JP2003293779A - タービンハウジング - Google Patents

タービンハウジング

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JP2003293779A
JP2003293779A JP2002097409A JP2002097409A JP2003293779A JP 2003293779 A JP2003293779 A JP 2003293779A JP 2002097409 A JP2002097409 A JP 2002097409A JP 2002097409 A JP2002097409 A JP 2002097409A JP 2003293779 A JP2003293779 A JP 2003293779A
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turbine
turbine housing
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JP2002097409A
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Masaru Tanaka
勝 田中
Akira Sato
佐藤  明
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Aisin Takaoka Co Ltd
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Aisin Takaoka Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】二重管構造を有するハウジングであって、長期
間にわたってタービンの高い圧縮効率を維持することの
できるタービンハウジングを提供する。 【解決手段】タービンハウジング12の内殻32を、タ
ービンホイールを収容する圧縮スクロール部材35と、
その圧縮スクロール部材35に排気ガスを導入する入口
スクロール部材36とで構成する。両スクロール部材3
5,36は、圧縮スクロール部材35の連結口38と入
口スクロール部材36の差込部45との差込構造により
連結する。この差込部45先端の圧縮スクロール部材3
5の中心側の開口縁に、圧縮スクロール部材35内で圧
縮される排気ガスの流れを案内する案内板48を入口ス
クロール部材36と一体に形成する。この案内板48
は、差込部45の開口縁の一部を延長し、圧縮スクロー
ル部材35の接線方向に折曲して形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の排気ガ
スのエネルギーを利用して内燃機関に対する過給圧を発
生させるターボチャージャに採用されるタービンハウジ
ングに関するものである。特に、外殻と、内殻とを有す
る、いわゆる二重管構造を有するタービンハウジングに
採用して好適なハウジング構造の改良に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、内燃機関の冷間始動時における触
媒の早期活性化の観点から、タービン側において、排気
ガスの温度を低下させることなく、熱吸収の少ないター
ボチャージャが求められている。このような要求に応え
るべく提案されたターボチャージャとしては、例えば特
開平7−139364号公報に記載されたものが知られ
ている。このターボチャージャでは、タービンハウジン
グの外殻の内部に薄板耐熱鋼板で形成された内殻が配設
されている。この内殻内には、タービンを取り囲むよう
に設けられる圧縮室と、その圧縮室に内燃機関からの排
気ガスを導入する導入通路とが区画形成されている。そ
して、内殻は外殻から所定の距離離間されており、内殻
と外殻との間に中空の断熱層が形成されている。
【0003】このようなターボチャージャによれば、内
燃機関の冷間始動時において、排気マニホールドから送
られてきた高温の排気ガスにより、熱容量の小さな内殻
が早期に高温化される。さらに、この内殻は断熱層によ
り外殻に対して断熱されており、内殻から外殻への伝熱
は最小限に止められている。このため、タービンハウジ
ングにおける熱吸収が抑制され、排気ガスが高温のまま
保たれるため、触媒を早期に活性化温度に到達させるこ
とができるようになる。
【0004】また、一般に、内燃機関に対する過給気の
過給圧を効率よく高めるために、ターボチャージャに装
着されるタービンハウジングでは、図10に示すよう
に、圧縮室101内の排気ガスの流れと、導入通路10
2内の排気ガスの流れとの合流点に、双方の流れを案内
する案内板103が設けられることがある。この案内板
103は、圧縮室101内でタービンの回転に伴って徐
々に圧力の高められてきた排気ガスの大部分を、その圧
縮の終末部付近において排気ガスをタービンハウジング
の外部に排出する排出口に導く役割を担っている。そし
て、この案内板103の存在により、導入通路102か
ら圧縮室101内に供給される低圧の排気ガスとの混合
により再膨張される排気ガスの量が低減され、タービン
の圧縮効率の低下が抑制される。このため、ターボチャ
ージャのコンプレッサハウジング内にタービンと一体回
転可能に支持されたコンプレッサホイールの圧縮効率が
低下することなく、コンプレッサハウジング内での給気
の圧縮が効率よく行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記案内板
103は、前記圧縮室101の区画壁をなす圧縮スクロ
ール部材104及び前記導入通路102をなす入口スク
ロール部材105とは別体の金属板で構成されることが
多い。そして、この案内板103は、前記圧縮スクロー
ル部材104の内壁に溶接固定する構成が広く用いられ
ている。
【0006】ここで、このような案内板103を溶接固
定する構成では、次のような問題点があることが明らか
になってきた。すなわち、圧縮スクロール部材104
は、内燃機関から供給される高温の排気ガスに直接接触
するようになっており、実用使用状態では排気ガスから
の伝熱により高温状態になる。特に、圧縮室101内に
おける圧縮の終末部付近では、排気ガスの温度が断熱圧
縮によりさらに上昇されている。このため、圧縮スクロ
ール部材104における圧縮の終末部の近傍は、非常に
高温に曝されることになる。一方、内燃機関が停止され
るとターボチャージャへの排気ガスの供給も停止される
ため、圧縮スクロール部材104は、常温状態に向かっ
て冷却されることになる。このように、圧縮スクロール
部材104は、常温状態と実用使用温度状態との間で加
熱、冷却が繰り返される。そして、圧縮スクロール部材
104は、この冷熱サイクルに伴って伸縮が繰り返され
ることになる。
【0007】ここで、圧縮スクロール部材104の伸縮
に伴って発生する応力は、圧縮スクロール部材104と
案内板103との溶接部分に集中しやすく、冷熱サイク
ルの繰り返しによって、その溶接部分に亀裂等が生じる
ことがある。このような亀裂が生じると、圧縮室101
内で圧力の高められた排気ガスが、低圧の導入通路10
2側に漏出することとなり、タービンの圧縮効率を低下
させることになる。このタービンの圧縮効率の低下は、
コンプレッサハウジング内におけるコンプレッサホイー
ルの圧縮効率の低下を招く要因となる。
【0008】本発明は、こうした実情に鑑みてなされた
ものであり、その目的は、二重管構造を有するハウジン
グであって、長期間にわたってタービンの高い圧縮効率
を維持することのできるタービンハウジングを提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の手段及びその作用効果について以下に記載する。請求
項1に記載の発明は、外殻と、少なくとも一部がこの外
殻に対して所定の断熱層を介して離隔した状態で配置さ
れて内部をガスが通過する内殻とからなり、その内殻
は、内部に設けられたタービンを取り囲むように形成さ
れた圧縮スクロール部材と、この圧縮スクロール部材内
に前記タービンを回転させるためのガスを導入する導入
スクロール部材とを有するタービンハウジングであっ
て、前記圧縮スクロール部材と前記導入スクロール部材
とは、前記圧縮スクロール部材に形成された連結孔と前
記導入スクロール部材の先端部との差し込み構造をもっ
て連結され、前記導入スクロール部材の先端部における
前記圧縮スクロール部材の中心側の開口縁に、前記圧縮
スクロール部材内で圧縮されるガスを案内する案内部を
前記導入スクロール部材と一体に設けたことを要旨とす
る。
【0010】上記構成によれば、案内部を導入スクロー
ル部材と一体形成することで、案内部を形成する際に溶
接作業を必要とせず、案内部及びその近傍に冷熱サイク
ルの繰り返しによる亀裂等が発生しにくいものとなる。
このため、長期間にわたってタービンの高い圧縮効率を
維持することができる。また、部品点数の削減を図るこ
とができ、タービンハウジングの、ひいてはターボチャ
ージャの製造上有利である。
【0011】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
のタービンハウジングにおいて、前記案内部は、前記導
入スクロール部材の先端部における前記圧縮スクロール
部材の中心側の開口縁が、前記圧縮スクロール部材のほ
ぼ接線方向に沿うように延長された延長部からなること
を要旨とする。
【0012】上記構成によれば、簡素な構成で、請求項
1に記載の発明の作用効果を実現することができる。請
求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタービンハウ
ジングにおいて、前記延長部が、前記圧縮スクロール部
材におけるガス圧縮終末部の内周面の延長面にほぼ沿う
ように形成されたことを要旨とする。
【0013】上記構成によれば、圧縮スクロール部材内
の排気ガスの流れが、案内部の近傍において乱されるこ
とが抑制され、圧縮された排気ガスがよりスムースに排
出口側に導かれる。このため、圧縮スクロール部材内で
の圧力損失が小さくなり、タービンハウジングにおける
圧縮効率を高めることができる。
【0014】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の
いずれか一項に記載のタービンハウジングにおいて、前
記圧縮スクロール部材の連結孔におけるガス圧縮終末部
側の開口縁に、その圧縮スクロール部材のほぼ径方向に
延びる返し部を設け、この返し部に前記導入スクロール
部材の先端部の外周面の一部を摺動可能に当接させたこ
とを要旨とする。
【0015】上記構成によれば、導入スクロール部材及
び圧縮スクロール部材が急激に加熱され膨張したとき
に、導入スクロール部材の先端部が圧縮スクロール部材
の開口縁に押し付けられたとしても、返し部の作用によ
りその両スクロール部材がスムースに相対移動される。
このため、両スクロール部材の熱変形が効果的に吸収さ
れ、熱変形によって両スクロール部材に発生する応力を
効率よく緩和することができる。
【0016】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の
いずれか一項に記載のタービンハウジングにおいて、前
記導入スクロール部材におけるガスの入口側の基端部
を、前記外殻または外部の装置に取着するための取り付
け部材に対して、その導入スクロール部材の外周上に所
定の間隔をおいて配置された複数の固定部で固定したこ
とを要旨とする。
【0017】ここで、内殻の基端部を外殻または取り付
け部材に対して、その内殻の基端部をその開口縁の全周
にわたって溶接固定すると、導入スクロール部材の加
熱、冷却に伴う熱変形により生じる応力が基端部の溶接
部分に集中することになる。このような加熱、冷却の繰
り返しに伴う、その基端部の溶接部分への応力集中と緩
和が繰り返される。これにより、その溶接部分に亀裂を
生じたりすることがあり、排気ガスの漏れ等を生じやす
くなり、長期間にわたる高い圧縮効率の実現が困難とな
る。
【0018】これに対して、上記構成によれば、導入ス
クロール部材の基端部は、複数の固定部において外殻ま
たは取り付け部材の所定位置に固定されるとともに、隣
接する固定部間の非固定部において若干の伸びが許容さ
れる。このため、導入スクロール部材が加熱され膨張し
たときに、この非固定部での伸びにより、導入スクロー
ル部材に発生する応力が緩和される。そして、固定部に
集中する応力が弱められ、長期間にわたって導入スクロ
ール部材を外殻または取り付け部材に安定に固定しつ
つ、タービンハウジングでの高い圧縮効率を維持するこ
とができる。
【0019】請求項6に記載の発明は、請求項5に記載
のタービンハウジングにおいて、前記固定部は、溶接加
工により形成されることを要旨とする。上記構成によれ
ば、内殻を外殻または取り付け部材に対して強固に固定
することができる。また、この固定部は、内殻の基端部
においてその全周にわたって溶接加工がなされるわけで
はなく、溶接加工がなされるのは部分的である。そし
て、請求項5に記載の発明の効果の下で、各溶接部分間
の非溶接部分において、熱変形に伴って発生する応力が
緩和されるため、例えば開先を形成した上で溶接を行っ
たとしても、溶接部分への応力集中を抑制することがで
きる。
【0020】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載
のタービンハウジングにおいて、前記固定部は、スポッ
ト溶接加工により形成されることを要旨とする。上記構
成によれば、溶接部分が円形をなすように形成される。
このため、その溶接部分が、導入スクロール部材の熱変
形により、圧縮されたり、引っ張られたりしたとして
も、その溶接部分の全周において均等に応力が生じるこ
ととなり、溶接部分への影響を小さくすることができ
る。また、溶接作業を簡単に行うことができて、タービ
ンハウジングの、ひいてはターボチャージャの製造上有
利である。
【0021】請求項8に記載の発明は、請求項5〜7の
いずれか一項に記載のタービンハウジングにおいて、前
記外殻における前記導入スクロール部材の基端部に対応
する部分を、前記取り付け部材に対して全周にわたって
溶接固定したことを要旨とする。
【0022】上記構成によれば、外殻と取り付け部材と
の間において、タービンハウジングの内部を通過する排
気ガスの系外への漏出を抑制することができ、タービン
の圧縮効率の低下を抑制することができる。ここで、外
殻は、その外表面がほぼ全体にわたって外気に接してい
るとともに、高温の排気ガスが接触する内殻とは断熱層
を介して離隔されている。さらに、外殻において高温の
排気ガスと直接接触する部分は、導入スクロール部材の
基端部近傍のみであり、その面積はごくわずかである。
これらのため、外殻の温度が大きく上昇することはな
く、外殻の取り付け部材に対する伸縮量も小さくなる。
従って、外殻を取り付け部材に対して全周にわたって溶
接固定しても、その溶接部分に亀裂等が生じにくいもの
となる。
【0023】請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の
いずれか一項に記載のタービンハウジングにおいて、前
記圧縮スクロール部材には、前記タービンに向かって内
方に突出するシュラウド部と、少なくとも常温領域と実
用使用温度領域とで、前記シュラウド部とタービンとの
間に所定の隙間を形成する隙間調整機構とを有すること
を要旨とする。
【0024】上記構成によれば、圧縮スクロール部材が
高温の排気ガスの通過及び排気ガスの圧縮に伴って熱変
形されたとしても、タービンとシュラウド部との間に所
定の隙間が確保される。このため、実用使用温度領域に
おいて、タービンとシュラウド部との間の隙間が所定以
上に小さくなって、圧縮された排気ガスの排出口側への
通過抵抗が大きく増大することを抑制できる。また、実
用使用温度領域において、タービンとシュラウド部との
間の隙間が所定以上に大きくなって、タービンの圧縮効
率が低下することを抑制できる。
【0025】請求項10に記載の発明は、請求項9に記
載のタービンハウジングにおいて、前記隙間調整機構
は、前記圧縮スクロール部材の温度状態の変化に応じ
て、前記シュラウド部の形状を変化させることを要旨と
する。
【0026】上記構成によれば、圧縮スクロール部材が
加熱、冷却される際の熱変形を利用して、シュラウド部
の形状を圧縮スクロール部材の温度状態に応じて、変化
させることで、別途特別な部材を用いることなく、その
シュラウド部とタービンとの間の隙間を調整することが
できる。
【0027】請求項11に記載の発明は、請求項10に
記載のタービンハウジングにおいて、前記隙間調整機構
は、前記シュラウド部とタービンとの間の隙間を、前記
常温領域では前記ガスの入口側が大きくかつ前記ガスの
出口側が小さくなるように設定するとともに、前記実用
使用温度領域では前記ガスの入口側が小さくかつ前記ガ
スの出口側が大きくなるように設定することを要旨とす
る。
【0028】上記構成によれば、常温領域から実用使用
温度領域にわたって、シュラウド部の熱変形を許容しつ
つ、その熱変形によってシュラウド部とタービンとの隙
間がそれらの対向面において全体的に拡大されたり縮小
されたりすることを抑制することができる。
【0029】請求項12に記載の発明は、請求項9〜1
1のいずれか一項に記載のタービンハウジングにおい
て、前記隙間調整機構は、前記シュラウド部とタービン
との間の最小の離間距離が、前記常温領域と前記実用使
用温度領域とでほぼ等しくなるように調整することを要
旨とする。
【0030】上記構成によれば、常温領域から実用使用
温度領域にわたって、所定の最小の離間距離が確保さ
れ、タービンハウジングにおける圧縮効率を高く維持す
ることができる。
【0031】請求項13に記載の発明は、請求項9〜1
2のいずれか一項に記載のタービンハウジングにおい
て、前記隙間調整機構は、前記圧縮スクロール部材にお
ける前記タービンの軸線方向の一端部を前記外殻に対し
て相対変位不能に固定し、前記タービンの軸線方向の他
端部を前記外殻に対して相対変位可能に保持するととも
に、前記圧縮スクロール部材が暖められた時に、その圧
縮スクロール部材の径方向への自由膨張を許容する圧縮
スクロール部保持機構を含むことを要旨とする。
【0032】上記構成によれば、請求項9〜12のいず
れかに記載の発明の作用及び効果を、簡単な構成で、か
つ好適に実現することができる。請求項14に記載の発
明は、請求項9〜13のいずれか一項に記載のタービン
ハウジングにおいて、前記タービンがセラミックスター
ビンからなることを要旨とする。
【0033】上記構成によれば、タービンの熱変形が極
めて小さく無視できるほどであり、シュラウド部側の熱
変形量を制御するのみで、シュラウド部とタービンとの
間の隙間を所定の離間距離に設定することができ、構成
の複雑化を回避することができる。
【0034】請求項15に記載の発明は、請求項1〜1
4のいずれか一項に記載のタービンハウジングにおい
て、前記内殻と外殻とがともに耐熱鋼板の成形品からな
ることを要旨とする。
【0035】上記構成によれば、タービンハウジング全
体の重量及び熱容量を、鋳物製のタービンハウジングに
比べて大きく低下させることができる。また、鋳物製の
外殻と耐熱鋼板製の内殻とを有する二重管構造のタービ
ンハウジングに比べて、タービンハウジング全体の熱容
量をさらに低下させることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施
形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0037】まず、ターボチャージャ11の概略構造に
ついて、説明する。図1は、ターボチャージャ11全体
の概略構造を示す断面図である。図1に示すように、タ
ーボチャージャ11のケーシングは、タービンハウジン
グ12とコンプレッサハウジング13とを、センタハウ
ジング14を介して接合固定することで形成されてい
る。
【0038】前記タービンハウジング12には、内燃機
関(図示略)の機関排気流に基づき作動する輻流型のタ
ービンをなすタービンホイール15が収容されている。
前記コンプレッサハウジング13には、前記タービンホ
イール15の作動に連動して内燃機関の燃焼室内への吸
気を過給する輻流型のコンプレッサホイール16が収容
されている。前記センタハウジング14には、タービン
ホイール15とコンプレッサホイール16とを一体回転
可能に接続するロータシャフト17が周知のフルフロー
トベアリング18により軸支されている。
【0039】前記タービンハウジング12には、タービ
ンホイール15を取り囲むように、渦巻き状をなすスク
ロール室21が形成されている。このスクロール室21
は、ロータシャフト17の接線方向に開口する排気ガス
取入れ口22と、ロータシャフト17の軸線方向に開口
する排気ガス排出口23とを有している。排気ガス取入
れ口22は、内燃機関の排気マニホールド(図示略)に
接続される。排気ガス排出口23は、外殻及び圧縮スク
ロール部材保持機構の一部をなすケース24を介して触
媒へと排気ガスを導く排気管(図示略)に接続される。
【0040】前記コンプレッサハウジング13には、コ
ンプレッサホイール16を取り囲むように、渦巻き状を
なすディフューザ25が形成されている。このディフュ
ーザ25は、ロータシャフト17の軸線方向に開口する
給気取入れ口26と、ロータシャフト17の接線方向に
開口する過給気吐出口27とを有している。給気取入れ
口26はエアクリーナ(図示略)に接続され、過給気吐
出口27は内燃機関の吸気マニホールド(図示略)に接
続される。
【0041】次に、本実施形態にかかるタービンハウジ
ング12について、より詳細に説明する。図2は、図1
における2−2線でのタービンハウジング12の断面図
であり、ここではタービンホイール15を省略した状態
で描いてある。
【0042】図1及び図2に示すように、このタービン
ハウジング12は、耐熱薄板鋼板のプレス成形品からな
る外殻31と、同じく耐熱薄板鋼板のプレス成形品から
なる内殻32とを有しており、いわゆる二重管構造をな
している。この耐熱薄板鋼板としては、例えばステンレ
ス鋼、ハステロイ、インコネル製等のものが挙げられ
る。外殻31と内殻32とは、所定の間隔をおいて金属
メッシュからなる複数の係止部材33により、その大部
分が互いに離隔するように保持されている。これによ
り、外殻31と内殻32との間には、断熱層をなす空気
断熱層34が形成されている。そして、この内殻32に
より、外殻31の内部に前記スクロール室21が区画形
成されている。
【0043】まず、前記内殻32について、詳述する。
図2に示すように、前記内殻32は、隙間調整機構の一
部を兼ねる圧縮スクロール部材35と、導入スクロール
部材としての入口スクロール部材36とからなってい
る。
【0044】図1及び図2に示すように、前記圧縮スク
ロール部材35は、略ドーナツ状に形成され、前記ター
ビンホイール15を収容するとともに、そのタービンホ
イール15に干渉しない範囲で、内方に突出するシュラ
ウド部37を有している。また、圧縮スクロール部材3
5には、連結孔をなす連結口38が開口するように形成
されており、その連結口38に前記入口スクロール部材
36が接続されている。そして、圧縮スクロール部材3
5は、前記連結口38からタービンホイール15の回転
方向前方(ガス圧縮終末部側)に向かうに従って、外周
縁とロータシャフト17の軸心との距離が短くなるよう
な渦巻き状に形成されている。
【0045】また、圧縮スクロール部材35の一方の外
側面の中央には、タービンホイール15の軸線方向の一
端部をなす排出ノズル39が外方に向かって突設されて
いる。その排出ノズル39の先端は、前記排気ガス排出
口23の周縁をなすケース24に対して固定されてい
る。
【0046】一方、圧縮スクロール部材35の他方の外
側面の中央には、タービンホイール15の軸線方向の他
端部をなす自由端部41が形成されている。この自由端
部41及びその周辺構造を、図3に拡大して示す。図3
に示すように、この自由端部41は、隙間調整機構及び
圧縮スクロール部材保持機構の一部をなすメッシュ部材
42に対して溶接固定されており、外殻及び圧縮スクロ
ール部材保持機構の一部をなす接続フランジ43にメッ
シュ部材42と共に嵌入されている。これにより、この
自由端部41は、ロータシャフト17の軸線方向に所定
量tだけ変位可能となっている。
【0047】図2に示すように、前記入口スクロール部
材36は、パイプ状に形成されている。この入口スクロ
ール部材36における排気ガスの入口側の基端部は、前
記外殻31に対して固定された固定端部44をなしてい
る。これに対して、この入口スクロール部材36におけ
る排気ガスの出口側の先端部は、前記圧縮スクロール部
材35の連結口38に対して差し込まれる差込部45を
なしている。
【0048】図4は、図2における4−4線でのタービ
ンハウジング12の断面図である。図5は、入口スクロ
ール部材36の固定端部44の近傍を拡大して示す部分
断面図である。図6は、同じく入口スクロール部材36
の内周面における固定端部44の近傍を拡大して示す展
開図である。
【0049】図2及び図4に示すように、入口スクロー
ル部材36は、中央部及び差込部45の近傍において前
記係止部材33を介して、また固定端部44において複
数の固定部46を介して前記外殻31に対して固定され
ている。図5及び図6に示すように、この固定部46
は、入口スクロール部材36の固定端部44を前記外殻
31に対し、所定の間隔をおいてスポット溶接加工を施
すことによって形成される。また、この固定部46は、
スポット溶接加工により平面円形に形成される。そし
て、各固定部46の間においては、入口スクロール部材
36と外殻31とが、互いに固定されることなく単に重
なり合った状態となっている。
【0050】一方、この入口スクロール部材36の固定
端部44が固定される前記外殻31の開口端31aは、
その全周にわたって、前記排気ガス取入れ口22の周縁
をなす取り付け部材としての取入れ口フランジ47に対
して溶接固定されている。
【0051】図2に示すように、入口スクロール部材3
6は、開口端をなす固定端部44から差込部45に行く
に従って、その開口断面積が徐々に小さくなるように形
成されている。また、差込部45の近傍は、圧縮スクロ
ール部材35の曲面に連続するような曲面を持って形成
されている。
【0052】図7は、この差込部45の先端部の開口縁
における圧縮スクロール部材35の中心側部分(ガス圧
縮終末部)及びその近傍を拡大して示す部分断面図であ
る。図2及び図7に示すように、その差込部45の先端
における圧縮スクロール部材35の中心側(ガス圧縮終
末部に対応する部分)の開口縁には、圧縮スクロール部
材35で圧縮される排気ガスの流れを案内する案内部及
び延長部としての案内板48が形成されている。この案
内板48は、入口スクロール部材36と一体に形成され
ている。この案内板48は、入口スクロール部材36の
差込部45における開口縁の一部が突出するように延長
するとともに、圧縮スクロール部材35の接線方向に沿
うように折曲したものとなっている。
【0053】この案内板48の基端部分には、入口スク
ロール部材36の外周面の一部をなし、前記圧縮スクロ
ール部材35の連結口38の開口縁に摺接する傾斜部4
9が形成されている。また、この傾斜部49に摺接する
圧縮スクロール部材35の連結口38の開口縁には、そ
の開口縁が圧縮スクロール部材35の径方向に延びるよ
うに折り返された返し部50が設けられている。そし
て、これら傾斜部49及び返し部50の存在により、入
口スクロール部材36及び圧縮スクロール部材35が熱
変形したきに、両スクロール部材36,35がスムース
に摺動可能な差し込み構造が実現される。
【0054】また、図2及び図4に示すように、入口ス
クロール部材36において、前記排気ガス排出口23側
の側面における前記内殻32の排出ノズル39と近接す
る部分には、ウェイストゲートノズル(以下「WGノズ
ル」という)51が突出形成されている。
【0055】次に、前記外殻31の構成について、詳述
する。図1及び図4に示すように、前記外殻31は、前
記内殻32の全体を覆うように配置され両手の掌の関係
をなす一対のカバー部材54,55と、前記ケース24
と、前記接続フランジ43とからなっている。一方のカ
バー部材54におけるロータシャフト17側の端部は、
前記接続フランジ43に接続固定されている。他方のカ
バー部材55における前記内殻32の排出ノズル39及
びWGノズル51と対応する部分には、それら排出ノズ
ル39及びWGノズル51が挿通される開口部56が形
成されている。
【0056】この他方のカバー部材55の側面には、前
記外殻31及び前記内殻32と同様の耐熱薄板鋼板のプ
レス加工品からなる前記ケース24が、前記開口部56
を覆い隠すように接合されるとともに溶接固定されてい
る。このケース24には、前記排出ノズル39が挿通さ
れる排出ノズル挿通孔57が形成されている。また、こ
のケース24には、前記WGノズル51が挿通されるW
Gノズル挿通孔58が形成されている。
【0057】前記WGノズル挿通孔58の周縁には、ワ
ッシャ状の弁座59が溶接固定されて一体的に形成され
ている。そして、このWGノズル挿通孔58及び弁座5
9に、前記WGノズル51が、相対移動可能に挿通され
ている。このケース24には、WGノズル51の先端の
WGポート60を開閉するウェイストゲートバルブ(以
下、「WGバルブ」という)61が、ケース24に対し
て一体固定された状態で配設されている。このWGバル
ブ61は、例えば前記コンプレッサハウジング13の過
給気吐出口27から吐出される過給気の圧力が所定値を
超えると、所定の作動力を発生するアクチュエータ(図
示略)により、WGポート60を開放するようになって
いる。すなわち、アクチュエータからの作動力によりW
Gバルブ61が弁座59から離間されると、WGポート
60が開放され、入口スクロール部材36内を通過する
排気ガスの一部がケース24内に排出される。
【0058】一方、過給気の圧力が所定値以下となった
ときには、前記アクチュエータで作動力が発生しなくな
り、WGバルブ61に加えられる作動力がなくなる。こ
のとき、WGバルブ61は、弁座59と当接するように
回動される。これにより、WGポート60が閉止され、
入口スクロール部材36内を通過する排気ガスのケース
24への排出が抑制される。
【0059】次いで、以上のように構成されたターボチ
ャージャ11としての全体の動作について説明する。こ
のターボチャージャ11では、内燃機関の運転に伴っ
て、発生する排気ガスが排気ガス取入れ口22からスク
ロール室21内に供給される。入口スクロール部材36
を介して連結口38から圧縮スクロール部材35内に導
入された排気ガスは、タービンホイール15の回転に伴
い徐々に圧縮される。そして、同排気ガスは、案内板4
8によって案内されて、圧縮スクロール部材35の内方
に突出するように形成されたシュラウド部37とタービ
ンホイール15との間を介して、排気ガス排出口23か
ら排気管に排出される。この際、その排気ガスは徐々に
圧縮されながらタービンホイール15を回す。このター
ビンホイール15の回転に連動してコンプレッサホイー
ル16が回転され、給気取入れ口26からディフューザ
25内に導かれた給気の圧力が高められ、過給気として
過給気吐出口27から燃焼室に供給される。
【0060】ここで、本実施形態のターボチャージャ1
1では、過給気吐出口27内を流通する過給気の圧力が
所定値を超えて高められると、アクチュエータの作動に
より、WGポート60が開放される。このため、タービ
ンハウジング12の圧縮スクロール部材35内に供給さ
れる排気ガスの圧力が低下する。このため、排気ガスの
もつタービンホイール15を回転させる力が小さくなっ
て、コンプレッサホイール16の圧縮仕事も小さくな
る。このため、ディフューザ25から内燃機関の燃焼室
への過度に圧力の高められた過給気の供給が抑制され
る。また、コンプレッサハウジング13内で給気が過度
に圧縮されることが抑制されるため、過給気の温度が所
定以上に高くなることが抑制され、コンプレッサホイー
ル16に対して悪影響を及ぼすことが抑制される。
【0061】次に、このタービンハウジング12におけ
る内殻32の熱膨張時の挙動について説明する。このタ
ービンハウジング12においては、内燃機関が始動され
タービンハウジング12内に高温の排気ガスが供給され
ると、その高温の排気ガスに直接接触する入口スクロー
ル部材36及び圧縮スクロール部材35は直ちに加熱さ
れる。この加熱により、入口スクロール部材36及び圧
縮スクロール部材35は、熱膨張することになる。
【0062】この一方で、外殻31の両カバー部材5
4,55は、両スクロール部材36,35に対して空気
断熱層34を介して配設されている。また、両カバー部
材54,55は、開口端31aにおいてわずかながら高
温の排気ガスに直接接しているものの、外表面の大部分
が常温の外気に触れている。このため、両カバー部材5
4,55の熱膨張は、小さく抑えられる。ここで、両ス
クロール部材36,35からなる内殻32は、両カバー
部材54,55からなる外殻31に対して可撓性の金属
メッシュからなる複数の係止部材33により保持されて
いる。このため、内殻32と外殻31との間の熱膨張量
の差の一部は、この係止部材33が撓むことにより吸収
される。
【0063】また、内殻32のうち、入口スクロール部
材36は、その固定端部44において複数の固定部46
により外殻31の両カバー部材54,55に固定されて
いる。ここで、入口スクロール部材36は、熱膨張する
際に、図2に矢印で示すように、中央部の係止部材33
の取着位置を中心として、固定端部44側及び差込部4
5側に延びるように熱膨張していく。
【0064】このとき、入口スクロール部材36の差込
部45側では、その入口スクロール部材36とともに圧
縮スクロール部材35も熱膨張されることになる。これ
ら両スクロール部材35,36の熱膨張は、入口スクロ
ール部材36の差込部45と圧縮スクロール部材35の
連結口38の周縁とが摺動しつつ相対変位することで吸
収される。
【0065】一方、入口スクロール部材36の固定端部
44では、前述したように、入口スクロール部材36が
複数の固定部46で外殻31をなす両カバー部材54,
55に対してスポット溶接されている(図6参照)。す
なわち、入口スクロール部材36の固定端部44は複数
の点で固定されているに過ぎず、各固定部46間の非固
定部分では入口スクロール部材36と両カバー部材5
4,55とがその固定部46が剥離しない範囲で相対変
位可能となっている。
【0066】ここで、ターボチャージャ11が作動状態
に移行すると、前述のように外殻31の熱膨張が小さく
抑えられた状態で、入口スクロール部材36が加熱さ
れ、その固定端部44が熱膨張されていくことになる。
このように入口スクロール部材36が熱膨張されると、
固定部46における入口スクロール部材36と両カバー
部材54,55との固定が保持されたまま、図6に一点
鎖線で示すように入口スクロール部材36の各固定部4
6間の非固定部分が膨出される。この非固定部分の膨出
により、入口スクロール部材36の熱膨張によって固定
部46で発生する応力の一部が緩和される。
【0067】しかも、各固定部46は、スポット溶接に
より平面円形に形成されている。このため、各固定部4
6に発生した応力が、その固定部46の一部分に集中し
にくくなっている。このため、両カバー部材54,55
と入口スクロール部材36との間に熱膨張量差を生じた
としても、各固定部46での両カバー部材54,55と
入口スクロール部材36との剥離の発生が抑制される。
【0068】また、前記圧縮スクロール部材35は、前
述のように、ロータシャフト17の軸線方向における一
方の端部をなす排出ノズル39の先端が外殻31に接合
固定されたケース24に対して固定されている。これに
対して、この圧縮スクロール部材35は、ロータシャフ
ト17の軸線方向における他方の端部をなす自由端部4
1において、外殻31に接合固定された接続フランジ4
3に対してメッシュ部材42を介して相対変位可能に嵌
入されている。このため、この圧縮スクロール部材35
に高温の排気ガスが供給されると、圧縮スクロール部材
35は、ロータシャフト17の軸線方向において全体と
して接続フランジ43側へと伸張するように熱膨張され
る。
【0069】また、この圧縮スクロール部材35は、可
撓性を有する係止部材33を介して外殻31をなす両カ
バー部材54,55に保持されている。このため、圧縮
スクロール部材35は、高温の排気ガスの供給により加
熱されると、ロータシャフト17の径方向において前記
係止部材33を撓ませつつ自由膨張して行くこととな
る。
【0070】このような圧縮スクロール部材35の熱変
形に伴うシュラウド部37の熱変形挙動を図8に示して
いる。ここで、(a)は、例えばターボチャージャ11
の非作動時等で、タービンハウジング12における圧縮
スクロール部材35が常温下におかれた状態でのシュラ
ウド部37とタービンホイール15との位置関係を示し
ている。一方、(b)は、例えばターボチャージャ11
の作動時等で、タービンハウジング12における圧縮ス
クロール部材35が加熱されている状態でのシュラウド
部37とタービンホイール15との位置関係を示してい
る。
【0071】図8(a)に示すように、圧縮スクロール
部材35が十分に冷やされた状態では、シュラウド部3
7がタービンホイール15の出口側端部15aに近接し
た状態となっている。この状態では、シュラウド部37
とタービンホイール15との間において、隙間の一部を
なす出口側隙間62aが、同じく隙間の一部をなす入口
側隙間62bより小さくなっている。すなわち、出口側
隙間62aにおけるシュラウド部37とタービンホイー
ル15との離間距離L1が、入口側隙間62bにおける
同離間距離L2より小さくなるように設定されている。
【0072】この状態から、内燃機関から排気ガスがタ
ービンハウジング12内に供給され、圧縮スクロール部
材35が加熱されると、この圧縮スクロール部材35は
全体として前述のように熱変形されることになる。ここ
で、シュラウド部37における熱変形に注目すると、同
シュラウド部37は、圧縮スクロール部材35のロータ
シャフト17の軸線方向への熱膨張によって、図8
(b)の矢印Aの方向に延びるように変形する。また、
同シュラウド部37は、圧縮スクロール部材35のロー
タシャフト17の径方向への熱膨張によって、図8
(b)の矢印Bの方向に延びるように変形する。これに
対して、タービンホイール15は、セラミックスタービ
ンとなっており、その熱変形量はほとんど無視できるも
のとなっている。
【0073】この結果、圧縮スクロール部材35が加熱
された状態では、シュラウド部37がタービンホイール
15の入口側端部15bに近接した状態となる。この状
態では、シュラウド部37とタービンホイール15との
間において、入口側隙間62bが出口側隙間62aより
小さくなる。すなわち、入口側隙間62bにおける前記
離間距離L2が、出口側隙間62aにおける同離間距離
L1より小さくなる。
【0074】ここで、前記入口側隙間62bの前記離間
距離L2が、ターボチャージャ11の作動時において圧
縮スクロール部材35が実用使用温度領域に達したとき
に、常温状態での前記出口側隙間62aの前記離間距離
L1にほぼ等しいか、または近い値となるように設定す
ることが望ましい。このように構成すれば、タービンハ
ウジング12における圧縮効率を、常温領域から実用使
用温度領域にわたって高く維持することができる。
【0075】以上詳述したように、この実施形態にかか
るタービンハウジング12によれば、以下に示すような
優れた効果が得られるようになる。 (1)本実施形態のタービンハウジング12では、圧縮
スクロール部材35と入口スクロール部材36とが、圧
縮スクロール部材35に形成された連結口38と入口ス
クロール部材36の差込部45との差し込み構造をもっ
て連結されている。そして、差込部45における圧縮ス
クロール部材35の中心側の開口縁に、圧縮スクロール
部材35内で圧縮されるガスを案内する案内板48が、
差込部45と一体に設けられている。
【0076】このように、案内板48を入口スクロール
部材36と一体形成することで、案内板48を設けるた
めの溶接作業が不要となる。これにより、溶接部分が存
在しないため、案内板48及びその近傍において冷熱サ
イクルの繰り返しに起因する亀裂等の発生が抑制され
る。従って、タービンハウジング12における圧縮効率
を、長期間にわたって高く維持することができる。ま
た、別体の案内板48を必要としないため、部品点数が
削減され、タービンハウジング12の、ひいてはターボ
チャージャ11の製造上有利である。
【0077】しかも、案内板48は、入口スクロール部
材36の差込部45における圧縮スクロール部材35の
中心側の開口縁を圧縮スクロール部材35の接線方向に
沿うように延長することで形成されている。このような
案内板48は、簡素な構成でありながら、高い圧縮効率
の維持、製造コストの低減といった優れた効果を奏す
る。
【0078】(2)本実施形態のタービンハウジング1
2では、案内板48が、圧縮スクロール部材35におけ
るガス圧縮終末部の内周面の延長面にほぼ沿うように形
成されている。このため、圧縮スクロール部材35内の
排気ガスの流れが、案内板48の近傍において乱される
ことが抑制され、圧縮された排気ガスがよりスムースに
排出ノズル39へと導かれる。従って、圧縮スクロール
部材35内での圧力損失が小さくなり、タービンハウジ
ング12における圧縮効率を高めることができる。そし
て、このタービンハウジング12をターボチャージャ1
1に装着した際に、タービンホイール15と一体回転さ
れるコンプレッサホイール16の回転性能が向上され、
コンプレッサハウジング13側における過給圧発生能力
を向上することができる。
【0079】(3)本実施形態のタービンハウジング1
2では、圧縮スクロール部材35の連結口38における
ガス圧縮終末部側の開口縁に、その圧縮スクロール部材
35のほぼ径方向に延びる返し部50を設けている。そ
して、この返し部50に対して、入口スクロール部材3
6の差込部45の傾斜部49が摺接するようになってい
る。
【0080】このため、両スクロール部材35,36が
急激に加熱され膨張したときに、入口スクロール部材3
6の差込部45が連結口38の開口縁に押し付けられた
としても、返し部50の作用によりスムースに相対移動
される。従って、両スクロール部材35,36が熱変形
したときに、その両スクロール部材35,36の熱変形
を効率よく吸収することができて、熱変形により両スク
ロール部材35,36に発生する応力を緩和することが
できる。
【0081】(4)本実施形態のタービンハウジング1
2では、入口スクロール部材36における排気ガスの入
口側の固定端部44が、外殻31に対して所定間隔をお
いて複数の固定部46で固定されている。言い換える
と、この入口スクロール部材36の固定端部44では、
各固定部46間が外殻31と固定されることなく単に重
ね合わされた非固定部となっている。このため、この非
固定部において、入口スクロール部材36の熱膨張に伴
う材料の若干の伸びが許容され、入口スクロール部材3
6の熱膨張に伴って発生する応力が緩和される。従っ
て、固定部46に集中する応力が弱められ、入口スクロ
ール部材36の外殻31に対するより確実な固定と高い
圧縮効率とを長期間にわたって両立させることができ
る。そして、ターボチャージャ11の耐久性を向上させ
ることができる。
【0082】(5)本実施形態のタービンハウジング1
2では、固定部46がスポット溶接加工により形成され
ている。この入口スクロール部材36の固定端部44で
は、その全周にわたって溶接加工がなされるわけではな
く、溶接加工がなされるのは固定部46のみで部分的で
ある。このため、各固定部46間の非溶接部分におい
て、入口スクロール部材36の熱変形に伴って発生する
応力が緩和されるため、固定部46への応力集中を抑制
することができる。
【0083】しかも、固定部46がスポット溶接で形成
されるため、その溶接部分が円形となる。このため、そ
の溶接部分が入口スクロール部材36の熱変形により、
圧縮されたり、引っ張られたりしたとしても、その溶接
部分の全周において均等に応力が生じることとなり、溶
接部分への影響を小さくすることができる。このため、
入口スクロール部材36を外殻31に対して強固に固定
することができる。また、溶接作業を簡単に行うことが
できて、タービンハウジング12の、ひいてはターボチ
ャージャ11の製造上有利である。そして、ターボチャ
ージャ11の耐久性をさらに向上させることができる。
【0084】(6)本実施形態のタービンハウジング1
2では、外殻31がその開口端31aにおいて取入れ口
フランジ47に対し全周にわたって溶接固定されてい
る。このため、外殻31と取入れ口フランジ47との間
において、タービンハウジング12の内部を通過する排
気ガスの系外への漏出が抑制される。そして、タービン
ホイール15の圧縮効率の低下を抑制することができ
て、コンプレッサハウジング13側で発生される過給圧
の低下を抑制することができる。
【0085】ここで、外殻31は、その外表面が全体的
に外気に接しているとともに、高温の排気ガスが接触す
る内殻32とは空気断熱層34を介して離隔されてい
る。さらに、外殻31において高温の排気ガスと直接接
触する部分は、入口スクロール部材36の固定端部44
近傍のみであり、その面積はごくわずかである。これら
のため、外殻31の温度が大きく上昇することがなく、
外殻31の取入れ口フランジ47に対する伸縮量も小さ
くなる。従って、外殻31を取入れ口フランジ47に対
して全周にわたって溶接固定したとしても、その溶接部
分に亀裂等が生じにくいものとなる。そして、タービン
ハウジング12で圧縮効率が高く維持され、コンプレッ
サハウジング13側において発生される過給圧を安定さ
せることができる。
【0086】(7)本実施形態のタービンハウジング1
2では、圧縮スクロール部材35が、その自由端部41
において外殻31に固定される接続フランジ43に対し
メッシュ部材42を介して摺動可能に保持されている。
一方、圧縮スクロール部材35におけるロータシャフト
17の軸線方向の一端の排出ノズル39は、外殻31に
固定されるケース24に対して相対変位不能に固定され
ている。そして、圧縮スクロール部材35は、暖められ
た時に、その圧縮スクロール部材35の径方向への自由
膨張が許容されるように保持されている。
【0087】これにより、圧縮スクロール部材35のシ
ュラウド部37とタービンホイール15との間に、常温
領域と実用使用温度領域とにおいて所定の隙間が形成さ
れるようになっている。このように、圧縮スクロール部
材35が高温の排気ガスの通過及び排気ガスの圧縮に伴
って熱変形されたとしても、タービンホイール15とシ
ュラウド部37との間に所定の隙間が確保される。この
ため、実用使用温度領域において、前記隙間が所定以上
に小さくなって、圧縮された排気ガスの排出ノズル39
側への通過抵抗が大きく増大することを抑制できる。ま
た、実用使用温度領域において、前記隙間が所定以上に
大きくなって、タービンホイール15の圧縮効率が低下
することを抑制できる。そして、常温領域から実用使用
温度領域にわたって、タービンハウジング12で圧縮効
率が高く維持され、コンプレッサハウジング13側にお
いて発生される過給圧を安定させることができる。
【0088】(8)本実施形態のタービンハウジング1
2では、圧縮スクロール部材35を、その温度状態の変
化に応じてシュラウド部37の形状を変化させること
で、シュラウド部37とタービンホイール15との間の
所定の隙間を確保するようになっている。このため、圧
縮スクロール部材35が加熱、冷却される際の熱変形を
利用することで、別途特別な部材を用いることなく、前
記隙間を確保することができる。従って、タービンハウ
ジング12の構造が、ひいてはターボチャージャの構成
が複雑化するのを回避することができる。
【0089】(9)本実施形態のタービンハウジング1
2では、圧縮スクロール部材35のシュラウド部37と
タービンホイール15との間の隙間が、常温領域で排気
ガスの入口側である入口側隙間62bが大きく、排気ガ
スの出口側である出口側隙間62aが小さくなるように
設定されている。そして、実用使用温度領域では、前記
入口側隙間62bが小さく前記出口側隙間62aが大き
くなるように設定されている。このため、常温領域から
実用使用温度領域にわたって、シュラウド部37の熱変
形を許容しつつ、その熱変形によってシュラウド部37
とタービンホイール15との隙間が、それらの対向面に
おいて全体的に拡大されたり縮小されたりすることを抑
制することができる。そして、常温状態から実用使用温
度状態にわたって、タービンハウジング12側の圧縮効
率がさらに安定化され、ターボチャージャ11の運転状
態がより安定なものとなる。
【0090】(10)本実施形態のタービンハウジング
12では、圧縮スクロール部材35内にセラミックスタ
ービンからなるタービンホイール15が収容されてい
る。このため、タービンホイール15の熱変形が極めて
小さく、その熱変形を無視することができる。これによ
り、圧縮スクロール部材35のシュラウド部37側の熱
変形量を制御するのみで、シュラウド部37とタービン
ホイール15との間の隙間を所定の離間距離に設定する
ことができ、構成の複雑化を回避することができる。
【0091】(11)本実施形態のタービンハウジング
12は、内殻32と外殻31とがともに耐熱鋼板の成形
品からなっている。このため、タービンハウジング12
全体の重量及び熱容量を、鋳物製のタービンハウジング
に比べて大きく低下させることができる。また、鋳物製
の外殻と耐熱鋼板製の内殻とを有する二重管構造のター
ビンハウジングに比べて、タービンハウジング12全体
の熱容量をさらに低下させることができる。
【0092】(12)本実施形態のタービンハウジング
12を装着したターボチャージャ11では、前記(1)
〜(11)に記載したような優れた作用効果が発揮さ
れ、小型で効率のよいターボチャージャ11が実現され
る。
【0093】(変形例)なお、上記実施形態は、例えば
以下のように適宜変形することもできる。 ・上記実施形態では、圧縮スクロール部材35の連結口
38の開口縁に、入口スクロール部材36における差込
部45の傾斜部49に摺接する返し部50が設けられて
いる。これに対して、この返し部50に代えて、例えば
図9に示すように、前記連結口38の開口縁の一部に、
前記傾斜部49に沿うような受け部65を設けるように
してもよい。このように構成した場合、圧縮スクロール
部材35の圧縮終末部分における内周面と前記差込部4
5の案内板48の外表面とを、より滑らかに連続させる
ことが可能となり、圧縮終末部分における排気ガスの流
れに乱れが生じることをさらに好適に抑制することがで
きる。従って、タービンハウジング12における圧縮効
率をさらに向上させることができる。
【0094】・上記実施形態では、排出ノズル39をケ
ース24に対して固定するとともに、自由端部41を接
続フランジ43に対して相対変位可能に支持して、圧縮
スクロール部材35を外殻31に保持する構成とした。
これに対して、接続フランジ43側の端部を接続フラン
ジ43に対して固定するとともに、排出ノズル39をケ
ース24に対して相対変位可能に支持して、圧縮スクロ
ール部材35を外殻31に保持する構成としてもよい。
なお、この場合には、例えば出口側隙間62aが圧縮ス
クロール部材35の温度状態の如何にかかわらず常に一
定に保たれるような機構等、シュラウド部37とタービ
ンホイール15との間に常温領域から実用使用温度領域
にわたって所定の離間距離の隙間を保持できるような機
構を設けることが望ましい。
【0095】また、例えば圧縮スクロール部材35自体
の変形等により、外殻31と内殻32との熱膨張差、収
縮差を吸収可能であり、前記隙間を保持可能であれば、
排出ノズル39をケース24に対して固定するととも
に、自由端部41を接続フランジ43に対して固定する
構成としてもよい。
【0096】・上記実施形態では、入口スクロール部材
36の固定端部44を外殻31に対して複数の固定部4
6でスポット溶接して固定する構成とした。これに対し
て、例えば蛇腹部を設けるなどして、入口スクロール部
材36自体の変形等により、外殻31と内殻32との間
の熱膨張差、収縮差を吸収可能であれば、入口スクロー
ル部材36の固定端部44を外殻31に対し全周にわた
って溶接固定する構成としてもよい。また、例えば外殻
31または入口スクロール部材36のいずれか一方の固
定部46に対応する位置に透孔を設けて開先を形成し、
その開先において溶接して外殻31と入口スクロール部
材36とを固定する構成してもよい。
【0097】さらに、入口スクロール部材36を取入れ
口フランジ47に対して溶接固定してよい。この場合に
おいても、入口スクロール部材36と取入れ口フランジ
47とを、スポット溶接してもよいし、前記開先を設け
て溶接してもよい。
【0098】・上記実施形態の入口スクロール部材36
を形成する際において、出発材料としてパイプを用いる
と共に、そのパイプに対してハイドロフォーム加工を施
すことで、入口スクロール部材36を形成してもよい。
【0099】・上記実施形態では、外殻31と内殻32
との間を中空構造として空気断熱層34を形成したが、
外殻31と内殻32との間に、例えば耐火物からなる断
熱材を充填してもよい。
【0100】・上記実施形態では、輻流型のコンプレッ
サホイール16を採用したが、軸流型のコンプレッサホ
イールに変更してもよい。 ・上記実施形態において、タービンホイール15及びコ
ンプレッサホイール16の少なくとも一方に容量可変機
構を設けてもよい。
【0101】次に、前記実施形態並びに前記変形例の記
載から把握できる技術的思想について、その効果ととも
に以下に記載する。 (ア)外殻と、少なくとも一部がこの外殻に対して所定
の断熱層を介して離隔した状態で配置されて内部をガス
が通過する内殻とからなり、その内殻は、内部に設けら
れたタービンを取り囲むように形成された圧縮スクロー
ル部材と、この圧縮スクロール部材内に前記タービンを
回転させるためのガスを導入する導入スクロール部材と
を有するタービンハウジングであって、前記圧縮スクロ
ール部材と前記導入スクロール部材とは、前記圧縮スク
ロール部材に形成された連結孔と前記導入スクロール部
材の先端部との差し込み構造をもって連結され、前記導
入スクロール部材におけるガスの入口側の基端部を、前
記外殻または外部の装置に取着するための取り付け部材
に対して、その導入スクロール部材の外周上に所定の間
隔をおいて配置された複数の固定部で固定したことを特
徴とするタービンハウジング。
【0102】この構成によれば、導入スクロール部材が
加熱され膨張したときに、各固定部間の非固定部での材
料の伸びにより、導入スクロール部材に発生する応力が
緩和される。そして、固定部に集中する応力が弱めら
れ、長期間にわたって導入スクロール部材を外殻または
取り付け部材に安定に固定しつつ、タービンハウジング
での高い圧縮効率を維持することができる。
【0103】(イ)外殻と、少なくとも一部がこの外殻
に対して所定の断熱層を介して離隔した状態で配置され
て内部をガスが通過する内殻とからなり、その内殻は、
内部に設けられたタービンを取り囲むように形成された
圧縮スクロール部材と、この圧縮スクロール部材内に前
記タービンを回転させるためのガスを導入する導入スク
ロール部材とを有するタービンハウジングであって、前
記圧縮スクロール部材には、前記タービンに向かって内
方に突出するシュラウド部と、少なくとも常温領域と実
用使用温度領域とで、前記シュラウド部とタービンとの
間に所定の隙間を形成する隙間調整機構とを有すること
を特徴とするタービンハウジング。
【0104】この構成によれば、圧縮スクロール部材が
高温の排気ガスの通過及び排気ガスの圧縮に伴って熱変
形されたとしても、タービンとシュラウド部との間に所
定の隙間が確保される。このため、実用使用温度領域に
おいて、前記隙間が所定以上に小さくなって圧縮された
排気ガスの排出口側への通過抵抗が大きく増大したり、
前記隙間が所定以上に大きくなって、タービンの圧縮効
率が低下したりすることを抑制することができる。
【0105】(ウ)内燃機関からの排気ガスで回転され
るタービンを収容するタービンハウジングと、そのター
ビンの回転に伴って回転され、前記内燃機関への吸気の
圧力を高めるコンプレッサを収容するコンプレッサハウ
ジングとを有するターボチャージャにおいて、前記ター
ビンハウジングが、外殻と、少なくとも一部がこの外殻
に対して所定の断熱層を介して離隔した状態で配置され
て内部をガスが通過する内殻とを有し、前記内殻は、そ
の内殻の内部に設けられたタービンを取り囲むように形
成された圧縮スクロール部材と、その圧縮スクロール部
材内に前記タービンを回転させるためのガスを導入する
導入スクロール部材とを備え、前記圧縮スクロール部材
と前記導入スクロール部材とを、前記圧縮スクロール部
材に形成された連結孔と前記導入スクロール部材の先端
部との差し込み構造をもって連結し、前記導入スクロー
ル部材の先端部における前記圧縮スクロール部材の中心
側の開口縁に、前記圧縮スクロール部材内で圧縮される
ガスを案内する案内部を前記導入スクロール部材と一体
に設けたことを特徴とするターボチャージャ。
【0106】この構成によれば、タービンハウジングの
案内部及びその周辺に溶接部分が形成されず、案内部及
びその近傍において冷熱サイクルの繰り返しによる亀裂
等が発生しにくい構造とすることができる。これによ
り、長期間にわたってタービンハウジングにおける高い
圧縮効率を維持することができ、ターボチャージャの耐
久性を向上することができる。また、部品点数の削減を
図ることができて、製造上有利である。
【0107】(エ)前記案内部は、前記導入スクロール
部材の先端部における前記圧縮スクロール部材の中心側
の開口縁が、前記圧縮スクロール部材のほぼ接線方向に
沿うように延長された延長部からなることを特徴とする
前記(ウ)に記載のターボチャージャ。
【0108】この構成によれば、簡素な構成で、前記
(ウ)に記載の発明の作用効果を実現することができ
る。 (オ)前記延長部が、前記圧縮スクロール部材における
ガス圧縮終末部の内周面の延長面にほぼ沿うように形成
されたことを特徴とする前記(エ)に記載のターボチャ
ージャ。
【0109】この構成によれば、タービンハウジングに
おいて、圧縮スクロール部材内での圧力損失が小さくな
り、タービンの圧縮効率を高めることができて、コンプ
レッサハウジングにおける過給圧発生能力を高めること
ができる。
【0110】(カ)前記圧縮スクロール部材の連結孔に
おけるガス圧縮終末部側の開口縁に、その圧縮スクロー
ル部材のほぼ径方向に延びる返し部を設け、この返し部
に前記導入スクロール部材の先端部の外周面の一部を摺
動可能に接合させたことを特徴とする前記(ウ)〜
(オ)のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【0111】この構成によれば、タービンハウジングの
2つのスクロール部材の熱変形が効果的に吸収され、そ
の熱変形によって両スクロール部材に発生する応力を効
率よく緩和することができる。
【0112】(キ)前記導入スクロール部材におけるガ
スの入口側の基端部を、前記外殻または外部の装置に取
着するための取り付け部材に対して、その導入スクロー
ル部材の外周上に所定の間隔をおいて配置された複数の
固定部で固定したことを特徴とする前記(ウ)〜(カ)
のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【0113】この構成によれば、タービンハウジングに
おいて、導入スクロール部材の固定部に集中する応力が
弱められる。このため、長期間にわたって導入スクロー
ル部材を外殻または取り付け部材に安定に固定しつつ、
タービンハウジングでの高い圧縮効率を維持することが
でき、ターボチャージャの耐久性を向上させることがで
きる。
【0114】(ク)前記固定部は、溶接加工により形成
されることを特徴とする前記(キ)に記載のターボチャ
ージャ。 (ケ)前記固定部は、スポット溶接加工により形成され
ることを特徴とする前記(ク)に記載のターボチャージ
ャ。
【0115】これらの構成によれば、タービンハウジン
グの導入スクロール部材を簡単な溶接作業で行うことが
できて、製造上有利である。特に、固定部をスポット溶
接により形成した場合には、タービンハウジングの導入
スクロール部材が熱変形したとしても、その導入スクロ
ール部材の各固定部の全周において均等に応力が生じる
こととなる。このため、導入スクロール部材における固
定部の溶接部分への熱変形の影響を小さくすることがで
きる。従って、ターボチャージャの耐久性をさらに向上
させることができる。
【0116】(コ)前記外殻における前記導入スクロー
ル部材の基端部に対応する部分を、前記取り付け部材に
対して全周にわたって溶接固定したことを特徴とする前
記(キ)〜(ケ)のいずれか一項に記載のターボチャー
ジャ。
【0117】この構成によれば、タービンハウジングの
外殻と取り付け部材との間において、そのタービンハウ
ジングの内部を通過する排気ガスの系外への漏出が抑制
され、タービンハウジング側での圧縮効率の低下を抑制
することができる。これにより、コンプレッサハウジン
グ側で発生される過給圧の低下を抑制することができ
る。
【0118】(サ)前記圧縮スクロール部材には、前記
タービンに向かって内方に突出するシュラウド部と、少
なくとも常温領域と実用使用温度領域とで、前記シュラ
ウド部とタービンとの間に所定の隙間を形成する隙間調
整機構とを有することを特徴とする前記(ウ)〜(ケ)
のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【0119】この構成によれば、常温領域から実用使用
温度領域にわたって、タービンハウジングで圧縮効率が
高く維持され、コンプレッサハウジング側において発生
される過給圧を安定させることができる。
【0120】(シ)前記隙間調整機構は、前記圧縮スク
ロール部材の温度状態の変化に応じて、前記シュラウド
部の形状を変化させることを特徴とする前記(サ)に記
載のターボチャージャ。
【0121】この構成によれば、タービンハウジングに
おいて、別途特別な部材を用いることなく、圧縮スクロ
ール部材のシュラウド部とタービンとの間の隙間を調整
することができる。これにより、ターボチャージャの構
成が複雑化するのを回避することができる。
【0122】(ス)前記隙間調整機構は、前記シュラウ
ド部とタービンとの間の隙間を、前記常温領域では前記
ガスの入口側が大きくかつ前記ガスの出口側が小さくな
るように設定するとともに、前記実用使用温度領域では
前記ガスの入口側が小さくかつ前記ガスの出口側が大き
くなるように設定することを特徴とする前記(シ)に記
載のターボチャージャ。
【0123】この構成によれば、タービンハウジングの
圧縮スクロール部材の温度状態が変化したときに、シュ
ラウド部とタービンとの隙間がそれらの対向面において
全体的に拡大されたり縮小されたりすることを抑制する
ことができる。
【0124】(セ)前記隙間調整機構は、前記シュラウ
ド部とタービンとの間の最小の離間距離が、前記常温領
域と前記実用使用温度領域とでほぼ等しくなるように調
整することを特徴とする前記(サ)〜(ス)のいずれか
一項に記載のターボチャージャ。
【0125】この構成によれば、常温状態から実用使用
温度状態にわたって、タービンハウジング側の圧縮効率
がさらに安定化され、ターボチャージャの運転状態がよ
り安定なものとなる。
【0126】(ソ)前記隙間調整機構は、前記圧縮スク
ロール部材における前記タービンの軸線方向の一端部を
前記外殻に対して相対変位不能に固定し、前記タービン
の軸線方向の他端部を前記外殻に対して相対変位可能に
保持するとともに、前記圧縮スクロール部材が暖められ
た時に、その圧縮スクロール部材の径方向への自由膨張
を許容する圧縮スクロール部保持機構を含むことを特徴
とする前記(サ)〜(セ)のいずれか一項に記載のター
ボチャージャ。
【0127】この構成によれば、簡単な構成で、前記
(サ)〜(セ)に記載の効果を発揮させることができ
る。 (タ)前記タービンがセラミックスタービンからなるこ
とを特徴とする前記(サ)〜(ソ)のいずれか一項に記
載のターボチャージャ。
【0128】この構成によれば、タービンの熱変形が極
めて小さく、圧縮スクロール部材のシュラウド部側の熱
変形量を制御するのみで、シュラウド部とタービンとの
間の隙間を所定の離間距離に設定することができ、構成
の複雑化を回避することができる。
【0129】(チ)前記内殻と前記外殻とがともに耐熱
鋼板の成形品からなることを特徴とする(ウ)〜(タ)
のいずれか一項に記載のターボチャージャ この構成によれば、タービンハウジング全体の熱容量を
さらに低下させることができ、タービンハウジングの保
温性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるタービンハウジングの一実施形
態について、これを備えるターボチャージャの概略構造
を示す断面図。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】図1の圧縮スクロール部材の自由端部周辺の拡
大部分断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】図2の入口スクロール部材の固定端部周辺の拡
大部分断面図。
【図6】図2の入口スクロール部材の固定端部周辺を内
側から見た展開図。
【図7】図2の圧縮スクロール部材の案内板周辺の拡大
部分断面図。
【図8】図1の圧縮スクロール部材のシュラウド部の熱
変形挙動に関する説明図。
【図9】変形例のタービンハウジングにおける圧縮スク
ロール部材の案内板周辺の拡大部分断面図。
【図10】従来のタービンハウジングにおける圧縮スク
ロール部材の案内板周辺の拡大部分断面図。
【符号の説明】
11…ターボチャージャ、12…タービンハウジング、
15…タービンホイール(タービン)、23…排気ガス
排出口、24…ケース(外殻及び圧縮スクロール部材保
持機構の一部)、31…外殻、32…内殻、34…空気
断熱層(断熱層)、35…圧縮スクロール部材(隙間調
整機構の一部を兼ねる)、36…入口スクロール部材
(導入スクロール部材)、37…シュラウド部、38…
連結口(連結孔)、39…排出ノズル(タービンの軸線
方向の一端部)、41…自由端部(タービンの軸線方向
の他端部)、42…メッシュ部材(隙間調整機構及び圧
縮スクロール部材保持機構の一部)、43…接続フラン
ジ(外殻及び圧縮スクロール部材保持機構の一部)、4
4…固定端部(基端部)、45…差込部(先端部)、4
6…固定部、47…取入れ口フランジ(取り付け部
材)、48…案内板(案内部、延長部)、49…傾斜部
(外周面の一部)、50…返し部、54,55…カバー
部材(外殻の一部)、62a…出口側隙間(隙間の一
部)、62b…入口側隙間(隙間の一部)、L1,L2
…離間距離。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 明 愛知県豊田市高丘新町天王1番地 アイシ ン高丘 株式会社内 Fターム(参考) 3G005 EA16 FA13 FA28 FA41 GB25 GB86 JA16 JA17 JA28

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外殻と、少なくとも一部がこの外殻に対し
    て所定の断熱層を介して離隔した状態で配置されて内部
    をガスが通過する内殻とからなり、その内殻は、内部に
    設けられたタービンを取り囲むように形成された圧縮ス
    クロール部材と、この圧縮スクロール部材内に前記ター
    ビンを回転させるためのガスを導入する導入スクロール
    部材とを有するタービンハウジングであって、 前記圧縮スクロール部材と前記導入スクロール部材と
    は、前記圧縮スクロール部材に形成された連結孔と前記
    導入スクロール部材の先端部との差し込み構造をもって
    連結され、前記導入スクロール部材の先端部における前
    記圧縮スクロール部材の中心側の開口縁に、前記圧縮ス
    クロール部材内で圧縮されるガスを案内する案内部を前
    記導入スクロール部材と一体に設けたことを特徴とする
    タービンハウジング。
  2. 【請求項2】前記案内部は、前記導入スクロール部材の
    先端部における前記圧縮スクロール部材の中心側の開口
    縁が、前記圧縮スクロール部材のほぼ接線方向に沿うよ
    うに延長された延長部からなることを特徴とする請求項
    1に記載のタービンハウジング。
  3. 【請求項3】前記延長部が、前記圧縮スクロール部材に
    おけるガス圧縮終末部の内周面の延長面にほぼ沿うよう
    に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のタービ
    ンハウジング。
  4. 【請求項4】前記圧縮スクロール部材の連結孔における
    ガス圧縮終末部側の開口縁に、その圧縮スクロール部材
    のほぼ径方向に延びる返し部を設け、この返し部に前記
    導入スクロール部材の先端部の外周面の一部を摺動可能
    に当接させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    一項に記載のタービンハウジング。
  5. 【請求項5】前記導入スクロール部材におけるガスの入
    口側の基端部を、前記外殻または外部の装置に取着する
    ための取り付け部材に対して、その導入スクロール部材
    の外周上に所定の間隔をおいて配置された複数の固定部
    で固定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一
    項に記載のタービンハウジング。
  6. 【請求項6】前記固定部は、溶接加工により形成される
    ことを特徴とする請求項5に記載のタービンハウジン
    グ。
  7. 【請求項7】前記固定部は、スポット溶接加工により形
    成されることを特徴とする請求項6に記載のタービンハ
    ウジング。
  8. 【請求項8】前記外殻における前記導入スクロール部材
    の基端部に対応する部分を、前記取り付け部材に対して
    全周にわたって溶接固定したことを特徴とする請求項5
    〜7のいずれか一項に記載のタービンハウジング。
  9. 【請求項9】前記圧縮スクロール部材には、前記タービ
    ンに向かって内方に突出するシュラウド部と、少なくと
    も常温領域と実用使用温度領域とで、前記シュラウド部
    とタービンとの間に所定の隙間を形成する隙間調整機構
    とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一
    項に記載のタービンハウジング。
  10. 【請求項10】前記隙間調整機構は、前記圧縮スクロー
    ル部材の温度状態の変化に応じて、前記シュラウド部の
    形状を変化させることを特徴とする請求項9に記載のタ
    ービンハウジング。
  11. 【請求項11】前記隙間調整機構は、前記シュラウド部
    とタービンとの間の隙間を、前記常温領域では前記ガス
    の入口側が大きくかつ前記ガスの出口側が小さくなるよ
    うに設定するとともに、前記実用使用温度領域では前記
    ガスの入口側が小さくかつ前記ガスの出口側が大きくな
    るように設定することを特徴とする請求項10に記載の
    タービンハウジング。
  12. 【請求項12】前記隙間調整機構は、前記シュラウド部
    とタービンとの間の最小の離間距離が、前記常温領域と
    前記実用使用温度領域とでほぼ等しくなるように調整す
    ることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記
    載のタービンハウジング。
  13. 【請求項13】前記隙間調整機構は、前記圧縮スクロー
    ル部材における前記タービンの軸線方向の一端部を前記
    外殻に対して相対変位不能に固定し、前記タービンの軸
    線方向の他端部を前記外殻に対して相対変位可能に保持
    するとともに、前記圧縮スクロール部材が暖められた時
    に、その圧縮スクロール部材の径方向への自由膨張を許
    容する圧縮スクロール部保持機構を含むことを特徴とす
    る請求項9〜12のいずれか一項に記載のタービンハウ
    ジング。
  14. 【請求項14】前記タービンがセラミックスタービンか
    らなることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項
    に記載のタービンハウジング。
  15. 【請求項15】前記内殻と外殻とがともに耐熱鋼板の成
    形品からなることを特徴とする請求項1〜14のいずれ
    か一項に記載のタービンハウジング。
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