JP2003041354A - 軟磁性合金及びその製造方法とそれを用いた磁心 - Google Patents

軟磁性合金及びその製造方法とそれを用いた磁心

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JP2003041354A JP2001228652A JP2001228652A JP2003041354A JP 2003041354 A JP2003041354 A JP 2003041354A JP 2001228652 A JP2001228652 A JP 2001228652A JP 2001228652 A JP2001228652 A JP 2001228652A JP 2003041354 A JP2003041354 A JP 2003041354A
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Akinobu Kojima
章伸 小島
Satoru Ito
知 伊藤
Takamitsu Shibuya
隆光 渋谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 作業性良く、しかも溶湯ノズル詰まりを生じ
ることなく、大気雰囲気中で合金溶湯を急冷して製造で
き、製造コストを低減できる軟磁性合金及びその製造方
法とそれを用いた磁心の提供。 【解決手段】 大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金
溶湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処
理により微細な結晶粒を析出させてなる軟磁性合金。 T100-a-b-cabNbc 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、組成比を示
すa、b、cは原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、
4≦c≦8である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟磁性合金及びそ
の製造方法とそれを用いた磁心に関するものであり、特
に、柱状トランス、磁気センサなどに備えられる磁心材
料として好適に用ることができる軟磁性合金及びその製
造方法とそれを用いた磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】トランスやチョークコイルなどに用いる
軟磁性合金を製造する方法として、単一の冷却ロールを
用いる単ロール法が現在最も普及している。単ロール法
は、図18に示すような合金薄帯製造装置を用い、真空
排気後、不活性ガス雰囲気とされたチャンバ100内に
配置された冷却ロール101を高速で回転させつつ溶融
金属103が満たされたるつぼ102の上記冷却ロール
101の冷却面頂部に近接した溶湯ノズル102aから
溶融金属103を噴出することにより、溶融金属103
を冷却ロール101の冷却面で急冷凝固させつつ、冷却
ロール101の回転方向(矢印A方向)に引き出す方法
である。なお、図18中符号115は一端部が真空排気
装置に接続され、他端部がチャンバ100に接続された
排気管であり、132は一端部がアルゴンガスなどの不
活性ガス供給源と接続され、他端部がチャンバ100に
接続された接続管であり、116は一端部がアルゴンガ
スなどの不活性ガス供給源と接続され、他端部がるつぼ
102に接続された供給管である。
【0003】溶湯ノズル102aから噴出した溶融金属
103は、溶湯ノズル102aの先端と冷却ロール10
1の冷却面との間で溜まり、金属溜まりを形成し、冷却
ロール101の回転に伴ってこの金属溜まりから、逐次
溶融金属103が引き出され、冷却ロール101の表面
上で急冷凝固し、合金薄帯105が連続的に形成され
る。このような従来の軟磁性合金の製造方法において、
チャンバ100内を不活性ガス雰囲気とするのは、単ロ
ール法に供される材料の組成によっては材料の酸化によ
り溶湯ノズル102が詰まり、これにより溶融金属の噴
出が滞るため、上記のように冷却ロール101の周囲の
雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることにより、溶湯ノズ
ル102近傍の酸素濃度を低減して材料の酸化を防止し
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、チャン
バ100内を不活性ガス雰囲気とする従来の製造方法
は、溶湯ノズル詰まりを防止する上では極めて有効な手
段であるが、不活性ガス雰囲気とされたチャンバ100
内にるつぼ102や冷却ロール101を配置して合金薄
帯を製造しているので、作業性の点で課題があった。例
えば、従来の単ロール法では、1チャージ毎にチャンバ
100を開放して溶融母材を溶解炉またはるつぼ102
に装填し、再度チャンバ100を密閉した後に不活性ガ
ス雰囲気に置換するという煩雑な作業が必要であり、量
産に不向きであった。また、チャンバ100内を不活性
ガス雰囲気に保持するための付帯設備のコストが大きく
なり、軟磁性合金の製造コストがかかってしまうという
課題もあった。
【0005】本発明は、上述の課題を解決するためにな
されたものであり、作業性良く、しかも溶湯ノズル詰ま
りを生じることなく、大気雰囲気中で合金溶湯を急冷し
て製造でき、製造コストを低減できる軟磁性合金及びそ
の製造方法とそれを用いた磁心を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明に係わる
軟磁性合金は、大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金
溶湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処
理により微細な結晶粒を析出させてなることを特徴とす
る。 T100-a-b-cabNbc 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、組成比を示
すa、b、cは原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、
4≦c≦8である。
【0007】本発明の軟磁性合金は、合金溶湯の組成
を、磁性を担う元素としてFe、Co、Niのうち少な
くとも1種以上の元素Tと、非晶質形成能を高める作用
効果、結晶組織の粗大化を防ぐ効果、および熱処理工程
において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑
制する効果がある元素としてB、P、Cのうちの少なく
とも1種以上の元素Xと、非晶質形成能および軟磁気特
性を向上させる効果が高く、酸化しにくい元素としてN
bとを必須として含み、さらにこれらの元素の含有量を
上記組成比の範囲内に限定し、さらにまた、必要に応じ
て、微細結晶核の成長速度を小さくする効果と非晶質形
成能を有し、かつ酸化しにくい元素としてV、Mn、M
o、Ta、W、Crのうち少なくとも1種以上の元素M
を上記組成比の範囲内で含むようにしたものとすること
により、この合金溶湯を大気雰囲気中で単ロール法など
を用いて急冷しても材料が酸化することがなく、材料が
酸化することに起因する溶融ノズル詰まりを防止でき
る。上述したように上記T100-a-b-cabNbcなる組
成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷しても材料が酸化せ
ず、溶融ノズル詰まりを生じないので、冷却ロールや合
金溶湯が満たされたるつぼが配置されたチャンバ内を不
活性ガス雰囲気にする必要がなく、チャンバ内を不活性
ガス雰囲気に保持するための付帯設備を設けなくても済
み、製造コストを低減できる。
【0008】また、上述したように上記T100-a-b-ca
bNbcなる組成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷して
も材料が酸化しないので、冷却ロールやるつぼが配置さ
れたチャンバを大気雰囲気に開放したままの状態で、あ
るいは冷却ロールやるつぼをチャンバ内に配置すること
なく、上記合金溶湯を急冷して非晶質合金を主体とする
合金を連続的に製造することが可能で、不活性ガス雰囲
気とされたチャンバ内で合金溶湯を急冷する場合のよう
な1チャージ毎に不活性ガス雰囲気とされていたチャン
バを開放したり、再度密閉して不活性ガス雰囲気に置換
するという煩雑な作業を行わなくても済み、作業性が向
上し、大量生産し易い。従って本発明の軟磁性合金は、
作業性良く、しかも溶湯ノズル詰まりを生じることな
く、大気雰囲気中で合金溶湯を急冷して製造できる。
【0009】また、本発明に係わる他の軟磁性合金は、
大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金溶湯を急冷して
得られた非晶質を主体とする合金に熱処理により微細な
結晶粒を析出させてなることを特徴とする。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
0<d≦1である。この軟磁性合金は、合金溶湯の組成
を、上記のT100-a-b-cabNbcなる組成の合金に、
Zr、Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少
なくとも1種以上の元素Zを上記の組成比の範囲内で添
加したものとすることにより、合金溶湯の組成をT
100-a-b-cabNbcなる組成にしたものより、非晶質
形成能を向上させることができる。
【0010】また、上記のいずれかの構成の本発明の軟
磁性合金において、上記組成式中の組成比を示すa、
b、cが原子%で、0≦a≦1、8≦b≦13、5≦c
≦7とされることが、上記合金溶湯の急冷直後に磁気特
性に悪影響を及ぼすFe3B等のFeとBの化合物が発
生しにくくなり、また、軟磁性合金の軟磁性が優れる点
で好ましい。さらに、上記のいずれかの構成の本発明の
軟磁性合金において、上記組成式中の組成比を示すaが
原子%で、0.1≦a≦1とされることが、良好な磁気
特性を維持し、大気雰囲気中で溶湯ノズルから上記合金
溶湯を冷却ロールに射出し易く、この冷却ロールで急冷
直後に均一な非晶質相を形成し易い点で好ましい。
【0011】さらにまた、上記のいずれかの構成の本発
明の軟磁性合金において、上記組成式中の元素ZがY及
び希土類元素のうちの少なくとも1種以上の元素であ
り、組成比を示すdが原子%で、0<d≦0.5とされ
ることが、少量の添加で実効透磁率等の軟磁気特性を向
上でき、高価な上記元素M、NbまたはBの添加量を減
らすことができるので、コストダウンが可能である点で
好ましい。また、上記のいずれかの構成の本発明の軟磁
性合金において、上記組成式中の元素MがMoであり、
元素XがBであることが、大気雰囲気中で上記合金溶湯
を急冷するときに材料が酸化するのを防止する効果と軟
磁性を向上できる効果をより向上できる点で好ましい。
【0012】さらに、上記のいずれかの構成の本発明の
軟磁性合金は、上記微細な結晶粒の平均結晶粒径が10
0nm以下とすることができる。この軟磁性合金は、平
均結晶粒径が100nm以下の微細なbcc構造(体心
立方構造)の結晶粒(主にFeの結晶粒)からなる微結
晶質相を主体とし、該微結晶質相とその粒界に存在する
粒界非晶質相とからなる組織から構成されており、優れ
た軟磁気特性を発揮する。それは、析出したbcc構造
の結晶粒が100nm以下と微細なために、結晶磁気異
方性がbcc構造の結晶粒子間の磁気相互作用により平
均化され、みかけの結晶磁気異方性が小さくなるためで
あると考えられる。
【0013】さらにまた、上記のいずれかの構成の本発
明の軟磁性合金は、上記のいずれかの組成の合金溶湯を
大気雰囲気中で急冷して得られた非晶質を主体とする合
金に熱処理により微細な結晶粒を析出させて得られたも
のであるので、16A/m以下の保磁力、1.5T以上
の飽和磁束密度と、1kHzの実効透磁率が10000
以上の値を示すことができる。
【0014】本発明に係わる磁心は、大気雰囲気中にて
下記組成式を示す合金溶湯を急冷して得られた非晶質を
主体とする合金を巻回、打ち抜き、カッティングもしく
は積層し、熱処理により微細な結晶粒を析出させてコア
として用いたことを特徴とする。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
0≦d≦1である。この磁心は、大気雰囲気中で上記T
100-a-b-c-dabNbcdなる組成の合金溶湯を急冷
後、熱処理することにより得られた軟磁性合金薄帯を用
いているので、合金溶湯を急冷するための冷却ロール等
が配置されたチャンバ内を不活性ガス雰囲気にしておら
ず、また、不活性ガス雰囲気とするための付帯設備も用
いないので、作業性良く製造でき、低コストとすること
ができる。
【0015】本発明に係わる軟磁性合金の製造方法は、
大気雰囲気中にて、下記組成式を示す合金溶湯を上記溶
湯射出用ノズルから冷却ロールに射出して急冷し、非晶
質を主体とする合金を得た後に、熱処理により微細な結
晶粒を主体とする組織とすることを特徴とする。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
0≦d≦1である。
【0016】このような軟磁性合金の製造方法によれ
ば、上記T100-a-b-cabNbcdなる組成の合金溶
湯を用いているので、この合金溶湯を大気雰囲気中で単
ロール法などを用いて急冷しても材料が酸化することが
なく、材料が酸化することに起因する溶融ノズル詰まり
を防止でき、また、溶融ノズル詰まりを生じないので、
冷却ロールや合金溶湯が満たされたるつぼが配置された
チャンバ内を不活性ガス雰囲気にする必要がなく、チャ
ンバ内を不活性ガス雰囲気に保持するための付帯設備を
設けなくても済み、軟磁性合金の製造コストを低減でき
る。また、上述したように上記T100-a-b-cabNbc
dなる組成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷しても材
料が酸化しないので、冷却ロールやるつぼが配置された
チャンバを大気雰囲気に開放したままの状態で、あるい
は冷却ロールやるつぼをチャンバ内に配置することな
く、上記合金溶湯を急冷して非晶質合金を主体とする合
金を連続的に製造することが可能で、不活性ガス雰囲気
とされたチャンバ内で合金溶湯を急冷する場合のような
1チャージ毎に不活性ガス雰囲気とされていたチャンバ
を開放したり、再度密閉して不活性ガス雰囲気に置換す
るという煩雑な作業を行わなくても済み、作業性を向上
でき、軟磁性合金を大量生産できる。従って本発明の軟
磁性合金の製造方法によれば、作業性良く、しかも溶湯
ノズル詰まりを生じることなく、大気雰囲気中で合金溶
湯を急冷でき、この後熱処理を施すことにより、軟磁性
が良好な軟磁性合金を低コストで製造できる。また、上
記の構成の本発明の軟磁性合金の製造方法において、必
要に応じて、上記溶湯射出用ノズルの少なくとも先端部
に不活性ガスをフローしつつ上記合金溶湯を冷却ロール
へ射出するようにしても良い。また、上記の構成の本発
明の軟磁性合金の製造方法において、上記組成式中の組
成比を示すa、b、cを原子%で、0≦a≦1、8≦b
≦13、5≦c≦7とすることが、上記合金溶湯の急冷
直後に磁気特性に悪影響を及ぼすFe3B等のFeとB
の化合物が発生しにくくなり、また、軟磁性合金の軟磁
性が優れる点で好ましい。さらに、上記組成式中の組成
比を示すaを原子%で、0.1≦a≦1とすることが、
良好な磁気特性を維持し、大気雰囲気中で溶湯ノズルか
ら上記合金溶湯を冷却ロールに射出し易く、この冷却ロ
ールで急冷直後に均一な非晶質相を形成し易い点で好ま
しい。さらにまた、上記組成式中の元素ZをY及び希土
類元素のうちの少なくとも1種以上の元素とし、組成比
を示すdを原子%で、0<d≦0.5とすることが、少
量の添加で実効透磁率等の軟磁気特性を向上でき、高価
な上記元素M、NbまたはBの添加量を減らすことがで
きるので、コストダウンが可能である点で好ましい。ま
た、上記組成式中の元素MをMoとし、元素XをBとす
ることが、大気雰囲気中で上記合金溶湯を急冷するとき
に材料が酸化するのを防止する効果と軟磁性を向上でき
る効果をより向上できる点で好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の軟磁性合金及びそ
の製造方法とそれを用いた磁心について説明する。ま
ず、本発明の軟磁性合金について説明する。本発明の軟
磁性合金は、大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金溶
湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処理
により微細な結晶粒を析出させてなるものである。 T100-a-b-cabNbc 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、組成比を示
すa、b、cは原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、
4≦c≦8である。
【0018】また、本発明の軟磁性合金は、上記のT
100-a-b-cabNbcなる組成の合金溶湯に、非晶質形
成能を向上させるために、Zr、Ti、Hf、Al、Y
及び希土類元素のうちの少なくとも1種以上の元素Zを
添加した下記組成式で示す合金溶湯を大気雰囲気中にて
急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処理によ
り微細な結晶粒を析出させたものであってもよい。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
0<d≦1である。
【0019】また、上記のいずれかの組成式中の組成比
を示すa、b、cが原子%で、0≦a≦1、8≦b≦1
3、5≦c≦7とされることが好ましい。さらに、上記
のいずれかの組成式中の組成比を示すaが原子%で、
0.1≦a≦1とされることが好ましい。さらにまた、
上記のいずれかの組成式中の元素ZがY及び希土類元素
のうちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を示
すdが原子%で、0<d≦0.5とされることが好まし
い。また、上記のいずれかの組成式中の元素MがMoで
あり、元素XがBであることが好ましい。
【0020】本発明の軟磁性合金は、上記のいずれかの
組成式で示される合金溶湯を大気雰囲気中にて急冷して
得られた非晶質を主体とする合金に熱処理により微細な
結晶粒を析出させたものであるので、下記組成式で示さ
れる組成を有している。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
0≦d≦1である。また、上記のいずれかの組成式中の
組成比を示すa、b、cが原子%で、0≦a≦1、8≦
b≦13、5≦c≦7とされることが好ましい。さら
に、上記のいずれかの組成式中の組成比を示すaが原子
%で、0.1≦a≦1とされることが好ましい。さらに
また、上記のいずれかの組成式中の元素ZがY及び希土
類元素のうちの少なくとも1種以上の元素であり、組成
比を示すdが原子%で、0<d≦0.5とされることが
好ましい。また、上記のいずれかの組成式中の元素Mが
Moであり、元素XがBであることが好ましい。
【0021】本発明の軟磁性合金は、平均結晶粒径が1
00nm以下、好ましくは30nm以下の微細なbcc
構造(体心立方構造)の結晶粒(主にFeの結晶粒)か
らなる微結晶質相を主体とし、該微結晶質相とその粒界
に存在する粒界非晶質相とからなる組織から構成されて
おり、高い飽和磁束密度と優れた透磁率を示す。それ
は、析出したbcc構造の結晶粒が100nm以下と微
細なために、結晶磁気異方性がbcc構造の結晶粒子間
の磁気相互作用により平均化され、みかけの結晶磁気異
方性が小さくなるためであると考えられる。
【0022】また、本発明の軟磁性合金は、上記のいず
れかの組成の合金溶湯を大気雰囲気中で急冷して得られ
た非晶質を主体とする合金に熱処理により微細な結晶粒
を析出させて得られたものであるので、16A/m以下
の保磁力、1.5T以上の飽和磁束密度と、1kHzの
実効透磁率が10000以上の値を示すことができる。
【0023】本発明に用いられる合金溶湯の組成系にお
いて、主成分であるFe、Co、Niは、磁性を担う元
素であり、高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を得る
ために重要である。上記組成の合金溶湯においては、磁
性を担う元素Tの添加量(組成比)を示す100−a−
b−cの値は94原子%以下であり、また、上記元素Z
を含む場合、磁性を担う元素Tの添加量(組成比)を示
す100−a−b−c−dの値は94原子%より小さ
い。上記の磁性を担う元素Tの添加量が94原子%を超
えると単ロール法等の液体急冷法によって非晶質単相の
薄帯を得ることが困難になり、この結果、熱処理してか
ら得られる軟磁性合金の組織が不均一になって高い透磁
率が得られないので好ましくない。
【0024】上記元素Zが添加されていない場合の上記
の磁性を担う元素Tの添加量は71原子%以上であり、
上記元素Zが添加されている場合の元素Tの添加量は7
0原子%以上である。また、上記元素Tの添加量は75
原子%以上とすることが好ましい。この磁性を担う元素
Tが75原子%未満では、飽和磁束密度(Bs)が1.
5T以上を示すことが困難となり好ましくない。従っ
て、合金中に上記元素Zを添加しない場合の元素Tの範
囲を75原子%≦(100−x−y−z−t)≦94原
子%とし、上記元素Zを添加する場合の元素Tの範囲を
75原子%≦(100−x−y−z−t)<94原子%
とした。
【0025】また、大気雰囲気中にて容易に液体急冷法
によって非晶質単相の薄帯を得ることができ、なおか
つ、高い飽和磁束密度を得るためには、元素Tの範囲を
80原子%以上90原子%以下とすることがさらに好ま
しい。また、Feの一部は、磁歪等の調整のためにC
o,Niのうち1種または2種以上の元素で置換しても
よく、この場合、好ましくはFeの25%以下とするの
がよい。この範囲外であると透磁率が劣化する。上記組
成式中の元素Tとしては、少なくともFeを選択するの
が、低コストとできる点、飽和磁束密度を高くできる点
で好ましい。
【0026】上記組成式中の元素XのうちのBには、軟
磁性合金の非晶質形成能を高める効果、結晶組織の粗大
化を防ぐ効果、および熱処理工程において磁気特性に悪
影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があると考
えられる。また、上記元素XのうちのPやCは、Nbや
上記元素ZのうちZr、Ti、Hfとの親和力、特に、
Zrとの親和力が強いため、Feを主成分とするbcc
相(体心立方の相)に固溶せず、非晶質相に残留し、B
と同様の役目をし、飽和磁束密度の減少を少なくでき、
なおかつ、比抵抗を上げることができ、透磁率等の軟磁
気特性の向上が可能である。PやCは安価であり、これ
らP及び/又はCを添加することにより、BやNbや元
素Zの添加量を少なくしても、飽和磁束密度や磁歪が劣
化させることなく、透磁率等の軟磁気特性を上げること
ができるので、コストを低く抑えることができる。元素
XとしてBを必須として含むようにすると、軟磁性を向
上できる点で好ましい。
【0027】元素Xの添加量を示すbが、2原子%未満
では、粒界の非晶質相が不安定となるため、十分な添加
効果が得られない。また、bが18原子%を越えると、
B−Nb系、B−M(Zr、Ti、Hf)系およびFe
−B系において、ホウ化物の生成傾向が強くなり、微細
結晶組織を得るための熱処理条件が制約され、良好な軟
磁気特性が得られなくなる。このように元素Xの添加量
を適切にすることで、析出する微細結晶相の平均結晶粒
径を100nm以下、好ましくは30nm以下に調整す
ることができる。従って、上記元素Xの添加量を示すb
は、2原子%〜18原子%とされる。また、元素Xの添
加量を示すbは、8原子%〜13原子%とすることが好
ましい。元素Xの添加量を示すbが13原子%を越える
と上記合金溶湯の急冷直後に磁気特性に悪影響を及ぼす
Fe3B等のFeとBの化合物が発生し易くなり、軟磁
性が低下し始める。
【0028】上記組成式中のNbは、α-Feに対して
ほとんど固溶しないとされるが 、合金を急冷して非晶
質化することで、Nbを過飽和に固溶させ、この後に施
す熱処理によりNbの固溶量を調節して一部結晶化し、
微細結晶相として析出させることで、得られる軟磁性合
金の軟磁気特性を向上させる作用がある。また、微細結
晶相を析出させ、その微細結晶相の結晶粒の粗大化を抑
制するには、結晶粒成長の障害となり得る非晶質相を粒
界に残存させることが必要であると考えられる。さら
に、この粒界非晶質相は、熱処理温度の上昇によってα
−Feから排出されるNbを固溶することで軟磁気特性
を劣化させるFe−Nb系化合物の生成を抑制すると考
えられる。よって、Fe−Nb系の合金に元素Xとして
Bを添加することが好ましい。また、大気雰囲気中で材
料を酸化させることなく、非晶質相を得やすくするため
には、酸化しにくく、かつ非晶質形成能の特に高いNb
を必須として含むようにしている。Nbは、比較的遅い
拡散種であり、Nbの添加は、微細結晶核の成長速度を
小さくする効果、非晶質形成能を持つと考えられ、組織
の微細化に有効である。また、Nbは、酸化物の生成自
由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に安定であり、酸
化物を生成しにくいため、大気雰囲気中で合金溶湯を急
冷する際に材料の酸化を防止するものとして有効であ
る。
【0029】Nbの添加量を示すcが4原子%未満で
は、核成長速度を小さくする効果が小さくなり、結晶粒
径が粗大化して軟磁性が低下する。Nbの添加量を示す
cが8原子%を越えると、Nb−B系またはFe−Nb
系の化合物の生成傾向が大きくなり、特性が低下してし
まう。従って、Nbの添加量としては、4原子%以上8
原子%以下とすることが好ましい。よって、上記の元素
Tと元素XにNbを添加して軟磁性合金を製造する場合
には、製造時の雰囲気全体を大気中の雰囲気で、もしく
は溶湯を急冷する際に使用するるつぼのノズルの先端部
に不活性ガスを供給しつつ大気中で製造することができ
るので、製造条件が容易となり、目的とする軟磁性合金
を安価に製造することができる。また、Nbの添加量を
示すcは、5原子%以上7原子%以下とすることが、得
られる軟磁性合金の磁気的特性を最も好ましい範囲にす
ることができる点で好ましい。
【0030】また、本発明で用いられる合金溶湯には、
微細結晶核の成長速度を小さくする効果と、非晶質形成
能を有し、かつ酸化しにくい元素Mとして、V、Mn、
Mo、Ta、W、Crのいずれか1種または2種以上が
添加されていてもよい。こららの中でも特にMoは、酸
化物の生成自由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に安
定であり、酸化物を生成しにくい。元素Mの添加量を示
すaは、0原子%以上3原子%以下、好ましくは0原子
%以上1原子%以下とされる。元素Mの添加量を示すa
が3原子%を越えると、合金溶湯を急冷直後に均一な非
晶質相ができにくくなり、得られる軟磁性合金の軟磁性
が低くなってしまう。また、元素Mの添加量を示すa
は、0.1原子%以上1原子%以下とすることが、大気
雰囲気中で溶湯ノズルから上記合金溶湯を冷却ロールに
射出し易く、この冷却ロールで急冷直後に均一な非晶質
相を形成し易い点でより好ましい。
【0031】また、本発明で用いられる合金溶湯には、
非晶質形成能を向上させるために元素Zとして、Zr、
Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
も1種以上の元素が添加されていてもよい。上記元素Z
のうちZr、Hfは非晶質形成能が特に高く、Zr、H
fの一部はTiと置換することができる。上記元素Zの
うちのZr、Hfは、α-Feに対して ほとんど固溶し
ないとされるが 、合金を急冷して非晶質化すること
で、Zrと Hfを過飽和に固溶させ、この後に施す熱
処理によりこれら元素の固溶量を調節して一部結晶化
し、微細結晶相として析出させることで、得られる軟磁
性合金の軟磁気特性を向上させる作用がある。また、微
細結晶相を析出させ、その微細結晶相の結晶粒の粗大化
を抑制するには、結晶粒成長の障害となり得る非晶質相
を粒界に残存させることが必要であると考えられる。さ
らに、この粒界非晶質相は、熱処理温度の上昇によって
α−Feから排出されるZr、Hf等の元素Mを固溶す
ることで軟磁気特性を劣化させるFe−Z系化合物の生
成を抑制すると考えられる。また、Zr、Hfのうち、
Hfは非常に高価な元素であるため、原料コストを考慮
すると、Zrを含むことがより好ましい。こうした元素
Zは、比較的遅い拡散種であり、元素Zの添加は、微細
結晶核の成長速度を小さくする効果、非晶質形成能を持
つと考えられ、組織の微細化に有効である。
【0032】上記元素ZのうちAlは半金属元素として
知られており、Feを主成分とする体心立方晶の相に固
溶する。また、Alには、軟磁性合金の電気抵抗を上昇
させ、鉄損を低下させる効果があるが、Alはその効果
が特に大きい。上記元素ZのうちY、希土類元素(L
a、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、T
b、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)は非晶質形成
能を有する元素であり、また、選択する元素の種類は添
加量を調整することにより、軟磁性合金中の非晶質相の
体積分率をコントロールできる。それは、Yや上記希土
類元素は、Feを主成分とするbcc相(体心立方の
相)に固溶せず、非晶質相に残留し、また、用いる元素
を変更することにより、磁歪を制御して、磁気特性を向
上させることができる。
【0033】元素Zの添加量を示すdが1原子%を越え
ると、これらの元素は酸化しやすいために、大気雰囲気
中で上記合金溶湯を急冷するときに材料が酸化し易く、
均一な非晶質相を形成するのが困難となってしまう。ま
た、元素ZとしてY、希土類元素のうち少なくとも1種
以上の元素が添加される場合、元素Zの添加量を示すd
は、0.5原子%以下とすることが、少量の添加で実効
透磁率等の軟磁気特性を向上でき、高価な上記元素M、
NbまたはBの添加量を減らすことができる点で好まし
い。
【0034】尚、上記の元素以外に必要に応じてZn、
Si、Cd、In、Sn、Pb、As、Sb、Bi、S
e、Te、Li、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等の元
素を添加することで軟磁性合金の磁歪を調整することも
できる。その他、上記組成系の軟磁性合金において、
H、N、O、S等の不可避的不 純物については所望の
特性が劣化しない程度に含有していても本発明で用いる
軟磁性合金の組成と同一とみなすことができるのは勿論
である。
【0035】本発明の軟磁性合金は、合金溶湯の組成
を、磁性を担う元素としてFe、Co、Niのうち少な
くとも1種以上の元素Tと、非晶質形成能を高める作用
効果、結晶組織の粗大化を防ぐ効果、および熱処理工程
において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑
制する効果がある元素としてB、P、Cのうちの少なく
とも1種以上の元素Xと、非晶質形成能および軟磁気特
性を向上させる効果が高く、酸化しにくい元素としてN
bとを必須として含み、さらにこれらの元素の含有量を
上記組成比の範囲内に限定し、さらにまた、必要に応じ
て、微細結晶核の成長速度を小さくする効果と非晶質形
成能を有し、かつ酸化しにくい元素としてV、Mn、M
o、Ta、W、Crのうち少なくとも1種以上の元素M
を上記組成比の範囲内で含むようにしたものとすること
により、この合金溶湯を大気雰囲気中で単ロール法など
を用いて急冷しても材料が酸化することがなく、材料が
酸化することに起因する溶融ノズル詰まりを防止でき
る。また、上述したように上記T100-a-b-cabNbc
なる組成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷しても材料が
酸化せず、溶融ノズル詰まりを生じないので、口述する
冷却ロール1や合金溶湯が満たされたるつぼ3を不活性
ガス雰囲気にされたチャンバ内に配置する必要がなく、
また、チャンバ内を不活性ガス雰囲気に保持するための
付帯設備を設けなくても済み、製造コストを低減でき
る。
【0036】また、上述したように上記T100-a-b-ca
bNbcなる組成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷して
も材料が酸化しないので、冷却ロール1やるつぼ3が配
置されたチャンバを大気雰囲気に開放したままの状態
で、あるいは冷却ロール1やるつぼ3をチャンバ内に配
置することなく、上記合金溶湯を急冷して非晶質合金を
主体とする合金を連続的に製造することが可能で、不活
性ガス雰囲気とされたチャンバ内で合金溶湯を急冷する
場合のような1チャージ毎に不活性ガス雰囲気とされて
いたチャンバを開放したり、再度密閉して不活性ガス雰
囲気に置換するという煩雑な作業を行わなくても済み、
作業性が向上し、大量生産し易い。従って本発明の軟磁
性合金は、作業性良く、しかも溶湯ノズル詰まりを生じ
ることなく、大気雰囲気中で合金溶湯を急冷して製造で
きる。
【0037】また、T100-a-b-cabNbcなる組成の
合金に、Zr、Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素の
うちの少なくとも1種以上の元素Zを上記の組成比の範
囲内で添加してT100-a-b-cabNbcdなる組成の
合金としたものにあっては、合金溶湯の組成をT
100-a-b-cabNbcなる組成にしたものより、非晶質
形成能を向上させることができる。
【0038】本発明に係わる磁心は、大気雰囲気中にて
上記のT100-a-b-c-dabNbcなる組成あるいはT
100-a-b-c-dabNbcdなる組成の合金溶湯を急冷
して得られた非晶質を主体とする合金を巻回、打ち抜
き、カッティングもしくは積層した後、熱処理により微
細な結晶粒を析出させてコアとして用いたものである。
この磁心は、大気雰囲気中で上記T100-a-b-c-dab
Nbcなる組成あるいはT100-a-b-c-dabNbcd
る組成の合金溶湯を急冷後、熱処理することにより得ら
れた軟磁性合金薄帯を用いているので、合金溶湯を急冷
するための冷却ロール1等を不活性ガス雰囲気とされた
チャンバに配置しなくても製造でき、また、不活性ガス
雰囲気とするための付帯設備も用いないので、作業性良
く製造でき、低コストとすることができる。
【0039】次に、上述の本発明の軟磁性合金の製造方
法について説明する。図1は、本発明の軟磁性合金の製
造方法の実施に好適に用いられる合金薄帯製造装置の例
を示す概略構成図である。この合金薄帯製造装置は、大
気雰囲気中で回転する冷却ロール1の冷却面1aに上記
のT100-a-b-c-dabNbcなる組成またはT
100-a-b-c-dabNbcd なる組成の合金溶湯を噴出
させ、この合金溶湯を冷却面1aで冷却して合金薄帯を
得るものである。この合金薄帯製造装置は、冷却ロール
1と、合金を保持するるつぼ3の下端部に連接される溶
湯ノズル2と、溶湯ノズル2及びるつぼ3の外周に捲回
・配置された加熱コイル4と、不活性ガスを溶湯ノズル
2の少なくとも先端部にフローするための第1ガスフロ
ー供給手段である第1〜第3のガスフローノズル51、
52、53、54と、冷却ロール1の冷却面1aに向け
て不活性ガスをフローする第2ガスフロー供給手段であ
る第5のガスフローノズル55から基本的に構成されて
いる。
【0040】冷却ロール1は、図示しないモータにより
矢印(反時計)方向へ回転駆動される。冷却ロール1の
冷却面1aは、炭素鋼、例えば JIS S45Cなどの
Fe基合金、または真鍮(Cu−Zn合金)、あるいは
純Cuで構成することが望ましい。冷却ロール1の冷却
面1aが真鍮あるいは純Cuであると、熱伝導性が高い
ことから、冷却効果が高く、溶湯の急冷に適している。
冷却効果を向上させるためには、内部に水冷構造を設け
ることが望ましい。
【0041】図1において、るつぼ3内で溶解された合
金溶湯は、下端部の溶湯ノズル2から冷却ロール1の冷
却面1aに向けて噴出される。るつぼ3の上部は、供給
管7を介してArガスなどのガス供給源8に接続される
と共に、供給管7には、圧力調整弁9と電磁弁10とが
組み込まれ、供給管7において圧力調整弁9と電磁弁1
0との間には圧力計11が組み込まれている。また、供
給管7には補助管12が並列的に接続され、補助管12
には圧力調整弁13、流量調整弁14、流量計15が組
み込まれている。したがって、ガス供給源8からるつぼ
3内にArガスなどのガスを供給して溶湯ノズル2から
溶湯を冷却ロール1に向けて噴出できるようになってい
る。
【0042】合金薄帯の製造時には、大気雰囲気中にて
冷却ロール1を高速で回転させつつ、その頂部付近、も
しくは、頂部よりやや前方に近接配置した溶湯ノズル2
から上記のいずれかの組成の合金溶湯を噴出することに
より、冷却ロール1の表面で急速冷却して固化させつつ
冷却ロール1の回転方向に帯状となして引き出す。溶湯
ノズル2の溶湯吹き出し口は矩形状を有するが、吹出し
幅(冷却ロール1の回転方向の幅)は、0.1〜0.8
mm程度であることが望ましい。0.8mmを超えると十分
な冷却が困難な場合があるからである。
【0043】合金薄帯製造時の冷却ロール1と溶湯ノズ
ル2との間隔は、0.1〜0.8mmの範囲で選択すれば
よい。0.1mm未満では溶湯の噴出が困難となり、溶湯
ノズル2の破損を引き起こすおそれがあるからであり、
また、0.8mmを超えると良好な性状の薄帯製造が困難
となるからである。冷却ロール1と溶湯ノズル2との間
隔が調整できるように、るつぼ3は、図示しない昇降手
段により昇降可能である。冷却ロール1は、合金薄帯製
造開始後から、温度上昇により表面が熱膨張して径が拡
大するため、冷却ロール1と溶湯ノズル2との間隔を製
造開始後に徐々に大きくしていくことが板厚精度の高い
薄帯を製造するためには望ましい。
【0044】また、図1に示すように、冷却ロール1の
回転方向前下方には、薄帯誘導板70とスクレイパー7
2とが備えられている。冷却面1aにおいて溶湯が冷却
されて形成された合金薄帯は、スクレイパー72により
冷却ロール1から剥離されて薄帯誘導板70に案内され
る。従って、スクレイパー72の近傍が、冷却面1aか
ら合金薄帯が剥離する位置1bとなる。
【0045】第1ガスフロー供給手段による不活性ガス
の供給は、溶湯ノズル2を基準として後方側に設置され
る第1および第2のガスフローノズル51、52、前方
側に設置される第3のガスフローノズル53、溶湯ノズ
ル2の先端を囲むように設置される第4のガスフローノ
ズル54からのガスフローによって供給することが望ま
しい。
【0046】図1において、第1のガスフローノズル5
1は、溶湯ノズル2を基準として後方側に設置されるガ
スフロー供給を行うための手段のうちの1つである。こ
の第1のガスフローノズル51は、冷却ロール1の後方
のほぼ接線方向から溶湯ノズル2の先端近傍(以下、パ
ドル生成部)にガスをフローするためのものである。そ
して、第1のガスフローノズル51は、幅5mmの比較的
細いスリットを有し、ある程度速い流速でガスをフロー
する。第2のガスフローノズル52は、後方側に設置さ
れるガスフロー供給を行うための手段のうちのもう1つ
である。この第2のガスフローノズル52は、第1のガ
スフローノズル51からのガスフロー上にガスフロー
し、第1のガスフローノズル51から供給されたガスフ
ローを大気と遮断して、大気が巻き込まれるのを防止す
るガスフローを供給するために、溶湯ノズル2と第1の
ガスフローノズル51との間に設置されている。そし
て、第2のガスフローノズル52は、第1のガスフロー
ノズル51より広い20mmのスリットを有し、第1のガ
スフローより遅い流速でガスフローを行う。また、図1
に示すように、第1および第2のガスフローノズル5
1、52を溶湯ノズル2に近傍に設置しているので、パ
ドル生成部付近に不活性ガスフローが供給されることに
なり、パドル生成部付近の酸素濃度低減効果を向上させ
る。
【0047】第3のガスフローノズル53は、溶湯ノズ
ル2を基準として前方側に設置されるガスフロー供給を
行うための手段のうちの1つである。この第3のガスフ
ローノズル53は、冷却ロール1の回転方向前方からの
大気の巻き込みを防止することを目的とするものであ
る。第3のガスフローノズル53の形状は、第2のガス
フローノズル52と同様であるが、 スリットの幅を
2.5mmと狭くしている。第4のガスフローノズル54
は、溶湯ノズル2の先端を囲むように設置されるガスフ
ロー供給を行うための手段である。この第4のガスフロ
ーノズル54は、溶湯ノズル2の先端を囲むようにガス
をフローするためのものである。そして、第4のガスフ
ローノズル54は、外径6mmのパイプを外径57mm
内径45mmの環状に形成してなる環状パイプからなる
ものである。第4のガスフローノズル54には、その外
周位置と内周位置との中心の位置よりも若干内側の位置
に、外径1.5mmの多数の孔が3.5mmのピッチで
環状に設けられている。
【0048】以上の第1〜第4のガスフローノズル5
1、52、53、54は、単独で用いることは勿論、複
数を組み合わせて使用することができる。パドル生成部
付近の酸素低減効果は、第1および第2のガスフローノ
ズルが最も大きい。第1〜第4のガスフローノズル 5
1、52、53、54には、第1のガスフローノズル5
1について例示するように、圧力調整弁16が接続され
た接続管17を介してガス供給源18に接続される。
【0049】また、第2ガスフロー供給手段による不活
性ガスの供給は、 図1に示すように、冷却ロール1の
冷却面1aに向けてなされるものであって、好ましくは
冷却面1aから合金薄帯が剥離する位置1bから溶湯ノ
ズル2の近傍に設けられた第1のガスフローノズル51
が設けられている位置までの間で行うことが望ましい。
図1において、第2ガスフロー供給手段である第5のガ
スフローノズル55は、冷却面1aと離間して冷却ロー
ル1のほぼ真下に位置しており、冷却面1aを望むよう
に設けられて、冷却面1aに向けてガスをフローできる
ようになっている。第5のガスフローノズル55は、幅
2.5mmの比較的細いスリットを有し、ある程度大きな
流量でガスをフローする。
【0050】第5のガスフローノズルから供給された不
活性ガスは、冷却ロール1の回転により冷却面1a上を
冷却ロール1の回転方向に沿って流れ、第1のガスフロ
ーノズルの近傍に達し、さらに溶湯ノズル2の近傍に流
れ込み、パドル生成部付近の酸素濃度を低減することが
可能となる。このように、冷却ロール1のほぼ真下に
第5のガスフローノズル55を設置し、更に溶湯ノズル
2の周囲に、第1〜第4のガスフローノズル51、5
2、53、54を設置することにより、パドル生成部付
近における酸素濃度の低減を行うことが可能になる。
【0051】また、第5のガスフローノズルを設置する
位置は、冷却ロール1の真下に限られず、合金薄帯が冷
却面1aから剥離する位置1bの近傍から第1のガスフ
ローノズル51が設けられている位置の間にあればよ
い。また、第4のガスフローノズル54は、その外周位
置と内周位置との中心の位置よりも若干内側の位置に、
複数の孔を環状に設けてなるものとすることができる
が、外周位置と内周位置との中心の位置に複数の孔を環
状に設けてなる第4のガスフローノズルとすることや、
上記複数の孔に代えて、環状スリットを設けてなる第4
のガスフローノズルとすることもできる。また、渦巻状
に形成してなる第4のガスフローノズルとし、溶湯ノズ
ル2の先端を2重に取り囲むようにしてもよい。
【0052】図1に示した合金薄帯製造装置を用いて薄
帯を製造するにあたっては、冷却ロール1を回転させる
前から、第1〜第5のガスフローノズル51〜55によ
り不活性ガスを供給することが望ましい。これは、冷却
ロール1回転後に不活性ガスを供給する場合に比べて、
冷却ロール1回転前からガスフローを行った方が、酸素
濃度の低下が速くなるからである。したがって、溶湯ノ
ズル2近傍雰囲気の酸素濃度を測定し、所定の酸素濃度
に達した後に冷却ロール1の回転を行うようにすれば生
産効率上望ましい。
【0053】本発明の製造方法において、第1ガスフロ
ー供給手段による不活性ガスの供給条件としては、流量
200〜1800l/min.、より好ましくは1760l/mi
n.の条件下で行えばよい。それは、流量が200l/min
未満では、 溶湯ノズル2近傍雰囲気の酸素量低減に効
果がなく、一方、1800l/minを超えても、ガスフロ
ーによる周 囲からの大気の巻き込みが原因となり、酸
素濃度低減効果が減じてしまい、供給量に見合う効果が
望めないからである。
【0054】その場合、第1のガスフローノズル51か
らのガスフローである第1のガスフローは、流量330
〜530l/min、 第2のガスフローノズル52からのガ
スフローである第2のガスフローは、流量180〜38
0l/min、第3のガスフローノズル53からのガスフロ
ーである第3のガスフローは、流量150〜350l/mi
n、第4のガスフローノズル54からのガスフローであ
る第4のガスフローは、流量200〜400l/minとす
ることが望ましい。第1〜第4のガスフローのより望ま
しい範囲は、各々、第1のガスフロー;流量380〜4
80l/min、最も好ましくは430l/min、第2のガスフ
ロー;流量230〜330l/min、最も好ましくは28
0l/min、第3のガスフロー;流量150〜350l/mi
n、最も好ましくは250l/min、第4のガスフロー;流
量200〜400l/min流速である。
【0055】本発明の製造方法において、第2ガスフロ
ー供給手段による不活性ガスの供給条件としては、流量
250〜750l/min.、より好ましくは500l/min.の
条件下で行えばよい。それは、流量が250l/min未満
では、 やはり溶湯ノズル近傍雰囲気の酸素量低減に効
果がなく、一方、750l/minを超えても供給量に見合
う効果が望めないからである。従って、第5のガスフロ
ーノズル55からのガスフローである第5のガスフロー
は、流量250〜750l/minとすることが望ましい。
第5のガスフローのより望ましい範囲は、 流量400
〜600l/min、最も好ましくは500l/minである。
【0056】本発明の軟磁性合金の製造方法に用いる不
活性ガスとしては、N2、He、Ar、Kr、Xe、R
nから選ばれる少なくとも2種類の不活性ガスを使用す
ることができ、N2とArであることが望ましい。ま
た、不活性ガスは、第1のガスフローには、第2〜第5
のガスフローよりも重い不活性ガスを使用することが望
ましい。より望ましくは、第1のガスフローとして、空
気よりも重い不活性ガスを使用する。
【0057】なお、各ガスフローノズル51、52、5
3、54、55は、組成により必要に応じてガスフロー
を行えば、足りるものであり、ガスフローなしでも本発
明における軟磁性合金の薄帯は、十分に製造できる。こ
のようにした場合は、さらなる工数とコストの削減が可
能となる。また、図1に示すように、ノズル取り付け板
62は、溶湯ノズル2の位置を基準にして、冷却ロール
1の回転方向の前方から後方に向けて延在するように設
けられている。このノズル取り付け板62には、ノズル
取り付け孔621が設けられている。溶湯ノズル2は、
このノズル取り付け孔621を貫通して、溶湯ノズル2
の溶湯吹き出し部先端部分21が冷却ロール1の冷却面
1aを望むように配置される。るつぼ3は、筒3aに収
納されている。この筒3aは、ノズル取り付け孔621
を塞いで大気の流入を防止している。更に、ノズル取り
付け板62には、第3のガスフローノズル53が貫通す
るための孔622が設けられている。第3のガスフロー
ノズル53は、この孔622を貫通してノズルの先端が
冷却ロール1の冷却面を望むように配置される。この第
3のガスフローノズル53により、不活性ガスフローを
ロール回転方向前方からパドル生成部付近に向けて供給
する。
【0058】ノズル取り付け板62が、冷却ロール1の
冷却面1aに接近するように設けられるので、パドル生
成部付近の空間が狭くなる。このような狭い空間に向け
て、第1〜4のガスフローノズル51、52、53、5
4によって、常に多量の不活性ガスが供給されるので、
パドル生成部付近における不活性ガスの濃度が非常に高
くなり、逆に酸素濃度は著しく低減される。図1に示す
ように、ノズル取り付け板62は、冷却ロール1の回転
方向前方から上記冷却面に向けて平坦に延びているが、
これに限られず、冷却ロール1の回転方向前方から冷却
面1aに向けて湾曲しつつ延びるノズル取り付け板であ
っても良い。
【0059】図1に示した合金薄帯製造装置を用いて本
発明の軟磁性合金からなるコアを備えた磁心を製造する
には、この合金薄帯製造装置を室温程度の大気雰囲気中
に設置し、溶湯ノズル(溶湯射出用ノズル)2の少なく
とも溶湯吹き出し部先端部分21に第1〜第4のガスフ
ローノズル51〜54からそれぞれ不活性ガスをフロー
するとともに冷却ロール1の冷却面1aに向けて第5の
ガスフローノズル55から不活性ガスをフローしつつ、
上記のいずれかで示される組成式を示す合金溶湯を溶湯
ノズル2から冷却ロール1の冷却面1aに射出して急冷
し、非晶質を主体とする合金薄帯を得る。ついで、作製
した合金薄帯を巻回、打ち抜き、カッティングあるいは
積層し、熱処理することにより、上記合金薄帯の非晶質
相の中の一部が結晶化し、非晶質相と、平均粒径100
nm以下の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの結晶
粒)からなる微細結晶相とが混合した組織が得られ、目
的とする軟磁性合金からなるコアが備えられた磁心が得
られる。
【0060】熱処理により平均結晶粒径100nm以下
の微細なbcc構造の結晶粒からなる微細結晶相が組織
の少なくとも50%以上析出したのは、急冷状態の非晶
質合金薄帯は非晶質相を主体とする組織となっており、
これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が10
0nm以下のFeを主成分とする体心立方構造の結晶粒
からなる微細結晶相が析出するからである。このbcc
構造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析出す
る温度は、合金の組成によるが480〜550℃(75
3K〜823K)程度である。またこのFeの微細結晶
相が析出する温度よりも高い温度では、Fe3B、ある
いは合金にZrが含まれる場合にはFe3Zr等の軟磁
気特性を悪化させる化合物相が析出する。このような
化合物相が析出する温度は、合金の組成によるが740
〜810℃(1013K〜1083K)程度である。
【0061】したがって、本発明において、非晶質合金
薄帯等を熱処理する際の保持温度(熱処理温度)は48
0℃〜810℃(753K〜1083K)の範囲で、体
心立方構造を有するFeの結晶粒を主成分とする微細結
晶相が好ましく析出しかつ上記化合物相が析出しないよ
うに、合金の組成に応じて好ましく設定される。上記の
熱処理温度まで昇温するときの昇温速度は、20〜20
0℃/分(20〜200K/分)の範囲が好ましく、4
0〜200℃/分(40〜200K/分)の範囲とする
のがより好ましい。昇温速度が遅いと製造時間が長くな
るので昇温速度は速い方が好ましいが、加熱装置の性能
上、200℃/分程度が上限とされる。また、非晶質合
金薄帯等を上記保持温度に保持する時間は、0〜180
分間とすることができ、合金の組成によっては0分、す
なわち昇温後直ちに降温させて保持時間無しとしても、
目的とする効果を得ることができる。また、保持時間は
180分より長くしても磁気特性は向上せず、製造時間
が長くなり生産性が悪くなるので好ましくない。
【0062】本実施形態の軟磁性合金の製造方法によれ
ば、上記のT100-a-b-cabNbcなる組成あるいはT
100-a-b-cabNbcdなる組成の合金溶湯を用いて
いるので、この合金溶湯を大気雰囲気中で単ロール法な
どを用いて急冷しても材料が酸化することがなく、材料
が酸化することに起因する溶融ノズル詰まりを防止で
き、また、溶融ノズル詰まりを生じないので、冷却ロー
ル1やるつぼ3を不活性ガス雰囲気としたチャンバ内に
配置にする必要がなく、チャンバ内を不活性ガス雰囲気
に保持するための付帯設備を設けなくても済み、軟磁性
合金の製造コストを低減できる。また、上述したように
上記T100-a-b-cabNbcなる組成あるいはT100-a-
b-cabNbcdなる組成の合金溶湯は大気雰囲気中
で急冷しても材料が酸化しないので、冷却ロール1やる
つぼ3が配置されたチャンバを大気雰囲気に開放したま
まの状態で、あるいは冷却ロール1やるつぼ3をチャン
バ内に配置することなく、上記合金溶湯を急冷して非晶
質合金を主体とする合金を連続的に製造することが可能
で、不活性ガス雰囲気とされたチャンバ内で合金溶湯を
急冷する場合のような1チャージ毎に不活性ガス雰囲気
とされていたチャンバを開放したり、再度密閉して不活
性ガス雰囲気に置換するという煩雑な作業を行わなくて
も済み、作業性を向上でき、軟磁性合金を大量生産でき
る。従って本実施形態の軟磁性合金の製造方法によれ
ば、作業性良く、しかも溶湯ノズル詰まりを生じること
なく、大気雰囲気中で合金溶湯を急冷でき、この後熱処
理を施すことにより、軟磁性が良好な軟磁性合金を低コ
ストで製造できる。
【0063】なお、上記の実施形態においては、本発明
の軟磁性合金を図1に示す合金薄帯製造装置を用いて製
造する場合について説明したが、本発明の軟磁性合金は
図18に示した合金薄帯製造装置を用いて製造すること
も可能で、その場合、図18のチャンバ100は不活性
ガス雰囲気とする必要がなく、あるいは、るつぼ102
や冷却ロール101等はチャンバ100内に配置されて
いなくてもよい。
【0064】
【実施例】以下、実施例により更に具体的に説明する。 (実験例1) (合金薄帯試料の作製)Feを82.5〜83原子%
と、Nbを5.5〜6.5原子%と、元素XとしてBを
9.5〜10.5原子%とPを0〜0.5原子%とCを
0〜0.5原子%の範囲で添加した下記表1に示す原料
を調整し、それをN2ガス雰囲気中で高周波溶解し、溶
けた原料を鋳型に流し込み母合金を得た。室温で、1.
01325×105パスカルの大気雰囲気中において、
図1に示す合金薄帯製造装置の溶湯ノズル2内で上記母
合金を高周波溶解した合金溶湯を溶湯吹き出し部先端部
分21より高速回転している銅ロール1の冷却面1aに
吹き出させて急冷する液体急冷法を用いて、各種の非晶
質合金薄帯を得た。なお、第1〜第4のガスフローノズ
ル51、52、53、54は、本実験例において作動さ
せず、ガスフローなしで合金薄帯の作製を行った。次に
得られた各種の非晶質合金薄帯に、昇温速度180゜C
/分(180K/分)、熱処理温度650゜C(923
K)、この熱処理温度での保持時間は5分で結晶化熱処
理を行い、厚さ20μm、幅1mm、平均結晶粒径30
nm以下のbcc構造のFeの結晶粒(bccFe結晶
粒)を主体とする各種の合金薄帯試料(サンプルNo.
1〜No.7)を得た。また、上記方法と同様にして表
2に示す各種の合金薄帯(サンプルNo.8〜10)を
得た。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】(測定)得られた各種の合金薄帯試料(サ
ンプルNo.1〜10)の1kHzにおける実効透磁率
(μ’)、保磁力(Hc)、飽和磁束密度(Bs)につ
いて測定したその結果を表1、表2にあわせて示す。ま
た、サンプルNo.8〜10の合金薄帯試料について
は、周波数50Hz、励起磁場1.33Tでのコアロス
(W1.33 /50)についても測定した。その結果を表2に
合わせて示す。ここでの実効透磁率の測定は、インピー
ダンスアナライザーを用い、測定条件は5mOe(40
0mA/m)、1kHzとした。保磁力及び飽和磁束密
度は、直流B−Hループトレーサを用いて測定した。表
1に示した結果からFeを82.5〜83原子%と、N
bを5.5〜6.5原子%と、元素XとしてBを9.5
〜10.5原子%とPを0〜0.5原子%とCを0〜
0.5原子%の範囲で含まれる合金溶湯を大気雰囲気中
で冷却ロールに射出して急冷後、熱処理して得られたサ
ンプルNo.1〜7の合金薄帯は、いずれも1kHzに
おける実効透磁率が18500以上、保磁力が8A/m
以下、飽和磁束密度が1.51T以上得られており、軟
磁性合金として優れた磁気特性を有していることがわか
る。また、特に、サンプルNo.5、No.7のもの
は、1kHzにおける実効透磁率が28000以上、保
磁力が5.84A/m以下、飽和磁束密度が1.51T
以上得られており、優れた特性が得られていることがわ
かる。また、表2に示したサンプルNo.8〜10の合
金薄帯(Fe84Nb610なる組成、Fe83.5Nb6Mo
0.510なる組成、Fe83.5Nb6.510なる組成)にお
いても、1kHzにおける実効透磁率が28300以
上、保磁力が6.42A/m以下、飽和磁束密度が1.
54T以上、コアロス(W1.33/50)が1.68×10
-1Wkg-1 以下の値が得られた。中でもサンプルN
o.10のFe83 .5Nb6.510なる組成の合金薄帯に
関しては、1kHzにおける実効透磁率(μ’)が35
900、保磁力(Hc)が5.36A/m、コアロス
(W1.33/50)が1.13×10-1Wkg-1と優れた特
性が得られていることがわかる。
【0068】(実験例2)FeとMoとBとNbの添加
量を変更した原料を調整し、それをN2ガス雰囲気中で
高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し込み母合金を得
た。室温で、大気雰囲気中において、図1に示す合金薄
帯製造装置の溶湯ノズル2内で上記母合金を高周波溶解
した合金溶湯を溶湯吹き出し部先端部分21より高速回
転している銅ロール1の冷却面1aに吹き出させて急冷
する液体急冷法を用いて、各種の合金薄帯を得た。な
お、実験例1と同様、第1〜第4のガスフローノズル5
1、52、53、54からは、ガスフローを行わずに本
実験例も非晶質合金薄帯を作製した。次に得られた各種
の非晶質合金薄帯に、昇温速度180゜C/分(180
K/分)、熱処理温度650゜C(923K)、この熱
処理温度での保持時間は5分で結晶化熱処理を行い、厚
さ20μm、幅1mm、平均結晶粒径30nm以下のb
cc構造のFeの結晶粒(bccFe結晶粒)を主体と
する各種の合金薄帯試料を得た。
【0069】(測定)得られた各種の合金薄帯試料の1
kHzにおける実効透磁率(μ’)、保磁力(Hc)、
飽和磁束密度(Bs)について上記実験例1と同様にし
て測定した。また、得られた各種の合金薄帯試料の磁歪
定数(λs)を測定した。これらの結果を図2乃至図1
5に示す。図2〜図5は、Nbの添加量が5原子%であ
る軟磁性合金薄帯の諸特性を示す三角組成図である。図
6〜図9は、Nbの添加量が5.5原子%である軟磁性
合金薄帯の諸特性を示す三角組成図である。図10〜図
13は、Nbの添加量が6.0原子%である軟磁性合金
薄帯の諸特性を示す三角組成図である。図14〜図15
はNbの添加量が6.5原子%である軟磁性合金薄帯の
諸特性を示す三角組成図である。なお、図2、図6、図
10、図14に示した三角組成図中の数値は、μ’/1
000の値であり、図5、図9、図13は、λs×10
-6の値である。
【0070】図2は、Nbの添加量を5原子%と固定し
たFe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の実効透
磁率を示す三角組成図であるが、Moの添加量が1原子
%のの場合の方がMoの添加量が0.5原子%や、2原
子%の場合よりも高い実効透磁率が得られていることが
わかる。図3は、Nbの添加量を5原子%と固定したF
e−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束密
度を示す三角組成図であるが、Moの添加量が1原子%
と、0.5原子%の場合の方がMoの添加量が2原子%
の場合よりも高い飽和磁束密度が得られていることがわ
かる。図4は、Nbの添加量を5原子%と固定したFe
−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を示す
三角組成図であるが、Moの添加量が1原子%のとき保
磁力が低いことがわかる。図5は、Nbの添加量を5原
子%と固定したFe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯
試料の磁歪定数を示す三角組成図であるが、1×10-6
以下の小さい値であることがわかる。
【0071】図6は、Nbの添加量を5.5原子%と固
定したFe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の実
効透磁率を示す三角組成図であるが、Moの添加量が
0.5原子%や、1原子%とした場合の方が、Moを添
加しない場合よりも高い実効透磁率が得られている。ま
た、Moの添加量が0.5原子%や、1原子%とした場
合は実効透磁率が10000を越えるものが得られてお
り、また、Moの添加量が0.5原子%の場合の方が1
原子%の場合よりも高い実効透磁率が得られており、2
1800を越えるものが得られている。図7は、Nbの
添加量を5.5原子%と固定したFe−Mo−B−Nb
系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束密度を示す三角組成図
であるが、Moを添加量した場合の方がMoを添加しな
い場合よりも飽和磁束密度がわずかであるが下がる傾向
があるが、Moの添加量が0.5原子%や、1原子%M
oを添加量した場合はいずれも飽和磁束密度が1.5T
以上を示していることがわかる。図8は、Nbの添加量
を5.5原子%と固定したFe−Mo−B−Nb系軟磁
性合金薄帯試料の保磁力を示す三角組成図であるが、M
oを添加した場合の方がMoを添加しない場合に比べて
保磁力を低くできることがわかる。図9は、Nbの添加
量を5.5原子%と固定したFe−Mo−B−Nb系軟
磁性合金薄帯試料の磁歪定数を示す三角組成図である
が、B濃度が11原子%以下で10原子%以上の組成範
囲で1×10-6 以下であることがわかる。
【0072】図10は、Nbの添加量を6原子%と固定
したFe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の実効
透磁率を示す三角組成図であるが、Moの添加量が0.
5原子%のときに高い実効透磁率が得られていることが
わかる。図11は、Nbの添加量を6原子%と固定した
Fe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束
密度を示す三角組成図であるが、Moの添加量が0.5
原子%の場合や、Moの添加量が1原子%の場合は、い
ずれも飽和磁束密度が1.5T以上を示していることが
わかる。図12は、Nbの添加量を6原子%と固定した
Fe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を
示す三角組成図であるが、Moを添加したものは、Mo
の添加量が0原子%のものに比べて保磁力が低くなって
いることから、Moの添加は保磁力を下げるのに有効で
あることがわかる。図13は、Nbの添加量を6原子%
と固定したFe−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料
の磁歪定数を示す三角組成図であるが、Bが10原子%
程度では1×10-6以下の値であることがわかる。図1
4は、Nbの添加量を6.5原子%と固定したFe−M
o−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の実効透磁率を示す
三角組成図であるが、Moを添加しても高い実効透磁率
が得られていることがわかる。図15は、Nbの添加量
を6.5原子%と固定したFe−Mo−B−Nb系軟磁
性合金薄帯試料の保磁力を示す三角組成図であるが、M
oを添加したものは、良好な値を示しており、特に、B
が9原子%の試料についてはMoを添加した方が低い保
磁力を示していることがわかる。図2〜図15から、N
bが低濃度、特にNbが5.5原子%以下になると、軟
磁気特性(保磁力、実効透磁率)に対するMoの添加効
果が大きくなることがわかる。
【0073】(実験例3)Fe84Nb79なる組成にな
るように原料を調整した以外は、実験例1と同様にして
Fe84Nb79なる組成の軟磁性合金薄帯試料を2ロッ
ト得た。また、Fe83Nb6Mo0.510.5なる組成にな
るように原料を調整した以外は、実験例1と同様にして
Fe83Nb6Mo0.510.5なる組成の軟磁性合金薄帯試
料を2ロット得た。得られたFe84Nb79なる組成の
軟磁性合金薄帯試料と、Fe83Nb6Mo0 .510.5なる
組成の軟磁性合金薄帯試料のそれぞれのロットの50H
zにおけるコアロスを凌和電子株式会社製の交流磁化試
験装置(MMS03759を用いて測定した。ここでの
測定条件は、磁場(Bm)は、1乃至1.5Tの範囲と
した。その結果を図16に示す。図16に示した結果か
らMoが添加された合金薄帯試料(Fe83Nb6Mo0.5
10.5なる組成)と、Moが添加されていない合金薄帯
試料(Fe84Nb79なる組成)とは、各ロットの平均
値はほぼ同等の値が得られていることがわかる。
【0074】また、Fe84Nb610なる組成になるよ
うに原料を調整した以外は、実験例1と同様にしてFe
84Nb610なる組成の軟磁性合金薄帯試料を2ロット
得た。また、Fe83.5Nb6Mo0.510なる組成になる
ように原料を調整した以外は、実験例1と同様にしてF
83.5Nb6Mo0.510なる組成の軟磁性合金薄帯試料
を2ロット得た。また、Fe83.5Nb6.510なる組成
になるように原料を調整した以外は、実験例1と同様に
してFe83.5Nb6.510なる組成の軟磁性合金薄帯試
料を2ロット得た。得られた各種の組成の軟磁性合金薄
帯試料のそれぞれのロットの50Hzにおけるコアロス
を凌和電子株式会社製の交流磁化試験装置(MMS03
759)を用いて測定した。ここでの測定条件は、磁場
(Bm)は、1乃至1.5Tの範囲とした。その結果を
図17に示す。図17に示した結果からMoが添加され
た合金薄帯試料(Fe83.5Nb6Mo0 .510なる組成)
は、他のものに比べて若干コアロスが大きいものの、実
用上十分に小さな値となっていることがわかる。
【0075】(実験例4)FeとBとNbの添加量を変
更した原料を調整し、それをN2ガス雰囲気中で高周波
溶解し、溶けた原料を鋳型に流し込み母合金を得た。室
温で、大気雰囲気中において、図1に示す合金薄帯製造
装置の溶湯ノズル2内で上記母合金を高周波溶解した合
金溶湯を溶湯吹き出し部先端部分21より高速回転して
いる銅ロール1の冷却面1aに吹き出させて急冷する液
体急冷法を用いて、各種の非晶質合金薄帯を得た。な
お、実験例1と同様、第1〜第4のガスフローノズル5
1、52、53、54からは、ガスフローを行わずに本
実験例も非晶質合金薄帯を作製した。次に得られた各種
の非晶質合金薄帯に、昇温速度180゜C/分(180
K/分)、熱処理温度650゜C(923K)〜670
℃(943K)、この熱処理温度での保持時間は5分で
結晶化熱処理を行い、厚さ20μm、幅1mm、平均結
晶粒径30nm以下のbcc構造のFeの結晶粒(bc
cFe結晶粒)を主体とする各種の合金薄帯試料を得
た。
【0076】(測定)得られた各種の合金薄帯試料の1
kHzにおける実効透磁率(μ’)、保磁力(Hc)、
飽和磁束密度(Bs)、残留磁束密度(Br)について
上記実験例1と同様にして測定した。また、得られた各
種の合金薄帯試料の磁歪定数(λs)を測定した。ま
た、得られた各種の合金薄帯試料の50Hzにおけるコ
アロス(W1.33/50)を凌和電子株式会社製の交流磁化
試験装置(MMS03759)を用いて測定した。ここ
での測定条件は、磁場(Bm)は、1.33Tとした。
これらの結果を図19乃至図24に示す。図19〜図2
4は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯の諸特性を示す
三角組成図である。なお、図19に示した三角組成図中
の数値は、μ’/1000の値であり、図24は、λs
×10-6の値である。
【0077】図19は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄
帯試料の実効透磁率を示す三角組成図であるが、大気雰
囲気中でFe−B−Nb系軟磁性合金薄帯を製造する場
合、Nbの添加量が7at%付近であっても高い実効透
磁率が得られており、また、Nbの添加量が5.5at
%になると実効透磁率が低下する傾向があることがわか
る。また、Bの添加量が多くなると、非晶質化(アモル
ファス化)し易い傾向がある。また、Nbの添加量が6
at%以上になると、1kHzにおける実効透磁率が3
0000を越えるものが多く得られており、特に、Bの
添加量が9.0at%〜10.0at%のときに、Nb
の添加量が6.5at%〜6.7at%であると1kH
zにおける実効透磁率が31700〜39900の範囲
のものが得られており、軟磁性が優れた合金薄帯とでき
ることがわかる。
【0078】図20は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄
帯試料の保磁力を示す三角組成図であるが、Nbの添加
量が少なくなると保磁力が増加する傾向があることがわ
かる。また、Bの添加量が多くなると、非晶質化(アモ
ルファス化)し易い傾向がある。また、Nbの添加量が
6.5at%〜6.7at%で、Bの添加量が9.3a
t%〜9.5at%の範囲では保磁力が4.93A/m
〜5.81A/mであり、軟磁性が優れた合金薄帯が得
られることがわかる。
【0079】図21は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄
帯試料の飽和磁束密度を示す三角組成図であり、図22
は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の残留磁束密
度を示す三角組成図である。図21からNbの添加量が
少なくなると飽和磁束密度が高くなるが、図19の説明
で述べたようにNbの添加量が5.5at%になると実
効透磁率が低下してしまうことがわかる。また、Bの添
加量が多くなると、飽和磁束密度が低下してしまうこと
がわかる。図19と図21からNbの添加量が6.5a
t%〜6.7at%で、Bの添加量が9.3at%〜
9.5at%の範囲では、1.55T以上の飽和磁束密
度が得られ、1kHzにおける実効透磁率が31700
〜39900の範囲のものが得られており、軟磁性が優
れた合金薄帯とできることがわかる。
【0080】図23は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄
帯試料のコアロスを示す三角組成図であるが、Nbの添
加量が少なくなるとコアロスが低下する傾向があること
がわかる。また、Bの添加量が多くなると、非晶質化
(アモルファス化)し易い傾向がある。また、Bの添加
量が9.3at%〜9.5at%のときに、Nbの添加
量が6.5at%〜6.7at%であると、コアロスが
0.101〜0.129W/kgの範囲のものが得られ
ていることがわかる。
【0081】図24は、Fe−B−Nb系軟磁性合金薄
帯試料の磁歪定数を示す三角組成図であるが、Nbの添
加量が一定である場合、Bの添加量が増加すると、磁歪
が増加する傾向にあることがわかる。また、Bの添加量
が8.5at%〜9.5at%のときに、Nbの添加量
が6.0at%〜7.0at%であると磁歪が0.31
×10-6以下の小さい値を示すことがわかる。図19〜
図24からV、Mn、Mo、Ta、W、Crのうち少な
くとも1種以上の元素を添加していないFe−B−Nb
系軟磁性合金薄帯を大気雰囲気中で製造しても、高い飽
和磁束密度と優れた軟磁気特性を有する軟磁性合金を提
供できることがわかる。
【0082】次に、FeMB系の合金にPを添加して製
造した母合金の溶湯とPを含まない母合金の溶湯から急
冷法によりFeMBP系の合金薄帯を複数製造し、P添
加量の変化に伴う磁気特性の変化を測定した例について
説明する。 (実験例5) (合金薄帯試料の作製)Feを83〜84.5原子%
と、Nbを6〜6.5原子%と、元素XとしてBを6〜
10.5原子%とPを0〜2原子%(Pを添加したもの
はBに対し4.8%(サンプルNo.15)〜21%
(サンプルNo.24)置換して添加)の範囲で添加し
た下記表3に示す原料を調整し、それをArガス雰囲気
中で高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し込み母合金
を得た。室温で、1.01325×105Paの大気雰囲
気中において、図1に示す合金薄帯製造装置を用いて、
各種の合金薄帯を得た。なお、第1〜第4のガスフロー
ノズル51、52、53、54は、本実験例において作
動させず、ガスフローなしで合金薄帯の作製を行った。
次に得られた各種の合金薄帯に、昇温速度180℃/分
(180K/分)、熱処理温度923K(650℃)〜
973K(675℃)、この熱処理温度での保持時間を
5分として熱処理を行い、厚さ20μm、幅15mmの
各種の合金薄帯試料(サンプルNo.11〜No.2
7)を得た。
【0083】(試料の説明)試料11、14、17、2
0、25はPが無添加の合金薄帯である。また、これら
の試料15、16は、BとPの合計(b+c)が10.
5原子%である合金薄帯である。
【0084】 (測定)得られた各種の合金薄帯試料
(サンプルNo.11〜No.27)の1kHzにおけ
る実効透磁率(μ’)、保磁力(Hc)、飽和磁束密度
(Bs)及び周波数50Hz、励起磁場1.33Tでの
コアロス(W1.33/50)について測定した。その結果を
表3に示す。尚、実効透磁率の測定は、インピーダンス
アナライザーを用い、測定条件は5mOe(400mA
/m)、1kHzとした。保磁力及び飽和磁束密度は、
直流B−Hループトレーサを用いて測定した。コアロス
(鉄損)は、周波数50Hz、励起磁界1.33Tの条
件で測定した。
【0085】
【表3】
【0086】表3から明らかなように、飽和磁束密度は
どの試料でも1.55T以上を示している。特に、サン
プルNo.26及び27は、1.6T以上の高い飽和磁
束密度を示した。サンプルNo.26、27はFeを8
4.5原子%含むために飽和磁束密度が向上したものと
考えられる。次に透磁率については、サンプル19、2
1、23、24、26、27の透磁率が40000を越
えており、極めて高い透磁率を示している。また、上記
以外のサンプルについても、透磁率が30000以上を
示しており、優れた軟磁気特性を示すことがわかる。
【0087】次に保磁力については、どのサンプルでも
8A/m(0.1 Oe)以下を示し、軟磁気特性が優れ
ていることがわかる。そして、コアロスについては、サ
ンプルNo.14〜17で0.1W/kgを越えてい
る。試料14及び17はPが無添加であり、コアロスが
高くなったものと考えられる。上記以外のサンプルにつ
いては、多くのものがコアロスにおいて0.1W/kg
以下を示しており、極めて低いコアロスを示すことがわ
かる。更に表3に示す結果から見て、FeNbB系の合
金組成に対しPを規定量添加するならば、磁気特性を向
上させることができ、コアロスを減少させることができ
る効果を得られることを確認した。具体的にはサンプル
No.12〜13は、Fe84Nb610なる組成系(サ
ンプルNo.11)のBの一部をそれぞれ5%、10%
Pに置換したFeNbBPなる組成系のものであるが、
Bの一部をPに置換してもサンプルNo.11と同等以
上の飽和磁束密度を示すことができ、また、サンプルN
o.11と同等のコアロスを示すことができるうえ、透
磁率についてはサンプルNo.11よりも優れた値を示
すことができる。また、Pは安価であるので、Bの添加
量を少なくしても、飽和磁束密度やコアロスを劣化させ
ることなく、透磁率等の軟磁気特性を上げることがで
き、しかもコストを低く抑えることができる。
【0088】また、サンプルNo.15〜16は、Fe
83Nb6.510.5なる組成系(サンプルNo.14)の
Bの一部をそれぞれ4.8%、9.5%Pに置換したF
eNbBPなる組成系のものであるが、Bの一部をPに
置換してもサンプルNo.14と同等の飽和磁束密度を
示すことができ、また、サンプルNo.14より低いコ
アロスを示すことができるうえ、透磁率についてはサン
プルNo.14よりも優れた値を示すことができ、しか
もコストを低く抑えることができる。また、サンプルN
o.18〜19は、Fe83.5Nb6.510なる組成系
(サンプルNo.17)のBの一部をそれぞれ5%、1
0%Pに置換したFeNbBPなる組成系のものである
が、Bの一部をPに置換してもサンプルNo.17と同
等の飽和磁束密度を示すことができ、また、サンプルN
o.17より低いコアロスを示すことができるうえ、透
磁率についてはサンプルNo.17よりも優れた値を示
すことができ、しかもコストを低く抑えることができ
る。また、サンプルNo.21〜24は、Fe84Nb
6.59.5なる組成系(サンプルNo.20)のBの一部
をそれぞれ5%、10.1%、16%、21%Pに置換
したFeNbBPなる組成系のものであるが、Bの一部
をPに置換してもサンプルNo.20よりも優れた飽和
磁束密度を示すことができ、また、サンプルNo.20
より低いコアロスを示すことができるうえ、透磁率につ
いてはサンプルNo.20よりも優れた値を示すことが
でき、しかもコストを低く抑えることができる。また、
サンプルNo.26〜27は、Fe84.5Nb6.59なる
組成系(サンプルNo.25)のBの一部をそれぞれ
5.6%、11%Pに置換したFeNbBPなる組成系
のものであるが、Bの一部をPに置換してもサンプルN
o.25よりも優れた飽和磁束密度を示すことができ、
また、サンプルNo.25より低いコアロスを示すこと
ができるうえ、透磁率についてはサンプルNo.25よ
りも優れた値を示すことができ、しかもコストを低く抑
えることができる。
【0089】上記の結果からFeNbB系の組成系にお
いてBの一部をPに置換して添加する場合、置換量を
4.8%〜21%とすることで優れた磁気特性が得られ
ることが確認できた。次に、これらの表3に示すFeN
bBなる組成系に対しPに加えて希土類元素を規定量添
加した組成系(Fe、Nb、B、P、希土類元素の添加
量はいずれも本発明の範囲内である)の磁気特性試験を
行ったところ磁気特性が劣化しないことを確認した。次
に、先の表3に示すFeNbBなる組成系のNbの一部
をZrにて置換したFeNbZrB(Fe、Nb、Z
r、Bの添加量はいずれも本発明の範囲内である。)な
る組成系に対し、Pを添加した組成系の磁気特性試験を
行ったところ、FeZrNbB系の合金組成に対しPを
規定量添加(Pの添加量は本発明の範囲内)するなら
ば、磁気特性を向上させることができ、コアロスを減少
させることができることがわかった。
【0090】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、上記T
100-a-b-cabNbcなる組成あるいはT100-a-b-ca
bNbcdなる組成の合金溶湯を用いるので、大気雰
囲気中で急冷しても材料が酸化せず、溶融ノズル詰まり
を生じないので、冷却ロールや合金溶湯が満たされたる
つぼが配置されたチャンバ内を不活性ガス雰囲気にする
必要がなく、チャンバ内を不活性ガス雰囲気に保持する
ための付帯設備を設けなくても済み、製造コストを低減
できる。また、上述したように上記T100-a-b-cab
Nbcなる組成あるいはT100-a- b-cabNbcdなる
組成の合金溶湯は大気雰囲気中で急冷しても材料が酸化
しないので、冷却ロールやるつぼが配置されたチャンバ
を大気雰囲気に開放したままの状態で、あるいは冷却ロ
ールやるつぼをチャンバ内に配置することなく、上記合
金溶湯を急冷して非晶質合金を主体とする合金を連続的
に製造することが可能で、不活性ガス雰囲気とされたチ
ャンバ内で合金溶湯を急冷する場合のような1チャージ
毎に不活性ガス雰囲気とされていたチャンバを開放した
り、再度密閉して不活性ガス雰囲気に置換するという煩
雑な作業を行わなくても済み、作業性が向上し、大量生
産し易い。従って本発明によれば、作業性良く、しかも
溶湯ノズル詰まりを生じることなく、大気雰囲気中で合
金溶湯を急冷して、特性が優れた軟磁性合金を提供でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の軟磁性合金の製造方法の実施に好適
に用いられる合金薄帯製造装置の例を示す概略構成図。
【図2】 Nbの添加量を5原子%と固定したFe−M
o−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の1kHzにおける
実効透磁率を示す三角組成図。
【図3】 Nbの添加量を5原子%と固定したFe−M
o−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束密度を示
す三角組成図。
【図4】 Nbの添加量を5原子%と固定したFe−M
o−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を示す三角
組成図。
【図5】 Nbの添加量を5原子%と固定したFe−M
o−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の磁歪定数を示す三
角組成図。
【図6】 Nbの添加量を5.5原子%と固定したFe
−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の1kHzにお
ける実効透磁率を示す三角組成図。
【図7】 Nbの添加量を5.5原子%と固定したFe
−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束密度
を示す三角組成図。
【図8】 Nbの添加量を5.5原子%と固定したFe
−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を示す
三角組成図。
【図9】 Nbの添加量を5.5原子%と固定したFe
−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の磁歪定数を示
す三角組成図。
【図10】 Nbの添加量を6原子%と固定したFe−
Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の1kHzにおけ
る実効透磁率を示す三角組成図。
【図11】 Nbの添加量を6原子%と固定したFe−
Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽和磁束密度を
示す三角組成図。
【図12】 Nbの添加量を6原子%と固定したFe−
Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を示す三
角組成図。
【図13】 Nbの添加量を6原子%と固定したFe−
Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の磁歪定数を示す
三角組成図。
【図14】 Nbの添加量を6.5原子%と固定したF
e−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の1kHzに
おける実効透磁率を示す三角組成図。
【図15】 Nbの添加量を6.5原子%と固定したF
e−Mo−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保磁力を示
す三角組成図。
【図16】 Fe84Nb79なる組成の合金薄帯試料
と、Fe83Nb6Mo0 .510.5なる組成の合金薄帯試料
のコアロスを示す図。
【図17】 Fe84Nb610なる組成の合金薄帯試料
と、Fe83.5Nb6Mo0.510なる組成の合金薄帯試料
と、Fe83.5Nb6.510なる組成の合金薄帯試料のコ
アロスを示す図。
【図18】 単ロール法を用いる従来の軟磁性合金の製
造に用いられる合金薄帯製造装置の要部を示す図。
【図19】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の実
効透磁率を示す三角組成図。
【図20】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の保
磁力を示す三角組成図。
【図21】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の飽
和磁束密度を示す三角組成図。
【図22】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の残
留磁束密度を示す三角組成図。
【図23】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料のコ
アロスを示す三角組成図。
【図24】 Fe−B−Nb系軟磁性合金薄帯試料の磁
歪定数を示す三角組成図。
【符号の説明】
1・・・冷却ロール、2・・・溶湯ノズル(溶湯射出用ノズ
ル)、3・・・るつぼ、21・・・溶湯吹き出し部先端部分、
51・・・第1のガスフローノズル、52・・・第2のガスフ
ローノズル、53・・・第3のガスフローノズル、54・・・
第4のガスフローノズル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渋谷 隆光 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式 会社内 Fターム(参考) 5E041 AA05 AA06 AA07 BD03 CA01 CA02 CA05 HB11 HB15 NN01 NN12 NN13 NN14

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金
    溶湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処
    理により微細な結晶粒を析出させてなることを特徴とす
    る軟磁性合金。 T100-a-b-cabNbc 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
    の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
    うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
    のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、組成比を示
    すa、b、cは原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、
    4≦c≦8である。
  2. 【請求項2】 大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金
    溶湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金に熱処
    理により微細な結晶粒を析出させてなることを特徴とす
    る軟磁性合金。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
    の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
    うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
    のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
    Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
    も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
    は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
    0<d≦1である。
  3. 【請求項3】 前記組成式中の組成比を示すa、b、c
    は原子%で、0≦a≦1、8≦b≦13、5≦c≦7で
    あることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性合
    金。
  4. 【請求項4】 前記組成式中の組成比を示すaは原子%
    で、0.1≦a≦1であることを特徴とする請求項1乃
    至3のいずれかに記載の軟磁性合金。
  5. 【請求項5】 前記組成式中の元素ZがY及び希土類元
    素のうちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比を
    示すdは原子%で、0<d≦0.5であることを特徴と
    する請求項1乃至4のいずれかに記載の軟磁性合金。
  6. 【請求項6】 前記組成式中の元素MがMoであり、元
    素XがBであることを特徴とする請求項1乃至5のいず
    れかに記載の軟磁性合金。
  7. 【請求項7】 前記微細な結晶粒の平均結晶粒径が10
    0nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のい
    ずれかに記載の軟磁性合金。
  8. 【請求項8】 前記軟磁性合金は16A/m以下の保磁
    力、1.5T以上の飽和磁束密度と、1kHzの実効透
    磁率が10000以上の値を示すことを特徴とする請求
    項1乃至7のいずれかに記載の軟磁性合金。
  9. 【請求項9】 大気雰囲気中にて下記組成式を示す合金
    溶湯を急冷して得られた非晶質を主体とする合金を巻回
    もしくは積層し、熱処理により微細な結晶粒を析出させ
    てコアとして用いたことを特徴とする磁心。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
    の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
    うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
    のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
    Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
    も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
    は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
    0≦d≦1である。
  10. 【請求項10】 大気雰囲気中にて、下記組成式を示す
    合金溶湯を前記溶湯射出用ノズルから冷却ロールに射出
    して急冷し、非晶質を主体とする合金を得た後に、熱処
    理により微細な結晶粒を主体とする組織とすることを特
    徴とする軟磁性合金の製造方法。 T100-a-b-c-dabNbcd 但し、TはFe、Co、Niのうち少なくとも1種以上
    の元素を表し、MはV、Mn、Mo、Ta、W、Crの
    うち少なくとも1種以上の元素を表し、XはB、P、C
    のうちの少なくとも1種以上の元素を表し、ZはZr、
    Ti、Hf、Al、Y及び希土類元素のうちの少なくと
    も1種以上の元素を表し、組成比を示すa、b、c、d
    は原子%で、0≦a≦3、2≦b≦18、4≦c≦8、
    0≦d≦1である。
  11. 【請求項11】 前記合金溶湯の冷却ロールへの射出
    は、溶湯射出用ノズルの少なくとも先端部に不活性ガス
    をフローしつつ行うことを特徴とする請求項10に記載
    の軟磁性合金の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記組成式中の組成比を示すa、b、
    cは原子%で、0≦a≦1、8≦b≦13、5≦c≦7
    であることを特徴とする請求項10又は11に記載の軟
    磁性合金の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記組成式中の組成比を示すaは原子
    %で、0.1≦a≦1であることを特徴とする請求項1
    0乃至12のいずれかに記載の軟磁性合金の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記組成式中の元素ZがY及び希土類
    元素のうちの少なくとも1種以上の元素であり、組成比
    を示すdは原子%で、0<d≦0.5であることを特徴
    とする請求項10乃至13のいずれかに記載の軟磁性合
    金の製造方法。
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