以下、本発明の実施形態に係る構造体について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、第一実施形態の構造体10について、図面に基づいて説明する。
構造体10は、複数の中空の金属製球状体12と、複数の中空の金属製球状体14と、ケース16とからなっている。この構造体10は、図1の断面図に示すように、排気マニホルド18に位置付けられる。排気マニホルド18は、不図示のエンジンの排気ポートに連通するようにシリンダヘッドに連結され、排気通路EPの一部を区画形成するが、後述するように二重管構造とされている。
複数の中空の金属製球状体12、14の内の一の金属製球状体12について、図2に基づいて説明する。なお、図2に示す中空の金属製球状体12は、中空の金属製球状体の一例であり、その一部を切断した模式図である。
中空の金属製球状体(以下、「中空金属球体」と称する。)12は、内部に空洞Eを有し、空隙率の大きな球状体である(図2参照)。この中空金属球体12は、いわゆるピンポン球に類似する形状をしている。中空金属球体12は、任意の材料、例えばステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属などにより作製されるが、本第一実施形態ではステンレス鋼製とされている。
中空金属球体12を構成するステンレス鋼製の壁部、すなわち中空金属球体12内に空洞Eを区画形成する膜壁Fは数十μm〜1mm程度、好ましくは数十μmの厚さTを有し、また中空金属球体12自体は数十mm以下、好ましくは1mm〜10mmの直径Dを有する。なお、中空金属球体12としては、例えばオーストリアのプランゼー(PLANSEE)社の「Hollomet(登録商標)」がある。
中空金属球体14は、上記中空金属球体12と概略相似形の構造であり、異なる径を有している。中空金属球体14は、中空金属球体12よりも大きな直径を有している。第一実施形態では、中空金属球体12は、約1mmの直径を有し、中空金属球体14は1mmよりも大きな直径を有する。
図3に排気マニホルド18の外観図を示す。排気マニホルド18は、例えば直列4気筒4ストロークのエンジンに用いられる排気マニホルドである。排気マニホルド18は、上流側フランジ20と、下流側フランジ22と、4本の分岐パイプであるエキマニパイプ24(図中にはその一のエキマニパイプ24を示す。)と、それらの集合部であるエキマニ集合パイプ26と、これらエキマニパイプ24およびエキマニ集合パイプ26を覆うケースであるエキマニケース28とによりなっている。すなわち、エキマニパイプ24とエキマニ集合パイプ26とにより排気マニホルド18の内殻30が形成され、エキマニケース28により排気マニホルド18の外殻32が形成され、上記の如く、排気マニホルド18は二重管構造になっている。なお、この内殻30と外殻32とで、上記ケース16が形成される。
エキマニ集合パイプ26は、2枚のステンレス鋼板がそれぞれプレス成型された第一チャンバー半体34および第二チャンバー半体36を嵌め合わされ、その上流端は相互に溶接により一体に結合されている。エキマニ集合パイプ26の各分岐上流開口端部38には、エキマニパイプ24の下流部40が嵌め込まれ、この嵌め込み部は溶接により一体に結合されている。
さらにエキマニケース28も、2枚のステンレス鋼板がそれぞれプレス成型された第一ケース半体42および第二ケース半体44が嵌め合わされ、その当接箇所は溶接により一体に結合されている。その分岐上流端部46はそれぞれエキマニパイプ24の上流端48の外周に密接して上流側フランジ20の連通孔50に嵌め込まれ、溶接により、上流側フランジ20の孔50と、エキマニパイプ24の上流端48と、エキマニケース28の分岐上流端部46とが相互に一体に結合されている。エキマニケース28の集合下流端部52はエキマニ集合パイプ26の集合下流開口端部54の外周面に空間を持って下流側フランジ22の孔56に嵌め込まれ、溶接により、下流側フランジ22の連通孔56と、エキマニケース28の集合下流端部52とが、相互に一体に結合されている。エキマニケース28の集合下流端部52に対し前記エキマニ集合パイプ26の集合下流開口端部54はスライド移動可能に緩く嵌め込まれている。
本第一実施形態では、上記の如く、排気マニホルド18に、構造体10が配置される。そのために、中空金属球体12、14を充填するための口部が、ケース16に、より具体的にはエキマニケース28に設けられている。図1および図3に示すように、エキマニケース28には、上流側フランジ20に近接する箇所に上流側口部58が、そして下流側フランジ22に近接する箇所に下流側口部60が形成されている。
これら口部58、60は、エキマニパイプ24とエキマニ集合パイプ26とにより形成される内殻30と、エキマニケース28により形成される外殻32との間の空間、すなわち隙間62に連通している。内殻30と外殻32とよりなるケース16内に区画形成される隙間62には、複数の上記中空金属球体12、14が密に充填される。したがって、図1に示すように、複数の中空金属球体12、14と、ケース16とからなる構造体10が形成され、この構造体10が排気マニホルド18の周りに位置付けられることになる。そして、上流側口部58および下流側口部60は、隙間62への中空金属球体12、14の充填が終了すると、閉止部材63、64を用いて閉止される。
隙間62への複数の中空金属球体12、14の充填について、上流側口部58に関して図4に基づいて説明する。なお、下流側口部60に関しても同様である。上流側口部58には、加圧装置65が配送管66を介して接続され、中空金属球体12、14が隙間62に密に充填される。この充填は加圧装置65からの所定圧力の圧縮力で行われ、隙間62には複数の中空金属球体12、14が圧入される。これにより、隙間62の中空金属球体12、14は、互いに接触した状態にされる。そして、内殻30と外殻32とからなるケース16に、中空金属球体12、14が上記所定圧力で過密に充填されて、ケース16および中空金属球体12、14に内部圧縮応力が発生した状態にされる。なお、内殻30と外殻32との間の隙間62から中空金属球体12、14が通常時に漏れ出ることがないような程度に、内殻30と外殻32との間の密閉性は保たれている。ただし、図4に示すように、この隙間62における複数の中空金属球体12、14は、この第一実施形態では混合されている。
構造体10が配置された排気マニホルド18における作用および効果について、以下に説明する。
図1、3に示す排気マニホルド18により排気通路EPの一部が区画形成され、ここを高温の排気ガスが流れるので、排気マニホルド18を構成する各種部材、特に内殻30にはその排気ガスの熱により膨張あるいは収縮などの変形が生じる。これにより、排気マニホルド18の種々の部分において、引張応力や圧縮応力である熱応力が発生する可能性がある。特に、排気マニホルド18を形成する部材間の接合箇所や、それら部材が折れ曲がったりしている箇所はそのような熱応力が生じると、厳しい環境にさらされる。そこで、上記構成とすることで、そのような熱応力集中が生じないように、熱応力集中を緩和することにしている。すなわち、排気マニホルド18全体や、それの個々の箇所は、熱応力集中緩和部位と称し得る。
排気マニホルド18には、エンジンが運転を開始すると、各気筒の燃焼室で発生した高温の排気ガスが排気ポートから上流側フランジ20の連通孔50、エキマニパイプ24、エキマニ集合パイプ26および下流側フランジ22の連通孔56を介して、より下流側の不図示の排気管に排出される。
エンジン始動時においては、排気マニホルド18の温度は低く、排気ガスの熱を吸収して、排気ガスが冷却される傾向にある。しかし、エキマニパイプ24、エキマニ集合パイプ26およびエキマニケース28はいずれも薄板金製であって、熱容量が小さく、かつ、エキマニパイプ24、エキマニ集合パイプ26に対してエキマニケース28が一定の空間を有する2重構造となって断熱性に富んでいるため、排気ガスがそれ程低温に冷却されず、不図示の排気管中の排気ガス浄化用触媒を直ちに活性化することができ、始動時の排気ガス浄化用触媒の初期機能が低下することが避けられる。
また排気マニホルド18のエキマニケース28内の排気通路EPが、その通路方向に沿って2分割されたエキマニパイプ24およびエキマニ集合パイプ26で区画形成され、該エキマニパイプ24の下流部40とエキマニ集合パイプ26の分岐上流開口端部38とは溶接で一体に結合されるとともにエキマニ集合パイプ26の集合下流開口端部54がエキマニケース28に対して移動可能に緩く嵌め込まれている結果、高温の排気ガスに直接触れて高温に加熱されるエキマニパイプ24およびエキマニ集合パイプ26の熱膨張量が、外気などに触れた結果高温にまで達せずに比較的低い温度に維持されているエキマニケース28の熱膨張量に比べて大きくても、その熱膨張の差は、エキマニ集合パイプ26の集合下流開口端部54とエキマニケース28の集合下流端部52との相対的なスライド移動でもって吸収され、エキマニパイプ24、エキマニ集合パイプ26およびエキマニケース28に著しい熱応力が発生することが未然に防止され、しかもこの熱膨張差の吸収によって、高温となるエキマニパイプ24の下流部と高温となるエキマニ集合パイプ26の分岐上流開口部38との嵌込み部の結合および剛性がある程度確保され、エキマニパイプ24およびエキマニ集合パイプ26の耐久性が向上し得る。
加えて、本第一実施形態の排気マニホルド18には上述の構造体10が位置付けられているので、さらなる優れた効果が生じる。排気マニホルド18の外周側に隙間62が形成されることによって発揮される上記断熱効果を維持したまま、中空金属球体12、14が密に隙間62に充填されるので、中空金属球体12、14の膜壁のそれぞれが隙間62を区画形成するケース16を支持する支持壁として作用して、排気マニホルド18全体の強度、剛性が増すことになる。さらに、これにより、エキマニパイプ24、エキマニ集合パイプ26、エキマニケース28などの熱による過度の変形が抑制される。したがって、その変形により、ある特定の部分に、例えば部材同士の溶接部や固定部など局所的な箇所に、圧縮力や引張力が集中することが抑制され、換言すると熱応力集中が抑制、緩和されることになる。また、異なる径の中空金属球体12、14が用いられるので、より密に中空金属球体12、14が隙間62に充填されて、排気マニホルド18の強度が向上する。なお、このように中空金属球体12、14が密に充填されても、これらは空隙率が高い球体であり、非常に軽量であるので、構造体10を位置付けたことでの重量増加は無視できる程度である。
なお、複数の中空金属球体12、14を含む構造体10では、ケース16を備え、その中にそれら中空金属球体12、14が収容されているので、構造体10の強度が十分に確保されることになる。これは、構造体10としてのまとまりがより確実なものになることを意味するものである。
上記第一実施形態では、ケース16の隙間62において中空金属球体12、14をランダムに充填することにしたが、中空金属球体12、14は、同一径の中空金属球体ごとにまとめられて、隙間62に位置付けられると良い。このようにした構造体10aを、上記第一実施形態の排気マニホルド18に位置付けたところを図5に示す。上記の如く中空金属球体12は中空金属球体14よりも小さな径を有していて、隙間62の内、上流側フランジ20や下流側フランジ22に隣接する箇所には、相対的に小さな径を有する中空金属球体12が配置され、隙間62のそれ以外の部分には、相対的に大きな径を有する中空金属球体14が配置される。これは、まず、隙間62の上流側フランジ20や下流側フランジ22に隣接する部分に中空金属球体12を充填し、任意の技術、例えば支持板などを用いることにより中空金属球体12を支持しておき、他の部分に中空金属球体14を充填し、その後、中空金属球体12を支持しておいた支持板などを取外すことなどでなされると良い。
あるいは、複数の中空金属球体12、14の内の同一径の中空金属球体12(あるいは14)をまとめて、それら同一径の中空金属球体12(あるいは14)同士を接合した接合体68を予め作製して配置することで構造体10bの作製がなされても良い。このような接合体68は、それぞれ同一径を有する中空金属球体のみが接合されることで形成されるのが好ましく、ここでの接合体68は、複数個の上記中空金属球体12を所定の型に満たして所定の圧力をかけて、複数の中空金属球体12を互いに接触させた状態で加熱焼結させることで作製される。つまり、複数の中空金属球体を接合して作られた予備成形体が作製される。すなわち、中空金属球体12同士が接合された一体の接合体68が得られる。なお、所定の圧力をかけて中空金属球体12間に電圧をかけることで、そしてそのようなことを真空中で行わせることで、それらを焼結接合することとしても良い。型の形状等を変えることで接合体68は任意の形状とされる。接合体68の一部の断面図を図6に示すように、この接合体68は中空金属球体12間にほぼ同じ大きさの隙間68Gを有し、この隙間68Gは接合体68の外部、すなわち表面から内部へと連続する。
上記接合体68を用いての、構造体10bの作製手順について、図7に、時間の変化に基づいて模式的に示す。なお、図7では、構造体10bを、上記第一実施形態における排気マニホルド18とほぼ同様の排気マニホルド18´に位置付けるところを示すが、上記排気マニホルド18と同じ構成要素に関しては同じ符号を用いる。
接合体68は、厚肉、且つリング形状に作製されている。まず、接合体68が上流側フランジ20に面した状態で配置され、接合体68の孔68bにエキマニパイプ24が挿入される。エキマニパイプ24は、上流側フランジ20の孔50にまで挿入される。これにより、接合体68がエキマニパイプ24の外周に位置付けられると共に、上流側フランジ20に当接して配置される。その後、上記エキマニケース28と同様の構成のエキマニケース28bが接合体68を覆うように配置されて、上流側フランジ20に接合される。さらに、上記上流側口部58(図7では不図示)を介して、エキマニパイプ24とエキマニケース28bとの間に位置付けられる空間である隙間70に中空金属球体14が圧入される。同様に、排気マニホルド18の下流側に対しても行われる。したがって、エキマニパイプ24とエキマニ集合パイプ26とから形成される内殻30と、エキマニケース28bから形成される外殻32bと、上流側および下流側フランジ20、22とにより形成されるケース16bの間の隙間70に、複数の中空金属球体12、14が過密に充填されて、排気マニホルド18´に構造体10bが位置付けられることになる。
なお、図8に示すように、上記接合体68と同様の、中空金属球体12を複数個含む接合体72を局所的にも熱応力集中緩和部位である上流側フランジ20近傍部に配置して、その周りをケース部材74で保持することとしても良い。このようにして、接合体72が、上流側フランジ20と、エキマニパイプ24と、ケース部材74とからなるケース76で区画形成される隙間78に配置され、構造体10cが構成される。このようにして、他の熱応力集中緩和部位に構造体を適用しても良い。このように熱応力集中緩和部位を複数の部位に分けて、それら各々の部位ごとに構造体を配置することで、熱応力集中緩和部位ごとにより柔軟に構造体が位置付けられることになる。なお、接合体72には、中空金属球体12および中空金属球体14とがそれぞれ複数個含まれても良い。
上記いずれの場合にも、ケース16、16b、76により区画形成される隙間に、互いが接触するように中空金属球体12および/または中空金属球体14が圧入されて、上記第一実施形態の構造体10に関して述べた効果が同様に奏される。また、図5や図7に示したように、接合箇所や折曲がった箇所などに径の小さな中空金属球体12が位置付けられ、それ以外の部位にそれより大きな径の中空金属球体14が位置付けられることで、熱応力分布の最適化が達成されることになる。詳細には、熱変形による応力負荷が大きい熱応力集中緩和部位には、小さな中空金属球体12が、互いに接触して位置付けられるので、的確に、その部位の熱変形が抑制されて、熱応力集中が抑制される。一方、それ以外の部位には、大きな中空金属球体14が互いに接触して位置付けられるので、排気マニホルド18の強度が十分に達成されると共に、エキマニパイプ24等のある程度の熱変形は許容されることになる。すなわち、熱応力の集中は、主として熱応力が極めて集中しやすい箇所では抑制され、それ以外の箇所ではそれらの熱応力が吸収、発散されるので、熱応力分布が最適化されることになる。このようにして、排気マニホルド18の強度が維持されるので、より薄い板材で排気マニホルド18を作製することが可能になる。
さらに、上記の如く、ランダムに中空金属球体が配置された構造体10や、同じ径の中空金属球体ごとに分けて配置された構造体10aや、接合体68を用いて排気マニホルド18全周に配置された構造体10bでは、板金製の内殻30および外殻32(あるいは32b)の間に複数の中空金属球体12、14が位置付けられるので、これら中空金属球体12、14は排気ガスにおける振動や、エンジンに生じた振動などの振動エネルギーを吸収する。したがって、排気マニホルド18、18´における振動が低減されて、排気マニホルド18、18´の信頼性が向上する。またこの結果、排気音の低減、ビビリ音の発生の抑止等を行うことも可能になる。また、中空金属球体12、14などの間の隙間で効率よく振動を吸収して、排気音を特定の音色にすることも可能になる。なお、上記接合体68、71の如き接合体を用いる場合には、特に振動吸収特性の調整が容易になり、排気音の調整を行うことが可能になる。接合体を構成する中空金属球体の径、接合体の厚みなどを種々に組み合わせることで、また、同一径の中空金属球体からなる接合体であって、異なる径の中空金属球体を備える複数の接合体を用意し、これらを組み合わせることで、より柔軟に排気音の音色を調整することが可能になる。
なお、排気マニホルド18の周囲を取り囲むように構造体10が配置されることで、車両が衝突等して仮に排気マニホルド18に衝撃エネルギーとしての外力が加わることになっても、構造体10内の中空金属球体12、14が変形して、その外力を柔軟に吸収することが行われる。このように衝撃吸収特性が向上するので、排気マニホルド18を構成する部材を薄肉化して、さらに排気マニホルド18の軽量化を図ることも可能になる。また、それにより、排気マニホルド18を構成する部材を薄肉化しても、排気マニホルド18の破損を防ぐことが出来る。
上記第一実施形態およびその変形例では、内殻30を外殻32(あるいは32b)に対してスライド移動可能にして、熱応力集中を緩和した。そして、その上で、構造体10、10a、10bを排気マニホルド18、18´に位置付けることにしたが、本発明はこれに限定されない。具体的には、内殻30および外殻32を上流側フランジ20および下流側フランジ22に部分的にもスライド移動しないように固定しても良い。そして、単に内殻30、外殻32、あるいはさらに上流側および下流側フランジ20、22などでケースを構成して、その内部の空間である隙間に単に複数の上記中空金属球状態12、14を密に充填することとしても良い。なお、構造体に充填される中空金属球体は、三つ以上の径の三つ以上の種類のものを含んでも良い。
ところで、上記第一実施形態およびその変形例では、排気マニホルドに構造体を位置付けたが、本発明の構造体が配置される部位は、排気マニホルドに限定されない。例えば、本発明に係る構造体は、燃料タンクなどの燃料供給系部品や、吸気マニホルド、ターボチャージャ、マフラなどの吸排気系部品などのいずれか、あるいは複数に位置付けられても良い。そして、これらの部分が、上記効果の少なくともいずれかを期待する部位であれば、本発明に係る構造体の位置付けにより、上記したのと同様の効果が奏される。そのような部位は、換言すると、熱応力の集中を緩和するのが好ましい熱応力集中緩和部位や、音などに影響する振動を低減するのが好ましい振動騒音低減部位や、衝撃力を吸収低減するのが好ましい衝撃吸収部位などである。これらの一例として、構造体100をターボチャージャ110に位置付けたところを、第二実施形態として説明する。
まず、構造体100が位置付けられるターボチャージャ110の概略構造について、説明する。ただし、図9は、構造体100が位置付けられたターボチャージャ110の断面図であり、図9(a)はターボチャージャ110全体の断面図であり、図9(b)は図9(a)におけるA−A線でのタービンハウジング112の断面図である。なお、図9(b)ではタービンホイール114を省略している。
図9に示すように、コンプレッサ116およびタービン118を備えるターボチャージャ110のケーシングは、タービンハウジング112と、コンプレッサハウジング120と、これらの間に介されるセンタハウジング122とにより形成されている。
タービンハウジング112には、エンジンの排気ガスの流れにより作動する輻流型のタービンをなすタービンホイール114が収容されている。コンプレッサハウジング120には、タービンホイール114の作動に連動してエンジンの燃焼室内への吸気を過給する輻流型のコンプレッサホイール124が収容されている。センタハウジング122には、タービンホイール114とコンプレッサホイール124とを一体回転可能に接続するロータシャフト126がベアリング128により軸支されている。
タービンハウジング112には、タービンホイール114を取り囲むように、渦巻き状をなすスクロール室130が形成されている。このスクロール室130は、ロータシャフト126の接線方向に開口する排気ガス取入れ口132と、ロータシャフト126の軸線方向に開口する排気ガス排出口134とを有している。排気ガス取入れ口132は、エンジンの排気マニホルドに接続される。排気ガス排出口134は、外殻および圧縮スクロール部材保持機構の一部をなす出口側ケース136を介して触媒へと排気ガスを導く排気管に接続される。
コンプレッサハウジング120には、コンプレッサホイール124を取り囲むように、渦巻き状をなすディフューザ138が形成されている。このディフューザ138は、ロータシャフト126の軸線方向に開口する給気取入れ口140と、ロータシャフト126の接線方向に開口する過給気吐出口142とを有している。給気取入れ口140はエアクリーナを備える吸気管に接続され、過給気吐出口142はエンジンの吸気マニホルドに接続される。
図9(a)および(b)に示すように、上記ターボチャージャ110のタービンハウジング112は、耐熱薄板鋼板のプレス成形品からなる外殻144と、同じく耐熱薄板鋼板のプレス成形品からなる内殻146とを有しており、いわゆる二重管構造をなしている。この耐熱薄板鋼板としては、例えばステンレス鋼、ハステロイ、インコネル製等のものが挙げられる。外殻144と内殻146とは、所定の間隔をおいて金属メッシュからなる複数の係止部材148により、その大部分が互いに離隔するように保持されている。これにより、外殻144と内殻146との間には、空間が形成され、すなわち断熱層をなす空気断熱層150が形成されている。そして、この内殻146により、外殻144の内部に前記スクロール室130が区画形成されている。
まず、上記内殻146について、説明する。図9(b)に示すように、内殻146は、隙間調整機構の一部を兼ねる圧縮スクロール部材152と、導入スクロール部材としての入口スクロール部材154とからなっている。
圧縮スクロール部材152は、略ドーナツ状に形成され、タービンホイール114を収容するとともに、そのタービンホイール114に干渉しない範囲で、内方に突出するシュラウド部156を有している。また、圧縮スクロール部材152には、連結孔をなす連結口158が開口するように形成されており、その連結口158に入口スクロール部材154が接続されている。そして、圧縮スクロール部材152は、連結口158からタービンホイール114の回転方向前方(ガス圧縮終末部側)に向かうに従って、外周縁とロータシャフト126の軸心との距離が短くなるような渦巻き状に形成されている。
また、圧縮スクロール部材152の一方の外側面の中央には、タービンホイール114の軸線方向の一端部をなす排出ノズル160が外方に向かって突設されている。その排出ノズル160の先端は、前記排気ガス排出口134の周縁をなす出口側ケース136に対して固定されている。
一方、圧縮スクロール部材152の他方の外側面の中央には、タービンホイール114の軸線方向の他端部をなす自由端部162が形成されている。この自由端部162は、隙間調整機構および圧縮スクロール部材保持機構の一部をなすメッシュ部材164に対して溶接固定されており、外殻および圧縮スクロール部材保持機構の一部をなす接続フランジ166にメッシュ部材164と共に嵌入されている。これにより、この自由端部162は、ロータシャフト126の軸線方向に所定量だけ変位可能となっている。
図9(b)に示すように、前記入口スクロール部材154は、パイプ状に形成されている。この入口スクロール部材154における排気ガスの入口側の基端部は、前記外殻144に対して固定された固定端部168をなしている。これに対して、この入口スクロール部材154における排気ガスの出口側の先端部は、前記圧縮スクロール部材152の連結口158に対して差し込まれる差込部170をなしている。
図9(b)に示すように、入口スクロール部材154は、中央部および差込部170の近傍において係止部材148を介して、また固定端部168において複数の固定部172を介して外殻144に対して固定されている。この固定部172は、入口スクロール部材154の固定端部168を外殻144に対し、所定の間隔をおいてスポット溶接加工を施すことによって形成される。また、この固定部172は、スポット溶接加工により平面円形に形成される。そして、各固定部172の間においては、入口スクロール部材154と外殻144とが、互いに固定されることなく単に重なり合った状態となっている。
一方、この入口スクロール部材154の固定端部168が固定される外殻144の開口端は、その全周にわたって、排気ガス取入れ口132の周縁をなす取り付け部材としての取入れ口フランジ174に対して溶接固定されている。
図9(b)に示すように、入口スクロール部材154は、開口端をなす固定端部168から差込部170に行くに従って、その開口断面積が徐々に小さくなるように形成されている。また、差込部170の近傍は、圧縮スクロール部材152の曲面に連続するような曲面を持って形成されている。
図9(b)に示すように、その差込部170の先端における圧縮スクロール部材152の中心側(ガス圧縮終末部に対応する部分)の開口縁には、圧縮スクロール部材152で圧縮される排気ガスの流れを案内する案内部および延長部としての案内板176が形成されている。この案内板176は、入口スクロール部材154と一体に形成されている。この案内板176は、入口スクロール部材154の差込部170における開口縁の一部が突出するように延長するとともに、圧縮スクロール部材152の接線方向に沿うように折曲したものとなっている。
この案内板176の基端部分には、入口スクロール部材154の外周面の一部をなし、圧縮スクロール部材152の連結口158の開口縁に摺接する傾斜部178が形成されている。また、この傾斜部178に摺接する圧縮スクロール部材152の連結口158の開口縁には、その開口縁が圧縮スクロール部材152の径方向に延びるように折り返された返し部180が設けられている。そして、これら傾斜部178および返し部180の存在により、入口スクロール部材154および圧縮スクロール部材152が熱変形したときに、両スクロール部材152、154がスムースに摺動可能な差し込み構造が実現される。
なお、入口スクロール部材154において、前記排気ガス排出口134側の側面における内殻146の排出ノズル160と近接する部分には、ウェイストゲートノズル(以下「WGノズル」という)182が突出形成されている。
次に、外殻144の構成について、説明する。外殻144は、上記の如く、内殻146の全体を覆うように配置される一対のカバー部材184、186と、出口側ケース136と、接続フランジ166とからなっている。一方のカバー部材184におけるロータシャフト126側の端部は、前記接続フランジ166に接続固定されている。他方のカバー部材186における内殻146の排出ノズル160およびWGノズル182と対応する部分には、それら排出ノズル160およびWGノズル182が挿通される開口部188が形成されている。
この他方のカバー部材186の側面には、外殻144および内殻146と同様の耐熱薄板鋼板のプレス加工品からなる出口側ケース136が、開口部188を覆い隠すように接合されるとともに溶接固定されている。この出口側ケース136には、排出ノズル160が挿通される排出ノズル挿通孔190が形成されている。なお、この出口側ケース136には、WGノズル182が挿通されるWGノズル挿通孔(不図示)が形成されている。
本第二実施形態のターボチャージャ110のタービンハウジング112は、上記の如く、耐熱薄板鋼板のプレス成形品からなる外殻144と、同じく耐熱薄板鋼板のプレス成形品からなる内殻146とにより二重管構造とされている。この外殻144と内殻146とよりなるケース192には、上記第一実施形態で述べたのと同様の、異なる径を有する中空金属球体194、196(図2参照)が複数個充填される。すなわち、上記タービンハウジング112における外殻144と、内殻146との二重管構造により形成される空間である空気断熱層150、すなわち隙間198に、異なる径を有する中空金属球体194、196が複数個充填される。なお、第二実施形態では、複数の中空金属球体194、196を混合して充填しているが、図9では中空金属球体194と中空金属球体196の差異を明確にしていない。隙間198に複数の中空金属球体194、196を充填することは、外殻144と内殻146とにより概ね形成されるケース192に、複数の中空金属球体194、196がそれぞれ互いに接するように密に充填されて、本第二実施形態の構造体100が構成されることを意味する。そして、この構造体100は、あたかもターボチャージャ110のタービン118の外周を覆うように位置づけられることになる。
以上のように構成されたターボチャージャ110としての全体の動作について説明する。このターボチャージャ110では、エンジンの運転に伴って、発生する排気ガスが排気ガス取入れ口132からスクロール室130内に供給される。入口スクロール部材154を介して連結口158から圧縮スクロール部材152内に導入された排気ガスは、タービンホイール114の回転に伴い徐々に圧縮される。そして、同排気ガスは、案内板176によって案内されて、圧縮スクロール部材152の内方に突出するように形成されたシュラウド部156とタービンホイール114との間を介して、排気ガス排出口134から排気管に排出される。この際、その排気ガスは徐々に圧縮されながらタービンホイール114を回す。このタービンホイール114の回転に連動してコンプレッサホイール124が回転され、給気取入れ口140からディフューザ138内に導かれた給気の圧力が高められ、過給気として過給気吐出口142から燃焼室に供給される。
次に、このタービンハウジング112における内殻146の熱膨張時の挙動について説明する。このタービンハウジング112においては、エンジンが始動されタービンハウジング112内に高温の排気ガスが供給されると、その高温の排気ガスに直接接触する入口スクロール部材154および圧縮スクロール部材152は直ちに加熱される。この加熱により、入口スクロール部材154および圧縮スクロール部材152は、熱膨張することになる。
この一方で、外殻144の両カバー部材184、186は、両スクロール部材154、152に対して空気断熱層150を介して配設されている。また、両カバー部材184、186は、開口端においてわずかながら高温の排気ガスに直接接しているものの、外表面の大部分が常温の外気に触れている。このため、両カバー部材184、186の熱膨張は、小さく抑えられる。ここで、両スクロール部材154、152からなる内殻146は、両カバー部材184、186からなる外殻144に対して可撓性の金属メッシュからなる複数の係止部材148によりある程度保持されている。このため、内殻146と外殻144との間の熱膨張量の差の一部は、この係止部材148が撓むことにより吸収される。
また、内殻146のうち、入口スクロール部材154は、その固定端部168において複数の固定部172により外殻144の両カバー部材184、186に固定されている。ここで、入口スクロール部材154は、熱膨張する際に、図9(b)に矢印で示すように、中央部の係止部材148の取着位置を中心として、固定端部168側および差込部170側に延びるように熱膨張していく。
このとき、入口スクロール部材154の差込部170側では、その入口スクロール部材154とともに圧縮スクロール部材152も熱膨張されることになる。これら両スクロール部材152、154の熱膨張は、入口スクロール部材154の差込部170と圧縮スクロール部材152の連結口158の周縁とが摺動しつつ相対変位することで吸収される。
一方、入口スクロール部材154の固定端部168では、前述したように、入口スクロール部材154が複数の固定部172で外殻144をなす両カバー部材184、186に対してスポット溶接されている。すなわち、入口スクロール部材154の固定端部168は複数の点で固定されているに過ぎず、各固定部172間の非固定部分では入口スクロール部材154と両カバー部材184、186とがその固定部172が剥離しない範囲で相対変位可能となっている。
ここで、ターボチャージャ110が作動状態に移行すると、前述のように外殻144の熱膨張が小さく抑えられた状態で、入口スクロール部材154が加熱され、その固定端部168が熱膨張されていくことになる。このように入口スクロール部材154が熱膨張されると、固定部172における入口スクロール部材154と両カバー部材184、186との固定が保持されたまま、入口スクロール部材154の各固定部172間の非固定部分が膨出される。この非固定部分の膨出により、入口スクロール部材154の熱膨張によって固定部172で発生する応力の一部が緩和される。
しかも、各固定部172は、スポット溶接により平面円形に形成されている。このため、各固定部172に発生した応力が、その固定部172の一部分に集中しにくくなっている。このため、両カバー部材184、186と入口スクロール部材154との間に熱膨張量差を生じたとしても、各固定部172での両カバー部材184、186と入口スクロール部材154との剥離の発生が抑制される。
また、圧縮スクロール部材152は、前述のように、ロータシャフト126の軸線方向における一方の端部をなす排出ノズル160の先端が外殻144に接合固定された出口側ケース136に対して固定されている。これに対して、この圧縮スクロール部材152は、ロータシャフト126の軸線方向における他方の端部をなす自由端部162において、外殻144に接合固定された接続フランジ166に対してメッシュ部材164を介して相対変位可能に嵌入されている。このため、この圧縮スクロール部材152に高温の排気ガスが供給されると、圧縮スクロール部材152は、ロータシャフト126の軸線方向において全体として接続フランジ166側へと伸張するように熱膨張される。
また、この圧縮スクロール部材152は、可撓性を有する係止部材148を介して外殻144をなす両カバー部材184、186に保持されている。このため、圧縮スクロール部材152は、高温の排気ガスの供給により加熱されると、ロータシャフト126の径方向において前記係止部材148を撓ませつつ自由膨張して行くこととなる。
圧縮スクロール部材152が十分に冷やされた状態では、シュラウド部156がタービンホイール114の出口側端部に近接した状態となっている。この状態では、シュラウド部156とタービンホイール114との間において、隙間の一部をなす出口側隙間が、同じく隙間の一部をなす入口側隙間より小さくなっている。すなわち、出口側隙間におけるシュラウド部156とタービンホイール114との離間距離が、入口側隙間における同離間距離より小さくなるように設定されている。
この状態から、エンジンから排気ガスがタービンハウジング112内に供給され、圧縮スクロール部材152が加熱されると、この圧縮スクロール部材152は全体として前述のように熱変形されることになる。その結果、シュラウド部156は、圧縮スクロール部材152のロータシャフト126の径方向や軸方向へ熱膨張によって延びるように変形する。
この結果、圧縮スクロール部材152が加熱された状態では、シュラウド部156がタービンホイール114の入口側端部に近接した状態となる。この状態では、シュラウド部156とタービンホイール114との間において、入口側隙間が出口側隙間より小さくなる。すなわち、入口側隙間における離間距離が、出口側隙間における同離間距離より小さくなる。
本第二実施形態において、上記の如く、外殻144と内殻146とよりなるケース192には、上記第一実施形態で述べたのと同様にして、異なる径を有する中空金属球体194、196が複数個充填される。これにより以下の作用効果が奏される。
上記の如く、タービン118には、高温の排気ガスが流れるので、タービン118は、熱応力集中緩和部位である。特に、タービンの構成部材同士の接合箇所には、上記の如く、構造体100を位置付けなければある程度の熱応力が及ぼされる可能性があるが、このような箇所に、構造体100が位置付けられるので、上記第一実施形態で述べたように、さらに熱応力集中を抑制することなどが可能になる。具体的には、熱膨張によって生じる固定部172などでの応力集中がさらに緩和される。なお、特に熱応力が集中しやすい箇所に相対的に小さい径を有する中空金属球体を位置付け、それ以外のところに相対的に大きい径を有する中空金属球体を位置付けることにしても良い。このようにすることで、上記の如く熱応力分布の最適化が達成される。また、特に熱応力が集中しやすい箇所にのみ、構造体を位置付けても良い。
また、このように排気ガスの流路を区画形成するタービンハウジング112に構造体100が形成されるので、排気ガスが有する振動エネルギーを吸収低減できる。さらに、タービン118およびその前後の排気系部品そのものの有する振動エネルギーも吸収低減することが可能になる。
なお、複数の中空金属球体194、196の内の複数の中空金属球体同士が接合された接合体が少なくとも一つ作製されて、隙間198に配置されても良い。そして、このような接合体の各々に含まれる中空金属球体の径は、同一であるとなお好ましい。これらについては、上記したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、構造体100に充填される中空金属球体は同一径の同一種類のものであっても良い。
なお、上記ターボチャージャ110では、タービンハウジング112のみを二重管構造としたが、コンプレッサハウジング120も二重管構造として、同様に構造体を位置づけるのが好ましい。コンプレッサハウジング120は、空気の断熱圧縮により熱せられるので、熱応力集中緩和部位となり得るからである。
以上、上記第一実施形態および第二実施形態やそれらの変形例では、本発明に係る好適な実施例である構造体10、10a、10b、100を排気マニホルド18やターボチャージャ110に配置した。このように構造体が位置付けられた部位は、熱応力集中緩和部位であり、振動騒音低減部位でもあり、またこれらは衝撃吸収部位にもなり得た。
一方、本発明の構造体が適用されるべき所定部位としての衝撃吸収部位には、上記第一および第二実施形態で述べた排気マニホルド18やターボチャージャ110も含まれ得るが、当初から車両が衝突したときなどにその衝突エネルギーを吸収すべく設計される、車両前後方部などに位置付けられるエンジンルームなども含まれる。このエンジンルームに、本発明の第三実施形態に係る構造体を位置付けたところを、図面に基づいて説明する。
図10に、車両210前方のエンジンルーム212の概念図を示す。エンジンルーム212に配置されたエンジン214では、前方に排気マニホルド18が位置付けられている。この排気マニホルド18は、上記第一実施形態で説明したように、構造体10が位置付けられた排気マニホルド18であるので、ここでの説明は省略する。
図10に示されているように、エンジンルーム212を区画形成する部材の一つであるエンジンフード(ボンネット)216は二重構造とされていて、そのエンジンフード216をケース217としてその内部には空間218が形成される。この空間218には、上記第一実施形態で詳述したのと同様の、複数の中空金属球体220、222が収容され、充填されている。すなわち、エンジンフード216は、複数の中空金属球体220、222を含む構造体200とされていて、この構造体200は衝撃吸収部位であるエンジンルーム212に位置付けられている。
構造体200に外力が加わっても、中空金属球体220、222内の空洞の容積や、中空金属球体220、222間の隙間が減るように構造体200が塑性変形して、適切に外力を吸収することが可能となる。特に、中空金属球体220と中空金属球体222とは異なる径を有するので、中空金属球体222よりも大きな径の中空金属球体220が大きく変形することで衝撃エネルギーの大部分が吸収され、その内側に配置された小さな径の中空金属球体222では残った衝撃エネルギーが吸収されると共に、構造体200の強度が維持される。従って、中空金属球体220、222を有する構造体200が位置付けられて配置されたエンジンフード216は、エンジンルーム212を維持するのに十分な強度を有すると共に、衝撃吸収特性にも優れることになる。なお、異なる大きさの径の中空金属球体を種々に組み合わせることで、構造体の変形能、およびその変形により吸収される衝撃エネルギーの大きさは種々に調節される。
また、図10に示すように、エンジンルーム212の空間には、構造体202、204が位置付けられる。なお、構造体202、204は、不図示の支持手段によりエンジンルーム212に支持されている。構造体202は、エンジン214の前方に配置されている。また、構造体204は、エンジン214のシリンダブロック224と排気マニホルド18との間に形成された隙間に位置付けられている。これらの構造体202、204には上記中空金属球体220、222の内の中空金属球体222が複数個充填されている。構造体202、204をエンジンルーム212に配置することで、上記構造体200で述べたのと同様の効果が奏される。
ここで、構造体202の構成を図11の概念図に基づいて説明する。図11では、構造体202について説明するが、構造体204も同様である。図11(a)に示す構造体202では、薄鋼板製のケース202aに複数の中空金属球体220のみが密に充填されている。しかしながら、構造体202は、内部に空間を有しても良い。この例を、図11(b)に構造体202´として示す。構造体202´は、そのケース202bが内部に穴部206を有するように形成されていて、内部に空洞(空間)を有する。図11(a)、(b)の構造体202、202´では、ケース202a、202bに充填される複数の中空金属球体220は同一の径を有していた。しかしながら、これらケース202a、202bには異なる径からなる中空金属球体220、222が収容されても良い。図11(c)にそのような例である構造体202´´を示す。構造体202´´では、その外殻をなすケース202cに、ケース202dが配置され、ケース202dの中に複数の中空金属球体222が充填されている。また、ケース202dとケース202cとの間の領域には、中空金属球体222よりも大きな径を有する、複数の中空金属球体220が充填されている。
なお、上記の如く、構造体200、202、202´、202´´、204に収められる複数の中空金属球体は、異なる径の中空金属球体を含んでいるのが好ましい。あるいは、それら構造体に、中空金属球体220、222の内の中空金属球体同士が接合された接合体が、少なくとも一つ備えられているのが良い。そして、このような接合体が複数あるときは、構造体の各々に含まれる中空金属球体の径は、同一であるとなお好ましい。これらは、上記理由によるので、ここでの説明は省略する。
このように本発明に係る構造体が位置付けられることで、エンジンフードなどのそれ自体の衝撃吸収特性を向上させることが可能になる。また、それらの振動吸収特性を向上させることも可能になる。そして、これらの結果、エンジンルーム等の容積を最小限に抑えることが可能になる。したがって、車両の縮小化が可能になる。
以上、本発明を上記第一から第三実施形態およびそれらの変形例に基づいて説明したが、上記のように、排気マニホルドや、ターボチャージャや、エンジンフードなどを含むエンジンルームなど、様々な形状の部材に本発明の構造体を適用できるのは、本発明の構造体が、中空金属球体を構成要素とし、種々の形状のケースを外枠として用いることが出来るからである。そして、それぞれ求められる特性が異なる部位に本発明の構造体を用いることができるのは、その構造体が異なる径の中空金属球体を含み、異なる径の中空金属球体の組合せを調整して、それぞれの径の中空金属球体の特性をそれぞれの部位に合わせて複合的に発揮させることが可能なためである。したがって、それぞれの部位に応じて柔軟に対応可能な構造体が、上記の如く提供されることになる。
以上、本発明を上記第一から第三実施形態およびそれらの変形例で説明したが、本発明はそれらに限定されない。上記の如く、構造体は、所定の部材などに、所定形状のケースなどで一定の領域が定められ、その中に複数の中空金属球体が互いに接触するように充填されていると良い。それ故、複数の中空金属球体同士が接合されているかいないかは問わず、また接合されている中空金属球体と接合されていない中空金属球体とが混在とされているかいないかも問わない。さらには複数の中空金属球体が所定形状で所定部位に位置づけられるのであれば複数の中空金属球体がケース内に収容されているかいないかも問わない。また、ケースは、上記実施形態の如く、その一部を熱応力緩和のためにスライド構造とせずに、閉じた空間を形成する容器としても良い。さらに、複数の中空金属球体は、異なる径を有する、二以上の種類の中空金属球体の組合せからなればよく、その中空金属球体内に空洞を区画形成する膜壁の厚みは問わない。また、中空金属球体には、あらゆる形状の球体が含まれる。そして、本発明による構造体により、この構造体が位置付けられる部位で、熱応力集中緩和、衝撃吸収特性向上、振動吸収特性向上などの効果が、少なくとも一つ奏されることが望ましい。また、構造体が位置付けられる部位によっては、それら効果が複合的に発揮されるのが望ましい。