JP2001316724A - 高周波用磁心の製造方法 - Google Patents

高周波用磁心の製造方法

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JP2001316724A
JP2001316724A JP2000137744A JP2000137744A JP2001316724A JP 2001316724 A JP2001316724 A JP 2001316724A JP 2000137744 A JP2000137744 A JP 2000137744A JP 2000137744 A JP2000137744 A JP 2000137744A JP 2001316724 A JP2001316724 A JP 2001316724A
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Yutaka Naito
豊 内藤
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Alps Electric Co Ltd
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    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/03Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity
    • H01F1/12Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials
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    • H01F1/153Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1MHz以上の高周波領域での実効透磁率等
の磁気特性が優れ、しかもコアロスが低い高周波用磁心
の製造方法の提供。 【解決手段】 Fe、Co、Niのうち1種または2種
以上の元素Tを主成分とし、Ti、Zr、Hf、V、N
b、Ta、Mo、W、Mnのうち1種または2種以上の
元素Mと、Bとを含む合金溶湯を急冷し、非晶質を主体
とする合金薄帯または薄板を得た後に、該合金薄帯また
は薄板に磁場中熱処理を施して平均結晶粒径50nm以
下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を組織の少なくと
も50%以上析出させ、残部を非晶質相とするとともに
1MHzの実効透磁率を1000以上とし、かつ1MH
zのコアロスを10%以上低減する高周波用磁心1の製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スイッチング電源
用トランスやチョークコイル、中性子ビーム入射装置用
サージブロッカー、高電圧パルス発生装置用トランス、
粒子加速器等に用いることができる高周波特性が優れた
高周波用磁心の製造方法に係わり、特に、1MHz以上
の高周波領域での実効透磁率等の磁気特性が優れ、しか
もコアロスが低い高周波用磁心を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源のトランス等に使用さ
れる磁心材料としては、従来、主にMn−Znフェライ
トが用いられており、また、100kHz以下の周波数
領域で駆動するスイッチング電源用トランスとして上記
Mn−Znフェライトより高飽和磁束密度のFe基非晶
質合金が用いられている。ところがこのFe基非晶質合
金は、磁歪が大きいために機械的ストレスにより特性が
劣化しやすく、また、カットコア等とした場合のように
加工条件によっては、高周波領域における磁気特性が劣
化してしまうという問題があった。そこで、本願発明者
らは上記のような問題を改善できるものとして、Fe−
M−B系の軟磁性合金(MはTi、Zr、Hf、V、N
b、Ta、Mo、W、Mnのうちから選択される元素)
を磁心材料として使用することを考えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記F
e−M−B系の軟磁性合金から構成した磁心は、Fe−
M−B系の合金溶湯を急冷して得られた非晶質を主体と
する合金薄帯を巻回等の加工を施した後、所定の温度で
加熱するだけの単純な熱処理を施すことにより製造した
ものであるため、より高い周波数領域、例えば、1MH
z以上の周波数領域で使用すると、透磁率が低く、コア
ロスが大きくなってしまうという問題があった。従っ
て、1MHz以上の周波数領域で使用する用途に用いる
場合、特に、中性子ビーム入射装置用サージブロッカー
等のように1MHz〜10MHzで使用される用途に用
いる場合には、上記問題がより顕著になってしまうた
め、1MHz以上の高周波領域での実効透磁率等の磁気
特性が優れ、しかもコアロスが低い高周波用磁心の製造
方法が要望されているが、そのような高周波用磁心の製
造方法は未だ実用化されていなかった。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、1MHz以上の高周波領域での実効透磁率等の磁気
特性が優れ、しかもコアロスが低い高周波用磁心の製造
方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明の高周波
用磁心の製造方法は、Fe、Co、Niのうち1種また
は2種以上の元素Tを主成分とし、Ti、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo、W、Mnのうち1種または2種
以上の元素Mと、Bとを含む合金溶湯を急冷し、非晶質
を主体とする合金薄帯または薄板を得た後に、該合金薄
帯または薄板に磁場中熱処理を施して平均結晶粒径50
nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を組織の少
なくとも50%以上析出させ、残部を非晶質相とすると
ともに1MHzの実効透磁率を1000以上とし、かつ
1MHzのコアロスを10%以上低減することを特徴と
する。
【0006】本発明の高周波用磁心の製造方法は、上記
の元素を含む合金溶湯を急冷して得られた非晶質を主体
とする合金薄帯または薄板に磁場中熱処理を施すことに
より、この合金薄帯または薄板を、平均結晶粒径50n
m以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を主体とし、
残部が非晶質相である組織から構成することができるう
え、熱処理を施すときに磁場を印加しない(無磁場熱処
理を施す)場合と比べて1MHz以上の高周波領域での
実効透磁率を向上させることができ、しかも1MHz以
上の高周波領域でのコアロスを低減できるので、上記の
磁場中熱処理を施された合金薄帯または薄板から高周波
用磁心を構成すると、1MHzで使用したときの実効透
磁率が1000以上で、かつ1MHzのコアロスを無磁
場熱処理の場合よりも10%以上低減された高周波用磁
心を製造できる。上記薄帯または薄板に熱処理に施した
ものは、平均結晶粒径50nm以下の微細なbcc構造
のFeの結晶粒からなる微細結晶相を主体として、該微
細結晶相とその粒界に存在する粒界非晶質からなる組織
から構成されたものとなるので、優れた軟磁気特性を発
揮することができる。それは、析出したbcc構造の結
晶粒が50nm以下と微細なために、結晶磁気異方性が
bcc構造の結晶粒子間の磁気相互作用により平均化さ
れ、みかけの結晶磁気異方性が小さくなるためであると
考えられる。上記薄帯または薄板を磁場中熱処理するこ
とにより、1MHz以上の高周波領域での実効透磁率を
向上させることができ、しかも1MHz以上の高周波領
域でのコアロスを低減できるのは、磁場中熱処理により
一軸磁気異方性を導入することができるので、磁場中熱
処理を施す際の磁場の方向を制御することにより、磁路
と直交した方向に磁化容易軸が形成されるので、高周波
特性が改善できるからである。従って、本発明の高周波
用磁心の製造方法により製造された高周波用磁心は、1
MHz以上の高周波領域での実効透磁率等の磁気特性が
優れ、しかもコアロスが低いので、高周波特性が優れて
おり、スイッチング電源用トランスやチョークコイル、
中性子ビーム入射装置用サージブロッカー、高電圧パル
ス発生装置用トランス、粒子加速器等に備えられる磁心
として好適に用いることができる。
【0007】上記の構成の本発明の高周波用磁心の製造
方法においては、上記合金薄帯または薄板に磁場中熱処
理を施して1MHzのコアロスを20%以上低減した高
周波用磁心を製造することもできる。それは、上記合金
溶湯に添加する元素によっては、すなわち、上記合金溶
湯の組成によっては、1MHz以上のコアロスを無磁場
熱処理の場合よりも10%以上低減することができる。
特に、上記合金溶湯に添加する元素として、元素Tとし
てFeを選択し、元素MとしてZrおよび/またはNb
を必須として選択し、さらにBを必須として含むように
した場合は、1MHzのコアロスを無磁場熱処理に比べ
て20%以上低減した磁心を好適に製造することができ
る。
【0008】また、上記のいずれかの構成の本発明の高
周波用磁心の製造方法においては、上記合金薄帯または
薄板に磁場中熱処理を施す際の熱処理温度を773K
(500℃)乃至973K(700℃)とすることが好
ましい。磁場中熱処理を施す際の熱処理温度が773K
(500℃)未満であると、Feの微結晶が析出せず良
好な軟磁気特性が得られなくなってしまい、973K
(700℃)を越えるとFe2BまたはFe3B等の化合
物が析出し良好な軟磁気特性が得られなくなってしま
う。さらに、上記のいずれかの構成の本発明の高周波用
磁心の製造方法においては、上記合金薄帯または薄板に
磁場中熱処理を施す際の印加磁場の大きさを80kA/
m(1kOe)以上とすることが好ましい。磁場中熱処
理を施す際の印加磁場の大きさが80kA/m(1kO
e)未満であると誘導磁気異方性が得られず軟磁気特性
の向上が得られなくなってしまう。
【0009】さらにまた、上記のいずれかの構成の本発
明の高周波用磁心の製造方法においては、上記合金薄帯
または薄板として下記の組成式で表される組成を有する
ものを用いることが好ましい。 T100-x-y-z-txM'yM"zt ただし、TはFe、Ni、Coのうち1種または2種以
上の元素であり、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、W、Mnのうち1種または2種以上の元素で
あり、M'はCu、Ag、Auのうち1種または2種以
上の元素、M"はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、O
s、Prのうち1種または2種以上の元素であり、Xは
Si、B、Al、Ge、Ga、P、Cのうち1種または
2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは
原子%で、1≦x≦30、0≦y≦3、0≦z≦10、
0.5≦t≦30である。
【0010】また、本発明においては、上記組成式中の
元素TがFeであり、元素XがBであり、元素MがZr
および/またはNbであり、組成比を示すx、tは原子
%で、4≦x≦12、0.5≦t≦18とすることが得
られる高周波用磁心の飽和磁束密度を高くでき、1.4
T以上の飽和磁束密度を示す高周波用磁心を製造できる
点でより好ましい。また、本発明においては、上記組成
式中の組成比を示すx、tは原子%で、4≦x≦9、
0.5≦t≦10とすることがさらに好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の高周波用磁心の製
造方法の実施形態例について説明する。 (第1実施形態)図1は、本発明の高周波用磁心の製造
方法の第1実施形態により得られた高周波用磁心を示す
斜視図である。図中、符号1は高周波用磁心である。こ
の高周波用磁心1は、Fe、Co、Niのうち1種また
は2種以上の元素Tを主成分とし、Ti、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo、W、Mnのうち1種または2種
以上の元素Mと、Bとを含む合金薄帯2が円環状に巻回
され、磁場中熱処理が施されてなるものである。ここで
合金薄帯2に磁場中熱処理を施したものは、軟磁性を示
す。この軟磁性を示す合金薄帯を軟磁性合金薄帯2と呼
ぶ。
【0012】上記軟磁性合金薄帯2に適用して有効な組
成としては、下記の組成式で示されるものが挙げられ
る。 T100-x-y-z-txM'yM"zt ただし、TはFe、Ni、Coのうち1種または2種以
上の元素であり、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、W、Mnのうち種または2種以上の元素であ
り、M'はCu、Ag、Auのうち1種または2種以上
の元素、M"はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、Os、
Prのうち1種または2種以上の元素であり、XはS
i、B、Al、Ge、Ga、P、Cのうち1種または2
種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは原
子%で、1≦x≦30、0≦y≦3、0≦z≦10、
0.5≦t≦30である。上記組成式中の元素TがFe
であり、元素XがBであり、元素MがZrおよび/また
はNbであり、組成比を示すx、tは原子%で、4≦x
≦12、0.5≦t≦18であることがより好ましい。
また、上記組成式中の組成比を示すx、tは原子%で、
4≦x≦9、0.5≦t≦10であることがさらに好ま
しい。
【0013】上記軟磁性合金薄帯2は、平均結晶粒径5
0nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を主体と
し、残部が非晶質相である組織から構成されているの
で、透磁率が優れるなどの優れた軟磁気特性を発揮する
ことができる。それは、析出したbcc構造の結晶粒が
50nm以下と微細なために、結晶磁気異方性がbcc
構造の結晶粒子間の磁気相互作用により平均化され、み
かけの結晶磁気異方性が小さくなるためであると考えら
れる。
【0014】上記軟磁性合金薄帯2は、磁場中熱処理が
施されたことにより、磁場中熱処理により一軸磁気異方
性を導入することができるので、磁場中熱処理を施す際
の磁場の方向を制御することにより、磁路と直交した方
向に磁化容易軸が形成されるので、高周波特性が改善さ
れ、1MHz以上の高周波領域での実効透磁率を向上さ
せることができ、しかも1MHz以上の高周波領域での
コアロスを低減できる。従って、このような軟磁性合金
薄帯2から構成された高周波用磁心1は、1MHzで使
用したときの実効透磁率が1000以上であり、上記薄
帯2を無磁場熱処理して得られたものに比べて1MHz
のコアロスを10%以上低減されたものである。
【0015】次に、本発明の高周波用磁心の製造方法の
第1実施形態について説明する。まず、Fe、Co、N
iのうち1種または2種以上の元素Tを主成分とし、T
i、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Mnのう
ち1種または2種以上の元素Mと、Bとを含む合金溶湯
を用意する。ここで用いられる合金溶湯に適用して有効
な組成としては、下記の組成式で示されるものが挙げら
れる。 T100-x-y-z-txM'yM"zt ただし、TはFe、Ni、Coのうち1種または2種以
上の元素であり、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、W、Mnのうち種または2種以上の元素であ
り、M'はCu、Ag、Auのうち1種または2種以上
の元素、M"はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、Os、
Prのうち1種または2種以上の元素であり、XはS
i、B、Al、Ge、Ga、P、Cのうち1種または2
種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは原
子%で、1≦x≦30、0≦y≦3、0≦z≦10、
0.5≦t≦30である。
【0016】上記組成式中の元素TがFeであり、元素
XがBであり、元素MがZrおよび/またはNbであ
り、組成比を示すx、tは原子%で、4≦x≦12、
0.5≦t≦18であることがより好ましい。また、上
記組成式中の組成比を示すx、tは原子%で、4≦x≦
9、0.5≦t≦10であることがさらに好ましい。
【0017】本発明で用いられる合金溶湯の組成系にお
いて、主成分であるFe、Co、Niは、磁性を担う元
素であり、高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を得る
ために重要である。上記組成の軟磁性合金においては、
Feの添加量(組成比)を示す100−x−y−z−t
の値、あるいはFeと、Coおよび/またはNiの添加
量(組成比)の合計を示す100−x−y−z−tの値
は、98.5原子%以下であり、好ましくは95.5原
子%以下である。上記の磁性を担う元素の添加量が9
5.5原子%を超えると液体急冷法によって非晶質単相
の薄帯を得ることが困難になり、この結果、磁場中熱処
理してから得られる合金の組織が不均一になって高い透
磁率が得られないので好ましくない。また、上記の磁性
を担う元素の添加量が70原子%以上であることがより
好ましい。この磁性を担う元素が70原子%未満では、
飽和磁束密度(Bs)1T以上を得ることが困難となり
好ましくない。従って、元素Tの範囲を70原子%≦
(100−x−y−z−t)≦95.5原子%とした。
また、容易に液体急冷法によって非晶質単相の薄帯を得
ることができ、なおかつ、高い飽和磁束密度を得るため
には、元素Tの範囲を81原子%以上90原子%以下と
することがさらに好ましい。
【0018】また、Feの一部は、磁歪等の調整のため
にCo,Niのうち1種または2種以上の元素で置換し
てもよく、この場合、好ましくはFeの25%以下とす
るのがよい。この範囲外であると透磁率が劣化する。上
記組成式中の元素Tとしては、少なくともFeを選択す
るのが、低コストとできる点、飽和磁束密度を高くでき
る点で好ましい。
【0019】上記組成式中の元素XのうちのBには、軟
磁性合金の非晶質形成能を高める効果、結晶組織の粗大
化を防ぐ効果、および磁場中熱処理工程において磁気特
性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があ
ると考えられる。また、上記組成式中の元素Mのうちの
Zr、Hf、Nbは、bcc-Feに対して ほとんど固
溶しないとされるが 、合金溶湯を急冷して非晶質化す
ることで、Zrと HfまたはNbを過飽和に固溶さ
せ、この後に施す磁場中熱処理によりこれら元素の固溶
量を調節して一部結晶化し、微細結晶相として析出させ
ることで、得られる軟磁性合金の軟磁気特性を向上させ
る作用がある。また、微細結晶相を析出させ、その微細
結晶相の結晶粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の
障害となり得る非晶質相を粒界に残存させることが必要
であると考えられる。さらに、この粒界非晶質相は、熱
処理温度の上昇によってbcc−Feから排出されるZ
r、Hf、Nb等の元素Mを固溶することで軟磁気特性
を劣化させるFe−M系化合物の生成を抑制すると考え
られる。よって、Fe−Zr(Hf、Nb)系の合金に
元素XとしてBを添加することが好ましい。
【0020】Bの添加量を示すtが、0.5原子%未満
では、粒界の非晶質相が不安定となるため、十分な添加
効果が得られない。また、tが18原子%を越えると、
B−M系およびFe−B系において、ホウ化物の生成傾
向が強くなり、微細結晶組織を得るための熱処理条件が
制約され、良好な軟磁気特性が得られなくなる。このよ
うにBの添加量を適切にすることで、析出する微細結晶
相の平均結晶粒径を50nm以下に調整することができ
る。従って、Bの添加量を示すtの添加量は、0.5原
子%以上、18原子%以下とすることが好ましく、より
好ましくは0.5原子以上、10原子%以下とすること
が好ましい。
【0021】また、非晶質相を得やすくするためには、
非晶質形成能の特に高いZr、Hf、Nbのいずれかを
含むことが好ましく、Zr、Hf、Nbの一部は他の4
A〜7A族元素のうち、Ti、V、Ta、Cr、Mo、
W、Mnのいずれか1種または2種以上と置換すること
ができる。また、Zr、Hf、Nbのうち、Hfは非常
に高価な元素であるため、原料コストを考慮すると、Z
r、Nbのいずれか一方または両方を含むことがより好
ましい。こうした元素Mは、比較的遅い拡散種であり、
元素Mの添加は、微細結晶核の成長速度を小さくする効
果、非晶質形成能を持つと考えられ、組織の微細化に有
効である。
【0022】元素Mの添加量を示すxが4原子%未満で
は、核成長速度を小さくする効果が小さくなり、結晶粒
径が粗大化して軟磁性が低下する。Fe−Hf−B系合
金の場合、Hf=5原子%での平均結晶粒径は13nm
であるのに対してHf=3原子%では39nmと粗大化
する。元素Mの添加量を示すxが12原子%を越える
と、M−B系またはFe−M系の化合物の生成傾向が大
きくなり、特性が低下してしまう。従って、元素Mの添
加量としては、4原子%以上、12原子%以下とするこ
とが好ましく、より好ましくは4原子%以上、9原子%
以下とすることが好ましい。
【0023】中でもNb、Cr、Mo、Wは、酸化物の
生成自由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に安定であ
り、酸化物を生成しにくい。よって、これらの元素を添
加して軟磁性合金薄帯を製造する場合には、製造時の雰
囲気全体を不活性ガス雰囲気ではなく大気中の雰囲気
で、もしくは溶湯を急冷する際に使用するるつぼのノズ
ルの先端部に不活性ガスを供給しつつ大気中で製造する
ことができるので、製造条件が容易となり、高周波用磁
心を安価に製造することができる。
【0024】また、元素Xとしては、Si、B、Al、
Ge、Ga、P、Cのうちの1種または2種以上を含有
させるようにすることが好ましい。上記の元素のうちS
i、Al、Ge、Gaは半金属元素として知られてお
り、Feを主成分とする体心立方晶の相に固溶する。こ
れらの元素の含有量が4原子%を越えると磁歪が大きく
なるか、飽和磁束密度が低下するか、透磁率が低下する
ので好ましくない。また、Si、Al、Ge、Gaに
は、軟磁性合金の電気抵抗を上昇させ、鉄損を低下させ
る効果があるが、Alはその効果が特に大きい。またG
e、Gaは結晶粒の径を微細化させる効果がある。従っ
てSi、Al、Ge、Gaのうち、Al、Ge、Gaは
添加した効果が特に大きく、Al、Ge、Gaの単独添
加もしくはAlとGe、AlとGa、GeとGa、Al
とGeとGaの複合添加とすることがより好ましい。
【0025】P、Cは、上記元素Mとの親和力、特に、
Zrとの親和力が強いため、Feを主成分とするbcc
相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留し、B
と同様の役目をし、飽和磁束密度の減少を少なくでき、
なおかつ、比抵抗を上げることができ、高周波における
透磁率等の軟磁気特性の向上が可能である。PやCは安
価であり、これらP及び/又はCの添加することによ
り、Bや元素Mの添加量を少なくしても、飽和磁束密度
や磁歪が劣化させることなく、高周波における透磁率等
の軟磁気特性を上げることができるので、コストを低く
抑えることができる。
【0026】また、元素M’としてCu、Ag、Auの
1種または2種以上の元素を3原子%以下含有させる
と、軟磁気特性が改善される。Cu等のように、Feと
固溶しない元素を微量添加することにより、組成が揺ら
ぎ、Cuが結晶化の初期段階にクラスターを形成し、相
対的にFeリッチな領域が生じ、bcc−Feの核生成
頻度を増加させることができる。また、結晶化温度を示
差熱分析法により測定したところ、上記Cu、Ag等の
元素の添加は結晶化温度をやや低めるようである。これ
は、これらの添加により非晶質中に組成揺らぎが導入さ
れ、その結果、非晶質の安定性が低下したことに起因す
ると考えられる。組成揺らぎを伴った非晶質相が結晶化
する場合、部分的に結晶化しやすい領域が多数でき均一
核生成するため、得られる合金組成が微細結晶粒組織と
なると考えられる。以上の観点からこれらの元素以外の
元素でも結晶化温度を低下させる元素には、同様の効果
が期待できる。
【0027】尚、これらの元素以外でも耐食性を改善す
るために、Cr、Ru、Rh、Ir、Pd、Os、Pr
などのうちの1種または2種以上の元素M”を添加する
ことも可能である。これらの元素は、10原子%よりも
多く添加すると、飽和磁束密度の劣化が著しくなるた
め、添加量は10原子%以下とする必要がある。また、
他に、必要に応じてY、La、Ce、Pr、Nd、P
m、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Lu、Zn、Cd、In、Sn、Pb、A
s、Sb、Bi、Se、Te、Li、Be、Mg、C
a、Sr、Ba等の元素を添加することで軟磁性合金の
磁歪を調整することもできる。その他、上記組成系の合
金溶湯において、H、N、O、S等の不可避的不 純物
については所望の特性が劣化しない程度に含有していて
も本発明で用いる合金溶湯の組成と同一とみなすことが
できるのは勿論である。
【0028】そして、上記のようなT100-x-y-z-t
xM'yM"ztなる組成からなる合金溶湯を用意したなら
ば、この合金溶湯を急冷し、非晶質相を主体とする合金
薄帯を作製する。ここで合金薄帯を作製する具体的方法
としては、特開平4−323351号公報に記載されて
いるような流体冷却法や、単ロールを用いた急冷法等を
採用することができる。ついで、作製した合金薄帯を円
環状に巻まわして巻き磁心とする。引き続きこの巻心を
磁場中熱処理することにより、上記合金薄帯の非晶質相
の中の一部を結晶化させ、平均粒径50nm以下の微細
なbcc構造の結晶粒(主にFeの結晶粒)を組織の5
0%以上析出させ、残部が非晶質相とするとともに1M
Hzの実効透磁率を1000以上とし、かつ1MHzの
コアロス10%以上低減すると、図1に示すような高周
波用磁心1が得られる。上記非晶質相を主体とする合金
薄帯に、上記磁場中熱処理を施したものは、軟磁性合金
薄帯2である。
【0029】磁場中熱処理により平均結晶粒径50nm
以下の微細なbcc構造の結晶粒からなる微細結晶相が
組織の少なくとも50%以上析出したのは、急冷状態の
非晶質合金薄帯は非晶質相を主体とする組織となってお
り、これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が
50nm以下のFeを主成分とする体心立方構造の結晶
粒からなる微細結晶相が析出するからである。このbc
c構造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析出
する温度は、合金の組成によるが773K〜973K
(500〜700℃)程度である。またこのFeの微細
結晶相が析出する温度よりも高い温度では、Fe3B、
あるいは合金にZrが含まれる場合にはFe3Zr等の
軟磁気特性を悪化させる化合物相が析出する。このよう
な 化合物相が析出する温度は、合金の組成によるが9
73K以上である。
【0030】したがって、本発明において、上記合金薄
帯を磁場中熱処理する際の保持温度(熱処理温度)は、
773K(500℃)〜973K(700℃)の範囲
で、体心立方構造を有するFeの結晶粒を主成分とする
微細結晶相が好ましく析出し、かつ上記化合物相が析出
しないように、合金の組成に応じて好ましく設定され
る。上記の熱処理温度まで昇温するときの昇温速度は、
10〜200℃/分(10〜200K/分)の範囲が好
ましく、20〜200℃/分(20〜200K/分)の
範囲とするのがより好ましい。昇温速度が遅いと製造時
間が長くなるので昇温速度は速い方が好ましいが、加熱
装置の性能上、200℃/分程度が上限とされる。
【0031】また、上記合金薄帯を上記保持温度に保持
する時間は、0〜60分間とすることができ、合金の組
成によっては0分、すなわち昇温後直ちに降温させて保
持時間無しとしても、目的とする効果を得ることができ
る。また、保持時間は60分より長くしても磁気特性は
向上せず、製造時間が長くなり生産性が悪くなるので好
ましくない。また、特にCuおよびSi、殊にSiを含
まない組成の場合には、10分以下の保持時間で優れた
磁心を得ることができる。これは、Siを添加した場合
には、FeにSiを充分に固溶させる必要があり、保持
時間を長くする必要があるからである。
【0032】また、熱処理を磁場中で行うことにより、
磁場中熱処理により一軸磁気異方性を導入することがで
きるので、磁場中熱処理を施す際の磁場の方向を制御す
ることにより、磁路と直交した方向に磁化容易軸が形成
されるので、高周波特性が改善され、1MHz以上の高
周波領域での実効透磁率を向上させることができ、しか
も1MHz以上の高周波領域でのコアロスを低減でき
る。上記の熱処理時に印加する磁場の大きさとしては、
80kA/m(1kOe)以上とすることが好ましい。
また、熱処理時に印加する磁場の大きさの上限として
は、生産設備の制約上、240kA/m(3kOe)以
下とすることが好ましい。
【0033】上記のような第1実施形態の高周波用磁心
の製造方法によれば、1MHz以上の高周波領域での実
効透磁率等の磁気特性が優れ、しかもコアロスが低い高
周波用磁心1を製造できる。この高周波用磁心1は、高
周波特性が優れており、スイッチング電源用トランスや
チョークコイル、中性子ビーム入射装置用サージブロッ
カー、高電圧パルス発生装置用トランス、粒子加速器等
に備えられる磁心として好適に用いることができる。
【0034】(第2実施形態)図2は、本発明の高周波
用磁心の製造方法の第2実施形態により得られた高周波
用磁心を示す斜視図である。図中、符号11は高周波用
磁心である。この高周波用磁心11は、Fe、Co、N
iのうち1種または2種以上の元素Tを主成分とし、T
i、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Mnのう
ち1種または2種以上の元素Mと、Bとを含むリング状
の合金薄板12が積層され、磁場中熱処理が施されてな
る円環状のものである。ここで合金薄板12に磁場中熱
処理を施したものは、軟磁性を示す。この軟磁性を示す
合金薄板を軟磁性合金薄板12と呼ぶ。上記リング状の
軟磁性合金薄板12は、第1実施形態の軟磁性合金薄帯
2を構成する軟磁性合金と同様の軟磁性合金から構成さ
れている。このような軟磁性合金薄板12から構成され
た高周波用磁心11は、1MHzで使用したときの実効
透磁率が1000以上であり、上記薄帯2を無磁場熱処
理して得られたものに比べて1MHzのコアロスを10
%以上低減されたものである。
【0035】第2実施形態の高周波用磁心の製造方法
は、上記第1実施形態と同様にして得られた非晶質相を
主体とする合金薄帯を作製した後、この合金薄帯を打ち
抜いてリング状の合金薄板を複数枚作製し、ついで、作
製したリング状の合金薄板を複数積層して積層磁心とす
る。ついで、この積層磁心に上記第1実施形態と同様に
して磁場中熱処理を施すことにより、上記合金薄板の非
晶質相の中の一部を結晶化させ、平均粒径50nm以下
の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの結晶粒)を組
織の50%以上析出させ、残部が非晶質相とするととも
に1MHzの実効透磁率を1000以上とし、かつ1M
Hzのコアロスを10%以上低減すると、図2に示すよ
うな高周波用磁心11が得られる。上記非晶質相を主体
とする合金薄板に、上記磁場中熱処理を施したものは、
軟磁性合金薄板12である。
【0036】上記のような第2実施形態の高周波用磁心
の製造方法によれば、1MHz以上の高周波領域での実
効透磁率等の磁気特性が優れ、しかもコアロスが低い高
周波用磁心11を製造できる。
【0037】
【実施例】以下、実施例、比較例により更に具体的に説
明する。 (実験例1) (磁心の作製)Fe84Nb79なる組成になるように原
料を調整し、それをN2ガス雰囲気中で高周波溶解し、
溶けた原料を鋳型に流し込み母合金を得る。その母合金
から、N2ガス雰囲気中においてノズル内で高周波溶解
し、溶湯をノズルより高速回 転している銅ロールに吹
き出させて急冷する液体急冷法を用いて、厚さ20μ
m、幅1mmのFe84Nb79なる組成の合金薄帯を得
た。次に得られた合金薄帯を、円環状に巻きまわし、下
記の熱処理条件で磁場中熱処理を行い、図1に示すよう
な外径8.9mm、内径4.0mm、高さが1mmの磁
心(実施例1)を得た。
【0038】熱処理条件は、昇温速度40゜C/分(4
0K/分)、熱処理温度680゜C(953K)、この
熱処理温度での保持時間は30分、磁場強度は磁路と直
交する方向(Z)に160A/m(2kOe)とした。
【0039】(測定)得られた実施例1の磁心の100
kHz〜10MHzにおける実効透磁率(μ’)につい
て測定した結果を下記表1に示す。ここでの実効透磁率
の測定は、インピーダンスアナライザーを用い、測定条
件は400mA/m(5mOe)とした。また、実施例
1の磁心の100kHz〜2MHz(2000kHz)
におけるコアロスについて測定した結果を下記表2及び
表3に示す。ここでのコアロスの測定は、凌和電子株式
会社製の交流磁化試験装置(MMS03759)を用
い、測定条件は磁場(Bm)が50mT、100mTと
した。
【0040】また、比較のために、熱処理を施す際に磁
場を印加しない以外は実施例1と同様にして作製した磁
心(比較例1)の100kHz〜10MHzにおける実
効透磁率(μ’)について上記方法と同様にして測定し
た結果を表1に合わせて示す。また、比較例1の磁心の
100kHz〜2MHz(2000kHz)におけるコ
アロスについて上記方法と同様にして測定した結果を表
2及び表3に合わせて示す。
【0041】
【表1】
【0042】表1中の実施例1の実効透磁率の欄の括弧
内の数値は、比較例1の実効透磁率に対する実施例1の
実効透磁率の増加割合である。
【0043】
【表2】
【0044】表2中の実施例1のコアロスの欄の括弧内
の数値は、比較例1のコアロスに対する実施例1のコア
ロスの減少割合である。
【0045】
【表3】
【0046】表3中の実施例1のコアロスの欄の括弧内
の数値は、比較例1のコアロスに対する実施例1のコア
ロスの減少割合である。
【0047】表1に示した結果から明らかなようにFe
84Nb79なる組成の合金薄帯を磁場中熱処理して得ら
れた実施例1の磁心の100kHz〜10MHzにおけ
る実効透磁率は、無磁場熱処理した比較例1の磁心の実
効透磁率よりも大きいことがわかる。また、実施例1の
磁心は、特に、1MHz〜2MHzの高周波領域におけ
る実効透磁率が比較例1のものより56%以上大きくな
っており、2MHz以上の範囲になると、その差は、よ
り顕著となっている。また、表2、表3に示した結果か
ら明らかなようにFe84Nb79なる組成の合金薄帯を
磁場中熱処理して得られた実施例1の磁心の100kH
z〜2MHzにおけるコアロスは、無磁場熱処理した比
較例1の磁心のコアロスよりも小さいことがわかる。ま
た、実施例1の磁心は、特に、1MHz〜2MHzの高
周波領域におけるコアロスが比較例1のものより27%
以上小さくなっており、2MHz以上の範囲になると、
その差は、より顕著となっている。以上のことから実施
例1のものは、比較例1のものに比べて、1MHz以上
の高周波領域での実効透磁率等の磁気特性が優れてお
り、しかもコアロスが低いので、高周波特性が優れてお
り、1MHz以上の高周波領域においても良好に動作
し、スイッチング電源用トランスや中性粒子ビーム入射
装置用サージブロッカー等に用いる高周波用磁心として
優れていることがわかる。
【0048】(実験例2) (磁心の作製)Fe73.5Cu1Nb3Si13.59なる組
成になるように原料を調整した以外は、実験例1と同様
にして厚さ20μm、幅1mmのFe73.5Cu1Nb3
13.59なる組成の合金薄帯を得た。次に得られた合
金薄帯を、実験例1と同様にして円環状に巻きまわし、
下記の熱処理条件で磁場中熱処理を行い、図1に示すよ
うな外径8.9mm、内径4.0mm、高さが1mmの
磁心(実施例2)を得た。
【0049】熱処理条件は、昇温速度40゜C/分(4
0K/分)、熱処理温度570゜C(843K)、この
熱処理温度での保持時間は30分、磁場強度は磁路と直
交する方向(Z)に160A/m(2kOe)とした。
【0050】(測定)得られた実施例2の磁心の100
kHz〜10MHzにおける実効透磁率(μ’)につい
て上記方法と同様にして測定した結果を下記表4に示
す。ここでの実効透磁率の測定は、インピーダンスアナ
ライザーを用い、測定条件は400mA/m(5mO
e)とした。また、実施例2の磁心の100kHz〜2
MHz(2000kHz)におけるコアロスについて上
記方法と同様にして測定した結果を下記表5及び表6に
示す。
【0051】また、比較のために、熱処理を施す際に磁
場を印加しない以外は実施例2と同様にして作製した磁
心(比較例2)の100kHz〜10MHzにおける実
効透磁率(μ’)について上記方法と同様にして測定し
た結果を表4に合わせて示す。また、比較例2の磁心の
100kHz〜2MHz(2000kHz)におけるコ
アロスについて上記方法と同様にして測定した結果を表
5及び表6に合わせて示す。
【0052】
【表4】
【0053】表4中の実施例2の実効透磁率の欄の括弧
内の数値は、比較例2の実効透磁率に対する実施例2の
実効透磁率の増加割合である。
【0054】
【表5】
【0055】表5中の実施例2のコアロスの欄の括弧内
の数値は、比較例2のコアロスに対する実施例2のコア
ロスの減少割合である。
【0056】
【表6】
【0057】表6中の実施例2のコアロスの欄の括弧内
の数値は、比較例2のコアロスに対する実施例2のコア
ロスの減少割合である。
【0058】表4に示した結果から明らかなようにFe
73.5Cu1Nb3Si13.59なる組成の合金薄帯を磁場
中熱処理して得られた実施例2の磁心の100kHz〜
10MHzにおける実効透磁率は、無磁場熱処理した比
較例2の磁心の実効透磁率よりも大きいことがわかる。
また、実施例2の磁心は、特に、1MHz〜2MHzの
高周波領域における実効透磁率が比較例1のものより9
2%以上大きくなっている。また、表5、表6に示した
結果から明らかなようにFe73.5Cu1Nb3Si13 .5
9なる組成の合金薄帯を磁場中熱処理して得られた実施
例2の磁心の100kHz〜2MHzにおけるコアロス
は、無磁場熱処理した比較例2の磁心のコアロスよりも
小さいことがわかる。また、実施例2の磁心は、特に、
1MHz〜2MHzの高周波領域におけるコアロスが比
較例2のものより7%以上小さくなっている。以上のこ
とから実施例2のものは、比較例2のものに比べて、1
MHz以上の高周波領域での実効透磁率等の磁気特性が
優れており、しかもコアロスが低いので、高周波特性が
優れており、1MHz以上の高周波領域においても良好
に動作し、スイッチング電源用トランスや中性粒子ビー
ム入射装置用サージブロッカー等に用いる高周波用磁心
として優れていることがわかる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように本発明の高周波用磁
心の製造方法によれば、Fe、Co、Niのうち1種ま
たは2種以上の元素Tを主成分とし、Ti、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Mo、W、Mnのうち1種または
2種以上の元素Mと、Bとを含む合金溶湯を急冷し、非
晶質を主体とする合金薄帯または薄板を得た後に、該合
金薄帯または薄板に磁場中熱処理を施して平均結晶粒径
50nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を組織
の少なくとも50%以上析出させ、残部を非晶質相とす
るとともに1MHzの実効透磁率を1000以上とし、
かつ1MHzのコアロスを10%以上低減することによ
り、1MHz以上の高周波領域での実効透磁率等の磁気
特性が優れ、しかもコアロスが低い高周波用磁心を製造
できる。従って、本発明の高周波用磁心の製造方法によ
りた高周波用磁心を製造すると、高周波特性を向上でき
るので、スイッチング電源用トランスやチョークコイ
ル、中性子ビーム入射装置用サージブロッカー、高電圧
パルス発生装置用トランス、粒子加速器等に備えられる
磁心として好適に用いることができる磁心を製造でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高周波用磁心の製造方法の第1実施
形態により得られた高周波用磁心を示す斜視図である。
【図2】 本発明の高周波用磁心の製造方法の第2実施
形態により得られた高周波用磁心を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、11・・・高周波用磁心、2・・・軟磁性合金薄帯、12
・・・軟磁性合金薄板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/10 C22F 1/10 E H01F 1/153 H01F 41/02 A 27/24 C 27/25 C22F 1/00 B 30/00 608 41/02 623 660C // C22F 1/00 682 608 691B 623 H01F 1/14 C 660 27/24 C 682 B 691 31/00 A

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe、Co、Niのうち1種または2種
    以上の元素Tを主成分とし、Ti、Zr、Hf、V、N
    b、Ta、Mo、W、Mnのうち1種または2種以上の
    元素Mと、Bとを含む合金溶湯を急冷し、非晶質を主体
    とする合金薄帯または薄板を得た後に、該合金薄帯また
    は薄板に磁場中熱処理を施して平均結晶粒径50nm以
    下の微細なbcc構造のFeの結晶粒を組織の少なくと
    も50%以上析出させ、残部を非晶質相とするとともに
    1MHzの実効透磁率を1000以上とし、かつ1MH
    zのコアロスを10%以上低減することを特徴とする高
    周波用磁心の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記合金薄帯または薄板に磁場中熱処理
    を施して1MHzのコアロスを20%以上低減すること
    を特徴とする請求項1記載の高周波用磁心の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記合金薄帯または薄板に磁場中熱処理
    を施す際の熱処理温度を773K(500℃)乃至97
    3K(700℃)とすることを特徴とする請求項1又は
    2に記載の高周波用磁心の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記合金薄帯または薄板に磁場中熱処理
    を施す際の印加磁場の大きさを80kA/m(1kO
    e)以上とすることを特徴とする請求項1乃至3のいず
    れかに記載の高周波用磁心の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記合金薄帯または薄板として下記の組
    成式で表される組成を有するものを用いること特徴とす
    る請求項1乃至4のいずれかに記載の高周波用磁心の製
    造方法。 T100-x-y-z-txM'yM"zt ただし、TはFe、Ni、Coのうち1種または2種以
    上の元素であり、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
    a、Mo、W、Mnのうち1種または2種以上の元素で
    あり、M'はCu、Ag、Auのうち1種または2種以
    上の元素、M"はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、O
    s、Prのうち1種または2種以上の元素であり、Xは
    Si、B、Al、Ge、Ga、P、Cのうち1種または
    2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは
    原子%で、1≦x≦30、0≦y≦3、0≦z≦10、
    0.5≦t≦30である。
  6. 【請求項6】 前記組成式中の元素TがFeであり、元
    素XがBであり、元素MがZrおよび/またはNbであ
    り、組成比を示すx、tは原子%で、4≦x≦12、
    0.5≦t≦18であることを特徴とする請求項5に記
    載の高周波用磁心の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記組成式中の組成比を示すx、tは原
    子%で、4≦x≦9、0.5≦t≦10であることを特
    徴とする請求項5に記載の高周波用磁心の製造方法。
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Cited By (3)

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