JP2003213331A - Fe基軟磁性合金の製造方法及びFe基軟磁性合金 - Google Patents

Fe基軟磁性合金の製造方法及びFe基軟磁性合金

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JP2003213331A
JP2003213331A JP2002016473A JP2002016473A JP2003213331A JP 2003213331 A JP2003213331 A JP 2003213331A JP 2002016473 A JP2002016473 A JP 2002016473A JP 2002016473 A JP2002016473 A JP 2002016473A JP 2003213331 A JP2003213331 A JP 2003213331A
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soft magnetic
heat treatment
based soft
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Akinobu Kojima
章伸 小島
Takamitsu Shibuya
隆光 渋谷
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Alps Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微結晶合金の熱処理条件を最適にして自己発
熱を少なくし、軟磁気特性に優れ、低損失で低保磁力の
軟磁性合金を提供する。 【解決手段】 非晶質相を主相とする薄帯状または粉末
状の急冷体に熱処理を施して結晶化し、bcc-Feを
少なくとも含む結晶粒を析出させて微細結晶組織を形成
するFe基軟磁性合金の製造方法であり、前記急冷体
を、結晶化開始温度より高く、かつ化合物相を実質的に
形成しない温度まで加熱する熱処理を少なくとも2回以
上行うことを特徴とするFe基軟磁性合金の製造方法を
提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ヘッド、トラ
ンス、チョークコイル等に用いられるFe基軟磁性合金
の製造方法及びFe基軟磁性合金に関するものであり、
特に、鉄損及び保磁力が低く、軟磁気特性にすぐれたも
のに関する。
【0002】
【従来の技術】柱上トランス、磁気ヘッド、チョークコ
イル等に用いられる軟磁性合金に対して一般的に要求さ
れる特性は以下の通りである。 (a)飽和磁束密度が高いこと。(b)透磁率が高いこと。
(c)低保磁力であること。(d)鉄損が低いこと。(e)薄
い形状が得られやすいこと。
【0003】従って柱上トランス用の磁心材料あるいは
磁気ヘッドを製造する場合、これらの観点から種々の合
金系において材料研究がなされている。従来、前述の用
途に対しては、センダスト、パーマロイ、けい素鋼等の
結晶質合金が用いられ、最近ではFe基またはCo基の
非晶質合金も使用されるようになっている。
【0004】然るに柱上トランスの場合、より一層の小
型化、高性能化が要求されているため、より軟磁気特性
に優れ、低損失な特性が要求されるなど、高性能の磁性
材料が望まれている。また、磁気ヘッドの場合、高記録
密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するため
に、より高飽和磁束密度で高性能の磁気ヘッド用の磁性
材料が望まれている。
【0005】ところが、前記のセンダストは、軟磁気特
性には優れるものの、飽和磁束密度が約1.1T(テス
ラ)と低い欠点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特
性に優れる合金組成においては、飽和磁束密度が約0.
8Tと低い欠点があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高い
ものの軟磁気特性に劣る欠点がある。一方、非晶質合金
において、Co基合金は軟磁気特性に優れるものの飽和
磁束密度が1T程度と不十分である。また、Fe基合金
は飽和磁束密度が高く、1.5Tあるいはそれ以上のも
のが得られるが、軟磁気特性が不十分な傾向がある。ま
た、非晶質合金は熱安定性が十分ではなく、未だ未解決
の面がある。前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁
気特性を兼備することは難しい。また、トランス用の軟
磁性合金として重要な特性は、鉄損が小さいこと、飽和
磁束密度が高いことであるが、従来、一部の用途として
使用されているトランス用のFe系のアモルファス合金
の鉄損は、周波数50Hz、励磁磁界1.3Tにおいて
0.2〜0.3W/kg程度であり、鉄損をさらに低くし
たいという要望があった。また、トランスの小型化のた
めに飽和磁束密度を更に高めたいという要望もあった。
【0006】以上のような背景から本出願人はFe基微
結晶合金を開発し、高い飽和磁束密度と高い透磁率を両
立した合金を提供した。これらの特許に記載されたFe
基軟磁性合金の1つは、FeZBMなる組成系(ZはN
i,Coのうち1種以上の元素、MはTi、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種以上の
元素。)の合金であり、飽和磁束密度が1.5T以上で
あり、1kHzにおける実効透磁率が10000以上の
ものであった。
【0007】また、これらの特許に記載されたFe基軟
磁性合金の他の1つは、FeZBMT’なる組成系(Z
はNi,Coのうち1種以上の元素、MはTi、Zr、
Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種以上
の元素、T’はCu、Ag、Au、Pd、Ptから選ば
れた1種以上の元素。)の合金であり、飽和磁束密度が
1.5T以上であり、1kHzにおける実効透磁率が2
0000以上のものであった。
【0008】これらのFe基微結晶合金は、優れた透磁
率と高い飽和磁束密度を両立させることができ、高い硬
度と耐摩耗性も兼ね備えたものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これらのFe基微結晶
合金は、例えば、合金溶湯を急冷して非晶質相を主相と
する薄帯状又は粉末状の急冷体とし、この急冷体に熱処
理を施して非晶質相を結晶化させることで、組織中に微
細な結晶粒を析出させることにより得られる。この合金
の製造方法においては、結晶粒の過剰な粒成長を防止し
て微結晶組織を形成するために、特に熱処理温度の厳重
な管理が必要である。ところで、非晶質相は非平衡相で
あり、熱処理等で温度を加えると安定相である結晶質相
に変化するが、この相変化の際にエネルギー放出に伴う
自己発熱が観察される。このため、熱処理時における急
冷体の温度が、この自己発熱によって上昇し、その結果
急冷体の温度が熱処理の設定温度よりも高くなる場合が
あり、結晶粒の肥大化や化合物相の析出等が生じてFe
基微結晶合金の磁気特性が低下するおそれがあった。ま
た、この自己発熱量はFe基微結晶合金の体積に比例す
るため、柱上トランス等の比較的大きな磁心を製造する
場合は、特に自己発熱量が大きくなり、このため急冷体
の温度が熱処理の設定温度よりも数十℃程度高くなって
最適な熱処理温度から外れてしまい、磁気特性が大きく
劣化するおそれがあった。
【0010】そこで、Fe基軟磁性合金について本発明
者らが諸特性を更に改善するべく研究開発を進めた結
果、本願発明に到達した。即ち本発明は上記事情に鑑み
てなされたものであり、微結晶合金(ナノ結晶合金)を
製造するに際し、微結晶を析出させる際の熱処理の条件
を最適にすることで自己発熱の影響を少なくし、これに
より軟磁気特性に優れ、かつ低損失で低保磁力の軟磁性
合金を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明のFe基
軟磁性合金の製造方法は、合金溶湯を急冷して非晶質相
を主相とする薄帯状または粉末状の急冷体とし、該急冷
体に熱処理を施して結晶化することにより、bcc-F
eを少なくとも含む平均結晶粒径50nm以下の結晶粒
を析出させて微細結晶組織を形成するFe基軟磁性合金
の製造方法であり、前記急冷体を、結晶化開始温度より
高く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度まで加熱
する熱処理を少なくとも2回以上行うことを特徴とす
る。上記の製造方法において、“結晶化開始温度より高
く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度”とは、具
体的には、前記非晶質相の結晶化開始温度をTx(K)
としたとき、Tx(K)以上(Tx+200)(K)以下
の範囲である。特に1回目の熱処理の温度をTx(K)
以上(Tx+100)(K)以下の範囲とし、2回目以
降の温度を(Tx+100)(K)以上(Tx+200)
(K)以下の範囲とすることが好ましい。係るFe基軟
磁性合金の製造方法によれば、急冷体を“結晶化開始温
度より高く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度”
で2回以上にわたって熱処理するので、結晶化に伴う自
己発熱による急冷体の過剰な温度上昇を防止することが
でき、これにより結晶粒の肥大化が防止し、軟磁気特性
に優れ、低保磁力で低損失なFe基軟磁性合金を製造す
ることができる。
【0012】また本発明のFe基軟磁性合金の製造方法
は、合金溶湯を急冷して非晶質相を主相とする薄帯状又
は粉末状の急冷体とし、該急冷体に熱処理を施して結晶
化することにより、bcc-Feを少なくとも含む平均
結晶粒径50nm以下の結晶粒を析出させて微細結晶組
織を形成するFe基軟磁性合金の製造方法であり、前記
急冷体を加熱して前記非晶質相の結晶化に伴う発熱が開
始した時点で1回目の熱処理を終了し、該発熱の終了後
に再び前記急冷体を昇温して2回目の熱処理を行うこと
を特徴とする。上記の製造方法において、1回目の熱処
理の温度をTx(K)以上(Tx+100)(K)以下の
範囲とし、2回目の温度を(Tx+100)(K)以上
(Tx+200)(K)以下の範囲とすることが好まし
い。係るFe基軟磁性合金の製造方法によれば、非晶質
相の結晶化に伴う自己発熱が開始した時点で1回目の熱
処理を終了するので、急冷体の過剰な温度上昇を防止す
ることができ、これにより結晶粒の肥大化を防止して、
軟磁気特性に優れるとともに低保磁力かつ低損失Fe基
軟磁性合金を製造することができる。また1回目の熱処
理の後に2回目の熱処理を行うので、非晶質相の結晶化
を充分に行うことができ、組織全体を均一な微結晶組織
にすることができる。
【0013】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法は、先に記載の製造方法であり、前記の各熱処理を、
結晶化開始温度より高く、かつ化合物相を実質的に形成
しない温度で行うことを特徴とする。係るFe基軟磁性
合金の製造方法によれば、熱処理を結晶化開始温度より
高く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度で行うの
で、非晶質相の結晶化が充分に行なわれて組織全体を均
一な微細結晶組織にできるとともに、磁気特性に悪影響
を与える化合物相の形成を抑制してFe基軟磁性合金の
軟磁気特性をより向上できる。
【0014】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法は、先に記載の製造方法であり、前記の各熱処理は、
昇温工程と降温工程を少なくとも含むことを特徴とす
る。係るFe基軟磁性合金の製造方法によれば、熱処理
に昇温工程と降温工程とが含まれるので、非晶質相の結
晶化に伴う発熱が開始した時点で急冷体への加熱を中止
して昇温工程を終了させ、引き続き降温させることがで
き、急冷体の過剰な温度上昇を防止することができ、こ
れにより結晶粒の肥大化を防止して、軟磁気特性に優れ
るとともに低保磁力かつ低損失なFe基軟磁性合金を製
造することができる。
【0015】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法は、先に記載の製造方法であり、1回目の熱処理にお
ける熱処理温度を、2回目以降の熱処理における熱処理
温度より低くすることを特徴とする。係るFe基軟磁性
合金の製造方法によれば、1回目の熱処理温度を2回目
より低くすることで、自己発熱による急冷体の過剰な温
度上昇を防止することができ、これにより結晶粒の肥大
化を防止して、軟磁気特性に優れるとともに低保磁力か
つ低損失なFe基軟磁性合金を製造することができる。
【0016】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法では、前記急冷体が薄帯とした場合の厚さが5〜10
0μmの範囲であることが好ましく、5〜30μmの範
囲であることがより好ましい。
【0017】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法は、先に記載の製造方法であり、前記の各熱処理時に
おける前記急冷体の温度分布のバラツキを50℃以内に
することを特徴とする。係るFe基軟磁性合金の製造方
法によれば、熱処理時における前記急冷体の温度分布の
バラツキを50℃以内とするので、急冷体の組織構造が
均一となり、急冷体の全体を均一な微結晶組織とするこ
とができる。
【0018】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法は、先に記載の製造方法であり、1回目の熱処理時
に、前記急冷体を放熱用の熱伝導体に接触させて熱処理
することを特徴とする。係るFe基軟磁性合金の製造方
法によれば、1回目の熱処理時に、前記急冷体を放熱用
の熱伝導体に接触させるので、非晶質相の結晶化により
発生した熱を素早く当該熱伝導体に放出させることがで
き、これにより急冷体の過剰な温度上昇を防いで結晶粒
の肥大化を防止し、軟磁気特性に優れるとともに低保磁
力かつ低損失なFe基軟磁性合金を製造することができ
る。
【0019】また、本発明のFe基軟磁性合金の製造方
法では、このFe基軟磁性合金が、Feを含み、Fe、
Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素Tと、
Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ば
れた1種または2種以上の元素Mと、Sn、Sのうちの
1種または2種の元素Qを具備してなるものが好まし
い。また、このFe基軟磁性合金が更にSi、Al、G
e、Ga、P、C、Cu、Y、希土類元素のうちの1種
または2種以上の元素Xを含むものであってもよい。
【0020】次に本発明のFe基軟磁性合金は、先のい
ずれかに記載の製造方法により製造されたものであるこ
とを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。本発明に係るFe基軟磁性合金
は、所定の組成の非晶質合金あるいは非晶質相を含む結
晶質合金を溶湯から急冷することにより得る工程と、結
晶化開始温度より高く、かつ化合物相を実質的に形成し
ない温度まで加熱する熱処理を少なくとも2回以上行っ
て非晶質相の一部または大部分を結晶化し、微細な結晶
粒を析出させる熱処理工程とによって通常得ることが出
来る。
【0022】本実施の形態に係るFe基軟磁性合金の組
成の一例として、次式で示される組成を例示できる。 Txyzt ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%であ
る。
【0023】また、本実施の形態に係るFe基軟磁性合
金の組成の別の例として、次式で示される組成を例示で
きる。 Txyztu ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、XはSi、Al、Ge、Ga、P、C、C
u、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<
u≦5原子%である。
【0024】本発明に係る合金において必須成分として
のBには、本発明合金の非晶質形成能を高める効果、お
よび熱処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合
物相の生成を抑制する効果があると考えられ、このため
B添加は必須である。非晶質形成能からみて、Bの含有
量は0.5原子%以上、18原子%以下が必要である
が、急冷時に非晶質相を確実に得るとともに良好な軟磁
気特性が得られることを考慮すると0.5原子%以上、
9原子%以下の範囲がより好ましい。
【0025】本発明において、急冷により非晶質相を得
やすくするためには、非晶質形成能の高いZrまたはH
fのいずれかを含むことが好ましく、またZr、Hfは
その一部を他の4A〜6A族元素のうち、Ti、V、N
b、Ta、Mo、Wから選択される1種または2種以上
の元素と置換することが出来る。前記添加元素のうち、
Zr、Hf、Nbは、合金溶湯から急冷した場合に非晶
質相を得るために重要な元素であり、この非晶質相から
熱処理によりFeの微結晶粒を析出させて飽和磁束密度
Bsが1.5T(テスラ)以上、1kHzにおける実効
透磁率μeが36000以上を両立するために重要であ
る。ZrとHfのいずれか、またはこれらに加えてNb
を添加する場合、4原子%以上、9原子%以下の範囲で
これらの元素を添加しないと必要量の非晶質相を得るこ
とが難しい。また、前記元素の中においてもNbは融点
の高い金属元素であって熱的に安定であり、製造時に酸
化しずらいものであるので、Zr、Hf含有量を少なく
してNb含有量を多くすることでZr、Hfを多く含む
組成系のものより製造条件を緩くすることが可能とな
り、元素MをNbのみとすることが最も好ましく、さら
に、良好な磁気特性を持つことが可能となるのに加え
て、大気中での製造も容易となる。
【0026】次に、本発明合金における主成分である元
素Tの含有量を示す組成比xは75原子%以上、93原
子%以下である。これは、bが93原子%を越えると高
い透磁率が得られないためであるが、飽和磁束密度1T
以上を得るためには、bが75原子%以上必要であり、
飽和磁束密度1.5T以上を確実に得るためには、他の
添加元素の添加範囲を満たした上においてできるだけ多
く含有させることが必要であり、他の添加元素の量も鑑
みると84原子%を超える量を含有させることで1.5
T以上の飽和磁束密度を容易に得ることができる。元素
TはFeを主成分もしくはFeのみとするのが低コスト
で実施できる点において有利であり、飽和磁束密度を高
くすることができる点で好ましい。Feの一部は磁歪等
の調整のためにCo、Niの1種または2種で置換して
も良い。この場合、CoまたはNiの添加量はFeの2
0%以下が好ましく、5%以下とすることがより好まし
い。この範囲を超えてCoまたはNiをFeに対して置
換すると、透磁率が劣化するため、好ましくない。
【0027】本発明に係る合金においては、先の元素に
加えてSとSnのうちの1種または2種を0<(S,S
n)≦1.0原子%の範囲で含有している。これらの元
素は熱処理後合金中に均一に分散し、これらの元素を含
有していることで先の組成の軟磁性合金の諸特性に加
え、即ち、高い飽和磁束密度を維持したまま、高い透磁
率を有した上に、鉄損が低いという特徴を得ることがで
きる。また、非晶質相の状態から熱処理により微結晶を
析出させる際の熱処理温度、即ち、アニール温度を従来
の組成系のものよりも、より広い範囲に設定して、同等
あるいはそれ以上の高い磁気特性を得ることができるよ
うになり、アニール温度依存性を広くすることができ
る。以上の背景において、SとSnの含有量において、
先の範囲の中でも0.05原子%以上、0.8原子%以下
の範囲が好ましく、0.05原子%以上、0.3原子%以
下の範囲がより好ましく、0.05原子%以上、0.2原
子%以下の範囲が最も好ましい。また、本発明に係る合
金においては、X元素の添加により溶湯から急冷してF
e基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化を容易とし、
この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して軟磁気
特性が向上する。また、元素xの中で特にYを含む希土
類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、E
u、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu
のうちの1種または2種以上)0.01〜0.4原子%、
好ましくは0.01〜0.1原子%の範囲で添加すると、
透磁率の向上に特に効果があり、希土類元素の中でもL
aは最も好ましい添加元素である。
【0028】以上、本発明のFe基軟磁性合金に含まれ
る合金元素の限定理由について説明したが、その他、
H、N、O等の不可避的不純物については所望の特性が
劣化しない程度に含有していても良いのは勿論である。
更に本発明のFe基軟磁性合金は、上記の組成に限られ
ず、SやSnが無添加のものを用いても良い。
【0029】先の組成のFe基軟磁性合金を製造するた
めには、製造方法の一例として、回転している金属製の
ロールに目的の組成の合金溶湯を噴出させて薄帯状(リ
ボン状)とする、単ロール法を採用することができる。
この単ロール法を採用する場合、合金溶湯の急冷を不活
性ガス雰囲気中あるいは真空雰囲気中で行っても良く、
大気雰囲気中で行っても良い。また、大気雰囲気中で行
う場合には、溶湯を急冷する際に、使用するるつぼのノ
ズルの先端部にのみ不活性ガスを供給し、ノズルとその
近傍における合金溶湯及び薄帯(リボン)の酸化を防止
しつつ、ノズルから冷却ロール等の冷却面に溶湯を噴出
させることにより行っても良い。
【0030】次に、Fe基軟磁性合金として薄帯ではな
く、粉末の状態のFe基軟磁性合金を得るには、不活性
ガス雰囲気中に溶湯を粒状あるいは霧状などに吹き出し
て急冷し、非晶質の粉末を得るアトマイズ法を採用して
も良い。このアトマイズ法によれば、目的の組成比を有
し、急冷により非晶質相とされた合金の粉末を得ること
ができ、この合金の粉末に後述する熱処理を施すことで
粉末状態のFe基軟磁性合金を得ることができる。な
お、得られた非晶質相の粉末を圧密して目的の形状とし
てからプラズマ焼結法などにおいて熱処理しながら結晶
化して固化する方法を採用し、目的のコア形状に加工す
るなどの方法を採用しても良いのは勿論である。
【0031】ついで、先の如く作製した薄帯または粉末
を所定の温度に加熱後冷却する熱処理を施して結晶化す
ることにより、上記薄帯の非晶質相の一部または全部を
結晶化して、非晶質相と、平均粒径50nm以下の微細
なbcc構造の結晶粒からなる微細結晶相とが混合した
組織を得ることができ、目的とするFe基軟磁性合金を
得ることができる。なお、前記組成比のFe基軟磁性合
金において元素Tの主成分をFeとした場合は、平均粒
径50nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒から
なる微細結晶相が主に析出する。
【0032】熱処理により平均結晶粒径50nm以下の
微細なbcc構造の結晶粒(Feの結晶粒)からなる微
細結晶組織が析出するのは、急冷体が非晶質相を主体と
する組織となっており、これを加熱すると、ある温度以
上で平均結晶粒径が30nm以下のbccFeを主成分
とする体心立方構造(bcc構造)の結晶粒からなる微
細結晶相が析出するからである。なお、このとき、非平
衡相である非晶質相が、安定相である結晶質相に変化す
る際のエネルギー放出に伴って自己発熱が観察される。
【0033】本実施形態の熱処理工程では、前記急冷体
を、結晶化開始温度より高く、かつ化合物相を実質的に
形成しない温度まで加熱する熱処理を少なくとも2回以
上行う。特に、急冷体を加熱して非晶質相の結晶化に伴
う自己発熱が開始した時点で1回目の熱処理を終了し、
該発熱の終了後に再び前記急冷体を昇温して2回目の熱
処理を行うことが好ましい。また、1回目の熱処理が終
了してから急冷体を室温付近まで降温させ、再び昇温し
て2回目の熱処理を行っても良い。
【0034】具体的な熱処理温度は、前記非晶質相の結
晶化開始温度をTx(K)としたとき、Tx(K)以上
(Tx+200)(K)以下の範囲である。特に1回目
の熱処理の温度をTx(K)以上(Tx+100)(K)
以下の範囲とし、2回目以降の温度を(Tx+100)
(K)以上(Tx+200)(K)以下の範囲とするこ
とが好ましい。尚、結晶化開始温度は、合金組成にもよ
るが、650〜900Kの範囲である。また、化合物相
を実質的に形成しない温度とは、Fe3B等の軟磁気特
性を悪化させる化合物相が析出しない温度であり、合金
の組成によるが1013K(740℃)〜1083K
(810℃)程度であり、急冷体の温度がこの範囲に到
達しないようにすることが好ましい。ただし、軟磁気特
性を悪化させる化合物相の析出は、少量であれば影響が
少ないので、一部に化合物相の析出があっても差し支え
なく、bcc構造のFeの結晶相の一部に磁気特性を劣
化させない程度に規則格子を含んでいても良い。
【0035】1回目の熱処理では、急冷体を所定の昇温
速度で昇温し、非晶質相の結晶化に伴う自己発熱が開始
した時点で昇温を停止して降温する。自己発熱が開始し
た時点で昇温を停止すれば急冷体の温度が過剰に高くな
ることがなく、あとは自己発熱による熱エネルギーで非
晶質相を結晶化させることができる。結晶化に伴う自己
発熱が開始してもなお昇温を継続した場合は、昇温によ
る熱と自己発熱による熱とが急冷体内部に蓄積され、急
冷体の温度が熱処理の設定温度を超えるおそれがあり、
設定温度を超えた状態で熱処理を続けると結晶粒の肥大
化や化合物相の析出が起こって軟磁気特性が低下するお
それがある。
【0036】結晶化による自己発熱の開始時点を検知す
る手段としては、例えば、熱処理炉内部の雰囲気温度
(設定温度)と急冷体自体の温度を同時に連続して計測
し、急冷体の温度上昇率が設定温度の上昇率よりも高く
なった時点を検出することで検知できる。即ち、結晶化
する前では、急冷体は熱処理炉内部の雰囲気とほぼ同じ
割合で温度上昇するが、結晶化が開始されると自己発熱
によって急冷体自体が温度上昇し、温度上昇率が雰囲気
の上昇率より高くなるためである。
【0037】結晶化が始まったならばすぐに昇温を停止
して降温させることが好ましい。結晶化開始後に温度を
保持することなく直ちに降温させれば、例え自己発熱量
が大きい場合でも、急冷体自体の温度が化合物相の析出
温度まで達するおそれがない。また、熱処理は急冷体を
結晶化開始温度(Tx)まで必ず昇温する必要がある。
急冷体が結晶化開始温度(Tx)まで到達しないと結晶
化自体が起きず、急冷体を結晶化させることができなく
なるためである。尚、1回目の熱処理は、、前記急冷体
を放熱用の熱伝導体に接触させて行うことが好ましい。
こうすることで非晶質相の結晶化により発生した熱を素
早く当該熱伝導体に放出させ、急冷体の過度な温度上昇
を防止できる。
【0038】次に2回目以降の熱処理では、急冷体を所
定の昇温速度で昇温して結晶化開始温度より高くかつ化
合物相を実質的に形成しない温度まで加熱し、必要に応
じてこの温度を所定の時間保持し、最後に降温して冷却
する。この2回目の熱処理により、1回目の熱処理で結
晶化した組織を更に安定化させ、平均粒径50nm以下
の結晶粒を析出させることができる。1回目の熱処理で
急冷体の結晶化がほぼ終了しているので、2回目以降の
熱処理中に急冷体の自己発熱が発生するおそれがなく、
このため熱処理の雰囲気の温度上昇率と急冷体自体の温
度上昇率をほぼ一致させることができる。即ち、熱処理
の雰囲気温度を制御することで急冷体の温度を正確に制
御でき、これにより常に最適な温度で急冷体の熱処理を
行うことができる。
【0039】なお、1回目の熱処理の熱処理温度を2回
目以降の熱処理温度より低くすることが好ましい。即ち
2回目の熱処理温度を1回目より高くすることが好まし
い。これにより、組織の大部分に平均粒径50nm以下
の結晶粒が析出させることができ、Fe基軟磁性合金の
軟磁気特性を更に向上することができる。
【0040】また、各々の熱処理時における急冷体の温
度分布のバラツキを50℃以内にすることが好ましい。
急冷体における温度の分布が最も大きい箇所は、通常、
急冷体表面と急冷体中心部であり、各箇所の温度差を5
0℃以内にすれば、急冷体の組織全体を均一な条件で熱
処理することができ、これにより均一な微結晶組織を形
成することができる。
【0041】各熱処理の昇温速度は、20〜200K/
分の範囲が好ましく、40〜200K/分の範囲がより
好ましい。昇温速度が遅いと製造時間が長くなるので昇
温速度は速い方が好ましいが、一般的には加熱装置の性
能上、200K/分程度が上限とされる。また、2回目
以降の熱処理において、急冷体を上記温度に保持する時
間は、0〜180分間とすることができ、合金の組成に
よっては0分、すなわち、昇温後直ちに降温させて保持
時間無しとしても、目的とする微結晶の析出効果を得る
ことができる。また、保持時間は180分より長くして
も磁気特性は向上せず、逆に製造時間が長くなり生産性
が悪くなるので好ましくない。
【0042】以下に、急冷薄帯(急冷リボン)を製造す
る一具体例として、大気雰囲気中においてるつぼのノズ
ル先端部のみに不活性ガスを供給しながら合金溶湯を急
冷する装置と方法について説明する。図1は、大気中で
急冷薄帯を製造する場合に用いて好適な合金薄帯製造装
置の一例を示す概略構成図である。この例の合金薄帯製
造装置は、冷却ロール1と、合金溶湯を保持するるつぼ
3の下端部に連接された溶湯ノズル2と、溶湯ノズル2
及びるつぼ3の外周に捲回されて配置された加熱コイル
4と、不活性ガスを溶湯ノズル2の少なくとも先端部に
フローするためのガスフロー供給手段である第1〜第3
のガスフローノズル51、52、53、及び、溶湯ノズ
ル2の先端部周囲に配置された内向き孔付きの環状管か
らなるガスフローパイプ54と、冷却ロール1の冷却面
1aに向けて不活性ガスをフローするガスフロー供給手
段である第5のガスフローノズル55から基本的に構成
されている。
【0043】冷却ロール1は、図示しないモータにより
矢印(反時計)方向へ回転駆動される。冷却ロール1の
冷却面1aは、炭素鋼、例えばJISS45CなどのF
e基合金、または真鍮(Cu−Zn合金)、あるいは純
銅等の金属材料で構成することが望ましい。冷却ロール
1の冷却面1aが真鍮あるいは純銅であると、熱伝導性
が高いことから、冷却効果が高く、溶湯の急冷に適して
いる。冷却効果を向上させるためには、内部に水冷構造
を設けることが望ましい。
【0044】図1において、るつぼ3内で溶解された合
金溶湯は、下端部の溶湯ノズル2から冷却ロール1の冷
却面1aに向けて噴出される。るつぼ3の上部は、供給
管7を介してArガスなどのガス供給源8に接続される
と共に、供給管7には、圧力調整弁9と電磁弁10とが
組み込まれ、供給管7において圧力調整弁9と電磁弁1
0との間には圧力計11が組み込まれている。また、供
給管7には補助管12が並列的に接続され、補助管12
には圧力調整弁13、流量調整弁14、流量計15が組
み込まれている。従って、ガス供給源8からるつぼ3内
にArガスなどの不活性ガスを供給し、溶湯にガス圧を
作用させ、溶湯ノズル2から溶湯を冷却ロール1に向け
て噴出して急冷できるように構成されている。
【0045】図1に示す装置を用いて合金薄帯を製造す
る時には、大気雰囲気中にて冷却ロール1を高速で回転
させつつ、その頂部付近、もしくは、頂部よりやや前方
に近接配置した溶湯ノズル2から上記のいずれかの組成
の合金溶湯を噴出することにより、冷却ロール1の表面
で溶湯を急速冷却して固化させつつ冷却ロール1の回転
方向に帯状となして引き出す。また、図1に示すよう
に、冷却ロール1の回転方向前側下方には、薄帯誘導板
70とスクレイパー72とが備えられている。冷却面1
aにおいて溶湯が冷却されて形成された合金薄帯は、ス
クレイパー72により冷却ロール1から剥離されて薄帯
誘導板70側に案内される。従って、スクレイパー72
の近傍が、冷却面1aから合金薄帯が剥離する位置とな
る。
【0046】次に、先の第1〜第4のガスフローノズル
51、52、53、54には、第1のガスフローノズル
51について例示するように、圧力調整弁16が組み込
まれた接続管17を介してガス供給源18が接続されて
いる。また、先の第1〜第4のガスフローノズル51、
52、53、54を、単独で用いることは勿論、複数組
み合わせて使用することができ、溶湯ノズル2から冷却
ロール1に溶湯を噴出させて急冷する部分(パドル部
分)の周囲の酸素濃度を低減させて急冷される溶湯が不
要に酸化しないように雰囲気を調整することができる。
【0047】図1に示した合金薄帯製造装置を用いて本
発明に係る軟磁性合金を製造するには、先の合金薄帯製
造装置を室温程度の大気雰囲気中に設置し、溶湯ノズル
(溶湯射出用ノズル)2の少なくとも溶湯吹き出し部先
端部分21に第1〜第4のガスフローノズル51〜54
からそれぞれ不活性ガスをフローするとともに冷却ロー
ル1の冷却面1aに向けて第5のガスフローノズル55
から不活性ガスをフローしつつ、上記のいずれかで示さ
れる組成式を示す合金溶湯を溶湯ノズル2から冷却ロー
ル1の冷却面1aに射出して急冷し、非晶質を主体とす
る合金薄帯を得る。ついで、作製した合金薄帯を上述し
た熱処理工程において熱処理(アニール処理)すること
により、上記合金薄帯の非晶質相の少なくとも一部ある
いはほぼ全部を結晶化し、非晶質相と、平均粒径50n
m以下の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの結晶
粒)からなる微細結晶相とが混合した組織を得、目的と
するFe基軟磁性合金を得ることができる。
【0048】ここで、先に示す組成の軟磁性合金を製造
する場合、Snを含む組成系の軟磁性合金においては、
目的の組成となるように合金溶湯を作成すれば良い。即
ち、目的の組成となるような組成の母合金(インゴッ
ト)をアーク溶解法等の常法で作成し、この母合金をる
つぼ2に投入してこの母合金を加熱溶解し、急冷法に供
すれば良い。しかし、硫黄(S)を含む組成系の軟磁性
合金を製造する場合、母合金(インゴット)中に硫黄を
含有させておくと、母合金をアーク溶解法等の常法によ
り溶製する際の加熱溶融処理時に融点の低い硫黄が蒸発
し、実際に合金溶湯の急冷操作を行う時点において合金
溶湯中の硫黄含有量が目的の組成比よりも少なくなって
しまうおそれが高い。
【0049】このため、本発明組成系において特に硫黄
(S)を含む組成系の軟磁性合金を製造する場合、目的
量の硫黄を含まない状態の組成の母合金(インゴット)
を一端作成し、この母合金を合金薄帯製造装置のるつぼ
3にセットする際に目的量の硫黄粉末等の硫黄原料を添
加してから溶解し、溶解後なるべく早い時間、できれば
直ちに合金溶湯の噴出作業を行って急冷処理を行えば良
い。この操作によって揮発しやすい硫黄の減量を無く
し、目的の量の硫黄をFe基軟磁性合金中に含ませるこ
とができる。ただし、硫黄Sの蒸発量を正確に制御でき
るのであれば、硫黄Sは予め母合金に投入して製造して
も良いのは勿論である。
【0050】以上の製造方法により得られた目的の組成
比のFe基軟磁性合金は、0.12W・kg-1以下の低
い鉄損を示す優れたものとなる。次に本発明のFe系軟
磁性合金について実施例をもって更に詳細に説明する。
【0051】
【実施例】(実験例1)以下に示す合金は片ロール液体
急冷法により作成した。即ち、1つの回転している鋼製
ロール上におかれた石英ノズルから、溶融金属(射出温
度:1220℃)をアルゴンガスの圧力(射出圧0.0
92MPa:差圧)により回転中のロール(ロール周
速:70m/s)上に、ノズル先端部とロール表面との
ギャップを0.2mmに設定して噴出させ、合金溶湯を
急冷して目的の組成比の合金薄帯を得た。るつぼ先端部
の石英ノズルのスリット状の開口部の幅と厚さは、15
×0.3mmであり、以上のように作成した合金薄帯の
幅は約15mmであり、厚さは約20μmであった。ま
た、合金組成は、Fe84Nb6.59.5及びFe84Nb6.
58.51の2種類であった。
【0052】得られた各合金薄帯を後述する熱処理条件
でアニール処理し、軟磁性合金薄帯試料を得た。軟磁性
合金薄帯試料の透磁率は、薄帯試料を加工して外径10
mm、内径6mmのリング状とし、これを15枚積層して重
量0.1gの積層コアとした後に巻線したものについ
て、インダクタンス法により測定した。実効透磁率(μ
e)の測定条件は10mOe、1kHzとした。また各
試料の保磁力(Hc)及び鉄損(W)は、直流B−Hルー
プトレーサにより測定し、鉄損(W)の測定条件は測定
周波数50Hz、励磁磁界Bmを1.33Tとした。
【0053】各薄帯試料について、各種磁気特性の熱処
理温度及び保持時間の依存性と、昇温速度及び熱処理温
度の依存性を調査した。熱処理温度及び保持時間の依存
性は、熱処理回数を1回とし、3K/秒の昇温速度で熱
処理温度(設定温度)900〜950Kまで昇温し、3
00〜1800秒間保持する条件で行った。結果を図2
及び図3に示す。図2は組成がFe84Nb6.59.5のも
の、図3は組成がFe84Nb6.58.51のものであ
る。また昇温速度及び熱処理温度の依存性は、熱処理回
数を1回とし、0.2〜1.2K/秒の昇温速度で熱処
理温度(設定温度)875〜950Kまで昇温し、18
0秒間保持する条件で行った。結果を図4及び図5に示
す。図4は組成がFe84Nb6.59.5のもの、図5は組
成がFe84Nb6.58.51のものである。尚、図2〜
5において、プロットの添数字が各特性の値である。
【0054】図2及び図3に示すように、保持時間が長
くなるにつれて、透磁率が減少するとともに保磁力(H
c)及び鉄損(W)が増大しており、磁気特性が劣化し
ていることが分かる。これは、保持時間が長くなるにつ
れて結晶粒の肥大化若しくは化合物相の析出が起きたた
めと考えられる。よって良好な磁気特性を得るには保持
時間を短くするのが好ましいといえる。具体的には保持
時間を1800秒以下にするのが好ましいといえる。ま
た図4及び図5に示すように、昇温速度が低下するにつ
れて、透磁率が減少するとともに保磁力(Hc)及び鉄
損(W)が増大しており、磁気特性が劣化していること
が分かる。これは、昇温速度が低下すると結果的に加熱
時間が長くなり、結晶粒の肥大化若しくは化合物相の析
出が起きたためと考えられる。よって良好な磁気特性を
得るには昇温速度を高くするのが好ましいといえる。ま
た、図2〜図5に示すように、熱処理温度が900〜9
50K(627〜677℃)の範囲で透磁率、保磁力、
鉄損のいずれも良好な値を示していることが分かる。
【0055】また、図6には、Fe84Nb6.59.5、F
84Nb6.58.51及びFe84Nb6.57.52の各合
金薄帯のDSC曲線(示差走査熱量測定)を示す。図6
から明らかなように、各合金薄帯の結晶化開始温度(T
x)はほぼ740〜760K(467〜487℃)の範
囲であり、Pの組成比が増加するにつれて結晶化開始温
度(Tx)が低くなる傾向にあることが分かる。どの合
金薄帯でも、結晶化開始温度(Tx)を過ぎてから大き
な発熱ピークを示しており、非晶質相が結晶化する際の
自己発熱が生じていることが分かる。また、図6に示す
ように、960K(687℃)を超えた付近から別の発
熱ピークが見られるが、これはFe3B相等の化合物相
の析出によりものと思われる。
【0056】(実験例2)次に、実験例1と同様にし
て、幅15mm、厚さ20μmのFe84Nb6.58 .5
1 なる組成の急冷薄帯を得、これを巻回することによ
り、平面視略長方形でその内側に長方形状の孔が設けら
れてなるリング状のトロイダルコアとした。このトロイ
ダルコアの寸法は、長辺103mm、短辺52mm、内
側の孔の長辺が72mm、内側の孔の短辺が22mm、
厚さが15mmであり、重量は310gであり、占積率
は約70%であった。このトロイダルコアを熱処理炉に
投入し、昇温速度0.3K/秒、熱処理温度(設定温
度)923K、保持時間1800秒、窒素雰囲気の条件
で熱処理を1回行った。このとき、トロイダルコア表面
及び内部の温度をそれぞれ熱電対により測定した。経過
時間と熱電対による測定温度との関係を図7に示す。ま
た、図8に図7の拡大図を示す。
【0057】図7及び図8に示すように、トロイダルコ
アの表面及び内部の温度は、時間の経過とともに温度が
室温から500℃(227K)まではほぼ一定の割合で
上昇するが、500℃(227K)を越えた時点でコア
内部の温度が急激に上昇していることが分かる。またト
ロイダルコアの表面温度も同時に上昇している。そし
て、更に昇温を続けると、温度が急速に低下し、550
℃付近で再び温度上昇に転じている。この急激な温度上
昇は、図6において結晶化による自己発熱が観察された
温度とほぼ同程度の温度域で生じており、トロイダルコ
アを構成する合金薄帯が非晶質相から結晶質相に相転移
したときの自己発熱によるものと考えられ、この自己発
熱によってコアの温度が一時的に制御不能となる。な
お、コア内部の温度上昇が著しいのは、コア表面に比べ
てコア内部は放熱しにくく、このため温度上昇の幅が大
きくなったものと考えられる。コア内部から充分に放熱
させて温度上昇を防ぐために昇温速度を低下させること
も考えられるが、そうすると図4及び図5で説明したよ
うに磁気特性の劣化を招く。
【0058】また、図7及び図8では、自己発熱時のコ
ア内部の温度上昇の幅は50K程度であり、到達温度は
600℃(873K)を越える程度である。しかし、こ
れは310g程度のコアの場合であり、例えば柱上トラ
ンス用などの大型のコアでは、コア自体の体積が大きい
ことから自己発熱量が大きく、場合によってはコアの温
度が図2〜図3に示した最適な熱処理温度を越えて、結
晶粒の肥大化や化合物相の析出が起きるおそれがあると
考えられる。
【0059】コアの大型化による自己発熱量の増加は、
図9及び図10の結果からも確認できる。図9は、Fe
83.7Nb6.59.5Sn0 .3 なる組成の幅15mm、厚さ
20μmの合金薄帯を巻回して重量250gのトロイダ
ルコアとし、窒素雰囲気中、昇温速度0.3K/秒で9
23K(650℃)まで昇温する条件で熱処理し、この
熱処理中のコア表面とコア内部の温度の経過を測定した
結果であり、図10は、図9と同じ急冷薄帯を巻回して
重量500gのトロイダルコアとし、窒素雰囲気中、昇
温速度0.3K/秒で923K(650℃)まで昇温す
る条件で熱処理した場合のコア表面とコア内部の温度の
経過を測定した結果である。図9及び図10において、
aは自己発熱時のコア中心部の最高到達温度であり、
bはコア中心部が最高到達温度Taに達したときの表面
温度である。またT cは昇温終了時のコア内部の温度で
あり、Tdは昇温終了時のコア表面の温度である。図9
と図10とを比較すると、図9ではTaが667℃、Tb
が537℃でその差が70℃であるのに対し、コア重量
が大きな図10ではTaが771℃、Tbが625℃でそ
の差が146℃となり、図9の場合よりもコアの内部と
表面との温度差が大きくなっている。また、Ta自体も
図10の場合に750℃(923K)を越えており、自
己発熱量がコアの重量とともに増加していることが明ら
かにわかる。500gのトロイダルコアでは、内部の温
度が一時的に図2及び図3における最適な熱処理温度の
上限を越えており、磁気特性が劣化するものと考えられ
る。
【0060】次に、自己発熱によるコアの急激な温度上
昇を最小限にするために、自己発熱が開始した時点で昇
温を停止する制御を行った。図11は、Fe83.7Nb
6.59.5Sn 0.3 なる組成の幅15mm、厚さ20μm
の急冷薄帯を巻回して重量500gのトロイダルコアと
し、窒素雰囲気中、昇温速度0.3K/秒で923K
(650℃)まで昇温する条件で熱処理したときの、熱
処理中のコア表面とコア内部の温度の経過を測定した結
果である。図11では、500℃を過ぎた時点から中心
部の温度が急激に上昇し、結晶化の開始が見られたの
で、設定温度が520℃の時に加熱炉を停止させた。そ
の結果、コア内部の温度は結晶化による自己発熱によっ
て温度が更に上昇し、最終的に654℃(Ta)まで達
した。その後、コア内部の温度は表面温度とともに室温
まで低下した。熱処理を結晶化時に停止した場合(図1
1)のTaは、熱処理を停止しなかった場合(図10)
のTaよりも低く抑えられており、このためコア内部の
温度は最適な熱処理温度の範囲内となり、磁気特性が劣
化することはないと考えられる。
【0061】その後、室温まで低下したトロイダルコア
に対して、2回目の熱処理を行った。2回目の熱処理
は、窒素雰囲気中、昇温速度0.3K/秒で923K
(650℃)まで昇温する条件とした。図12に、熱処
理中のコア表面とコア内部の温度の経過を測定した結果
を示す。図12に示すように、コア内部及びコア表面の
温度はいずれも、昇温にともなって上昇するが、図11
で見られたような急激な温度上昇は確認されなかった。
これは、既にコアを構成する合金薄帯の組織の大部分が
1回目の熱処理で結晶化したためと考えられる。
【0062】以上のように、1回目の熱処理を自己発熱
の開始直後に終了させ、自己発熱が終了した後に2回目
の熱処理を行うことにより、例え重量が大きい場合であ
っても、トロイダルコアの温度を最適な熱処理温度の範
囲内に保つことができ、結晶粒の肥大化や化合物相の析
出を防止して、磁気特性の劣化を防ぐことが可能にな
る。
【0063】(実験例3)実験例1と同様に、片ロール
液体急冷法により目的の組成比の合金薄帯を得た。合金
薄帯の幅は約15mmであり、厚さは約20μmであっ
た。また、合金組成は、Fe83.7Nb6.59.5
0.3 、Fe84Nb6.59.5及びFe84Nb6.58. 51
の3種類であった。この合金薄帯を巻回することによ
り、平面視略長方形でその内側に長方形状の孔が設けら
れてなるリング状のトロイダルコアとした。尚、トロイ
ダルコアの重量は、50、100、250、500、1
000gの5種類とした。また、合金薄帯を加工して外
径10mm、内径6mmのリング状とし、これを15枚積層
して重量0.1gの積層コアとした
【0064】得られたトロイダルコア及び積層コアを後
述する熱処理条件で熱処理して実施例のコアを作成し
た。得られた実施例のコアについて、保磁力及び鉄損を
測定した。保磁力(Hc)及び鉄損(W)は、直流B−H
ループトレーサにより測定し、鉄損(W)の測定条件は
測定周波数50Hz、励磁磁界Bmを1.33Tとし
た。熱処理は2回行った。1回目の熱処理は、昇温速度
0.3K/秒で昇温しつつ、結晶化に伴う自己発熱が開
始した時点で加熱を停止する条件とし、2回目の熱処理
は、自己発熱が終了してコアの温度が低下し始めた時点
から昇温を開始し、昇温速度0.3K/秒で設定温度9
13〜933K(640〜660℃)になるまで昇温を
行い、1800秒間保持する条件とした。尚、熱処理は
窒素雰囲気中で行った。各コアの表面及び内部の温度を
それぞれ熱電対により測定した。そして、自己発熱時の
コア内部の最高到達温度Ta、コア内部がTaに達したと
きの表面の温度Tb、1回目の熱処理の昇温終了時のコ
ア中心の温度Tc及びコア表面の温度Tdを求めた。表1
〜表3に、Ta、Tb、Tc及びTd並びに保磁力及び鉄損
の測定結果を示す。
【0065】また、比較例として、熱処理回数を1回と
し、昇温速度0.3K/秒で設定温度913〜933K
(640〜660℃)になるまで昇温を行い、1800
秒間保持する条件で熱処理したこと以外は上記実施例と
同様にして比較例のコアを製造した。比較例のコアにつ
いても、実施例の場合と同様にしてTa、Tb、Tc及び
d並びに保磁力及び鉄損を測定した。結果を表1〜表
3に併せて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】表1〜表3に示すように、実施例のコアに
ついては、結晶化による自己発熱がほとんど見られず、
a及びTbはいずれも観察されなかった。また、Tc
びTdについては、熱処理の設定温度である640〜6
60℃前後を示しており、確実に熱処理が行われている
ことが分かる。次に比較例のコアについては、自己発熱
時のコア中心部の最高到達温度Taが、どの組成のコア
においても、コア重量の増加に伴ってTaが高くなって
いることがわかる。また、Tbについても同様にコア重
量の増加に伴って高くなっている。これは、コアを構成
する合金薄帯の量が増えたために結晶化の際の発熱量が
増加した結果である。特に、コア重量が1000gのも
のについては、どの組成でもTaが890℃程度とな
り、熱処理が過剰に行われていることがわかる。
【0070】次に保磁力及び鉄損については、実施例の
コアの場合、保磁力が全て5.0A/m以下を示してお
り、Fe83.7Nb6.59.5Sn 0.3 なる組成の合金の場
合は1000gのものでも保磁力が4.3A/m以下と
極めて低くなっていることが分かる。鉄損についても、
全ての組成で0.12W/kg以下となり、Fe83.7
6.59.5Sn 0.3 なる組成の合金の場合は1000g
のもので0.1W/kg以下と極めて低くなっている。
また、コア重量の増加に対しては、保磁力、鉄損とも若
干上昇する傾向にあるが、殆ど微差といえる程度であ
る。一方、比較例のコアでは、保磁力が最大で6.4A
/mを示し、またコア重量の増加に伴って保磁力が増加
している。鉄損についても、最大で0.19W/kgを
示し、コア重量の増加に伴って増加している。
【0071】このように、比較例のコアでは、自己発熱
によってコア自体の温度が最適な熱処理温度の範囲を超
えたために、結晶粒の粗大化や化合物相の析出が起こ
り、これにより磁気特性が劣化したものと思われる。ま
たコア重量の増加に伴って磁気特性の劣化が顕著になっ
ているのは、自己発熱時の最高到達温度Taがコア重量
の増加に伴って高くなり、重いコアほど温度上昇が顕著
になったためと考えられる。一方、実施例のコアでは、
2回の熱処理を行うことで、自己発熱による過剰な温度
上昇が防止され、これにより熱処理が最適な熱処理温度
の範囲で行われ、磁気特性が良好なものになったと考え
られる。
【0072】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
Fe基軟磁性合金の製造方法によれば、急冷体を“結晶
化開始温度より高く、かつ化合物相を実質的に形成しな
い温度”で2回以上にわたって熱処理するので、結晶化
に伴う自己発熱による急冷体の過度な温度上昇を防止す
ることができ、これにより結晶粒の肥大化が防止され
て、軟磁気特性に優れ、低保磁力かつ低損失なFe基軟
磁性合金を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のFe基軟磁性合金の製造に好適に用
いられる合金薄帯製造装置の一例を示す概略構成図。
【図2】 Fe84Nb6.59.5なる組成の積層コアの実
効透磁率(μ‘)、保磁力(Hc)及び鉄損(W)の熱処
理温度依存性及び保持時間の依存性を示すグラフ。
【図3】 Fe84Nb6.58.51なる組成の積層コア
の実効透磁率(μ‘)、保磁力(Hc)及び鉄損(W)の
熱処理温度依存性及び保持時間の依存性を示すグラフ。
【図4】 Fe84Nb6.59.5なる組成の積層コアの実
効透磁率(μ‘)、保磁力(Hc)及び鉄損(W)の昇温
速度依存性及び熱処理温度依存性を示すグラフ。
【図5】 Fe84Nb6.58.51なる組成の積層コア
の実効透磁率(μ‘)、保磁力(Hc)及び鉄損(W)の
昇温速度依存性及び保持時間の依存性を示すグラフ。
【図6】 Fe84Nb6.59.5、Fe84Nb6.58.5
1及びFe84Nb6.57.52の各合金薄帯のDSC曲
線。
【図7】 Fe84Nb6.58.5 1 なる組成の重量31
0gのトロイダルコアの熱処理時のコア表面及び内部の
温度と経過時間との関係を示すグラフ。
【図8】 図6の一部を拡大したグラフ。
【図9】 Fe83.7Nb6.59.5Sn0 .3 なる組成の重
量250gのトロイダルコアの熱処理時のコア表面及び
内部の温度と経過時間との関係を示すグラフ。
【図10】 Fe83.7Nb6.59.5Sn0 .3 なる組成の
重量500gのトロイダルコアの熱処理時のコア表面及
び内部の温度と経過時間との関係を示すグラフ。
【図11】 Fe83.7Nb6.59.5Sn 0.3 なる組成の
重量500gのトロイダルコアの1回目の熱処理時のコ
ア表面及び内部の温度と経過時間との関係を示すグラフ
であって、520℃で加熱を停止した場合のグラフ。
【図12】 Fe83.7Nb6.59.5Sn 0.3 なる組成の
重量500gのトロイダルコアの2回目の熱処理時のコ
ア表面及び内部の温度と経過時間との関係を示すグラ
フ。
【符号の説明】
1 冷却ロール 2 溶湯ノズル 3 るつぼ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 1/147 H01F 1/14 B Fターム(参考) 4E004 DB02 QA03 TA01 TA03 TB03 TB05 5E041 AA06 CA02 CA05 HB11 NN06

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金溶湯を急冷して非晶質相を主相とす
    る薄帯状又は粉末状の急冷体とし、該急冷体に熱処理を
    施して結晶化することにより、bcc-Feを少なくと
    も含む平均結晶粒径50nm以下の結晶粒を析出させて
    微細結晶組織を形成するFe基軟磁性合金の製造方法で
    あり、 前記急冷体を、結晶化開始温度より高く、かつ化合物相
    を実質的に形成しない温度まで加熱する熱処理を少なく
    とも2回以上行うことを特徴とするFe基軟磁性合金の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 合金溶湯を急冷して非晶質相を主相とす
    る薄帯状又は粉末状の急冷体とし、該急冷体に熱処理を
    施して結晶化することにより、bcc-Feを少なくと
    も含む平均結晶粒径50nm以下の結晶粒を析出させて
    微細結晶組織を形成するFe基軟磁性合金の製造方法で
    あり、 前記急冷体を加熱して前記非晶質相の結晶化に伴う発熱
    が開始した時点で1回目の熱処理を終了し、該発熱の終
    了後に再び前記急冷体を昇温して2回目の熱処理を行う
    ことを特徴とするFe基軟磁性合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記の各熱処理を、結晶化開始温度より
    高く、かつ化合物相を実質的に形成しない温度で行うこ
    とを特徴とする請求項2に記載のFe基軟磁性合金の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記の各熱処理は、昇温工程と降温工程
    を少なくとも含むことを特徴とする請求項1ないし請求
    項3のいずれかに記載のFe基軟磁性合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 1回目の熱処理における熱処理温度を、
    2回目以降の熱処理における熱処理温度より低くするこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記
    載のFe基軟磁性合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記急冷体が薄帯とした場合の厚さが5
    〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1な
    いし請求項5のいずれかに記載のFe基軟磁性合金の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 前記急冷体が薄帯とした場合の厚さが5
    〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項1ない
    し請求項5のいずれかに記載のFe基軟磁性合金の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 前記の各熱処理時における前記急冷体の
    温度分布のバラツキを50℃以内にすることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のFe基軟
    磁性合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 1回目の熱処理時に、前記急冷体を放熱
    用の熱伝導体に接触させて熱処理することを特徴とする
    請求項1ないし製造方法8のいずれかに記載のFe基軟
    磁性合金の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記Fe基軟磁性合金は、Feを含
    み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の
    元素Tと、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
    Wから選ばれた1種または2種以上の元素Mと、Sn、
    Sのうちの1種または2種の元素Qを具備してなるもの
    であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいず
    れかに記載のFe基軟磁性合金の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記Fe基軟磁性合金が更にSi、A
    l、Ge、Ga、P、C、Cu、Y、希土類元素のうち
    の1種または2種以上の元素Xを含むことを特徴とする
    請求項10に記載のFe基軟磁性合金の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし請求項11のいずれか
    に記載の製造方法により製造されたものであることを特
    徴とするFe基軟磁性合金。
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