JP3723016B2 - Fe基軟磁性合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ヘッド、トランス、チョークコイル等に用いられるFe基軟磁性合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ヘッド、トランス、チョークコイル等に用いられる軟磁性合金において、一般的に要求される諸特性は以下の通りである。
▲1▼ 飽和磁束密度が高いこと。
▲2▼ 透磁率が高いこと。
▲3▼ 低保磁力であること。
従って、軟磁性合金あるいは磁気ヘッドを製造する場合、これらの観点から種々の合金系において材料研究がなされている。
従来、前述の用途に対しては、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、けい素鋼等の結晶質合金が用いられ、最近ではFe基お よびCo基の非晶質合金も使用されるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、磁気ヘッドの場合、高記録密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するため、より好適な高性能磁気ヘッド用の磁性材料が望まれている。また、トランス、チョークコイルの場合は、電子機器の小型化に伴い、小型化が必要であるため、高性能の磁性材料が望まれている。
ところが、前述のセンダストは、軟磁気特性には優れているものの、飽和磁束密度が約11kGと低い欠点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる合金組成においては、飽和磁束密度が約8kGと低い欠点があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特性に劣る欠点がある。
【0004】
更に、前述の非晶質合金において、Co基合金は軟磁気特性に優れているものの、飽和磁束密度が10kG程度と不十分である。また、Fe基合金は飽和磁束密度が高く、15kGあるいはそれ以上のものが得られるが、軟磁気特性が不十分である。また、非晶質合金の熱安定性は充分でなく、未だ未解決の面がある。前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を兼備することは難しい。
【0005】
そこで本発明者らは、上記の問題を解決した高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金を特開平5−93249号(特願平2−108308号)において特許出願している。
この特許出願に係る合金の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金であった。
(Fe1-fCof)g Bh T1i T2j
但しT1は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからなる群から選 ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr、Hfのいずれか、または両方を含み、T2は、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Ptからなる群から選ばれ た1種又は2種以上の元素であり、f≦0.05、g≦92原子%、 h=0.5〜 16原子%、i=4〜10原子%、j=0.2〜4.5原子%である。
【0006】
また、上記特許出願に係る合金の他の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度合金であった。
Feg Bh T1i T2j
但しT1は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからなる群から選 ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr、Hfのいずれか、又は両方を含み、T2は、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Ptからなる群から選ばれた 1種又は2種以上の元素であり、g≦92原子%、h=0.5〜16原子%、i=4〜10原子%、j=0.2〜4.5原子%である。
【0007】
次に、本発明者らは、上記合金の発展型の合金として、特開平4−333546号(特願平2−230135号)において以下に示す組成の合金について特許出願を行なっている。
この特許出願に係る合金の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度の合金であった。
(Fe1-aQa)b Bx Ty
但し、QはCo、Niのいずれか又は両方であり、Tは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr、Hfのいずれか、または両方を含み、a≦0.05、b≦93 原子%、x=0.5〜8原子%、y=4〜9原子%である。
【0008】
また、上記特許出願に係る合金の他の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とするものである。
Feb Bx Ty
但しTは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であり、且つ、Zr、Hfのいずれか、又は両方を含み、b≦93原子%、x=0.5〜8原子%、y=4〜9原子%である。
【0009】
ところで、軟磁性合金を磁気ヘッドやトランス等のコア材として用いる場合には、液体急冷法等により作製した軟磁性合金薄帯をリング状に巻回あるいは積層し、これを樹脂で被覆する絶縁加工等の種々の加工が施されてた後用いられる。
しかしながら特開平5−93249号の(Fe1-fCof)g Bh T1i T2jな る組成の軟磁性合金、Feg Bh T1i T2jなる組成の軟磁性合金、特開平4− 333546号に記載の(Fe1-aQa)b Bx Tyなる組成の軟磁性合金、FebBx Tyなる組成の軟磁性合金からなる薄帯を用いる場合においては、上記絶縁のための樹脂の硬化収縮時に上記軟磁性合金からなるコアに圧縮応力がかかり磁歪が生じ、これにより磁気特性が変化し、目的とする磁気特性を有するものが得られにくいという問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、先に出願した特開平5−93249号に記載の軟磁性合金について更に研究を進め、これらの系に添加する元素の中でもSi、Al、Ge、Gaのうちから選ばれる元素をFeを主成分とするbcc相中に固溶させることにより、磁歪を調整できるようにしたFe基軟磁性合金を特開平9−3608号(特願平7−147838号)に特許出願している。
しかしながら特開平9−3608号に記載のFe基軟磁性合金においては、
Feを主成分とするbcc相(体心立方の結晶相)中にSi、Al、Ge、Gaのうちから選ばれる元素を固溶させたものであるので、体心立方の結晶相中に不純物が混在したものとなり、しかも軟磁性合金中のFeやNiやCoの濃度の減少が大きくなり、飽和磁束密度や透磁率が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高飽和磁束密度及び高透磁率を維持したままで磁歪が制御できるFe基軟磁性合金を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。本発明のFe基軟磁性合金は、下記組成式により示されることを特徴とする。
(Fe1-aZa)bBxMyRez
ただし、ZはNi,Coのうち1種または2種以上の元素、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以上の元素、ReはYを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、zは原子%で、0≦a≦0.2、75≦b≦93、0.5≦x≦18、3<y≦9、0.1<z≦0.5である。
【0013】
また、本発明のFe基軟磁性合金は、下記組成式により示されることを特徴とするものであってもよい。
(Fe1-aZa)bBxMyRezTt
ただし、ZはNi,Coのうち1種または2種以上の元素、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以上の元素、ReはYを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素、TはSi,Al,Ge,Gaから選ばれた1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、z、tは原子%で、0≦a≦0.2、75≦b≦93、0.5≦x≦18、3<y≦9、0.1<z≦0.5、0≦t≦5である。
【0015】
本発明にあっては、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に、Yを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素Reを添加することにより、高飽和磁束密度及び高透磁率を維持したままで磁歪が制御できる。
【0016】
それは、上記組成のFe基軟磁性合金は、Feと、Ti,Zr,Hf,V,Nb, Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以上の元素Mと、Bと、Yを含む希土類元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素Reと、必要によりさらにSi,Al,Ge,Gaから選ばれた1種または2種以上の元素Tを含む合金溶湯 を急冷することにより非晶質合金を得た後、熱処理によりbcc構造のFeを主体とする平均結晶粒径30nm以下の微細な結晶相を析出させることにより得ることができるが、結晶相であるFeを主成分とするbcc相(体心立方の相)は負の磁歪を示しており、非晶質相(アモルファス相)は正の磁歪を示しているため、非晶質相の体積分率をコントロールすることにより、得られるFe基軟磁性合金が示す磁歪を調整することができる。
【0017】
結晶相と非晶質相の体積分率をコントロールする手段としては、Yを含む希土類元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素Reは非晶質形成能を有する元素であるため、添加する元素Reの種類や添加量を調整することによりFe基軟磁性合金中の非晶質相の体積分率をコントロールできる。その理由は、上記元素Reは、上記Mとの親和力が強いため、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留し、また、用いる元素を変更することにより、Fe基軟磁性合金が示す磁歪を変更することができるからである。
【0018】
従って、絶縁のための樹脂の硬化収縮による圧縮応力により(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に生じる磁歪を測定しておき、絶縁加工後に得られるFe基軟磁性合金が目的とする磁歪を示すように、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に添加する元素Reの種類や添加量を調整することにより、絶縁加工後の磁歪が所望の値を示すものを得ることができる。
例えば、絶縁加工後の磁歪が0に近いFe基軟磁性合金からなるコアを得るには、予め、絶縁のための樹脂の硬化収縮による圧縮応力により(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に生じる磁歪を測定しておき、予め測定した圧縮応力による磁歪と逆向きで同じ大きさの磁歪が絶縁加工前のFe基軟磁性合金に付与されるように(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に添加する元素Reの種類や添加量を調整することにより、絶縁加工後の磁歪が0に近いFe基軟磁性合金からなるコアを得ることができる。
【0019】
また、上記元素Reは、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に少量添加するだけで、磁歪を調整できるので、軟磁性合金中のFeやCoやNiの濃度の減少が少なくて済むので、飽和磁束密度は高いまま維持できる。
また、上記元素Reは安価であり、また、非晶質形成能を有するものであるので、この元素Reを添加することにより、高価なBやMの添加量を少なくしても、例えば、Mの添加量が3原子%をわずかに超える程度することができるので、コストダウンが可能である。それは、上記元素Reは、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留するので、不純物とならず、また、BやMと同様の役目をするので、その分、BやMの添加量を減らすことができるからである。
【0020】
また、本発明のFe基軟磁性合金においては、上記組成式中のMは、Zrと Nbのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。上記組成式中のMに、ZrとNbのうちの少なくとも1種が含まれていると、微細結晶核の成長速度を小さくする効果、非晶質形成能を維持したままで、コストを低く抑えることができる。
【0021】
本発明のFe基軟磁性合金においては、上記組成式中のReは、Y、La、Ce、Pr、Ndのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
また、本発明のFe基軟磁性合金にあっては、上記組成式中の組成比を示すzは、原子%で、0<z≦5、好ましくは0.1≦z≦5、より好ましくは0.1≦z≦1、最も好ましくは0.1≦z≦0.5である。Reの添加量が5原子%を超えると、保磁力が大きくなり過ぎて好ましくないからである。また、Reの添加量が原子%で0.1以上1以下の範囲であると高い飽和磁束密度が得られ、Reの添加量が原子%で0.1以上0.5以下の範囲であるとさらに高い飽和磁束密度が得られるからである。
また、本発明のFe基軟磁性合金にあっては、上記組成式中の組成比を示すyは、原子%で、4≦y≦9であることが非晶質形成能が向上する点で好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のFe基軟磁性合金の実施の形態を説明する。本発明のFe基軟磁性合金は、下記のいずれかの組成式で示されるものである。
(Fe1-aZa)bBxMyRez
(Fe1-aZa)bBxMyRezTt
【0023】
但し、ZはNi、Coのうち1種または2種以上の元素、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wのうちの1種または2種以上の元素、Reは、Yを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、zは原子%で、0≦a≦0.2、75≦b≦93、0.5≦x≦18、3<y≦9、0<z≦5である。
また、本発明のFe基軟磁性合金には、上記Fe又はFe−Zと、Bと、Mと、ReにTが添加されていてもよく、その場合のTはSi,Al,Ge,Gaから 選ばれた1種または2種以上の元素であり、組成比を示すtは原子%で0≦t≦5である。
【0024】
上記の組成の本発明のFe基軟磁性合金は、平均結晶粒径30nm以下の体心立方構造(bcc構造)のFeの結晶粒からなる微結晶質相を主体とし、該微結晶質相と非晶質相とから構成される組織からなるものであるので、高飽和磁束密度及び高透磁率を維持することができ、磁気ヘッド、トランス、チョークコイル等に用いられるコア材として好適である。
また、本発明のFe基軟磁性合金は、元素Reの種類や添加量等を調整することにより、磁歪を制御することができる。
【0025】
本発明に用いられるFe基軟磁性合金の組成系において、主成分であるFe、Co、Niは、磁性を担う元素であり、高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を得るために重要である。
【0026】
これらの組成の軟磁性合金においては、Feの添加量を示すbの値あるいは
Feと、Coおよび/またはNiの添加量の合計を示すbの値は、93原子%以下である。bが93原子%を超えると液体急冷法によって非晶質単相を得ることが困難になり、この結果、熱処理してから得られる合金の組織が不均一になって高い透磁率が得られないので好ましくない。また、bが75原子%未満では、飽和磁束密度(Bs)1T以上を得ることができず、好ましくない。従って、bの 範囲を75原子%≦b≦93原子%とした。
また、Feの一部は、磁歪等の調整のためにCo,Niのうち1種または2種以上の元素Zで置換してもよく、この場合、好ましくはFeの25%以下とするのがよい。この範囲外であると透磁率が劣化する。従って上記組成式においてZの組成比aは、0.2以下の範囲が好ましい。
【0027】
Bには、軟磁性合金の非晶質形成能を高める効果、結晶組織の粗大化を防ぐ効果、および熱処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があると考えられる。
また、Zr、Hf、Nbは、α-Feに対してほとんど固溶しないとされるが 、合金を急冷して非晶質化することで、ZrとHfまたはNbを過飽和に固溶させ、この後に施す熱処理によりこれら元素の固溶量を調節して一部結晶化し、微細結晶相として析出させることで、得られる軟磁性合金の軟磁気特性を向上させる作用がある。
また、微細結晶相を析出させ、その微細結晶相の結晶粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の障害となり得る非晶質相を粒界に残存させることが必要であると考えられる。さらに、この粒界非晶質相は、熱処理温度の上昇によってα−Feから排出されるZr、Hf、Nb等の元素Mを固溶することで軟磁気特性を劣化させるFe−M系化合物の生成を抑制すると考えられる。よって、Fe−Zr(Hf、Nb)系の合金にBを添加することが重要となる。
【0028】
Bの添加量を示すxが、0.5原子%未満では、粒界の非晶質相が不安定となるため、十分な添加効果が得られない。また、xが18原子%を越えると、B−M系およびFe−B系において、ホウ化物の生成傾向が強くなり、微細結晶組織を得るための熱処理条件が制約され、良好な軟磁気特性が得られなくなる。このようにBの添加量を適切にすることで、析出する微細結晶相の平均結晶粒径を30nm以下に調整することができる。
【0029】
また、非晶質相を得やすくするためには、非晶質形成能の特に高いZr、Hf、Nbのいずれかを含むことが好ましく、Zr、Hf、Nbの一部は他の4A〜7A族元素のうち、Ti、V、Ta、Mo、Wのいずれかと置換することができる。また、Zr、Hf、Nbのうち、Hfは非常に高価な元素であるため、原料コストを考慮すると、Zr、Nbのいずれか一方を含むことがより好ましい。こうした元素Mは、比較的遅い拡散種であり、元素Mの添加は、微細結晶核の成長速度を小さくする効果、非晶質形成能を持つと考えられ、組織の微細化に有効である。
【0030】
元素Mの添加量を示すyが3原子%以下では、核成長速度を小さくする効果が失われ、結晶粒径が粗大化して良好な軟磁性が得られない。Fe−Hf−B系合金の場合、Hf=5原子%での平均結晶粒径は13nmであるのに対してHf=3原子%では39nmと粗大化する。
元素Mの添加量を示すyが9原子%を越えると、M−B系またはFe−M系の化合物の生成傾向が大きくなり、良好な特性が得られない。
【0031】
中でもNb、Mo、Wは、酸化物の生成自由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に安定であり、酸化物を生成しにくい。よって、これらの元素を添加して軟磁性合金を製造する場合には、製造時の雰囲気全体を不活性ガス雰囲気ではなく大気中の雰囲気で、もしくは溶湯を急冷する際に使用するるつぼのノズルの先端部に不活性ガスを供給しつつ大気中で製造することができるので、製造条件が容易となり、上述のような用途に用いる磁性コア材等を安価に製造することができる。 元素Mの添加量としては、4原子%以上9原子%以下とすることが、非晶質形成能が向上する点で好ましい。
【0032】
また、高飽和磁束密度や高透磁率を維持したままで、磁歪を制御するためには、Yを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素Reが含まれている。ここで用いる元素Reとしては、Y、La、Ce、Pr、Ndのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
その理由は、結晶相であるFeを主成分とするbcc相(体心立方の相)は負の磁歪を示しており、非晶質相(アモルファス相)は正の磁歪を示しているため、非晶質相の体積分率をコントロールすることにより、得られるFe基軟磁性合金が示す磁歪を調整することができるが、上記の元素Reは非晶質形成能を有する元素であり、また、添加する元素Reの種類や添加量を調整することにより、Fe基軟磁性合金中の非晶質相の体積分率をコントロールできるからである。それは上記元素Reは、上記Mとの親和力が強いため、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留し、また、用いる元素を変更することにより、Fe基軟磁性合金が示す磁歪を変更することができるからである。従って、絶縁のための樹脂の硬化収縮による圧縮応力により(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に生じる磁歪を測定しておき、絶縁加工後に得られるFe基軟磁性合金が目的とする磁歪を示すように、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に添加する元素Reの種類や添加量を調整することにより、絶縁加工後の磁歪が所望の値を示すものを得ることができる。
【0033】
例えば、絶縁加工後の磁歪が0に近いFe基軟磁性合金からなるコアを得るには、予め、絶縁のための樹脂の硬化収縮による圧縮応力により(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に生じる磁歪を測定しておき、予め測定した圧縮応力による磁歪と逆向きで同じ大きさの磁歪が絶縁加工前のFe基軟磁性合金に付与されるように(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に添加する元素Reの種類や添加量を調整することにより、絶縁加工後の磁歪が0に近いFe基軟磁性合金からなるコアを得ることができる。
【0034】
また、上記元素Reは、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に少量添加するだけで、磁歪を調整できるので、軟磁性合金中のFeやCoやNiの濃度の減少が少なくて済むので、飽和磁束密度は高いまま維持できる。
また、上記元素Reは安価であり、また、非晶質形成能を有するので、この元素Reを添加することにより、高価なBやMの添加量を少なくすることができるので、コストダウンが可能である。それは、上記元素Reは、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留するので、不純物とならず、また、BやMと同様の役目をするので、その分、BやMの添加量を減らすことができるからである。
【0035】
Reの添加量を示すzは、原子%で、0<z≦5、好ましくは0.1≦z≦5、より好ましくは0.1≦z≦1、最も好ましくは0.1≦z≦0.5である。Reの添加量が5原子%を超えると、保磁力が大きくなり過ぎて好ましくないからである。また、Reの添加量が原子%で0.1以上1以下の範囲であると高い飽和磁束密度が得られ、Reの添加量が原子%で0.1以上0.5以下の範囲であるとさらに高い飽和磁束密度が得られるからである。
【0036】
また、本発明の軟磁性合金には、Si、Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以上の元素Tを、0以上5原子%以下含有していてもよい。これらは半金属元素として知られており、Feを主成分とする体心立方晶の相に固溶する。これらの元素の含有量が5原子%を越えると磁歪が大きくなるか、飽和磁束密度が低下するか、透磁率が低下するので好ましくない。
【0037】
また、元素Tには、軟磁性合金の電気抵抗を上昇させ、鉄損を低下させる効果があるが、Alはその効果が大きい。またGe、Gaは結晶粒の径を微細化させる効果がある。従ってSi、Al、Ge、Gaのうち、Al、Ge、Gaは添加した効果が特に大きく、Al、Ge、Gaの単独添加もしくはAlとGe、AlとGa、GeとGa、AlとGeとGaの複合添加とすることがより好ましい。
【0038】
また、上記組成系の軟磁性合金において、他に、必要に応じてZn、Cd、 In、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等の元素を添加することで軟磁性合金の磁歪を調整することもできる。
上記組成系の軟磁性合金において、H、N、O、S等の不可避的不純物については所望の特性が劣化しない程度に含有していても本発明で用いるFe基軟磁性合金の組成と同一とみなすことができるのは勿論である。
【0039】
本発明のFe基軟磁性合金を製造するには、例えば、(Fe又はFe−Z)−B−M系、又は(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の非晶質合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金(ただし、ZはNi,Coのうち1種または2種以上の元 素、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以 上の元素、TはSi,Al,Ge,Gaから選ばれた1種または2種以上の元素で ある。)をアーク溶解、高周波誘導溶解等の手段で溶解した合金溶湯を急冷し、非晶質相を非晶質相を主体とする薄帯を作製するに際して、上記合金溶湯にさらにYを含む希土類元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素Reを添加し、このとき添加する元素Reの種類と添加量を調整する。ここで薄帯を作製する具体的方法としては、特開平4−323351号公報に記載されているような流体冷却法や、単ロールを用いた急冷法等を採用することができる。
【0040】
ついで、作製した薄帯を熱処理することにより、上記薄帯の非晶質相の中の一部が結晶化し、非晶質相と、平均粒径30nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒からなる微細結晶相とが混合した組織が得られ、目的とするFe基軟磁性合金が得られる。
【0041】
熱処理により平均結晶粒径30nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒からなる微細結晶組織が析出したのは、急冷状態の非晶質合金薄帯等が非晶質相を主体とする組織となっており、これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が30nm以下のFeを主成分とする体心立方構造の結晶粒からなる微細結晶相が析出するからである。
このbcc構造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析出する温度は、合金の組成によるが480〜550℃程度である。またこのFeの微細結晶相が析出する温度よりも高い温度では、Fe3B、あるいは合金にZrが含まれる場 合にはFe3Zr等の軟磁気特性を悪化させる化合物相が析出する。このような 化合物相が析出する温度は、合金の組成によるが740〜810℃程度である。
【0042】
したがって、本発明において、非晶質合金薄帯等を熱処理する際の保持温度は480℃〜810℃の範囲で、体心立方構造を有するFeの結晶粒を主成分とする微細結晶相が好ましく析出しかつ上記化合物相が析出しないように、合金の組成に応じて好ましく設定される。
【0043】
上記の熱処理温度まで昇温するときの昇温速度は、20〜200℃/分の範囲が好ましく、40〜200℃/分の範囲とするのがより好ましい。
昇温速度が遅いと製造時間が長くなるので昇温速度は速い方が好ましいが、加熱装置の性能上、200℃/分程度が上限とされる。
【0044】
また、非晶質合金薄帯等を上記保持温度に保持する時間は、0〜60分間とすることができ、合金の組成によっては0分、すなわち昇温後直ちに降温させて保持時間無しとしても、目的とする効果を得ることができる。また、保持時間は60分より長くしても磁気特性は向上せず、製造時間が長くなり生産性が悪くなるので好ましくない。
また、特にSiを含まない組成の場合には、10分以下の保持時間としても目的とする効果を得ることができる。
これは、Siを添加した場合には、FeにSiを充分に固溶させる必要があり、保持時間を長くする必要があるからである。
【0045】
【実施例】
以下、実施例、比較例により更に具体的に説明する。
[実施例1]
(試料の作製)
Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd)なる組成に なるように原料を調整し、それをN2ガス雰囲気中で 高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し込み母合金を得る。その母合金から、N2ガス雰囲気中においてノ ズル内で高周波溶解し、溶湯をノズルより高速回転し ている銅ロールに吹き出 させて急冷する液体急冷法を用いて、厚さ約20μm、幅約15mmの合金薄帯を得た。次に得られた薄帯を、外径10mm、内径6mmの円環状に機械的に打ち抜き、熱処理を行い試料(実施例の試料)を得た。熱処理条件は、昇温速度 180゜C/分、熱処理温度560゜C(833K)から660゜C(933K)、この熱処理温度での保持時間は5分、降温速度(冷却速度)は180゜C/分とした。
[比較例]
また、比較のためにFe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Fe)、すな わちFe90Zr7B3なる組成になるように調整した原料を用いる以外は、先に述べた方法と同様にして試料(比較例の試料)を得た。
【0046】
[測定]
上記の実施例1、比較例で得られた各試料の10kHz、5mOeにおける実効透磁率(μ’)と保磁力の熱処理温度依存性について測定した。その結果を図1に示す。
図1に示した結果から明らかなようにFe90Zr7B3なる組成の合金からなる比較例の試料は、熱処理温度を変更しても保磁力はあまり変化しないが、透磁率については熱処理温度が610゜C(883K)を超えると低下していることがわかる。
Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd)なる組成の 合金からなる実施例1の各試料は、熱処理温度を変更しても実効透磁率や保磁力があまり変化しないことがわかる。これら実施例1の試料のうちでFe89.5Zr7B3Nd0.5な る組成の合金からなる試料は、透磁率が最も高く、保磁力も低いことがわかる。
【0047】
次に、熱処理温度610゜C(883K)、保持時間5分とした以外は先に述べた方法と同様にして作製したFe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、 Ce、Pr、Nd、Fe)なる組成の合金薄帯からなる試料の飽和磁束密度(Bs)、10kHz、5mOeにおける実効透磁率(μ’)と、保磁力と、磁歪( λs)の添加する元素Re依存性について調べた結果を図2に示す。
図2に示した結果から飽和磁束密度については、Fe−Zr−B系の合金に添加する元素ReがY、La、Ce、Pr、Ndのいずれの場合においてもFe90Zr7B3なる組成の合金薄帯からなる試料と同じ程度の約1.5T以上のものが得られていることがわかる。また、実効透磁率については、Y、La、Ce、 Pr、Ndの順に直線状に大きくなっており、保磁力については、Y、La、 Ce、Pr、Ndの順に直線状に低下していることがわかる。また、磁歪については、Y、La、Ce、Pr、Ndの順に直線状に低下しており、従って、添加するReが0.5原子%と少なくしても、Reとして用いる元素の種類を変更することにより、得られるFe基軟磁性合金が示す磁歪を変更できることがわかる。
【0048】
図3に、Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd、 Fe)なる組成の合金薄帯の自由面(銅ロールに接触していない側の面)の熱処理前の構造をX線回析法により調べた結果を示す。
また、図4に、Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、 Nd、Fe)なる組成の合金薄帯の自由面(銅ロールに接触していない側の面)の熱処理後の構造をX線回析法により調べた結果を示す。ここでの熱処理条件は、昇温速度180゜C/分、熱処理温度610゜C(883K)、この熱処理温度での保持時間は5分、降温速度(冷却速度)は180゜C/分としたものである。
図3より、急冷状態では非晶質に特有のハローな回析図形が認められ、熱処理後には体心立方晶に独特の回析図形が認められ、また、図4より本合金の構造が熱処理により、非晶質から非晶質相中に体心立方晶のFeを主成分とするbcc相(bcc−Fe)が析出したものに変化したことがわかる。また、熱処理後のものにはY、La、Ce、Pr、Ndやこれらの化合物の結晶の析出は認められないことから、Y、La、Ce、Pr、Ndは非晶質相に残留しているものと考えられる。
【0049】
図5に、Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd、 Fe)なる組成の合金薄帯の熱処理後に析出するFeを主成分とするbcc相の平均結晶粒径と(110)面の格子定数の添加する元素Re依存性を示す。
図5に示した結果からReとしてY、La、Ce、Pr、Ndのいずれかを添加した合金薄帯の熱処理したものは、ReとしてFeを添加した合金薄帯(Fe90Zr7B3)よりもFeを主成分とするbcc相の平均結晶粒径が大きくなっていることが分かる。
また、ReとしてY、La、Ce、Pr、Ndのいずれかを添加した合金薄帯を熱処理したものの(110)面の格子定数は、ReとしてFeを添加した合金薄帯を熱処理したものとほぼ同じ値であることから、Y、La、Ce、Pr、 Ndは非晶質に残留していることがわかる。なお、ReとしてY、La、Ce、Pr、Nd、Feのいずれかを添加した合金薄帯の熱処理後の(110面)の格子定数がbcc−Feの格子定数より大きくなっているのは、ZrやBが結晶相に固溶したためであると考えられる。
【0050】
以上のことからReとしてY、La、Ce、Pr、Ndのいずれかを添加した合金薄帯を熱処理したものは、Reが非晶質相に残留し、また、ReとしてFeを添加したものに比べてbcc−Feの結晶粒の数が少なく、これによってbcc−Feの粒径が大きくなったためであると考えられる。
一方、ReとしてFeを添加した合金薄帯を熱処理したものは、bcc−Feの粒径が小さくなっており、これは、ReとしてY、La、Ce、Pr、Ndのいずれかを添加したものに比べて、bcc−Feの結晶粒が多数生成し、これによって、bcc−Feの粒径が微細となったためであると考えられる。
【0051】
Fe90-zZr7B3Ndz(z=0〜10)なる組成になるように調整した原料 を用いる以外は、先に述べた方法と同様にして試料の飽和磁束密度(Bs)、 10kHz、5mOeにおける実効透磁率(μ’)と、保磁力(Hc)と、磁歪 (λs)の添加する元素Reの添加量依存性について調べた結果を図6に示す。ここでの熱処理条件は、昇温速度180゜C/分、熱処理温度610゜C(883K)、この熱処理温度での保持時間は5分、降温速度(冷却速度)は180゜C/分としたものである。
図6に示した結果からReの添加量が増加すると、磁歪が増大していることがわかり、それは非晶質相の体積分率が増加したためである。
また、Reの添加量が6原子%を超えると、保磁力が大きくなることがわかる。
【0052】
(実施例2)
下記表1、表2に示す各組成になるように原料を調整し、それを実施例1の試料を作製したときと同様の条件にて、母合金としたのち液体急冷法を用いて、厚さ約20μm、幅約15mmの合金薄帯を得た後、外径10mm、内径6mmの円環状に打ち抜いたものを15枚程度重ねて熱処理を行って、各種の試料(No.1〜32)を得た。なお、ここでの熱処理温度については下記表1、表2に記載された通り、610゜C(883K)、620゜C(893K)、630゜C(903K)、640゜C(913K)のいずれかであり、上記の熱処理温度までの昇温速度は180℃/分、保持時間は5分、降温速度(冷却速度)は180℃/分とした。
得られた各種の試料の磁気特性と、磁歪と、試料を構成する組織中に析出したbcc構造を有するFe(bccFe)の結晶粒の粒径を調べた結果を表1、表2に合わせて示す。なお、透磁率については、10kHz、5mOeの磁界をかけて測定を行った。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1乃至表2に示す結果から、FeとBとM(Nb、又はNbとZr)に、元素Reとして、Y、La、Ce、Pr、Ndを添加した各組成の試料は、飽和磁束密度が1.37T以上で、最高1.60T(試料No.29)と大きな値を示していることがわかる。また、10kHz、5mOeにおける透磁率は7000以上で最高45000(試料No.31)の大きな値となっており、さらに、保磁力は0.04Oe(試料No.31)〜0.39Oeと小さな値となっており、組成及び組成比が本発明の範囲である各試料が優れた軟磁気特性を示していることがわかる。また磁歪についても10-7の小さな値が得られており、特に試料No.23においては零であった。さらに、各試料のbccFeの結晶粒の平均結晶粒径は表1乃至表2にも示されている通り、12〜18nmの値を示しており、このように小さな結晶粒径を有していることにより、組成及び組成比が本発明の範囲である各試料が優れた軟磁気特性が得られていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にあっては、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に、Yを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素Reを添加することにより、高飽和磁束密度及び高透磁率を維持したままで磁歪が制御できる。
それは、元素Reは非晶質形成能を有する元素であるため、添加する元素Reの種類や添加量を調整することによりFe基軟磁性合金中の非晶質相の体積分率をコントロールでき、これにより磁歪を調整できるからである。また、上記元素Reは、(Fe又はFe−Z)−B−M系の合金または(Fe又はFe−Z)−B−M−T系の合金に少量添加するだけで、磁歪を調整できるので、軟磁性合金中のFeやCoやNiの濃度の減少が少なくて済むので、飽和磁束密度は高いまま維持できる。
また、上記元素Reは安価であり、非晶質形成能を有する元素であるので、この元素Reを添加することにより、高価なBやMの添加量を少なくできるので、コストダウンが可能である。それは、上記元素Reは、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留するので、不純物とならず、また、BやMと同様の役目をするので、その分、BやMの添加量を減らすことができるからである。
また、本発明のFe基軟磁性合金において、上記組成式中のMに、ZrとNbのうちの少なくとも1種が含まれるようにしたものにあっては、微細結晶核の成長速度を小さくする効果と非晶質形成能を維持したままで、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd )なる合金からなる試料と、Fe90Zr7B3なる組成の合金からなる試料の実効透磁率(μ’)と保磁力の熱処理温度依存性を調べた結果を示すグラフである。
【図2】 Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd 、Fe)なる組成の合金薄帯からなる試料の飽和磁束密度、実効透磁率と、保磁力と、磁歪の添加する元素Re依存性を示すグラフである。
【図3】 Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd 、Fe)なる組成の合金薄帯の自由面(銅ロールに接触していない側の面)の熱処理前の構造のX線回析図形を示すグラフである。
【図4】 Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd )なる組成の合金薄帯の自由面(銅ロールに接触していない側の面)の熱処理後の構造のX線回析図形を示すグラフである。
【図5】 Fe89.5Zr7B3Re0.5(Re=Y、La、Ce、Pr、Nd 、Fe)なる組成の合金薄帯の熱処理後に析出するFeを主成分とするbcc相の平均結晶粒径と(110)面の格子定数の添加する元素Re依存性を示すグラフである。
【図6】 Fe90-zZr7B3Ndz(z=0〜10)なる組成の合金薄帯か らなる試料の飽和磁束密度、実効透磁率と、保磁力と、磁歪の添加する元素Reの添加量依存性を示すグラフである。
Claims (7)
- 下記組成式により示されることを特徴とするFe基軟磁性合金。
(Fe1-aZa)bBxMyRez
ただし、ZはNi,Coのうち1種または2種以上の元素、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以上の元素、ReはYを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、zは原子%で、0≦a≦0.2、75≦b≦93、0.5≦x≦18、3<y≦9、0.1<z≦0.5である。 - 下記組成式により示されることを特徴とするFe基軟磁性合金。
(Fe1-aZa)bBxMyRezTt
ただし、ZはNi,Coのうち1種または2種以上の元素、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種または2種以上の元素、ReはYを含む希土類元素のうちの1種または2種以上の元素、TはSi,Al,Ge,Gaから選ばれた1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、z、tは原子%で、0≦a≦0.2、75≦b≦93、0.5≦x≦18、3<y≦9、0.1<z≦0.5、0≦t≦5である。 - 前記組成式中のMは、ZrとNbのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のFe基軟磁性合金。
- 前記組成式中のReは、Y、La、Ce、Pr、Ndのうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のFe基軟磁性合金。
- 前記組成式中の組成比を示すzは、原子%で、0.1≦z≦5であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記組成式中の組成比を示すzは、原子%で、0.1≦z≦1であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記組成式中の組成比を示すyは、原子%で、4≦y≦9であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
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