JP4212820B2 - Fe基軟磁性合金とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ヘッド、トランス、チョークコイル等に用いられるFe基軟磁性合金に関するものであり、特に、高飽和磁束密度で軟磁気特性に優れ、低損失のものに関する。
【0002】
【従来の技術】
柱上トランス 、チョークコイル、磁気ヘッド等に用いられる軟磁性合金において 一般的に要求される諸特性は以下の通りである。
▲1▼飽和磁束密度が高いこと。
▲2▼透磁率が高いこと。
▲3▼低保磁力であること。
▲4▼低損失であること。
▲5▼薄い形状が得やすいこと。
▲6▼磁気ヘッドに適用する場合に耐摩耗性に優れていること。
【0003】
従って柱上トランス用の磁心材料あるいは磁気ヘッドを製造する場合、これらの観点から種々の合金系において材料研究がなされている。従来、前述の用途に対しては、センダスト、パーマロイ、けい素鋼等の結晶質合金が用いられ、最近ではFe基およびCo基の非晶質合金も使用されるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
然るに柱上トランスの場合、より一層の小型化、高性能化が要求されているため、より軟磁気特性に優れ、低損失な特性が要求されるなど、高性能の磁性材料が望まれている。また、磁気ヘッドの場合、高記録密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するために、より高飽和磁束密度で高性能の磁気ヘッド用の磁性材料が望まれている。
【0005】
ところが、前記のセンダストは、軟磁気特性には優れるものの、飽和磁束密度が約11KGと低い欠点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる合金組成においては、飽和磁束密度が約8kGと低い欠点があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気特性に劣る欠点がある。
一方、非晶質合金において、Co基合金は軟磁気特性に優れるものの飽和磁束密度が1T(テスラ)程度と不十分である。また、Fe基合金は飽和磁束密度が高く、1.5Tあるいはそれ以上のものが得られるが、軟磁気特性が不十分な傾向がある。また、非晶質合金の熱安定性は十分ではなく、未だ未解決の面がある。前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を兼備することは難しい。
また、トランス用の軟磁性合金として重要な特性は、鉄損が小さいこと、飽和磁束密度が高いことであるが、従来、一部の用途として使用されているトランス用のFe系のアモルファス合金の鉄損は、周波数50Hz、励磁磁界1.3Tにおいて0.2〜0.3W/kg程度であり、鉄損をさらに低くしたいという要望があった。また、トランスの小型化のために飽和磁束密度を更に高めたいという要望もあった。
【0006】
以上のような背景から本出願人は特公平7−65145号公報、特許第285257号公報、特許第2878472号公報などに開示されているFe基微結晶合金を開発し、高い飽和磁束密度と高い透磁率を両立した合金を提供した。
これらの特許に記載されたFe基軟磁性合金の1つは、(Fe1-a Z a)bBxMy なる組成式で示され(ただしZはNi,Coのうち1種または2種の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、yは、0≦a≦0.05、b≦93原子%、0.5原子%≦x≦18原子%、4原子%≦y≦9原子%である。)るものであり、飽和磁束密度が1.5T以上であり、1kHzにおける実効透磁率が10000以上のものであった。
【0007】
また、これらの特許に記載されたFe基軟磁性合金の他の1つは、(Fe1-a Z a)bBxMy T’cなる組成式で示され(ただしZはNi,Coのうち1種または2種の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、T’はCu、Ag、Au、Pd、Ptから選ばれた1種または2種以上の元素であり、組成比を示すa、b、x、y、zは、0≦a≦0.05、b≦93原子%、0.5原子%≦x≦18原子%、4原子%≦y≦9原子%、0.2原子%≦z≦4.5原子%である。)るものであり、飽和磁束密度が1.5T以上であり、1kHzにおける実効透磁率が20000以上のものであった。
【0008】
これらのFe基微結晶合金は、優れた透磁率と高い飽和磁束密度を両立させることができ、高い硬度と耐摩耗性も兼ね備えたものであった。
ところが近年、トランス、チョークコイルの場合、電子機器の小型化に伴い、より一層の小型化が必要とされてきているため、より高性能の磁性材料が望まれており、特に柱上トランスの場合は電力エネルギーの節約のために、より低鉄損な軟磁性合金が望まれている。
また磁気ヘッドの場合、磁気記録媒体の高記録密度化が進められるのに伴う磁気記録媒体の高保磁力化に対応するため、より高性能な磁気ヘッド用磁性材料が望まれている。
これらの要望に対応するには先のFe基軟磁性合金よりも更に低鉄損で透磁率が高く、しかも上記Fe基軟磁性合金と同等以上の高い飽和磁束密度を有する軟磁性合金が望まれているが、このような軟磁性合金は未だ実用化されていなかった。
そして、これらの優れたFe基軟磁性合金について本発明者らが諸特性を更に改善するべく研究開発を進めた結果として本願発明に到達した。
【0009】
本発明の目的は、高い飽和磁束密度と特に優れた軟磁気特性を兼務するとともに、低損失のFe基軟磁性合金を提供することを目的の1つとする。更に本発明の目的の1つは、先の特性を兼ね備えた上に、微結晶を析出させる際の熱処理の適用温度範囲を広くすることができるFe基軟磁性合金の提供である。
【0010】
また、本発明の目的の1つは、1.5T以上の高い高飽和磁束密度と1kHzにおいて36000以上の高い実効高透磁率を兼備し、かつ0.1W/kg以下の低損失特性を併せ持ち、微結晶を析出させる際の熱処理の適用温度範囲を広くすることができるFe基軟磁性合金を提供することにある。
更に本発明の目的の1つは、1.5T以上の高い高飽和磁束密度と1kHzにおいて40000以上の高い実効高透磁率を兼備し、かつ0.1W/kg以下の低損失特性を併せ持ち、微結晶を析出させる際の熱処理の適用温度範囲を広くすることができるFe基軟磁性合金を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るFe基軟磁性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組成からなることを特徴としたものである。
Tx By Mz Qt
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0 . 05<t≦0 . 3原子%である。
SnまたはSを微量添加することにより、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金が得られる。また、SnとSを微量添加することで微結晶化のための熱処理時の熱処理温度範囲が広くなる。
【0012】
本発明に係るFe基軟磁性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組成からなることを特徴とするものである。Tx By Mz Qt Xu
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、XはGaとY及び希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0 . 05<t≦0 . 3原子%、0<u≦5原子%である。
SnまたはSを微量添加することにより、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金が得られる。また、SnとSを微量添加することで微結晶化のための熱処理時の熱処理温度範囲が広くなる。また、X元素の添加により溶湯から急冷してFe基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化が容易となり、この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して軟磁気特性が向上する。
本発明に係るFe基軟磁性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組成からなり、1kHzにおける実効透磁率が40000以上であることを特徴とする。
T x B y M z Q t
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子%、0 . 5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1 . 0原子%である。
本発明に係るFe基軟磁性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組成からなり、1kHzにおける実効透磁率が40000以上であることを特徴とする。
T x B y M z Q t X u
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、XはGaとY及び希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子%≦x≦93原子%、0 . 5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1 . 0原子%、0<u≦5原子%である。
【0013】
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記のM元素として、Nb、Zr、V、Mo、Wのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記のM元素として、NbとZrの少なくとも一方を必ず含むことを特徴とする。
Nbは高融点金属であり、熱的安定性も高く、酸化しづらい性質を付与するので、Nbを含む組成系のFe基軟磁性合金を製造する場合に大気中などの酸化雰囲気においても製造が容易になり、M元素をNbのみとすれば最も好ましい。
【0014】
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記Q元素の組成比を示すtが、0.05原子%≦t≦0.2原子%の範囲とされたことを特徴とする。Q元素の含有量を特定の範囲とすることで、一層高い透磁率と低い鉄損を確保できる。
【0015】
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記元素Xの組成比を示すuが、0.1原子%≦u≦5原子%の範囲とされたことを特徴とする。
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記元素Xの組成比を示すuが、0.1原子%≦u≦1原子%の範囲とされたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るFe基軟磁性合金は、鉄損が、Bm=1.33T、周波数50Hzにおいて0.1W/kg以下であることを特徴とする。
このような低い鉄損を有するならば、広く用いられているトランス用のアモルファス合金よりも低い鉄損とすることができ、しかも高い飽和磁束密度と高い透磁率を兼ね備えることができる。よって本発明のFe基軟磁性合金により、トランス用途としての一層の小型化、高性能化に寄与する。
【0017】
本発明に係るFe基軟磁性合金は、飽和磁束密度Bsが1.5T以上、1kHzにおける実効透磁率μeが36000以上であって、非晶質相と非晶質相から熱処理により析出させたbcc構造のFeの微細結晶粒を主体としてなり、前記Feの微細結晶粒が前記非晶質相を500〜700℃の温度範囲に加熱後に冷却して析出したものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の製造方法は、先のいずれかに記載のFe基軟磁性合金において硫黄を必須元素として含む組成系のFe基軟磁性合金を急冷法により製造する方法であって、
硫黄を除いた他の元素を目的の組成比となるように原料を混合して溶解しインゴットを作成し、このインゴットを溶解して急冷法に供してFe基軟磁性合金とするに際し、急冷法に供する際にインゴットとともに目的の量の硫黄を溶解してから急冷することを特徴とする。
本発明に係るFe基軟磁性合金の構成元素を見ると、硫黄よりも高融点の金属元素が主体であり、全体の組成比に合わせて原料を混合し、合金溶湯としてインゴットを作成すると、インゴット作成時の溶解操作により硫黄が揮発し、目的の組成比よりも低い硫黄含有量となり易い。そこで、急冷法に供するためのインゴットを作成する場合に硫黄を含ませずに硫黄を除いた組成比になるように原料を混合して溶解し、インゴットを作成し、このインゴットを急冷法に供して溶解する場合に目的量の硫黄を追加し、目的の組成比の合金溶湯として直ちに急冷法により急冷することで目的の組成比のFe基軟磁性合金を確実に製造することができる。
【0019】
本発明の製造方法は先の製造方法において、溶解装置の溶湯を急冷装置に噴出させて急冷し、リボン状あるいは粒子状のFe基軟磁性合金を製造するに際し、溶解装置で溶解する際に前記インゴットと硫黄を混合したものを用いることを特徴とする。
急冷法において溶湯からリボン状あるいは粒子状とする際、インゴットと硫黄を同時に溶解するので、溶解中に減少し易い硫黄を残留させたままの状態で急冷処理を行うことができるので、目的の組成の硫黄を含む目的の組成比のFe基軟磁性合金が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記組成の非晶質合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金を溶湯から急冷することにより得る工程と、これらの工程で得られたものを結晶化温度以上に加熱した後に冷却し、非晶質相の一部または大部分を結晶化し、微細な結晶粒を析出させる熱処理工程とによって通常得ることが出来る。
【0021】
本実施の形態に係るFe基軟磁性合金は、次式で示される組成からなることを特徴としたものである。
Tx By Mz Qt
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%である。
【0022】
本実施の形態に係るFe基軟磁性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組成からなることを特徴とするものである。
Tx By Mz Qt Xu
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、XはSi、Al、Ge、Ga、P、C、Cu、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<u≦5原子%である。
【0023】
本発明に係る合金において必須成分としてのBには、本発明合金の非晶質形成能を高める効果、および前記熱処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があると考えられ、このためB添加は必須である。非晶質形成能からみて、Bの含有量は0.5原子%以上、18原子%以下が必要であるが、急冷時に非晶質相を確実に得るとともに良好な軟磁気特性が得られることを考慮すると0.5原子%以上、9原子%以下の範囲がより好ましい。
【0024】
本発明において、急冷により非晶質相を得やすくするためには、非晶質形成能の高いZrまたはHfのいずれかを含むことが好ましく、またZr、Hfはその一部を他の4A〜6A族元素のうち、Ti、V、Nb、Ta、Mo、Wから選択される1種または2種以上の元素と置換することが出来る。
前記添加元素のうち、Zr、Hf、Nbは、合金溶湯から急冷した場合に非晶質相を得るために重要な元素であり、この非晶質相から熱処理によりFeの微結晶粒を析出させて飽和磁束密度Bsが1.5T(テスラ)以上、1kHzにおける実効透磁率μeが36000以上を両立するために重要である。ZrとHfのいずれか、またはこれらに加えてNbを添加する場合、4原子%以上、9原子%以下の範囲でこれらの元素を添加しないと必要量の非晶質相を得ることが難しい。
また、前記元素の中においてもNbは融点の高い金属元素であって熱的に安定であり、製造時に酸化しずらいものであるので、Zr、Hf含有量を少なくしてNb含有量を多くすることでZr、Hfを多く含む組成系のものより製造条件を緩くすることが可能となり、元素MをNbのみとすることが最も好ましく、さらに、良好な磁気特性を持つことが可能となるのに加えて、大気中での製造も容易となる。
【0025】
次に、本発明合金における主成分である元素Tの含有量を示す組成比xは75原子%以上、93原子%以下である。これは、bが93原子%を越えると高い透磁率が得られないためであるが、飽和磁束密度1T以上を得るためには、bが75原子%以上必要であり、飽和磁束密度1.5T以上を確実に得るためには、他の添加元素の添加範囲を満たした上においてできるだけ多く含有させることが必要であり、他の添加元素の量も鑑みると84原子%を超える量を含有させることで1.5T以上の飽和磁束密度を容易に得ることができる。
元素TはFeを主成分もしくはFeのみとするのが低コストで実施できる点において有利であり、飽和磁束密度を高くすることができる点で好ましい。Feの一部は磁歪等の調整のためにCo、Niの1種または2種で置換しても良い。この場合、CoまたはNiの添加量はFeの20%以下が好ましく、5%以下とすることがより好ましい。この範囲を超えてCoまたはNiをFeに対して置換すると、透磁率が劣化するため、好ましくない。
【0026】
本発明に係る合金においては、先の元素に加えてSとSnのうちの1種または2種を0<(S,Sn)≦1.0原子%の範囲で含有している。これらの元素は熱処理後合金中に均一に分散し、これらの元素を含有していることで先の組成の軟磁性合金の諸特性に加え、即ち、高い飽和磁束密度を維持したまま、高い透磁率を有した上に、鉄損が低いという特徴を得ることができる。また、非晶質相の状態から熱処理により微結晶を析出させる際の熱処理温度、即ち、アニール温度を従来の組成系のものよりも、より広い範囲に設定して、同等あるいはそれ以上の高い磁気特性を得ることができるようになり、アニール温度依存性を広くすることができる。
以上の背景において、SとSnの含有量において、先の範囲の中でも0.05原子%以上、0.8原子%以下の範囲が好ましく、0.05原子%以上、0.3原子%以下の範囲がより好ましく、0.05原子%以上、0.2原子%以下の範囲が最も好ましい。
また、本発明に係る合金においては、X元素の添加により溶湯から急冷してFe基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化を容易とし、この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して軟磁気特性が向上する。また、元素xの中で特にYを含む希土類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種または2種以上)0.01〜0.4原子%、好ましくは0.01〜0.1原子%の範囲で添加すると、透磁率の向上に特に効果があり、希土類元素の中でもLaは最も好ましい添加元素である。
【0027】
以上、本発明のFe基軟磁性合金に含まれる合金元素の限定理由について説明したが、その他、H、N、O等の不可避的不純物については所望の特性が劣化しない程度に含有していても良いのは勿論である。
【0028】
先の組成の軟磁性合金を製造するためには、製造方法の一例として、回転している金属製のロールに目的の組成の合金溶湯を噴出させて薄帯状(リボン状)とする、単ロール法を採用することができる。この単ロール法を採用する場合、合金溶湯の急冷を不活性ガス雰囲気中あるいは真空雰囲気中で行っても良く、大気雰囲気中で行っても良い。
また、大気雰囲気中で行う場合には、溶湯を急冷する際に、使用するるつぼのノズルの先端部にのみ不活性ガスを供給し、ノズルとその近傍における合金溶湯及び薄帯(リボン)の酸化を防止しつつ、ノズルから冷却ロール等の冷却面に溶湯を噴出させることにより行っても良い。
【0029】
次に、Fe基軟磁性合金として薄帯ではなく、粉粒体の状態のFe基軟磁性合金を得るには、不活性ガス雰囲気中に溶湯を粒状あるいは霧状などに吹き出して急冷し、非晶質の粉粒体を得るアトマイズ法を採用しても良い。このアトマイズ法によれば、目的の組成比を有し、急冷により非晶質相とされた合金の粉粒体を得ることができ、この合金の粉粒体に後述する熱処理を施すことで粉粒体状態のFe基軟磁性合金を得ることができる。なお、得られた非晶質相の粉粒体を圧密して目的の形状としてからプラズマ焼結法などにおいて熱処理しながら結晶化して固化する方法を採用し、目的のコア形状に加工するなどの方法を採用しても良いのは勿論である。
【0030】
ついで、先の如く作製した薄帯を所定の温度に加熱後冷却する熱処理を施して結晶化することにより、上記薄帯の非晶質相の一部または全部を結晶化し、非晶質相と、平均粒径100nm以下の微細なbcc構造の結晶粒からなる微細結晶相とが混合した組織を得ることができ、目的とするFe基軟磁性合金を得ることができる。なお、前記組成比のFe基軟磁性合金において元素Tの主成分をFeとした場合は、平均粒径100nm以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒からなる微細結晶相が主に析出する。
【0031】
熱処理により平均結晶粒径100nm以下の微細なbcc構造の結晶粒(Feの結晶粒)からなる微細結晶組織が析出したのは、急冷状態の非晶質合金薄帯等が非晶質相を主体とする組織となっており、これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が30nm以下のbccFeを主成分とする体心立方構造の結晶粒からなる微細結晶相が析出するからである。
このbcc構造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析出する温度は、合金の組成によるが753K(480℃)〜973K(700℃)、好ましくは753K(480℃)〜948K(675℃)の範囲である。
また、このFeの微細結晶相が析出する温度よりも高い温度では、Fe3B等の軟磁気特性を悪化させる化合物相が析出する傾向がある。このような化合物相が析出する温度は、合金の組成によるが1013K(740℃)〜1083K(810℃)程度である。ただし、軟磁気特性を悪化させる化合物相の析出は、少量であれば影響が少ないので、一部化合物相の析出があっても差し支えない。
【0032】
上記の熱処理温度まで昇温するときの昇温速度は、20〜200K/分の範囲が好ましく、40〜200K/分の範囲とするのがより好ましい。
昇温速度が遅いと製造時間が長くなるので昇温速度は速い方が好ましいが、一般的には加熱装置の性能上、200K/分程度が上限とされる。
また、非晶質合金薄帯等を上記保持温度に保持する時間は、0〜180分間とすることができ、合金の組成によっては0分、すなわち、昇温後直ちに降温させて保持時間無しとしても、目的とする微結晶の析出効果を得ることができる。また、保持時間は180分より長くしても磁気特性は向上せず、逆に製造時間が長くなり生産性が悪くなるので好ましくない。
【0033】
以下に、急冷薄帯(急冷リボン)を製造する一具体例として、大気雰囲気中においてるつぼのノズル先端部のみに不活性ガスを供給しながら合金溶湯を急冷する装置と方法について説明する。
図1は、大気中で急冷薄帯を製造する場合に用いて好適な合金薄帯製造装置の一例を示す概略構成図である。
この例の合金薄帯製造装置は、冷却ロール1と、合金溶湯を保持するるつぼ3の下端部に連接された溶湯ノズル2と、溶湯ノズル2及びるつぼ3の外周に捲回されて配置された加熱コイル4と、不活性ガスを溶湯ノズル2の少なくとも先端部にフローするためのガスフロー供給手段である第1〜第3のガスフローノズル51、52、53、及び、溶湯ノズル2の先端部周囲に配置された内向き孔付きの環状管からなるガスフローパイプ54と、冷却ロール1の冷却面1aに向けて不活性ガスをフローするガスフロー供給手段である第5のガスフローノズル55から基本的に構成されている。
【0034】
冷却ロール1は、図示しないモータにより矢印(反時計)方向へ回転駆動される。冷却ロール1の冷却面1aは、炭素鋼、例えばJISS45CなどのFe基合金、または真鍮(Cu−Zn合金)、あるいは純銅等の金属材料で構成することが望ましい。冷却ロール1の冷却面1aが真鍮あるいは純銅であると、熱伝導性が高いことから、冷却効果が高く、溶湯の急冷に適している。冷却効果を向上させるためには、内部に水冷構造を設けることが望ましい。
【0035】
図1において、るつぼ3内で溶解された合金溶湯は、下端部の溶湯ノズル2から冷却ロール1の冷却面1aに向けて噴出される。るつぼ3の上部は、供給管7を介してArガスなどのガス供給源8に接続されると共に、供給管7には、圧力調整弁9と電磁弁10とが組み込まれ、供給管7において圧力調整弁9と電磁弁10との間には圧力計11が組み込まれている。
また、供給管7には補助管12が並列的に接続され、補助管12には圧力調整弁13、流量調整弁14、流量計15が組み込まれている。従って、ガス供給源8からるつぼ3内にArガスなどの不活性ガスを供給し、溶湯にガス圧を作用させ、溶湯ノズル2から溶湯を冷却ロール1に向けて噴出して急冷できるように構成されている。
【0036】
図1に示す装置を用いて合金薄帯を製造する時には、大気雰囲気中にて冷却ロール1を高速で回転させつつ、その頂部付近、もしくは、頂部よりやや前方に近接配置した溶湯ノズル2から上記のいずれかの組成の合金溶湯を噴出することにより、冷却ロール1の表面で溶湯を急速冷却して固化させつつ冷却ロール1の回転方向に帯状となして引き出す。
また、図1に示すように、冷却ロール1の回転方向前側下方には、薄帯誘導板70とスクレイパー72とが備えられている。冷却面1aにおいて溶湯が冷却されて形成された合金薄帯は、スクレイパー72により冷却ロール1から剥離されて薄帯誘導板70側に案内される。従って、スクレイパー72の近傍が、冷却面1aから合金薄帯が剥離する位置となる。
【0037】
次に、先の第1〜第4のガスフローノズル51、52、53、54には、第1のガスフローノズル51について例示するように、圧力調整弁16が組み込まれた接続管17を介してガス供給源18が接続されている。
また、先の第1〜第4のガスフローノズル51、52、53、54を、単独で用いることは勿論、複数組み合わせて使用することができ、溶湯ノズル2から冷却ロール1に溶湯を噴出させて急冷する部分(パドル部分)の周囲の酸素濃度を低減させて急冷される溶湯が不要に酸化しないように雰囲気を調整することができる。
【0038】
図1に示した合金薄帯製造装置を用いて本発明に係る軟磁性合金を製造するには、先の合金薄帯製造装置を室温程度の大気雰囲気中に設置し、溶湯ノズル(溶湯射出用ノズル)2の少なくとも溶湯吹き出し部先端部分21に第1〜第4のガスフローノズル51〜54からそれぞれ不活性ガスをフローするとともに冷却ロール1の冷却面1aに向けて第5のガスフローノズル55から不活性ガスをフローしつつ、上記のいずれかで示される組成式を示す合金溶湯を溶湯ノズル2から冷却ロール1の冷却面1aに射出して急冷し、非晶質を主体とする合金薄帯を得る。
ついで、作製した合金薄帯を結晶化温度以上に加熱後冷却する熱処理(アニール処理)することにより、上記合金薄帯の非晶質相の少なくとも一部あるいはほぼ全部を結晶化し、非晶質相と、平均粒径100nm以下の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの結晶粒)からなる微細結晶相とが混合した組織を得、目的とするFe基軟磁性合金を得ることができる。
【0039】
ここで、先に示す組成の軟磁性合金を製造する場合、Snを含む組成系の軟磁性合金においては、目的の組成となるように合金溶湯を作成すれば良い。
即ち、目的の組成となるような組成の母合金(インゴット)をアーク溶解法等の常法で作成し、この母合金をるつぼ2に投入してこの母合金を加熱溶解し、急冷法に供すれば良い。しかし、硫黄(S)を含む組成系の軟磁性合金を製造する場合、母合金(インゴット)中に硫黄を含有させておくと、母合金をアーク溶解法等の常法により溶製する際の加熱溶融処理時に融点の低い硫黄が蒸発し、実際に合金溶湯の急冷操作を行う時点において合金溶湯中の硫黄含有量が目的の組成比よりも少なくなってしまうおそれが高い。
【0040】
このため、本発明組成系において特に硫黄(S)を含む組成系の軟磁性合金を製造する場合、目的量の硫黄を含まない状態の組成の母合金(インゴット)を一端作成し、この母合金を合金薄帯製造装置のるつぼ3にセットする際に目的量の硫黄粉末等の硫黄原料を添加してから溶解し、溶解後なるべく早い時間、できれば直ちに合金溶湯の噴出作業を行って急冷処理を行えば良い。この操作によって揮発しやすい硫黄の減量を無くし、目的の量の硫黄をFe基軟磁性合金中に含ませることができる。ただし、硫黄Sの蒸発量を正確に制御できるのであれば、硫黄Sは予め母合金に投入して製造しても良いのは勿論である。
【0041】
以上の製造方法により得られた目的の組成比のFe基軟磁性合金は、1.5T以上の高い飽和磁束密度を有し、36000以上の高い実効透磁率を有するとともに、0.13W・kg-1以下の低い鉄損(コアロス)を示す優れたものとなる。また、微量添加するSとSnの少なくとも一方の組成比を0.05〜0.3原子%の好ましい範囲とするならば、1.5T以上の高い飽和磁束密度を有し、40000以上の高い実効透磁率を有するとともに、0.1W・kg-1以下の低い鉄損を示す優れたFe基軟磁性合金を得ることができる。
次に本発明の高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金の組成限定理由について実施例をもって更に詳細に説明する。
【0042】
【実施例】
以下の各実施例に示す合金は片ロール液体急冷法により作成した。即ち、1つの回転している鋼製ロール上におかれた石英ノズルから、溶融金属(射出温度:1220℃)をアルゴンガスの圧力(射出圧0.092MPa:差圧)により回転中のロール(ロール周速:70m/s)上に、ノズル先端部とロール表面とのギャップを0.2mmに設定して噴出させ、合金溶湯を急冷して目的の組成比の合金薄帯を得た。るつぼ先端部の石英ノズルのスリット状の開口部の幅と厚さは、15×0.3mmであり、以上のように作成した合金薄帯の幅は約15mmであり、厚さは約20〜40μmであった。
【0043】
得られた各合金薄帯試料を後述する熱処理温度でアニール処理し、軟磁性合金薄帯試料を得た。得られた軟磁性合金薄帯試料の透磁率は、薄帯試料を加工し、外径10mm、内径5mmのリング状とし、これを15枚積み重ねた磁心に巻線してリング状試料とし、インダクタンス法により測定した。実効透磁率(μe)の測定条件は10mOe、1kHzとした。
各試料の保磁力(Hc)は、直流B−Hループトレーサにより測定し、飽和磁束密度(Bs)はVSMにて10kOeで測定した磁化より算出した。なお、特に規定しない限り、以下に示す実施例では、500〜700℃の温度で1時間保持した後、水焼入れした後の磁気特性を示す。
【0044】
まず、本発明に係る組成系の軟磁性合金においてSnを単独添加した組成系の合金薄帯(Fe84Nb7B9-xSnx)において、Sn含有量による薄帯(リボン)の状態と薄帯組織の状態を以下の表1に示す。また、本発明に係る組成系の軟磁性合金においてSを単独添加した組成系(Fe84Nb7B9-xSx)のS含有量による薄帯の状態と薄帯組織の状態を以下の表1に併せて示した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す記載から明らかなように、Sn含有量またはS含有量を1.0原子%以下とした合金薄帯試料はいずれもリボンの状態も良く(換言すると、急冷時にリボンが粉砕されてしまう訳ではなく)、非晶質単相状態のものが得られた。これらに対してSnを1.2原子%、Sを1.2原子%含有する試料はいずれも急冷時にリボンが粉砕されてしまい、脆くなり過ぎてしまったことを意味する。
【0047】
次に、本発明に係る軟磁性合金の磁気特性に及ぼすSn、Sの添加効果について本発明合金の一種であるFe84Nb7B9-xSnx合金とFe84Nb7B9-xSx合金とを例にとって以下に説明する。
図2に、Fe84Nb7B9-xSnxなる組成の合金とFe84Nb7B9-xSxなる組成の合金の実効透磁率(1kHz)と保磁力(Hc:A/m)と鉄損(W1.33/50:励磁磁界1.33T、周波数50Hz)に対するSn、Sの含有量依存性を示す。また、以下の表2に各試料の熱処理温度(℃)と飽和磁束密度(T)の測定結果と保磁力(A/m)の測定結果と実効透磁率(1kHz)の測定結果と鉄損(Bm=1.33T、f=50Hz)の測定結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
図2に示す結果から、Sn添加量、S添加量のいずれにおいても、1原子%以下の添加量において、透磁率が向上するとともに保磁力が低下し、優れた軟磁気特性を示していることが明らかである。また、Sn添加量、S添加量のいずれにおいても、0.05原子%以上、0.8原子%の範囲においてSnあるいはSを添加していない比較試料(組成比Fe84Nb7B9の合金)の値よりも高い透磁率(透磁率36000以上)、低い保磁力、低い鉄損(0.115W・kg-1以下)を示した。また、先の組成範囲においても特に、Sn添加量、S添加量のいずれにおいても、0.05原子%以上、0.3原子%の範囲であるならば、高い透磁率(透磁率42000以上)、低い保磁力、低い鉄損(0.1W・kg-1以下)を示した。
次に、本発明に係る種々の組成系の軟磁性合金について同等の製造方法で軟磁性合金試料を作成し、それら各軟磁性合金試料の熱処理温度と飽和磁束密度と保磁力と透磁率と鉄損の測定結果を併せて表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示す結果から、いずれの組成系においても先の表2に示す軟磁性合金試料と同等の効果を得ることができた。特に、Fe84Nb7B9、Fe85.5Zr2Nb4B8.5、Fe84Nb6.9Y0.1B9、Fe84Nb6.9La0.1B9、Fe83Nb6.7B9.3Ga1の各組成の合金にS、Snを添加したものでは、鉄損が0.1W・kg-1以下を下回る良好な結果が得られていることがわかる。
【0052】
図3はFe84Nb7B9なる組成比のFe基軟磁性合金とFe84Nb7B8.9Sn0.1なる組成比のFe基軟磁性合金とFe84Nb7B8.9S0.1なる組成比のFe基軟磁性合金の実効透磁率と保磁力の熱処理温度依存性を測定した結果を示すものである。
熱処理温度(Ta)依存性を示す図3の結果から、Fe84Nb7B9なる組成比のFe基軟磁性合金に対して微量(0.1原子%)のSを添加した本発明のFe基軟磁性合金は、より広い温度範囲で熱処理を施しても著しく高い透磁率を得ることができ、保磁力もより低いものを得られ易いという結果が明らかになった。
また、Fe84Nb7B9なる組成比のFe基軟磁性合金に対して微量(0.1原子%)のSを添加した本発明のFe基軟磁性合金にあっては、適用可能な熱処理温度範囲は概略等しいが、透磁率の著しい向上効果が得られた。
【0053】
例えば、Fe84Nb7B9なる組成比のFe基軟磁性合金において30000を超える実効透磁率を得るためには、図3から見て650℃±5℃の範囲に加熱する熱処理を行わなくてはならないが、この組成に微量のSを添加したFe基軟磁性合金では30000を超える実効透磁率を得るためには、605℃〜690℃の範囲で熱処理すれば良いこととなり、大幅に熱処理条件が緩和される。また、Snを微量添加した組成系においては同様に30000を超える実効透磁率を得るためには、630〜690℃の範囲で熱処理すれば良いこととなり、この組成においても大幅に熱処理条件が緩和されることが明らかである。
【0054】
図4と図5にFe84Nb7B8.9Sn0.1なる組成の合金薄帯試料(薄帯全体の厚さ20μm)の熱処理前と熱処理後のSnの濃度分布をESCA(化学分析用電子分光法)にて測定した結果を示す。
図4に示すようにアニール前の合金薄帯試料においては、薄帯表面より0.5nm以下の範囲の領域内でSnの高濃度領域が形成されているが、この試料に対して180℃/分で昇温し、650℃において5分間加熱後に冷却する熱処理(アニール処理)を施した後の図5に示す合金薄帯試料においてはSnの高濃度領域が解消され、Snは合金薄帯の厚さ方向にほぼ均一に分散されたことが明らかになった。
【0055】
この時、Snの添加前のFe84Nb7B9なる組成の合金の熱処理温度の磁歪(λ)が4.2×10-7であったが、Snを添加し、熱処理を行った後のFe84Nb7B8.9Sn0.1なる組成の合金薄帯試料の磁歪が2.6×10-7と少なくなった。
上記の結果から、Snが合金薄帯中に均一に分散することにより、Snがbcc構造のFeの結晶中に固溶したり、Sn以外の他の元素のFeへの固溶量が変化することで、Snの分散前(Sn添加前)よりも磁歪の絶対値が小さくなり、その結果軟磁気特性が改善され、鉄損が小さくなったものと推測される。
【0056】
次に、以下の表4〜表17に示す各試料は、先に説明した図1に示す大気中にて合金薄帯を製造可能な合金薄帯製造装置(大気中液体急冷装置)を用いて製造した試料の各種特性測定結果と、図1に示す装置のうち、ガスフローノズル51、52、53、54、55を略して合金薄帯製造装置を構成し、この合金薄帯製造装置(具体的には冷却ロール1とるつぼ3)をArガス雰囲気に保持可能な雰囲気制御室に設置して製造した試料の各種特性測定結果を製造条件と併せて比較しながら示す。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
【表14】
【0068】
【表15】
【0069】
【表16】
【0070】
【表17】
【0071】
表4〜表7のNo.37〜No.40の試料は、Fe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2の組成を有し、Arガス雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を示す。これらの試料は、Arガス圧力160Torr(2.13×104Pa)あるいは750Torr(1×105Pa)においてるつぼの噴射口と冷却ロールとの間隔(gap)を0.2mmあるいは0.25mmに設定し、合金溶湯の射出温度を1350℃あるは1380℃(射出温度の欄参照)、射出圧を0.7kg/cm2あるいは1.6kg/cm2として製造した薄帯(リボン)の試料であって、得られた薄帯を昇温速度180Kで目的の温度(625℃、650℃、675℃、700℃)で5分間加熱後に冷却する熱処理(熱処理の欄の数値を参照)を施した後に、透磁率(1kHzと100kHzと1MHzの各値)と、保磁力(Hc:単位A/mあるいは単位Oe)と、B10(T:テスラ、磁界を10エルステッド(1 Oe≒80A/cmに相当)印加した場合の磁束密度)と、残留磁束密度Br(T)と、飽和磁束密度Bs(T)と、磁歪λs(×10-6)と、商用周波数50HzでのBr及び保磁力Hc(Oe)と、コアロス(W1.33/50:W/kg)を測定した結果を示す。また、表4、5に示すリボン重量255gは得られた薄帯の総重量を示し、板厚の20.026μmは得られた薄帯の始端部分での板厚を示し、板厚の19.782μmは得られた薄帯の最終端部分の板厚を示す。
【0072】
表4と表5の構造の欄において、Sは薄帯の始端部分での構造(amoはアモルファスを示し)を示し、Eは薄帯の終端部分での構造を示し、(F)とは薄帯において冷却ロールに接しない側の面の構造、(R)とは薄帯において冷却ロールに接する側の面の金属組織構造を示す。
表4と表5のNo.37の試料とNo.38の試料とNo.39の試料とNo.40の試料は、Arガス雰囲気圧力とギャップ値と射出温度を表4〜表7に示すように若干変更して得られた各試料の各種の測定値を示す。
これらの試料に対し表6と表7に示すNo.43、44の試料については、図1に示す大気中液体急冷装置で製造した試料を示す。
【0073】
これらの表4〜表7のNo.37、38、39、40、43、44の試料の比較では、Arガス雰囲気において大気圧で製造したNo.39、40の試料の商用周波数でのコアロスが比較的大きい(0.2前後あるいは0.5程度)のに対し、大気中液体急冷装置で製造したNo.43、44の試料の商用周波数でのコアロスが小さく(0.1前後の値)なっている。また、透磁率においてもNo.37〜40の試料に対してNo.43、44の試料は同等かそれ以上の特性が得られた。
これらの試料の特性比較から、本願発明組成系のSnを含有する試料において、Arガス雰囲気において製造するよりも、図1に示す大気中液体急冷装置で製造した方が良好なコアロス、同等以上の透磁率のFe基軟磁性合金薄帯が得られることが判明した。
【0074】
なお、一般にFeNbB系あるいはFeHfB系等の合金薄帯試料を製造する場合、冷却ロールとるつぼをAr雰囲気の処理室に設置して製造(Arガス雰囲気中液体急冷装置)した試料の方が大気中液体急冷装置で製造する試料よりも良好な磁気特性を発揮する。これは、大気中で製造する場合、冷却ロール外周の合金溶湯噴出部分の周囲をArガスで覆ったとしても大気中の酸素が薄帯の周囲に存在するので、FeやNbが酸化する可能性が高く、酸化に伴って特性の劣化が起こるためであると本発明者らは考えている。
これに対してSnを微量添加した本発明組成系の試料であるならば、柱上トランス等の応用面において重要なコアロスの値においてArガス雰囲気中において製造した試料よりも大気中液体急冷装置による試料の方が優れ、透磁率においても同等以上の特性が得られることから、図1に示す大気中液体急冷装置により連続的に製造できることで大量製造する場合に有利となる特徴を有する。
これに対してArガス雰囲気中において製造する場合は、雰囲気の制御を行うための処理室に装置全体を設置する必要があり、処理室内部をArガス雰囲気に置換した後で製造し、製造後に大気に戻して回収する必要があるので、薄帯製造がバッチ処理となり、大量に連続製造することは不可能となる。
【0075】
表8と表9に示すNo.45、46、47の試料は、Fe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2の組成を有し、大気中減圧雰囲気(160Torr「2.13×104Pa」あるいは260Torr「1×105Pa」)あるいはN2ガス減圧雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を示す。
大気中減圧雰囲気あるいはN2ガス減圧雰囲気中において製造したいずれの試料においても、優れた透磁率と0.1前後以下の小さなコアロスが得られた。
【0076】
表10〜表13のNo.50〜No.53の試料は、Fe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3の組成を有し、Arガス雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を示す。これらの試料は、Arガス圧力160Torr(2.13×104Pa)又は750Torr(1×105Pa)においてるつぼの噴射口と冷却ロールとの間隔(gap)を0.2mmあるいは0.25mmに設定し、合金溶湯の射出温度を1350℃あるいは1380℃(射出温度の欄参照)に、射出圧を0.7kg/cm2あるいは1.6kg/cm2として製造した薄帯(リボン)の試料であって、得られた薄帯を昇温速度180Kで目的の温度(625℃、650℃、675℃、700℃)で5分間加熱する熱処理(熱処理の欄参照)を施した後に、透磁率(1kHzと100kHzと1MHzの各値)と、保磁力(Hc:単位A/mあるいは単位Oe)と、B10(T:テスラ)と、残留磁束密度Br(T)と、飽和磁束密度Bs(T)と、磁歪λs(×10-6)と、商用周波数50HzでのBr及び保磁力(Hc)と、コアロス(W1.33/50:W/kg)を測定した結果を示す。
【0077】
また、表10〜表13に示すNo.50、51、52、53、54、55の試料において、例えばリボン重量248gは得られた薄帯の総重量を示し、板厚の20.241μmは得られた薄帯の始端部分での板厚を示し、板厚の20.307μmは得られた薄帯の最終端部分の板厚を示す。表10〜表13の構造の欄において、Sは薄帯の始端(スタート)部分での構造(amoはアモルファスを示し)を示し、Eは薄帯の終端(エンド)部分での構造を示し、(F)とは薄帯において冷却ロールに接しない側の自由面の構造を示す。
【0078】
これらのNo.50〜55の試料の比較から、Snを0.3原子%含有してなる組成系の試料であっても、先のSnを0.2原子%含有してなる試料の場合と同等の結果、即ちArガス雰囲気において製造するよりも、図1に示す大気中液体急冷装置で製造した方が良好なコアロス、同等以上の透磁率が得られることが判明した。
なお、No.52、53の試料においてコアロスが比較的大きいのは、B10の値が比較的低くなっていることに起因していると考えられ、このB10の値が低いのは、薄帯の表面荒れによるものと推定される。
【0079】
表14、表15のNo.56〜No.58の試料は、Fe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3の組成を有し、N2ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中、大気中で製造した各種試料の測定結果を比較して示す。
表14に示す結果から、Arガス雰囲気とN2ガス雰囲気にて製造された薄帯試料は同程度の透磁率と同程度のコアロスを示す。また、大気中において製造した薄帯試料においても優れた透磁率とコアロスが得られた。
【0080】
表16、表17のNo.60、No.61、No.62の試料は、Fe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3の組成を有し、図1に示す大気液体急冷装置でギャップの値を0.25mm、0.2mm、0.15mmにそれぞれ変更して製造した各種薄帯試料の測定結果を比較して示す。
表16、表17に示す結果から、ギャップの値を変更しても透磁率、保磁力、飽和磁束密度等の磁気特性は変化ないが、コアロスの値が狭ギャップにするほど若干向上している。従って冷却ロールとるつぼ先端部との間のギャップについては狭い方が好ましいと考えられるが、ギャップを必要以上に小さくし過ぎると、回転している冷却ロールとるつぼの先端部が接触してるつぼを破壊するおそれが高くなるので、ギャップとしては0.1mm程度が限界である。これは、回転ロールが熱膨張により膨出しながら回転する分を計算しておかなくてはならず、回転時にギャップの制御を厳格に行う必要があることを意味する。以上のような事情に鑑みると、ギャップの値は0.2mm以上、かつ、0.4mm以下の範囲が好ましく、0.1〜0.2mmの範囲がより好ましいと考えられる。
【0081】
図6は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率(μ':実数部:1kHz)とB10(T)のアニール温度依存性を示す図である。Snを0〜0.5原子%の範囲で含む上記の組成系においてアニール温度は850K〜950K(577〜677℃)の範囲、より好ましくは875K〜950Kの範囲(602℃〜677℃の範囲)であることが好ましいと考えられる。
図7は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の磁歪のアニール温度依存性を示す図である。図7から見ると磁歪を1×10-6以下とするためには、900〜975K(627〜702℃)の温度範囲でアニールすることで対応可能と考えらえる。また、磁歪を0近傍とするためには、925K〜975K(652℃〜702℃)の範囲で行うことが好ましいことも判明した。
【0082】
図8は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率(μ')と飽和磁束密度(Bs:T)のSn濃度依存性を示す図であり、図9は同様の製造方法によるFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の結晶化温度(TX1、TX2、TX3:発熱ピークの開始位置から順に3つ計測した温度)と磁歪(λs×10-6)のSn濃度依存性を示す図である。
これらの図から、先の組成系においてSn添加量を0.5原子%以下の範囲で増加することで、飽和磁束密度は若干低下してゆくが、透磁率は上昇し、保磁力は低くなり、磁歪が0の近傍で+から−の範囲に推移するので、Sn添加による効果は明らかである。また、Sn添加の増加による結晶化温度TX1、TX2、TX3に対する変化はほとんど見られず、Sn無添加の場合と結晶化の挙動には変化はない。従って図8に見られるようにSnを添加した場合、Sn無添加の場合と同様な熱処理で、より優れた磁気特性を得ることができる。SnはFeに固溶してbccFeの磁歪を下げると思われるが、固溶する量は多くないと考えられる。
【0083】
図10は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図であり、図11は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したFe84.5-XNb6.5B9SnXなる組成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図である。図10と図11においてロール面とは、得られた合金薄帯の一面と他面において冷却ロールに接しながら生成された側の一面における測定結果を示し、自由面とは冷却ロールに接触しない側の面における測定結果を示す。
図10と図11に示すようにSnを含有していない組成の薄帯試料ではいずれもロール面側に明確なピークが見られ、一部結晶相が析出した合金組織であるものが、Snを0.3原子%含有する組成においてはロール面のピークが消失している。これは、Snを含有する組成とすることで急冷時にアモルファス相を安定して製造できることを示している。なお、これらの組成は非晶質形成能の限界付近であるので、一部回折ピークが析出したものである。Sn添加により回折ピークが無くなるのは、Snが薄帯表面に出易く、表面においてBの酸化を抑制し、Bの酸化物の生成を抑制するではと本発明者は考えている。
【0084】
図12はFe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2なる組成のリング状試料とFe84Nb6.5B9.5なる組成のリング状試料とFe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3なる組成のリング状試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金リング状試料のコアロスを比較して示す図である。
リング状試料とは、先に説明した冷却ロールを用いた液体急冷法により得られた薄帯をプレスで外径10mm、内径5mmのドーナツ板状に打ち抜き、これを15枚重ねて磁心を構成し、巻線して得たコア試料である。
図12に示す測定結果から明らかなようにFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金のリング状試料のコアロスに比較し、本願発明組成のSnを含むリング状試料は最大誘導磁場において高い範囲まで低いコアロスを維持した。勿論、Snを含有した試料はFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金リング状試料よりも遥に低いコアロスを示す。例えば、1〜1.4Tの範囲まで0.1以下のコアロスとすることができる。
【0085】
図13はFe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2なる組成のトロイダル型のコア試料とFe84Nb6.5B9.5なる組成のトロイダル型のコア試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料のコアロスを各々比較して示す図である。なお、Fe78Si9B13なる組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料については、磁場中においてアニールしたものであるのに対し、その他の試料については無磁場中にてアニールしたものである。
図13に示す測定結果から明らかなようにFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料のコアロスに比較し、本願発明組成のSnを含むトロイダル型のコア試料は最大誘導磁場において高い範囲まで低いコアロスを示した。勿論、Snを含有した試料はFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金リング状試料よりも遥かに低いコアロスを示す。例えば、1〜1.4Tの範囲まで0.1以下のコアロスとすることができる。
また、Snを含む本発明組成系のものは、磁場中アニールしなくとも無磁場アニールで優れた特性を発揮するので、製造工程を簡略化することもできる。
【0086】
図14はFe93.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の飽和磁束密度(Bs:T)の組成依存性を示す三角組成図、図15はFe93.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の磁歪(λs:×10-6)の組成依存性を示す三角組成図である。なお、図14に示す三角組成図においてはBの含有量を底辺部分に表記し、Snの含有量を左側の斜辺部分に表記しているが、右斜辺部分に表記するべきFeの含有量表記については省略している。また、以下に説明する図15〜図25の三角組成図においても同様にFeの含有量表記は略している。
図14に示す組成系において、B含有量が9.0〜10原子%の範囲、Sn含有量が0〜0.4原子%の範囲において1.51〜1.61Tの高い飽和磁束密度が得られ、同一の範囲において磁歪が−0.36×10-6〜+0.36×10-6の範囲であって、しかも磁歪0の組成を有することが明らかである。従って図14に示す組成系の合金は磁心として利用する場合に磁歪を0を中心として正の範囲あるいは負の範囲で適宜選択することができ、しかもその絶対値も小さくできることが明らかである。
【0087】
図16は先の例と同等組成系の合金薄帯試料の透磁率(μ:1kHz)の組成依存性を示す三角組成図、図17は先の例と同一組成系の合金薄帯試料の保磁力(Hc:mOe)の組成依存性を示す三角組成図である。なお、単位系のOe(エルステッド)をSI単位系のA/mに変換するには図17の数値を個々に約80倍することで単位換算できる。
先の組成系において、B含有量が8.5〜10.5原子%の範囲、Sn含有量が0〜0.4原子%の範囲において30000を超える透磁率を示し、先の範囲において小さな保磁力を示すことが明らかである。
【0088】
図18は先の例と同等組成系の合金薄帯試料の残留磁束密度の組成依存性を示す三角組成図、図19は先の例と同一組成系の合金薄帯試料のコアロス(W1.33/50/kg-1)の組成依存性を示す三角組成図である。
先の組成系において、B含有量が9.0〜10原子%の範囲、Sn含有量が0〜0.4原子%の範囲において確実に0.1以下のコアロスを得ることができることが明らかである。
【0089】
図20はFe94.0-x-yNb6BxSnyなる組成系の合金薄帯試料の透磁率(μ:1kHz)の組成依存性を示す三角組成図、図21はFe94.0-x-yNb6BxSnyなる組成系の合金薄帯試料の保磁力(H:Oe)の組成依存性を示す三角組成図である。Sn添加量が0.2〜0.3では35000を超える透磁率が得られており、また小さい保磁力が得られている。
図22はFe94.0-X-YNb6BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の飽和磁束密度(Bs:T)の組成依存性を示す三角組成図、図23はFe94.0-X-YNb6BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の磁歪(λs:×10-6)の組成依存性を示す三角組成図である。
図22に示す組成系において、先の図14に示す組成系の場合と同様に1.51〜1.61Tの高い飽和磁束密度を示し、図14に示す例と同一範囲において磁歪の絶対値が小さく、しかも磁歪0の組成を有することが明らかである。
【0090】
図24は先の例と同等組成系の合金薄帯試料の残留磁束密度の組成依存性を示す三角組成図、図25はコアロスの三角組成図を示すが、先に図15〜図19に示した測定結果と同等の優れた値を示した。
【0091】
図26はFe84-XNb6.5B9.5SnXの組成の薄帯試料に対し、(株)小坂研究所製のモデルDR−100X32を用いて表面粗さ(最大平均粗さ:Tf)を測定した結果を示す。表面粗さの計測位置は、得られた合金薄帯のスタート部分と終端部分の幅方向中央部の幅10mm、合金薄帯の長さ方向15mmの部分の振幅の平均を計測したものである。
図26に示す測定結果から、表面粗さの値が小さい場合、飽和磁束密度と透磁率が高く、保磁力が小さく、コアロスも小さいことが判明した。
更に図26に示す結果から、表面粗さについては、4μm以下が好ましく、中でも1〜4.0μの範囲が好ましいと思われる。
【0092】
次に、FeNbBSn系の合金薄帯を図1に示す装置で製造する場合、るつぼの先端部と冷却ロールとの間隔(ギャップ:gap)を変更した場合の磁気特性に対する影響を調べた。製造した合金薄帯の組成は、Fe84.7Nb6.5B9.5Sn0.3とした。その結果を以下の表18に示す。
【0093】
【表18】
【0094】
表18に示す結果から明らかなように、ギャップ0.25mmの試料ではギャップ0.2mmの試料、ギャップ0.15mmの試料に比べて最大平均粗さが大きくなり、透磁率とコアロスは劣化している。特に、透磁率は42000と高い値は維持しているがコアロスが0.1を大幅に越えて大きくなっている。
このことから、表面粗さを小さくするためには、0.15〜0.20mmのギャップで製造することが有利であると思われる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のFe基軟磁性合金によれば、Tx By Mz Qtの組成あるいはTx By Mz Qt Xuの組成を有し、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0 . 05<t≦0 . 3原子%、0<u≦5原子%の組成比を有するので、SnまたはSを微量添加することにより、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金が得られる。
また、SnとSを微量添加することで微結晶化のための熱処理時の熱処理温度範囲が広くなる。更に、SnとSを微量添加することで、合金内にこれらの元素がほぼ均一に分散し、磁歪が低減され、軟磁気特性が向上する。
以上のことから本発明のFe系軟磁性合金は、磁気記録媒体の高保磁力化に対応することが必要な磁気ヘッド、より一層の小型化が要求されているトランス、チョークコイル用として好適であって、これらの用途に供した場合、これらの性能の向上と小型軽量化をなしえる効果がある。
【0096】
また、X元素の添加により溶湯から急冷してFe基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化が容易となり、この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して軟磁気特性が向上する。
【0097】
次に、先の組成比のFe基軟磁性合金において、Nbを含む組成系のものにおいてNbは高融点金属であり、熱的安定性も高く、酸化しずらい性質を付与するので、Nbを含む組成系のFe基軟磁性合金を製造する場合に大気中などの酸化雰囲気においても製造が容易になる。
【0098】
本発明に係るFe基軟磁性合金において、元素Qの組成比を示すzが、0.05原子%≦z≦0.3原子%の範囲、あるいは、0.05原子%≦z≦0.2原子%の範囲であるならば、一層高い透磁率と低い鉄損を確保できる。
【0099】
本発明に係るFe基軟磁性合金であるならば、組成系に応じて1kHzにおける実効透磁率が40000以上のものが得られ、鉄損が、Bm=1.33T、周波数50Hzにおいて0.1W/kg以下のものが得られる。
このような低い鉄損を有するならば、広く用いられているトランス用のアモルファス合金よりも低い鉄損とすることができ、しかも高い飽和磁束密度と高い透磁率を兼ね備えることができる。よって本発明のFe基軟磁性合金により、トランス用途としての一層の小型化、高性能化に寄与する。
【0100】
更に本発明に係るFe基軟磁性合金であるならば、飽和磁束密度Bsが1.5T以上、1kHzにおける実効透磁率μeが36000以上であって、非晶質相と非晶質相から熱処理により析出させたbcc構造のFeの微細結晶粒を主体としてなり、前記Feの微細結晶粒が前記非晶質相を500〜700℃の温度範囲に加熱後に冷却して析出したものが得られる。
【0101】
本発明の製造方法において、硫黄を除いた他の元素を目的の組成比となるように原料を混合して溶解し、インゴットを作成し、このインゴットを溶解して急冷法に供してFe基軟磁性合金とするに際し、急冷法に供する際にインゴットとともに目的の量の硫黄を溶解してから急冷することができる。
本発明に係るFe基軟磁性合金の構成元素を見ると、硫黄よりも高融点の金属元素が主体であり、全体の組成比に合わせて原料を混合し、合金溶湯としてインゴットを作成すると、インゴット作成時の溶解操作により硫黄が揮発し、目的の組成比よりも低い硫黄含有量となり易い。そこで、急冷法に供するためのインゴットを作成する場合に硫黄を含ませずに硫黄を除いた組成比になるように原料を混合して溶解し、インゴットを作成し、このインゴットを急冷法に供して溶解する場合に目的量の硫黄を追加し、目的の組成比の合金溶湯として直ちに急冷法により急冷することで溶解時の硫黄の減量をできる限り少なくして目的の組成比のFe基軟磁性合金を確実に製造することができる。
従って先に記載の製造方法によれば、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る軟磁性合金の製造に好適に用いられる合金薄帯製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】 図2は本発明に係る合金における透磁率と保磁力と鉄損のSn含有量依存性とS含有量依存性を示す図である。
【図3】 図3は本発明に係る合金における透磁率と保磁力の結晶化温度依存性を示す図である。
【図4】 図4はFe84Nb7B8.9Sn0.1なる組成の合金薄帯試料の熱処理前のSn濃度分布の分析結果を示す図である。
【図5】 図5はFe84Nb7B8.9Sn0.1なる組成の合金薄帯試料の熱処理後のSn濃度分布の分析結果を示す図である。
【図6】 図6はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc)と透磁率(μ':1kHz)とB10(T)のアニール温度依存性を示す図である。
【図7】 図7はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の磁歪のアニール温度依存性を示す図である。
【図8】 図8はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率(μ')と飽和磁束密度(Bs:T)のSn濃度依存性を示す図である。
【図9】 図9はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の結晶化温度(TX1、TX2、TX3)と磁歪(λs×10-6)のSn濃度依存性を示す図である。
【図10】 図10はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図である。
【図11】 図11はFe84.5-XNb6.5B9SnXなる組成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図である。
【図12】 図12はFe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2なる組成のリング状試料とFe84Nb6.5B9.5なる組成のリング状試料とFe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3なる組成のリング状試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金リング状試料の各々のコアロスを比較して示す図である。
【図13】 図13はFe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2なる組成のトロイダル型のコア試料とFe84Nb6.5B9.5なる組成のトロイダル型のコア試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料の各々のコアロスを比較して示す図である。
【図14】 図14はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料の飽和磁束密度(Bs)の組成依存性を示す三角組成図である。
【図15】 図15はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料の磁歪(λs)の組成依存性を示す三角組成図である。
【図16】 図16はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料の透磁率(μ)の組成依存性を示す三角組成図である。
【図17】 図17はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料の保磁力(Hc)の組成依存性を示す三角組成図である。
【図18】 図18はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料の残留磁束密度(Br)の組成依存性を示す三角組成図である。
【図19】 図19はFe83.5-X-YNb6.5BXSnYなる組成の合金試料のコアロスの組成依存性を示す三角組成図である。
【図20】 図20はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料の透磁率の組成依存性を示す三角組成図である。
【図21】 図21はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料の保磁力の組成依存性を示す三角組成図である。
【図22】 図22はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料の飽和磁束密度の組成依存性を示す三角組成図である。
【図23】 図23はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料の磁歪の組成依存性を示す三角組成図である。
【図24】 図24はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料の残留磁化の組成依存性を示す三角組成図である。
【図25】 図25はFe94.0-X-YNb6.0BXSnYなる組成の合金試料のコアロスの組成依存性を示す三角組成図である。
【図26】 図26はFe84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料のコアロス(W1.33/50/kg-1)と保磁力(Hc:A/m)と透磁率(μ')と飽和磁化(Br:T)とB10(T)の表面粗さ(最大平均粗さ:Tf)依存性を示す図である。
【符号の説明】
1…冷却ロール、2…溶湯ノズル、3…るつぼ
Claims (12)
- 次式で示される組成からなることを特徴とするFe基軟磁性合金。
Tx By Mz Qt
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0 . 05<t≦0 . 3原子%である。 - 次式で示される組成からなることを特徴とするFe基軟磁性合金。
Tx By Mz Qt Xu
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、XはGaとY及び希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0 . 05<t≦0 . 3原子%、0<u≦5原子%である。 - 次式で示される組成からなり、1kHzにおける実効透磁率が40000以上であることを特徴とするFe基軟磁性合金。
Tx By Mz Qt
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%である。 - 次式で示される組成からなり、1kHzにおける実効透磁率が40000以上であることを特徴とするFe基軟磁性合金。
Tx By Mz Qt Xu
ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の元素であり、XはGaとY及び希土類元素のうちの1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<u≦5原子%である。 - 前記Mは、NbとZrの少なくとも一方を必ず含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記元素Qの組成比を示すtが、0.05原子%≦t≦0.2原子%の範囲とされたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記元素Xの組成比を示すuが、0.1原子%≦u≦5原子%の範囲とされたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記元素Xの組成比を示すuが、0.1原子%≦u≦1原子%の範囲とされたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 前記Fe基軟磁性合金の鉄損が、Bm=1.33T、周波数50Hzにおいて0.1W/kg以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 飽和磁束密度Bsが1.5T以上、1kHzにおける実効透磁率μeが36000以上であって、非晶質相と非晶質相から熱処理により析出させたbcc構造のFeの微細結晶粒を主体としてなり、前記Feの微細結晶粒が前記非晶質相を500〜700℃の温度範囲に加熱後に冷却して析出されたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のFe基軟磁性合金において硫黄を必須元素として含む組成系のFe基軟磁性合金を急冷法により製造する方法であって、硫黄を除いた他の構成元素を目的の組成比となるように原料を混合して溶解しインゴットを作成し、このインゴットを溶解して急冷法に供してFe基軟磁性合金とするに際し、インゴットとともに目的の量の硫黄を溶解してから急冷することを特徴とするFe基軟磁性合金の製造方法。
- 溶解装置の溶湯を急冷装置に噴出させて急冷し、リボン状あるいは粒子状のFe基軟磁性合金を製造するに際し、溶解装置で溶解する際に前記インゴットと硫黄を混合したものを用いることを特徴とする請求項11に記載のFe基軟磁性合金の製造方法。
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