JP2014075528A - 軟磁性合金粉末、それを用いた圧粉磁芯及びその製造方法 - Google Patents

軟磁性合金粉末、それを用いた圧粉磁芯及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014075528A
JP2014075528A JP2012223226A JP2012223226A JP2014075528A JP 2014075528 A JP2014075528 A JP 2014075528A JP 2012223226 A JP2012223226 A JP 2012223226A JP 2012223226 A JP2012223226 A JP 2012223226A JP 2014075528 A JP2014075528 A JP 2014075528A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
soft magnetic
alloy powder
magnetic alloy
powder
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012223226A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6101034B2 (ja
Inventor
Miho Chiba
美帆 千葉
Kenri Urata
顕理 浦田
Kaoru Satake
芳 佐竹
Hiroyuki Matsumoto
裕之 松元
Eikichi Yoshida
栄吉 吉田
Teruhiro Makino
彰宏 牧野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku University NUC
Tokin Corp
Original Assignee
Tohoku University NUC
NEC Tokin Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku University NUC, NEC Tokin Corp filed Critical Tohoku University NUC
Priority to JP2012223226A priority Critical patent/JP6101034B2/ja
Publication of JP2014075528A publication Critical patent/JP2014075528A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6101034B2 publication Critical patent/JP6101034B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】熱処理時における軟磁気特性の劣化を抑制しつつナノ結晶化と圧粉磁芯の硬化の熱処理を同時に行い、且つ良好な軟磁気特性が得られる軟磁性合金粉末、圧粉磁芯およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】組成式FeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20を満たす第1の軟磁性合金粉末材料と、第2の軟磁性合金粉末材料とを混合した軟磁性合金粉末を用いて圧粉磁芯を作製した。第1の軟磁性合金粉末材料の第1結晶開始温度Tx−50℃以上第2結晶化開始温度Tx未満の温度範囲ΔTにおいて、軟磁性合金粉末の最大発熱温度は、第1の軟磁性合金粉末材料の最大発熱温度よりも低くすることにより、良好な軟磁気特性が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁芯及びその製造方法に関する。
近年の電気機器や電子機器の小型、軽量、高速化への対応はめざましく、それに伴い電気機器や電子機器に用いられる磁性材料には、より高い飽和磁束密度と、より高い透磁率が求められている。そこで、高飽和磁束密度および高透磁率を有する軟磁性合金粉末や、それを用いた圧粉磁芯等を得るために、多様な技術が知られている。
例えば、特許文献1には、非晶質軟磁性合金粉末Aと軟磁性合金微細粉末Bとを混合し加圧成型して得られる圧粉磁芯において、粉末Aの粒度分布の最頻値が粉末Bの5倍以上であり、かつ粉末Aと粉末Bの体積の和全体に対する粉末Bの体積百分率が3%以上50%以下とする圧粉磁芯が開示されている。また、特許文献2には、ナノ結晶材と非晶質材とを混合して加圧成型して得られる圧粉磁芯および磁性素子が開示されている。
特開2001−196216号公報 特開2007−134591号公報
従来技術により、非晶質軟磁性合金混合粉末を用いてトランスやインダクタ、モータ等に用いる圧粉磁芯を作製する場合には、非晶質軟磁性体合金粉末を所望の形状に加圧成型して、熱処理工程により微細結晶析出させる方法が一般的になされている。しかし、特許文献1のような成型密度を向上させた構成の圧粉磁芯や、特許文献2のようなナノ結晶材と非晶質材の混合させる従来の方法では、ナノ結晶相を析出させる熱処理工程の際に、相変態に伴うエネルギー放出(発熱)が急激に起こり、磁性合金温度が急上昇して結晶粒の粗大化や不純物の生成が引き起こされ、軟磁気特性が劣化するという課題があった。また、ナノ結晶相を析出させる熱処理工程と圧粉磁芯の硬化を別に行っていたため、熱処理工程が複数回行われていた。
そこで、本発明は、上記欠点を解決し、ナノ結晶化による軟磁気特性劣化を抑制する。また、ナノ結晶化と圧粉磁芯の硬化の熱処理を同時に行い工程数の低減を図り、化合物の生成を抑制し、良好な軟磁気特性が得られる軟磁性合金粉末、圧粉磁芯およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明の発明者らは、第1の軟磁性合金粉末に対して、当該第1の軟磁性合金粉末とは異なる性質(詳しくは後述する)を有する第2の軟磁性合金粉末を混合することにより、熱処理時の発熱を抑制できることを見出し、かかる混合粉末を用いた圧粉磁芯の作製を案出した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明によれば、第1の軟磁性合金粉末であって、組成式FeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20を満たす第1の軟磁性合金粉末材料と、第2の軟磁性合金粉末材料とを混合してなる軟磁性合金粉末であって、
前記第1の軟磁性合金粉末材料の「第1結晶開始温度Tx−50℃」以上「第2結晶化開始温度Tx」未満の温度範囲ΔTにおいて、前記軟磁性合金粉末の最大発熱温度は、前記第1の軟磁性合金粉末材料の最大発熱温度よりも低い、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第2の軟磁性合金粉末であって、第1の軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、当該第2の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Tx以上においてα−Fe微結晶が析出するものであり、
前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記第2の軟磁性粉末材料における第1結晶開始温度Txとは、互いに異なる
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第3の軟磁性合金粉末であって、第2の軟磁性合金粉末であって、
前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記第2の軟磁性粉末材料における第1結晶開始温度Txとは、5℃以上互いに異なる、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第4の軟磁性合金粉末であって、第1乃至第3のいずれかの軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末の組成式と同一の組成式で表され且つ当該第1の軟磁性合金粉末の組成とは異なる組成を有する、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第5の軟磁性合金粉末であって、第1乃至第4のいずれかの軟磁性合金粉末であって、
前記第1の軟磁性合金粉末材料と、前記第2の軟磁性合金粉末材料は、いずれも非晶質相を主相とする、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第6の軟磁性合金粉末であって、第1乃至第5のいずれかの軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、2以上の軟磁性粉末材料からなるものであり、
前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記2以上の軟磁性粉末材料の夫々における第1結晶開始温度Txとは、互いに異なる、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第7の軟磁性合金粉末であって、第1の軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末材料の前記温度範囲ΔTにおいて発熱しない、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第8の軟磁性合金粉末であって、第7の軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、ナノ結晶化済み粉末、非晶質粉末、又は結晶性磁性粉末から選択される1以上の粉末からなる、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第9の軟磁性合金粉末であって、第8の軟磁性合金粉末であって、
前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末の組成と同一の組成を有するナノ結晶化済粉末である、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第10の軟磁性合金粉末であって、第1乃至第9のいずれかの軟磁性合金粉末であって、
前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、Mg、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる、
軟磁性合金粉末が得られる。
また、本発明によれば、第1乃至第11のいずれかの軟磁性合金粉末と結合材とを混合した後に圧縮成型し、更に熱処理をしてなる、
圧粉磁芯が得られる。
また、本発明によれば、第1乃至第11のいずれかに記載の軟磁性合金粉末と結合材とを混合する結合材混合工程と、前記軟磁性合金粉末と結合材との混合物を圧縮成型する工程と、前記圧縮成型された前記混合物を熱処理する工程とを備える、
圧粉磁芯の製造方法が得られる。
なお、混合する結晶化開始温度の異なる軟磁性合金粉末の数や、非発熱特性を有する粉末の数についての制限はなく、また、それらを組み合わせて行っても良い。
本発明のように、第1の軟磁性合金粉末と当該第1の軟磁性粉末とは結晶化開始温度の異なる第2の軟磁性合金粉末とを混合してなる軟磁性合金粉末(特に、第1乃至第6の軟磁性合金粉末)、又は第1の軟磁性合金粉末と熱処理工程において非発熱特性を有する粉末とを混合してなる軟磁性合金粉末(特に、第7乃至第9の軟磁性合金粉末)に対して熱処理を施すことにより、熱処理時において結晶の析出に伴う発熱を分散/低減することが可能となり、ナノ結晶析出時の発熱による急激な温度上昇が抑制される。これにより、化合物の生成が抑制され、良好な軟磁気特性を得ることができる。
また、ナノ結晶化と圧粉磁芯の硬化の熱処理を同時に行うことにより工程数の低減を図ることができることから、工程数の低減を図り、化合物の生成を抑制しつつ、良好な軟磁気特性が得られる。
本発明の実施の形態による圧粉磁芯の製造方法を模式的に示したフロー図である。 図1の粉末混合工程における混合条件を設定するために使用されるDSC曲線を示す図である。 本発明の実施の形態1による軟磁性合金粉末のDSC曲線の一部を示す図である。図においては、第1ピーク付近を拡大して表示している。 本発明の実施の形態2による混合粉末において、DSC曲線の第1ピークを示す図である。 本発明の実施の形態3による混合粉末において、DSC曲線の第1ピークを示す図である。 本発明の実施の形態4による混合粉末において、DSC曲線の第1ピークを示す図である。 本発明の実施例1〜3、比較例1、2における混合粉末のDSC曲線を示す図である。 本発明の実施例4〜6、比較例1、3における混合粉末のDSC曲線を示す図である。 本発明の実施例7、比較例1、3、4における混合粉末のDSC曲線を示す図である。 本発明の実施例8〜10、比較例5、6による圧粉磁芯の磁気特性(コアロス)を示す図である。 本発明の実施例8〜10、比較例5、6による圧粉磁芯のXRDパターンを示す図である。 本発明の実施例11〜13、比較例5、7による圧粉磁芯の磁気特性(コアロス)を示す図である。 本発明の実施例15、16、比較例9〜11のDSC曲線を示す図である。
本発明の各実施の形態による軟磁性合金粉末は、概略、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる性質(詳しくは各実施の形態においてする)を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。また、本発明の各実施の形態による圧粉磁芯は、上記軟磁性合金粉末を用いて製造される。以下、各実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態による軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。また、第1の実施の形態による圧粉磁芯は、当該軟磁性合金粉末を用いて製造されるものである。
図1は、本発明の実施の形態に係る圧粉磁芯の製造フロー図である。本発明の圧粉磁芯の製造方法は、粉末混合工程と磁芯作製工程の大きく2つの工程からなっている。粉末混合工程は、2種類の軟磁性合金粉末(第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末)を設定された配合割合で混合して、混合粉末を作製する。磁芯作製工程では、混合粉末にシリコーン系などの耐熱性が高く絶縁性が良好な結合材を混合することにより、造粒粉を得る。次いで、金型を用いて造粒粉を加圧成型して圧粉体を得る。その後、圧粉体を熱処理して、ナノ結晶化と結合材の硬化を同時に行い、圧粉磁芯を作製する。
本実施の形態による熱処理工程では、軟磁性合金粉末を毎分10℃以上の昇温速度で加熱し、ナノ結晶を析出させる。その熱量の状況は、DSC(Differential ScanningCalorimetry:示差走査熱量測定、以下DSCと記す)で、測定することができる。DSCは、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測することで、縦軸に重量で規格化した熱流、横軸に温度や時間をとった曲線となる。
以下、DSCで測定されるDSC曲線について説明する。図2に示されるDSC曲線10は、Pt製試料容器中に投入した試料をDSC装置内に設置し、不活性雰囲気中において昇温速度40℃/分で試料を目的の温度まで加熱して得られたものである。図2において、Txは第1結晶化開始温度であり、ベースライン20と第1上昇接線32(第1立ち上がり部12のうちの最も正の傾きの大きい点を通る接線)との交点にて定まる温度である。Txは第2結晶化開始温度であり、ベースライン21と第2上昇接線42(第2立ち上がり部16のうちの最も正の傾きの大きい点を通る接線)との交点にて定まる温度である。また、第1ピーク11はα−Fe析出に伴う発熱ピークであり、第2ピーク15は、Fe−B系やFe−P系化合物の析出に伴う発熱ピークである。
熱処理は、軟磁性合金粉末の微細結晶析出のために行われるものである。本実施の形態による熱処理は、図2に示されるDSC曲線10において、「第1結晶化開始温度Tx−50℃」以上、「第2結晶化開始温度Tx」未満で行われる。この温度範囲で適切に熱処理が行われると、平均粒径5nm以上50nm以下のbccFeナノ結晶が析出し、軟磁気特性の向上を図ることができる。熱処理温度が第2結晶化開始温度Txを超えてしまうと、Fe−BやFe−Pなどが析出し、軟磁気特性が劣化してしまう。従って、熱処理工程においては第1結晶化のみを促進するように、熱処理することで、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯を製造することができる。なお、図2に示すDSC曲線10において、ベースラインに対する山のピークは発熱反応、谷のピークは吸熱反応として現れる。
本実施の形態における軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第2の軟磁性合金粉末とを混合して成るものである。ここで、第1の軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度と、第2の軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度との差(以下、単に「結晶化開始温度の差」と呼ぶ)は5℃以上離れている。結晶化開始温度の差が小さいと微細結晶析出に伴う発熱の影響が大きくなり結晶粒径の制御が困難となり、軟磁気特性が劣化する。なお、非晶質合金粉末の組成を変えることにより、それぞれの非晶質合金粉末の第1結晶化開始温度を変えることができる。本実施の形態においては、結晶化開始温度の差が5℃以上である非晶質合金粉末を混合すれば、熱処理時において、混合粉末の発熱を昇温時の異なるタイミング(即ち、異なる昇温温度)に分散(以下、「発熱の分散」と呼ぶ)させることができる。これにより、熱処理時の不要な発熱を抑制することができ、結晶粒径を制御できることから、良好な軟磁気特性を得ることができる。特に、図3の考察(詳しくは後述する)からも理解されるように、結晶化開始温度の差が大きいほど異なる温度に発熱を分散する効果が大きいことから、結晶化開始温度の差は、15℃以上であることが好ましい。
更に、本実施の形態における軟磁性合金粉末における第1の軟磁性合金粉末の割合は100重量%未満である。即ち、第2の軟磁性合金粉末が少しでも混合されていればその混合割合に応じた発熱の分散が期待できる。特に、発熱の分散の効果や発熱量に対する熱容量の増加を考慮すると、混合粉末における第1の軟磁性合金粉末の割合は90重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、70重量%以下である。
図3から、「結晶化開始温度の差」及び「混合粉末における第1の軟磁性合金粉末の割合」と「発熱分散」の関係について考察することができる。図3は、上記第1の実施の形態の条件を満たす混合粉末のDSC曲線の一部を示したものであり、図においては、第1の軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度付近が拡大されて示されている。混合粉末における第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との結晶化開始温度の差は23℃であり、混合粉末における第1の軟磁性合金粉末の割合は50重量%である。DSC曲線100は、2つの発熱ピーク101及び発熱ピーク102を有している。このように、2つの異なるピークが現れるのは、第1の軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度と、第2の軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度とが互いに異なることによって、異なる温度で結晶化に伴う発熱を生じるからである。なお、発熱ピーク101及び発熱ピーク102の夫々は、第1の軟磁性粉末及び第2の軟磁性合金粉末の夫々に対応している。かかるDSC曲線100から理解されるように、本実施の形態による軟磁性合金粉末の発熱ピークは、2つに分散されている。なお、DSC曲線の横軸は温度であるが、一定の昇温速度で測定していることから経過時間として捉えることが可能である。すなわち、狭い温度範囲でピークが大きい比較例に対して、実施例では広い温度範囲でピークがブロードであり、時間経過に対して発熱が緩やかに起こっているといえる。このように、本実施の形態においては、熱処理工程において、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末とが、異なるタイミングで結晶化するため、第1の軟磁性合金粉末を単体で熱処理した場合と比べて急激な発熱が抑制され、混合粉末の温度が化合物生成温度以上に到達するのを防ぐことができる。即ち、本実施の形態による軟磁性合金粉末の最大発熱温度は、熱処理の温度範囲ΔT内において、第1の軟磁性合金粉末を単体で熱処理したときに発生する最大発熱温度よりも低い。
上記粉末混合工程に続く磁芯作製工程においては、混合粉末をシリコーン系などの耐熱性が高く絶縁性が良好な結合材と混合・造粒して造粒粉を得る。次いで、金型を用いて造粒粉を加圧成型して圧粉体を得る。その後、圧粉体を熱処理して、ナノ結晶化と結合材の硬化を同時に行い、圧粉磁芯を得る。このようにして得られた圧粉磁芯に含まれるFe基ナノ結晶合金粉末は、熱処理工程において急激な発熱を抑制できることから、結晶の粗大化や不要な化合物の生成の抑制されたものであり、従って、圧粉磁芯も優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものとなる。また、放熱性に劣る圧粉磁芯形状において熱処理可能となり、工程数を低減することが可能となる。さらに、加圧成型後にナノ結晶化できるため、ナノ結晶に対する応力付与を回避でき、低磁歪組成でなくても、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯となる。
続いて、本実施の形態による第1の軟磁性合金の組成を説明する。第1の軟磁性合金粉末は、組成式FeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20を満たすものである。かかる組成式を満たすことにより、結晶化開始温度を制御して良好な軟磁気特性を得ることができる。
上記第1の軟磁性合金粉末において、Feは主元素であり、磁性を担う必須元素である。飽和磁束密度の向上及び原料価格の低減のため、Feの割合が多いことが基本的には好ましい。Feの割合が79at%より少ないと、均質な微細結晶組織を得ることができず、また、望ましい飽和磁束密度が得られない。Feの割合が86at%より多いと、粉末作成時の液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になり、結晶粒径のばらつきや粗大化が生じてしまうため、軟磁性合金粉末の軟磁気特性が劣化する。従って、第1の軟磁性合金粉末におけるFeの割合は、79at%以上、86at%以下である。また、1.60T以上の飽和磁束密度を得るためには、Feの下限は、80at%以上であることが望ましく、圧粉磁芯の小型化すべく更に高い1.70T以上の飽和磁束密度を得るためには、Feの下限は、82at%以上であることが望ましい。ただし、Feの割合が多い場合は、発熱分散の効果や発熱量に対する熱容量増加の効果が小さくなる。
また、上記軟磁性合金粉末において、Bは非晶質相形成を担う必須元素である。Bの割合が5at%より少ないと、粉末作成時の液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になる。Bの割合が13at%より多いと、均質な微細結晶組織を得ることができず、軟磁性合金粉末の軟磁気特性が劣化する。従って、第1の軟磁性合金粉末におけるBの割合は、5at%以上、13at%以下である。特に量産化のため軟磁性合金粉末が低い融点を有する必要がある場合、Bの上限は、10at%以下であることが好ましい。
また、上記軟磁性合金粉末において、Siは非晶質相形成を担う元素であり、必ずしも含まれなくても良いが、微細結晶化にあたっては微細結晶の安定化に寄与する。Siの割合が8at%よりも多いと、飽和磁束密度と非晶質相形成能が低下し、更に軟磁気特性が劣化する。従って、Siの割合は、8at%以下であることが望ましい。特に、混合粉末の融点を低下させて量産化を容易にしつつ液体急冷下における非晶質形成能を容易にし、圧粉磁芯を安定して作製するためには、Siの上限は、5at%以下であることが望ましい。
また、上記軟磁性合金粉末において、Pは非晶質相形成を担う必須元素である。Pの割合が1at%より少ないと、粉末作成時の液体急冷凝固装置による液体急冷条件下での非晶質相の形成が困難になる。Pの割合が10at%より多いと、飽和磁束密度が低下し軟磁気特性が劣化する。従って、第1の軟磁性合金粉末におけるPの割合は、1at%以上、10at%以下であることが望ましい。特にPの割合が2at%以上、5at%以下であると、非晶質相形成能が向上し、安定して圧粉磁芯を作製することができる事に加え、飽和磁束密度も向上する。本実施の形態においては、B、Si及びPの組み合わせを用いることで、いずれか一つしか用いない場合と比較して、非晶質相形成能や微細結晶の安定性を高めることができる。
また、上記軟磁性合金粉末において、Cは非晶質形成を担う元素であり、必ずしも含まれなくても良い。Cは安価であるため、Cの添加により他の半金属量が低減され、総材料コストが低減される。但し、Cの割合が5at%を超えると、軟磁性合金粉末が脆化し、軟磁気特性の劣化が生じるという問題がある。従って、Cの割合は、5at%以下が望ましい。特にCの割合が3at%以下であると、Cの蒸発に起因した組成のばらつきを抑えることができる。また、本実施の形態においては、B、Si、P、Cの組み合わせを用いることで、いずれか一つしか用いない場合と比較して、非晶質相形成能や微細結晶の安定性を高めることができる。
また、上記軟磁性合金粉末において、Cuは微細結晶化に寄与する必須元素である。さらに、Cuは基本的に高価であり、Feの割合が81at%以上である場合には、軟磁性合金粉末の脆化や酸化を生じさせやすい。なお、Cuの割合が0.4at%より少ないと、微細結晶化が困難になる。Cuの割合が1.4at%より多いと、非晶質相からなる前駆体が不均質になり、そのため微細結晶の形成の際に均質な微細結晶組織が得られず、軟磁気特性が劣化する。従って、混合粉末の酸化及びナノ結晶への粒成長を考慮すると、第1の軟磁性合金粉末におけるCuの割合は、0.4at%以上、1.4at%以下である。ここで、Si、B及びPとCuとの組み合わせ又はSi、B、P及びCとCuとの組み合わせが微細結晶化に寄与する。
また、上記軟磁性合金粉末において、PとCuとの間には、強い原子間引力がある。従って、軟磁性合金粉末が特定の比率のPとCuとを含んでいると、10nm以下のサイズのクラスターが形成され、この微細なクラスターによって微細結晶の形成の際にbccFe結晶は微細構造を有するようになる。より具体的には、本実施の形態による微細結晶は平均粒径が50nm以下であるbccFe結晶を含んでいる。本実施の形態において、Pの割合(x)とCuの割合(z)との特定の比率(z/x)は、0.06以上、1.20以下である。この範囲以外では、均質な微細結晶組織が得られず、従って、軟磁性合金粉末は優れた軟磁気特性を示さない。特に、軟磁性合金粉末の脆化及び酸化を考慮すると、特定の比率(z/x)は、0.08以上、0.8以下であることが好ましい。
さらに、前記軟磁性合金粉末が、Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、Mg、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる軟磁性合金粉末で構成することにより良好な軟磁気特性が得られる。
上記元素は、基本的に不純物元素であり、製造過程において軟磁性合金粉末に含有される可能性がある。不純物元素を多く含有した場合には、軟磁気特性が劣化すると考えられるが、Fe置換が3at%以下であれば、耐食性の改善や電気抵抗の調整などのため、飽和磁束密度の著しい低下が生じない範囲で置換可能で、良好な軟磁気特性を維持できる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態による軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、熱処理工程において発熱反応が起こらない特性(以下、「非発熱特性」と呼ぶ)を有する第2の軟磁性粉末とを混合してなるものである。
本実施の形態による第2の軟磁性合金粉末は、非発熱特性を有していることから、その混合比率に応じて、熱処理時における軟磁性合金粉末全体の発熱が低減される。ここで、非発熱特性を有する第2の軟磁性合金粉末としては、本実施の形態の熱処理の温度範囲ΔT(第1の軟磁性合金粉末における、「第1結晶化開始温度Tx−50℃」以上、「第2結晶化開始温度Tx」未満の温度範囲)においては発熱反応を起こさないものを用いることができる。例示すると、(1)非晶質粉末(金属ガラス等)のように、本実施の形態の熱処理の温度範囲よりも高温の領域で結晶化(発熱)を起こすもの、(2)結晶性粉末(Fe−Si粉末又はFe−Ni粉末等)のようにこれ以上発熱を伴う結晶化を起こさないもの、及び(3)既に熱処理を施すことにより粉末の微細結晶化(第1結晶化)が済んでいる粉末(以下、「ナノ結晶化済み粉末」と呼ぶ)を用いることができる。
第2の実施の形態においては、上記非発熱特性を有する第2の軟磁性合金粉末として、非晶質粉末(金属ガラス粉末)を用いている。即ち、本実施の形態による粉末混合工程において、第1の軟磁性合金粉末と、非晶質粉末(金属ガラス粉末)とを混合することとしている。図4は、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(a)のDSC曲線110と、本実施の形態による軟磁性合金粉末(b:第1の軟磁性合金粉末及び第2の軟磁性合金粉末を50:50で混合した粉末)のDSC曲線120であり、いずれも第1ピーク付近を示している。ここで、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4Si11Cu0.6であり、第2の軟磁性合金粉末(金属ガラス粉末)の組成はFe761110NbCrである。なお、いずれも熱処理の昇温速度は40℃/minである。混合粉末に対する第1の軟磁性合金粉末の割合が50重量%である場合には、図4に示されるように、ピークの高さが減少し、単位重量あたりの発熱量が50%程度に低減していることがわかる。即ち、本実施の形態による軟磁性合金粉末の最大発熱温度も、熱処理の温度範囲ΔT内において、第1の軟磁性合金粉末を単体で熱処理したときに発生する最大発熱温度よりも低い。
かかる軟磁性合金粉末を用いた磁芯作製工程は実施の形態1と同様であり、これにより得られた圧粉磁芯に含まれるFe基ナノ結晶合金粉末は、熱処理工程において急激な発熱を抑制できることから、結晶の粗大化や不要な化合物の生成が抑制されたものであり、圧粉磁芯も優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものとなる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態による軟磁性合金粉末も、第2の実施の形態と同様に、第1の軟磁性合金粉末と、非発熱特性を有する第2の軟磁性粉末とを混合してなるものである。
本実施の形態においては、上記非発熱特性を有する第2の軟磁性合金粉末として、結晶性磁性粉末を用いている。即ち、本実施の形態による粉末混合工程において、第1の軟磁性合金粉末と、結晶性磁性粉末とを混合している。図5は、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(a)のDSC曲線130と、本実施の形態による軟磁性合金粉末(b:第1の軟磁性合金粉末及び第2の軟磁性合金粉末を80:20で混合した粉末)のDSC曲線140であり、いずれも第1ピーク付近を示している。ここで、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4Si11Cu0.6であり、第2の軟磁性合金粉末(結晶性粉末)の組成はFe94.2Si5.8である。なお、いずれも熱処理の昇温速度は40℃/minである。混合粉末に対する第1の軟磁性合金粉末の割合が80重量%である場合には、図5に示されるように、ピークの高さが減少し、単位重量あたりの発熱量が80%程度に低減している。即ち、本実施の形態による軟磁性合金粉末の最大発熱温度も、熱処理の温度範囲ΔT内において、第1の軟磁性合金粉末を単体で熱処理したときに発生する最大発熱温度よりも低い。
かかる軟磁性合金粉末を用いた磁芯作製工程も実施の形態1と同様であり、これにより得られた圧粉磁芯に含まれるFe基ナノ結晶合金粉末は、熱処理工程において急激な発熱を抑制できることから、結晶の粗大化や不要な化合物の生成が抑制されたものであり、圧粉磁芯も優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものとなる。
高い展性を有する結晶性磁性粉末(純Fe、Fe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Al合金など)を使用することで高充填化が可能であり、Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金などのゼロ磁歪粉末を使用することで、損失の増加についても抑制することができる。Fe系ではない金属粉末および合金粉末を用いることも可能である。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態による軟磁性合金粉末も、第2の実施の形態と同様に、第1の軟磁性合金粉末と、非発熱特性を有する第2の軟磁性粉末とを混合してなるものである。
本実施の形態においては、上記非発熱特性を有する第2の軟磁性合金粉末として、ナノ結晶化済み粉末を用いている。即ち、本実施の形態による粉末混合工程において、第1の軟磁性合金粉末と、ナノ結晶化済み粉末とを混合している。図6は、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(a)のDSC曲線150と、本実施の形態による軟磁性合金粉末(b:第1の軟磁性合金粉末及び第2の軟磁性合金粉末を70:30で混合した粉末)のDSC曲線160であり、いずれも第1ピーク付近を示している。ここで、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe83.3SiCu0.7であり、第2の軟磁性合金粉末(ナノ結晶化済み粉末)の組成もFe83.3SiCu0.7である。なお、いずれも熱処理の昇温速度は40℃/minである。粉末混合工程において、混合粉末に対する第1の軟磁性合金粉末の割合が70重量%である場合には、図6に示されるように、単位重量あたりの発熱量が70%程度に低減している。即ち、本実施の形態による軟磁性合金粉末の最大発熱温度も、熱処理の温度範囲ΔT内において、第1の軟磁性合金粉末を単体で熱処理したときに発生する最大発熱温度よりも低い。
ナノ結晶化済み粉末においては、制御した熱処理によって理想的なナノ結晶構造を析出させておくことで、試料温度の上昇抑制と理想的なナノ結晶化の両立が可能である。なお、ナノ結晶化済み粉末の組成は軟磁性合金粉末と同一であっても異なっていてもよい。ナノ結晶化済み粉末の組成は軟磁性合金粉末と同一とした場合には、組成の異なる材料を用意する必要がないことから、製造の容易化及び低コスト化を図ることができる。本実施の形態によるナノ結晶化済み粉末は、非晶質相を主相とする軟磁性合金粉末を熱処理することによって予め作製する。ナノ結晶化済み粉末に含まれる結晶粒の結晶粒径は30nm未満が好ましい。
かかる軟磁性合金粉末を用いた磁芯作製工程も実施の形態1と同様であり、これにより得られた圧粉磁芯に含まれるFe基ナノ結晶合金粉末は、熱処理工程において急激な発熱を抑制できることから、結晶の粗大化や不要な化合物の生成が抑制されたものであり、圧粉磁芯も優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものとなる。
(軟磁性合金粉末:実施例1〜3、比較例1、2)
実施例1〜3の軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とするFe基合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4Si11Cu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe81.4Si10Cu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は449℃である。結晶化開始温度の差は、23℃である。第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25(実施例1)、50:50(実施例2)、25:75(実施例3)となるように容器に量りいれて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、各混合粉末について、昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。更に、比較例として、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例1)と、第2の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例2)についてもDSC測定をおこなった。
実施例1〜3、比較例1、2における混合粉末のDSC曲線を図7に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)実施例1:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25
(c)実施例2:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=50:50
(d)実施例3:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=25:75
(e)比較例2:第2の軟磁性合金粉末のみ
図7より、実施例1〜3においては、比較例1と比較例2に比べて、発熱ピークが分散していることが確認できる。DSC曲線の横軸は温度であるが、一定の昇温速度で測定していることから、経過時間として捉えることが可能であり、狭い温度範囲でピークが大きい比較例に対して、広い温度範囲でピークがブロードな実施例では、時間経過に対して発熱が緩やかに起こっているといえる。
(軟磁性合金粉末:実施例4〜6、比較例1、3)
実施例4〜6の軟磁性合金粉末は、上記実施例1〜3と同様に、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものであり、且つ結晶化開始温度の差が上記実施例1〜3よりも小さい場合の例である。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とする合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4Si11Cu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe81.3SiCu0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は440℃である。結晶化開始温度の差は14℃である。第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25(実施例4)、50:50(実施例5)、25:75(実施例6)となるように容器に量りいれて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、各混合粉末について、昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。更に、比較例として、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例1)と、第2の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例3)についてもDSC測定をおこなった。
実施例4〜6、比較例1、3における混合粉末のDSC曲線を図8に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)実施例4:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25
(c)実施例5:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=50:50
(d)実施例6:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=25:75
(e)比較例3:第2の軟磁性合金粉末のみ
図8より、実施例4〜6においても、比較例1と比較例3に比べて、発熱ピークが分散していることが確認できる。ただし、実施例4〜6における第1結晶化開始温度の差(14℃)は、上述した実施例1〜3における差(23℃)に比べて小さいことから、発熱ピークの形状は2つのピークの間隔が狭く実施例1〜3に比べて急峻である。即ち、結晶化開始温度の差が狭い場合には、発熱を緩やかにする効果が減少することがわかる。
(軟磁性合金粉末:実施例7、比較例1、3、4)
実施例7の軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末及び第3の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。ここで、第1の軟磁性合金粉末と、第2の軟磁性合金粉末と、第3の軟磁性合金粉末とにおける第1結晶化開始温度は、互いに異なる。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とする合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4Si11Cu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe81.4SiCu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は434℃である。また、第3の軟磁性合金粉末の組成はFe81.3SiCu0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は440℃である。これらの粉末を同じ重量ずつ容器にはかり入れて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、混合粉末について昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。
実施例7、比較例1、3、4における混合粉末のDSC曲線を図9に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)比較例4:第2の軟磁性合金粉末のみ
(c)比較例3:第3の軟磁性合金粉末のみ
(d)実施例7:第1〜第3の軟磁性合金粉末の等重量混合粉末
図9より実施例7の混合粉末では、単独粉末である比較例1、3、4と比較して、発熱ピークがブロードになっており、混合する粉末が3種類の場合にも、発熱を緩やかにする効果があることがわかった。
(圧粉磁芯:実施例8〜10、比較例5、6)
実施例8〜10として、上記実施例1〜3の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。比較例5及び6として、比較例1及び2の合金粉末を用いた圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。圧粉磁芯の作製方法は以下の通りである。
まず、合金粉末と合金粉末に対して重量比で4%となる熱硬化性結合材を混合し、500μmのメッシュを通して造粒した。造粒粉2.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力735MPaにて成型し、外径13mm−内径8mmの円筒形状の圧粉体を作製した。赤外線加熱装置を用いて、425℃まで毎分40℃の昇温速度となるように圧粉体を加熱し、425℃にて20分間保持した後、空冷し、圧粉磁芯を得た。
図10より、実施例8〜10の圧粉磁芯は、比較例5に示す単独粉末を用いて作製した圧粉磁芯に対して、低いコアロスPcvを示している。実施例9及び10については、比較例6に対しても同等以下の低いコアロスPcvを示しており、優れた軟磁気特性を得ることができている。
図11は、実施例8〜10、比較例5、6による圧粉磁心のXRDパターンを示す図である。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例5:Fe82.4Si1B11P5Cu0.6のみ
(b)実施例8:Fe82.4Si1B11P5Cu0.6とFe81.4Si3B10P5Cu0.6との混合粉末(75:25)
(c)実施例9:Fe82.4Si1B11P5Cu0.6とFe81.4Si3B10P5Cu0.6との混合粉末(50:50)
(d)実施例10:Fe82.4Si1B11P5Cu0.6とFe81.4Si3B10P5Cu0.6との混合粉末(25:50)
(e)比較例6:Fe81.4Si3B10P5Cu0.6のみ
図11より、実施例8〜10および比較例6の圧粉磁芯の結晶相はbccFe(αFe,Fe−Si)のみであるが、比較例5に示す圧粉磁芯においては、bccFe(αFe,Fe−Si)に加えて、Fe−B系化合物が生成していることが確認でき、第1結晶化開始温度の異なる2種類の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製することで、化合物の生成を抑制することができている。
実施例8〜10、比較例5、6の圧粉磁芯の電磁気特性の評価を表1に示す。飽和磁束密度Bsの測定は、上記圧粉磁芯と同一の条件で熱処理を行った粉末について行い、1500kA/mでの磁場中において、振動試料型磁力計(V.S.Magnetometer、理研電子製)を用いて測定した飽和磁化より算出した。コアロスPcvは、B−H/μアナライザ(SY−8258、岩通計測製)を用いて、周波数20kHz−磁束密度100mTの条件にて測定した。また、生成物は、X線回折(XRD:X−ray Diffraction)装置を用いたX線回折法により得られたXRDパターンの回折ピークから、Scherrerの式を用いて算出した。以上により、圧粉磁心を測定し、評価した。
Figure 2014075528
比較例6に対しては、比較例6の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsが1.62Tであるのに対して、実施例8の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsは1.70T、実施例9は1.67T、実施例10は1.65Tであり、いずれも高Bs化できている。
また、実施例8〜10の結晶粒径はそれぞれ27nm、27nm、26nmであり、本実施の形態において、30nm以下の微結晶を析出できていることがわかった。このように、本発明の実施例によるFe基ナノ結晶合金粉末を用いた磁芯は、化合物の生成が防がれており、且つ、優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものであることが理解される。
(圧粉磁芯:実施例11〜13、比較例5、7)
実施例11〜13として、実施例4〜6の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。また、比較例5及び比較例7として、夫々比較例1及び比較例3の単一種類の合金粉末を用いた圧粉磁芯についても作製し、電磁気特性を評価した。圧粉磁芯の作製方法及び電気特性の評価方法は、実施例8〜10、比較例5及び6と同じである。実施例11〜13、比較例5、7の圧粉磁芯の電磁気特性の評価を表2に示す。
Figure 2014075528
表2及び図12より、実施例11〜13の圧粉磁芯は、比較例5に示す単独粉末を用いて作製した圧粉磁芯に対して、低いコアロスPcvを示している。比較例7に対しては、比較例7の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsが1.67Tであるのに対して、実施例11の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsは1.72T、実施例12は1.70T、実施例13は1.69Tであり、いずれも高Bs化できている。
また、上記表1の実施例8〜10と実施例11〜13とを比較すると、混合粉末のうち第1の軟磁性合金粉末(Fe82.4Si11Cu0.6)は共通であるが、第2の軟磁性合金粉末は異なっている。実施例8と実施例11、実施例9と実施例12、実施例10と実施例13の夫々は、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が同じであるが、コアロスPcvは実施例8〜10(第2の軟磁性合金粉末として、Fe81.4Si10Cu0.6を混合)の圧粉磁芯の方が、実施例11〜13(第2の軟磁性合金粉末として、Fe81.3SiCu0.7を混合)よりも低ロスであった。実施例8〜10の第2の軟磁性合金粉末(比較例6:Fe81.4Si10Cu0.6)のみからなる圧粉磁芯と、実施例11〜13の第2の軟磁性合金粉末(比較例7:Fe81.3SiCu0.7)のみからなる圧粉磁芯とを比較すると、コアロスPcvはほぼ同じ値であることから、実施例8〜10の圧粉磁芯を構成する軟磁性合金粉末は、実施例11〜13の圧粉磁芯を構成する軟磁性合金粉末に比べて第1結晶化開始温度の差が大きく、発熱ピークがより緩やかになっているため、急激な発熱を防ぐとともに最大発熱量をも低減することができ、コアロスPcvが優れていることを示している。以上より、第1結晶化開始温度の差が大きい方が、急激な発熱による磁気特性の劣化を抑制できることが理解される。
(圧粉磁芯:実施例14〜16、比較例8〜11)
実施例14〜16の圧粉磁芯は、第1の軟磁性合金粉末と、熱処理工程において発熱反応が起こらない特性(以下、「非発熱特性」と呼ぶ)を有する第2の軟磁性粉末とを混合してなるものであり、軟磁性合金粉末を用いて作製した。詳しくは、実施例14〜16の圧粉磁芯に用いられる軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末及び第2の軟磁性合金粉末は、夫々、ナノ結晶化前粉末及びナノ結晶化済み粉末である。かかる混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。また、比較例8〜11として、実施例14〜16の圧粉磁芯に用いられる混合粉末を構成する粉末を単体で用いた圧粉磁芯についても作製し、電磁気特性を評価した。なお、実施例14〜16の圧粉磁芯を構成する混合粉末の混合比は、いずれも重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=70:30である。また、圧粉磁芯の作製方法及び電気特性の評価方法は、実施例8〜10、比較例5及び6と同じである。
実施例14の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、具体的には、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、XRDにより非晶質であることが確認されている。第1の軟磁性合金粉末の組成はFe83.3SiCu0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は412℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、この非晶質合金粉末を、赤外線加熱装置を用いて、450℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、450℃にて5分間保持した後、空冷して得られたものである。ナノ結晶化済み粉末の結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ27nmであった。また、比較例8として、実施例14の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
なお、実施例14は、上述した第4の実施の形態において説明した軟磁性合金の構成と同一であり、図6に示されるように発熱分散の効果が得られていることがわかる。
実施例15の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、XRDにより非晶質であることが確認されている。第1の軟磁性合金粉末の組成はFe82.4101.0Cu0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は428℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、この非晶質合金粉末を、赤外線加熱装置を用いて、420℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、420℃にて5分間保持した後、空冷して得られたものである。結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ、28nmであった。また、比較例9として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
実施例16の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe83.410Cu0.6である。XRDにより非晶質であることが確認されており、DSCによる第一結晶化開始温度は420℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、同じく水アトマイズ法にて作製し、XRDにて非晶質が確認されている平均粒径16μmの合金粉末を赤外線加熱装置により熱処理したものである。当該ナノ結晶化済み粉末の組成は、第1の軟磁性合金粉末の組成とは異なっており、具体的にはFe82.3Si101.0Cu0.7である。また、DSCによる第一結晶化開始温度は414℃である。赤外線加熱装置による熱処理は、420℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、420℃にて5分間保持した後、空冷することで実施した。ナノ結晶化済み粉末の結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ、27nmであった。また、比較例10として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製し、比較例11として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第2の軟磁性合金粉末(ナノ結晶化は行っていない)のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
図13は、実施例15、16、比較例9〜11における混合粉末のDSC曲線を示す図である。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)実施例15:Fe82.4B10P6C1.0Cu0.6:同組成のナノ結晶化済み粉末=70:30
(b)実施例16:Fe83.4B10P6Cu0.6:Fe82.3Si3B10P3C1.0Cu0.7のナノ結晶化済み粉末=70:30
(c)比較例9:Fe82.4B10P6C1.0Cu0.6(結晶化していない)のみからなる粉末
(d)比較例10:Fe83.4B10P6Cu0.6(結晶化していない)のみからなる粉末
(e)比較例11:Fe82.3Si3B10P3C1.0Cu0.7(結晶化していない)のみからなる粉末
図13より、実施例15及び実施例16のいずれにおいても、発熱分散の効果が得られていることが分かる。
圧粉磁芯の作製方法を以下に示す。まず、合金粉末と合金粉末に対して重量比で4.5%となる熱硬化性結合材を混合し、500μmのメッシュを通して造粒した。造粒粉2.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力735MPaにて成型し、外径13mm−内径8mmの円筒形状の圧粉体を作製した。赤外線加熱装置を用いて、所定の温度まで毎分40℃の昇温速度となるように圧粉体を加熱し、その温度にて20分間保持した後、空冷し、圧粉磁芯を得た。所定の温度とは、実施例14及び比較例8は450℃、実施例15及び比較例9は420℃、実施例16及び比較例10、11は425℃である。電磁気特性については、B−Hアナライザを用いて周波数300kHz−磁束密度50mTにおけるコアロスPcvを測定し、評価した。熱処理後の生成物については、XRDを用いて圧粉磁芯を測定し、評価した。測定した電磁気特性を表3に示す。
Figure 2014075528
実施例14の圧粉磁芯におけるコアロスは1000kW/mであったが、比較例8の圧粉磁芯のコアロスは2000kW/mであった。実施例15と比較例9についても同様に、ナノ結晶化済み粉末を混合した圧粉磁芯である実施例15においては、コアロスは1200kW/mであり、比較例9の2100kW/mに対して優れた軟磁気特性を得ることができている。また、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末とが異なる組成を有する実施例16においても、コアロスは1090kW/mであり、比較例10の2500kW/m及び比較例11の2050kW/mと比較して低ロス化されている。
XRDにより熱処理後の生成物を確認したところ、実施例14〜16ではbccFe(αFe,Fe−Si)のみであったが、比較例8〜11においては、bccFe(αFe,Fe−Si)に加えてFe−B系化合物の生成が確認されており、ナノ結晶化済み粉末を混合することで、熱容量に対する発熱量が減少しているため、化合物の生成を抑制でき、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯を得られることがわかった。また、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末とが同一組成であるか、異なる組成であるかを問わず、良好な軟磁気特性を有する圧粉磁芯が得られることがわかる。
以上のように、第2の軟磁性合金粉末として、第1の軟磁性合金粉末の熱処理の温度範囲において発熱しない軟磁性粉末を混合することで、試料温度の上昇を抑制し、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯を得られ、実施の形態2および3に示したように、非晶質性粉末や結晶性粉末を用いた場合にも、同様の効果が得られる。
以上、実施例を用いてこの発明の実施の形態を説明したが、この発明はこれらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然為し得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
上述した実施の形態では、圧粉磁芯およびその作製方法に適用可能であるが、他の磁性部品(磁性シートなど)およびその作製方法に利用することもできる。
10 DSC曲線
11 第1ピーク
12 第1立ち上がり部
15 第2ピーク
16 第2立ち上がり部
20、21 ベースライン
32 第1上昇接線
42 第2上昇接線
100 DSC曲線
101 第1の軟磁性合金粉末の第1ピーク
102 第2の軟磁性合金粉末の第1ピーク

Claims (12)

  1. 組成式FeSiCuで表わされ、79≦a≦86at%、5≦b≦13at%、0≦c≦8at%、1≦x≦10at%、0≦y≦5at%、0.4≦z≦1.4at%、及び0.06≦z/x≦1.20を満たす第1の軟磁性合金粉末材料と、第2の軟磁性合金粉末材料とを混合してなる軟磁性合金粉末であって、
    前記第1の軟磁性合金粉末材料の第1結晶開始温度Tx−50℃以上第2結晶化開始温度Tx未満の温度範囲ΔTにおいて、前記軟磁性合金粉末の最大発熱温度は、前記第1の軟磁性合金粉末材料の最大発熱温度よりも低い、
    軟磁性合金粉末。
  2. 請求項1に記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、当該第2の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Tx以上においてα−Fe微結晶が析出するものであり、
    前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記第2の軟磁性粉末材料における第1結晶開始温度Txとは、互いに異なる
    軟磁性合金粉末。
  3. 請求項2に記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記第2の軟磁性粉末材料における第1結晶開始温度Txとは、5℃以上互いに異なる、
    軟磁性合金粉末。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末の組成式と同一の組成式で表され且つ当該第1の軟磁性合金粉末の組成とは異なる組成を有する、
    軟磁性合金粉末。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第1の軟磁性合金粉末材料と、前記第2の軟磁性合金粉末材料は、いずれも非晶質相を主相とする、
    軟磁性合金粉末。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、2以上の軟磁性粉末材料からなるものであり、
    前記第1の軟磁性合金粉末材料における第1結晶開始温度Txと、前記2以上の軟磁性粉末材料の夫々における第1結晶開始温度Txとは、互いに異なる、
    軟磁性合金粉末。
  7. 請求項1に記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末材料の前記温度範囲ΔTにおいて発熱しない、
    軟磁性合金粉末。
  8. 請求項7に記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、ナノ結晶化済み粉末、非晶質粉末、又は結晶性磁性粉末から選択される1以上の粉末からなる、
    軟磁性合金粉末。
  9. 請求項8に記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記第2の軟磁性合金粉末材料は、前記第1の軟磁性合金粉末の組成と同一の組成を有するナノ結晶化済粉末である、
    軟磁性合金粉末。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の軟磁性合金粉末であって、
    前記Feの3at%以下を、Ti、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Co、Ni、Al、Mn、Ag、Au、Zn、S、Ca、Sn、As、Sb、Bi、N、O、Mg、白金族元素、及び希土類元素のうち、1種類以上の元素で置換してなる、
    軟磁性合金粉末。
  11. 請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の軟磁性合金粉末と結合材とを混合した後に圧縮成型し、更に熱処理をしてなる、
    圧粉磁芯。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の軟磁性合金粉末と結合材とを混合する結合材混合工程と、前記軟磁性合金粉末と結合材との混合物を圧縮成型する工程と、前記圧縮成型された前記混合物を熱処理する工程とを備える、
    圧粉磁芯の製造方法。
JP2012223226A 2012-10-05 2012-10-05 圧粉磁芯の製造方法 Active JP6101034B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012223226A JP6101034B2 (ja) 2012-10-05 2012-10-05 圧粉磁芯の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012223226A JP6101034B2 (ja) 2012-10-05 2012-10-05 圧粉磁芯の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014075528A true JP2014075528A (ja) 2014-04-24
JP6101034B2 JP6101034B2 (ja) 2017-03-22

Family

ID=50749468

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012223226A Active JP6101034B2 (ja) 2012-10-05 2012-10-05 圧粉磁芯の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6101034B2 (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016003366A (ja) * 2014-06-17 2016-01-12 Necトーキン株式会社 軟磁性合金粉末並びにそれを用いた圧粉磁芯及びその製造方法
JP2016104900A (ja) * 2014-11-25 2016-06-09 Necトーキン株式会社 金属軟磁性合金と磁心、およびその製造方法
JP2017034105A (ja) * 2015-08-03 2017-02-09 国立大学法人東北大学 圧粉磁芯の製造方法及び圧粉磁芯
JP2017034091A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 Jfeスチール株式会社 軟磁性圧粉磁芯の製造方法および軟磁性圧粉磁芯
JP2017034069A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 Necトーキン株式会社 圧粉磁心
JPWO2016204008A1 (ja) * 2015-06-19 2018-05-24 株式会社村田製作所 磁性体粉末とその製造方法、磁心コアとその製造方法、及びコイル部品
JP2019080036A (ja) * 2017-10-20 2019-05-23 サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. コイル部品
US10847291B2 (en) 2017-02-16 2020-11-24 Tokin Corporation Soft magnetic powder, dust core, magnetic compound and method of manufacturing dust core
CN114901847A (zh) * 2019-12-25 2022-08-12 株式会社东北磁材研究所 纳米晶软磁合金
US11996224B2 (en) 2017-09-29 2024-05-28 Tokin Corporation Method for manufacturing a powder core, the powder core and an inductor

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62263613A (ja) * 1986-05-09 1987-11-16 Tohoku Metal Ind Ltd ダストコアの製造方法
JP2002110413A (ja) * 1999-10-04 2002-04-12 Daido Steel Co Ltd 磁性混合物
JP2004349585A (ja) * 2003-05-23 2004-12-09 Hitachi Metals Ltd 圧粉磁心およびナノ結晶磁性粉末の製造方法
JP2007049073A (ja) * 2005-08-12 2007-02-22 Nec Tokin Corp インダクタ及びその製造方法
JP2007134591A (ja) * 2005-11-11 2007-05-31 Nec Tokin Corp 複合磁性材料とそれを用いた圧粉磁芯および磁性素子
JP2010070852A (ja) * 2008-08-22 2010-04-02 Teruhiro Makino 合金組成物、Fe基ナノ結晶合金及びその製造方法、並びに磁性部品
JP2010118486A (ja) * 2008-11-13 2010-05-27 Nec Tokin Corp インダクタおよびインダクタの製造方法
JP2012129384A (ja) * 2010-12-16 2012-07-05 Nec Tokin Corp 圧粉磁心、及び圧粉磁心を用いたインダクタ
JP2012136770A (ja) * 2010-12-10 2012-07-19 Nec Tokin Corp Fe基ナノ結晶合金粉末及びその製造方法、並びに、圧粉磁心及びその製造方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62263613A (ja) * 1986-05-09 1987-11-16 Tohoku Metal Ind Ltd ダストコアの製造方法
JP2002110413A (ja) * 1999-10-04 2002-04-12 Daido Steel Co Ltd 磁性混合物
JP2004349585A (ja) * 2003-05-23 2004-12-09 Hitachi Metals Ltd 圧粉磁心およびナノ結晶磁性粉末の製造方法
JP2007049073A (ja) * 2005-08-12 2007-02-22 Nec Tokin Corp インダクタ及びその製造方法
JP2007134591A (ja) * 2005-11-11 2007-05-31 Nec Tokin Corp 複合磁性材料とそれを用いた圧粉磁芯および磁性素子
JP2010070852A (ja) * 2008-08-22 2010-04-02 Teruhiro Makino 合金組成物、Fe基ナノ結晶合金及びその製造方法、並びに磁性部品
JP2010118486A (ja) * 2008-11-13 2010-05-27 Nec Tokin Corp インダクタおよびインダクタの製造方法
JP2012136770A (ja) * 2010-12-10 2012-07-19 Nec Tokin Corp Fe基ナノ結晶合金粉末及びその製造方法、並びに、圧粉磁心及びその製造方法
JP2012129384A (ja) * 2010-12-16 2012-07-05 Nec Tokin Corp 圧粉磁心、及び圧粉磁心を用いたインダクタ

Cited By (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016003366A (ja) * 2014-06-17 2016-01-12 Necトーキン株式会社 軟磁性合金粉末並びにそれを用いた圧粉磁芯及びその製造方法
JP2016104900A (ja) * 2014-11-25 2016-06-09 Necトーキン株式会社 金属軟磁性合金と磁心、およびその製造方法
JPWO2016204008A1 (ja) * 2015-06-19 2018-05-24 株式会社村田製作所 磁性体粉末とその製造方法、磁心コアとその製造方法、及びコイル部品
EP3330985A4 (en) * 2015-07-31 2018-07-04 JFE Steel Corporation Method for producing soft magnetic dust core, and soft magnetic dust core
KR102121181B1 (ko) * 2015-07-31 2020-06-10 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 연자성 압분 자심의 제조 방법 및 연자성 압분 자심
CN107851507A (zh) * 2015-07-31 2018-03-27 杰富意钢铁株式会社 软磁性压粉磁芯的制造方法和软磁性压粉磁芯
KR20180034532A (ko) * 2015-07-31 2018-04-04 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 연자성 압분 자심의 제조 방법 및 연자성 압분 자심
JP2017034091A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 Jfeスチール株式会社 軟磁性圧粉磁芯の製造方法および軟磁性圧粉磁芯
CN107851507B (zh) * 2015-07-31 2020-06-26 杰富意钢铁株式会社 软磁性压粉磁芯的制造方法和软磁性压粉磁芯
JP2017034069A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 Necトーキン株式会社 圧粉磁心
JP2017034105A (ja) * 2015-08-03 2017-02-09 国立大学法人東北大学 圧粉磁芯の製造方法及び圧粉磁芯
US10847291B2 (en) 2017-02-16 2020-11-24 Tokin Corporation Soft magnetic powder, dust core, magnetic compound and method of manufacturing dust core
US11996224B2 (en) 2017-09-29 2024-05-28 Tokin Corporation Method for manufacturing a powder core, the powder core and an inductor
JP2019080036A (ja) * 2017-10-20 2019-05-23 サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. コイル部品
CN114901847A (zh) * 2019-12-25 2022-08-12 株式会社东北磁材研究所 纳米晶软磁合金
EP4083237A4 (en) * 2019-12-25 2023-03-08 Tohoku Magnet Institute Co., Ltd. NANOCRYSTALLINE SOFT MAGNETIC ALLOY
CN114901847B (zh) * 2019-12-25 2023-10-24 株式会社东北磁材研究所 纳米晶软磁合金

Also Published As

Publication number Publication date
JP6101034B2 (ja) 2017-03-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6101034B2 (ja) 圧粉磁芯の製造方法
JP6482718B1 (ja) 軟磁性材料およびその製造方法
JP5537534B2 (ja) Fe基ナノ結晶合金粉末及びその製造方法、並びに、圧粉磁心及びその製造方法
JP6088192B2 (ja) 圧粉磁芯の製造方法
JP6472939B2 (ja) 軟磁性粉末、Fe基ナノ結晶合金粉末、磁性部品及び圧粉磁芯
TWI451452B (zh) 軟磁性合金及使用此合金之磁性元件與其製造方法
JP6460276B1 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
CN108376598B (zh) 软磁性合金及磁性部件
JP2017034091A (ja) 軟磁性圧粉磁芯の製造方法および軟磁性圧粉磁芯
JP5305126B2 (ja) 軟磁性粉末、圧粉磁心の製造方法、圧粉磁心、及び磁性部品
JP5697131B2 (ja) Fe基ナノ結晶合金の製造方法、Fe基ナノ結晶合金、磁性部品、Fe基ナノ結晶合金の製造装置
JP6530164B2 (ja) ナノ結晶軟磁性合金粉末およびそれを用いた圧粉磁芯
CN111133540B (zh) 压粉磁芯的制造方法、压粉磁芯以及电感器
JP6842824B2 (ja) 金属軟磁性合金と磁心の製造方法
JP2016003366A (ja) 軟磁性合金粉末並びにそれを用いた圧粉磁芯及びその製造方法
JP6554278B2 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP2018123363A (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP2016094652A (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP6436206B1 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP6338001B1 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP6314020B2 (ja) ナノ結晶軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁芯とその製造方法
JP6337994B1 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
JP6604407B2 (ja) 軟磁性合金および磁性部品
TWI702297B (zh) 軟磁性合金及磁性零件
JP2021150555A (ja) 圧粉磁心及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160302

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161102

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170208

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170224

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6101034

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531