JP2014150237A - 有機半導体材料、ならびに含フッ素芳香族化合物及びその製造方法 - Google Patents

有機半導体材料、ならびに含フッ素芳香族化合物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、さらに高キャリア移動度を有する有機半導体材料を提供する。
【解決手段】下記式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料。
【化1】
Figure 2014150237

【選択図】なし

Description

本発明は、有機半導体材料、ならびに該有機半導体材料として有用な新規な含フッ素芳香族化合物及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体薄膜、有機半導体素子及び有機半導体トランジスタに関する。
近年、有機化合物を半導体材料として用いた有機半導体素子は、従来のシリコン等の無機半導体材料を用いた半導体素子と比べて、その加工性が容易であることから、低価格なデバイスの実現が期待されている。また、有機化合物の半導体材料は、構造的に柔軟であることから、プラスチック基板と組み合わせて用いることで、フレキシブルなディスプレイ等のデバイスを実現することが期待されている。
半導体の加工プロセスには、プラズマやイオンビームなどの蒸着によるドライプロセスと、塗布やプリンタブル、インクジェットなど、有機溶媒を用いたウェットプロセスとが知られている。従来の有機半導体材料は有機溶媒に対して溶解性が低く、ウェットプロセスの適用が困難であったため、ドライプロセスが広く利用されてきた。一方、ウェットプロセスは、半導体結晶にダメージを与えることなく加工できる等の長所がある。
一般に、有機半導体材料にはキャリア移動度の向上が求められている。有機半導体材料において、キャリア移動度の向上のための手段としては、未だ有効な手段は確立していないが、分子間相互作用の強化や、分子配列の制御が重要と考えられている。例えば、縮合多環系化合物は、平面構造により共役系が拡張され、π−πスタックによる強い分子間相互作用を持つとして、有機半導体材料としての利用が試みられている(非特許文献1)。
縮合多環系化合物のうちアセン化合物は有機半導体材料として優れた機能が期待されている。たとえば、特許文献1には、ウェットプロセスによりアセン化合物を有機半導体材料として使用するために、アセン骨格にアルキル基等の基を導入することで、有機溶媒への溶解性を高める手法が開示されている。特許文献2には、重金属を用いたカップリング反応によるパーフルオロアルキル基を有するアセン化合物の製造方法が開示されている。
他の縮合多環系化合物としては、芳香環がらせん状に縮合した骨格を有するヘリセン化合物が知られている。たとえば、特許文献3には窒素原子をヘリセン骨格の一部に含み、長鎖アルキル基またはフェニル基を置換基に有する特定構造の5環ヘリセン系化合物が開示されている。
特許文献4には、コア骨格の一部にO、S、Se、またはTeを含み、さらにアルキル基などの置換基を導入した複素環式化合物が開示され、電子素子や光電子素子に利用できる旨の開示がある。
特開2007−13097号公報 国際公開第2011/022678号 特開2005−15427号公報 特表2012−512140号公報
D.J.Gundlach, S.F.Nelson, T.N.Jachson et al., Appl.Phys.Lett.,(2002),80,2925.
しかし特許文献1および2には、本発明の骨格を有するヘリセン型の縮合多環系化合物については、一切開示がない。特許文献3に記載のヘリセン化合物は、ルイス酸を触媒として芳香族ジアミンとカルボン酸とをマイクロ照射しながら加熱反応することによって合成される。よって、ヘリセン骨格に導入される置換基は、カルボン酸残基となりうる長鎖アルキル基やフェニル基に限定されている。
また、特許文献4に記載の複素環式化合物では、開示される骨格構造や、該骨格に導入される置換基の構造から、有機溶媒への溶解性が低く、ウェットプロセスには適用が困難と考えられる。
本発明は、ドライプロセス及びウェットプロセスのいずれにも適用可能であり、かつキャリア移動度が高い構造を有するヘリセン型の縮合多環系化合物及びその製造方法と、当該化合物を含む有機半導体材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、低極性溶媒にも比較的可溶な特定構造の含フッ素芳香族化合物を新たに見出し、当該含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料として本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<18>に関する。
<1>下式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料。
Figure 2014150237
<2>前記含フッ素芳香族化合物が下式(4)で表される化合物である上記<1>に記載の有機半導体材料。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
<3>前記式(4)におけるRf1及びRf2が、各々独立に、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である、上記<2>に記載の有機半導体材料。
<4>上記<1>〜<3>のいずれか1に記載の有機半導体材料を含む有機半導体薄膜。
<5>前記有機半導体薄膜が結晶性の薄膜である上記<4>に記載の有機半導体薄膜。
<6>半導体層として、上記<4>または<5>に記載の有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子。
<7>上記<6>に記載の有機半導体素子を含む有機半導体トランジスタ。
<8>下式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい含フッ素芳香族化合物。
Figure 2014150237
<9>下式(4)で表される化合物。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
<10>前記式(4)におけるRf1及びRf2が各々独立に、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である、上記<9>に記載の化合物。
<11>下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物とをアルカリ金属フッ化物およびクラウンエーテルの存在下に反応させて下式(3)で表される化合物を得て、次いで該式(3)で表される化合物を加熱する、下式(4)で表される化合物の製造方法。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基であり、TASはトリアルキルシリル基を表し、該トリアルキルシリル基中の3つのアルキル基は各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは脱離基である。]
<12>前記閉環反応を、加熱条件下で行う上記<11>に記載の製造方法。
<13>前記閉環反応を、2段階反応で行う上記<11>または<12>に記載の製造方法。
<14>下式(3)で表される化合物。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基である。R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
<15>
下式(6)で表される化合物と下式(7)で表される化合物とを強酸の存在下に反応させて下式(8)で表される化合物を得て、次いで該式(8)で表される化合物に酸化剤を作用させて反応を行う、下式(4A)で表される化合物の製造方法。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1は炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
<16>
前記酸化剤を作用させて行なう反応を、加熱条件下で行う上記<15>に記載の製造方法。
<17>
前記酸化剤を作用させて行なう反応を、2段階反応で行う上記<15>または<16>に記載の製造方法。
<18>
下式(8)で表される化合物。
Figure 2014150237
[上記式において、Rf1は炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
本発明における含フッ素芳香族化合物は有機半導体材料として有用な化合物である。該化合物は、コア骨格に窒素原子を有することでHOMOレベルが低くなり、耐酸化性が向上する。また、芳香族骨格を形成する炭素原子に含フッ素アルキル基を導入することにより化合物の有機溶媒への溶解性が高まり、ウェットプロセスを使った有機半導体薄膜の製造が可能になる。さらに、電子吸引性基である含フッ素アルキル基は、凝集力が強く、フルオロフィリック効果に基づき分子間相互作用を強め、有機半導体材料として高いキャリア移動度を発揮しうる。
すなわち、本発明における含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料は、高性能な有機半導体薄膜を形成でき、有機半導体素子に適用することができる有用な化合物である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書においては、式(5)で表される化合物を「化合物(5)」とも記載する。他の式で表される化合物についても、同様に記載する。
<含フッ素芳香族化合物>
本発明にかかる含フッ素芳香族化合物は、下記式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい化合物である。
Figure 2014150237
本発明にかかる含フッ素芳香族化合物は有機半導体材料として有用に用いる化合物である。有機半導体材料としては、本発明の含フッ素芳香族化合物のみからなる材料であってもよく、含フッ素芳香族化合物とともに、他の成分を含む材料であってもよい。他の成分は、後述する。
式(5)で表されるヘリセン構造を有するような縮合多環系化合物は、縮合環の数が増えるにつれて、π−πスタッキングによる強い分子間相互作用により、キャリア移動度の増加が見込まれる。その一方、強い分子間相互作用は有機溶媒への溶解性の低下も招く。
本発明においては、化合物(5)の水素原子の一部を炭素数1〜12の含フッ素アルキル基で置換することにより、有機溶媒への溶解性を飛躍的に高めた。含フッ素アルキル基は炭素数が多すぎると、立体障害のために縮合環同士の分子間相互作用を弱める傾向がある。したがって、π−πスタッキングによる強い分子間相互作用を損なうことなく、ヘリセン材料の有機溶媒への溶解性が向上することができる観点から、含フッ素アルキル基の炭素数は1〜12であり、炭素数は1〜3であることが、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、好ましい。
含フッ素アルキル基とは、アルキル基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基をいう。含フッ素アルキル基の構造は、直鎖状でも分枝状でもよく、フッ素原子の相互作用による分子間相互作用の向上の点から直鎖状が好ましい。
式(5)で表される化合物の炭素原子には12個の水素原子が結合するが、本発明における含フッ素芳香族化合物は、該水素原子の1個以上が、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換されることを必須とする化合物である。水素原子の2個以上が含フッ素アルキル基に置換されている場合の含フッ素アルキル基は、同一であっても異なっていてもよく、製造しやすさの観点からは同一であるのが好ましい。
含フッ素アルキル基のフッ素含有率(フッ素含有率とは、フッ素原子と水素原子の総数に対するフッ素原子の割合をいう。)は限定されないが、フッ素原子の相互作用による分子間相互作用の向上の点から、80%以上が好ましく、100%(すなわち、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基)が好ましい。
すなわち、含フッ素アルキル基としては、分子間相互作用と溶解性向上とのバランスの観点から、式−(CFF(ただし、nは1〜12の整数であり、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数が特に好ましい)で表される直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が特に好ましい。
式(5)で表される化合物中の含フッ素アルキル基の数は、1以上であり、含フッ素アルキル基の相互作用の観点から1〜4個が好ましく、2個が特に好ましい。含フッ素アルキル基の置換位置によっては、置換基の立体障害で縮合環同士の分子間相互作用が低下する場合がある。縮合環同士の分子間相互作用に効果的な置換位置としては、ヘリセン骨格の6位及び7位(ただし、置換位置を示す炭素の番号は、下式に示す番号に従う)の水素原子の一方または両方が置換されることが好ましい。
Figure 2014150237
化合物(5)の水素原子中に含フッ素アルキル基に置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい。置換基が1つである場合には、炭素数1〜12のアルキル基およびハロゲン原子から選ばれる1種であり、置換基が2種以上である場合の置換基は、炭素数1〜12のアルキル基のみ、ハロゲン原子のみ、炭素数1〜12のアルキル基とハロゲン原子の両方、から選ばれうる。
置換基の数は1〜11個であることが溶解性向上と分子配向性の点から好ましく、2個が特に好ましい。置換位置としては、ヘリセン骨格の3位、4位、9位、及び10位から選ばれる1つ以上の位置が好ましい。
置換基としての炭素数1〜12のアルキル基としては、有機溶媒に対する溶解性向上の観点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。アルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、結晶性の向上及び分子配向性の点から直鎖状が好ましい。
ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、及びIが挙げられ、反応性の点からBr、Iが好ましい。ハロゲン原子を有する含フッ素芳香族化合物は、化合物そのものが有用であるだけでなく、ハロゲン原子の反応性を利用して、該ハロゲン原子を任意の置換基に変換できる。すなわち、所望の置換基を導入する中間体として有用である。さらに、該中間体からは所望の機能を有する有機半導体材料が得られる。
本発明に係る含フッ素芳香族化合物は、下式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2014150237
上記式(4)において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。
含フッ素アルキル基、ハロゲン原子、及びアルキル基の具体例および好ましい態様は上記式(5)と同様である。
およびRとしては水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、ヘリセン骨格のπ−πスタッキングの観点から水素原子がより好ましい。
上記式(4)で表される化合物としては、Rf1とRf2が同一である下式(4A)で表わされる化合物が好ましく、特に下式(4−0)で表される化合物が好ましい。式(4−0)においてnは1〜12の整数であり、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
Figure 2014150237
上記式(4A)において、Rf1、R、およびRの意味は前記と同じ意味を示す。
Figure 2014150237
さらに式(4)で表される化合物としてはさらに、下式(4−1)で表される化合物及び式(4−2)で表される化合物が、ヘリセン骨格のπ−πスタッキングとパーフルオロアルキル基の分子間相互作用の効果、溶解性の両立の点から特に好ましい。
Figure 2014150237
上述したように、本発明における含フッ素芳香族化合物は、縮合環のπ−πスタックによる強い分子間相互作用によって高いキャリア移動度を実現することができ、さらには、化合物中の含フッ素アルキル基の存在によって有機溶媒への溶解性を向上することができる。
したがって、本発明における含フッ素芳香族化合物は、高キャリア移動度を有する有機半導体材料として有用であり、簡便かつ基板を損傷させないウェットプロセスを用いて、高性能の有機半導体薄膜を大量に製膜することが可能となる。さらには、該有機半導体薄膜を使った、優れた有機半導体素子および有機半導体デバイスを得ることが可能となる。
<含フッ素芳香族化合物の製造方法1>
本発明に係る含フッ素芳香族化合物は新規な化合物である。含フッ素芳香族化合物のうち、式(4)で表される含フッ素芳香族化合物は以下の(a)および(b)の工程からなる製造方法により得ることができる。
すなわち、(a)下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物とをアルカリ金属フッ化物及びクラウンエーテルの存在下で反応させて、下式(3)で表される化合物を得て、(b)次いで式(3)で表される化合物に酸を作用させて閉環反応を行うことにより、下式(4)で表される含フッ素芳香族化合物を得ることができる。該反応において、式(3)で表される化合物から式(4)で表される化合物を得る反応は、2段階の反応で行ってもよい。2段階の反応とする場合には、閉環反応の進行を制御することにより一方のみが閉環した化合物(3’)を生成させ、続いて他方を閉環して化合物(4)を生成させる方法が採用できる。
Figure 2014150237
上記式(1)〜(4)において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基であり、TASはトリアルキルシリル基を表し、該トリアルキルシリル基中の3つのアルキル基は各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基であり、Xは脱離基である。
f1、Rf2、R及びRの態様は、上記含フッ素芳香族化合物(4)の説明において記載したものと同義である。
化合物(1)は一般に入手可能であり、またp−フェニレンジアミンにトリエチルアミン存在下でトリフルオロ酢酸無水物を反応させる等の公知の手法により合成可能である。
化合物(2)におけるTASはトリアルキルシリル基を表し、該トリアルキルシリル基中の3つのアルキル基の炭素数は各々独立に、1〜10が好ましくは、特に1〜4が好ましい。該アルキル基は、直鎖状又は分枝状でもよい。アルキル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が、シリル系保護基としてよく利用され、フッ化物イオンに対する脱離性が高くベンザイン発生効率の点から好適である。
化合物(2)におけるXは脱離基として作用するものから選択され、、化合物(2)からo−ベンザイン型の下記化合物が生成されるように作用する置換基であればよい。
Figure 2014150237
Xとしては、トリフルオロメタンスルホニル基等が好ましい。かかる基であれば強加熱や光照射が不要なマイルドな条件でo−ベンザイン型の上記化合物を生成できるため、好ましい。
化合物(2)は一般に入手可能であり、またChemistry Letters,(1983),8,1211.等に記載される公知の手法により合成可能である。
本発明の製造方法における反応では、上記化合物(1)と上記化合物(2)とがモル比で1:2で反応する。実際の反応においては、化合物(1)に対する化合物(2)の量は2〜20倍モルとするのが好ましく、2〜10倍モルが特に好ましい。化合物(1)と化合物(2)を溶媒に溶解させ、さらにアルカリ金属フッ化物とクラウンエーテルを加えて加熱することにより、中間体である化合物(3)が得られる。
アルカリ金属フッ化物としては、LiF、NaF、KF、などが好ましく、反応性の高さと有機溶媒の溶解性の点からKFが好ましく用いられる。
当該アルカリ金属フッ化物は、化合物(1)に対して、1〜30倍モルが好ましく、2〜15倍モルが特に好ましい。
クラウンエーテルとしては、上記アルカリ金属フッ化物のアルカリ金属カチオンを捕捉できるものであれば限定されない。例えば、LiFを用いる場合には12−クラウン−4を選択、NaFを用いる場合には15−クラウン−5を選択し、KFを用いる場合には18−クラウン−6を選択するのが好ましい。クラウンエーテルは、中心にある環の大きさによって選択的に補足できる金属イオンが異なるため、用いるアルカリ金属フッ化物に応じて適宜選択するのが好ましい。
クラウンエーテルの量は、前記アルカリ金属フッ化物に対して1〜100倍モルが好ましく、1〜10倍モルが特に好ましい。
溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)やジエチルエーテルが好ましく、THFが特に好ましい溶媒の量は、化合物(1)1モルに対して、1〜10リットルが好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の反応温度は30〜100℃が好ましく、40〜60℃が特に好ましい。反応時間は1〜24時間が好ましく、2〜24時間が特に好ましい。
上記反応により、化合物(1)の二置換体である中間体化合物(3)が生成する。該中間体化合物(3)もまた新規な化合物である。化合物(3)におけるR、R、Rf1及びf2は、それぞれ原料の化合物(1)及び化合物(2)に対応する基となる。
工程(a)で得られた中間体化合物(3)は、そのまま工程(b)に用いてもよく、必要に応じて、精製処理等を行った後に工程(b)を行ってもよい。精製処理としては、クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の方法が挙げられる。
つぎに、本発明においては、化合物(3)に酸を作用させることにより閉環反応を行い、化合物(4)を得る。
酸としては、CFCOH、CFSOHが好ましい。閉環反応は分子内の2か所で進行し化合物(4)を得るが、化合物(4)中のRf1とRf2の立体障害がある場合に、閉環反応が進行しにくい傾向がある。その場合は、閉環反応が1箇所でのみ進行して化合物(3’)が生成しうる。そこで、もう1箇所の閉環反応を進行させるためには、CFSOH等のより強い酸を用いたり、加熱する等の、より強い条件下で反応させることが好ましい。また、同様の反応を2回以上繰返し行う2段階以上の反応を行ってもよい。
化合物(3’)を加熱する場合の温度は50〜100℃が好ましく、特に50〜80℃が好ましい。また、加熱時間は1〜48時間が好ましく、特に2〜10時間が好ましい。
上記反応の後、不要な溶媒を除去し、化合物(4)を得ることができる。
上記の反応において、式(2)で表される化合物のR又はRとして任意の基を選択すれば、対応する任意のR又はR基を有する化合物(4)が得られる。
また化合物(1)におけるRf1及びRf2についても、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基を任意に選択すれば、対応する任意のRf1やRf2基を有する化合物(4)が得られる。Rf1及びRf2は有機溶媒への溶解性を制御しうる基である。
<含フッ素芳香族化合物の製造方法2>
また、式(4)で表される含フッ素芳香族化合物のうち、Rf1基とRf2基が同一である式(4A)で表される化合物は、以下の(c)および(d)の工程からなる製造方法により得ることもできる。
すなわち、(c)下式(6)で表される化合物と下式(7)で表される化合物とを酸の存在下で反応させて、下式(8)で表される化合物を得て、(d)次いで式(8)で表される化合物を酸化剤を作用させて芳香族化することにより、下式(4A)で表される含フッ素芳香族化合物を得ることができる。
Figure 2014150237
上記式(6)〜(8)及び式(4A)において、Rf1は炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。
f1、R及びRの態様は、上記含フッ素芳香族化合物(4)の説明において記載したものと同義である。
化合物(6)は一般に入手可能であり、またコハク酸ジエチルを縮合させて、これを加水分解および脱炭酸させる等の公知の手法により合成可能である。
化合物(7)は一般に入手可能であり、またアニリンにトリエチルアミン存在下でトリフルオロ酢酸無水物を反応させる等の公知の手法により合成可能である。
本発明の製造方法における反応では、上記化合物(6)と上記化合物(7)とがモル比で1:2で反応する。化合物(6)に対する化合物(7)の量は2〜20倍モルとするのが好ましく、2〜10倍モルが特に好ましい。
化合物(6)と化合物(7)を溶媒に溶解させ、さらに酸存在下で加熱することにより、中間体である化合物(8)が得られる。
酸としては、強酸が好ましく、具体的にはHCl、HSO、CFCOH、CFSOH等が好ましく、反応性の高さと有機溶媒の溶解性の点からHCl、CFSOHが特に好ましく用いられる。
当該酸の添加量は、化合物(6)に対して、1〜30倍モルが好ましく、2〜15倍モルが特に好ましい。
溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルコールなどのアルコール系溶媒やテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶剤が好ましく、溶解性の点からTHFが特に好ましい。溶媒の量は、化合物(6)1モルに対して、1〜20リットルが好ましい。
化合物(6)と化合物(7)の反応温度は30〜100℃が好ましく、40〜60℃が特に好ましい。反応時間は1〜24時間が好ましく、2〜24時間が特に好ましい。
上記反応により、化合物(6)の二置換体である中間体化合物(8)が生成する。該中間体化合物(8)もまた新規な化合物である。化合物(8)におけるR、RおよびRf1は、それぞれ原料の化合物(6)及び化合物(7)に対応する基となる。
工程(c)で得られた中間体化合物(8)は、そのまま工程(d)に用いてもよく、必要に応じて、精製処理等を行った後に工程(d)を行ってもよい。精製処理としては、クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の方法が挙げられる。
つぎに、本発明においては、化合物(8)に酸化剤を作用させることにより芳香族化反応を行い、化合物(4A)を得る。
酸化剤としてはp−クロラニル等のキノン系酸化剤が好ましい。当該酸化剤は、化合物(8)に対して、1〜30倍モルが好ましく、2〜10倍モルが特に好ましい。
溶媒としてはメチルセロソルブ等の高沸点エーテル系溶剤が好ましく、溶解性の点からメチルセロソルブが特に好ましい。溶媒の量は、化合物(8)1モルに対して、1〜20リットルが好ましい。
化合物(8)と酸化剤との反応は、加熱条件下に行うのが好ましい。加熱する場合の温度は50〜200℃が好ましく、特に50〜150℃が好ましい。また、加熱時間は1〜48時間が好ましく、特に2〜10時間が好ましい。
上記反応の後、不要な溶媒を除去し、化合物(4A)を得ることができる。
上記の反応において、式(7)で表される化合物のR又はRとして任意の基を選択すれば、対応する任意のR又はR基を有する化合物(4A)が得られる。
また化合物(7)におけるRf1についても、任意炭素数1〜12の含フッ素アルキル基を任意に選択すれば、対応する任意のRf1基を有する化合物(4A)が得られる。Rf1は有機溶媒への溶解性を制御しうる基である。
<有機半導体材料>
有機半導体材料は、先述した含フッ素芳香族化合物を含む材料であり、例えば、他の有機半導体材料に混合して用いたり、種々のドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、例えば有機EL素子の発光層として用いる場合には、クマリン、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体、蛍光色素等を用いることができる。
また、含フッ素アルキル基間の親和力により隣接分子が凝集し(フルオロフィリック効果)、より効率的な電荷移動に寄与する。したがって、本発明の含フッ素芳香族化合物を用いれば、高いキャリア移動度を保持した有機半導体薄膜、およびこれを利用したトランジスタ等の電子素子の作製が実現できる。
本発明の含フッ素芳香族化合物は、電子求引性置換基である含フッ素アルキル基が導入されたことから、導電性が変化しうる。たとえば、本発明の含フッ素芳香族化合物は、含フッ素アルキル基によって電子遷移エネルギーを変化させることでき、導電型を制御することが可能な有機半導体材料となりうる。
<有機半導体薄膜>
本発明に係る有機半導体材料は、ドライプロセスまたはウェットプロセスを用い、通常の製造方法にしたがって、基板上に有機半導体に膜を形成できる。該膜としては、薄膜、厚膜、又は結晶性を有する膜が挙げられる。
ドライプロセスで薄膜を形成する場合、真空蒸着法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、気相輸送成長法等の公知の方法を用いて製膜することができる。
これらの薄膜等は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能することから、該薄膜を有する多様な電子デバイスを作製できる。
ドライプロセスとして、真空蒸着法、MBE法、または気相輸送成長法を用いて薄膜を形成する場合には、有機半導体材料を加熱して昇華した蒸気を、高真空、真空、低真空、または常圧で基板表面に輸送する。薄膜の形成は、公知の方法や条件に従って実施でき、具体的には、基板温度20〜200℃、薄膜成長速度0.001〜1000nm/secが好ましい。該条件とすることで、結晶性があり、かつ、薄膜の表面平滑性がある膜を形成しうる。
基板温度は、低温であると薄膜がアモルファス状になりやすく、高温であると薄膜の表面平滑性が低下する傾向にある。また、薄膜成長速度が遅いと結晶性が低下しやすく、速すぎると薄膜の表面平滑性が低下する傾向がある。
ウェットプロセスを適用する場合、本発明の含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料を有機溶媒に溶解して溶液化した組成物を、ウェットプロセスで基板上に被覆した後に乾燥することによって有機半導体薄膜を形成することができる。
本発明の含フッ素芳香族化合物は、従来の有機半導体材料に比して有機溶媒に対する溶解性が改善され、ウェットプロセスの適用ができる利点を有する化合物である。その理由は、含フッ素化合物中のパーフルオロアルキル基の存在により、本発明に係る有機半導体材料は親油性を示すことから、種々の有機溶媒に可溶となるためである。ウェットプロセスによる膜形成は、半導体結晶にダメージを与えることなく加工できる利点がある。
ウェットプロセスにおける製膜方法(基板を被覆する方法)としては、塗布、噴霧、および接触等が挙げられる。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の方法が挙げられる。また、平板状結晶や厚膜状態の形態を取る場合には、キャスト法等が採用できる。製膜方法および有機溶媒は、作製するデバイスに適した組み合わせを選択することが好ましい。
ウェットプロセスにおいては、含フッ素芳香族化合物の溶液と基板との界面に、温度勾配、電場、および磁場から選ばれる少なくとも1つを印加して、結晶成長を制御することができる。該方法を採用すれば、より高結晶性の有機半導体薄膜を製造でき、かつ、高結晶性の薄膜の性能に基づく優れた半導体特性を得ることができる。また、ウェットプロセス製膜時に、環境雰囲気を溶媒雰囲気にすることにより、溶媒乾燥における蒸気圧を制御して、高結晶性の有機半導体薄膜を製造することもできる。
ウェットプロセスにおいて、本発明の含フッ素芳香族化合物を溶解することができる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;またはこれらの混合物等の、非ハロゲン系の溶媒の例が挙げられる。なお混合溶媒とする場合は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類やシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類を併用することができる。
有機溶媒としては、含ハロゲン溶媒も例示できる。例えば、塩素化炭化水素類、フッ素化炭化水素類、塩素化フッ素化炭化水素類、含フッ素エーテル化合物が例示できる。具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、2,3,3−トリクロロヘプタフルオロブタン、1,1,1,3−テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、n−C13−C、n−COCH、n−COC等が挙げられる。
溶媒は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、非ハロゲン系溶媒と、含ハロゲン溶媒とを併用するのが好ましく、これらを任意の割合で混合した溶媒が好ましい。
本発明における含フッ素芳香族化合物を有機溶媒に溶解させて、ウェットプロセスを行う場合には、有機溶媒中の有機半導体材料量は0.01質量%以上が好ましく、0.2質量%程度以上が、作業効率の観点等から好ましい。さらに、有機溶媒中の有機半導体材料量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.2〜10重量%が特に好ましい。
また、本発明の含フッ素芳香族化合物は有機溶媒に対する溶解性に優れるため、上記の製造方法で得た含フッ素芳香族化合物をカラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な精製方法によって、高純度化してもよい。
ウェットプロセスによる基板上の被覆は、大気下または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。特に半導体材料の溶液が酸化しやすい場合には、不活性ガス雰囲気下にすることが好ましく、窒素やアルゴン等を用いることができる。
基板上を被覆した後、溶媒を揮発させることで有機半導体薄膜が形成される。当該薄膜中の溶媒残存量が多いと薄膜の安定性や半導体特性が低下するおそれがあるため、薄膜形成の後に、再度加熱処理や減圧処理を施し、残存している溶媒を除去することが好ましい。
ウェットプロセスに使用しうる基板の形状は特に限定されず、通常はシート状の基板や板状の基板が好ましい。基板に用いられる材料も特に限定されずセラミックス、金属基板、半導体、樹脂、紙、不織布等が挙げられる。
基板がセラミックス基板である場合の例としては、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等の基板が挙げられる。金属基板としては金、銅、銀等の基板が挙げられる。半導体基板としては、シリコン(結晶性シリコン、アモルファスシリコン)、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガリウムリン、チッ化ガリウム等の基板が挙げられる。樹脂基板としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン等の基板が挙げられる。
本発明の含フッ素芳香族化合物を用いた有機半導体薄膜は、結晶性の薄膜とすることができる。結晶性の薄膜は高い結晶性によって高いキャリア移動度が望め、それによる優れた有機半導体デバイス特性を発現する点から好ましい。
薄膜の結晶状態は、当該薄膜の斜入射X線回折測定、透過型電子線回折、薄膜のエッジ部にX線を入射させ回折を測定する方法により知ることができる。特に薄膜分野の結晶解析手法である斜入射X線回折が用いられる。X線回折において、測定する格子面の方向によって、Out−of−planeXRD法とIn−planeXRD法がある。Out−of−planeXRD法は基板に対して平行な格子面を観察する手法である。In−planeXRD法は基板に対して垂直な格子面を観察する手法である。薄膜が結晶性であるとは、薄膜を形成する有機半導体材料に由来する回折ピークが観察されることを意味する。具体的には有機半導体材料の結晶格子に基づく回折、分子長さ由来の回折、あるいは分子が基板に対して平行、あるいは垂直に並ぶ配向性を有する際に現れる特徴的な回折ピークが観察されることを意味する。非結晶状態の膜の場合はこの回折は観察されず、回折ピークが現れた薄膜は結晶性の薄膜であることを意味する。
有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、通常10〜1,000nmであるのが好ましい。
<有機半導体素子、有機半導体トランジスタ>
本発明における含フッ素芳香族化合物は高いキャリア移動度を有する。よって、該化合物を含む有機半導体材料は該化合物の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜を形成することができる。
有機半導体薄膜の層を積層することにより形成した半導体層を含む有機半導体素子は、様々な半導体デバイスに非常に有用である。
半導体デバイスの例としては、有機半導体トランジスタ、有機半導体レーザー、有機光電変換デバイス、有機分子メモリ等が挙げられる。このうち半導体デバイスとしては有機半導体トランジスタが好ましく、さらに電界効果トランジスタ(FET)がより好ましい。
有機半導体トランジスタは、通常、基板、ゲート電極、絶縁体層(誘電体層)、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層で構成される。その他にバックゲートやバルクなどが含まれていてもよい。
有機半導体トランジスタ中の構成要素が配置される順序等については、特に限定されない。また、上記構成要素のうち、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び半導体層は複数層設けてもよい。複数層の半導体層が存在する場合には、同一平面内に設けても、積層して設けてもよい。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
実施例において、合成した化合物は、以下の分析方法および分析条件により構造を同定した。
核磁気共鳴分析は、日本電子社製フーリエ変換高分解能核磁気共鳴装置(JNM−AL400)により同定を行った。
H NMR(300MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl),メタノール−d(CDOD)またはアセトン−d(Acetone−d)。内部標準:テトラメチルシラン(TMS).
13C NMR(75MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl),メタノール−d(CDOD)またはアセトン−d(Acetone−d)。内部標準:クロロホルム−d(CDCl).
19F NMR(283MHz) 溶媒:クロロホルム−d(CDCl),メタノール−d(CDOD)またはアセトン−d(Acetone−d)。内部標準:ヘキサフルオロベンゼン(C)を−163ppmとした(CFClを0ppmとする).
赤外吸収分光は、日本分光社製フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、FT/IR−4100を使用した。
元素分析は、パーキンエルマー社製全自動元素分析装置2400シリーズIIを使用した。
融点測定は、ヤマト科学社製融点測定器MP−21を使用した。
<実施例1>
化合物(c)を得るための合成スキームを下記に示す。
Figure 2014150237
<化合物(a)の合成>
50mLの二口フラスコをAr置換し、1,4−フェニレンジアミンスルフェート(0.412g,2.0mmol),(CHCHN(0.84mL,6.0mmol),CHCl(2mLを加え、反応容器を0°Cに冷却した。トリフルオロ酢酸無水物(0.60mL,4.4mmol)をゆっくりと滴下し、室温で1時間撹拌した。濾過を行ってジクロロメタンで洗浄し、白色固体としての化合物(a)(0.434g,1.45mmol,収率72%)を得た。
(分析結果)
H NMR(300MHz,acetone−d) δ 10.37(2H,s),7.78(4H,s).
13C NMR(75MHz,acetone−d) δ 206.3,155.6(q,J=37.0Hz),134.8,122.2,116.9(q,J=285.7Hz).
19F NMR(283MHz,acetone−d) δ −74.56(s).
<化合物(b)の合成>
30mLの二口フラスコにKF(0.152g,2.64mmol)を加えてAr置換し、そこに18−crown−6(0.697g,2.64mmol)を入れて減圧下で1時間撹拌した。上記化合物(a)(0.038g,0.2mmol),THF(1mL)、2−トリメチルシリルフェニルトリフルオロメタンスルホナート(0.262g,0.88mmol)を順に加え、50°Cで12時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて反応を停止させ、酢酸エチルにて抽出、NaSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル=8:1溶媒でカラムクロマトグラフィーを行い、赤色固体として化合物(b)(0.036g,0.080mmol,収率40%)を単離した。
(分析結果)
H NMR(300MHz,CDCl) δ 10.24(2H,s),7.88(2H,dt,J=8.3,1.9Hz),7.44(2H,ddd,J=1.6,7.1,8.8Hz),7.32(4H,s),7.23(2H,d,J=7.8Hz),6.80(2H,ddd,J=1.1,7.1,8.3Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 181.1(q,J=33.1Hz),151.1,137.0,136.2,132.1,(q,J=4.1Hz),125.5,117.13,117.09(q,J=279.3Hz),112.0.
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −70.36(s).
<化合物(c)の合成>
化合物(b)を、未精製のままAr置換した50mLの二口フラスコに入れ、そこにCFCOOH(10mL)を加えて75℃で5時間還流させた。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を用いて反応を停止させ、pH>10となったのを確認したのちジクロロメタンで抽出、NaSOにて乾燥後、濃縮した。得られた固体をヘキサン:クロロホルム=1:1溶媒にて再結晶し、黄色固体として化合物(c)(0.5469g,1.32mmol,化合物(b)からの収率26%)を単離した。
(分析結果)
m.p. 218.2−219.0°C.
H NMR(300MHz,CDCl) δ 8.33(4H,dd,J=1.1,5.9Hz),7.94(2H,ddd,J=1.5,6.9,8.4Hz),7.88(2H,s),7.78(2H,ddd,J=1.4,7.1,8.6Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 149.6,148.3,134.7(q,J=33.3Hz),133.1,131.2,129.7,128.5,125.0,123.4(q,J=276.8Hz),121.6,118.6.
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −54.44(s).
IR(KBr) ν 3156,3114,3085,3074,3056,3045,3021,3002,1973,1944,1916,1849,1804,1614,1556,1493,1244,1210,1117,833,785,721,680,641,529,457.
Anal.Calcd for C2210:C,63.47;H,2.42;N,6.37.Found:C,63.57;H,2.63;N,6.93.
<実施例2>
化合物(g)を得るための合成スキームを下記に示す。
Figure 2014150237
<化合物(d)の合成>
Ar置換した50mL二口フラスコに、1,4−フェニレンジアミン(1.03g,5.0mmol)、CHCl(10mL)、(CHCHN(2.1mL,15.0mmol)を入れ、反応容器を0°Cに冷却した。そこに別途合成したペンタフルオロプロピオン酸無水物(1.4mL,7.0mmol)をゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を濾過し、ジクロロメタンで洗浄することにより、化合物(d)(1.2417g,3.10mmol,収率89%)を得た。
(分析結果)
m.p.>300°C.
H NMR(300MHz,acetone−d) δ 10.45(2H,s), 7.80(4H,s).
13C NMR(75MHz,acetone−d) δ 134.9,122.5.
19F NMR(283MHz,acetone−d) δ −81.95(3F,s),−121.17(2F,s).
IR(KBr) ν 3311,3168,3075,3067,2874,2610.2600.2375,2351,2335,2106,1699,1560,1518,1414,1337,1321,1270,1095,1041,826,720,646.
<化合物(e)の合成>
30mL二口フラスコにKF(0.078g,1.32mmol)を加えてAr置換し、そこに18−crown−6(0.348g,1.32mmol)を入れて減圧下で1時間撹拌した。化合物(d)(0.040g,0.10mmol)、THF2mL、2−トリメチルシリルフェニルトリフルオロメタンスルホナート(0.131g,0.44mmol)を順に加え、50°Cで4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて反応を停止させ、酢酸エチルにて抽出、NaSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサン:ジクロロメタン=2:1溶媒(容量比)でカラムクロマトグラフィーを行い、化合物(e)(0.0166g,0.030mmol,収率30%)を単離した。
(分析結果)
m.p. 168.0−169.0°C.
H NMR(300MHz,CDCl) δ 10.27(2H,s),7.96(2H,dd,J=1.7,8.0Hz),7.44(2H,m),7.28(4H,m),6.80(2H,ddd,J=1.0,6.9,8.4Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 183.5(t,J=25.3Hz),151.2,137.0,136.1,131.9(t,J=7.4Hz),125.5,117.1,114.6,114.6(tq,J=36.2,277.4Hz),113.1.
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −82.53(3F,s),−113.22(2F,s).
IR (KBr) ν 3287,3092,3080,3056,3011,2822,2801,2684,2610,2366,2362,2346,2337,2333,1640,1574,1524,1466,1227,1178,1136,1178,912,869,838,744,679,600,566.
Anal.Calcd for C241410:C,51.19;H,2.55;N,5.07.Found:C,51.99;H,2.37;N,4.98.
<化合物(f)の合成>
未精製のペンタフェン前駆体(化合物(d))を50等量のCFCOHとともにAr置換したフラスコに入れ、還流温度で6時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の入ったビーカーに反応溶液をゆっくりと移し、水層がpH>10となったのを確認したのち、ジクロロメタン15mLにて抽出を行い、乾燥、濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル=4:1の展開溶媒でカラムクロマトグラフィーを行い、さらにヘキサン溶媒で再結晶を行うことにより、化合物(f)(0.0219g,0.041mmol,化合物(d)からの収率10%)を得た。
(分析結果)
m.p. 159.5−160.1°C.
H NMR(300MHz,CDCl) δ 10.50(1H,s),8.36(1H,m),8.31(1H,d,J=9.3Hz),8.29(1H,dd,J=1.1,8.6Hz),8.18(1H,s),8.06(1H,m),7.80(1H,dt,J=1.2,7,8Hz),7.74(1H,dd,J=2.3,9.5Hz),7.66(1H,ddd,J=1.4,6.7,9.1Hz),7.54(1H,dd,J=1.2,6.5Hz),7.53(1H,d,J=1.5Hz),6.96(1H,ddd,J=2.1,5.9,8.5Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 184.2(t,J=25.0Hz),149.1,148.1,146.9,138.6,137.1,132.5,132.2(t,J=7.4Hz),130.9,129.3,128.5,127.5,125.0,124.8,124.7(dt,J=1.9,9.9Hz),120.1,118.8,115.6,114.7,114.0(dt,J=1.2,9.9Hz).
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −82.46(3F,s),−83.89(3F,s),−101,25(2F,s),−113.27(2F,s).
IR(KBr) ν 3293,3235,3189,3060,2960,2931,2357,1970,1912,1845,1819,1662,1607,1578,1529,1519,1469,1450,146,1351,1268,1214,1141,1062,918,867,812,764,739,677,644,519,419.
Anal. Calcd for C241410O:C,53.95;H,2.26;N,5.24.Found:C,53.89;H,2.17;N,5.17.
<化合物(f)からの化合物(g)の合成>
化合物(f)をCFSOHとともにAr置換したフラスコに入れ、還流することにより、化合物(g)を得ることができる。
<化合物(e)からの化合物(g)の合成>
未精製のペンタフェン前駆体(化合物(e))を50等量のCFSOHとともにAr置換したフラスコに入れ、100°Cで6時間撹拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の入ったビーカーに反応溶液をゆっくりと移した。水層がpH>10となったのを確認したのち、ジクロロメタン(15mL)にて抽出を行い、乾燥、濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル=4:1の展開溶媒でカラムクロマトグラフィーを行い、さらにヘキサン溶媒で再結晶を行うことにより、化合物(g)(0.0216g,0.042mmol,化合物(d)からの収率10%)を得た。
(分析結果)
m.p. 213−214°C.
H NMR(300MHz,CDCl) δ 8.46(2H,dd,J=1.2,9.0Hz),8.34(2H,dd,J=1.2,8.4Hz),7.94(2H,t,J=7.5Hz),7.88(2H,s),7.75(2H,ddd,J=1.5,7.1,8.8Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 149.8,148.3,133.2,131.2,129.8,128.3,125.2(dd,J=3.2,16.3Hz),121.5(m),120.2(m),116.9(ddd,J=2.6,35.3,38.1Hz).
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −83.42(6F,s),−99.78(2F,d,J=276.2Hz),−102.09(2F,d,J=276.2Hz).
IR(KBr) ν 3437,3136,3101,3073,3053,3007,2960,2928,2874,2862,2435,2379,2368,1965,1845,1820,1722,1633,1556,1488,1409,1358,1240,1201,1134,910,877,759,676,546,460.
Anal.Calcd for C241010:C,55.83;H,1.95;N,5.43.Found:C,55.50;H,1.71;N,5.38.
<実施例3>
化合物(c)を得るための合成スキームを下記に示す。
Figure 2014150237
<化合物(h)の合成>
Ar置換した50mL二口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジオン(0.045g,0.4mmol)、2−トリフルオロアセチルアニリン(0.189g,1.0mmol)、エタノール(5mL)、6MのHCl(0.067mL,0.4mmol)を順に入れ、還流温度で5時間攪拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を反応溶液に加え、酢酸エチルを用いて抽出し、NaSOを加えて乾燥、続いて濃縮を行った。ヘキサン:酢酸エチル=2:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、化合物(h)(13,14−Bis(trifluoromethyl)−5,6−dihydro−dibenzo[b,j][4,7]−phenanthroline)(0.137g,0.33mmol,82% yield)を単離した。
(分析結果)
H NMR(300MHz,CDCl) δ 8.20(2H,d,J=9.0Hz),8.16(2H,d,J=8.7Hz),7.85(2H,t,J=7.8Hz),7.68(2H,t,J=7.8Hz),3.45(2H,d,J=10.5Hz),3.20(2H,d,J=10.5Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 160.9,147.4,133.8(q,J=31.2Hz),130.8,129.1,127.5,125.0,123.4(q,J=276.4Hz),123.1,122.8,34.0.
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −55.40(s).
IR(KBr) ν 3126,3089,3052,3013,2980,2925,2907,2848,2274,1980,1952,1922,1862,1833,1721,1613,1570,1498,1460,1431,1297,1037,961,903,876,732,696cm−1
m.p. 145−146°C
Anal.Calcd for C2212:C,63.16;H,2.89;N,6.70.Found:C,62.85;H,2.99;N,6.67.
<化合物(c)の合成>
Ar置換した50mLの二口フラスコに、化合物(h)(0.050g,0.12mmol)、Methylcellsolve(2mL)、p−Chloranil(0.070g,0.28mmol)を入れ、還流温度で5時間攪拌した。HOを用いて反応を停止させ、ジクロロメタンにて抽出、NaSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル=2:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、化合物(c)(13,14−Bis(trifluoromethyl)dibenzo[b,j][4,7]−phenanthroline)(0.038g,0.0913mmol,76%yield)を単離した。
得られた化合物について、実施例1と同様の方法で構造を同定し、化合物(c)が得られたことを確認した。
<実施例4>
化合物(g)を得るための合成スキームを下記に示す。
Figure 2014150237
<化合物(i)の合成>
Ar置換した50mL二口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジオン(0.112g,1.0mmol)、2−ペンタフルオロプロピオニルアニリン(0.526g,2.2mmol)、エタノール(4mL)、6MのHCl(0.17mL,1.0mmol)を順に入れ、還流温度で5時間攪拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を反応溶液に加え、析出してきた固体を濾過した。ヘキサンを展開溶媒として再結晶を行い、化合物(i)(13,14−Bis(pentafluoroethyl)−5,6−dihydro−dibenzo[b,j][4,7]−phenanthroline)(0.346g,0.669mmol,67%yield)を単離した。
(分析結果)
H NMR(300MHz,CDCl) δ 8.32(2H,d,J=8.1Hz),8.16(2H,d,J=8.4Hz),7.85(2H,dt,J=0.7,7.7Hz),7.65(2H,dt,J=1.3,7.8Hz),3.39(2H,d,J=10.8Hz),3.08(2H,d,J=10.8Hz).
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 161.3,147.6,132.0(m),130.9,129.4,127.5,125.6(m),122.9,118.9(tq,J=37.3,287.1Hz),34.2.
19F NMR(283MHz,CDCl) δ −84.27(6F,s), −102.46(4F,s).
IR (KBr) ν 3150,3091,3048,3008,2989,2959,2923,2854,1976,1950,1858,1833,1722,1614,1575,1461,1396,1313,1220,1203,1140,1036,875,799,710,670,589,512cm−1
m.p. 171−172°C
Anal.Calcd for C241210:C,55.61;H,2.33;N,5.40.Found:C,55.47;H,2.26;N,5.39.
<化合物(g)の合成>
Ar置換した50mL二口フラスコに、化合物(i)(0.050g,0.096mmol)、methylcellsolve(2mL)、p−chloranil(0.138g,0.56mmol)を入れ、還流温度で20時間攪拌した。HOを用いて反応を停止させ、ジクロロメタンにて抽出、NaSOで乾燥させ、濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル=2:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、化合物(g)(13,14−Bis(pentafluoroethyl)dibenzo[b,j][4,7]−phenanthroline)(0.0297g,0.058mmol,60%yield)を単離した。
得られた化合物について、実施例2と同様の方法で構造を同定し、化合物(g)が得られたことを確認した。
<実施例5>
化合物(h)を得るための合成スキームを下記に示す。
Figure 2014150237
Ar置換した50mL二口フラスコに、1,4−シクロヘキサジオン(0.014g,0.125mmol)、トリフルオロアセチルアニリン(0.052g,0.026mmol)、THF(3mL)、CFSOH(0.076g,0.1mmol)を順に入れ、還流温度で5時間攪拌した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を反応溶液に加え、酢酸エチルを用いて抽出し、NaSOを加えて乾燥、続いて濃縮を行った。ヘキサン:酢酸エチル=1:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、化合物(h)(0.0395g,0.094mmol,76%yield)を単離した。
得られた化合物について、実施例3と同様の方法で構造を同定し、化合物(h)が得られたことを確認した。
<溶解性試験>
化合物(c)および化合物(g)のウェットプロセスへの適用性を検討するため、各種溶媒への溶解性試験を行った。化合物(c)は実施例1の方法により得られたものを、化合物(g)は実施例2の方法により得られたものを、使用した。また、比較例として、縮合多環系化合物で環の数が同じ5環であるペンタセン、ピセンの溶解性試験を行った。
具体的には、試料20mgを量りとり、室温で溶媒10gへの溶解性(0.2質量%)を目視により判断した。
溶媒の種類と結果を下記の表1に示す。表1において、○は可溶、×は不溶であったことを表す。なお、溶媒に「可溶」とは、溶媒温度が25℃において0.2質量%以上溶解したことを表す。
Figure 2014150237
溶解性試験の結果、化合物(c)はペンタセンやピセンと比較して、有機溶媒への高い溶解性を有することが明らかになった。これは、化合物(c)にトリフルオロメチル基を導入した効果であると考えられる。化合物(g)についてもペンタフルオロエチル基を導入した効果であると考えられる。
この結果から、本発明に係る含フッ素芳香族化合物はウェットプロセスの適用が可能であると言える。
<イオン化ポテンシャル測定>
化合物(c)、化合物(g)及びペンタセンのイオン化ポテンシャルを、表面分析装置(理研計器株式会社製、商品名AC−1)を用いて測定した。結果を表2に示す。
Figure 2014150237
化合物(c)等の本発明の化合物は、ペンタセンと環の数が同じであるにもかかわらずHOMOレベルが低く、耐酸化性に優れていることが分かった。これは、化合物(c)や化合物(g)のコア骨格中の窒素原子の存在に起因するものであると考えられる。
<有機半導体材料特性>
化合物(c)の有機半導体材料としての特性評価のため蒸着電界効果型トランジスタ(蒸着FET)素子を作製し、電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。以下に蒸着FET素子の作製方法と半導体特性の評価手法を以下に示す。
洗浄済みのシリコン酸化膜付きシリコン基板をn−オクチルトリクロロシランのトルエン溶液に浸漬させ、シリコン酸化膜表面を処理した。上記基板に対して、実施例1で得た化合物(c)を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート0.1Å/s、基板温度25℃、膜厚:60nm)することにより、有機半導体層を形成した。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着し(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)、ソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅1mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層及びシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(藤倉化成社製、ドータイトD−550)を付け溶媒を乾燥させた。このようにして、トップコンタクト・ボトムゲート構造の電界効果型トランジスタ(FET)素子を作製した。
得られた蒸着FET素子の電気特性はAgilent社製の半導体デバイスアナライザーB1500Aを用いて真空中(<5×10−3Pa)で評価した。作製した蒸着FET素子のシリコン基板をゲート電極として用い、シリコン基板に電圧を印加し、ソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線をゲート電圧をスキャンさせて測定した。
その結果、蒸着FET素子のゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作が観測され、このドレイン電流/ゲート電圧の傾きから電界効果移動度(キャリア移動度)を求めた。化合物(c)を用いて形成した有機半導体素子は、n型トランジスタ素子としての特性を示した。この有機薄膜トランジスタの電流−電圧特性における飽和領域から、キャリア移動度を求めたところ、真空中で4.8×10−6cm/V・sを示した。
本発明は、ドライプロセス・ウェットプロセスのいずれにも使用可能で、高移動度が期待される含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料および新規な含フッ素芳香族化合物を提供する。
本発明によれば、縮合芳香環化合物であるヘリセン化合物をコアとして、含フッ素アルキル基を導入することで、有機溶媒への可溶化を図り、有機半導体材料として高いキャリア移動度がある含フッ素芳香族化合物が得られる。
さらにコア(主骨格)部分の一部を窒素原子にすることで、化合物のHOMOレベルを低下し、耐酸化性を向上させることが可能となる。
本発明の化合物を含む有機半導体材料は、有機半導体(薄膜)トランジスタ、次世代フラットパネルディスプレイ用の有機EL素子、および軽量かつフレキシブル電源としての有機薄膜太陽電池等へ利用されうる。

Claims (18)

  1. 下式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい含フッ素芳香族化合物を含む有機半導体材料。
    Figure 2014150237
  2. 前記含フッ素芳香族化合物が下式(4)で表される化合物である請求項1に記載の有機半導体材料。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
  3. 前記式(4)におけるRf1及びRf2が、各々独立に、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である、請求項2に記載の有機半導体材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含む有機半導体薄膜。
  5. 前記有機半導体薄膜が結晶性の薄膜である請求項4に記載の有機半導体薄膜。
  6. 半導体層として、請求項4または5に記載の有機半導体薄膜の層を含む有機半導体素子。
  7. 請求項6に記載の有機半導体素子を含む有機半導体トランジスタ。
  8. 下式(5)で表される化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12の含フッ素アルキル基に置換され、かつ、該炭素原子に結合した水素原子のうち置換されない水素原子が存在する場合には、該水素原子の1以上が、各々独立して炭素数1〜12のアルキル基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基の1種以上で置換されていてもよい含フッ素芳香族化合物。
    Figure 2014150237
  9. 下式(4)で表される化合物。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
  10. 前記式(4)におけるRf1及びRf2が各々独立に、炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である、請求項9に記載の化合物。
  11. 下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物とをアルカリ金属フッ化物およびクラウンエーテルの存在下に反応させて下式(3)で表される化合物を得て、次いで該式(3)で表される化合物に酸を作用させて閉環反応を行う、下式(4)で表される化合物の製造方法。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基であり、TASはトリアルキルシリル基を表し、該トリアルキルシリル基中の3つのアルキル基は各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは脱離基である。]
  12. 前記閉環反応を、加熱条件下で行う請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記閉環反応を、2段階反応で行う請求項11または12に記載の製造方法。
  14. 下式(3)で表される化合物。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1及びRf2は各々独立に、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基である。R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
  15. 下式(6)で表される化合物と下式(7)で表される化合物とを強酸の存在下に反応させて下式(8)で表される化合物を得て、次いで該式(8)で表される化合物に酸化剤を作用させて反応を行う、下式(4A)で表される化合物の製造方法。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1は炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
  16. 前記酸化剤を作用させて行なう反応を、加熱条件下で行う請求項15に記載の製造方法。
  17. 前記酸化剤を作用させて行なう反応を、2段階反応で行う請求項15または16に記載の製造方法。
  18. 下式(8)で表される化合物。
    Figure 2014150237
    [上記式において、Rf1は炭素数1〜12の含フッ素アルキル基であり、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜12のアルキル基である。]
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN104804009A (zh) * 2015-04-17 2015-07-29 河南师范大学 一种合成呋喃[2,3-b]喹啉类化合物的方法

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