JP2010280956A - Fe基軟磁性合金粉末の製造方法 - Google Patents

Fe基軟磁性合金粉末の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010280956A
JP2010280956A JP2009135652A JP2009135652A JP2010280956A JP 2010280956 A JP2010280956 A JP 2010280956A JP 2009135652 A JP2009135652 A JP 2009135652A JP 2009135652 A JP2009135652 A JP 2009135652A JP 2010280956 A JP2010280956 A JP 2010280956A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
heat treatment
treatment temperature
powder
soft magnetic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009135652A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5274381B2 (ja
Inventor
Yusuke Sato
祐輔 佐藤
Akinobu Kojima
章伸 小島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Alps Electric Co Ltd filed Critical Alps Electric Co Ltd
Priority to JP2009135652A priority Critical patent/JP5274381B2/ja
Publication of JP2010280956A publication Critical patent/JP2010280956A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5274381B2 publication Critical patent/JP5274381B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

【課題】 特に、従来に比べて、ばらつきが小さく安定した特性を得ることができるFe基軟磁性合金粉末の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 設定温度をまずbcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも低い第3熱処理温度TAまで昇温させ、第3熱処理温度TAにて所定時間t1維持する。続いて、低速で、設定温度を、bcc相を析出させるための第2熱処理温度TBまで昇温させ、第2熱処理温度TBにて所定時間t2維持する。粉末温度にbcc相の析出による自己発熱に基づくオーバーシュートが生じ、その後、粉末温度がほぼ第2熱処理温度TBにまで低下したら、低速で、昇温過程における最終設定温度であり、前記オーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度TCまで昇温させ、例えばbcc相と第2結晶相の双方を析出させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、少なくともbcc相を有する組織から構成されるFe基軟磁性合金粉末の製造方法に関する。
図17は、Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理(アニール処理)の従来の設定温度プロファイル(模式図)と粉末温度の推移の一部(模式図)を示すグラフである。
図17に示すように、従来では、熱処理の設定温度を、所定の熱処理温度TDまで一気に昇温させ、熱処理温度TDに所定時間維持した後、設定温度を降温させている(以下、1段アニールという場合がある)。
熱処理温度TDは、bcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも高い温度に設定されている。よって、設定温度を熱処理温度TDまで昇温させることで、bcc相が析出するが、bcc相の析出時に自己発熱が生じ、図17の点線に示すように、粉末温度が一時的に熱処理温度TDよりも高くなるオーバーシュートが発生する。
このように熱処理温度TDを超えるオーバーシュートが発生し、しかもこのオーバーシュートのピーク値はばらつきやすく、アニール炉内の温度分布にばらつきが生じやすくなる。また前記オーバーシュートのピーク値をコントロールすることが困難であり、したがって、従来の1段アニールでは、Fe基軟磁性合金粉末の特性にばらつきが生じ安定した特性を得にくいといった問題があった。
また、オーバーシュートが生じて粉末温度が一時的に、熱処理温度TDを超えることで、bcc相が所定よりも多く析出したり、結晶粒径が粗大化する等して、Fe基軟磁性合金粉末の特性が低下しやすい問題があった。
特開2003−213331号公報 特開2004−339527号公報 特開平7−278764号公報
上記した特許文献は、bcc相の析出により自己発熱が生じることの問題点を指摘している。また上記した特許文献では熱処理の設定温度を段階的に昇温させる構成の開示もある。
しかしながら上記した特許文献には、熱処理の設定温度をオーバーシュートのピーク値に対してどのように調整するのか特に記載はされていない。
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、従来に比べて、ばらつきが小さく安定した特性を得ることができるFe基軟磁性合金粉末の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、少なくともbcc相を有する組織から構成されるFe基軟磁性合金粉末の製造方法において、
前記Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理の設定温度を、前記bcc相を析出させるための第2熱処理温度にまで昇温させ、粉末温度に前記第2熱処理温度を超えるオーバーシュートが生じた後、前記オーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度まで昇温させることを特徴とすることを特徴とするものである。
本発明では、設定温度をまず第2熱処理温度まで昇温させて、bcc相を析出させる。このとき、自己発熱により粉末温度にオーバーシュートが生じ、一時的に粉末温度が第2熱処理温度よりも高い状態になる。本発明では、昇温過程の最終設定温度であるオーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度まで昇温させる。この第1熱処理温度は、Fe基軟磁性合金粉末の微細結晶組織の状態を調整するためのものである。
従来の1段アニールでは、粉末温度に昇温過程の最終設定温度(図15の熱処理温度TD)を越えるオーバーシュートが生じたが、本発明では、まず熱処理の設定温度を第2熱処理温度まで昇温させて、Fe基軟磁性合金粉末にbcc相を析出させ、自己発熱により粉末温度に第2設定温度を越えるオーバーシュートが生じた後、熱処理の設定温度をオーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度まで昇温させるから、従来のように、第1熱処理温度に到達したときに、粉末温度にbcc相の析出に基づくオーバーシュートが生じるのを抑制できる。この結果、本発明では熱処理の設定温度を第2熱処理温度まで昇温させたときに粉末温度に生じるオーバーシュートのピーク値にばらつきがあっても、熱処理の設定温度を第1熱処理温度まで昇温させたときの粉末温度や炉内の温度分布のばらつきを従来に比べて抑制でき、よって従来に比べて、ばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
本発明では、前記設定温度を、前記第2熱処理温度に維持しつつ、前記粉末温度に前記オーバーシュートが生じた後、前記粉末温度がほぼ前記第2熱処理温度にまで低下したら、前記設定温度を第1熱処理温度まで昇温させることが好ましい。
これにより、適切にbcc相を析出させることができ、また、第1熱処理温度をオーバーシュートのピーク値よりも高い温度に設定しやすく、より効果的にばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
また本発明では、前記設定温度を、まず前記第2熱処理温度よりも低い第3熱処理温度まで昇温させ、前記第3熱処理温度を所定時間維持した後、前記第2熱処理温度まで昇温させることが好ましい。具体的には、前記設定温度を、前記第3熱処理温度に維持して、前記粉末温度がほぼ第3熱処理温度に到達したら、前記第2熱処理温度まで昇温させることが好ましい。粉末温度は熱処理の設定温度よりもやや遅れて昇温するため、まずは、bcc相を析出させるための第2熱処理温度よりも低い第3熱処理温度(bcc相が析出しない温度)に設定して、一旦、粉末温度を第3熱処理温度まで昇温させた後、微細結晶組織を作るうえで重要な第2熱処理温度、及び第1熱処理温度の順に昇温させることが、昇温過程のコントロールを簡単且つ適切に行いやすく、より効果的にばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
また本発明では、前記第3熱処理温度に到達するまでの昇温速度を、前記第3熱処理温度から前記第2熱処理温度に到達するまでの昇温速度、及び、前記第2熱処理温度から前記第1熱処理温度に到達するまでの昇温速度よりも高速とすることが好ましい。これにより生産性の向上を図ることが出来る。また、前記第3熱処理温度から前記第2熱処理温度に到達するまでの昇温速度、及び、前記第2熱処理温度から前記第1熱処理温度に到達するまでの昇温速度を低速とすることで、オーバーシュートのピーク値を小さく抑えることができ、第1熱処理温度の調整を行いやすく、Fe基軟磁性合金粉末の微細結晶組織の状態をより適切に調整することができ、より効果的にばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
また本発明では、前記Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理により、前記Fe基軟磁性合金粉末には前記bcc相と第2結晶相とを析出させ、このとき、
前記第1熱処理温度を、前記bcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも高く、前記第2結晶相の結晶化開始温度(Tx2)よりも100℃以内の低い温度に設定することが好ましい。
本発明ではbcc相のほかに第2結晶相を析出させる。この第2結晶相は、Fe以外の元素を含む化合物相や単体相である。本発明では、上記のように第1熱処理温度を調整することで、bcc相と第2結晶相の双方を適切に析出させ、均一な微細結晶組織を形成できる。なお本発明のようにbcc相と第2結晶相との析出によりFe基軟磁性合金粉末の複素比透磁率の実数部μ´及び性能係数Qの双方を高くできるメリットがある。
また本発明では、前記Fe基軟磁性合金粉末の組成式は、Fe100-a-b-c-d-eSiabcCrdeで示され、Xは、B,P,Cのうち少なくともいずれか1種、Yは、Nb,Moのうち少なくともいずれか1種、Qは、Co,Ni,Cu,Alのうち少なくともいずれか1種であり、0at%≦a≦21at%、3at%≦b≦15at%、1at%≦c≦6at%、0at%≦d≦5at%、0at%≦e≦5at%であることが好ましい。
本発明によれば、従来に比べて、ばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
RFIDデバイス及びリーダライタの模式図、 Tx1、Tx2、Tm(start)、Tm(end)等の定義を示すDSC曲線図、 (a)は、Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理の本実施形態の設定温度プロファイル(模式図)と粉末温度の推移の一部(模式図)を示すグラフ、(b)は、第1熱処理温度Tcの定義を示す拡大図、 アニール炉の模式図、 アニール炉の上段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(本実施例(3段アニール))、 アニール炉の中段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(本実施例(3段アニール))、 アニール炉の下段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(本実施例(3段アニール))、 アニール炉の上段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(従来例(1段アニール))、 アニール炉の中段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(従来例(1段アニール))、 アニール炉の下段位置でのヒータ温度、炉内温度及び粉末温度の時間に対する温度の推移を示すグラフ(従来例(1段アニール))、 アニール炉の1段目〜4段目の各位置に設置されたFe基軟磁性合金粉末に対し、実施例の熱処理条件(3段アニール)及び、従来例の熱処理条件(1段アニール)で熱処理を行ったときに測定されたオーバーシュートのピーク値を示すグラフ、 アニール炉の1段目〜4段目の各位置に設置されたFe基軟磁性合金粉末に対し、実施例の熱処理条件(3段アニール)及び、従来例の熱処理条件(1段アニール)で熱処理を行ったときに測定されたΔT値を示すグラフ、 アニール炉の1段目〜4段目の各位置に設置されたFe基軟磁性合金粉末に対し、実施例の熱処理条件(3段アニール)及び、従来例の熱処理条件(1段アニール)で熱処理を行った後、磁性シート化した状態で測定された複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)を示すグラフ、 アニール炉の1段目〜4段目の各位置に設置されたFe基軟磁性合金粉末に対し、実施例の熱処理条件(3段アニール)及び、従来例の熱処理条件(1段アニール)で熱処理を行った後、磁性シート化した状態で測定された複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)を示すグラフ、 アニール室の各段に収納された各粉末のオーバーシュートのピーク値と第1熱処理温度Tcとの最大温度差ΔT(max)と、各粉末を用いて作製された各磁性シートの複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)のばらつきの標準偏差との関係を測定した結果を示すグラフ、 アニール室の各段に収納された各粉末のオーバーシュートのピーク値と第1熱処理温度Tcとの最大温度差ΔT(max)と、各粉末を用いて作製された各磁性シートの複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)のばらつきの標準偏差との関係を測定した結果を示すグラフ、 Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理の従来例の設定温度プロファイル(模式図)と粉末温度の推移の一部(模式図)を示すグラフ。
図1は、RFIDデバイス及びリーダライタの模式図である。
図1に示すようにRFID(Radio Frequency ID)デバイス1は、アンテナ及びICチップを備えるRFIDタグ2と、金属部材3と、前記RFIDタグ2と前記金属部材3との間に挿入された磁性シート4とを有して構成される。
RFIDタグ2は、基板上にアンテナ及びICチップが形成された形態である。金属部材3は例えば筐体の一部を成している。
図1に示すように、磁性シート4をRFIDタグ2と金属部材3との間に挿入することで、リーダライタ10からの磁束Hが磁性シート4内を通り、RFIDデバイス1とリーダライタ10との間で還流磁束を形成できる。この結果、13.56MHzでのRFID特性の向上を効果的に図ることができる。
本実施形態における磁性シート4は、例えば、扁平加工されたFe基軟磁性合金粉末とマトリクス材料とを含んで構成される。マトリクス材料としては、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマ(EPDM)、クロロプレン、ポリウレタン、塩化ビニル、飽和ポリエステル、ニトリル樹脂等を選択できる。また、リン酸エステル、赤燐、三酸化アンチモン、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ヘキサブロモベンゼン、メラミン誘導体、臭素系、塩素系、白金系等の難燃剤を添加してもよい。
Fe基軟磁性合金粉末の含有量は、30〜70体積%の範囲内であることが好ましい。これにより所望のシート特性を得ることが出来る。
磁性シート4を製造するには、まずFe基軟磁性合金の溶湯を水に噴出して急冷する、水アトマイズ法により合金粉末を作製する。なおFe基軟磁性合金粉末の製造方法としては水アトマイズ法に限定されず、ガスアトマイズ法を用いてもよい。また水アトマイズ法、ガスアトマイズ法の処理条件については、原料の種類に応じて通常行われる条件を用いることが出来る。一方、液体急冷法により製造された急冷薄帯であると、アモルファス合金を得やすい半面、薄帯を均一微細な扁平粉に粉砕することが困難であるのでアトマイズ法を使用し、最初から球状粉末状で製造することが好適である。
そして得られた球状のFe基軟磁性合金粉末を分級して粒度を揃えた後に、合金粉末を扁平加工する。扁平加工に用いるミルは、アトライタ、ビーズミル、ボールミル、ピンミル等の各種ミルを用いることが出来るが、特にビーズミルを用いることが好適である。その後、所定条件で熱処理を施す。熱処理条件については後述する。
次に、磁性シート4を構成するマトリクス材料の液状体中に上記のFe基軟磁性合金粉末を混合させて混合液を作製した後に、混合液をシート化することにより磁性シート4を作製する。シート成形方法は、ドクターブレード法や押し出し成形等が好ましい。なお、上記した熱処理は、磁性シート状に成形した後、行ってもよいし、Fe基軟磁性合金粉末の製造段階とともに、磁性シート状に成形した後の双方に対して行うことも可能である。
本実施形態の磁性シート4の厚さは特に限定されないが、磁性シート4の厚さを薄くしても、具体的には1mmより薄くしても磁性シートを使用するデバイスに適したシート特性を得ることが出来る。本実施形態では磁性シートの厚さを0.5mm以下、さらには0.2mm以下に設定しても良好なシート特性を得ることが出来る。また後述する実施例では、磁性シート4の厚さを100μm程度にまで薄く形成している。
図2に本実施形態におけるFe基軟磁性合金粉末のDSC曲線(一例)を示す。図2に示すように、DSC曲線には少なくとも2回の発熱ピークが発現する。低温側の発熱ピークはbcc相の析出を示しており、発熱曲線の始まりの温度(ベースラインから発熱ピークに向けて熱流が上昇し始めるときの温度)がbcc相の結晶化開始温度Tx1である。また、高温側の発熱ピークは第2結晶相の析出を示しており、発熱曲線の始まりの温度が結晶相の結晶化開始温度Tx2である。ここで、第2結晶相とは第1結晶相(bcc相)の次に高い温度で出てくる結晶相のことであり、さらに第3結晶相が出てくることを妨げるものでない。
また図2に示すように、発熱ピークよりもさらに高温側に、融点Tmを示す吸熱ピークが発現する。この吸熱曲線の始まりの温度(熱流がベースラインから吸熱ピークに向けて下降し始めるときの温度)がTm(start)で、終わりの温度(熱流が融点Tmを示す吸熱ピークから上昇してベースラインに戻ったときの温度)がTm(end)である。そして、降温時、発熱反応が始まる時の温度がTm(down)である。
本実施形態では、Fe基軟磁性合金粉末に対して図3(a)に示すように設定温度を推移させた熱処理を施す。
図3(a)に示すように、まず設定温度を例えば常温から第3熱処理温度TAまで昇温させる。ここで「設定温度」とは、アニール炉内の温度あるいはヒータ温度を指す。第3熱処理温度TAまでの昇温速度は、S1(℃/min)(平均値)である。第3熱処理温度TAは、bcc相の結晶化開始温度Tx1よりも低い温度である。例えば、第3熱処理温度TAは、475℃〜515℃である。また第2熱処理温度TBは520℃〜560℃であり、第3熱処理温度TAと第2熱処理温度TBとの温度差(TB−TA)は、5℃〜85℃である。また、第3熱処理温度TAまでの昇温速度S1は、10〜40(℃/min)程度である。
図3(a)に示すように設定温度が第3熱処理温度TAに達したら所定時間t1、第3熱処理温度TAを維持する。所定時間t1を例えば、30〜120分とする。このとき、粉末温度(図3の一点鎖線に示す)も、設定温度の上昇により上昇するが、粉末温度の昇温速度は、設定温度の昇温速度S1よりも遅いため、設定温度が第3熱処理温度TAに到達しても粉末温度は未だ第3熱処理温度TAに到達していない。このため、粉末温度が第3熱処理温度TAに到達し安定するのを待つべく、設定温度を第3熱処理温度TAに所定時間t1維持して、粉末温度を第3熱処理温度TAにまで昇温させている。なお「粉末温度」とはFe基軟磁性合金粉末の表面温度を指し、熱電対等の温度センサを用いて測定することが出来る。
続いて図3(a)に示すように、粉末温度がほぼ第3熱処理温度TAに到達したら、設定温度を、第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBまで昇温させる。このときの昇温速度は、S2(℃/min)(平均値)である。第2熱処理温度TBは、bcc相の結晶化開始温度Tx1付近に設定する。第2熱処理温度TBは、組織にbcc相を析出させるために設定される温度である。具体的には、第2熱処理温度TBを、bcc相の結晶化開始温度Tx1の−30℃〜0℃以内に設定することが好適である。また、第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBまでの昇温速度S2は、2〜10(℃/min)程度である。
図3(a)に示すように、設定温度を第2熱処理温度TBに所定時間t2維持する。このとき、粉末温度は、やや遅れて、第2熱処理温度TBに到達し、Fe基軟磁性合金粉末の組織にbcc相が析出する。このとき、自己発熱により粉末温度にオーバーシュートが生じ、一時的に粉末温度は第2熱処理温度TBよりも高い温度になる。
本実施形態では、図3(a)に示すように第2熱処理温度TBを所定時間t2維持するが、この所定時間t2を、粉末温度にオーバーシュートが生じた後、粉末温度が、ほぼ第2熱処理温度TBに低下するまでとする。所定時間t2を例えば、15分〜60分とする。
図3(a)に示すように、第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBまでの昇温速度S2を、常温から第3熱処理温度TAに到達するまでの昇温速度S1よりも遅くする。このように第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBまでの昇温速度をゆっくりにすることで、微細結晶のbcc相を適切に析出でき、またオーバーシュートのピーク値を小さく抑えることができる。また換言すれば、第3熱処理温度TAに到達する昇温速度S1を速くしており、これにより、生産性を向上させることが可能である。
続いて図3(a)に示すように、オーバーシュートが収まり、粉末温度がほぼ第2熱処理温度TBにまで低下したら設定温度を、第2熱処理温度TBから第1熱処理温度TCまで昇温させる。このときの昇温速度は、S3(℃/min)(平均値)である。第1熱処理温度TCは、図3(b)に示すように、オーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上、好ましくはオーバーシュートのピーク値よりも高い温度に設定する。なお、図3(a)では、第1熱処理温度TCをオーバーシュートのピーク値よりも高い温度に設定している。
第1熱処理温度TCは、Fe基軟磁性合金粉末の微細結晶組織の状態を最終調整するために設定される昇温過程の最終設定温度である。例えば本実施形態では、後述するように、Fe基軟磁性合金粉末の組織にbcc相と、第2結晶相とを析出させ、第2結晶相の析出量をbcc相よりも微量とするが、このような最終的な微細結晶組織の状態を得るべく第1熱処理温度TCが設定される。例えば、第1熱処理温度TCを、580℃〜660℃以内に設定する。また、第2熱処理温度TBから第1熱処理温度TCまでの昇温速度S3は、2〜10(℃/min)程度である。また、例えば、第1熱処理温度TCと第2熱処理温度TBとの温度差を40℃〜120℃とする。
昇温速度S3を、第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBにまで昇温させるときの昇温速度S2と同程度に遅くすることが好適である。これにより、Fe基軟磁性合金粉末の微細結晶組織の最終状態を適切に調整することが出来る。
図3(a)に示すように設定温度を第1熱処理温度TCに所定時間t3維持する。このとき、粉末温度は、やや遅れて、第1熱処理温度TCに到達するが、bcc相はすでに析出した状態であるため、自己発熱によるオーバーシュートは抑制され、粉末温度はほぼ第1熱処理温度TCを維持する。
従来では、図17に示すように、熱処理温度TDまで一気に昇温させる1段アニールとしたことで、粉末温度にbcc相の析出による自己発熱に基づくオーバーシュートが生じたときに、粉末温度が昇温過程の最終設定温度である熱処理温度TDよりも一時的に高い温度に上昇したが、本実施形態では、まず設定温度を第2熱処理温度TBまで昇温させて、Fe基軟磁性合金粉末の組織にbcc相を析出させ、粉末温度に第2熱処理温度TBを越えるオーバーシュートが生じた後、昇温過程の最終設定温度として、粉末温度に生じたオーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上、好ましくはオーバーシュートのピーク値よりも高い第1熱処理温度TCまで昇温させるから、設定温度が第1熱処理温度TCに到達したときに、粉末温度にbcc相の析出による自己発熱に基づくオーバーシュートが生じるのを抑制できる。この結果、オーバーシュートのピーク値にばらつきがあっても、第1熱処理温度TCにてFe基軟磁性合金粉末を最終的に熱処理でき、炉内の温度分布の場所によるばらつきを抑制でき、よって従来に比べて、ばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を製造できる。
続いて図3(a)に示すように、設定温度を第1熱処理温度TCに所定時間t3維持した後、設定温度を所定温度(例えば常温)まで降温させる。なお降温速度は特に限定しないが、常温から第3熱処理温度TAまでの昇温速度S1と同様に高速としたほうが生産性を向上させることができ好適である。
本実施形態では、上記した図3に示す熱処理が施されたFe基軟磁性合金粉末は、bcc相と、bcc相と異なるX線回折ピークを持つ第2結晶相とを有する複相組織で構成されることが好適である。また、bcc相のピーク強度(I1)と、第2結晶相のピーク強度(I2)とのピーク強度比率(I2/I1)が0.02以上0.15以下となっていることが好適である。
このように本実施形態のFe基軟磁性合金粉末は、bcc相のほかに、bcc相と異なるX線回折ピークを持つ第2結晶相を有する。bcc相は、α−Fe単相やFe固溶体である。第2結晶相は、Fe以外の元素を含む化合物相や単体相である。化合物相は、Nb2Si,Nb5Si3,Cu5Si,Cu4Si等であり、単体相はCu等である。第2結晶相は、X線回折ピークが異なる複数相、存在してもよい。
本実施形態では、bcc相のピーク強度(I1)と、第2結晶相のピーク強度(I2)とのピーク強度比率(I2/I1)を0.02以上0.15以下に設定し、第2結晶相をわずかに析出させている。これにより、複素比透磁率の実数部μ´及び性能係数Qの双方を高くすることが出来る。
また本実施形態では、bcc相の平均結晶粒径を、10〜40nmに微細結晶化でき、また第2結晶相の平均結晶粒径を、10〜70nmに微細結晶化できる。なお上記の平均結晶粒径は、Fe基軟磁性合金粉末を扁平加工しない元粉での数値範囲であり、扁平加工処理を施すことで、bcc相の平均結晶粒径を、10〜35nmに、第2結晶相の平均結晶粒径を、10〜40nmにまで微細結晶化できる。このように微細な結晶組織にできることで、複素比透磁率の実数部μ´及び性能係数Qの双方を効果的に高くできる。
また本実施形態におけるFe基軟磁性合金粉末は、Tx1/Tm(end)が、K換算で、0.5以上であることが好適である。Tx1/Tm(end)は、均一な微細結晶組織を形成する上で重要なファクターである。本実施形態のFe基軟磁性合金粉末は、例えば、アトマイズ法で製造した後、熱処理を施してbcc相と第2結晶相とを析出させることが好ましいが、Tx1/Tm(end)を上記のように調整することで、熱処理前の状態(急冷直後の状態)ではアモルファス相を主体に形成出来る。ここで「アモルファス主体」とは、組織全体がアモルファス相であってもよいし、アモルファス相以外にわずかに(50%以下程度)結晶質が存在してもよいことを指す。このように熱処理前の状態(急冷直後の状態)がアモルファス主体であると、その後の熱処理により、均一な微細結晶組織を形成することができる。
本実施形態におけるFe基軟磁性合金粉末は、例えば、組成式が、Fe100-a-b-c-d-eSiabcCrdeで示され、Xは、B,P,Cのうち少なくともいずれか1種、Yは、Nb,Moのうち少なくともいずれか1種、Qは、Co,Ni,Cu,Alのうち少なくともいずれか1種であり、0at%≦a≦21at%、3at%≦b≦15at%、1at%≦c≦6at%、0at%≦d≦5at%、0at%≦e≦5at%である。特に、Siの組成比aは、3at%以上であることが好ましい。これにより、熱処理前の状態(急冷直後の状態)をアモルファス主体に形成しやすく、また、Tx1、Tx2、Tm(end)等を所定範囲内に収まるように調整しやすい。
そして、上記した扁平状のFe基軟磁性合金粉末を有する磁性シート4によれば、特に13.56MHzでの性能係数Qを10以上に、且つ複素比透磁率の実数部μ´を30以上に出来、また、これら特性のばらつきを小さくできる。
上記したように第2結晶相を析出させるには、図3に示す第1熱処理温度TCをbcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも高く、第2結晶相の結晶化開始温度(Tx2)よりも100℃以内の低い温度に設定することが好適である。ここでTx2は、DSC曲線にてbcc相の結晶化開始温度Tx1の次に現れる結晶化開始温度である。
これにより、bcc相と第2結晶相の双方を適切に析出させ均一な微細結晶組織を形成できるとともに、bcc相のX線回折のピーク強度(I1)と、第2結晶相のX線回折のピーク強度(I2)とのピーク強度比率(I2/I1)が0.02以上0.15以下の範囲内になるように簡単且つ適切に調整できる。
なお、本実施形態においては、第2結晶相の結晶化開始温度(Tx2)よりも100℃以内の低い温度で熱処理を行っても、ある一定の時間(図3に示す所定時間t3)熱処理を行えば、第2結晶相が析出するものである。そして第2結晶相の析出は、わずかであるため、第1熱処理温度TCによりFe基軟磁性合金粉末を熱処理し、このとき第2結晶相が析出しても自己発熱はほとんど生じず、このため、粉末温度に、第1熱処理温度TCよりも20℃を超える高い温度のオーバーシュートが発生しにくく、好ましくは、第1熱処理温度TCを超えるオーバーシュートの発生を抑制することが出来る。よって、ばらつきが小さい安定した特性を有するFe基軟磁性合金粉末を製造することが可能である。
図4にはアニール炉20の模式図を示す。アニール炉20の内部は複数のアニール室21〜24に分割されている。そして各アニール室21〜24にFe基軟磁性合金粉末を収納できる。図4に示すように、アニール炉20には複数のヒータが取り付けられ、アニール炉20の内部をこれらヒータにより熱処理できるようになっている。またアニール炉20には、アニール室内に収納されたFe基軟磁性合金粉末の粉末温度や炉内の温度を測定する温度センサ(例えば熱電対)が設けられる。
本実施形態では、各アニール室21〜24内に収納されているFe基軟磁性合金粉末に対して、bcc相の析出により粉末温度に生じるオーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度TCを一律に印加するため、オーバーシュートのピーク値にばらつきがあっても、炉内の温度分布にばらつきが生じにくく、各アニール室21〜24のFe基軟磁性合金粉末に対して安定した熱処理条件にて熱処理を施すことができ、ばらつきが小さく安定した特性を備えるFe基軟磁性合金粉末を同時に多数個製造することができる。
本実施形態では図3に示す設定温度を常温から第3熱処理温度TAにまで高速で昇温させ、第3熱処理温度TAに所定時間t1維持しているが、昇温速度を昇温速度S2と同様に低速で昇温すれば、常温から第2熱処理温度TBまで徐々に昇温させる形態であってもよい。また、熱処理の設定温度が第2熱処理温度TBに到達したら図3に示すように所定時間t2、設定温度を第2熱処理温度TBに維持することが好ましいが、温度誤差は別として、昇温速度S2,S3よりもさらに遅い昇温速度に調整する等して、所定時間t2内での設定温度を多少、第2熱処理温度TBから変動させる形態も本実施形態に含まれる。
また図3では、昇温過程において、所定時間維持する設定温度を3段階にしているが、4段階以上に設定することも可能である。
以下の表1に示す複数のFe基軟磁性合金粉末を製造した。
Figure 2010280956
表1のXRDは、X線回折による熱処理前(急冷直後)の組織の状態を示す。また、各試料を示差走査熱量測定(20℃あるいは40℃/minの昇温速度)し、図2に示すDSC曲線を得て、Tx1、Tx2、Tx3及び、Tm(Start)、Tm(end)等を測定した。結晶化開始温度は、Tx1<Tx2<Tx3の順である。
表1に示すFe基軟磁性合金粉末に対して、図3に示す熱処理を施した。第3熱処理温度TA、第2熱処理温度TB、第1熱処理温度TCが夫々、表1の「3段アニール温度」欄に示されている。
なお本実施例では、従来例(1段アニール)と区別するために便宜上、3段アニールと称することとする。
第3熱処理温度TAは、いずれも、bcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも低い温度に設定した。また第2熱処理温度TBは、bcc相の結晶化開始温度(Tx1)付近の温度に設定した。また第1熱処理温度TCは、bcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも高く第2結晶相の結晶化開始温度(Tx2)よりも100℃以内の低い温度に設定した。
表1のうち、粉末6(Fe70.5Si13.5Nb39Cu1Cr3)を用いて次の実験を行った。
まず、表1に記載されているように、第3熱処理温度TAを495℃、第2熱処理温度TBを540℃、第1熱処理温度TCを618℃に設定し、また第3熱処理温度TAまでの昇温速度S1を30℃/min、第3熱処理温度TAから第2熱処理温度TBまでの昇温速度S2を5℃/min、第2熱処理温度TBから第1熱処理温度TCまでの昇温速度S3を5℃/minとし、設定温度を第3熱処理温度TAに維持する所定時間t1を60分、第2熱処理温度TBに維持する所定時間t2を30分、第1熱処理温度TCに維持する所定時間t3を90分とした。
実験は図4と同様のアニール炉20を用いて行い、各アニール室21〜24に粉末6を収納した。そして図4に示すヒータを用いて3段アニールを行った。図5は、図4の上段(図示上側)に位置するヒータ温度、上段位置にて測定された炉内温度、1段目のアニール室21における粉末6の粉末温度の推移を示す実験結果、図6は、図4の中段に位置するヒータ温度、中段位置にて測定された炉内温度、3段目のアニール室23における粉末6の粉末温度の推移を示す実験結果、図7は、図4の下段(図示下側)に位置するヒータ温度、下段位置にて測定された炉内温度、4段目のアニール室24における粉末6の粉末温度の推移を示す実験結果、である。
また、上記の粉末6に対して図15に示す従来の1段アニールを行った。図15に示す熱処理温度TDを595℃とし、熱処理温度TDに維持する時間を160分とし、熱処理温度TDまでの昇温速度を30℃/minとした。
図8,図9及び図10は、従来例(1段アニール)における上段、中段、下段のヒータ温度、炉内温度、及び粉末温度の推移を示すグラフである。
実施例(3段アニール)の図5〜図7に示すように、炉内温度とヒータ温度は多少ずれてはいるが昇温過程においてはほぼ一致することがわかった。
炉内温度及びヒータ温度が第2熱処理温度TBにまで昇温すると、粉末温度にはbcc相の析出による自己発熱によりオーバーシュートが生じることがわかった。このオーバーシュートのピーク値は炉内の場所によって多少大きさが異なるが、従来例(1段アニール)に比べると、オーバーシュートのピーク値のばらつきは小さくなった。
そして本実施例では、炉内温度及びヒータ温度を粉末温度に生じたオーバーシュートのピーク値よりも高い第1熱処理温度TAまで昇温させた。
一方、従来例(1段アニール)の図8〜図10に示すように、炉内温度とヒータ温度は図5〜図7の実施例に比べてずれやすいことがわかった。特に粉末温度に生じるオーバーシュートが大きいと、炉内温度とヒータ温度のずれ量が大きくなった。
また図8〜図10に示すように粉末温度に生じるオーバーシュートのばらつきが大きくなった。そして従来例(1段アニール)では、粉末温度が一時的にオーバーシュートにより熱処理温度TD(595℃)よりも高くなることがわかった。
次に、図4のアニール炉20の各アニール室21〜24に夫々、表1の粉末6(Fe70.5Si13.5Nb39Cu1Cr3)を収納し、従来例(1段アニール)として、593℃の熱処理温度TDを160min維持したとき、595℃の熱処理温度TDを160min維持したとき、605℃の熱処理温度TDを160min維持したときに、1段目、3段目、4段目の各アニール室21,23,24に収納された各粉末6の粉末温度に生じるオーバーシュートのピーク値を求めた。また、実施例(3段アニール)としては、図4のアニール炉20の各アニール室21〜24に表1の粉末6(Fe70.5Si13.5Nb39Cu1Cr3)を収納し、また粉末6を2セット用意して、各セットに対して図5〜図7の実験と同様の熱処理条件下で熱処理を行い、1段目、3段目、4段目の各アニール室21,23,24に収納された各粉末6の粉末温度に生じるオーバーシュートのピーク値を求めた。その実験結果が図11に示されている。なお2段目のアニール室22の実験結果がないが、これは図4に示すように2段目のアニール室22に収納された粉末の粉末温度を測定する温度センサが用意されていないためである。
図11に示すように、各従来例(1段アニール)では、いずれも、オーバーシュートのピーク値が、各従来例の実験で設定された熱処理温度TD(593℃,595℃,605℃のいずれか)よりも高くなった。一方、本実施例では、第1熱処理温度TCよりも低い第2熱処理温度TB(540℃)により粉末6にbcc相を析出させており、粉末温度に生じるオーバーシュートのピーク値が、いずれも従来例のオーバーシュートのピーク値よりも低い値であった。
図12は、1段目、3段目、4段目の粉末の平均温度(熱電対温度)の実験結果である。ここで粉末の平均温度は第1熱処理温度Tcよりも2℃低い温度をスタートとして、第1熱処理が終了し再び第1熱処理温度Tcよりも2℃低くなるまでの粉末の平均温度を測定したものである。図12に示すように従来例(1段アニール)では、粉末の平均温度のばらつきが大きくなったが、本実施例(3段アニール)では、粉末の平均温度のばらつきが小さくなることがわかった。
図13は、図11,図12における各実施例及び各従来例の1段目〜4段目のアニール室に収納された各粉末6を用いて磁性シートを作製した際の複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)、図14は、各実施例及び各従来例の1段目〜4段目のアニール室に収納された各粉末6を用いて磁性シートを作製した際の複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)を示す実験結果である。マトリクス材料には塩素化ポリエチレンを用い、粉末6の含有量を、35体積%とした。図中「D2.5換算」とはμ´、μ″をシート密度2.5g/cm3として計算した値であり、実際は磁性シートは2.3g/cm3〜2.6g/cm3程度ばらつくが、このばらつきを除去し、アニールの要因のみでμ´、μ″の値が比較できるように換算した値である。
図13、図14に示すように、従来例では、1段目〜4段目のアニール室に収納された各粉末6を用いて作製された磁性シートの複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)及び複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)のばらつきが大きくなったが、本実施例では、1段目〜4段目のアニール室に収納された各粉末6を用いて作製された磁性シートの複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)及び複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)のばらつきを小さくできることがわかった。また本実施例では、各磁性シートの複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)を安定して高い値に出来ることがわかった。
次にアニール炉20の1段目〜4段目のアニール室21〜24に収納された各粉末のオーバーシュートのピーク値と第1熱処理温度TCとの最大温度差ΔT(max)と、アニール炉20の1段目〜4段目のアニール室21〜24に収納された各粉末を用いて作製された各磁性シートの複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)と複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)のばらつきの標準偏差との関係を測定した結果を図15、図16に示す。なお、粉末には表1の粉末6を使用し、図中ΔT(max)はオーバーシュートのピーク値から第1熱処理温度TCを引いた値をΔTとした時に各アニール室21〜24のΔTの最大値を示している。すなわち、ΔT(max)が正値であるとオーバーシュートのピーク値のほうが第1熱処理温度TCよりも高く、ΔT(max)が負値であると第1熱処理温度TCのほうがオーバーシュートのピーク値よりも高いことを示している(図3(b)も参照)。
図15、図16の結果からΔT(max)の値を20℃以下とした時、すなわち、オーバーシュートのピーク値の温度より20℃低い温度以上に第1熱処理温度Tcを設定すると複素比透磁率の実数部μ´(13.56MHz)と複素比透磁率の虚数部μ″(13.56MHz)のばらつきが小さくなることが判明した。また、オーバーシュートのピーク値よりも高い第1熱処理温度Tcとすることでばらつきが少なくなることが期待される。
1 RFIDデバイス
2 RFIDタグ
3 金属部材
4 磁性シート
10 リーダライタ
20 アニール炉
21〜24 アニール室

Claims (8)

  1. 少なくともbcc相を有する組織から構成されるFe基軟磁性合金粉末の製造方法において、
    前記Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理の設定温度を、前記bcc相を析出させるための第2熱処理温度まで昇温させ、粉末温度に前記第2熱処理温度を超えるオーバーシュートが生じた後、前記オーバーシュートのピーク値より20℃低い温度以上の第1熱処理温度まで昇温させることを特徴とすることを特徴とするFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  2. 前記設定温度を、第2熱処理温度に所定時間維持した後、前記第1熱処理温度まで昇温させる請求項1記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  3. 前記設定温度を、前記第2熱処理温度に維持しつつ、前記粉末温度に前記オーバーシュートが生じた後、前記粉末温度がほぼ前記第2熱処理温度にまで低下したら、前記設定温度を第1熱処理温度まで昇温させる請求項2記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  4. 前記設定温度を、まず前記第2熱処理温度よりも低い第3熱処理温度まで昇温させ、前記第3熱処理温度に所定時間維持した後、前記第2熱処理温度まで昇温させる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  5. 前記設定温度を、第3熱処理温度に維持して、前記粉末温度がほぼ第3熱処理温度に到達した後、前記第2熱処理温度まで昇温させる請求項4記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  6. 前記第3熱処理温度に到達するまでの昇温速度を、前記第3熱処理温度から前記第2熱処理温度に到達するまでの昇温速度、及び、前記第2熱処理温度から前記第1熱処理温度に到達するまでの昇温速度よりも高速とする請求項4または5に記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  7. 前記Fe基軟磁性合金粉末に対する熱処理により、前記Fe基軟磁性合金粉末に前記bcc相と第2結晶相とを析出させ、このとき、
    前記第1熱処理温度を、前記bcc相の結晶化開始温度(Tx1)よりも高く、前記第2結晶相の結晶化開始温度(Tx2)よりも100℃以内の低い温度に設定する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
  8. 前記Fe基軟磁性合金粉末の組成式は、Fe100-a-b-c-d-eSiabcCrdeで示され、Xは、B,P,Cのうち少なくともいずれか1種、Yは、Nb,Moのうち少なくともいずれか1種、Qは、Co,Ni,Cu,Alのうち少なくともいずれか1種であり、0at%≦a≦21at%、3at%≦b≦15at%、1at%≦c≦6at%、0at%≦d≦5at%、0at%≦e≦5at%である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のFe基軟磁性合金粉末の製造方法。
JP2009135652A 2009-06-05 2009-06-05 Fe基軟磁性合金粉末の製造方法 Active JP5274381B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009135652A JP5274381B2 (ja) 2009-06-05 2009-06-05 Fe基軟磁性合金粉末の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009135652A JP5274381B2 (ja) 2009-06-05 2009-06-05 Fe基軟磁性合金粉末の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010280956A true JP2010280956A (ja) 2010-12-16
JP5274381B2 JP5274381B2 (ja) 2013-08-28

Family

ID=43537942

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009135652A Active JP5274381B2 (ja) 2009-06-05 2009-06-05 Fe基軟磁性合金粉末の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5274381B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015056424A (ja) * 2013-09-10 2015-03-23 Necトーキン株式会社 軟磁性コアの製造方法
KR20180037020A (ko) * 2015-07-28 2018-04-10 캔 에즈 썬, 인크. 스테이터 자기 코어 브러시리스 모터 기구, 시스템 및 방법
WO2019189614A1 (ja) * 2018-03-29 2019-10-03 新東工業株式会社 鉄基軟磁性粉末及びその製造方法、並びに鉄基軟磁性合金粉末を含む物品及びその製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09125135A (ja) * 1995-10-31 1997-05-13 Alps Electric Co Ltd 軟磁性合金の製造方法
JP2003213331A (ja) * 2002-01-25 2003-07-30 Alps Electric Co Ltd Fe基軟磁性合金の製造方法及びFe基軟磁性合金

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09125135A (ja) * 1995-10-31 1997-05-13 Alps Electric Co Ltd 軟磁性合金の製造方法
JP2003213331A (ja) * 2002-01-25 2003-07-30 Alps Electric Co Ltd Fe基軟磁性合金の製造方法及びFe基軟磁性合金

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015056424A (ja) * 2013-09-10 2015-03-23 Necトーキン株式会社 軟磁性コアの製造方法
KR20180037020A (ko) * 2015-07-28 2018-04-10 캔 에즈 썬, 인크. 스테이터 자기 코어 브러시리스 모터 기구, 시스템 및 방법
JP2018532357A (ja) * 2015-07-28 2018-11-01 キャン アズ サン インコーポレーテッド ステータ磁心ブラシレスモータ装置、システム及び方法
KR102270098B1 (ko) 2015-07-28 2021-06-28 캔 에즈 썬, 인크. 스테이터 자기 코어 브러시리스 모터 기구, 시스템 및 방법
WO2019189614A1 (ja) * 2018-03-29 2019-10-03 新東工業株式会社 鉄基軟磁性粉末及びその製造方法、並びに鉄基軟磁性合金粉末を含む物品及びその製造方法
KR20200129089A (ko) 2018-03-29 2020-11-17 신토고교 가부시키가이샤 철기 연자성 분말 및 그 제조 방법과, 철기 연자성 합금 분말을 포함하는 물품 및 그 제조 방법
JPWO2019189614A1 (ja) * 2018-03-29 2021-04-22 新東工業株式会社 鉄基軟磁性粉末及びその製造方法、並びに鉄基軟磁性合金粉末を含む物品及びその製造方法
JP7024859B2 (ja) 2018-03-29 2022-02-24 新東工業株式会社 鉄基軟磁性粉末及びその製造方法、並びに鉄基軟磁性合金粉末を含む物品及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5274381B2 (ja) 2013-08-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5490556B2 (ja) Fe基軟磁性合金粉末及びその製造方法、ならびに、前記Fe基軟磁性合金粉末を用いた磁性シート
TWI546394B (zh) 銅合金材及其製造方法
CN111446057B (zh) 软磁性材料及其制造方法
EP3496114B1 (en) Method for producing soft magnetic material
JP6088192B2 (ja) 圧粉磁芯の製造方法
JP5697131B2 (ja) Fe基ナノ結晶合金の製造方法、Fe基ナノ結晶合金、磁性部品、Fe基ナノ結晶合金の製造装置
JP5395984B1 (ja) αFeナノ結晶分散アモルファス溶射被膜の製造方法
JPWO2019065500A1 (ja) 圧粉磁心の製造方法、圧粉磁心及びインダクタ
CN110295299A (zh) 铜合金板材及铜合金板材的制造方法
CN102453815B (zh) 铜合金及使用其的锻制铜、电子元件及连接器以及铜合金的制造方法
JP6842824B2 (ja) 金属軟磁性合金と磁心の製造方法
JP6554278B2 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP2014075528A (ja) 軟磁性合金粉末、それを用いた圧粉磁芯及びその製造方法
JP2011171612A (ja) Fe基軟磁性合金粉末及びその製造方法、ならびに、前記Fe基軟磁性合金粉末を用いたVHF帯域用磁性シート及び成形体、VHF帯域用磁心
WO2022095702A1 (zh) 一种铁基非金合金粉料及其制备方法和用途
JP5274381B2 (ja) Fe基軟磁性合金粉末の製造方法
JP2015167183A (ja) ナノ結晶軟磁性合金粉末およびそれを用いた圧粉磁芯
WO2022183909A1 (zh) 一种铁基非晶纳米晶合金及其制备方法
CN105593382A (zh) Fe基纳米晶合金的制造方法和Fe基纳米晶合金磁心的制造方法
Paul et al. Influence of milling atmosphere on the structure and magnetic properties of mechanically alloyed Fe40Co30Ni30
JP2006219714A (ja) Fe−Ni−(Nb,V,Ta)系扁平金属軟磁性粉末およびその軟磁性粉末を含む磁性複合材
CN110556224B (zh) 软磁材料及其制造方法
JP2016162947A (ja) 軟磁性材料、軟磁性粉末、圧粉磁心、およびこれらの製造方法
US11195646B2 (en) Soft magnetic alloy powder and dust core using same
JP6744238B2 (ja) 軟磁性粉末、磁性部品及び圧粉磁芯

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110915

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130226

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130409

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130430

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130514

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5274381

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350