JP5228411B2 - [1]ベンゾカルコゲノ[3,2−b][1]ベンゾカルコゲノフェン骨格を有する化合物およびこれを用いた有機トランジスタ - Google Patents
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(2)閾値電圧が低い。
(3)遮断周波数が高い。
(4)有機薄膜トランジスタの特性のバラツキが小さい。
(5)大気下で安定に動作し経時的劣化が小さい。
これらの素子特性を満足するために、有機半導体材料に要求される特性は、以下の通りである。
(ii)成膜性が優れており、薄膜形成プロセスが容易である。
(iii)酸素および水分に対して耐性があり大気下で安定である。
Yen−Yi Lin.,IEEE Transaction on Electron Device,Vol.44,No8 p.1325(1997)
[1] 下記式(I)で表される化合物。
−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、もしくは−C≡C−に置き換えてなる基であり、tは0または1である。)
[2] 前記式(I)で表される化合物が、下記式(I−1)で表されることを特徴とする前記[1]項記載の化合物。
[3] 前記式(I)で表される化合物が、下記式(I−2)で表されることを特徴とする前記[1]項記載の化合物。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物から形成される薄膜。
[5] 前記[4]記載の薄膜からなる有機半導体。
[6] 前記[5]項記載の有機半導体を用いた有機トランジスタ。
本発明の化合物は、[1]ベンゾカルコゲノ[3,2−b][1]ベンゾカルコゲノフェン骨格と末端−C≡C−Si構造とを必須とする化合物であり、下記式(I)で表される構造を有する。
、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、もしくは−C≡C−に置き換えてなる基であり、tは0または1である。このアルキルは、直鎖であっても、分岐を有していてもよい。また、好ましいXは、高い移動度、良好な成膜性および合成の容易さの観点から、硫黄またはセレンである。特に好ましいXは、硫黄である。
該有機半導体を用いたものであることを特徴としている。
本発明の化合物は、例えば、窒素雰囲気下で、2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノフェノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンと、ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド、塩化銅(I)およびトリエチルアミンを脱水ジメチルホルムアミドに加え、
脱気し、これに、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン、トリプロピルシリルアセチレン等のトリアルキルシリルアセチレンを加え、窒素雰囲気下、室温で三日間攪拌することによって合成できる。
有機半導体材料の移動度には、TOF(Time of Flight)法による移動度(μTOF:単位cm2/V・s)、および有機FET素子により求められる移動度(μFET:単位cm2/V・s)があり、μTOFが高いほど、μFETを高くすることができる。
移動度(μTOF)は、TOF測定用セルの電極間の電圧を(V)、電極間距離をd、光
電流の波形から算出した膜厚中を横切る時間をTrとし、下記式(i)により求められる。
させることによって得られる伝達特性の曲線を用いて、下記式(ii)により求められる。
、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、VTHは閾値電圧である。
有機半導体材料に要求される移動度としては一般に、移動度(μTOF)が10−4cm2/V・s以上であり、移動度(μFET)が10−4cm2/V・s以上である。
は10-3cm2/V・s以上であり、特に好ましくは10-2cm2/V・s以上である。
上限値は特に限定されないが、通常10cm2/V・s以下である。本発明の化合物が示
す移動度(μFET)は、通常10−4cm2/V・s以上、好ましくは10−3cm2/V
・s以上であり、特に好ましくは10−2cm2/V・s以上である。上限値は特に限定
されないが、通常10cm2/V・s以下である。化合物のμTOFおよびμFETが上記範囲
内にある場合、その化合物は、有機半導体材料として有用に利用できる。
有機半導体材料の溶解度が、室温において、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上であると、その有機半導体材料を用いて塗布法により薄膜あるいは有機半導体層を好適に形成することができる。本発明の化合物の溶解度は、クロロホルムまたはトルエンを溶媒とした場合、通常1〜10質量%である。このように、本発明の化合物は、高い溶解度を示すため、塗布法に好適に用いることができる。
本発明の薄膜は、本発明の上記化合物から形成される。薄膜の厚みは、目的に応じて適宜決定することができる。
薄膜の形成方法には、公知の種々の成膜方法を適用することができる。具体的には、例えば、本発明の化合物を溶媒に溶解した溶液を用いることによって、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、ディッピング法等のいずれの方法を採用してもよい。溶媒としては、極性溶媒および無極性溶媒のいずれを用いてもよい。
具体的な溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トルエン、キシレン、またはテトラヒドロフラン等が挙げられる。また、溶媒に溶解せず、本発明の化合物を直接加熱して溶融することによって、薄膜を形成することもできる。
本発明の有機半導体は、本発明の上記薄膜からなる。よって本発明の薄膜と同様の方法で形成することができる。
上記方法のいずれかを用いて有機半導体薄層を形成後、真空下または窒素雰囲気下において、適切な熱処理を行って、分子の配向性およびグレインサイズを大きくし、FET特性を改善することができる。これらの効果については、例えば、TOF用セルの場合、クロスニコルの偏光板にセルを挟持し、組織およびそのサイズの観察結果、およびX線回折の結果により確認することができる。また、有機FET素子の場合、AFM(原子間力顕微鏡)もしくはSEM(走査型電子顕微鏡)による観察結果、およびX線回折の結果により確認することができる。
本発明の化合物を用いることにより得られる有機半導体層を用いて、有機FET素子等の有機トランジスタを構成することができる。有機FET素子は、一般的に、ガラスやプラスチック等の支持基板、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜および有機半導体層からなり、ゲート電極に印加する電圧を制御することによって、ゲート絶縁膜上の有機半導体層にキャリアを誘起し、ソース電極とドレイン電極に流れる電流を制御し、スイッチング動作を行う。有機FET素子には、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、ボトムゲート−トップコンタクト型およびトップゲート型等があり、いずれを採用してもよい。また、縦型のFET素子を採用してもよい。電極と有機半導体間のキャリアの注入の観点からは、トップコンタクト型の方が、ボトムコンタクト型よりも容易である。
各特性値の測定・算出および化合物の同定は下記の方法にしたがった。
相転移系列は、DSC(Differential scanning calorimetry:示差走査熱量測定)、およびホットステージ付き偏光顕微鏡を用いた光学組織観察の双方の結果により決定することができる。評価開始温度を−40℃とし、温度上昇および温度下降速度を10℃/minとする。また、分子配向等の高次の構造解析には
X線回折を利用することができる。相転移系列の評価によって、有機半導体薄膜の成膜条件を決めることができる。例えば、液晶相を有する有機半導体化合物に対しては、配向機能を付与したゲート絶縁膜上において、等方相まで温度を上げ、液晶相を経由し室温に戻すことによって、分子配向を制御し、より移動度の高い有機半導体薄膜を形成することができる。
本発明の化合物をクロロホルムに1質量%の濃度で溶解し、スピンコート法を用いて成膜し、有機半導体層を得た。TOF測定用のセルは、20μmの厚みを有する前記有機半導体層を、ITO(Indium Tin Oxide)電極を有するガラス基板で挟んだ構成とした。
なお、これらの電極はキャリア種と有機半導体膜の仕事関数によって適宜、別種の電極材料を選択することができる。このTOF測定用セルの電極間に、電圧(V)を印加した状態でパルス光を照射し、光キャリアを生成し、キャリア輸送による電流値の変化を電圧に変換することによって、光電流をオシロスコープで計測した。パルス光には窒素レーザー(波長が337nm、パルス幅が5ns)を用いた。温度を変えてμTOFを測定する場合は、メトラーにTOF測定用セルを挟持することによって測定した。μTOFは上記式(i)により算出した。
ゲート絶縁膜としてSiO2(膜厚は500nm)、ゲート電極としてハイドープのn型Siウエハ(株式会社セミテック製)を用い、本発明の化合物をクロロホルムに1質量%の濃度で溶解し、スピンコート法により有機半導体膜を形成し、ソース電極およびドレイン電極として、Cr(5nm)上にAu(50nm)をメタルマスクを利用して真空蒸着法により形成してトップコンタクト型の有機FET素子を作製した。
チャネル長(L)は、240μm、チャネル幅(W)は1.5mmであった。測定温度は室温(25℃)であり、測定環境は大気下である。
半導体パラメーターアナライザー(B1500A:アジレントテクノロジー)を用いて、ドレイン電圧(VD=−100V)を固定し、ゲート電圧(VG)を+20Vから−100Vまで0.2V刻みで変化させることによって、伝達特性の評価を行った。この伝達特性の曲線から上記式(ii)により、移動度(μFET)および閾値電圧(VTH)を算出した。
上述の条件にて測定された伝達特性から、IDの絶対値|ID |の最大値(|ID max|)と
最小値(|ID min|)を計測し、その比である|ID max|/|ID min|をオンオフ比として算出した。本素子構成において必要とされるオンオフ比は、103以上である。
合成化合物の同定は、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)(使用機器:FT−NMR JMN−EX270(JEOL(株)製)、溶媒:CDCl3)の測定および元素分
析によって行った。
<化合物(A)の合成>
(I)2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノフェノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(6)の合成
の化合物(東京化成工業製、50g,0.1mol)である化合物(1)をクロロスルホン酸(関
東化学製、200g, 1.7mol)中で加熱することで化合物(2)へと定量的に変換した。続いて化合物(2)を酢酸中に懸濁し、市販の55%よう化水素酸(関東化学製、500ml)を
加えて加熱し、生成した沈殿(3)を一旦濾取後、再度沈殿物(3)を酢酸中に過臭化ピリジニウム(東京化成製、50g,0.2mol)とともに、加熱・混合して化合物(4)を黄色の沈殿物として得た。再結晶は、ジクロロベンゼンを用いて行い、黄色針状結晶として得た(25g,収率57%)さらに、化合物(4)とスズ粉末(関東化学製)を酢酸中に加え加熱し、濃塩酸を徐々に加えることで2,7−ジアミノ[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(5)を白色の沈殿として得た。こうして合成した化合物(5)(1g, 3.7mmol)、水(30ml)、および硫酸(2ml)を混合し5℃以下に冷却した混合物に、別途、亜硫酸ナトリウム(関東化学製、630mg, 9.1mmol)と水(10ml)とで調整した溶液を、5℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後30分攪拌したのち、ヨウ化カリウム(3g, 18mmol)水溶液(40ml)を加え、三時間還流した。室温まで冷却後、亜硫酸水素ナトリウムを加え、沈殿した固体をろ過によって回収した。固体を乾燥させ、化合物(6)粗精製品(1g, 57%)を得た。また、溶媒としてクロロベンゼンを用いた再結晶また昇華精製により橙色固体の結晶(6)として得ることができた。
(II)化合物(A)の合成
)、およびトリエチルアミン(東京化成工業製、10ml)を脱水ジメチルホルムアミド20mlに加え、脱気を30分行った。この混合物に、トリメチルシリルアセチレン(7)(460mg, 4.7mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で三日間攪拌した。反応終了後、水を加え、有機層をクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ別後、減圧乾固した。析出した抽出物はクロロホルムを用いてカラムクロマトグラフィーを行った後、再結晶を行い(クロロホルム/メタノール)、黄色結晶として目的物の化合物(A)を得た(300mg,収率53%)。
1HNMR(400MHz,CDCl3)
δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 9 H, CH3)
−4cm2/V・sとなった。
本発明と同等の骨格を有する国際公開WO2006/077888パンフレットに記載の下記化合物を合成し、室温にてクロロホルムおよびトルエンへの溶解を試みたが、下記化合物は溶媒への溶解性が著しく低いため、塗布法を用いて連続かつ均一な薄膜を形成することができなかった。これより、FET特性は発現しなかった。
<化合物(B)の合成>
得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), 1.41(s, 12H, CH2), 0.18 (s, 18H, CH3)
<化合物(C)の合成>
1HNMR(500MHz,CDCl3)
δ8.04 (d,2H), 7.79(d,2H), 7.55(dd,2H), 1.55(s, 6H, CH), 1.16 (s, 36H, CH3)
<化合物(D)の合成>
(I)化合物(9)の合成
物(8)(aldrich, 11.7g, 50mmol)を加えた。混合物を15時間還流した。反応後、THF
を留去し、冷却してジエチルエーテル(200ml)を加え、析出した沈殿物を濾別した。減
圧乾固した後、蒸留によって精製を行い化合物(9)を得た。
(II)化合物(D)の合成
、13mg, 0.07mmol)、およびトリエチルアミン(東京化成工業製、10ml)を脱水ジメチルホルムアミド20mlに加え、脱気を30分行った。この混合物に、化合物(9)(1.05g, 4.7mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で三日間攪拌した。反応終了後、水を加え、有機層をクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾別後、減圧乾固した。析出した抽出物はカラムクロマトグラフィーによって精製を行い、収率71%で目的物(D)を得た。
2 ドレイン電極
3 ゲート電極
4 有機半導体膜
5 ゲート絶縁膜
Claims (5)
- 請求項1または2記載の化合物から形成される薄膜。
- 請求項3記載の薄膜からなる有機半導体。
- 請求項4記載の有機半導体を用いた有機トランジスタ。
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