JP2010045186A - フタロシアニン前駆体及びその製造方法、フタロシアニンの製造方法、並びにフタロシアニン膜の製造方法 - Google Patents

フタロシアニン前駆体及びその製造方法、フタロシアニンの製造方法、並びにフタロシアニン膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも熱分解しにくい新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニン及びその膜の製造方法を提供する。
【解決手段】下式(1a)及び(1b)で表わされるフタロシアニン前駆体を用いる。
Figure 2010045186

【選択図】なし

Description

本発明は、新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニンの製造方法、並びに、フタロシアニン膜の製造方法に関する。
フタロシアニン骨格を有する化合物(以下、適宜「フタロシアニン」という。)は、可視領域に特徴的な強い吸収を示し、古くから塗装、カラーフィルター等の色素としての用途に顔料として利用されてきた。
また、フタロシアニンは、特許文献1に記載されているように、成膜することにより良好な半導体特性を示すことも知られており、エレクトロルミネッセンス素子、電界効果トランジスタ等の有機トランジスタ、有機太陽電池や光センサー等の光電変換素子、センサー等の有機電子素子への応用も検討されている。
フタロシアニンは、通常の溶媒に難溶性を示す高結晶性の有機色素である。フタロシアニンの製造方法としては、例えば非特許文献1及び非特許文献2に記載されている方法のように、溶媒に可溶性の前駆体からフタロシアニンを得る方法が開示されている。
フタロシアニンの製造方法として、特許文献2には、フタロシアニン前駆体を加熱することにより、フタロシアニンを製造する方法が開示されている。特許文献2においては、下記式(A)で表わされるジシアノ化合物の4量環化を行うことで、フタロシアニン前駆体を製造している。
Figure 2010045186
特開2003−304014号公報 特開2003−327588号公報 Nature 388巻131頁(1999) 日本画像学会誌 44巻347頁(2005)
フタロシアニンを、例えば半導体として用いるために均一の膜に成形(即ち、成膜)しようとする場合、フタロシアニンは通常の溶媒に対して難溶性を示すことから、通常は蒸着法を用いて成膜していた。しかし、蒸着法は製造コストが高く、大面積の製膜が困難であるという課題を有していた。
一方、フタロシアニンにt−ブチル基等立体的に嵩高い置換基を導入して分子間相互作用を弱めて、溶解性を向上させて塗布成膜する方法も開発されている。しかしながら、そのような化合物は結晶性が低く、色素の耐久性が低下したり、半導体特性が低下するといった課題がある。
そこで、溶媒に可溶性を示すフタロシアニン前駆体を適切な溶媒に溶解してフタロシアニン前駆体溶液を用意し、当該フタロシアニン前駆体溶液を均一に塗布して成膜した後、フタロシアニン前駆体からなる当該膜を加熱等の方法によりフタロシアニンに変換することで、低コストかつ容易にフタロシアニンを成膜する方法が提案されてきた(特開2003−327588号公報等)。
しかし、本発明者らが検討した結果、特許文献2に記載のジシアノ化合物において、当該ジシアノ化合物が4量環化する際、分子中の脱離基部分(具体的には、主に上記式(A)中の上側の橋架け及びアセタール基部分)が熱分解しやすいものが含まれており、当該ジシアノ化合物が4量環化する際に分解してフタロシアニン顔料が生成してしまい、フタロシアニン前駆体を製造することが困難であることが判明した。
このような、フタロシアニン前駆体の非効率な合成法によって、製造コスト高になる課題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも熱分解しにくい新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニンの製造方法、並びに、フタロシアニン膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、上記の熱分解しやすいビシクロ化合物を、熱安定性の高いものにする事により、従来よりも熱分解しにくい新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニンの製造方法、並びに、フタロシアニン膜の製造方法を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1a)及び式(1b)で表わされることを特徴とする、フタロシアニン前駆体(以下、「本発明のフタロシアニン前駆体」ということがある。)に存する(請求項1)。
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qを含むビシクロ部分の構造を以下式(2)に表わす。)
Figure 2010045186
(上記式中、Porは式(1a)又は式(1b)のポルフィリン環を表わしており、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4(mは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1a)又は式(1b)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
本発明の別の要旨は、熱的に安定なジシアノビシクロ化合物を原料化合物として用いることを特徴とする、下記式(1c)又は(1d)に表わされるフタロシアニン前駆体の製造方法(以下、適宜「本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法」ということがある。)に存する(請求項2)。
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qは2価の脱離基を表わす。)
このとき、前記式(1c)又は式(1d)で表わされるフタロシアニン前駆体のビシクロ部分の構造が、下記式(2)で表わされるsyn体であることが好ましい(請求項3)。
Figure 2010045186
(上記式中、Porは式(1c)又は式(1d)のポルフィリン環を表わしており、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1a)又は式(1b)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
本発明の別の要旨は、本発明のフタロシアニン前駆体、又は本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されるフタロシアニン前駆体からフタロシアニンを誘導することを特徴とする、フタロシアニンの製造方法(以下、「本発明のフタロシアニンの製造方法」ということがある。)に存する(請求項4)。
本発明の別の要旨は、本発明のフタロシアニン前駆体、又は本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されるフタロシアニン前駆体を基板に塗布して、フタロシアニン膜に変換することを特徴とする、フタロシアニン膜の製造方法(以下、「本発明のフタロシアニン膜の製造方法」ということがある。)に存する(請求項5)。
このとき、前記フタロシアニン膜が、電子デバイス用であることが好ましい(請求項6)。
また、このとき前記電子デバイスが、電界効果トランジスタであることが好ましい(請求項7)。
また、前記電子デバイスが、太陽電池であることが好ましい(請求項8)。
本発明によれば、従来よりも熱分解しにくい新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニンの製造方法、並びに、フタロシアニン膜の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
本明細書において、「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義されるものである。キャリア移動度とは、電荷をどれだけ速く(又は多く)移動させることが出来るかという指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」とは、室温におけるキャリア移動度が、通常10−7cm/V・s以上、好ましくは10−6cm/V・s以上、より好ましくは10−5cm/V・s以上、のものを表わす。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性、タイムオブフライト法等により測定できる。
[1.フタロシアニン前駆体]
本発明のフタロシアニン前駆体は、下記式(1a)又は式(1b)で表わされる構造を有する化合物である。
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qを含むビシクロ部分の構造については後述する。)
本発明のフタロシアニン前駆体は、[2.フタロシアニン前駆体の製造方法]で後述する、本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法と同様の方法で合成することが好ましい。
(Rmnについて)
上記式(1a)及び(1b)中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。すなわち、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34、R41、R42、R43、R44のことである。)は、水素原子又は1価の置換基である。1価の置換としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子または1価の有機基等が挙げられる。
有機基は、直鎖でもよく、分岐を有していてもよい。また、鎖状でもよく、環を有していてもよい。さらに、有機基は、飽和結合と二重結合及び/又は三重結合とを有していてもよいが、飽和結合のみを有することが好ましい。
有機基の具体例としては、アルキル基、水酸基、アルコキシ基等が挙げられ、中でも、アルキル基が好ましい。
アルキル基の中でも、脂肪族アルキル基、芳香族アルキル基が挙げられ、中でも脂肪族アルキル基が好ましい。なお、有機基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
脂肪族アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
また、有機基は、置換基で置換されていてもよい。置換しうる置換基の具体例としては、上記の脱離基に置換しうる置換基と同様のもの等が挙げられる。ただし、有機基が置換基で置換されている場合、その置換基も含めた有機基全体の分子量及び炭素数が、上記の有機基の分子量及び炭素数の範囲を満たすことが好ましい。なお、置換基は1種を単独で置換してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで置換してもよい。また、これらの置換基が、更に一以上の置換基によって多重に置換されていてもよい。置換しうる置換基としては、例えば、上記の有機基に置換しうる置換基と同様のもの等が挙げられる。
(Mについて)
上記式(1b)のMは中心金属であり、Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。
2価の金属の具体例としては、Cu、Zn、Mg、Ni、Co(II)、Fe(II)、Pt等が挙げられる。中でも、CuやZnが好ましい。良好な半導体特性が知られているからである。
さらに、Mは、2価の金属でなくても、3価、4価等の2価より大きい金属と原子又は原子団とが結合して全体として2価であるもの(即ち、金属を含む2価の原子団)であってもよい。
金属を含む2価の原子団の具体例としては、AlX、TiX、Sn(IV)X、TiO、SiX、Fe(III)X(Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、又は水酸基を表わす。)等が挙げられる。
(Qを含むビシクロ部分の構造について)
を含むビシクロ部分の構造は、以下式(2)の構造を有するものである。
Figure 2010045186
(上記式中、Porは式(1a)又は式(1b)のポルフィリン環を表わしており、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4(mは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1a)又は式(1b)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
(Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4について)
上記式(2)中のRm1、Rm2、Rm3、及びRm4は、上記式(1a)又は式(1b)のR11、R12、R13、及びR14の組み合わせ、R21、R22、R23、及びR24の組み合わせ、R31、R32、R33、及びR34の組み合わせ、R41、R42、R43、及びR44の組み合わせの何れの組み合わせをも表わしている。
すなわち、上記式(1a)又は上記式(1b)の4つのQを含むビシクロ部分の構造は、何れも上記式(2)の構造を有している。
m1、Rm2、Rm3、及びRm4は、上記式(1a)及び(1b)に記載のRmnの具体例と同様の基を表わしている。その好ましい基も、Rmnと同様である。Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4はそれぞれ同一の基でもよいし、任意の組み合わせ及び比率で別の基で有ってもよい。
(Rma及びRmbについて)
ma及びRmbは、上記式(1a)及び式(1b)に説明されるRmnと同様の基を表わしている。その好ましい基の種類もRmnと同様である。RmaとRmbとは互いに同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
ただし、[3.フタロシアニンの製造方法]で後述するように、上記式(1a)及び式(1b)のQは脱離基であり、フタロシアニン前駆体はそれが脱離することでフタロシアニンになる。従って、フタロシアニン前駆体を合成する環境下では脱離せず、それ以外の一定の環境下(例えばフタロシアニン前駆体の合成時よりも高い温度下)においては脱離するような脱離基Qであることが好ましく、かかる脱離基Qが得られるようなRma及びRmbが選択されることが好ましい。
(Qを含むビシクロ部分の立体異性体について)
脱離基Qを含むビシクロ部分は、syn体とanti体との2種類の立体異性体が存在する。本発明のフタロシアニン前駆体を合成する環境下では、anti体は構造が壊れやすい傾向にあり、syn体では構造が壊れにくい傾向にあるため、syn体が好ましい。これについては、[2.フタロシアニン前駆体の製造方法]で詳述する。
[2.フタロシアニン前駆体の製造方法]
本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法は、熱的に安定なジシアノビシクロ化合物を用いて、下記式(1c)又は下記式(1d)に表わされるフタロシアニン前駆体(これらのフタロシアニン前駆体を総称して、「本発明に係るフタロシアニン前駆体」ということがある。)を製造する方法である。
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qは2価の脱離基を表わす。)
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Qは2価の脱離基を表わす。)
上記の反応の原料化合物が、熱的に安定なジシアノビシクロ化合物の一例である。ここで、熱的に安定とは、上記反応において原料化合物が本発明に係るフタロシアニン前駆体に誘導されるときに、Qの脱離が10%以下であることをいう。
(Qについて)
上記式における(1c)及び(1d)のQは脱離基であり、[3.フタロシアニンの製造方法]に後述される本発明のフタロシアニンの製造方法において、脱離することができれば、その種類に制限はない。ただし、本発明に係るフタロシアニン前駆体((1c)、(1d))を製造するときの環境下においては、Qが脱離しにくいものが好ましく、脱離しないものがより好ましい。
脱離基Qが脱離しにくい構造を有する原料化合物としては、10℃/分の昇温速度での熱分析で、分解開始温度が170℃以上である原料化合物が挙げられる。
上記の縮合反応の際に脱離しない構造を有する原料化合物であるジシアノ化合物の例としては、次の構造のものをあげることができる。
Figure 2010045186
この原料化合物が本発明に係るフタロシアニン前駆体になった場合に、以下の様な脱離基Qを含むビシクロ構造を4つ含む構造となる。すなわち、本発明に係るフタロシアニン前駆体の脱離基Qを含むビシクロ部分の構造としては、以下の構造が好ましい。
Figure 2010045186
(上記式中、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4(mは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1c)又は式(1d)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
本発明のフタロシアニン前駆体(1a)及び(1b)は、脱離基Qを含むビシクロ部分の構造が上記の構造を有する時のものである。すなわち、上記式(1c)の脱離基Qを含むビシクロ部分の構造が上記の構造を有する場合、本発明のフタロシアニン前駆体(1a)となり、上記式(1d)の脱離基Qを含むビシクロ部分の構造が上記の構造を有する場合、本発明のフタロシアニン(1b)となる。
脱離基Qの分子量は、通常18g/モル以上、また、通常200g/モル以下、好ましくは150g/モル以下、より好ましくは100g/モル以下である。分子量が大きすぎる場合、脱離基を系外に除去することが難しくなる傾向がある。
(原料化合物の製造方法)
原料化合物である、熱的に安定なジシアノビシクロ化合物を製造する方法を説明する。ここでは、Rmn=H、Rma=メチル基で説明するが、ほかの基の場合には対応する原料化合物を用いればよい。
まず次のディールスアルダー反応でビシクロ化合物を合成する。この反応は、例えば、特開2006−131574号公報に記載されている方法を用いることができる。
Figure 2010045186
2種類の異性体(anti体とsyn体)が生成する。ここで、このsyn体とanti体を分離する。分離の方法としては、例えばカラム・クロマトグラフィー法を用いて分離精製する方法、分別再結晶法等が挙げられるが、カラム・クロマトグラフィー法が好ましい。このようにして得られたsyn体のみを用いて次のフタロシアニン前駆体の合成を行う。
(フタロシアニン前駆体の製造方法)
以下、上記の原料化合物(syn体)を原料とした、本発明に係るフタロシアニン前駆体の製造方法の具体例について説明する。
・中心金属Mがマグネシウムであるフタロシアニン前駆体(1d)の合成方法
上記式(1d)で表わされる、本発明に斯かるフタロシアニン前駆体の中心金属Mが、マグネシウムである場合、すなわち下記式においてM’がMgになる場合について説明する。
Figure 2010045186
上記式に示されるとおり、原料化合物(syn体)と、ジブトキシマグネシウム等のマグネシウムを含有する触媒とを、ブタノール等の溶媒中において加熱することにより、中心金属がMgのフタロシアニン前駆体化合物(1d)が得られる。
このとき、触媒の種類としては、マグネシウムを含んでいる触媒であればよく、例えばジブトキシマグネシウムを含有する触媒が好ましい。
溶媒の種類に制限はないが、例えばブタノールが好ましい。
加熱温度としては、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
反応時間としては、通常3時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上、また、通常72時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは36時間以下である。
・中心金属Mがマグネシウム以外であるフタロシアニン前駆体(1d)の合成方法
本発明に係るフタロシアニン前駆体(1d)の中心金属を、Mgの代わりに別の中心金属を導入することも可能である。この場合、上記で得られた中心金属にMgを有するフタロシアニン前駆体(1d)から中心金属のMgを脱離させ、中心金属のない無金属のフタロシアニン前駆体(1c)を合成し、別の中心金属を導入する方法、若しくは予め中心金属のない無金属のフタロシアニン前駆体(1c)を合成し、そこに中心金属を導入する方法が挙げられる。以下、この順に説明する。
まず、中心金属であるMgを脱離する方法について説明する。
上記で得られた中心金属にMgを有するフタロシアニン前駆体(1d)と、トリフルオロ酢酸等の酸とを反応させることにより、無金属のフタロシアニン前駆体(1c)を得ることが出来る。
このとき、酸の種類に制限はないが、例えばトリフルオロ酢酸が好ましい。
この際、酸と反応させる場合の反応温度としては、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。
酸の使用量は、通常1倍モル以上、好ましくは2倍モル以上、また、通常100倍モル以下、好ましくは50倍モル以下、より好ましくは30倍モル以下である。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下である。さらに、反応に用いられる溶媒としては、塩素系溶媒が好ましく、クロロホルムが特に好ましい。
次に、無金属のフタロシアニン前駆体(1c)を直接合成する方法について説明する。
無金属のフタロシアニン前駆体(1c)を直接合成するには、上記の中心金属がMgのフタロシアニン前駆体化合物(1d)を得る工程において、ジブトキシマグネシウム等のマグネシウムを含有する触媒を用いる代わりに、リチウム(Li)アルコキサイド等の触媒を用いる以外は同様に反応させることで、原料化合物を4量化させることができる。
このとき、触媒としては、例えばリチウム(Li)アルコキサイドが好ましい。なお、リチウムアルコキサイドを塩基として使用して合成することも可能である。
次に、無金属のフタロシアニン前駆体(1c)にMg以外の金属を導入する方法について説明する。導入する金属としては、銅、ニッケルなどが挙げられる。
上述の方法で得られた無金属のフタロシアニン前駆体(1c)と、導入したい金属の金属塩と反応させることで、中心金属を導入したフタロシアニン前駆体(1d)を得ることができる。
このとき、金属塩としては、酢酸銅、塩化ニッケル等が挙げられる。
金属塩の使用量は、原料化合物に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.5倍モル以上、また、通常20倍モル以下、好ましくは10倍モル以下、より好ましくは5倍モル以下である。
また、溶媒としては、無金属のフタロシアニン前駆体(1c)および中心金属を有するフタロシアニン前駆体(1d)の何れも溶解できれば制限はなく、極性溶媒が好ましく、例えばジメチルホルムアミドが好ましい。
反応温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
反応時間は、通常3時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、また、通常72時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは36時間以下である。
・無金属(中心金属が存在しない)フタロシアニン前駆体(1c)の合成方法
本発明に係るフタロシアニン前駆体のうち、無金属のフタロシアニン前駆体(1c)は、中心金属Mがマグネシウムであるフタロシアニン前駆体(1d)を合成した後、その中心金属を脱離させる方法、原料化合物を4量体化するにあたり、中心金属なる元素を排除して直接合成する方法、の何れを用いることもできる。その具体的な方法は、上述の通りである。
[3.フタロシアニンの製造方法]
本発明のフタロシアニンの製造方法は、本発明のフタロシアニン前駆体(則ち、上記式(1a)又は(1b)で表わされるフタロシアニン前駆体。)、又は本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されたフタロシアニン前駆体(則ち、上記式(1c)又は(1d)で表わされるフタロシアニン前駆体。)からフタロシアニン(以下、「本発明に係るフタロシアニン」ということがある。)を誘導するものである。
以下、本発明のフタロシアニン前駆体(1a)を用いて説明するが、他のフタロシアニン前駆体((1b)、(1c)及び(1d))も同様にして行なうことができる。
下記式は、本発明のフタロシアニン前駆体(1a)から、下記式(3)で表わされるフタロシアニンを誘導する反応を表わしている。
Figure 2010045186
(上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Qは脱離基である。)
上記反応において、本発明のフタロシアニン前駆体(1a)を加熱することにより、フタロシアニン(3)を得ることができる。ここで、加熱手段、加熱温度、加熱時間等の各種条件は、本発明に係るフタロシアニンが誘導できる限り、任意に決定できる。
(加熱手段)
加熱手段は、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り任意である。加熱手段の具体例としては、ホットプレート;オーブン;熱ローラー;レーザー光、赤外光等の光;マイクロ波;加熱した気体、液体、固体から選ばれる1種以上のものとの接触;等が挙げられる。加熱手段は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の方法を組み合わせで用いてもよい。2種以上の方法を用いる場合には、その順序、加熱に用いる比率等は任意である。
(加熱条件)
加熱温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、また、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。反応温度が低すぎる場合、本発明に係るフタロシアニンを得るまでの時間がかかりすぎる可能性がある。また、高すぎる場合、本発明の本発明に係るフタロシアニンの製造の際に用いられる各種材料が、熱により影響を受ける可能性がある。
なお、加熱温度は、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り、一定であってもよいし、異なる温度で複数回加熱してもよい。また、加熱した後冷却し、さらに所望の温度で加熱してもよい。
加熱時間は、加熱温度、加熱装置等によるため一概には言えないが、通常1ナノ秒以上、また、通常1日以下とする。
より具体的には、例えば、レーザー光により加熱する場合、通常1ナノ秒以上、好ましくは10ナノ秒以上、より好ましくは100ナノ秒以上、また、通常1秒以下、好ましくは0.5秒以下、より好ましくは0.1秒以下である。
また、例えば、加熱手段としてホットプレート、オーブン等を用いる場合、通常0.1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、また、通常10時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下である。
さらに、例えば、加熱した気体、液体、固体を接触することにより本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱する場合、通常1ミリ秒以上、好ましくは10ミリ秒以上、より好ましくは100ミリ秒以上、また、通常1日以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下であることが望ましい。
加熱時間が短すぎる場合、本発明に係るフタロシアニン前駆体を膜とした時に、製造される本発明に係るフタロシアニンの膜が良好な結晶性を有さない可能性がある。また、長すぎる場合、膜の生産性が低下する可能性がある。
本発明に係るフタロシアニンの生産性の観点からは加熱時間は短いことが好ましいが、十分に反応を進行させたり、本発明に係るフタロシアニンの半導体特性、色調の発現のための結晶成長等を所望のものとさせたりする場合には、加熱時間は、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、また、通常3時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内である。加熱時間が短すぎる場合結晶化が十分進行せず、顔料や半導体としての特性を十分に発現しない可能性がある。また、長すぎる場合、生産性が悪化したり、組み合わせるほかの材料の劣化を引き起こす可能性がある。
(加熱時の雰囲気)
加熱時の雰囲気は、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り任意である。ただし、酸素、水等が本発明に係るフタロシアニン製造の際の障害となる可能性があるので、窒素等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。不活性ガスは、1種を単独で用いもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また、本発明に係るフタロシアニンが有する特性を向上させる観点から、形成されるフタロシアニンの結晶が成長することが好ましい。具体的には、非晶質部分が少なく、欠陥の少ない結晶であることが好ましい。本発明に係るフタロシアニンの結晶を成長させる方法としては、例えば、一度生成した結晶をさらに適当な温度と時間で加熱処理をしたり、溶媒に接触させたり溶媒蒸気に晒して溶媒処理をしたりする事が挙げられる。
さらに、フタロシアニンへの変換の度合いをモニターしながら、フタロシアニン前駆体を加熱することが好ましい。この操作により、最適な変換条件を定めて所望の物性を有するフタロシアニンを得ることができる。モニターの方法としては、公知の任意のものを用いることができるが、例えば、顕微鏡等による外見の変化の観察、色(即ち、吸収スペクトル)の変化の観察、赤外分光法、紫外分光法、マススペクトル、ラマンスペクトル等の振動スペクトルの測定、X線回折の測定、H−NMR及び13C−NMRの測定、熱重量示差熱同時分析(TG−DTA)の測定等が挙げられる。
(その他の条件)
本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱する際、本発明に係るフタロシアニン前駆体の状態は、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り特に制限されない。本発明に係るフタロシアニン前駆体は、例えば、液状であってもよいし、ゲル状であってもよい。また、例えば、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して得られた膜状のフタロシアニン前駆体を加熱してもよいし、フタロシアニン前駆体を直接加熱してもよい。中でも、本発明のフタロシアニンの製造方法においては、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜し、膜状の本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱することが好ましい。
また、本発明のフタロシアニンの製造方法においては、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り加熱以外の任意の処理を行うことができる。処理の具体例としては、乾燥、洗浄等が挙げられる。例えば、本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱する前に水等の溶媒で洗浄した後、乾燥してから該フタロシアニン前駆体を加熱したり、該フタロシアニン前駆体を加熱後に水等の溶媒で洗浄して乾燥させたりすることもできる。任意の処理は、1種のみ行ってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行ってもよい。
(本発明のフタロシアニンの製造方法における好ましい工程の態様)
本発明のフタロシアニンの製造方法において、本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱して本発明に係るフタロシアニンが得られる限り、その他の工程、条件等は任意に決定できる。上記のように、本発明に係るフタロシアニン前駆体を加熱し、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り、その他の工程、条件等は任意である。
[4.フタロシアニン膜の製造方法]
本発明のフタロシアニン膜の製造方法は、本発明のフタロシアニン前駆体(則ち、上記式(1a)又は(1b)で表わされるフタロシアニン前駆体。)、又は本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されたフタロシアニン前駆体(則ち、上記式(1c)又は(1d)で表わされるフタロシアニン前駆体。)を基板に塗布して、フタロシアニン膜(以下、「本発明に係るフタロシアニン膜」ということがある。)に変換するものである。
より具体的な製造方法の例としては、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する工程と、当該膜を加熱することにより本発明に係るフタロシアニン前駆体を本発明に係るフタロシアニンに変換する工程とを有する製造方法が挙げられる。以下、この方法について具体的に説明する。ただし、本発明のフタロシアニン膜を製造する方法は、以下の内容に限定されない。
<本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する工程>
本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する工程は、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する限り、成膜方法、条件等は任意である。
(成膜方法)
成膜方法としては、本発明に係るフタロシアニン膜が得られる限り任意の方法を用いることが出来る。例えば、成膜方法としては、本発明に係るフタロシアニン前駆体を溶媒に溶解させた溶液(以下、「フタロシアニン前駆体溶液」いうことがある。)を、基板上に任意の塗布方法により塗布することにより成膜する塗布法、任意の印刷方法を用いて基板上にフタロシアニン前駆体の膜をパターニングすることにより成膜する印刷法等が挙げられる。
中でも、本発明のフタロシアニン前駆体は溶媒に通常可溶であるという観点から、成膜は、塗布法、及び/又は印刷法により行うことが好ましい。なお、成膜方法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
塗布法としては、公知の任意の方法を用いることが出来る。塗布法の具体例としては、キャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法等が挙げられる。塗布法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
また、印刷法としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等が挙げられる。印刷法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
(溶媒)
本発明に係るフタロシアニン前駆体を溶解させる溶媒は、本発明に係るフタロシアニン膜が得られる限り任意である。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;ピリジン、キノリン等の含窒素有機溶媒類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;などが挙げられる。これらは、目的により適したものを選択できる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
(溶液中の濃度)
フタロシアニン前駆体溶液における、本発明に係るフタロシアニン前駆体の濃度は、本発明に係るフタロシアニン膜が得られる限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。濃度が低すぎる場合塗布膜厚が薄くなる可能性がある。高すぎる場合、溶質が析出したり薄膜の作製が困難になる可能性がある。
(溶液の使用量)
フタロシアニン前駆体溶液の使用量は、本発明に係るフタロシアニン膜が得られる限り任意であるが、所望の膜厚となるように決定すればよい。
(その他の成分)
フタロシアニン前駆体溶液は、上記の溶媒及び本発明に係るフタロシアニン前駆体以外の成分(以下、「その他の成分」ということがある。)を含んでいてもよい。その他の成分としては、本発明に係るフタロシアニンが得られる限り、任意のものを用いることができる。なお、その他の成分は、1種を単独で含んでもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで含んでもよい。
例えば、本発明に係るフタロシアニンを半導体として用いる場合、その他の成分としては、本発明に係るフタロシアニンと同種の半導体材料及び/又は異種の半導体材料;これら半導体材料の前駆体;半導体特性を制御する電子受容体及び/又は供与体等のドーパント;成膜性を制御するための添加剤;酸化防止剤;等が挙げられる。特に、フタロシアニンが正孔と電子とが反応に関与する太陽電池等の有機電子素子として用いられる場合、フタロシアニン前駆体溶液中にp型を示す半導体成分と、n型を示す半導体成分とが共存させて用いることもできる。
p型を示す半導体成分としては、例えば、チオフェン環が連結したポリチオフェン等の共役分子、ペンタセン、フタロシアニン、ベンゾポルフィリン及びその前駆体等が挙げられる。
また、n型を示す半導体成分としては、例えば、PCBM([6,6]-phenyl C61-butyric acid methyl ester)等の溶媒に可溶性のn型半導体、無機若しくは有機半導体微粒子、n型半導体の前駆体等が挙げられる。
ドーパントの具体例としては、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF、AsF、FeCl、SbF等のルイス酸、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、ICl、ICl、IBr、IF、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属原子、バリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類等が挙げられる。
成膜性を制御するための添加剤としては、界面活性剤等が挙げられる。
酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール等が挙げられる。
また、例えば、本発明に係るフタロシアニンを顔料として用いる場合、その他の成分としては、バインダー等を用いることが出来る。バインダーがフタロシアニン前駆体溶液に含まれることにより、膜の機械強度の向上、撥水性、耐光性、耐候性等の耐環境性の付与、反射率等の光学的な特性の改良等の利点を本発明に係るフタロシアニンの膜に付与することが出来る。
バインダーの具体例としては、通常塗料等に用いられるポリマー、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
(基板)
基板としては、任意のものを用いることが出来る。基板の具体例としては、ガラス、サファイア等のガラス基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、ポリノルボルネン等のプラスチック基板、紙、合成紙、アルミ、ステンレス、鉄等の金属等が挙げられる。基板は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
基板の厚さも、基板としての強度が保てる限り任意である。ただし、基板の厚さは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常1cm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下である。基板の厚さが薄すぎる場合、基板としての強度が保てない可能性がある。また、基板の厚さが厚すぎる場合、本発明に係るフタロシアニン前駆体の製造コストが高くなる可能性がある。
なお、本発明に係るフタロシアニン前駆体を、窓ガラス、瓦、自動車の車体等、他の構造物の上に直接成膜する場合、それら塗布する対象を基板とする。この場合には、基板の厚みに制限はない。
(膜厚)
フタロシアニン前駆体溶液を成膜して得られた膜の膜厚に制限は無く、その膜の目的に応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明に係るフタロシアニンに変換後の膜を横型の電界効果トランジスタ(FET)に用いる場合、膜厚が一定以上であれば、通常有機電子素子の各種特性に影響は無い。ただし、膜厚が厚すぎると漏れ電流が増加する可能性があるという観点から、膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは500nm以下であることが望ましい。
また、フタロシアニン膜をフタロシアニンの光学特性を利用した塗装膜に用いる場合、色調を十分に発現する、及び/又は、塗装による、塗装される面の保護効果を得ることができるという観点から、膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、また、通常1mm以下であることが望ましい。
膜の形状としては、膜厚が均一である膜が好ましい。ただし、膜厚が一定でなくても、膜の全ての部分において膜厚が上記の範囲に収まることが好ましい。例えば、フタロシアニン前駆体溶液が液滴として膜表面に付着した場合、その付着した部分の厚さが、上記範囲に収まることが好ましい。
<フタロシアニン膜を加熱することにより本発明に係るフタロシアニン前駆体を本発明に係るフタロシアニンに変換する工程>
本工程において、上記のように製膜された膜を加熱することにより、本発明に係るフタロシアニン前駆体を本発明に係るフタロシアニンに変換できる限り、加熱方法、条件等は任意である。ただし、[3.フタロシアニンの製造方法]の(加熱手段)において説明した加熱方法を、本工程においても適用することが好ましい。
なお、上記のように、本発明のフタロシアニン膜の製造方法は、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する工程と、当該膜を加熱することにより本発明に係るフタロシアニン前駆体を本発明に係るフタロシアニンに変換する工程とを有することが好ましい。この場合、これらの2つの工程は、それぞれ1回のみ行ってもよく、それぞれ2回以上行ってもよい。例えば、成膜した後に膜を加熱してフタロシアニン前駆体をフタロシアニンに変換した後、さらに、当該膜上にフタロシアニン前駆体を塗布して成膜し、再び加熱してフタロシアニンに変換してもよい。また、後述するその他の工程と任意に組み合わせて行ってもよい。
(その他の工程)
本発明のフタロシアニン膜の製造方法は、本発明に係るフタロシアニン前駆体を塗布して成膜する工程と、当該膜を加熱することにより本発明に係るフタロシアニン前駆体を本発明に係るフタロシアニンに変換する工程とを有することが好ましいが、本発明に係るフタロシアニン膜が得られる限り、これら以外のその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、例えば、[3.フタロシアニンの製造方法]の(加熱手段)において説明した加熱方法以外の任意の処理等が挙げられる。
また、その他の工程は、1種を単独で行ってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行ってもよい。例えば、2回洗浄を行った後、1回乾燥させてもよい。
[5.フタロシアニン膜の用途]
本発明に係るフタロシアニンは、可視領域に強い光の吸収を有することから、色素としての塗装用途等に好適に用いられる。さらに、本発明に係るフタロシアニンは半導体特性を有することが好ましい。即ち、本発明に係るフタロシアニンは、半導体であることが好ましい。これにより、本発明に係るフタロシアニン膜を、電界効果トランジスタ、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の有機電子素子等の半導体部材の材料として、好適に用いることが出来る。
ただし、本発明に係るフタロシアニンを半導体として用いるためには、本発明に係るフタロシアニンを膜状にした時の、当該膜の電気的な特性が重要である。具体的は、膜における室温でのキャリア移動度が、通常1×10−5cm/Vs以上、好ましくは1×10−4cm/Vs以上、より好ましくは1×10−3cm/Vs以上である。キャリア移動度が小さすぎる場合、半導体特性が低く、機能を十分に発現できない可能性がある。
半導体は、その材料中で電荷を運搬できるものであり、不純物のドーピング、印加する電場、光の照射等の各種条件によりキャリア密度を制御することで、整流素子としての機能、トランジスタ機能、光による電流発生機能、光による起電力発生機能等の各種の機能を発現させることができる。
[6.本発明のフタロシアニン前駆体により得られる利点]
フタロシアニンは、通常多くの溶媒に対して難溶性を示すので、例えば、溶媒に可溶であるフタロシアニン前駆体を用いることにより、カラムクロマトグラフィーや再結晶法等、溶液状態での精製方法を利用することにより、純度の高いフタロシアニンを製造することが出来たり、フタロシアニン前駆体を塗布して成膜し、当該膜を加熱することにより、難溶性のフタロシアニンの膜を製造したりすることが出来る。
[7.有機電子素子]
本発明に係るフタロシアニンは、半導体として用いることが好ましく、中でも、有機電子素子として用いることが好ましい。以下、本発明に係るフタロシアニンを用いた有機電子素子のことを、「本発明の有機電子素子」ということがある。
有機電子素子は、2個以上の電極を有するものである。本発明の有機電子素子としては、例えば、電極間に流れる電流、生じる電圧等を、電気、光、磁気、化学物質等により制御する素子;印加した電圧又は電流により、光、電場、磁場等を発生させる素子;電圧又は電流の印加により電流又は電圧を制御する素子;磁場の印加により電圧又は電流を制御する素子;化学物質を作用させて電圧又は電流を制御する素子等が挙げられる。これらの制御の方法としては、例えば、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
本発明の有機電子素子の具体例としては、抵抗器;ダイオード等の整流器;スイッチング素子トランジスタ、サイリスタ等のスイッチング素子;トランジスタ等の増幅素子;メモリー素子、化学センサー等、又はこれらの素子の組み合わせ、集積化したデバイス等が挙げられる。
また、本発明に係るフタロシアニンは、通常は近紫外〜可視〜近赤外領域に強い光の吸収を有する。これを利用して、本発明に係るフタロシアニンは、光機能材料として用いることもできる。この場合、本発明の有機電子素子の具体例としては、吸収された光により電荷分離を引き起こし機能する素子等が挙げられる。
このような素子としては、例えば、光により起電力を生じる太陽電池、光電流を生じるフォトダイオード等の光電変換素子、フォトトランジスタ等が挙げられる。ここで、太陽電池は、半導体と金属又は他の半導体との接合部分に生じる内部電界を利用して、光による電荷分離を引き起こし、これを外部に取り出すものである。また、このような素子は、例えば、光の吸収により生じた励起状態を利用して、ラジカル発生剤を増感したり、直接励起状態からラジカルを発生させたりすることにより、光ラジカル発生等にも応用できる。
中でも、本発明の有機電子素子は、電界効果トランジスタ、太陽電池、又はエレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
本発明の有機電子素子の製造方法としては、上記の本発明のフタロシアニンの製造方法により、フタロシアニンを製造する工程を有するものである。従って、上記の本発明のフタロシアニンの製造方法により本発明に係るフタロシアニンを製造する限り、他の工程、方法、条件等は、任意である。
他の電子素子としては、例えば、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley−Interscience 1981)等に記載されているものを用いることができる。
中でも、例えば、本発明の有機電子素子が電界効果トランジスタの場合、特開2004−6750号公報、また、太陽電池の場合、特開2007−324587号公報、さらに、有機EL等のエレクトロルミネッセンス素子の場合、特開2004−327166号公報等に記載されている方法も用いることもできる。
以下、本発明について、実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[原料化合物Aの合成例]
以下、本発明のフタロシアニン前駆体の製造方法に用いることができる、原料化合物Aを製造した。以下、反応段階別に説明する。
Figure 2010045186
三つ口反応容器(1L)にHexane(300.0ml)と1.4−cyclohexadiene(21.5ml,0.22mol)を入れ、−45℃以下に冷却した。滴下漏斗にHexane(100.0ml)とBr(11.0ml,0.21mol)とを入れ、−60℃に冷却した三口反応容器にゆっくり滴下した。室温に戻した後、吸引ろ過を行い、ろ液を減圧下濃縮すると白色結晶の目的物(4.5−dibromocyclohexan)が得られた。
得られた目的物を分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:49.7g
収率:99%
分子式:CBr(239.9357)
H−NMR(CDCl3, 400MHz):5.66 (m, 2H), 4.52 (m, 2H), 3.14-3.26 (m, 2H), 2.55-2.67 (m, 2H).
Figure 2010045186
反応容器(50ml)に4.5−dibromocyclohexane(1.61g,6.71mmol)、NMO(N−メチルモルホリンN−オキシド:0.906g,7.74mmol)、acetone(5.0ml)、純水(10.0ml)を入れ撹拌した。OsOのt−BuOH溶液を4.0ml(OsO約20mg,0.0787mmol)を加え、室温で1日撹拌した。反応終了を確認し、水(5ml)に懸濁させた亜ジチオン酸ナトリウム(1g,5.74mmol)を加え、一晩室温で撹拌した。セライトろ過を行い、ろ液を3MのHClを用いてpH3にした後、減圧下濃縮し、再びセライトろ過を行った。ろ液をAcOEt(酢酸エチル)で抽出し、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、それを減圧下で乾燥させると白色結晶得の目的物(trans−4.5−dibromocyclohexane−1.2−diol)が得られた。
得られた目的物を分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:1.59g
収率:98%
分子式:C10Br(273.9504)
形状:白色粉末
H−NMR(CDCl3, 400 MHz):4.42 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 4.01 (m, 1H), 3.82 (m, 1H), 2.66 (m, 1H), 2.54 (m, 1H), 2.40 (m, 1H), 2.03 (m, 1H).
Figure 2010045186
反応容器(500ml)に原料(trans−4.5−dibromocyclohexane−1.2−diol:21.8g,90.3mmol)、TsOH・HO(1.07g,5.60mmol)を入れ、Ar置換した。dry−CHCl(300.0ml)を入れ撹拌し、続いて2.2−dimethoxypropane(15.5ml,120mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応溶液をアルミナを詰めたブフナー漏斗に流し、ろ液を減圧下濃縮すると目的物(a)が得られた。
得られた目的物を分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:25.8g
収率:91%
化学式:C14Br(314.0143)
形状:無色オイル
H−NMR(CDCl3,400MHz):4.41-4.46 (m, 1H), 4.29-4.32 (m, 1H), 4.16-4.23 (m, 2H), 2.73-2.79 (m, 2H), 2.34-2.42 (m, 1H), 2.20-2.27 (m, 1H), 1.54 (s, 3H), 1.34 (s,3H).
Figure 2010045186
反応容器(1L)に原料((a):17.5g,55.8mmol)を入れ、還流管をつけてAr置換しdry−toluene(300.0ml)とdry−DBU(無水−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン:25.5ml,171mmol)を加え6時間加熱還流した。反応終了をNMRで確認し、飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、目的物(b)を得た。
Figure 2010045186
dicyanoacetylene(1.10g,14.5mmol)の入った三つ口反応容器(50ml)を氷浴で冷却し、脱気CHCl(15.0ml)を加え溶解させた後、原料のEtO溶液(2.11g,13.8mmol:式中Etはエチル基を表わす。)をゆっくり加えた。
室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮することにより目的物を得た。アルミナカラムクロマトグラフィー(CHCl)で精製し、再結晶(CHCl/Hexane)を行なって原料化合物Aを得た。
得られた原料化合物Aを分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:1.80g
収率:54%
更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:AcOEt=1:2)で精製し、異性体を分離した。
分離した異性体をNMRで分析したところ、その積分値からanti体:syn体が1:4の割合で存在することが分かった。
また、得られた原料化合物Aの各異性体(anti体、syn体)を分析したところ、以下の結果が得られた。
・anti体
Rf値=0.8(Hexane:AcOEt=1:2)
形状:無色結晶
融点:181〜182℃
H−NMR(CDCl,400MHz):6.39 (m, 2H), 4.38 (m, 2H), 4.24 (m, 2H), 1.33 (s, 3H), 1.28 (s, 3H).
13C−NMR(CDCl,100MHz):131.17, 129.96, 114.85, 113.37, 77.31, 46.39, 25.61, 25.56.
IR(KBr)max/cm−1:2223(CN).
質量分析(FAB) m/z (%): 229 (10) [M+], 154 (100).
元素分析 Calcd:(+1/6H2O): C, 67.52; H, 5.38; N, 12.11.
Found:C, 67.66; H, 5.07; N, 12.12.
構造:
Figure 2010045186
・syn体
Rf値=0.5(Hexane:AcOEt=1:2)
形状:無色結晶
融点:201〜202℃
H−NMR (CDCl,400MHz):6.33 (m, 2H), 4.34 (m, 2H), 4.25 (m, 2H), 1.41 (s, 3H), 1.28 (s, 3H).
13C−NMR (CDCl,100MHz):131.13, 130.11, 114.41, 114.21, 77.44, 46.28, 25.97, 25.17.
IR(KBr)max/cm-1:2224 (CN).
質量分析(FAB)m/z(%):229 (8) [M+], 154 (100).
元素分析 Calcd:C, 68.41; H, 5.30; N, 12.27.
Found:C, 68.53; H, 5.23; N, 12.34.
構造:
Figure 2010045186
[参考例1]
原料化合物Aのsyn体とanti体の熱分析を行った。その結果、syn体は180℃付近から、anti体は160℃付近から逆Diels−Alder反応による重量減少が起こることが観測された。syn体につき結果を図1に、anti体につき結果を図2に示す。
また、融点計を用いて融点の測定を行ったところ、syn体は181℃、anti体は161℃付近から逆Diels−Alder反応が起こっていることが観察された。この結果は熱分析の結果と一致している。
[実施例1]
原料化合物Aの合成例で製造した原料化合物Aのうち、syn体のみを用いて本発明のフタロシアニン前駆体のひとつである、下記フタロシアニン前駆体Aを製造した。
Figure 2010045186
還流管を備え付けた二つ口反応容器(5ml,10ml)に、リチウムワイヤー(5ml反応容器には26.07mg,3.76mmol;10ml反応容器には33.29mg,4.80mmol)を入れAr置換した。dry−BuOHをそれぞれに3.80ml,4.80ml加えLiが溶解するまで加熱還流した。
室温まで冷却した後、原料化合物A(5ml反応容器には0.1864g,0.816mmol;10ml反応容器には0.2308g,1.01mmol)を加え、110℃で1日間加熱した。
メタノール:HO=1:1溶液(20ml)を加え、2つの反応溶液を一緒にしてCHClで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄し、更に無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl)、続いてアルミナカラムクロマトグラフィー(CHCl)にて精製を行い、更にGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により精製を行うことでフタロシアニン前駆体Aを得た。
得られたフタロシアニン前駆体Aを分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:3.8mg
収率:2.0%
分子式:C5250 (914.3752)
形状:紫色粉末
H−NMR(CDCl,400MHz):7.02 (m, 8H), 5.97 (m, 8H), 5.05 (m, 8H), 0.89-1.26 (m, 16H), -0.76- -0.51 (m, 8H), -3.09 (br, 2H).
13C−NMR (CDCl,100MHz):135.42, 112.80, 80.09, 80.03, 79.84, 76.60, 41.72, 41.65, 24.92, 24.89, 24.81.
質量分析(HRMS):calcd for 914.3752
:found 915.3830 [M+H]+
[実施例2]
実施例1で合成したフタロシアニン前駆体Aから、フタロシアニンを下記の合成経路に従って誘導した。
Figure 2010045186
実施例1で製造されたフタロシアニン前駆体Aを熱分析した結果、逆Diels−Alder反応は180℃から250℃付近にかけて起きていた。
そこで、Al盤にフタロシアニン前駆体A(0.65mg)を入れ、窒素雰囲気下で250℃に加熱することによりフタロシアニンを得た。
得られたフタロシアニンを分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:0.36mg
収率:98.6%
分子式:C3218(514.5389)
融点:>300℃
形状:青色粉末
質量分析(MALDI-TOF)m/z:514[M+].
また、図3にフタロシアニン前駆体Aの質量分析(MALDI−TOF)の結果を、図4にフタロシアニンの質量分析(MALDI−TOF)の結果を表わす。質量分析(MALDI−TOF)の結果から、フタロシアニン前駆体Aは加熱することによりフタロシアニンに変換されていることが分かる。
また、図5にフタロシアニン前駆体Aの吸収スペクトル測定の結果を、図6に加熱変換して得られるものの吸収スペクトル測定の結果を示す。この吸収スペクトル測定の結果もフタロシアニンが得られていることが分かる。
[実施例3]
実施例1で得られたフタロシアニン前駆体Aから、実施例2と同様の方法でフタロシアニンを誘導することでフタロシアニンの電界効果トランジスタ(FET)を作製し、FET特性を測定した。
まず、厚さ300nmの酸化膜を形成したN型のシリコン基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)上に、フォトリソグラフィーで長さ(L)10μm、幅(W)500μmのギャップを有する金電極(ソース電極、ドレイン電極)を形成した。また、酸化膜の一部を除去してシリコン基板(ゲート電極)に電圧を印加した。
実施例1で得られたフタロシアニン前駆体Aの0.7重量%のクロロホルム前駆体溶液を調製した。このフタロシアニン前駆体Aの成膜及び電機特性の評価は、すべて窒素雰囲気下で行なった。
次に、前記の前駆体溶液を、前記の電極を形成した基板上に1000rpmでスピンコートして良好な膜を得た。
この基板を、320℃に加熱したホットプレートの上に置き、20分加熱し、フタロシアニンのFETを作製した。
このようにして得られたFETの特性を、アジレントテクノロジー社製半導体パラメータアナライザー4155Cを用いて測定した。ソース電極とドレイン電極との間に電圧Vdを印加し、ソース電極とゲート電極間との間に電圧Vgを印加した際に、半導体膜(フタロシアニン膜)を流れる電流Idを測定した。
また、閾値電圧をVt、絶縁膜の単位面積当たりの静電容量をCi、ソース電極とドレイン電極の間隔をL、幅をW、半導体膜の移動度をμとすると、その動作は、次のように表すことができる。
Figure 2010045186
移動度μは素子の電流電圧特性から求めることができる。移動度μを求めるには式(1)又は(2)を用いるが、(2)式の飽和電流部分のId1/2−Vgの傾きから求める方法を採用した。このプロットのId=0との切片から閾値電圧Vt、Vd=−30V印加時のVg=30Vと−50VのIdの比をオンオフ比とした。
上記のフタロシアニンのFETにおける、移動度は6.0×10−2cm/Vs、オンオフ比(Ion/Ioff)は1.8×10であった。
[原料化合物Bの合成例]
以下、フタロシアニン前駆体の製造方法に用いることができる、原料化合物Bを製造した。以下、反応段階別に説明する。
Figure 2010045186
(上記式中、Meはメチル基を表わす。)
反応容器(100ml)をアセトニトリルと液体窒素で−40℃にし、28%アンモニア水(20ml)を撹拌しながら冷却した。そこにdimethyl acetylenedicarboxylate(1.25ml,10mmol)をゆっくり滴下し、滴下終了後はゆっくり室温に戻した。3時間室温で撹拌した後ろ過し、固体を純水で洗浄すると、目的物(Acetylene dicarboxamide)が得られた。
得られた目的物を分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:0.93g
収率:83%(crude)
分子式:C(112.0273)
形状:白色固体
質量分析 (EI) m/z (%): 113 (9) [M++1], 112 (100) [M+].
Figure 2010045186
三つ口反応容器に回転子を入れ滴下ロート取り付けた。目的物(Dicyanoacetylene)をトラップさせるため、−78℃に冷却した別の三つ口反応容器を連結させ、目的物はそのまま次の反応に用いるため、回転子を入れた。
器具を完全にAr置換し、三つ口反応容器にP(7.63g,0.054mmol)をSulfolane(70ml)に溶解させた後、原料(Acetylene dicarboxamide:2.25g,20.0mmol)をSulfolane(25ml)に懸濁させたものを滴下ロートから、12torr(16hPa),110℃で30分以上かけ、激しく攪拌させながら滴下した。
完全に滴下が終わった後に120℃に上げ、さらに1時間撹拌すると、別の三つ口反応容器に無色の結晶が凝集し、目的物(Dicyanoacetylene)が得られた。
得られた目的物を分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:1.3g
収率:86%
13C−NMR(CDCl):103.1,55.1.
Figure 2010045186
原料(Dicyanoacetylene:1.74g,22.9mmol)の入った三つ口反応容器に、CHCl(20ml)を加え溶解させた後、1,3−cyclohexadiene(2.5ml,26mmol)を氷浴下でゆっくり加えた。
一晩室温で攪拌し、減圧下で濃縮することにより原料化合物B(Bicyclo[2.2.2]octa−2,5−diene−2,3−dicarbonitrile)を得た。最後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl)により精製した。
得られた原料化合物Bを分析したところ、以下の結果が得られた。
収量:2.95g
収率:83%
分子式:C10(156.1839)
融点:101〜102℃
形状:白色粉末
1H−NMR(CDCl3,270MHz)δ=6.38-6.41 (dd, 2H, J=3.4, 4.4 Hz), 4.04(m,2H), 1.54-1.58(m,4H)
13C−NMR(CDCl3,67.5MHz):=132.31, 131.86, 113.94, 41.13, 24.06.
IR(KBr)max/cm−1:2221(CN), 1585, 1342, 736, 686.
質量分析 (DI-EI) m/z (%):156 (8) [M+], 128 (100), 101 (10), 69 (14), 57 (13).
元素分析 Calcd: C, 76.90; H, 5.16; N, 17.94.
Found: C, 78.85; H, 5.16; N, 17.61.
[比較例1〜6]
原料として、下記式の原料化合物Bを用いて、下記表1の条件に従って、下記式の合成経路のように、フタロシアニン前駆体Bの合成を試みた。しかし、いずれの方法もフタロシアニン前駆体Bを得ることはできなかった。
Figure 2010045186
Figure 2010045186
・比較例1〜3
還流管を備え付けた三つ口反応容器に、Mgと少量のIを入れAr置換した。溶媒を加えMgが溶解するまで加熱還流した。室温まで冷却した後、原料化合物Bを加えて加熱した。
質量分析法(MALDI−TOF)で分析したところ、フタロシアニン前駆体Bは生成されていなかった。
・比較例4
2つ口反応容器に還流管を装着し、CuCl(17.57mg,0.13mmol)と原料化合物B(77.71mg,0.50mmol)を入れ、Ar置換した。Dry−EtOH(2.5ml)を加え、15分攪拌し、dry−DBU(0.08ml,0.537mmol)を加え2日間加熱還流させた。Dry−DBU(0.08ml,0.537mmol)を追加し、更に1日加熱還流を行いNaHCO水、水、飽和食塩水で洗浄し減圧下濃縮した。
質量分析法(MALDI−TOF)で分析したところ、フタロシアニン前駆体Bは生成していなかった。
・比較例5
1つ口反応容器に原料化合物B(25.97mg,0.166mmol)を入れ、Ar置換し、LiOPr(0.5ml)塩基溶液を入れ、室温で25日間攪拌した。メタノール:HO=1:1水溶液(10ml)でクエンチした後、CHClで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄行い、減圧下濃縮した。
質量分析法(MALDI−TOF)で分析したところ、フタロシアニン前駆体Bは生成されていなかった。
・比較例6
1つ口反応容器に原料化合物B(157.00mg,1.01mmol)を入れ、Ar置換し、dry−MeOH(1.5ml)を加えて攪拌し、さらにZnパウダー(143.83mg,2.20mmol)を加えて室温で25日間攪拌した。メタノール:HO=1:1水溶液(50ml)でクエンチした後、CHClで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄行い、減圧下濃縮した。
質量分析法(MALDI−TOF)で分析したところ、原料化合物Bが検出され、フタロシアニン前駆体Bは生成されていなかった。
[参考例2]
原料化合物Bのジシアノ体の熱分析を行った。
結晶状態で約100 度で逆Diels−Alder反応が起きていた。溶液状態ではこの温度よりも低い温度で逆Diels−Alder反応が起こることが予想され、この温度以上になるとエチレン分子の脱離したフタロニトリルに変換されると考えられる。
Figure 2010045186
[比較例1〜8、参考例1のまとめ]
参考例1で説明したように、原料化合物Bからフタロニトリルが生成されることが、比較例1〜6の反応が進行しない理由のひとつと考えられる。ただし、反応温度を室温で行なった文献(Journal of Porphyrins and Phthalocyanines Vol.4, p103-111 (2000).)に従って、比較例7〜8を行なったが、比較例フタロシアニン前駆体Bは生成されなかった。
[比較例7〜27]
原料として、原料化合物Aの合成例で得られた原料化合物Aをカラムで異性体を分けずに用いて、下記表2の条件以外は実施例1と同様にして、下記式の合成経路のように原料化合物Aを4量体化させ、フタロシアニン前駆体Aの合成を試みた。
しかし、いずれの方法もフタロシアニン前駆体Aを得ることはできなかった。
Figure 2010045186
Figure 2010045186
・比較例7〜12
比較例7〜12はリチウムワイヤーを用いた。比較例11の場合にのみ質量分析(MALDI−TOF)でフタロシアニンのピークが見られ、4量環化が起こったことが確認できたが、アセタール保護基の脱離していないピークは確認できなかった。比較例10、比較例11はアルコキサイドの調整時間が異なり、それぞれ3時間、24時間である。
比較例15、比較例16では可溶性前駆体の生成が確認できたが、比較例15での収量は痕跡量であった。比較例16では複雑な混合物が得られ、どちらも収率は0.1%以下と推定される。比較例15の条件ではアセタール保護基が1つまたは2つ脱離していないもののピークが質量分析(MALDI−TOF)で確認することができた。
比較例21で得られた化合物を、NMRで分析したところ、アセタール保護基が2つ脱離した下記フタロシアニン前駆体Cが収率24%、3つ脱離した下記フタロシアニン前駆体Dが収率11%で合成した。
Figure 2010045186
Figure 2010045186
その他の条件(比較例13,14,17−20,22−27)ではいずれも原料又は逆Diels−Alder反応により生じたフタロニトリルが回収されたか、ポリマーなど同定不可能な生成物が回収された。なお、比較例24では電子レンジを使った反応を試みたため、温度は測っていない。
比較例17の条件で複数回実験を行ったところ、可溶性前駆体だけでなく原料も回収された。この回収した原料はsyn体の原料化合物Aのみであったため、anti体の原料化合物Aとsyn体の原料化合物Aとでは反応性に違いがあることが推測される。
以上の結果から、可溶性前駆体の合成過程は逆Diels−Alder反応の結果生成したフタロニトリルと原料の原料化合物Aが4量環化した場合と、4量環化した原料が逆Diels−Alder反応し、保護基が脱離する場合とが考えられるため、反応が複雑となると推測される。
[比較例28〜31]
原料として、anti体の原料化合物A-48体を用いて、下記表3の条件以外は実施例1と同様にして、原料化合物Aを4量体化させ、フタロシアニン前駆体Aの合成を試みた。
Figure 2010045186
・比較例28
比較例28の条件では質量分析(MALDI−TOF)でフタロシアニンのピークは確認できたが、アセタール保護基の脱離していないピークは見られなかった。
・比較例29
比較例29では、アセタール保護基が2つ脱離した下記フタロシアニン前駆体Cを1.7%、3つ脱離した下記フタロシアニン前駆体Dを痕跡量得られた。
・比較例30
比較例30では質量分析(MALDI−TOF)で銅フタロシアニンのピークは確認できたが、前駆体のピークは見られなかった。
・比較例31
比較例31の条件はsyn体の原料化合物Aの4量環化した条件であるが、anti体の原料化合物Aでは合成できなかった。
[比較利32]
下記式に表わされる無金属フタロシアニンを用いて、蒸着法で蒸着膜を作製した以外は実施例3と同様にしてFETを作製した。このFETのFET特性は2×10−6cm/Vs、オンオフ比は83であった。
Figure 2010045186
従来よりも熱分解しにくい新規なフタロシアニン前駆体及びその製造方法、該フタロシアニン前駆体から誘導されるフタロシアニンの製造方法、並びに、フタロシアニン膜の製造方法を提供するものである。
本発明のその趣旨に反しない限り適用される分野に制限はなく、例えば、電子写真感光体、有機トランジスタ、有機太陽電池、有機ELなどの有機電子デバイス、顔料としての塗料やインク、光記録、カラーフィルター、光セラピー等の分野に適用することができる。
参考例1において、原料化合物Aのsyn体に対する熱分析の結果を表わすグラフである。 参考例1において、原料化合物Aのanti体に対する熱分析の結果を表わすグラフである。 実施例2において、フタロシアニン前駆体Aの質量分析(MALDI−TOF)の結果を表わすグラフである。 実施例2において、フタロシアニンの質量分析(MALDI−TOF)の結果を表わすグラフである。 実施例2において、フタロシアニン前駆体Aの吸収スペクトル測定の結果を表わすグラフである。 実施例2において、フタロシアニンの吸収スペクトル測定の結果を表わすグラフである。

Claims (8)

  1. 下記式(1a)及び式(1b)で表わされる
    ことを特徴とする、フタロシアニン前駆体。
    Figure 2010045186
    (上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qを含むビシクロ部分の構造を以下式(2)に表わす。)
    Figure 2010045186
    (上記式中、Porは式(1a)又は式(1b)のポルフィリン環を表わしており、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4(mは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1a)又は式(1b)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
  2. 熱的に安定なジシアノビシクロ化合物を原料化合物として用いる
    ことを特徴とする、下記式(1c)又は(1d)に表わされるフタロシアニン前駆体の製造方法。
    Figure 2010045186
    (上記式中、Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は水素原子又は1価の置換基を表わす。Mは2価の金属又は金属を含む2価の原子団を表わす。Qは2価の脱離基を表わす。)
  3. 前記式(1c)又は式(1d)で表わされるフタロシアニン前駆体のビシクロ部分の構造が、下記式(2)で表わされるsyn体である
    ことを特徴とする、請求項2に記載のフタロシアニン前駆体の製造方法。
    Figure 2010045186
    (上記式中、Porは式(1c)又は式(1d)のポルフィリン環を表わしており、実線と破線はπ共役した一重結合または二重結合を表わす。Rmn(m、nは1〜4の整数を表わす。)は、上記式(1a)又は式(1b)に示される水素原子又は1価の置換基を表わす。Rma及びRmbは、水素原子又は1価の置換基を表わす。)
  4. 請求項1記載のフタロシアニン前駆体、又は請求項2若しくは請求項3に記載のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されるフタロシアニン前駆体からフタロシアニンを誘導する
    ことを特徴とする、フタロシアニンの製造方法。
  5. 請求項1記載のフタロシアニン前駆体、又は請求項2若しくは請求項3に記載のフタロシアニン前駆体の製造方法で製造されるフタロシアニン前駆体を基板に塗布して、フタロシアニン膜に変換する
    ことを特徴とする、フタロシアニン膜の製造方法。
  6. 前記フタロシアニン膜が、電子デバイス用である
    ことを特徴とする、請求項5に記載のフタロシアニン膜の製造方法。
  7. 前記電子デバイスが、電界効果トランジスタである
    ことを特徴とする、請求項6に記載のフタロシアニン膜の製造方法。
  8. 前記電子デバイスが、太陽電池である
    ことを特徴とする、請求項6に記載のフタロシアニン膜の製造方法。
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