JP2003292612A - ポリペンタメチレンアジパミド樹脂およびその製造方法 - Google Patents
ポリペンタメチレンアジパミド樹脂およびその製造方法Info
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Abstract
リジンの総含有量が少なく、滞留安定性、耐熱性に優れ
た、1,5−ジアミノペンタンおよびアジピン酸から誘
導されるポリペンタメチレンアジパミド樹脂を得る。 【解決手段】1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸を
加熱重縮合して得られるポリペンタメチレンアジパミド
樹脂であって、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の
昇温速度で、融点+25℃の温度に昇温した際に現れる
吸熱ピーク面積の70%以上が240℃以上であること
を特徴とするポリペンタメチレンアジパミド樹脂。
Description
の含有量が少なく、溶融滞留安定性、耐熱性に優れた、
1,5−ジアミノペンタンおよびアジピン酸から誘導さ
れるポリペンタメチレンアジパミド樹脂およびその製造
方法に関するものである。
体などの合成原料や高分子原料として期待され、需要が
高まりつつある。1,5−ジアミノペンタンを原料とし
た高分子として、例えば、アジピン酸と重縮合すること
によって生成するポリペンタメチレンアジパミドが知ら
れている。ポリペンタメチレンアジパミドは、主に、加
熱重縮合か、界面重縮合で製造されている。加熱重縮合
で製造されたポリペンタメチレンアジパミドが、J.Poly
m.Sci.2,306(1947)に記載されており、この文献での、
ポリペンタメチレンアジパミドの融点は223℃と記載
されている。また、界面重縮合で製造されたポリペンタ
メチレンアジパミドが、J.Polym.Sci.50,87(1961)や、M
acromolecules,31,8540(1998)に記載されている。これ
らの文献では、ポリペンタメチレンアジパミドの融点
は、前者では251℃、後者では220℃と250℃と
記載されている。これらの報告から、加熱重縮合により
得られたポリペンタメチレンアジパミドは、界面重縮合
により得られたそれと比較して、融点が低く、耐熱性に
劣るものしか報告されていなかった。その原因として
は、原料として用いる1,5−ジアミノペンタンの純度
が低いこと、また、その不純物中には、1,5−ジアミ
ノペンタンが分子内脱アンモニア反応することにより生
成する、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、ピペ
リジン、アンモニアなどの塩基性化合物が多く含有され
ていること、また加熱重縮合では反応温度が高温である
ため、塩基性化合物がポリペンタメチレンアジパミドの
分解反応を起こしていることなどが可能性として考えら
れる。このように、従来公知の技術では、耐熱性の高い
ポリペンタメチレンアジパミドは界面重縮合法によって
のみ製造可能とされてきたが、界面重縮合法を用いる場
合は、工程が複雑であり、製造プロセスとして実現する
ことは困難であった。
可能な加熱重縮合プロセスで、1,5−ジアミノペンタ
ンとアジピン酸を重縮合してなるポリペンタメチレンア
ジパミド樹脂において、示差走査熱量計を用いて、20
℃/分の昇温速度で、融点+25℃の温度に昇温した際
に現れる吸熱ピーク面積の70%以上が240℃以上で
ある、耐熱性、且つ滞留安定性に優れたポリペンタメチ
レンアジパミドが得られることを見出し、本発明に到達
した。
縮合してなるポリペンタメチレンアジパミド樹脂であっ
て、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度
で、融点+25℃の温度に昇温した際に現れる吸熱ピー
ク面積の70%以上が240℃以上であることを特徴と
するポリペンタメチレンアジパミド樹脂。
樹脂中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジ
ンとピペリジンの総含有量が1.5wt%以下であるこ
とを特徴とする上記(1)記載のポリペンタメチレンア
ジパミド樹脂。
樹脂の融点+20℃の温度で30分間、溶融滞留処理し
た後の硫酸相対粘度保持率が95%以上であることを特
徴とする(1)または(2)記載のポリペンタメチレン
アジパミド樹脂。
ン脱炭酸酵素を有する微生物、リジン脱炭酸酵素活性の
向上した組換え微生物、またはその抽出物を用いて、リ
ジンから産出されたものであることを特徴とする(1)
〜(3)いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミド
樹脂。
3,4,5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含
有量が0.5wt%以下であることを特徴とする(1)
〜(4)いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミド
樹脂。
ン酸の塩および水の混合物を、最高到達温度が200〜
280℃となる条件で加熱重縮合してなることを特徴と
する請求項1〜5いずれか記載のポリペンタメチレンア
ジパミド樹脂。
ン酸を加熱重縮合するポリペンタメチレンアジパミド樹
脂の製造方法であって、前記ポリペンタメチレンアジパ
ミド樹脂中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピ
リジンとピペリジンの総含有量を1.5wt%以下とす
ることを特徴とするポリペンタメチレンアジパミド樹脂
の製造方法。
ン脱炭酸酵素を有する微生物、リジン脱炭酸酵素活性の
向上した組換え微生物、またはその抽出物を用いて、リ
ジンから産出されたものであることを特徴とする(7)
記載のポリペンタメチレンアジパミド樹脂の製造方法。
3,4,5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含
有量を0.5wt%以下とすることを特徴とする(7)
または(8)記載のポリペンタメチレンアジパミド樹脂
の製造方法。
ピン酸の塩および水の混合物を、最高到達温度が200
〜280℃となる条件で加熱重縮合することを特徴とす
る(7)〜(9)いずれか記載のポリペンタメチレンア
ジパミド樹脂の製造方法。により構成される。
は、1,5−ジアミノペンタン中に、2,3,4,5−
テトラヒドロピリジン、ピペリジン、その他の不純物を
含有したものも含むものとする。
脂は、1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸を加熱重
縮合して得られるポリペンタメチレンアジパミドを示
し、従来報告されている、加熱重縮合によって製造され
たポリペンタメチレンアジパミド樹脂(例えばJ.Polym.
Sci.2,306(1947)ではポリペンタメチレンアジパミドの
融点223℃と記載)よりも耐熱性(融点)が高いポリ
ペンタメチレンアジパミド樹脂を得ようとするものであ
るので、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂を示差走査
熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で、融点+25
℃の温度に昇温した場合に現れる吸熱ピーク面積の70
%以上が240℃以上である。吸熱ピーク面積が70%
以上である場合には滞留安定性にも優れるため、耐熱性
と滞留安定性ともに優れたポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂を得ることができる。吸熱ピーク面積が70%未
満では、低融点成分が多く、耐熱性が不十分となるため
好ましくない。ここで、吸熱ピークの面積とは、示差走
査熱量計で得られた曲線のベースラインよりも吸熱側に
出現するピークの面積を示す。本発明のポリペンタメチ
レンアジパミド樹脂は加熱重縮合によって製造される
が、加熱重縮合とは、製造時の最高到達温度を200℃
以上に上昇させる製造プロセスと定義する。
ド樹脂中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリ
ジンとピペリジンの総含有量が1.5wt%以下である
ことが好ましく、さらには1.0wt%以下であること
が好ましい。2,3,4,5−テトラヒドロピリジンや
ピペリジンは、1,5−ジアミノペンタンの分子内脱ア
ンモニア反応によって生成する環状アミンであり、この
反応では、アンモニアも生成する。これら3つの化合物
は塩基性であるため、ポリペンタメチレンアジパミド樹
脂に含まれる量が多いほど、ポリペンタメチレンアジパ
ミド樹脂の分解が促進される。したがって、ポリペンタ
メチレンアジパミド樹脂中の2,3,4,5−テトラヒ
ドロピリジンとピペリジンの総含有量が1.5wt%以
下の場合には、滞留安定性に優れたポリペンタメチレン
アジパミド樹脂を得ることができ、また1.0wt%以
下の場合には、さらに滞留安定性に優れたポリペンタメ
チレンアジパミド樹脂を得ることができる。2,3,
4,5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含有量
が、1.5wt%以上である場合には、溶融状態で、ポ
リペンタメチレンアジパミド樹脂の分解反応が著しく進
行するため好ましくない。
は、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂と結合しないで
ポリペンタメチレンアジパミド樹脂中に遊離して存在し
ているので、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂中に含
まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジンは、ポリ
ペンタメチレンアジパミド樹脂をソックスレー抽出する
ことにより抽出することができ、この抽出液をGC−M
S分析することにより定量することができる。これに対
し、ピペリジンは、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂
と結合しないで、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂中
に遊離して存在するものと、アジピン酸由来のカルボキ
シル基と反応して、ポリマーの末端に結合して存在する
ものがある。そのため、ポリペンタメチレンアジパミド
樹脂中のピペリジンを定量するには、末端に結合してい
るピペリジンを、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂か
ら遊離させることが必要である。その方法としては、ポ
リペンタメチレンアジパミド樹脂を加水分解処理して、
ポリペンタメチレンアジパミド樹脂から遊離させる方法
が挙げられる。このようにポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂を加水分解処理して得られた生成物をGC−MS
分析することにより、ポリペンタメチレンアジパミド樹
脂中のピペリジンを定量することができる。
タメチレンアジパミド樹脂を得ようとするものであるの
で、不活性ガス雰囲気下、ポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂の融点+20℃の温度で30分間溶融滞留させた
場合の硫酸相対粘度の保持率が、95%以上であること
が好ましい。ここで、硫酸相対粘度とは、98%硫酸
中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘
度計を用いて測定したときの粘度である。また、硫酸相
対粘度保持率とは、溶融滞留させる前のポリペンタメチ
レンアジパミド樹脂の硫酸相対粘度を100%とした場
合に、溶融滞留させた後の硫酸相対粘度が何%保持され
ているかを表す。従って100%に近いほど、溶融滞留
によるポリペンタメチレンアジパミド樹脂の分解が少な
いことを示し、滞留安定性に優れたポリペンタメチレン
アジパミド樹脂を得ることができる。硫酸相対粘度の保
持率が95%未満の場合は、ポリペンタメチレンアジパ
ミド樹脂中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピ
リジン、ピペリジンなどの塩基性化合物が多く、ポリペ
ンタメチレンアジパミド樹脂の分解が促進されているた
め好ましくない。
ペンタンの製法に制限はないが、例えば、2−シクロヘ
キセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリ
ジンから合成する方法(Chemistry Letters,893(198
6)、特公平4−10452)や、リジン脱炭酸酵素を用
いてリジンから転換する方法(特願2001−2548
9)などが知られている。2,3,4,5−テトラヒド
ロピリジンやピペリジンは、反応温度が高いほど生成し
易いため、反応温度が低い方法によって、1,5−ジア
ミノペンタンを得る方が、2,3,4,5−テトラヒド
ロピリジンやピペリジン含量を低減できるため好まし
い。前者の方法では、反応温度が約150℃と高いのに
対し、後者の方法は100℃未満であるため、原料とし
ては後者の方法によって得られた1,5−ジアミノペン
タンを用いることが好ましい。
ジン塩酸塩をリジン脱炭酸酵素によって、脱炭酸して、
産生される1,5−ジアミノペンタン塩酸塩を、アルカ
リ性下で処理することにより得られる1,5−ジアミノ
ペンタンを用いることが好ましい。
は、リジンを1,5−ジアミノペンタンに転換させる酵
素であり、Escherichia coli K12株をはじめとするエシ
ェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在するこ
とが知られている。
ン脱炭酸酵素は、これらの生物に存在するものを使用す
ることができ、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上
昇した組換え細胞由来のものも使用できる。
物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例え
ば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細
胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイ
ヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。ま
た、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞な
どが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、
大腸菌などが用いられる。
せて使用しても良い。
としては、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halod
urans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtili
s)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノ
モナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantiu
m)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ
・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、
ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coe
licolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomy
ces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella c
orrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム
(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティ
フィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・
アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス
(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシド
フィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス
・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリ
ウム・グルタミカス(Corynebacteriumglutamicum)等
が挙げられる。
ないが、例えば、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や、
リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細
胞などを適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、
休止菌体として用いることも可能であり、また当該菌体
を破砕して無細胞抽出液を調製して用いることも可能で
あり、また必要に応じて精製して用いることも可能であ
る。
ン脱炭酸酵素を有する微生物や組換え細胞を培養する方
法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、
使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必
要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。
例えば、E.coliの場合しばしばLB培地が用いられる。炭
素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトー
ス、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロ
ース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物など
の糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールな
どのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸
やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源
としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン
酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解
物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を
用いることができる。有機微量栄養素としては、各種ア
ミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類な
どの要求物質または酵母エキス等を適量含有させること
が望ましい。それらの他に、必要に応じて、リン酸カル
シウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等
が少量添加される。
liの場合、好気条件下で16〜72時間程度実施するの
が良く、培養温度は30℃〜45℃に、特に好ましくは
37℃に、培養pHは5〜8に、特に好ましくはpH7に制
御するのがよい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸
性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を
使用することができる。
等により培養液から回収することができる。回収した微
生物や組換え細胞から無細胞抽出液を調整するには、通
常の方法が用いられる。すなわち、微生物や組換え細胞
を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法に
て破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去することによ
り無細胞抽出液が得られる。
するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、
疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラ
フィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱
処理、pH処理等酵素の精製に通常用いられる手法が適宜
組み合わされて用いられる。精製は、完全精製である必
要は必ずしもなく、リジン脱炭酸酵素以外のリジンの分
解に関与する酵素、生成物である1,5−ジアミノペン
タンの分解酵素等の夾雑物が除去できればよい。
−ジアミノペンタンへの変換は、上記のようにして得ら
れるリジン脱炭酸酵素を、リジンに接触させることによ
って行うことができる。
に制限はない。
−ジアミノペンタンに変換する反応を触媒するのに十分
な量であればよい。
くは40℃前後である。
6である。1,5−ジアミノペンタンが生成するにつ
れ、反応溶液はアルカリ性へ変わるので、反応pHを維持
するために無機あるいは有機の酸性物質を添加すること
が好ましい。好ましくは塩酸を使用することができる。
採用し得る。
い。
などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間であ
る。また、反応は、リジンを供給しながら連続的に行っ
てもよい。
タンを反応終了後、反応液から採取する方法としては、
イオン交換樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、溶
媒抽出する方法、単蒸留する方法、その他通常の採取分
離方法が採用できる。
ヒドロピリジンとピペリジンの総含有量が1.5wt%
以下であるポリペンタメチレンアジパミド樹脂を得るた
めには、1,5−ジアミノペンタン中の2,3,4,5
−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含有量を0.
5wt%以下に制御することが好ましい。2,3,4,
5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含有量が
0.5wt%以上である1,5,−ジアミノペンタンを
原料とすると、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂の加
熱重縮合時、および、溶融滞留時に分解反応が著しく進
行するため、好ましくない。
脂の製造方法としては、実質的に1,5−ジアミノペン
タンとアジピン酸の等モル塩、および水の混合物を、加
熱して脱水反応を進行させる加熱重縮合法が用いられ
る。ただし、反応温度が高いほど、原料となる1,5−
ジアミノペンタン中に含まれる2,3,4,5−テトラ
ヒドロピリジン、ピペリジンなどの塩基性化合物が、ポ
リペンタメチレンアジパミド樹脂の分解反応を促進した
り、1,5−ジアミノペンタンの分子内脱アンモニア反
応が生起して、2,3,4,5−テトラヒドロピリジ
ン、ピペリジンなどの塩基性化合物が生成するため、加
熱重縮合時の最高到達温度は200〜280℃にするこ
とが好ましい。さらには、ポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂の融点未満である200〜250℃に制御するこ
とが好ましい。本発明のポリペンタメチレンアジパミド
樹脂は、加熱重縮合後、さらに固相重合することによっ
て、分子量を上昇させることも可能である。固相重合
は、100℃〜融点の温度範囲で、真空中、あるいは不
活性ガス中で加熱することにより進行し、加熱重縮合で
は分子量が不十分なポリペンタメチレンアジパミド樹脂
を高分子量化することができる。
脂の重合度にはとくに制限がなく、0.01g/mlと
した98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.5
〜8.0であることが好ましく、2.0〜5.0である
ことがさらに好ましい。相対粘度が1.5未満では、実
用的強度が不十分なため、8.0以上では、溶融成形が
困難となるため好ましくない。
脂には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例え
ば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、
ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換
体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾル
シノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、
ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及
び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビス
アミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料
(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック
等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶
核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤
(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンス
ルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート
型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオ
ン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノス
テアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系
両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、
水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化
物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭
素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネー
ト、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤
と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、充填剤(グラ
ファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カル
シウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタ
ン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、
亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレ
ス、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイ
ト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、
針状、板状充填材)、他の重合体(他のポリアミド、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカー
ボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンス
ルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテル
スルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)
を任意の時点で添加することができる。
脂は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、溶
融紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所
望の形状に成形でき、機械部品などの樹脂成形品、衣料
・産業資材などの繊維、包装・磁気記録などのフィルム
として使用することができる。特に延伸性に優れるた
め、フィルムなどの押出成形用材料として適している。
フィルムの延伸方法は、1軸、2軸(逐次、同時)など
公知の方法を用いることができる。
説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定される
ものではない。
ペンタメチレンアジパミド樹脂約15gを精秤して、メ
タノールでソックスレー抽出し、その抽出液を、下記条
件でGC−MS分析して、ポリペンタメチレンアジパミ
ド中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジン
を定量した。
約50mgを精秤して、内容量16mlのガラスアンプ
ルに仕込み、6N塩酸水溶液8mlを添加後、アンプル
を封管した。これを耐圧容器に入れ、180℃で20時
間加熱し、加水分解処理した。冷却後、アンプルを取り
出して、内容物を濃縮乾固した。さらに、塩酸を除去し
た後、乾燥することにより得られた乾固物を、N,O−
ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド
(BSTFA試薬)を用いてトリメチルシリル化した反
応生成物につき、下記条件でGC−MS分析して、ポリ
ペンタメチレンアジパミド樹脂中のピぺリジン含量を定
量した。 装置:ヒューレットパッカード製 HP5890質量検出器 カラム:5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン カラム温度:Initial 100℃ Final 250℃ 昇温速度:10℃/min 注入口温度:230℃ 検出器温度:280℃ キャリアガス:ヘリウム 注入口圧力:50kg/cm2 試料注入量:1μl。
電子工業製 ロボットDSC RDC220を用い、窒素
雰囲気下、試料を約5mgを採取し、次の条件で測定し
た。融点+25℃に昇温して3分間保持し、試料を完全
に融解させた後、20℃/分の降温速度で、30℃まで
降温し、3分間保持した後、30℃から融点+25℃ま
で20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される吸
熱ピークの温度、および熱量を求めた。
01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用
いて測定を行った。
込み、窒素雰囲気下、融点+20℃の温度のシリコンバ
スに浸漬し、試料が完全に溶融してから30分間放置し
た後、試料を回収して相対粘度測定を行った。
の菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で2
4時間振とうして前培養を行った。
角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌し
た。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅3
0cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpH
を6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして
得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により
無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活
性の測定を定法に従って行った(左右田健次,味園春雄,
生化学実験講座,vol.11上,P.179-191(1976))。
考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダ
ーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るの
で、この反応系を遮断する目的で75℃で5分間、E.co
li JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細
胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウ
ムにより分画した。こうして得られた粗精製リジン脱炭
酸酵素溶液を用いて、リジンから1,5−ジアミノペン
タンの生成を行った。
造) 50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1m
M ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg
/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)とな
るように調製した水溶液1000mlを、0.1N塩酸
水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃
で48時間反応させ、1,5−ジアミノペンタン塩酸塩
を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加すること
によって1,5−ジアミノペンタン塩酸塩を1,5−ジ
アミノペンタンに変換し、クロロホルムで抽出して、減
圧蒸留(10mmHg、60℃)することにより、1,
5−ジアミノペンタンを得た。GC−MS分析により
2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、ピペリジンの
含量を定量した結果、それぞれ0.20、0.012w
t%であった。
造) リジン塩酸塩20g(和光純薬工業製)シクロヘキサノ
ール100ml(シグマアルドリッチジャパン製)に懸
濁し、次いで28%ナトリウムメトキシド/メタノール
溶液(シグマアルドリッチジャパン製)21.2ml、
2−シクロヘキセン−1−オン1ml(シグマアルドリ
ッチジャパン製)を加え、155℃で3時間加熱撹拌し
た。反応終了後、反応混合物に塩化水素4g(シグマア
ルドリッチジャパン製)を含むイソプロパノール溶液2
0ml(シグマアルドリッチジャパン製)を加え、析出
した生成物を回収し、乾燥することにより1,5−ジア
ミノペンタン塩酸塩を得た(特公平4−10452の実
施例4記載の方法)。この水溶液に、水酸化ナトリウム
水溶液を添加することによって1,5−ジアミノペンタ
ン塩酸塩を1,5−ジアミノペンタンに変換し、クロロ
ホルムで抽出して、減圧蒸留(10mmHg、60℃)
することにより、1,5−ジアミノペンタンを得た。G
C−MS分析により2,3,4,5−テトラヒドロピリ
ジン、ピペリジンの含量を定量した結果、それぞれ1.
5、0.026wt%であった。
ジピン酸の塩の調製) 参考例2の1,5−ジアミノペンタン10.3gを、水
25g中に溶解した水溶液を、40℃のウォーターバス
に浸して撹拌しているところに、アジピン酸(カーク
製)を約1gずつ、中和点付近では約0.2gずつ添加
していき、アジピン酸添加量に対する水溶液のpH変化
を調べ、中和点を求めると、pH8.66であった。中
和点でのアジピン酸添加量は14.7gであった。pH
が8.66になるように、1,5−ジアミノペンタンと
アジピン酸の等モル塩の50wt%水溶液を調製した。
ン酸の等モル塩の50wt%水溶液50.0gを試験管
に仕込み、オートクレーブに入れて、密閉し、窒素置換
した。ジャケット温度を265℃に設定し、加熱を開始
した。缶内圧力が17.5kg/cm2に到達した後、
缶内圧力を17.5kg/cm2で3時間保持した。そ
の後、ジャケット温度を275℃に設定し、2時間かけ
て缶内圧力を常圧に放圧した。その後、缶内温度が24
5℃に到達した時点で、加熱を停止した。室温に放冷
後、試験管をオートクレーブから取り出し、ポリペンタ
メチレンアジパミド樹脂を得た。
液35.0g(1,5−ジアミノペンタン含量0.10
3mol)、アジピン酸15.0g(0.103mo
l)を試験管に仕込み、オートクレーブに入れて、密閉
し、窒素置換した。ジャケット温度を285℃に設定
し、加熱を開始した。缶内圧力が17.5kg/cm2
に到達した後、缶内圧力を17.5kg/cm2で3時
間保持した。その後、ジャケット温度を295℃に設定
し、2時間かけて缶内圧力を常圧に放圧した。その後、
缶内温度が270℃に到達した時点で、加熱を停止し
た。室温に放冷後、試験管をオートクレーブから取り出
し、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂を得た。
液35.0g(1,5−ジアミノペンタン含量0.10
3mol)、アジピン酸15.0g(0.103mo
l)を試験管に仕込み、オートクレーブに入れて、密閉
し、窒素置換した。ジャケット温度を285℃に設定
し、加熱を開始した。缶内圧力が17.5kg/cm2
に到達した後、缶内圧力を17.5kg/cm2で3時
間保持した。その後、ジャケット温度を320℃に設定
し、2時間かけて缶内圧力を常圧に放圧した。その後、
缶内温度が300℃に到達した時点で、加熱を停止し
た。室温に放冷後、試験管をオートクレーブから取り出
し、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂を得た。
タンの30wt%水溶液(1,5−ジアミノペンタン含
量0.103mol)、アジピン酸15.0g(0.1
03mol)を用いる以外は実施例1と同様の方法でポ
リペンタメチレンアジパミド樹脂を得た。
以外は、実施例2と全く同様の方法でポリペンタメチレ
ンアジパミド樹脂を得た。
以外は、実施例3と全く同様の方法でポリペンタメチレ
ンアジパミド樹脂を得た。
を用いても、全吸熱ピーク熱量に対する240℃以上の
吸熱ピーク熱量の割合が大きい、耐熱性に優れたポリペ
ンタメチレンアジパミド樹脂が得られることを確認し
た。また、このようなポリペンタメチレンアジパミド樹
脂は、環状アミン含量が1.5wt%以下であり、溶融
滞留時の相対粘度保持率が大きく、滞留安定性に優れる
ことを確認した。
パミド樹脂中に含まれる環状アミンを1.5wt%以下
に制御することにより、滞留安定性、耐熱性に優れたポ
リペンタメチレンアジパミド樹脂を得ることができる。
Claims (10)
- 【請求項1】1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸を
加熱重縮合して得られるポリペンタメチレンアジパミド
樹脂であって、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の
昇温速度で、融点+25℃の温度に昇温した際に現れる
吸熱ピーク面積の70%以上が240℃以上であること
を特徴とするポリペンタメチレンアジパミド樹脂。 - 【請求項2】前記ポリペンタメチレンアジパミド樹脂中
に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジンとピ
ペリジンの総含有量が1.5wt%以下であることを特
徴とする請求項1記載のポリペンタメチレンアジパミド
樹脂。 - 【請求項3】前記ポリペンタメチレンアジパミド樹脂の
融点+20℃の温度で30分間、溶融滞留処理した後の
硫酸相対粘度保持率が95%以上であることを特徴とす
る請求項1または2記載のポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂。 - 【請求項4】1,5−ジアミノペンタンが、リジン脱炭
酸酵素を有する微生物、リジン脱炭酸酵素活性の向上し
た組換え微生物、またはその抽出物を用いて、リジンか
ら産出されたものであることを特徴とする請求項1〜3
いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミド樹脂。 - 【請求項5】1,5−ジアミノペンタン中の2,3,
4,5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含有量
が0.5wt%以下であることを特徴とする請求項1〜
4いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミド樹脂。 - 【請求項6】1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の
塩および水の混合物を、最高到達温度が200〜280
℃となる条件で加熱重縮合してなることを特徴とする請
求項1〜5いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミ
ド樹脂。 - 【請求項7】1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸を
加熱重縮合するポリペンタメチレンアジパミド樹脂の製
造方法であって、前記ポリペンタメチレンアジパミド樹
脂中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジン
とピペリジンの総含有量を1.5wt%以下とすること
を特徴とするポリペンタメチレンアジパミド樹脂の製造
方法。 - 【請求項8】1,5−ジアミノペンタンが、リジン脱炭
酸酵素を有する微生物、リジン脱炭酸酵素活性の向上し
た組換え微生物、またはその抽出物を用いて、リジンか
ら産出されたものであることを特徴とする請求項7記載
のポリペンタメチレンアジパミド樹脂の製造方法。 - 【請求項9】1,5−ジアミノペンタン中の2,3,
4,5−テトラヒドロピリジンとピペリジンの総含有量
を0.5wt%以下とすることを特徴とする請求項7ま
たは8記載のポリペンタメチレンアジパミド樹脂の製造
方法。 - 【請求項10】1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸
の塩および水の混合物を、最高到達温度が200〜28
0℃となる条件で加熱重縮合することを特徴とする請求
項7〜9いずれか記載のポリペンタメチレンアジパミド
樹脂の製造方法。
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