜を作製した場合など、そのプロセスに関わらず、作製した有機半導体薄膜の結晶性は薄膜XRD(X線回折)により確認することができる。該薄膜の結晶性が高いほど、半導体特性に優れているといえる。
本発明に係る有機半導体薄膜は、結晶性の薄膜であることが特徴であるが、薄膜の結晶状態は、当該薄膜の斜入射X線回折測定、透過型電子線回折、薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法等により知ることができる。特に薄膜分野の結晶解析手法である斜入射X線回折が用いられる。
X線回折において、測定する格子面の方向によって、out−of−plane(OP)法とin−plane(IP)法があり、OP法は基板に対して平行な格子面の回折を観察する手法に対して、IP法は基板に対して垂直な格子面の回折を観察する手法である。
X線回折において、測定する格子面の方向によって、out−of−plane(OP)法とin−plane(IP)法があり、OP法は基板に対して平行な格子面の回折を観察する手法に対して、IP法は基板に対して垂直な格子面の回折を観察する手法である。
薄膜が結晶性であるとは、薄膜を形成する有機半導体材料に由来する回折ピークが観察されることを意味する。具体的には有機半導体材料の結晶格子に基づく回折、分子長さ由来の回折、または分子が基板に対して平行もしくは垂直に並ぶ配向性を有する際に現れる特徴的な回折ピークである。非結晶状態の膜の場合はこの回折は観察されないため、回折ピークが現れた薄膜は結晶性の薄膜であるということができる。
また、有機半導体薄膜の結晶性は、原子間力顕微鏡(AFM)によっても観察することができる。AFMによりモルフォロジーを評価できるが、位相像においては、コントラストが強いほど結晶性が高いと判断することができる。また、形状像においては、薄膜を形成する粒子の大きさ(グレインサイズ)を知ることができる。グレインサイズが大きいほど粒子界面の面積が小さくなり、コンタクト抵抗が小さくなると言えることから、電子デバイス用途の点で有用であると言える。
<有機半導体素子>
化合物(1)は、有機半導体材料として優れた性質を有する。当該有機半導体材料は化合物(1)の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜を形成することができる。
半導体層として、当該有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子は、様々な半導体デバイスに非常に有用である。有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、通常10〜1,000nmであり、溶液中の化合物(1)の濃度は、0.1〜10質量%である。
有機半導体薄膜中において、化合物(1)分子の長軸が、薄膜が形成されている基板の表面に対して、垂直方向に配向していることが好ましい。
化合物(1)は、有機半導体材料として優れた性質を有する。当該有機半導体材料は化合物(1)の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜を形成することができる。
半導体層として、当該有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子は、様々な半導体デバイスに非常に有用である。有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、通常10〜1,000nmであり、溶液中の化合物(1)の濃度は、0.1〜10質量%である。
有機半導体薄膜中において、化合物(1)分子の長軸が、薄膜が形成されている基板の表面に対して、垂直方向に配向していることが好ましい。
前記半導体素子を用いた半導体デバイスとして、具体的には有機薄膜トランジスタ、有機半導体レーザー、有機光電変換デバイス、有機分子メモリ等に好適に用いることができる。中でも有機薄膜トランジスタへの適用が好ましい。
本発明の化合物(1)は、他の材料と合わせて、例えば、適当な有機溶媒中に、必要に応じて他の材料とともに溶解または分散させて本発明に係る溶液組成物とすることができる。該溶液組成物は上記半導体デバイスを始めとして、各種用途に有用である。
本発明の化合物(1)は、他の材料と合わせて、例えば、適当な有機溶媒中に、必要に応じて他の材料とともに溶解または分散させて本発明に係る溶液組成物とすることができる。該溶液組成物は上記半導体デバイスを始めとして、各種用途に有用である。
その他の用途としては、例えば、各種印刷インキのワニス中に溶解または分散させて蛍光性印刷インキとして美麗な印刷物を与える。また、各種塗料のベヒクル中に溶解または分散させて蛍光性塗料として美麗な塗膜を与える。その他合成樹脂の着色剤としても有用である。本発明の化合物(1)はエレクトロルミネセンス素子の発光層形成材料としても有用である。
<有機薄膜トランジスタ>
有機薄膜トランジスタは、一般的に基板、ゲート電極、絶縁体層(誘電体層)、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層で構成される。その他にバックゲートやバルク等が含まれていてもよい。有機薄膜トランジスタを構成するもののうち、半導体層が、本発明に係る化合物(1)を含む有機半導体薄膜で構成される。
有機薄膜トランジスタのような電子デバイスにおいては、半導体層を形成する有機半導体材料の純度が高いものを用いることにより、電界効果移動度やオン/オフ比の高いデバイスを得ることができる。そこで、必要に応じて、有機半導体材料を精製により高純度化することが好ましい。
精製方法例としては、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華等が挙げられ、これら手法を組合せて用いたり、繰返し行うことが好ましい。
有機薄膜トランジスタは、一般的に基板、ゲート電極、絶縁体層(誘電体層)、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層で構成される。その他にバックゲートやバルク等が含まれていてもよい。有機薄膜トランジスタを構成するもののうち、半導体層が、本発明に係る化合物(1)を含む有機半導体薄膜で構成される。
有機薄膜トランジスタのような電子デバイスにおいては、半導体層を形成する有機半導体材料の純度が高いものを用いることにより、電界効果移動度やオン/オフ比の高いデバイスを得ることができる。そこで、必要に応じて、有機半導体材料を精製により高純度化することが好ましい。
精製方法例としては、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華等が挙げられ、これら手法を組合せて用いたり、繰返し行うことが好ましい。
前記有機半導体素子を含む有機薄膜トランジスタは、上記構成要素が配置される順序等については、通常用いられるものであれば特に限定されない。また、上記構成要素のうち、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層は複数個設けてもよく、なかでも複数の半導体層は同一平面内に設けても、積層して設けてもよい。
有機薄膜トランジスタのうち、有機電界効果トランジスタ(有機FET)は有機半導体層、相互に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極およびドレイン電極、並びに、該ソース電極および該ドレイン電極からそれぞれ所定の距離をあけて形成されたゲート電極を有し、該ゲート電極に電圧を印加することによってソース電極/ドレイン電極間に流れる電流を制御する。ここでソース電極/ドレイン電極間の間隔は、トランジスタを用いる用途によって決定される。また、有機FETは上記構成に限定されることなく、様々な変更が可能である。
蒸着プロセスを用いて有機FETを作製する場合には、基板として通常用いられる公知のものを使用することができる。中でもシリコンウエハが好ましく、該シリコンウエハ表面を酸化してSiO2による絶縁膜を形成したものがより好ましく用いられる。
有機FETの一例としては、前記絶縁膜の上に自己組織単分子膜(SAM膜)を形成し、その上にさらに、本発明に係る化合物(1)を含む有機半導体層を蒸着する。
SAM膜はオクチルトリクロロシラン(OTS)やフッ素系シランカップリング剤で疎水性に改質することができるが、SAM膜上に蒸着する有機半導体層の結晶性の観点から、適宜選択することが好ましい。
有機FETの一例としては、前記絶縁膜の上に自己組織単分子膜(SAM膜)を形成し、その上にさらに、本発明に係る化合物(1)を含む有機半導体層を蒸着する。
SAM膜はオクチルトリクロロシラン(OTS)やフッ素系シランカップリング剤で疎水性に改質することができるが、SAM膜上に蒸着する有機半導体層の結晶性の観点から、適宜選択することが好ましい。
また、半導体層の結晶性は、基板のアニール処理によっても高めることができる。アニール処理とは、熱処理することである。具体的には、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で熱処理を行う。
ゲート電極は基板に接続し、ソース電極およびドレイン電極は前記有機半導体層上に蒸着やスパッタ等により形成する。これら電極に用いる材料は、導電性材料であれば特に制限されず、公知のものを用いることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は以下に示す分析方法により行った。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は以下に示す分析方法により行った。
1.核磁気共鳴スペクトル(NMR)
得られた化合物の構造は、ブルカー社製フーリエ変換高分解能核磁気共鳴装置(AVANCE 500)を用いた核磁気共鳴分析により同定を行った。測定条件は以下のとおりである。
1H NMR(500MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:テトラメチルシラン(TMS)。
13C NMR(126MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:テトラメチルシラン(TMS)。
19F NMR(470MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:ヘキサフルオロベンゼン(C6F6)。
得られた化合物の構造は、ブルカー社製フーリエ変換高分解能核磁気共鳴装置(AVANCE 500)を用いた核磁気共鳴分析により同定を行った。測定条件は以下のとおりである。
1H NMR(500MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:テトラメチルシラン(TMS)。
13C NMR(126MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:テトラメチルシラン(TMS)。
19F NMR(470MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl3)、内部標準:ヘキサフルオロベンゼン(C6F6)。
2.赤外吸収分光
掘場製作所製フーリエ変換赤外分光高度計(FT−300S)を使用して測定した。
3.HRMS
日本電子株式会社製質量分析計(JMS−T100GCV)を用い、EIモードで測定した。
掘場製作所製フーリエ変換赤外分光高度計(FT−300S)を使用して測定した。
3.HRMS
日本電子株式会社製質量分析計(JMS−T100GCV)を用い、EIモードで測定した。
<実施例1:化合物(a)(13−フルオロピセン)の合成>
下記に示すスキームに則り、化合物(a)を合成した。以下に詳細を記載する。
下記に示すスキームに則り、化合物(a)を合成した。以下に詳細を記載する。
(1)2−ブロモ−1−ナフトールの合成
アルゴン雰囲気下、1−ナフトール(7.21g)とジイソプロピルアミン(0.70ml)のジクロロメタン溶液(20ml)を−10℃に保ち、これにN−ブロモスクシンイミド(8.05g)のジクロロメタン溶液(160ml)を100分間かけて滴下した。さらに−10℃で70分間保った後、室温で16時間撹拌した。硫酸水溶液(濃度2mol/l、10ml)を加えて反応液が酸性であることを確認し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=30/1(体積比))により精製し、2−ブロモ−1−ナフトール(10.5g)を得た。収率は94%だった。
アルゴン雰囲気下、1−ナフトール(7.21g)とジイソプロピルアミン(0.70ml)のジクロロメタン溶液(20ml)を−10℃に保ち、これにN−ブロモスクシンイミド(8.05g)のジクロロメタン溶液(160ml)を100分間かけて滴下した。さらに−10℃で70分間保った後、室温で16時間撹拌した。硫酸水溶液(濃度2mol/l、10ml)を加えて反応液が酸性であることを確認し、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=30/1(体積比))により精製し、2−ブロモ−1−ナフトール(10.5g)を得た。収率は94%だった。
(2)トリフルオロメタンスルホン酸2−ブロモ−1−ナフチルの合成
アルゴン雰囲気下、2−ブロモ−1−ナフトール(5.21g)のジクロロメタン溶液(155ml)に、ピリジン(3.4ml)を室温で加えた。得られた溶液に、無水トリフルオロメタンスルホン酸(5.1ml)を20分間かけて滴下した。さらに30分間室温を保った後、塩酸(濃度1mol/l、20ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、トリフルオロメタンスルホン酸2−ブロモ−1−ナフチル(6.75g)を得た。収率は82%だった。
アルゴン雰囲気下、2−ブロモ−1−ナフトール(5.21g)のジクロロメタン溶液(155ml)に、ピリジン(3.4ml)を室温で加えた。得られた溶液に、無水トリフルオロメタンスルホン酸(5.1ml)を20分間かけて滴下した。さらに30分間室温を保った後、塩酸(濃度1mol/l、20ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、トリフルオロメタンスルホン酸2−ブロモ−1−ナフチル(6.75g)を得た。収率は82%だった。
(3)トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチルの合成
アルゴン雰囲気下、トリフルオロメタンスルホン酸2−ブロモ−1−ナフチル(4.18g)、2−ナフチルボロン酸(2.44g)、塩化パラジウム(II)−ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(1.08g)、臭化リチウム(1.20g)、リン酸カリウム(6.04g)の混合物に、トルエン(120ml)を加え、得られた黄色溶液を17時間加熱還流した。リン酸緩衝液(pH=7、20ml)を加え、得られた反応液をセライトで濾過した後、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1(体積比))により精製した。さらにヘキサンから再結晶を行うことで、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチル(2.16g)を得た。収率は45%だった。
アルゴン雰囲気下、トリフルオロメタンスルホン酸2−ブロモ−1−ナフチル(4.18g)、2−ナフチルボロン酸(2.44g)、塩化パラジウム(II)−ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(1.08g)、臭化リチウム(1.20g)、リン酸カリウム(6.04g)の混合物に、トルエン(120ml)を加え、得られた黄色溶液を17時間加熱還流した。リン酸緩衝液(pH=7、20ml)を加え、得られた反応液をセライトで濾過した後、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1(体積比))により精製した。さらにヘキサンから再結晶を行うことで、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチル(2.16g)を得た。収率は45%だった。
(4)2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体の調製
1,1−ジフルオロエチレンを内容積(90ml)のフラスコに満たし、−110℃に冷却して液化した。一方アルゴン雰囲気下、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.61ml)を、テトラヒドロフラン(13ml)とジエチルエーテル(3ml)からなる混合溶媒に溶解し、これを−110℃において1,1−ジフルオロエチレンに加えた後、さらにsec−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度1.0mol/l、3.0ml)を5分間かけて滴下した。−110℃を20分間保った後、塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(濃度1.0mol/l、3.1ml)を5分間かけて滴下した。−110℃をさらに30分間保った後に室温まで昇温し、α,α,α−トリフルオロトルエンを標準物質とする19F−NMR定量分析により、この反応液に含まれる2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体の量を0.85gと定めた。収率は97%だった。
上記調製は文献;市川ら,「ケミストリー・レターズ」,2011年,第40巻,第9号,p.986の記載にしたがって行った。
1,1−ジフルオロエチレンを内容積(90ml)のフラスコに満たし、−110℃に冷却して液化した。一方アルゴン雰囲気下、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.61ml)を、テトラヒドロフラン(13ml)とジエチルエーテル(3ml)からなる混合溶媒に溶解し、これを−110℃において1,1−ジフルオロエチレンに加えた後、さらにsec−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度1.0mol/l、3.0ml)を5分間かけて滴下した。−110℃を20分間保った後、塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液(濃度1.0mol/l、3.1ml)を5分間かけて滴下した。−110℃をさらに30分間保った後に室温まで昇温し、α,α,α−トリフルオロトルエンを標準物質とする19F−NMR定量分析により、この反応液に含まれる2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体の量を0.85gと定めた。収率は97%だった。
上記調製は文献;市川ら,「ケミストリー・レターズ」,2011年,第40巻,第9号,p.986の記載にしたがって行った。
(5)1−(2,2−ジフルオロビニル)−2−(2−ナフチル)ナフタレンの合成
アルゴン雰囲気下、2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体(0.55g)を含むテトラヒドロフラン−ジエチルエーテル溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチル(0.401g)と塩化パラジウム(II)−N,N’−ジ(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン−3−クロロピリジン錯体(36mg)を室温で加え、この反応液を80℃で18時間加熱した。得られた反応液を少量のシリカゲルで濾過した後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=30/1(体積比))により精製し、1−(2,2−ジフルオロビニル)−2−(2−ナフチル)ナフタレン(0.284g)を得た。収率は89%だった。
上記合成は文献;市川ら,「ケミストリー・レターズ」,2011年,第40巻,第9号,p.986およびオーガンら,「ケミストリー・ヨーロピアン・ジャーナル」,2006年,第12巻,第18号,p.4749の記載にしたがって行った。
アルゴン雰囲気下、2,2−ジフルオロビニル亜鉛クロリド−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体(0.55g)を含むテトラヒドロフラン−ジエチルエーテル溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2−(2−ナフチル)−1−ナフチル(0.401g)と塩化パラジウム(II)−N,N’−ジ(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン−3−クロロピリジン錯体(36mg)を室温で加え、この反応液を80℃で18時間加熱した。得られた反応液を少量のシリカゲルで濾過した後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=30/1(体積比))により精製し、1−(2,2−ジフルオロビニル)−2−(2−ナフチル)ナフタレン(0.284g)を得た。収率は89%だった。
上記合成は文献;市川ら,「ケミストリー・レターズ」,2011年,第40巻,第9号,p.986およびオーガンら,「ケミストリー・ヨーロピアン・ジャーナル」,2006年,第12巻,第18号,p.4749の記載にしたがって行った。
(6)13−フルオロピセン(化合物(a))の合成
アルゴン雰囲気下、塩化パラジウム(II)(41mg)とトリフルオロメタンスルホン酸銀(0.120g)を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(16ml)に懸濁させ、これに1−(2,2−ジフルオロビニル)−2−(2−ナフチル)ナフタレン(0.492g)と三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(0.192ml)を加えた。この反応液を60℃で2.5時間加熱した後、室温まで冷却した。得られた反応液を少量のシリカゲルで濾過した後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1(体積比))により精製し、化合物(a)(0.356g)を得た。収率は77%だった。
アルゴン雰囲気下、塩化パラジウム(II)(41mg)とトリフルオロメタンスルホン酸銀(0.120g)を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(16ml)に懸濁させ、これに1−(2,2−ジフルオロビニル)−2−(2−ナフチル)ナフタレン(0.492g)と三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(0.192ml)を加えた。この反応液を60℃で2.5時間加熱した後、室温まで冷却した。得られた反応液を少量のシリカゲルで濾過した後、減圧下で溶媒を留去して粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1(体積比))により精製し、化合物(a)(0.356g)を得た。収率は77%だった。
得られた化合物(a)のNMRスペクトル、赤外吸収分光(IR)および質量分析(HRMS)の測定結果と、化合物(a)の構造を以下に示す。
1H NMR:δ=7.64−7.78(m,4H),7.92−8.06(m,4H),8.55(d,J=17.0Hz,1H),8.68(d,J=8.5Hz,2H),8.75(d,J=9.3Hz,1H),9.27(dd,J=8.3,1.8Hz,1H).
19F NMR:δ=52.8(d,J=17Hz).
13C NMR:δ=107.0(d,J=27Hz),119.3(d,J=11Hz),121.3(d,J=3Hz),121.4,123.2,125.4(d,J=2Hz),126.5(d,J=2Hz),126.7,126.8(d,J=2Hz),127.0,127.3(d,J=3Hz),127.8(d,J=26Hz),128.3,128.4,128.6(d,J=5Hz),128.9,129.2(d,J=10Hz),129.6(d,J=4Hz),131.4(d,J=5Hz),132.1,132.4,160.3(d,J=253Hz).
IR
ν=1219,804,771,737,667cm−1.
HRMS
Calcd. for C22H13F[M+]:296.1001;Found:296.1010.
19F NMR:δ=52.8(d,J=17Hz).
13C NMR:δ=107.0(d,J=27Hz),119.3(d,J=11Hz),121.3(d,J=3Hz),121.4,123.2,125.4(d,J=2Hz),126.5(d,J=2Hz),126.7,126.8(d,J=2Hz),127.0,127.3(d,J=3Hz),127.8(d,J=26Hz),128.3,128.4,128.6(d,J=5Hz),128.9,129.2(d,J=10Hz),129.6(d,J=4Hz),131.4(d,J=5Hz),132.1,132.4,160.3(d,J=253Hz).
IR
ν=1219,804,771,737,667cm−1.
HRMS
Calcd. for C22H13F[M+]:296.1001;Found:296.1010.
NMR、IRおよびHRMSの結果から、上記方法により合成された化合物(a)は下記構造の13−フルオロピセンであることを確認した。
(7)溶解性試験
得られた化合物(a)のウェットプロセスへの適用性を検討するため、各種溶媒に対する溶解性試験を行った。具体的には、試料50mgを量りとり、室温で溶媒10gへの溶解性(0.5質量%)を目視により判断した。溶媒はトルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムおよびo−ジクロロベンゼンの4種類を用いた。比較例として、縮合多環系化合物で環の数が同じ5環であるペンタセン(比較例1)、ピセン(比較例2)、およびパーフルオロペンタセン(比較例3)の溶解性試験の結果も併せて示す。
得られた化合物(a)のウェットプロセスへの適用性を検討するため、各種溶媒に対する溶解性試験を行った。具体的には、試料50mgを量りとり、室温で溶媒10gへの溶解性(0.5質量%)を目視により判断した。溶媒はトルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムおよびo−ジクロロベンゼンの4種類を用いた。比較例として、縮合多環系化合物で環の数が同じ5環であるペンタセン(比較例1)、ピセン(比較例2)、およびパーフルオロペンタセン(比較例3)の溶解性試験の結果も併せて示す。
溶解性試験の結果、化合物(a)はペンタセン、ピセン、パーフルオロペンタセンと比較して、有機溶媒への高い溶解性を有することが明らかになった。化合物(a)は部分的にフッ素原子を導入された結果、分子内に分極を持つようになったためであると考えられる。
すなわち、比較例に用いたペンタセンやピセンはドライプロセスである蒸着法以外にデバイスに適用は困難であるが、本発明の化合物(a)は塗布やスピンコート法、インクジェット法等のウェットプロセスの適用が可能である。
すなわち、比較例に用いたペンタセンやピセンはドライプロセスである蒸着法以外にデバイスに適用は困難であるが、本発明の化合物(a)は塗布やスピンコート法、インクジェット法等のウェットプロセスの適用が可能である。
<イオン化ポテンシャル測定>
化合物(a)のイオン化ポテンシャルを、大気中光電子分光装置(理研計器株式会社製、AC−1)を用いて測定した。測定サンプルはシリコン基板に対して、実施例1で得た化合物(a)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:70nm)することにより、作製した。比較例として同様に作製したペンタセン蒸着膜、ピセン蒸着膜を用いた。測定結果を下記の表2に示す。
化合物(a)のイオン化ポテンシャルを、大気中光電子分光装置(理研計器株式会社製、AC−1)を用いて測定した。測定サンプルはシリコン基板に対して、実施例1で得た化合物(a)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:70nm)することにより、作製した。比較例として同様に作製したペンタセン蒸着膜、ピセン蒸着膜を用いた。測定結果を下記の表2に示す。
イオン化ポテンシャル測定の結果、化合物(a)はペンタセン、ピセンと環の数が同じであるにも関わらずHOMOレベルが低く、耐酸化性に優れていることがわかった。これは、化合物(a)のコア骨格がピセン骨格であり、フッ素原子の電子吸引性に起因するためと考えられる。
<有機半導体材料特性>
化合物(a)の有機半導体材料としての特性評価のため蒸着電界効果型トランジスタ(蒸着FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。蒸着FET素子の作製方法と半導体特性の評価は以下の方法で行った。
化合物(a)の有機半導体材料としての特性評価のため蒸着電界効果型トランジスタ(蒸着FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。蒸着FET素子の作製方法と半導体特性の評価は以下の方法で行った。
洗浄済みのシリコン酸化膜付きシリコン基板をn−オクチルトリクロロシランのトルエン溶液に浸漬させ、シリコン酸化膜表面を処理した。上記基板に対して、実施例1で得た化合物(a)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:70nm)することにより、有機半導体層を形成した。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着し(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)、ソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅1mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層及びシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD−550)を付け溶媒を乾燥させた。このようにして、トップコンタクト・ボトムゲート構造の電界効果型トランジスタ(FET)素子を作製した。
得られた蒸着FET素子の電気特性はAgilent社製の半導体デバイスアナライザーB1500Aを用いて真空中(<5×10−3Pa)で評価した。作製した蒸着FET素子のシリコン基板をゲート電極として用い、シリコン基板に電圧を印加し、ソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線をゲート電圧をスキャンさせて測定した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で6.6×10−2cm2/V・sを示した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で6.6×10−2cm2/V・sを示した。
<塗布型有機半導体材料特性>
化合物(a)の塗布型有機半導体材料としての特性評価のためスピンコート法を用いて電界効果型トランジスタ(塗布FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。塗布FET素子の作製方法と半導体特性の評価手法を以下に示す。
化合物(a)の塗布型有機半導体材料としての特性評価のためスピンコート法を用いて電界効果型トランジスタ(塗布FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。塗布FET素子の作製方法と半導体特性の評価手法を以下に示す。
洗浄済みのシリコン酸化膜付きシリコン基板をn−オクチルトリクロロシランのトルエン溶液に浸漬させ、シリコン酸化膜表面を処理した。上記基板に対して、窒素雰囲気下、実施例1で得た化合物(a)のトルエン溶液をスピンコートすることにより、有機半導体層を形成した。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着し(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)、ソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅1mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層及びシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD−550)を付け溶媒を乾燥させた。このようにして、トップコンタクト・ボトムゲート構造の電界効果型トランジスタ(FET)素子を作製した。
作製した塗布FET素子の電気特性はAgilent社製の半導体デバイスアナライザーB1500Aを用いて真空中(<5×10−3Pa)で評価した。作製した塗布FET素子のシリコン基板をゲート電極として用い、シリコン基板に電圧を印加し、ソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線をゲート電圧をスキャンさせて測定した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で1.3×10−4cm2/V・sを示した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(a)を用いて形成した有機半導体素子は、p型トランジスタ素子としての特性を示した。この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で1.3×10−4cm2/V・sを示した。
<薄膜X線回折>
得られた化合物(a)の蒸着薄膜のOut−of−planeX線回折パターン測定(基板表面に平行な格子面による回折)を行った。Out−of−planeX線回折測定はRigaku社製のTTR−IIIを用いて、斜入射測定によって評価し、回転(00n)面に相当する回折線(n=1,2)が観測された。この回折線は化合物の分子の長軸方向の長さである13.6Åにほぼ一致する。測定結果を図1に示す。
得られた化合物(a)の蒸着薄膜のOut−of−planeX線回折パターン測定(基板表面に平行な格子面による回折)を行った。Out−of−planeX線回折測定はRigaku社製のTTR−IIIを用いて、斜入射測定によって評価し、回転(00n)面に相当する回折線(n=1,2)が観測された。この回折線は化合物の分子の長軸方向の長さである13.6Åにほぼ一致する。測定結果を図1に示す。
また、得られた化合物(a)の蒸着薄膜のIn−planeX線回折パターン測定(基板表面に垂直な格子面による回折)を行った。In−planeX線回折測定はRigaku社製のATX−Gを用いて評価し、同平面上の隣接分子重心間の距離である7.0Åに相当する回折線及び分子間のπ−πスタッキングに起因する3.5Åが観測され、化合物(a)は薄膜内において、分子の長軸を基板の表面に対して垂直方向に配向させて、π−πスタッキングを形成し、薄膜は結晶性を有していることが分かった。
<蛍光測定>
化合物(a)の蛍光材料としての特性評価のため蒸着膜の蛍光測定を行った。蛍光測定は日立社製の分光蛍光光度計F−7000を用いて評価した。蒸着膜は基板に石英基板(モノテック社製)を用い、実施例1で得た化合物(a)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:70nm)することにより、有機半導体層を形成したものを使用した。比較例としてピセン蒸着膜(膜厚:50nm、比較例2)も作製した。励起波長は313nmを用いた。測定結果を図2に示す。
化合物(a)の蛍光材料としての特性評価のため蒸着膜の蛍光測定を行った。蛍光測定は日立社製の分光蛍光光度計F−7000を用いて評価した。蒸着膜は基板に石英基板(モノテック社製)を用い、実施例1で得た化合物(a)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:70nm)することにより、有機半導体層を形成したものを使用した。比較例としてピセン蒸着膜(膜厚:50nm、比較例2)も作製した。励起波長は313nmを用いた。測定結果を図2に示す。
その結果、化合物を用いて作製した蒸着膜の蛍光スペクトルは、長波長シフトしていることが分かった。また、重原子置換による蛍光消光は確認されなかった。これは、化合物(a)中のフッ素原子の電子吸引性に起因するものであると考えられる。
本発明は、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも使用可能で、高移動度が期待される新規な化合物(1)と、それを用いた有機薄膜トランジスタを提供する。
本発明の化合物(1)はピセンの13位の水素原子がフッ素原子に置換されことにより、有機溶媒への溶解性が非常に向上し、ウェットプロセスへの適用が可能となる。そのため、該化合物を有機半導体用材料として用いて形成された薄膜は、半導体用途に広く用い得る。たとえば、有機薄膜トランジスタは、高い結晶性を保持し、高いキャリア移動度を実現できる。よって、本発明の有機半導体材料は、有機薄膜トランジスタや次世代フラットパネルディスプレイ用の有機EL素子、軽量かつフレキシブルな電源としての有機薄膜太陽電池等へ利用できる。
本発明の化合物(1)はピセンの13位の水素原子がフッ素原子に置換されことにより、有機溶媒への溶解性が非常に向上し、ウェットプロセスへの適用が可能となる。そのため、該化合物を有機半導体用材料として用いて形成された薄膜は、半導体用途に広く用い得る。たとえば、有機薄膜トランジスタは、高い結晶性を保持し、高いキャリア移動度を実現できる。よって、本発明の有機半導体材料は、有機薄膜トランジスタや次世代フラットパネルディスプレイ用の有機EL素子、軽量かつフレキシブルな電源としての有機薄膜太陽電池等へ利用できる。
Claims (8)
- 下式(1)で表される含フッ素化合物。
- R1〜R6がいずれも水素原子である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
- 請求項1または2に記載される含フッ素化合物を含む有機半導体材料。
- 請求項3に記載される有機半導体材料を含む有機半導体薄膜。
- 請求項4に記載の有機半導体薄膜の半導体層を含む有機半導体素子。
- 請求項5に記載の有機半導体素子を含む有機薄膜トランジスタ。
- 請求項1または2に記載される含フッ素化合物と、有機溶媒とを含む溶液組成物。
- 請求項7に記載の溶液組成物を基板上に塗布した後に乾燥する、有機半導体薄膜の製造方法。
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JP2013007148A JP2014136700A (ja) | 2013-01-18 | 2013-01-18 | 含フッ素化合物および該含フッ素化合物を用いた有機薄膜トランジスタ |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017022287A (ja) * | 2015-07-13 | 2017-01-26 | 株式会社カネカ | 有機ラジカル化合物の薄膜 |
-
2013
- 2013-01-18 JP JP2013007148A patent/JP2014136700A/ja active Pending
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