JP2002356749A - Fe基軟磁性合金とその製造方法 - Google Patents
Fe基軟磁性合金とその製造方法Info
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Abstract
磁気特性を兼務するとともに、低損失のFe基軟磁性合
金を提供することを目的の1つとする。 【解決手段】 本発明はTx By Mz Qtなる組成比を
有するFe基軟磁性合金である。ここでTはFeを含
み、Fe、Ni、Coのうちから選択される1種以上の
元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、
Wから選ばれた1種または2種以上の元素であり、Qは
Sn、Sのうちの1種または2種の元素であり、組成比
を示すx、y、z、tは、75原子%≦x≦93原子
%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z≦9
原子%、0<t≦1.0原子%である。
Description
ンス、チョークコイル等に用いられるFe基軟磁性合金
に関するものであり、特に、高飽和磁束密度で軟磁気特
性に優れ、低損失のものに関する。
ヘッド等に用いられる軟磁性合金において 一般的に要
求される諸特性は以下の通りである。 飽和磁束密度が高いこと。 透磁率が高いこと。 低保磁力であること。 低損失であること。 薄い形状が得やすいこと。 磁気ヘッドに適用する場合に耐摩耗性に優れているこ
と。
磁気ヘッドを製造する場合、これらの観点から種々の合
金系において材料研究がなされている。従来、前述の用
途に対しては、センダスト、パーマロイ、けい素鋼等の
結晶質合金が用いられ、最近ではFe基およびCo基の
非晶質合金も使用されるようになってきている。
場合、より一層の小型化、高性能化が要求されているた
め、より軟磁気特性に優れ、低損失な特性が要求される
など、高性能の磁性材料が望まれている。また、磁気ヘ
ッドの場合、高記録密度化に伴う磁気記録媒体の高保磁
力化に対応するために、より高飽和磁束密度で高性能の
磁気ヘッド用の磁性材料が望まれている。
性には優れるものの、飽和磁束密度が約11KGと低い
欠点があり、パーマロイも同様に、軟磁気特性に優れる
合金組成においては、飽和磁束密度が約8kGと低い欠
点があり、けい素鋼は飽和磁束密度は高いものの軟磁気
特性に劣る欠点がある。一方、非晶質合金において、C
o基合金は軟磁気特性に優れるものの飽和磁束密度が1
T(テスラ)程度と不十分である。また、Fe基合金は
飽和磁束密度が高く、1.5Tあるいはそれ以上のもの
が得られるが、軟磁気特性が不十分な傾向がある。ま
た、非晶質合金の熱安定性は十分ではなく、未だ未解決
の面がある。前述のごとく高飽和磁束密度と優れた軟磁
気特性を兼備することは難しい。また、トランス用の軟
磁性合金として重要な特性は、鉄損が小さいこと、飽和
磁束密度が高いことであるが、従来、一部の用途として
使用されているトランス用のFe系のアモルファス合金
の鉄損は、周波数50Hz、励磁磁界1.3Tにおいて
0.2〜0.3W/kg程度であり、鉄損をさらに低くし
たいという要望があった。また、トランスの小型化のた
めに飽和磁束密度を更に高めたいという要望もあった。
−65145号公報、特許第285257号公報、特許
第2878472号公報などに開示されているFe基微
結晶合金を開発し、高い飽和磁束密度と高い透磁率を両
立した合金を提供した。これらの特許に記載されたFe
基軟磁性合金の1つは、(Fe1-a Z a)bBxMy なる
組成式で示され(ただしZはNi,Coのうち1種また
は2種の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素で
あり、組成比を示すa、b、x、yは、0≦a≦0.0
5、b≦93原子%、0.5原子%≦x≦18原子%、
4原子%≦y≦9原子%である。)るものであり、飽和
磁束密度が1.5T以上であり、1kHzにおける実効
透磁率が10000以上のものであった。
磁性合金の他の1つは、(Fe1-aZ a)bBxMy T’c
なる組成式で示され(ただしZはNi,Coのうち1種
または2種の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、
Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上の元素
であり、T’はCu、Ag、Au、Pd、Ptから選ば
れた1種または2種以上の元素であり、組成比を示す
a、b、x、y、zは、0≦a≦0.05、b≦93原
子%、0.5原子%≦x≦18原子%、4原子%≦y≦
9原子%、0.2原子%≦z≦4.5原子%である。)る
ものであり、飽和磁束密度が1.5T以上であり、1k
Hzにおける実効透磁率が20000以上のものであっ
た。
率と高い飽和磁束密度を両立させることができ、高い硬
度と耐摩耗性も兼ね備えたものであった。ところが近
年、トランス、チョークコイルの場合、電子機器の小型
化に伴い、より一層の小型化が必要とされてきているた
め、より高性能の磁性材料が望まれており、特に柱上ト
ランスの場合は電力エネルギーの節約のために、より低
鉄損な軟磁性合金が望まれている。また磁気ヘッドの場
合、磁気記録媒体の高記録密度化が進められるのに伴う
磁気記録媒体の高保磁力化に対応するため、より高性能
な磁気ヘッド用磁性材料が望まれている。これらの要望
に対応するには先のFe基軟磁性合金よりも更に低鉄損
で透磁率が高く、しかも上記Fe基軟磁性合金と同等以
上の高い飽和磁束密度を有する軟磁性合金が望まれてい
るが、このような軟磁性合金は未だ実用化されていなか
った。そして、これらの優れたFe基軟磁性合金につい
て本発明者らが諸特性を更に改善するべく研究開発を進
めた結果として本願発明に到達した。
優れた軟磁気特性を兼務するとともに、低損失のFe基
軟磁性合金を提供することを目的の1つとする。更に本
発明の目的の1つは、先の特性を兼ね備えた上に、微結
晶を析出させる際の熱処理の適用温度範囲を広くするこ
とができるFe基軟磁性合金の提供である。
上の高い高飽和磁束密度と1kHzにおいて36000
以上の高い実効高透磁率を兼備し、かつ0.1W/kg
以下の低損失特性を併せ持ち、微結晶を析出させる際の
熱処理の適用温度範囲を広くすることができるFe基軟
磁性合金を提供することにある。更に本発明の目的の1
つは、1.5T以上の高い高飽和磁束密度と1kHzに
おいて40000以上の高い実効高透磁率を兼備し、か
つ0.1W/kg以下の低損失特性を併せ持ち、微結晶
を析出させる際の熱処理の適用温度範囲を広くすること
ができるFe基軟磁性合金を提供することにある。
性合金は前記課題を解決するために、次式で示される組
成からなることを特徴としたものである。 Tx By Mz Qt ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%であ
る。SnまたはSを微量添加することにより、高い飽和
磁束密度を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損
失のFe基軟磁性合金が得られる。また、SnとSを微
量添加することで微結晶化のための熱処理時の熱処理温
度範囲が広くなる。
を解決するために、次式で示される組成からなることを
特徴とするものである。 Tx By Mz Qt Xu ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、XはSi、Al、Ge、Ga、P、C、C
u、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<
u≦5原子%である。SnまたはSを微量添加すること
により、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率を
有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金が得られる。ま
た、SnとSを微量添加することで微結晶化のための熱
処理時の熱処理温度範囲が広くなる。また、X元素の添
加により溶湯から急冷してFe基軟磁性合金を製造する
際の非晶質相化が容易となり、この非晶質相から熱処理
により微結晶が析出して軟磁気特性が向上する。
M元素として、Nb、Zr、V、Mo、Wのうちの少な
くとも1種を含むことを特徴とする。本発明に係るFe
基軟磁性合金は、前記のM元素として、NbとZrの少
なくとも一方を必ず含むことを特徴とする。Nbは高融
点金属であり、熱的安定性も高く、酸化しづらい性質を
付与するので、Nbを含む組成系のFe基軟磁性合金を
製造する場合に大気中などの酸化雰囲気においても製造
が容易になり、M元素をNbのみとすれば最も好まし
い。
元素の組成比を示すtが、0.05原子%≦t≦0.3原
子%の範囲とされたことを特徴とする。本発明に係るF
e基軟磁性合金は、前記Q元素の組成比を示すtが、
0.05原子%≦t≦0.2原子%の範囲とされたことを
特徴とする。Q元素の含有量を特定の範囲とすること
で、一層高い透磁率と低い鉄損を確保できる。
素Xの組成比を示すuが、0.1原子%≦u≦5原子%
の範囲とされたことを特徴とする。本発明に係るFe基
軟磁性合金は、前記元素Xの組成比を示すuが、0.1
原子%≦u≦1原子%の範囲とされたことを特徴とす
る。
zにおける実効透磁率が40000以上であることを特
徴とする。本発明に係るFe基軟磁性合金は、鉄損が、
Bm=1.33T、周波数50Hzにおいて0.1W/k
g以下であることを特徴とする。このような低い鉄損を
有するならば、広く用いられているトランス用のアモル
ファス合金よりも低い鉄損とすることができ、しかも高
い飽和磁束密度と高い透磁率を兼ね備えることができ
る。よって本発明のFe基軟磁性合金により、トランス
用途としての一層の小型化、高性能化に寄与する。
束密度Bsが1.5T以上、1kHzにおける実効透磁
率μeが36000以上であって、非晶質相と非晶質相
から熱処理により析出させたbcc構造のFeの微細結
晶粒を主体としてなり、前記Feの微細結晶粒が前記非
晶質相を500〜700℃の温度範囲に加熱後に冷却し
て析出したものであることを特徴とする。
のFe基軟磁性合金において硫黄を必須元素として含む
組成系のFe基軟磁性合金を急冷法により製造する方法
であって、硫黄を除いた他の元素を目的の組成比となる
ように原料を混合して溶解しインゴットを作成し、この
インゴットを溶解して急冷法に供してFe基軟磁性合金
とするに際し、急冷法に供する際にインゴットとともに
目的の量の硫黄を溶解してから急冷することを特徴とす
る。本発明に係るFe基軟磁性合金の構成元素を見る
と、硫黄よりも高融点の金属元素が主体であり、全体の
組成比に合わせて原料を混合し、合金溶湯としてインゴ
ットを作成すると、インゴット作成時の溶解操作により
硫黄が揮発し、目的の組成比よりも低い硫黄含有量とな
り易い。そこで、急冷法に供するためのインゴットを作
成する場合に硫黄を含ませずに硫黄を除いた組成比にな
るように原料を混合して溶解し、インゴットを作成し、
このインゴットを急冷法に供して溶解する場合に目的量
の硫黄を追加し、目的の組成比の合金溶湯として直ちに
急冷法により急冷することで目的の組成比のFe基軟磁
性合金を確実に製造することができる。
て、溶解装置の溶湯を急冷装置に噴出させて急冷し、リ
ボン状あるいは粒子状のFe基軟磁性合金を製造するに
際し、溶解装置で溶解する際に前記インゴットと硫黄を
混合したものを用いることを特徴とする。急冷法におい
て溶湯からリボン状あるいは粒子状とする際、インゴッ
トと硫黄を同時に溶解するので、溶解中に減少し易い硫
黄を残留させたままの状態で急冷処理を行うことができ
るので、目的の組成の硫黄を含む目的の組成比のFe基
軟磁性合金が得られる。
る。本発明に係るFe基軟磁性合金は、前記組成の非晶
質合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金を溶湯から急
冷することにより得る工程と、これらの工程で得られた
ものを結晶化温度以上に加熱した後に冷却し、非晶質相
の一部または大部分を結晶化し、微細な結晶粒を析出さ
せる熱処理工程とによって通常得ることが出来る。
次式で示される組成からなることを特徴としたものであ
る。 Tx By Mz Qt ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%であ
る。
記課題を解決するために、次式で示される組成からなる
ことを特徴とするものである。 Tx By Mz Qt Xu ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、XはSi、Al、Ge、Ga、P、C、C
u、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<
u≦5原子%である。
のBには、本発明合金の非晶質形成能を高める効果、お
よび前記熱処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす
化合物相の生成を抑制する効果があると考えられ、この
ためB添加は必須である。非晶質形成能からみて、Bの
含有量は0.5原子%以上、18原子%以下が必要であ
るが、急冷時に非晶質相を確実に得るとともに良好な軟
磁気特性が得られることを考慮すると0.5原子%以
上、9原子%以下の範囲がより好ましい。
やすくするためには、非晶質形成能の高いZrまたはH
fのいずれかを含むことが好ましく、またZr、Hfは
その一部を他の4A〜6A族元素のうち、Ti、V、N
b、Ta、Mo、Wから選択される1種または2種以上
の元素と置換することが出来る。前記添加元素のうち、
Zr、Hf、Nbは、合金溶湯から急冷した場合に非晶
質相を得るために重要な元素であり、この非晶質相から
熱処理によりFeの微結晶粒を析出させて飽和磁束密度
Bsが1.5T(テスラ)以上、1kHzにおける実効
透磁率μeが36000以上を両立するために重要であ
る。ZrとHfのいずれか、またはこれらに加えてNb
を添加する場合、4原子%以上、9原子%以下の範囲で
これらの元素を添加しないと必要量の非晶質相を得るこ
とが難しい。また、前記元素の中においてもNbは融点
の高い金属元素であって熱的に安定であり、製造時に酸
化しずらいものであるので、Zr、Hf含有量を少なく
してNb含有量を多くすることでZr、Hfを多く含む
組成系のものより製造条件を緩くすることが可能とな
り、元素MをNbのみとすることが最も好ましく、さら
に、良好な磁気特性を持つことが可能となるのに加え
て、大気中での製造も容易となる。
素Tの含有量を示す組成比xは75原子%以上、93原
子%以下である。これは、bが93原子%を越えると高
い透磁率が得られないためであるが、飽和磁束密度1T
以上を得るためには、bが75原子%以上必要であり、
飽和磁束密度1.5T以上を確実に得るためには、他の
添加元素の添加範囲を満たした上においてできるだけ多
く含有させることが必要であり、他の添加元素の量も鑑
みると84原子%を超える量を含有させることで1.5
T以上の飽和磁束密度を容易に得ることができる。元素
TはFeを主成分もしくはFeのみとするのが低コスト
で実施できる点において有利であり、飽和磁束密度を高
くすることができる点で好ましい。Feの一部は磁歪等
の調整のためにCo、Niの1種または2種で置換して
も良い。この場合、CoまたはNiの添加量はFeの2
0%以下が好ましく、5%以下とすることがより好まし
い。この範囲を超えてCoまたはNiをFeに対して置
換すると、透磁率が劣化するため、好ましくない。
加えてSとSnのうちの1種または2種を0<(S,S
n)≦1.0原子%の範囲で含有している。これらの元
素は熱処理後合金中に均一に分散し、これらの元素を含
有していることで先の組成の軟磁性合金の諸特性に加
え、即ち、高い飽和磁束密度を維持したまま、高い透磁
率を有した上に、鉄損が低いという特徴を得ることがで
きる。また、非晶質相の状態から熱処理により微結晶を
析出させる際の熱処理温度、即ち、アニール温度を従来
の組成系のものよりも、より広い範囲に設定して、同等
あるいはそれ以上の高い磁気特性を得ることができるよ
うになり、アニール温度依存性を広くすることができ
る。以上の背景において、SとSnの含有量において、
先の範囲の中でも0.05原子%以上、0.8原子%以下
の範囲が好ましく、0.05原子%以上、0.3原子%以
下の範囲がより好ましく、0.05原子%以上、0.2原
子%以下の範囲が最も好ましい。また、本発明に係る合
金においては、X元素の添加により溶湯から急冷してF
e基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化を容易とし、
この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して軟磁気
特性が向上する。また、元素xの中で特にYを含む希土
類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、E
u、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu
のうちの1種または2種以上)0.01〜0.4原子%、
好ましくは0.01〜0.1原子%の範囲で添加すると、
透磁率の向上に特に効果があり、希土類元素の中でもL
aは最も好ましい添加元素である。
る合金元素の限定理由について説明したが、その他、
H、N、O等の不可避的不純物については所望の特性が
劣化しない程度に含有していても良いのは勿論である。
は、製造方法の一例として、回転している金属製のロー
ルに目的の組成の合金溶湯を噴出させて薄帯状(リボン
状)とする、単ロール法を採用することができる。この
単ロール法を採用する場合、合金溶湯の急冷を不活性ガ
ス雰囲気中あるいは真空雰囲気中で行っても良く、大気
雰囲気中で行っても良い。また、大気雰囲気中で行う場
合には、溶湯を急冷する際に、使用するるつぼのノズル
の先端部にのみ不活性ガスを供給し、ノズルとその近傍
における合金溶湯及び薄帯(リボン)の酸化を防止しつ
つ、ノズルから冷却ロール等の冷却面に溶湯を噴出させ
ることにより行っても良い。
く、粉粒体の状態のFe基軟磁性合金を得るには、不活
性ガス雰囲気中に溶湯を粒状あるいは霧状などに吹き出
して急冷し、非晶質の粉粒体を得るアトマイズ法を採用
しても良い。このアトマイズ法によれば、目的の組成比
を有し、急冷により非晶質相とされた合金の粉粒体を得
ることができ、この合金の粉粒体に後述する熱処理を施
すことで粉粒体状態のFe基軟磁性合金を得ることがで
きる。なお、得られた非晶質相の粉粒体を圧密して目的
の形状としてからプラズマ焼結法などにおいて熱処理し
ながら結晶化して固化する方法を採用し、目的のコア形
状に加工するなどの方法を採用しても良いのは勿論であ
る。
度に加熱後冷却する熱処理を施して結晶化することによ
り、上記薄帯の非晶質相の一部または全部を結晶化し、
非晶質相と、平均粒径100nm以下の微細なbcc構
造の結晶粒からなる微細結晶相とが混合した組織を得る
ことができ、目的とするFe基軟磁性合金を得ることが
できる。なお、前記組成比のFe基軟磁性合金において
元素Tの主成分をFeとした場合は、平均粒径100n
m以下の微細なbcc構造のFeの結晶粒からなる微細
結晶相が主に析出する。
の微細なbcc構造の結晶粒(Feの結晶粒)からなる
微細結晶組織が析出したのは、急冷状態の非晶質合金薄
帯等が非晶質相を主体とする組織となっており、これを
加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が30nm以
下のbccFeを主成分とする体心立方構造の結晶粒か
らなる微細結晶相が析出するからである。このbcc構
造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析出する
温度は、合金の組成によるが753K(480℃)〜9
73K(700℃)、好ましくは753K(480℃)
〜948K(675℃)の範囲である。また、このFe
の微細結晶相が析出する温度よりも高い温度では、Fe
3B等の軟磁気特性を悪化させる化合物相が析出する傾
向がある。このような化合物相が析出する温度は、合金
の組成によるが1013K(740℃)〜1083K
(810℃)程度である。ただし、軟磁気特性を悪化さ
せる化合物相の析出は、少量であれば影響が少ないの
で、一部化合物相の析出があっても差し支えない。
速度は、20〜200K/分の範囲が好ましく、40〜
200K/分の範囲とするのがより好ましい。昇温速度
が遅いと製造時間が長くなるので昇温速度は速い方が好
ましいが、一般的には加熱装置の性能上、200K/分
程度が上限とされる。また、非晶質合金薄帯等を上記保
持温度に保持する時間は、0〜180分間とすることが
でき、合金の組成によっては0分、すなわち、昇温後直
ちに降温させて保持時間無しとしても、目的とする微結
晶の析出効果を得ることができる。また、保持時間は1
80分より長くしても磁気特性は向上せず、逆に製造時
間が長くなり生産性が悪くなるので好ましくない。
る一具体例として、大気雰囲気中においてるつぼのノズ
ル先端部のみに不活性ガスを供給しながら合金溶湯を急
冷する装置と方法について説明する。図1は、大気中で
急冷薄帯を製造する場合に用いて好適な合金薄帯製造装
置の一例を示す概略構成図である。この例の合金薄帯製
造装置は、冷却ロール1と、合金溶湯を保持するるつぼ
3の下端部に連接された溶湯ノズル2と、溶湯ノズル2
及びるつぼ3の外周に捲回されて配置された加熱コイル
4と、不活性ガスを溶湯ノズル2の少なくとも先端部に
フローするためのガスフロー供給手段である第1〜第3
のガスフローノズル51、52、53、及び、溶湯ノズ
ル2の先端部周囲に配置された内向き孔付きの環状管か
らなるガスフローパイプ54と、冷却ロール1の冷却面
1aに向けて不活性ガスをフローするガスフロー供給手
段である第5のガスフローノズル55から基本的に構成
されている。
矢印(反時計)方向へ回転駆動される。冷却ロール1の
冷却面1aは、炭素鋼、例えばJISS45CなどのF
e基合金、または真鍮(Cu−Zn合金)、あるいは純
銅等の金属材料で構成することが望ましい。冷却ロール
1の冷却面1aが真鍮あるいは純銅であると、熱伝導性
が高いことから、冷却効果が高く、溶湯の急冷に適して
いる。冷却効果を向上させるためには、内部に水冷構造
を設けることが望ましい。
金溶湯は、下端部の溶湯ノズル2から冷却ロール1の冷
却面1aに向けて噴出される。るつぼ3の上部は、供給
管7を介してArガスなどのガス供給源8に接続される
と共に、供給管7には、圧力調整弁9と電磁弁10とが
組み込まれ、供給管7において圧力調整弁9と電磁弁1
0との間には圧力計11が組み込まれている。また、供
給管7には補助管12が並列的に接続され、補助管12
には圧力調整弁13、流量調整弁14、流量計15が組
み込まれている。従って、ガス供給源8からるつぼ3内
にArガスなどの不活性ガスを供給し、溶湯にガス圧を
作用させ、溶湯ノズル2から溶湯を冷却ロール1に向け
て噴出して急冷できるように構成されている。
る時には、大気雰囲気中にて冷却ロール1を高速で回転
させつつ、その頂部付近、もしくは、頂部よりやや前方
に近接配置した溶湯ノズル2から上記のいずれかの組成
の合金溶湯を噴出することにより、冷却ロール1の表面
で溶湯を急速冷却して固化させつつ冷却ロール1の回転
方向に帯状となして引き出す。また、図1に示すよう
に、冷却ロール1の回転方向前側下方には、薄帯誘導板
70とスクレイパー72とが備えられている。冷却面1
aにおいて溶湯が冷却されて形成された合金薄帯は、ス
クレイパー72により冷却ロール1から剥離されて薄帯
誘導板70側に案内される。従って、スクレイパー72
の近傍が、冷却面1aから合金薄帯が剥離する位置とな
る。
51、52、53、54には、第1のガスフローノズル
51について例示するように、圧力調整弁16が組み込
まれた接続管17を介してガス供給源18が接続されて
いる。また、先の第1〜第4のガスフローノズル51、
52、53、54を、単独で用いることは勿論、複数組
み合わせて使用することができ、溶湯ノズル2から冷却
ロール1に溶湯を噴出させて急冷する部分(パドル部
分)の周囲の酸素濃度を低減させて急冷される溶湯が不
要に酸化しないように雰囲気を調整することができる。
発明に係る軟磁性合金を製造するには、先の合金薄帯製
造装置を室温程度の大気雰囲気中に設置し、溶湯ノズル
(溶湯射出用ノズル)2の少なくとも溶湯吹き出し部先
端部分21に第1〜第4のガスフローノズル51〜54
からそれぞれ不活性ガスをフローするとともに冷却ロー
ル1の冷却面1aに向けて第5のガスフローノズル55
から不活性ガスをフローしつつ、上記のいずれかで示さ
れる組成式を示す合金溶湯を溶湯ノズル2から冷却ロー
ル1の冷却面1aに射出して急冷し、非晶質を主体とす
る合金薄帯を得る。ついで、作製した合金薄帯を結晶化
温度以上に加熱後冷却する熱処理(アニール処理)する
ことにより、上記合金薄帯の非晶質相の少なくとも一部
あるいはほぼ全部を結晶化し、非晶質相と、平均粒径1
00nm以下の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの
結晶粒)からなる微細結晶相とが混合した組織を得、目
的とするFe基軟磁性合金を得ることができる。
する場合、Snを含む組成系の軟磁性合金においては、
目的の組成となるように合金溶湯を作成すれば良い。即
ち、目的の組成となるような組成の母合金(インゴッ
ト)をアーク溶解法等の常法で作成し、この母合金をる
つぼ2に投入してこの母合金を加熱溶解し、急冷法に供
すれば良い。しかし、硫黄(S)を含む組成系の軟磁性
合金を製造する場合、母合金(インゴット)中に硫黄を
含有させておくと、母合金をアーク溶解法等の常法によ
り溶製する際の加熱溶融処理時に融点の低い硫黄が蒸発
し、実際に合金溶湯の急冷操作を行う時点において合金
溶湯中の硫黄含有量が目的の組成比よりも少なくなって
しまうおそれが高い。
(S)を含む組成系の軟磁性合金を製造する場合、目的
量の硫黄を含まない状態の組成の母合金(インゴット)
を一端作成し、この母合金を合金薄帯製造装置のるつぼ
3にセットする際に目的量の硫黄粉末等の硫黄原料を添
加してから溶解し、溶解後なるべく早い時間、できれば
直ちに合金溶湯の噴出作業を行って急冷処理を行えば良
い。この操作によって揮発しやすい硫黄の減量を無く
し、目的の量の硫黄をFe基軟磁性合金中に含ませるこ
とができる。ただし、硫黄Sの蒸発量を正確に制御でき
るのであれば、硫黄Sは予め母合金に投入して製造して
も良いのは勿論である。
比のFe基軟磁性合金は、1.5T以上の高い飽和磁束
密度を有し、36000以上の高い実効透磁率を有する
とともに、0.13W・kg-1以下の低い鉄損(コアロ
ス)を示す優れたものとなる。また、微量添加するSと
Snの少なくとも一方の組成比を0.05〜0.3原子%
の好ましい範囲とするならば、1.5T以上の高い飽和
磁束密度を有し、40000以上の高い実効透磁率を有
するとともに、0.1W・kg-1以下の低い鉄損を示す
優れたFe基軟磁性合金を得ることができる。次に本発
明の高飽和磁束密度Fe系軟磁性合金の組成限定理由に
ついて実施例をもって更に詳細に説明する。
冷法により作成した。即ち、1つの回転している鋼製ロ
ール上におかれた石英ノズルから、溶融金属(射出温
度:1220℃)をアルゴンガスの圧力(射出圧0.0
92MPa:差圧)により回転中のロール(ロール周
速:70m/s)上に、ノズル先端部とロール表面との
ギャップを0.2mmに設定して噴出させ、合金溶湯を
急冷して目的の組成比の合金薄帯を得た。るつぼ先端部
の石英ノズルのスリット状の開口部の幅と厚さは、15
×0.3mmであり、以上のように作成した合金薄帯の
幅は約15mmであり、厚さは約20〜40μmであっ
た。
温度でアニール処理し、軟磁性合金薄帯試料を得た。得
られた軟磁性合金薄帯試料の透磁率は、薄帯試料を加工
し、外径10mm、内径5mmのリング状とし、これを15
枚積み重ねた磁心に巻線してリング状試料とし、インダ
クタンス法により測定した。実効透磁率(μe)の測定条
件は10mOe、1kHzとした。各試料の保磁力(H
c)は、直流B−Hループトレーサにより測定し、飽和
磁束密度(Bs)はVSMにて10kOeで測定した磁化
より算出した。なお、特に規定しない限り、以下に示す
実施例では、500〜700℃の温度で1時間保持した
後、水焼入れした後の磁気特性を示す。
おいてSnを単独添加した組成系の合金薄帯(Fe84N
b7B9-xSnx)において、Sn含有量による薄帯(リ
ボン)の状態と薄帯組織の状態を以下の表1に示す。ま
た、本発明に係る組成系の軟磁性合金においてSを単独
添加した組成系(Fe84Nb7B9-xSx)のS含有量に
よる薄帯の状態と薄帯組織の状態を以下の表1に併せて
示した。
含有量またはS含有量を1.0原子%以下とした合金薄
帯試料はいずれもリボンの状態も良く(換言すると、急
冷時にリボンが粉砕されてしまう訳ではなく)、非晶質
単相状態のものが得られた。これらに対してSnを1.
2原子%、Sを1.2原子%含有する試料はいずれも急
冷時にリボンが粉砕されてしまい、脆くなり過ぎてしま
ったことを意味する。
に及ぼすSn、Sの添加効果について本発明合金の一種
であるFe84Nb7B9-xSnx合金とFe84Nb7B9-x
Sx合金とを例にとって以下に説明する。図2に、Fe
84Nb7B9-xSnxなる組成の合金とFe84Nb7B9-x
Sxなる組成の合金の実効透磁率(1kHz)と保磁力
(Hc:A/m)と鉄損(W1.33/5 0:励磁磁界1.33
T、周波数50Hz)に対するSn、Sの含有量依存性
を示す。また、以下の表2に各試料の熱処理温度(℃)
と飽和磁束密度(T)の測定結果と保磁力(A/m)の
測定結果と実効透磁率(1kHz)の測定結果と鉄損
(Bm=1.33T、f=50Hz)の測定結果を示
す。
量のいずれにおいても、1原子%以下の添加量におい
て、透磁率が向上するとともに保磁力が低下し、優れた
軟磁気特性を示していることが明らかである。また、S
n添加量、S添加量のいずれにおいても、0.05原子
%以上、0.8原子%の範囲においてSnあるいはSを
添加していない比較試料(組成比Fe84Nb7B9の合
金)の値よりも高い透磁率(透磁率36000以上)、
低い保磁力、低い鉄損(0.115W・kg-1以下)を
示した。また、先の組成範囲においても特に、Sn添加
量、S添加量のいずれにおいても、0.05原子%以
上、0.3原子%の範囲であるならば、高い透磁率(透
磁率42000以上)、低い保磁力、低い鉄損(0.1
W・kg-1以下)を示した。次に、本発明に係る種々の
組成系の軟磁性合金について同等の製造方法で軟磁性合
金試料を作成し、それら各軟磁性合金試料の熱処理温度
と飽和磁束密度と保磁力と透磁率と鉄損の測定結果を併
せて表3に示す。
いても先の表2に示す軟磁性合金試料と同等の効果を得
ることができた。特に、Fe84Nb7B9、Fe85.5Zr
2Nb4B8.5、Fe84Nb6.9Y0.1B9、Fe84Nb6.9
La0.1B9、Fe83Nb6.7B9.3Ga1の各組成の合金
にS、Snを添加したものでは、鉄損が0.1W・kg
-1以下を下回る良好な結果が得られていることがわか
る。
軟磁性合金とFe84Nb7B8.9Sn 0.1なる組成比のF
e基軟磁性合金とFe84Nb7B8.9S0.1なる組成比の
Fe基軟磁性合金の実効透磁率と保磁力の熱処理温度依
存性を測定した結果を示すものである。熱処理温度(T
a)依存性を示す図3の結果から、Fe84Nb7B9なる
組成比のFe基軟磁性合金に対して微量(0.1原子
%)のSを添加した本発明のFe基軟磁性合金は、より
広い温度範囲で熱処理を施しても著しく高い透磁率を得
ることができ、保磁力もより低いものを得られ易いとい
う結果が明らかになった。また、Fe84Nb7B9なる組
成比のFe基軟磁性合金に対して微量(0.1原子%)
のSを添加した本発明のFe基軟磁性合金にあっては、
適用可能な熱処理温度範囲は概略等しいが、透磁率の著
しい向上効果が得られた。
基軟磁性合金において30000を超える実効透磁率を
得るためには、図3から見て650℃±5℃の範囲に加
熱する熱処理を行わなくてはならないが、この組成に微
量のSを添加したFe基軟磁性合金では30000を超
える実効透磁率を得るためには、605℃〜690℃の
範囲で熱処理すれば良いこととなり、大幅に熱処理条件
が緩和される。また、Snを微量添加した組成系におい
ては同様に30000を超える実効透磁率を得るために
は、630〜690℃の範囲で熱処理すれば良いことと
なり、この組成においても大幅に熱処理条件が緩和され
ることが明らかである。
組成の合金薄帯試料(薄帯全体の厚さ20μm)の熱処
理前と熱処理後のSnの濃度分布をESCA(化学分析
用電子分光法)にて測定した結果を示す。図4に示すよ
うにアニール前の合金薄帯試料においては、薄帯表面よ
り0.5nm以下の範囲の領域内でSnの高濃度領域が
形成されているが、この試料に対して180℃/分で昇
温し、650℃において5分間加熱後に冷却する熱処理
(アニール処理)を施した後の図5に示す合金薄帯試料
においてはSnの高濃度領域が解消され、Snは合金薄
帯の厚さ方向にほぼ均一に分散されたことが明らかにな
った。
る組成の合金の熱処理温度の磁歪(λ)が4.2×10
-7であったが、Snを添加し、熱処理を行った後のFe
84Nb7B8.9Sn0.1なる組成の合金薄帯試料の磁歪が
2.6×10-7と少なくなった。上記の結果から、Sn
が合金薄帯中に均一に分散することにより、Snがbc
c構造のFeの結晶中に固溶したり、Sn以外の他の元
素のFeへの固溶量が変化することで、Snの分散前
(Sn添加前)よりも磁歪の絶対値が小さくなり、その
結果軟磁気特性が改善され、鉄損が小さくなったものと
推測される。
は、先に説明した図1に示す大気中にて合金薄帯を製造
可能な合金薄帯製造装置(大気中液体急冷装置)を用い
て製造した試料の各種特性測定結果と、図1に示す装置
のうち、ガスフローノズル51、52、53、54、5
5を略して合金薄帯製造装置を構成し、この合金薄帯製
造装置(具体的には冷却ロール1とるつぼ3)をArガ
ス雰囲気に保持可能な雰囲気制御室に設置して製造した
試料の各種特性測定結果を製造条件と併せて比較しなが
ら示す。
は、Fe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2の組成を有し、Ar
ガス雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を示す。こ
れらの試料は、Arガス圧力160Torr(2.13×1
04Pa)あるいは750Torr(1×105Pa)におい
てるつぼの噴射口と冷却ロールとの間隔(gap)を
0.2mmあるいは0.25mmに設定し、合金溶湯の射
出温度を1350℃あるは1380℃(射出温度の欄参
照)、射出圧を0.7kg/cm2あるいは1.6kg/
cm2として製造した薄帯(リボン)の試料であって、
得られた薄帯を昇温速度180Kで目的の温度(625
℃、650℃、675℃、700℃)で5分間加熱後に
冷却する熱処理(熱処理の欄の数値を参照)を施した後
に、透磁率(1kHzと100kHzと1MHzの各
値)と、保磁力(Hc:単位A/mあるいは単位Oe)
と、B10(T:テスラ、磁界を10エルステッド(1
Oe≒80A/cmに相当)印加した場合の磁束密度)
と、残留磁束密度Br(T)と、飽和磁束密度Bs
(T)と、磁歪λs(×10-6)と、商用周波数50H
zでのBr及び保磁力Hc(Oe)と、コアロス(W
1.33/50:W/kg)を測定した結果を示す。また、表
4、5に示すリボン重量255gは得られた薄帯の総重
量を示し、板厚の20.026μmは得られた薄帯の始
端部分での板厚を示し、板厚の19.782μmは得ら
れた薄帯の最終端部分の板厚を示す。
の始端部分での構造(amoはアモルファスを示し)を示
し、Eは薄帯の終端部分での構造を示し、(F)とは薄
帯において冷却ロールに接しない側の面の構造、(R)
とは薄帯において冷却ロールに接する側の面の金属組織
構造を示す。表4と表5のNo.37の試料とNo.38
の試料とNo.39の試料とNo.40の試料は、Arガ
ス雰囲気圧力とギャップ値と射出温度を表4〜表7に示
すように若干変更して得られた各試料の各種の測定値を
示す。これらの試料に対し表6と表7に示すNo.4
3、44の試料については、図1に示す大気中液体急冷
装置で製造した試料を示す。
39、40、43、44の試料の比較では、Arガス雰
囲気において大気圧で製造したNo.39、40の試料
の商用周波数でのコアロスが比較的大きい(0.2前後
あるいは0.5程度)のに対し、大気中液体急冷装置で
製造したNo.43、44の試料の商用周波数でのコア
ロスが小さく(0.1前後の値)なっている。また、透
磁率においてもNo.37〜40の試料に対してNo.4
3、44の試料は同等かそれ以上の特性が得られた。こ
れらの試料の特性比較から、本願発明組成系のSnを含
有する試料において、Arガス雰囲気において製造する
よりも、図1に示す大気中液体急冷装置で製造した方が
良好なコアロス、同等以上の透磁率のFe基軟磁性合金
薄帯が得られることが判明した。
fB系等の合金薄帯試料を製造する場合、冷却ロールと
るつぼをAr雰囲気の処理室に設置して製造(Arガス
雰囲気中液体急冷装置)した試料の方が大気中液体急冷
装置で製造する試料よりも良好な磁気特性を発揮する。
これは、大気中で製造する場合、冷却ロール外周の合金
溶湯噴出部分の周囲をArガスで覆ったとしても大気中
の酸素が薄帯の周囲に存在するので、FeやNbが酸化
する可能性が高く、酸化に伴って特性の劣化が起こるた
めであると本発明者らは考えている。これに対してSn
を微量添加した本発明組成系の試料であるならば、柱上
トランス等の応用面において重要なコアロスの値におい
てArガス雰囲気中において製造した試料よりも大気中
液体急冷装置による試料の方が優れ、透磁率においても
同等以上の特性が得られることから、図1に示す大気中
液体急冷装置により連続的に製造できることで大量製造
する場合に有利となる特徴を有する。これに対してAr
ガス雰囲気中において製造する場合は、雰囲気の制御を
行うための処理室に装置全体を設置する必要があり、処
理室内部をArガス雰囲気に置換した後で製造し、製造
後に大気に戻して回収する必要があるので、薄帯製造が
バッチ処理となり、大量に連続製造することは不可能と
なる。
の試料は、Fe83.8Nb6.5B9.5Sn0.2の組成を有
し、大気中減圧雰囲気(160Torr「2.13×104P
a」あるいは260Torr「1×105Pa」)あるいは
N2ガス減圧雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を
示す。大気中減圧雰囲気あるいはN2ガス減圧雰囲気中
において製造したいずれの試料においても、優れた透磁
率と0.1前後以下の小さなコアロスが得られた。
試料は、Fe83.7Nb6.5B9.5Sn 0.3の組成を有し、
Arガス雰囲気中で製造した各種試料の測定結果を示
す。これらの試料は、Arガス圧力160Torr(2.1
3×104Pa)又は750Torr(1×105Pa)にお
いてるつぼの噴射口と冷却ロールとの間隔(gap)を
0.2mmあるいは0.25mmに設定し、合金溶湯の射
出温度を1350℃あるいは1380℃(射出温度の欄
参照)に、射出圧を0.7kg/cm2あるいは1.6k
g/cm2として製造した薄帯(リボン)の試料であっ
て、得られた薄帯を昇温速度180Kで目的の温度(6
25℃、650℃、675℃、700℃)で5分間加熱
する熱処理(熱処理の欄参照)を施した後に、透磁率
(1kHzと100kHzと1MHzの各値)と、保磁
力(Hc:単位A/mあるいは単位Oe)と、B10
(T:テスラ)と、残留磁束密度Br(T)と、飽和磁
束密度Bs(T)と、磁歪λs(×10-6)と、商用周
波数50HzでのBr及び保磁力(Hc)と、コアロス
(W1.33/50:W/kg)を測定した結果を示す。
51、52、53、54、55の試料において、例えば
リボン重量248gは得られた薄帯の総重量を示し、板
厚の20.241μmは得られた薄帯の始端部分での板
厚を示し、板厚の20.307μmは得られた薄帯の最
終端部分の板厚を示す。表10〜表13の構造の欄にお
いて、Sは薄帯の始端(スタート)部分での構造(amo
はアモルファスを示し)を示し、Eは薄帯の終端(エン
ド)部分での構造を示し、(F)とは薄帯において冷却
ロールに接しない側の自由面の構造を示す。
ら、Snを0.3原子%含有してなる組成系の試料であ
っても、先のSnを0.2原子%含有してなる試料の場
合と同等の結果、即ちArガス雰囲気において製造する
よりも、図1に示す大気中液体急冷装置で製造した方が
良好なコアロス、同等以上の透磁率が得られることが判
明した。なお、No.52、53の試料においてコアロ
スが比較的大きいのは、B10の値が比較的低くなってい
ることに起因していると考えられ、このB10の値が低い
のは、薄帯の表面荒れによるものと推定される。
試料は、Fe83.7Nb6.5B9.5Sn 0.3の組成を有し、
N2ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中、大気中で製造し
た各種試料の測定結果を比較して示す。表14に示す結
果から、Arガス雰囲気とN2ガス雰囲気にて製造され
た薄帯試料は同程度の透磁率と同程度のコアロスを示
す。また、大気中において製造した薄帯試料においても
優れた透磁率とコアロスが得られた。
No.62の試料は、Fe83.7Nb6 .5B9.5Sn0.3の組
成を有し、図1に示す大気液体急冷装置でギャップの値
を0.25mm、0.2mm、0.15mmにそれぞれ変
更して製造した各種薄帯試料の測定結果を比較して示
す。表16、表17に示す結果から、ギャップの値を変
更しても透磁率、保磁力、飽和磁束密度等の磁気特性は
変化ないが、コアロスの値が狭ギャップにするほど若干
向上している。従って冷却ロールとるつぼ先端部との間
のギャップについては狭い方が好ましいと考えられる
が、ギャップを必要以上に小さくし過ぎると、回転して
いる冷却ロールとるつぼの先端部が接触してるつぼを破
壊するおそれが高くなるので、ギャップとしては0.1
mm程度が限界である。これは、回転ロールが熱膨張に
より膨出しながら回転する分を計算しておかなくてはな
らず、回転時にギャップの制御を厳格に行う必要がある
ことを意味する。以上のような事情に鑑みると、ギャッ
プの値は0.2mm以上、かつ、0.4mm以下の範囲が
好ましく、0.1〜0.2mmの範囲がより好ましいと考
えられる。
体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる
組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率
(μ':実数部:1kHz)とB10(T)のアニール温
度依存性を示す図である。Snを0〜0.5原子%の範
囲で含む上記の組成系においてアニール温度は850K
〜950K(577〜677℃)の範囲、より好ましく
は875K〜950Kの範囲(602℃〜677℃の範
囲)であることが好ましいと考えられる。図7は図1に
示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行って製造したF
e84-XNb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の磁歪
のアニール温度依存性を示す図である。図7から見ると
磁歪を1×10-6以下とするためには、900〜975
K(627〜702℃)の温度範囲でアニールすること
で対応可能と考えらえる。また、磁歪を0近傍とするた
めには、925K〜975K(652℃〜702℃)の
範囲で行うことが好ましいことも判明した。
体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXなる
組成の合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率
(μ')と飽和磁束密度(Bs:T)のSn濃度依存性
を示す図であり、図9は同様の製造方法によるFe84-X
Nb6.5B9.5SnXなる組成の合金薄帯試料の結晶化温度
(TX1、TX2、TX3:発熱ピークの開始位置から順に3
つ計測した温度)と磁歪(λs×10-6)のSn濃度依
存性を示す図である。これらの図から、先の組成系にお
いてSn添加量を0.5原子%以下の範囲で増加するこ
とで、飽和磁束密度は若干低下してゆくが、透磁率は上
昇し、保磁力は低くなり、磁歪が0の近傍で+から−の
範囲に推移するので、Sn添加による効果は明らかであ
る。また、Sn添加の増加による結晶化温度TX1、
TX2、TX3に対する変化はほとんど見られず、Sn無添
加の場合と結晶化の挙動には変化はない。従って図8に
見られるようにSnを添加した場合、Sn無添加の場合
と同様な熱処理で、より優れた磁気特性を得ることがで
きる。SnはFeに固溶してbccFeの磁歪を下げる
と思われるが、固溶する量は多くないと考えられる。
液体急冷を行って製造したFe84-XNb6.5B9.5SnXな
る組成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図であり、
図11は図1に示す液体急冷装置で大気中液体急冷を行
って製造したFe84.5-XNb 6.5B9SnXなる組成の合金
薄帯試料のX線回折図形を示す図である。図10と図1
1においてロール面とは、得られた合金薄帯の一面と他
面において冷却ロールに接しながら生成された側の一面
における測定結果を示し、自由面とは冷却ロールに接触
しない側の面における測定結果を示す。図10と図11
に示すようにSnを含有していない組成の薄帯試料では
いずれもロール面側に明確なピークが見られ、一部結晶
相が析出した合金組織であるものが、Snを0.3原子
%含有する組成においてはロール面のピークが消失して
いる。これは、Snを含有する組成とすることで急冷時
にアモルファス相を安定して製造できることを示してい
る。なお、これらの組成は非晶質形成能の限界付近であ
るので、一部回折ピークが析出したものである。Sn添
加により回折ピークが無くなるのは、Snが薄帯表面に
出易く、表面においてBの酸化を抑制し、Bの酸化物の
生成を抑制するではと本発明者は考えている。
組成のリング状試料とFe84Nb6. 5B9.5なる組成のリ
ング状試料とFe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3なる組成のリ
ング状試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス
合金リング状試料のコアロスを比較して示す図である。
リング状試料とは、先に説明した冷却ロールを用いた液
体急冷法により得られた薄帯をプレスで外径10mm、
内径5mmのドーナツ板状に打ち抜き、これを15枚重
ねて磁心を構成し、巻線して得たコア試料である。図1
2に示す測定結果から明らかなようにFe78Si9B13
なる組成のアモルファス合金のリング状試料のコアロス
に比較し、本願発明組成のSnを含むリング状試料は最
大誘導磁場において高い範囲まで低いコアロスを維持し
た。勿論、Snを含有した試料はFe78Si9B13なる
組成のアモルファス合金リング状試料よりも遥に低いコ
アロスを示す。例えば、1〜1.4Tの範囲まで0.1以
下のコアロスとすることができる。
組成のトロイダル型のコア試料とFe84Nb6.5B9.5な
る組成のトロイダル型のコア試料とFe78Si9B13な
る組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料の
コアロスを各々比較して示す図である。なお、Fe78S
i9B13なる組成のアモルファス合金のトロイダル型の
コア試料については、磁場中においてアニールしたもの
であるのに対し、その他の試料については無磁場中にて
アニールしたものである。図13に示す測定結果から明
らかなようにFe78Si9B13なる組成のアモルファス
合金のトロイダル型のコア試料のコアロスに比較し、本
願発明組成のSnを含むトロイダル型のコア試料は最大
誘導磁場において高い範囲まで低いコアロスを示した。
勿論、Snを含有した試料はFe78Si9B13なる組成
のアモルファス合金リング状試料よりも遥かに低いコア
ロスを示す。例えば、1〜1.4Tの範囲まで0.1以下
のコアロスとすることができる。また、Snを含む本発
明組成系のものは、磁場中アニールしなくとも無磁場ア
ニールで優れた特性を発揮するので、製造工程を簡略化
することもできる。
る組成系の合金薄帯試料の飽和磁束密度(Bs:T)の
組成依存性を示す三角組成図、図15はFe93.5-X-YN
b6. 5BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の磁歪(λ
s:×10-6)の組成依存性を示す三角組成図である。
なお、図14に示す三角組成図においてはBの含有量を
底辺部分に表記し、Snの含有量を左側の斜辺部分に表
記しているが、右斜辺部分に表記するべきFeの含有量
表記については省略している。また、以下に説明する図
15〜図25の三角組成図においても同様にFeの含有
量表記は略している。図14に示す組成系において、B
含有量が9.0〜10原子%の範囲、Sn含有量が0〜
0.4原子%の範囲において1.51〜1.61Tの高い
飽和磁束密度が得られ、同一の範囲において磁歪が−
0.36×10-6〜+0.36×10-6の範囲であって、
しかも磁歪0の組成を有することが明らかである。従っ
て図14に示す組成系の合金は磁心として利用する場合
に磁歪を0を中心として正の範囲あるいは負の範囲で適
宜選択することができ、しかもその絶対値も小さくでき
ることが明らかである。
料の透磁率(μ:1kHz)の組成依存性を示す三角組
成図、図17は先の例と同一組成系の合金薄帯試料の保
磁力(Hc:mOe)の組成依存性を示す三角組成図で
ある。なお、単位系のOe(エルステッド)をSI単位
系のA/mに変換するには図17の数値を個々に約80
倍することで単位換算できる。先の組成系において、B
含有量が8.5〜10.5原子%の範囲、Sn含有量が0
〜0.4原子%の範囲において30000を超える透磁
率を示し、先の範囲において小さな保磁力を示すことが
明らかである。
料の残留磁束密度の組成依存性を示す三角組成図、図1
9は先の例と同一組成系の合金薄帯試料のコアロス(W
1.33 /50/kg-1)の組成依存性を示す三角組成図であ
る。先の組成系において、B含有量が9.0〜10原子
%の範囲、Sn含有量が0〜0.4原子%の範囲におい
て確実に0.1以下のコアロスを得ることができること
が明らかである。
組成系の合金薄帯試料の透磁率(μ:1kHz)の組成
依存性を示す三角組成図、図21はFe94.0-x-yNb6
BxSnyなる組成系の合金薄帯試料の保磁力(H:O
e)の組成依存性を示す三角組成図である。Sn添加量
が0.2〜0.3では35000を超える透磁率が得られ
ており、また小さい保磁力が得られている。図22はF
e94.0-X-YNb6BXSnYなる組成系の合金薄帯試料の
飽和磁束密度(Bs:T)の組成依存性を示す三角組成
図、図23はFe94.0-X-YNb6BXSnYなる組成系の
合金薄帯試料の磁歪(λs:×10-6)の組成依存性を
示す三角組成図である。図22に示す組成系において、
先の図14に示す組成系の場合と同様に1.51〜1.6
1Tの高い飽和磁束密度を示し、図14に示す例と同一
範囲において磁歪の絶対値が小さく、しかも磁歪0の組
成を有することが明らかである。
料の残留磁束密度の組成依存性を示す三角組成図、図2
5はコアロスの三角組成図を示すが、先に図15〜図1
9に示した測定結果と同等の優れた値を示した。
成の薄帯試料に対し、(株)小坂研究所製のモデルDR
−100X32を用いて表面粗さ(最大平均粗さ:T
f)を測定した結果を示す。表面粗さの計測位置は、得
られた合金薄帯のスタート部分と終端部分の幅方向中央
部の幅10mm、合金薄帯の長さ方向15mmの部分の
振幅の平均を計測したものである。図26に示す測定結
果から、表面粗さの値が小さい場合、飽和磁束密度と透
磁率が高く、保磁力が小さく、コアロスも小さいことが
判明した。更に図26に示す結果から、表面粗さについ
ては、4μm以下が好ましく、中でも1〜4.0μの範
囲が好ましいと思われる。
に示す装置で製造する場合、るつぼの先端部と冷却ロー
ルとの間隔(ギャップ:gap)を変更した場合の磁気
特性に対する影響を調べた。製造した合金薄帯の組成
は、Fe84.7Nb6.5B9.5Sn 0.3とした。その結果を
以下の表18に示す。
ャップ0.25mmの試料ではギャップ0.2mmの試
料、ギャップ0.15mmの試料に比べて最大平均粗さ
が大きくなり、透磁率とコアロスは劣化している。特
に、透磁率は42000と高い値は維持しているがコア
ロスが0.1を大幅に越えて大きくなっている。このこ
とから、表面粗さを小さくするためには、0.15〜0.
20mmのギャップで製造することが有利であると思わ
れる。
性合金によれば、Tx By Mz Qtの組成あるいはTx
By Mz Qt Xuの組成を有し、75原子%≦x≦93
原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、4原子%≦z
≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<u≦5原子%
の組成比を有するので、SnまたはSを微量添加するこ
とにより、高い飽和磁束密度を維持したまま高い透磁率
を有し、しかも低損失のFe基軟磁性合金が得られる。
また、SnとSを微量添加することで微結晶化のための
熱処理時の熱処理温度範囲が広くなる。更に、SnとS
を微量添加することで、合金内にこれらの元素がほぼ均
一に分散し、磁歪が低減され、軟磁気特性が向上する。
以上のことから本発明のFe系軟磁性合金は、磁気記録
媒体の高保磁力化に対応することが必要な磁気ヘッド、
より一層の小型化が要求されているトランス、チョーク
コイル用として好適であって、これらの用途に供した場
合、これらの性能の向上と小型軽量化をなしえる効果が
ある。
てFe基軟磁性合金を製造する際の非晶質相化が容易と
なり、この非晶質相から熱処理により微結晶が析出して
軟磁気特性が向上する。
いて、Nbを含む組成系のものにおいてNbは高融点金
属であり、熱的安定性も高く、酸化しずらい性質を付与
するので、Nbを含む組成系のFe基軟磁性合金を製造
する場合に大気中などの酸化雰囲気においても製造が容
易になる。
元素Qの組成比を示すzが、0.05原子%≦z≦0.3
原子%の範囲、あるいは、0.05原子%≦z≦0.2原
子%の範囲であるならば、一層高い透磁率と低い鉄損を
確保できる。
ば、組成系に応じて1kHzにおける実効透磁率が40
000以上のものが得られ、鉄損が、Bm=1.33
T、周波数50Hzにおいて0.1W/kg以下のもの
が得られる。このような低い鉄損を有するならば、広く
用いられているトランス用のアモルファス合金よりも低
い鉄損とすることができ、しかも高い飽和磁束密度と高
い透磁率を兼ね備えることができる。よって本発明のF
e基軟磁性合金により、トランス用途としての一層の小
型化、高性能化に寄与する。
ならば、飽和磁束密度Bsが1.5T以上、1kHzに
おける実効透磁率μeが36000以上であって、非晶
質相と非晶質相から熱処理により析出させたbcc構造
のFeの微細結晶粒を主体としてなり、前記Feの微細
結晶粒が前記非晶質相を500〜700℃の温度範囲に
加熱後に冷却して析出したものが得られる。
他の元素を目的の組成比となるように原料を混合して溶
解し、インゴットを作成し、このインゴットを溶解して
急冷法に供してFe基軟磁性合金とするに際し、急冷法
に供する際にインゴットとともに目的の量の硫黄を溶解
してから急冷することができる。本発明に係るFe基軟
磁性合金の構成元素を見ると、硫黄よりも高融点の金属
元素が主体であり、全体の組成比に合わせて原料を混合
し、合金溶湯としてインゴットを作成すると、インゴッ
ト作成時の溶解操作により硫黄が揮発し、目的の組成比
よりも低い硫黄含有量となり易い。そこで、急冷法に供
するためのインゴットを作成する場合に硫黄を含ませず
に硫黄を除いた組成比になるように原料を混合して溶解
し、インゴットを作成し、このインゴットを急冷法に供
して溶解する場合に目的量の硫黄を追加し、目的の組成
比の合金溶湯として直ちに急冷法により急冷することで
溶解時の硫黄の減量をできる限り少なくして目的の組成
比のFe基軟磁性合金を確実に製造することができる。
従って先に記載の製造方法によれば、高い飽和磁束密度
を維持したまま高い透磁率を有し、しかも低損失のFe
基軟磁性合金を確実に製造することができる。
に用いられる合金薄帯製造装置の一例を示す概略構成図
である。
磁力と鉄損のSn含有量依存性とS含有量依存性を示す
図である。
磁力の結晶化温度依存性を示す図である。
金薄帯試料の熱処理前のSn濃度分布の分析結果を示す
図である。
金薄帯試料の熱処理後のSn濃度分布の分析結果を示す
図である。
合金薄帯試料の保磁力(Hc)と透磁率(μ':1kH
z)とB10(T)のアニール温度依存性を示す図であ
る。
合金薄帯試料の磁歪のアニール温度依存性を示す図であ
る。
合金薄帯試料の保磁力(Hc:A/m)と透磁率
(μ')と飽和磁束密度(Bs:T)のSn濃度依存性
を示す図である。
合金薄帯試料の結晶化温度(TX1、TX2、TX3)と磁歪
(λs×10-6)のSn濃度依存性を示す図である。
成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図である。
成の合金薄帯試料のX線回折図形を示す図である。
組成のリング状試料とFe84Nb6.5B9.5なる組成のリ
ング状試料とFe83.7Nb6.5B9.5Sn0.3なる組成のリ
ング状試料とFe78Si9B13なる組成のアモルファス
合金リング状試料の各々のコアロスを比較して示す図で
ある。
組成のトロイダル型のコア試料とFe84Nb6.5B9.5な
る組成のトロイダル型のコア試料とFe78Si9B13な
る組成のアモルファス合金のトロイダル型のコア試料の
各々のコアロスを比較して示す図である。
組成の合金試料の飽和磁束密度(Bs)の組成依存性を
示す三角組成図である。
組成の合金試料の磁歪(λs)の組成依存性を示す三角
組成図である。
組成の合金試料の透磁率(μ)の組成依存性を示す三角
組成図である。
組成の合金試料の保磁力(Hc)の組成依存性を示す三
角組成図である。
組成の合金試料の残留磁束密度(Br)の組成依存性を
示す三角組成図である。
組成の合金試料のコアロスの組成依存性を示す三角組成
図である。
組成の合金試料の透磁率の組成依存性を示す三角組成図
である。
組成の合金試料の保磁力の組成依存性を示す三角組成図
である。
組成の合金試料の飽和磁束密度の組成依存性を示す三角
組成図である。
組成の合金試料の磁歪の組成依存性を示す三角組成図で
ある。
組成の合金試料の残留磁化の組成依存性を示す三角組成
図である。
組成の合金試料のコアロスの組成依存性を示す三角組成
図である。
成の合金薄帯試料のコアロス(W1.33/50/kg-1)と
保磁力(Hc:A/m)と透磁率(μ')と飽和磁化
(Br:T)とB10(T)の表面粗さ(最大平均粗
さ:Tf)依存性を示す図である。
Claims (14)
- 【請求項1】 次式で示される組成からなることを特徴
とするFe基軟磁性合金。 Tx By Mz Qt ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、組成比を示すx、y、z、tは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%であ
る。 - 【請求項2】 次式で示される組成からなることを特徴
とするFe基軟磁性合金。 Tx By Mz Qt Xu ただしTはFeを含み、Fe、Ni、Coのうちから選
択される1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、
Nb、Ta、Mo、Wから選ばれた1種または2種以上
の元素であり、QはSn、Sのうちの1種または2種の
元素であり、XはSi、Al、Ge、Ga、P、C、C
u、Y、希土類元素のうちの1種または2種以上の元素
であり、組成比を示すx、y、z、t、uは、75原子
%≦x≦93原子%、0.5原子%≦y≦18原子%、
4原子%≦z≦9原子%、0<t≦1.0原子%、0<
u≦5原子%である。 - 【請求項3】 前記Mは、Nb、Zr、V、Mo、Wの
うちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1
または2に記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項4】 前記Mは、NbとZrの少なくとも一方
を必ず含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに
記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項5】 前記元素Qの組成比を示すtが、0.0
5原子%≦t≦0.3原子%の範囲とされたことを特徴
とする請求項1〜4のいずれかに記載のFe基軟磁性合
金。 - 【請求項6】 前記元素Qの組成比を示すtが、0.0
5原子%≦t≦0.2原子%の範囲とされたことを特徴
とする請求項1〜4のいずれかに記載のFe基軟磁性合
金。 - 【請求項7】 前記元素Xの組成比を示すuが、0.1
原子%≦u≦5原子%の範囲とされたことを特徴とする
請求項1〜6のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項8】 前記元素Xの組成比を示すuが、0.1
原子%≦u≦1原子%の範囲とされたことを特徴とする
請求項1〜4のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項9】 前記Fe基軟磁性合金の1kHzにおけ
る実効透磁率が40000以上であることを特徴とする
請求項1〜8のいずれかに記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項10】 前記Fe基軟磁性合金の鉄損が、Bm
=1.33T、周波数50Hzにおいて0.1W/kg以
下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記
載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項11】 前記元素Qが、合金中にほぼ均一に分
布されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれ
かに記載のFe基軟磁性合金。 - 【請求項12】 飽和磁束密度Bsが1.5T以上、1
kHzにおける実効透磁率μeが36000以上であっ
て、非晶質相と非晶質相から熱処理により析出させたb
cc構造のFeの微細結晶粒を主体としてなり、前記F
eの微細結晶粒が前記非晶質相を500〜700℃の温
度範囲に加熱後に冷却して析出されたものであることを
特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のFe基軟
磁性合金。 - 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載のF
e基軟磁性合金において硫黄を必須元素として含む組成
系のFe基軟磁性合金を急冷法により製造する方法であ
って、 硫黄を除いた他の構成元素を目的の組成比となるように
原料を混合して溶解しインゴットを作成し、このインゴ
ットを溶解して急冷法に供してFe基軟磁性合金とする
に際し、インゴットとともに目的の量の硫黄を溶解して
から急冷することを特徴とするFe基軟磁性合金の製造
方法。 - 【請求項14】 溶解装置の溶湯を急冷装置に噴出させ
て急冷し、リボン状あるいは粒子状のFe基軟磁性合金
を製造するに際し、溶解装置で溶解する際に前記インゴ
ットと硫黄を混合したものを用いることを特徴とする請
求項13に記載のFe基軟磁性合金の製造方法。
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JP2002073323A JP4212820B2 (ja) | 2001-03-27 | 2002-03-15 | Fe基軟磁性合金とその製造方法 |
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JP2001089529 | 2001-03-27 | ||
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---|---|---|---|---|
JP2006307332A (ja) * | 2005-04-01 | 2006-11-09 | Neomax Co Ltd | 磁性合金材料およびその製造方法 |
JP2011023673A (ja) * | 2009-07-21 | 2011-02-03 | Nec Tokin Corp | 非晶質軟磁性粉末、トロイダルコア、インダクタおよびチョークコイル |
JP2014170877A (ja) * | 2013-03-05 | 2014-09-18 | Daido Steel Co Ltd | 軟磁性金属粉末及び圧粉磁心 |
-
2002
- 2002-03-15 JP JP2002073323A patent/JP4212820B2/ja not_active Expired - Fee Related
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