JP2003286548A - ナノコンポジット磁石用急冷合金およびその製造方法 - Google Patents

ナノコンポジット磁石用急冷合金およびその製造方法

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JP2003286548A
JP2003286548A JP2002089680A JP2002089680A JP2003286548A JP 2003286548 A JP2003286548 A JP 2003286548A JP 2002089680 A JP2002089680 A JP 2002089680A JP 2002089680 A JP2002089680 A JP 2002089680A JP 2003286548 A JP2003286548 A JP 2003286548A
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atomic
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JP2002089680A
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Hirokazu Kanekiyo
裕和 金清
Toshio Mitsugi
敏夫 三次
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Hitachi Metals Ltd
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Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一な組織を持った急冷合金を提供し、特性
の優れたナノコンポジット磁石を製造する。 【解決手段】 組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx
yTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択さ
れた1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選
択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的
に含まない1種以上の希土類金属元素、MはAl、S
i、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgか
らなる群から選択された少なくとも1種の金属元素)で
表現されており、組成比率x、y、z、nおよびmが、
それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子
%、0.1≦z≦12原子%、0≦n≦10原子%、お
よび0≦m≦0.5を満足するナノコンポジット磁石用
急冷合金である。R214Q型化合物結晶粒の体積比率
がα−Feの体積比率よりも大きく、厚さが50μmを
超え90μm以下であり、厚さの標準偏差が15μm以
下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種モータやアク
チュエータに好適に使用される永久磁石のための急冷合
金に関し、特に複数の強磁性相を有する鉄基希土類合金
磁石の製造に用いられる急冷合金に関している。
【0002】
【従来の技術】近年、家電用機器、OA機器、および電
装品等において、より一層の高性能化と小型軽量化が要
求されている。そのため、これらの機器に使用される永
久磁石については、磁気回路全体としての性能対重量比
を最大にすることが求められており、例えば残留磁束密
度Brが0.5T(テスラ)以上の永久磁石を用いるこ
とが要求されている。しかし、従来の比較的安価なハー
ドフェライト磁石によっては、残留磁束密度Brを0.
5T以上にすることはできない。
【0003】現在、0.5T以上の高い残留磁束密度B
rを有する永久磁石としては、粉末冶金法によって作製
されるSm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系
磁石以外では、粉末冶金法によって作製されるNd−F
e−B系磁石や、液体急冷法によって作製されるNd−
Fe−B系急冷磁石が高い残留磁束密度Brを発揮する
ことができる。前者のNd−Fe−B系磁石は、例えば
特開昭59−46008号公報に開示されており、後者
のNd−Fe−B系急冷磁石は例えば特開昭60−98
52号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Sm−
Co系磁石は、原料となるSmおよびCoのいずれもが
高価であるため、磁石価格が高いという欠点を有してい
る。
【0005】Nd−Fe−B系磁石の場合は、安価なF
eを主成分として(全体の60重量%〜70重量%程
度)含むため、Sm−Co系磁石に比べて安価ではある
が、その製造工程に要する費用が高いという問題があ
る。製造工程費用が高い理由のひとつは、含有量が全体
の10原子%〜15原子%程度を占めるNdの分離精製
や還元反応に大規模な設備と多大な工程が必要になるこ
とである。また、粉末冶金法による場合は、どうしても
製造工程数が多くなる。
【0006】これに対し、液体急冷法によって製造され
るNd−Fe−B系急冷磁石は、溶解工程→液体冷却工
程→熱処理工程といった比較的簡単な工程で得られるた
め、粉末冶金法によるNd−Fe−B系磁石に比べて工
程費用が安いという利点がある。しかし、液体急冷法に
よる場合、バルク状の永久磁石を得るには、急冷合金か
ら作製した磁石粉末を樹脂と混ぜ、ボンド磁石を形成す
る必要があるので、成形されたボンド磁石に占める磁石
粉末の充填率(体積比率)は高々80%程度である。ま
た、液体急冷法によって作製した急冷合金は、磁気的に
等方性である。
【0007】以上の理由から、液体急冷法を用いて製造
したNd−Fe−B系急冷磁石は、粉末冶金法によって
製造した異方性のNd−Fe−B系焼結磁石に比べてB
rが低いという問題を有している。
【0008】Nd−Fe−B系急冷磁石の特性を改善す
る手法としては、特開平1−7502号公報に記載され
ているように、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および
Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素と、
Ti、V、およびCrからなる群から選択された少なく
とも1種の元素とを複合的に添加することが有効であ
る。このような元素の添加によって、保磁力HcJと耐食
性とが向上するが、残留磁束密度Brを改善する有効な
方法は、ボンド磁石の密度を向上すること以外に知られ
ていない。
【0009】Nd−Fe−B系磁石の場合、希土類元素
の濃度が比較的に低い組成、すなわち、Nd3.8Fe
77.219(原子%)の近傍組成を持ち、Fe3B型化合
物を主相とする磁石材料が提案されている(R. Coehoor
n等、J. de Phys, C8,1998, 669〜670頁)。この永久磁
石材料は、液体急冷法によって作製したアモルファス合
金に対して結晶化熱処理を施すことにより、軟磁性であ
るFe3B相および硬磁性であるNd2Fe14B相が混在
する微細結晶集合体から形成された準安定構造を有して
おり、「ナノコンポジット磁石」と称されている。この
ようなナノコンポジット磁石については、1T以上の高
い残留磁束密度Brを有することが報告されているが、
その保磁力HcJは160kA/m〜240kA/mと比
較的低い。そのため、この永久磁石材料の使用は、磁石
の動作点が1以上になる用途に限られている。
【0010】また、ナノコンポジット磁石の原料合金に
種々の金属元素を添加し、磁気特性を向上させる試みが
なされているが(特開平3-261104号公報、米国特許4,83
6,868号、特開平7−122412号公報、国際出願の
国際公開公報WO03/03403、W.C.Chan, et.al. "THE EF
FECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPERT
IES OF α−Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES", IEE
E, Trans. Magn. No. 5,INTERMAG. 99, Kyongiu, Korea
pp.3265-3267, 1999)、必ずしも充分な「コスト当り
の特性値」は得られていない。
【0011】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、磁気特性の優れたナ
ノコンポジット磁石を低コストで製造するための急冷合
金を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によるナノコンポ
ジット磁石用急冷合金は、組成式が(Fe1-mm10
0-x-y-zxyTizn(TはCoおよびNiからなる
群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCから
なる群から選択された1種以上の元素、RはLaおよび
Ceを実質的に含まない1種以上の希土類金属元素、M
はAl、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Z
r、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、Auお
よびAgからなる群から選択された少なくとも1種の金
属元素)で表現されており、組成比率x、y、z、nお
よびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<
10原子%、0.1≦z≦12原子%、0≦n≦10原
子%、および0≦m≦0.5を満足する急冷合金であっ
て、R214Q型化合物結晶粒の体積比率がα−Feの
体積比率よりも大きく、しかも、平均厚さが50μmを
超え90μm以下であり、厚さの標準偏差が15μm以
下である。
【0013】好ましい実施形態において、前記R214
Q型化合物結晶粒を体積比率で全体の50体積%以上含
有する。
【0014】好ましい実施形態において、前記R214
Q型化合物結晶粒の平均結晶粒径が150nm以下であ
る。好ましい平均結晶粒径は70nm以下である。
【0015】本発明によるナノコンポジット磁石用急冷
合金の製造方法は、組成式が(Fe 1-mm100-x-y-z
xyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選
択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群か
ら選択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実
質的に含まない1種以上の希土類金属元素、MはAl、
Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、N
b、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびA
gからなる群から選択された少なくとも1種の金属元
素)で表現されており、組成比率x、y、z、nおよび
mが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10
原子%、0.1≦z≦12原子%、0≦n≦10原子
%、および0≦m≦0.5を満足する合金の溶湯を用意
する工程と、回転する冷却ロールの表面に対して前記合
金溶湯を1.5kg/分以上の供給レートで接触させ、
それによってR214Q型化合物結晶粒の体積比率がα
−Feの体積比率よりも大きく、しかも厚さが50μm
を超え90μm以下であり、厚さの標準偏差が15μm
以下である急冷合金を作製する冷却工程とを包含する。
【0016】好ましい実施形態において、前記冷却工程
は、内径1mmを超えるノズルオリフィスを用いて、前
記合金溶湯を前記冷却ロールの表面に向けて噴射する工
程を含む。
【0017】好ましい実施形態において、前記冷却工程
は、案内面が水平方向に対して1〜80°の角度を形成
する案内手段上に前記合金溶湯を供給し、前記冷却ロー
ルとの接触領域に前記合金溶湯を移動させる工程を含
む。
【0018】好ましい実施形態において、前記冷却工程
は、前記案内手段により、前記合金溶湯の流れを複数条
に分離し、各条の幅を前記冷却ロールの軸線方向に沿っ
て所定の大きさに調節することを包含する。
【0019】好ましい実施形態において、前記急冷合金
の作製は減圧雰囲気ガス中で行う。
【0020】好ましい実施形態において、前記雰囲気ガ
スの圧力は、圧力30kPa以上100kPa以下に調
節されている。
【0021】好ましい実施形態において、前記冷却工程
において、前記R214Q型化合物結晶粒の体積比率を
前記急冷合金の50体積%以上にする。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明によるナノコンポジット磁
石用急冷合金は、Tiを含有する希土類−鉄−硼素系合
金の溶湯を冷却・凝固することによって作製される。こ
の急冷合金は、必要に応じて加熱された後、粉砕され、
磁石粉末としてボンド磁石の製造などに用いられる。
【0023】より詳細に説明すると、本発明の急冷合金
は、組成式が(Fe1-mm100-x- y-zxyTizn
(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以
上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1
種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない
1種以上の希土類金属元素、MはAl、Si、V、C
r、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、H
f、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群
から選択された少なくとも1種の金属元素)で表現され
ており、組成比率x、y、z、nおよびmが、それぞ
れ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.
1≦z≦12原子%、0≦n≦10原子%、および0≦
m≦0.5を満足する。また、R214Q型化合物結晶
粒の体積比率がα−Feの体積比率よりも多く、しか
も、平均厚さが50μmを超え90μm以下であり、厚
さの標準偏差が15μm以下である点に特徴を有してい
る。
【0024】本発明の急冷合金を用いて作製される磁石
合金は、図1に示すように、硬磁性相であるR214
型化合物結晶粒が軟磁性相である鉄基硼化物の薄いフィ
ルム(平均厚さ20nm以下)および/または微粒子
(長軸方向サイズ:1〜50nm)によって相互に隔離
されたナノコンポジット構造を有している。このような
ナノコンポジット磁石においては、R214Q型化合物
結晶粒が交換相互作用によって軟磁性相と磁気的に結合
し、交換スプリング磁石として優れた磁石特性を発揮す
ることができる。
【0025】一般に、希土類元素Rの濃度を10原子%
程度よりも低くすると、硬磁性を担うR2Fe14B型化
合物相の体積比率が減少するだけでなく、R2Fe14
型化合物相に先立ってα−Feが析出するため、粗大化
しやすくなる。α−Feは磁化が高いため、最終的な磁
石全体としての磁化は増加するが、粗大なα−Feを含
むことで減磁曲線の角形性および保磁力が低下してしま
うことになる。従来、金属元素の添加により、全ての結
晶相を細かくすることにより、粗大化しやすいα−Fe
を微細化して保磁力を増加させる試みはあるが、得られ
る保磁力は不充分であった。
【0026】本発明者は、希土類元素Rの濃度が10原
子%未満、B濃度が10〜20原子%(好ましくは10
〜17原子%)の領域において、適量のTiを添加する
と、α−Feの析出・粗大化を抑制しつつ、R214
型化合物結晶を優先的に析出させ、更に、R214Q型
化合物結晶の粒界に鉄基硼化物を析出させることができ
ることを見出した。Ti添加により、α−Feの析出・
粗大化を抑制しつつ、R214Q型化合物結晶を優先的
に析出させることができるという事実は、本出願人によ
る特許第3264664号公報に開示されている。
【0027】しかしながら、上記のナノコンポジット磁
石の特性は組織構造に極めて敏感であるため、急冷条件
が変化すると、急冷合金の組織が不均一化し、その結果
として最終的な磁石特性が劣化しやすいという問題があ
った。より具体的に言えば、冷却ロールの回転周速度や
溶湯供給量を一定に維持したとしても、急冷合金の一部
で冷却速度が遅くなりすぎると、その部分に粗大なα−
Feが析出し、磁石特性が劣化することがあった。本発
明者が鋭意検討した結果、このように粗大化したα−F
eの発生原因が急冷合金の厚さばらつきにあることをつ
きとめ、本発明を想到するに至った。
【0028】一般に、単相組織構造を有する急冷磁石の
場合は、急冷合金の厚さばらつきが磁石特性に大きな影
響を与えることはない。特に、合金溶湯の冷却速度を高
め、全体が略非晶質化した急冷合金を作製する場合は、
急冷合金の厚さがばらついたとしても、最終的な磁石特
性のばらつきを招くことはほとんどない。その理由とし
て考えられることは、非晶質急冷合金の厚さがばらつい
たとしても、非晶質組織の構造は急冷合金中で略一様と
なるため、熱処理後の合金組織構造には大きな影響を及
ぼさないからである。
【0029】これに対し、本発明では、微細な結晶組織
が体積比率で全体の50%以上(好ましくは60%以
上)を占める特殊な急冷合金を作製する。しかも、冷却
速度を比較的遅くし、急冷合金を厚めに作製する。この
ため、急冷合金の厚さが部位によって少しでもばらつく
と、相対的に厚い部分では冷却速度が局所的に低下する
ため、結晶組織の構造が不均一化してしまうことにな
る。特に、本発明では、Tiを添加しなければR214
Q型化合物結晶よりも優先的にα−Feが析出・成長す
るような組成の合金溶湯を用いながらも、Tiの添加に
よってR214Q型化合物結晶粒を優先的に析出させた
急冷合金を作製するため、高い精度で急冷合金の各部に
おける冷却凝固過程を均一化する必要がある。
【0030】本発明者の実験によると、内径1mm以下
のノズルオリフィスを用いて合金溶湯を噴射し、急冷し
た場合においては、単位時間当たりの溶湯供給量(溶湯
供給レート)が不安定になり、急冷合金薄帯の位置によ
って冷却速度が不均一になる現象が顕著に観察され、そ
の現象の結果として、急冷合金中の組織構造も不均一化
することを見出した。また、同様のことが、ノズルから
の溶湯噴射圧を低く設定した場合にも観察された。この
ように急冷合金組織が不均一な場合は、粉砕によって作
製される磁石粉末の中で磁石特性がばらつき、磁気特性
の劣る粉末粒子が混入する結果、最終的な磁石特性が平
均化され劣化してしまうことになる。このように従来か
ら用いられてきたサイズのノズルオリフィスを本発明の
急冷合金の製造に用いた場合、ノズルオリフィスの狭い
通路における内壁面から溶湯が抵抗を受けるため、溶湯
の噴射速度や噴出量が微妙に変動し、その結果、急冷合
金の厚さばらつきが大きくなると考えられる。
【0031】本発明者は、内径1mmを越えるノズルオ
リフィス(好ましく内径2mm以上)を用いるなどし
て、冷却ロールへ供給する合金溶湯のレート(供給レー
ト)を従来に比べて大きくするとともに、急冷合金の平
均厚さを50μm以上90μm以下の範囲に限定すれ
ば、急冷合金の厚さばらつきを抑え、その標準偏差を1
5μm以下に制御することができることを見出した。そ
して、急冷合金厚さの標準偏差を15μm以下に制御す
れば、急冷合金中の組織を均一化し、磁石特性を向上さ
せることができることを見出して本発明を想到するに至
った。なお、急冷合金の平均厚さのより好ましい下限値
は55μmであり、更に好ましい下限値は60μmであ
る。また、急冷合金厚さの標準偏差のより好ましい上限
値は13μmであり、更に好ましい上限値11μmであ
る。
【0032】なお、急冷合金の平均厚さが50μmを超
える場合、合金の粉砕粉の形状が等軸形状に近くなる結
果、ボンド磁石を成形する工程で磁粉の充填率が向上す
るという重要な効果が得られる。しかし、充填率向上の
ため、単に急冷合金の平均厚さを大きくしただけでは急
冷条件が不安定となりやすく、磁気特性が劣化するとい
う問題が生じる。本発明では、合金溶湯の供給レートを
調節することにより、急冷合金の組織を均一化すること
により、磁気特性の劣化を回避することに成功してい
る。
【0033】以下、本発明の好ましい実施形態を説明す
る。
【0034】[合金溶湯の急冷装置]本実施形態では、
例えば、図2に示す急冷装置を用いて原料合金を製造す
る。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の
酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を
実行することが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウ
ムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができ
る。なお、窒素は希土類元素Rと比較的に反応しやすい
ため、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスを用いるこ
とが好ましい。
【0035】図2の装置は、真空または不活性ガス雰囲
気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金
の溶解室1および急冷室2を備えている。図2(a)は
全体構成図であり、図2(b)は、一部の拡大図であ
る。
【0036】図2(a)に示されるように、溶解室1
は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料2
0を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5
を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原
料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8と
を備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯
え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置
(不図示)を有している。
【0037】急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯2
1を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えてい
る。
【0038】この装置においては、溶解室1および急冷
室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御され
る。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および
8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適
切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急
冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲
内(好ましくは100kPa以下)に制御するため、ポ
ンプに接続されている。溶解室1の圧力を変化させるこ
とにより、ノズル5から出る溶湯の噴射圧を調節するこ
とができる。
【0039】溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介
して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21
は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱
される。
【0040】貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と
急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21
を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出
湯ノズル5のオリフィス径は、2.0mm以上4.0m
m以下の範囲内(例えば2.8mm)に設定される。溶
湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内
を流れにくくなり、急冷合金の厚さばらつきを招きやす
いが、本実施形態では、オリフィス径を従来に比べて拡
大するとともに、急冷室2を溶解室1よりも充分に低い
圧力状態に保持しているため、溶解室1と急冷室2との
間に大きな圧力差(10kPa以上の差圧)が形成さ
れ、溶湯21の出湯がスムーズに実行される。本実施形
態で用いる装置によれば、合金溶湯の供給レートを1.
5〜10kg/分に設定することができる。供給レート
が10kg/分を超えると、溶湯急冷速度が遅くなり、
粗大なα−Feが析出するという不都合が生じる。合金
溶湯の更に好ましい供給レートは2〜8kg/分であ
る。
【0041】冷却ロール7は、Cu、Fe、またはCu
やFeを含む合金から形成することが好ましい。Cuや
Fe以外の材料で冷却ロールを作製すると、急冷合金の
冷却ロールに対する剥離性が悪くなるため、急冷合金が
ロールに巻き付くおそれがあり好ましくない。冷却ロー
ル7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロ
ール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あた
りの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
【0042】[急冷法]まず、前述の組成式で表現され
る原料合金の溶湯21を作製し、図2の溶解室1の貯湯
容器4に貯える。次に、この溶湯21は出湯ノズル5か
ら減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯され、冷却
ロール7との接触によって急冷され、凝固する。
【0043】本発明の合金組成によれば、合金溶湯を冷
却する際、核生成頻度が高い高温度領域において、硬磁
性相であるR2Fe14Q相を優先的に析出させ、その結
果、as−cast(熱処理前)の急冷合金に含まれる
214Q型化合物相の体積比率を60%以上にするこ
とができる。このような急冷組織を得るには、合金溶湯
の冷却速度を1×102〜108℃/秒とすることが好ま
しく、1×102〜1×106℃/秒とすることが更に好
ましい。
【0044】合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷
却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合
金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間
に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その
後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性
雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に
雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下す
る。本実施形態では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜
常圧の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜
熱効果が強まり、R214Q型化合物を合金中に均一微
細に析出・成長させることができる。なお、適切な量の
Tiを原料合金中に添加していない場合には、上述した
ような冷却過程を経た急冷合金中には、α−Feが優先
的に析出・成長するため、最終的に得られる磁石特性が
劣化してしまうことになる。
【0045】本実施形態では、ロール表面速度を10m
/秒以上30m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲
気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧
力を30kPa以上にすることによって、平均粒径15
0μm以下、好ましくは平均粒径70nm以下の微細な
214Q型化合物相を60体積%以上含む急冷合金を
作製している。
【0046】なお、本発明で用いる合金溶湯の急冷法
は、上述の片ロール法に限定されず、ノズルオリフィス
による流量制御を行なわない急冷方法であるストリップ
キャスト法を用いてもよい。ストリップキャスト法によ
る場合は、ノズルオリフィスを用いないため、溶湯供給
レートを大きくし、かつ、安定化しやすいという利点が
ある。しかし、冷却ロールと溶湯との間に雰囲気ガス巻
き込みが発生しやすく、急冷面側での冷却速度が不均一
する可能性がある。このような問題を解決するには、冷
却ロールが置かれた空間の雰囲気圧力を上述した範囲に
低下させ、雰囲気ガスの巻き込みを抑制する必要があ
る。
【0047】ストリップキャスト法を採用する場合、図
3に示すストリップキャスト装置を用いることが好まし
い。図3の装置は、内部を不活性ガス雰囲気での減圧状
態にすることができる不図示のチャンバ内に配置され
る。このストリップキャスティング装置は、合金原料を
溶解するための溶解炉41と、溶解炉41から供給され
る合金溶湯43を急冷・凝固させるための冷却ロール4
7と、溶解炉41から冷却ロール47に溶湯43を導く
シュート(案内手段)45とを備えている。
【0048】溶解炉41は、合金原料を溶融することに
よって作製した溶湯43をシュート45に対して略一定
の供給量で供給することができる。この供給量は、溶解
炉41を傾ける動作を制御することなどによって、任意
に調節することができる。
【0049】冷却ロール47は、その外周面が銅などの
熱伝導性の良好な材料から形成されており、例えば、直
径30cm〜100cmで幅が15cm〜100cmの
寸法を有する。冷却ロール47は、不図示の駆動装置に
よって所定の回転速度で回転することができる。この回
転速度を制御することによって、冷却ロール47の周速
度を任意に調節することができる。このストリップキャ
スティング装置による冷却速度は、冷却ロール47の回
転速度などを選択することにより、約102℃/秒〜約
105℃/秒の範囲で制御可能である。
【0050】シュート45の溶湯を案内する面は、水平
方向に対して角度(傾斜角度)αで傾斜し、シュート4
5の先端部と冷却ロールの表面との距離は数mm以下に
保たれる。そして、シュート45は、その先端部と冷却
ロール47の中心とを結ぶ線が水平方向に対して角度β
(0°≦β≦90°)を形成するように配置される。シ
ュート45の傾斜角度αは、1°≦α≦80°であるこ
とが好ましく、5°≦α≦60°の関係を満足すること
が更に好ましい。角度βは、10°≦β≦55°の関係
を満足することが好ましい。
【0051】シュート45上に供給された溶湯43は、
シュート45の先端部から冷却ロール47の表面に対し
て供給され、冷却ロール47の表面に溶湯のパドル46
を形成する。
【0052】シュート45は、溶解炉41から所定の流
量で連続的に供給される溶湯43を一時的に貯湯するよ
うにして流速を遅延し、溶湯43の流れを整流すること
ができる。シュート45に供給された溶湯43における
溶湯表面部の流れを選択的に堰き止めることができる堰
き止め板を設ければ、整流効果を更に向上させることが
できる。シュート45を用いることによって、冷却ロー
ル47の胴長方向(軸線方向:紙面に垂直)において、
一定幅にわたって略均一な厚さに広げた状態で、溶湯4
3を供給することができる。シュート45の溶湯案内面
の傾斜角度αを調節することにより、溶湯供給速度を微
調整できる。溶湯は、その自重により、シュート45の
傾斜した案内面を流れ、水平方向(X軸方向)に平行な
運動量成分をもつ。シュート45の傾斜角度αを大きく
するほど、溶湯の流速は速くなり、運動量も大きくな
る。
【0053】シュート45は、上記の機能に加え、冷却
ロール47に達する直前の溶湯3の温度を調整する機能
をも有する。シュート45上における溶湯43の温度
は、液相線温度よりも100℃以上高い温度であること
が望ましい。溶湯43の温度が低すぎると、急冷後の合
金特性に悪影響を及ぼすTiB2などの初晶が局所的に
核発生し、これが凝固後に残存してしまうことがあるか
らである。また、溶湯温度が低すぎると、溶湯粘度が上
昇し、スプラッシュが発生しやすくなる。シュート45
上での溶湯温度は、溶解炉41からシュート45に注ぎ
込む時点での溶湯温度やシュート45自体の熱容量など
を調節することによって制御することができるが、必要
に応じてシュート加熱装置を設けても良い。
【0054】シュート45は、冷却ロール47の外周面
に対向するように配置された端部において、冷却ロール
の軸線方向に沿って所定の間隔だけ離して設けられた複
数の排出部を有していることが好ましい。この排出部の
幅(溶湯の1つの流れの幅)は、好適には5mm〜30
mmに設定され、より好適には7mm〜20mmに設定
される。溶湯の流れの幅は、上記排出部の位置から離れ
るにつれ、横方向に広がる傾向があるが、シュート45
に複数の排出部を設け、複数の溶湯流れを形成する場合
は、隣接する溶湯流れが相互に接触しないようにするこ
とが好ましい。このように、複数の溶湯流れを略平行に
形成し、かつ、各溶湯流れの幅を規制することにより、
全体としての溶湯供給量を大きくしながら、急冷合金の
厚さばらつきを低減する効果が高められる。
【0055】シュート45上に供給された溶湯43は、
冷却ロール47の軸線方向に沿って、各排出部の幅と略
同一幅を有して冷却ロール47と接触する。その後、冷
却ロール47に所定の出湯幅で接触した溶湯43は、冷
却ロール47の回転に伴って(冷却ロール47に引き上
げられるようにして)ロール周面上を移動し、この移動
過程において冷却される。なお、溶湯漏れを防止するた
めに、シュート45の先端部と冷却ロール47との間の
距離は、3mm以下(特に0.4〜0.7mmの範囲)
に設定されることが好ましい。
【0056】[熱処理]本実施形態では、熱処理をアル
ゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を5℃
/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃以下の
温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温ま
で冷却する。この熱処理によって、残存アモルファス相
中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポジ
ット組織構造が形成される。本発明によれば、熱処理の
開始前の時点(as−cast)で既に微細なR2Fe
14B結晶相(Nd2Fe14B型結晶相)が全体の60体
積%以上存在しているため、α−Fe相や他の結晶相の
粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各構
成相(軟磁性相)が均一に微細化される。熱処理後にお
けるR2Fe14B結晶相(Nd2Fe14B型結晶相)が合
金中に占める体積比率は65〜85%である。
【0057】なお、熱処理温度が550℃を下回ると、
熱処理後もアモルファス相が残存し、急冷条件によって
は、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。ま
た、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒成
長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角
形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以上
850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度の
範囲は570℃以上820℃以下である。
【0058】本発明では、急冷合金中に充分な量のNd
2Fe14B型化合物相が均一かつ微細に析出している。
このため、急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行な
わない場合でも、急冷凝固合金自体が充分な磁石特性を
発揮し得る。そのため、結晶化熱処理は本発明に必須の
工程ではないが、これを行なうことが磁石特性向上のた
めには好ましい。なお、従来に比較して低い温度の熱処
理でも充分に磁石特性を向上させることが可能である。
【0059】熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するた
め、50kPa以下のArガスやN 2ガスなどの不活性
ガスが好ましい。1.0kPa以下の真空中で熱処理を
行っても良い。
【0060】熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14
相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、Fe236
相、およびR2Fe233相等の準安定相が含まれていて
も良い。その場合、熱処理によって、R2Fe233相は
消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、または、そ
れよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe 23
6)やα−Feを結晶成長させることができる。
【0061】熱処理を経て、最終的な磁石合金中には、
2Fe14B(R214Q)型化合物相が65体積%以上
85体積%以下含まれる。具体的には、R濃度が9原子
%の場合、R214Q型化合物相の体積比率は全体の7
5%程度であり、R濃度が8原子%の場合、R214
型化合物相の体積比率は全体の68%程度である。一
方、磁石中において、軟磁性相は10体積%以上35体
積%以下含まれる。
【0062】また、R214Q型化合物や強磁性鉄基硼
化物を含む全結晶相の体積比率は全体の95%以上であ
り、アモルファス相の体積比率は全体の5%以下であ
る。
【0063】本発明による急冷合金を用いて磁石を作製
した場合、最終的に鉄基硼化物のような軟磁性相が存在
していても、軟磁性相は硬磁性相の周りに薄くまたは細
かく存在しているため、各構成相が交換相互作用によっ
て磁気的に結合し、優れた磁気特性が発揮される。
【0064】本発明による急冷合金を用いて磁石を作製
した場合、粒界相のほとんとが強磁性の鉄基硼化物(F
3BおよびFe236など)から構成されており、他の
相としては強磁性のα−Feが含まれている。具体的に
は、粒界相に占める鉄基硼化物の体積比率は70%以上
である。一方、Ndなどの希土類元素Rは粒界相にほと
んど存在しておらず、硬磁性相の生成に有効に利用され
ている。このような組織構造は、Rの組成比率xが10
原子%よりも少なく、かつ、Qの組成比率xが10原子
%を超える組成領域において、適切な量のTiを添加す
ることによって初めて得られるものである。もしもTi
を添加する代わりに、他の金属元素を添加した場合に
は、仮に粒界相が形成されたとしても、その粒界相は磁
化の低いアモルファスになりやすく、ナノコンポジット
磁石の特性を発揮させることは困難である。また、Ti
を添加した場合でも、Qの組成比率xが10原子%以下
の場合は、粒界に磁化の高い軟磁性相が形成されず、コ
ンポジット相間の交換結合によって磁石特性を発現する
ナノコンポジット磁石にはならない。
【0065】なお、熱処理後におけるR214Q型化合
物相の平均結晶粒径は、単磁区結晶粒径である300n
m以下となる必要があり、20nm以上200nm以下
であることが好ましく、20nm以上100nm以下で
あることが更に好ましい。
【0066】これに対して、フィルム状に形成される鉄
基硼化物相の平均厚さが50nmを超えると、各構成相
間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣
化するため、(BH)maxが低下してしまう。以上のこ
とから、粒界または亜粒界の厚さ方向に沿って計測した
鉄基硼化物相の平均サイズ(フィルムの平均厚さ)は、
50nm以下であることが好ましい。鉄基硼化物相の上
記平均サイズは30nm以下であることが更に好まし
く、20nm以下であることが最も好ましい。
【0067】なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切
断または粉砕しておいてもよい。熱処理後、得られた磁
石を微粉砕し、磁石粉末(磁粉)を作製すれば、その磁
粉から公知の工程によって種々のボンド磁石を製造する
ことができる。ボンド磁石を作製する場合、鉄基希土類
合金磁粉はエポキシ樹脂やナイロン樹脂と混合され、所
望の形状に成形される。このとき、ナノコンポジット磁
粉に他の種類の磁粉、例えばSm−Fe−N系磁粉やハ
ードフェライト磁粉を混合してもよい。
【0068】上述のボンド磁石を用いてモータやアクチ
ュエータなどの各種の回転機を製造することができる。
【0069】本発明の磁石磁末を射出成形ボンド磁石用
に用いる場合は、平均粒度が200μm以下になるよう
に粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒
径は30μm以上150μm以下である。また、圧縮成
形ボンド磁石用に用いる場合は、粒度が300μm以下
になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉
末の平均粒径は30μm以上250μm以下である。更
に好ましい範囲は50μm以上200μm以下である。
【0070】なお、本発明による磁石粉末の表面にカッ
プリング処理や化成処理、鍍金などの表面処理を施すこ
とにより、ボンド磁石成形時の成形性や、得られるボン
ド磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。また、成形
後のボンド磁石表面に樹脂塗装や化成処理、鍍金などの
表面処理を施した場合も、粉末の表面処理と同様にボン
ド磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。
【0071】[組成の限定理由]Qは、その全量がB
(硼素)から構成されるか、または、BおよびC(炭
素)の組み合わせから構成される。Qの総量に対するC
の割合は0.25以下であることが好ましい。
【0072】Qの組成比率xが10原子%以下になる
と、急冷時の冷却速度が102℃/秒〜104℃/秒程度
と比較的低い場合、R2Fe14B型結晶相とアモルファ
ス相とが混在する急冷合金を作製することが困難にな
り、その後に熱処理を施しても400kA/m未満のH
cJしか得られない。また、液体急冷法の中でも工程費用
が比較的安いストリップキャスト法を採用できなくな
り、永久磁石の価格が上昇してしまうことになる。一
方、Qの組成比率xが20原子%を超えると、鉄基硼化
物の析出がR2Fe14B相の析出と同時期に開始するた
め、鉄基硼化物が粗大化してしまう。その結果、鉄基硼
化物相がR2Fe14Bの粒界または亜粒界に均一に分散
またはフィルム状に広がったナノコンポジット組織が得
られず、磁気特性が劣化する。
【0073】以上のことから、Qの組成比率xは10原
子%を超え、20原子%以下となるように設定すること
が好ましい。より好ましい組成比率xの上限は、17原
子%であり、更に好ましい組成比率xの上限は15原子
%である。
【0074】なお、Q全体に対するCの比率pは、原子
比で、0以上0.25以下の範囲にあることが好まし
い。C添加の効果を得るには、Cの比率pが0.01以
上であることが好ましい。pが0.01よりも少なすぎ
ると、C添加の効果がほとんど得られない。一方、pが
0.25よりも大きくなりすぎると、α−Fe相の生成
量が増大して、磁気特性が劣化するという問題が生じ
る。比率pの下限は、0.02であることが好ましく、
pの上限は0.20以下であることが好ましい。比率p
は0.08以上0.15以下であることが更に好まし
い。
【0075】Rは、希土類元素(イットリウムを含む)
の群から選択された1種以上の元素である。Laまたは
Ceが存在すると、保磁力および角形性が劣化するた
め、LaおよびCeを実質的に含まないことが好まし
い。ただし、微量のLaやCe(0.5原子%以下)が
不可避的に混入する不純物として存在する場合は磁気特
性上問題なく、実質的に含まないと言える。より具体的
には、Rは、PrまたはNdを必須元素として含むこと
が好ましく、その必須元素の一部をDyおよび/または
Tbで置換してもよい。Rの組成比率yが全体の6原子
%未満になると、保磁力の発現に必要なR2Fe14B型
結晶構造を有する化合物相が充分に析出せず480kA
/m以上の保磁力HcJを得ることができなくなる。ま
た、Rの組成比率yが10原子%以上になると、強磁性
を有する鉄基硼化物やα−Feの存在量が低下する。故
に、希土類元素Rの組成比率yは6原子%以上10原子
%未満の範囲、例えば、7原子%以上9.5原子%以下
に調節することが好ましい。より好ましいRの範囲の上
限は9.3原子%、更に好ましいRの範囲の上限は9.
0原子%である。好ましいRの範囲の下限は8.0原子
%であり、更に好ましいRの範囲の下限は、8.3原子
%である。本発明では、このようにRの濃度が低いが、
Tiの働きにより、R2Fe14B相が他の相よりも優先
的に析出・成長するため、合金溶湯中のRがR2Fe14
B相の生成に有効に利用され、粒界部分ではRが低濃度
化される。その結果、粒界相におけるR濃度が0.5原
子%以下となり、硬磁性相中におけるR濃度(11原子
%程度)に比較して格段に低くなる。Rがこのようにし
て有効に硬磁性相(R2Fe14B相)の形成に用いられ
るため、本発明では、Rの組成比率が10原子%よりも
少なく、硬磁性相(R2Fe14B相)の体積比率が65
原子%以上85原子%以下となるにもかかわらず、粒界
に存在する軟磁性相との交換結合によって優れた硬磁気
特性が発現する。なお、本明細書におけるR2Fe14
相などの構成相の体積比率は、メスバウアースペクトル
分光法で測定した値である。
【0076】Tiは、前述した効果を得るためには必須
の元素であり、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向
上および減磁曲線の角形性の改善に寄与し、最大エネル
ギ積(BH)maxを向上させる。
【0077】Tiの組成比率zが全体の0.1原子%未
満になると、Ti添加の効果が充分に発現しない。一
方、Tiの組成比率zが全体の12原子%を超えると、
残留磁束密度Brの低下を招来しやすい。以上のことか
ら、Tiの組成比率zは0.1原子%以上12原子%以
下の範囲とすることが好ましい。より好ましいzの範囲
の下限は1.0原子%であり、より好ましいzの範囲の
上限は8原子%である。更に好ましいzの範囲の上限は
6原子%である。
【0078】また、Qの組成比率xが高いほど、Q(例
えば硼素)を過剰に含むアモルファス相が形成されやす
いので、Tiの組成比率zを高くすることが好ましい。
TiはBに対する親和性が強く、硬磁性相の粒界に濃縮
される。Bに対するTiの比率が高すぎると、非磁性で
あるTiB2を析出するため、磁化が低下するという不
都合が生じる。一方、Bに対するTiの比率が低すぎる
と、非磁性のBリッチアモルファス相が多く生成されて
しまう。実験によれば、0.05≦z/x≦0.4を満
足させるように組成比率を調節することが好ましく、
0.1≦z/x≦0.35を満足させることがより好ま
しい。更に好ましくは0.13≦z/x≦0.3であ
る。
【0079】Feは、上述の元素の含有残余を占める
が、Feの一部をCoおよびNiの一種または二種の遷
移金属元素(T)で置換しても所望の硬磁気特性を得る
ことができる。Feに対するTの置換量が50%を超え
ると、0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られな
い。このため、置換量は0%以上50%以下の範囲に限
定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換
することによって、減磁曲線の角形性が向上するととも
に、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐
熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲
は0.5%以上40%以下である。
【0080】種々の効果を得る為、0〜10原子%程度
の範囲で金属元素Mを添加しても良い。Mは、Al、S
i、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgか
らなる群から選択された1種以上の元素である。
【0081】以上説明してきたように、本発明では、急
冷合金中に粗大なα−Feをほとんど析出させず、微細
なR214Q型化合物相を有する組織、あるいは、微細
なR214Q型化合物相を有する組織とアモルファス相
が混在した組織が作製される。本明細書における「アモ
ルファス相」とは、原子配列が完全に無秩序化した部分
によってのみ構成される相だけではなく、結晶化の前駆
体や微結晶(サイズ:数nm以下)、または原子クラス
タを部分的に含んでいる相をも含むものとする。具体的
には、X線回折や透過電子顕微鏡観察によって結晶構造
を明確に同定できない相を広く「アモルファス相」と称
することにする。そして、X線回折や透過電子顕微鏡観
察によって結晶構造を明確に同定できる構造を「結晶
相」と称することとする。
【0082】従来、本発明が対象とするような組成に類
似する組成(すなわち、本発明の組成からTiを除いた
組成)を有する合金溶湯を比較的ゆっくりと冷却する
と、α−Feが多く析出した合金組織が得られるため、
その後の結晶化熱処理でα−Feが粗大化してしまうと
いう問題があった。α−Feなどの軟磁性相が粗大化す
ると、磁石特性が大きく劣化し、到底実用に耐える永久
磁石は得られない。
【0083】Tiを添加した場合のみ、硬磁性相が他の
相よりも優先的に析出・成長し、強磁性の鉄基硼化物が
主相結晶粒の粒界に析出する。そして、析出した鉄基硼
化物が部分的に結合して連続的なフィルムを形成し、そ
のフィルムで主相結晶粒の表面を薄く覆った組織が形成
される。
【0084】なお、Tiに代えて、Nb、V、Crなど
の金属元素を添加した場合は、α−Fe相が析出するよ
うな比較的高い温度領域でα−Fe相の粒成長が著しく
進行し、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合
によって有効に拘束されなくなる結果、減磁曲線の角形
性が大きく低下する。また、Tiに代えて、Nb、M
o、Wを添加した場合、α−Feが析出しない比較的低
い温度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優
れた良好な硬磁気特性を得ることが可能である。しか
し、このような温度で熱処理を行なった合金では、R2
Fe14B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分
散して存在していると推定され、ナノコンポジット磁石
の構造は形成されていない。また、更に高い温度で熱処
理を行なうと、アモルファス相中からα−Fe相が析出
してしまう。このα−Fe相は、Tiを添加した場合と
異なり、析出後、急激に成長し、粗大化する。このた
め、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合によ
って有効に拘束されなくなり、減磁曲線の角形性が大き
く劣化してしまうことになる。
【0085】また、Tiに代えて、VやCrを添加した
場合は、Tiに比べ、これらの添加金属がFeに対して
容易に固溶し、反強磁性的に結合するため、磁化が大き
く低下してしまう。
【0086】上記の各元素と異なり、Tiを添加した場
合は、α−Fe相の析出・成長のキネティクス(kineti
cs)が遅くなり、析出・成長に時間を要するため、α−
Fe相の析出・成長が完了する前にNd2Fe14B相の
析出・成長が開始すると考えられる。このため、α−F
e相が粗大化する前にNd2Fe14B相が均一に分散し
た状態で大きく成長する。
【0087】このようにTiを添加した場合のみ、α−
Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を
形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時
にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の晶出
を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素としてホ
ウ素や炭素とともに重要な働きをするため、合金溶湯を
急冷する際の冷却速度を102℃/秒〜104℃/秒程度
の比較的低い値にしても、粗大なα−Feを析出させる
ことなく、R2Fe14B型結晶相を60体積%以上含む
急冷合金(R2Fe14B型結晶相以外には鉄基硼化物を
含むことがある)を作製することが可能になる。
【0088】
【実施例】以下の表1に示す合金組成を有するように、
純度99.5%以上のC、B、Fe、Co、Nb、T
i、およびNdの材料を用いて総量が5kグラムとなる
ように秤量し、アルミナ製るつぼ内に投入した。
【0089】
【表1】
【0090】試料No.1〜3は本発明の実施例であ
り、試料No.4は比較例である。
【0091】アルミナ製は、底部に直径2.8mmのB
N製オリフィスを有しているため、上記原料はアルミナ
製るつぼ内で溶解された後、合金溶湯となってオリフィ
スから下方に排出されることになる。原料の溶解は圧力
が35kPaのアルゴン雰囲気下において高周波加熱法
を用いて行った。本実施例では溶湯温度を1500℃に
設定した。
【0092】また、実施例では差圧が30kPaとな
り、比較例では差圧が15kPaとなるように合金溶湯
の湯面をアルゴンガスで加圧することによって、オリフ
ィスの下方0.7mmの位置にある銅製ロールの外周面
に対して溶湯を噴出させた。ロールは、その外周面の温
度が室温程度に維持されるように内部が冷却されながら
高速で回転する。このため、オリフィスから噴出した合
金溶湯はロール周面に接触して熱を奪われつつ、周速度
方向に飛ばされることになる。合金溶湯はオリフィスを
介して連続的にロール周面上に噴出するため、急冷によ
って凝固した合金は薄帯状に長く延びたリボンの形態を
持つことになる。
【0093】本実施例で採用する回転ロール法(単ロー
ル法)の場合、冷却速度はロール周速度および単位時間
当たりの溶湯流下量によって規定される。この溶湯流下
量は、オリフィス径(断面積)と溶湯圧力とに依存す
る。本実施例では、溶湯供給レートを3.0〜5.0k
g/分とし、ロール表面速度を9〜10m/秒に設定し
た。これに対して、比較例では、噴射圧を低くすること
によって溶湯供給レートを1kg/分程度に下げ、ロー
ル表面速度を7m/秒に設定した。
【0094】こうして得られた急冷合金の厚さを測定し
た結果を表2、表3、および図4に示す。厚さの測定
は、両球面のマイクロゲージを用い、急冷合金薄帯の1
00個の断片のそれぞれについて行った。各断片のサイ
ズは、長さ:5〜20mm×幅2mm程度であった。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】以上の結果からわかるように、溶湯供給レ
ートの低い比較例に比べ、実施例の厚さばらつきは非常
に小さい。
【0098】上述の急冷方法で得られた急冷合金の組織
をCuKαの特性X線によって調べたところ、ハローパ
ターン中にNd2Fe14Bの回折ピークが僅かに観察さ
れた。これにより、急冷合金中には、アモルファス相中
に微細なNd2Fe14Bが存在していることを確認し
た。実施例に比べると、比較例におけるNd2Fe14
の回折ピークがより強かった。
【0099】次に、上記の急冷合金をアルゴンガス中で
熱処理した。740℃にて急冷合金を6分間保持した
後、室温まで冷却した。その後、振動型磁力計を用いて
各試料の磁気特性を測定した。下記の表4は、この測定
結果を示している。
【0100】
【表4】
【0101】表4からわかるように、比較例の最大エネ
ルギー積(BH)maxは、実施例に比べて格段に低く、
また残留磁束密度Brも低い。
【0102】次に、熱処理後の構成相の変化をCuKα
の特性X線により調べたところ、熱処理前に見られたハ
ローパターンは消失し、実施例では、いずれも、Nd2
Fe1 4BとFe236を主として含む混合組織が形成さ
れていることを確認した。これに対し、比較例では、N
2Fe14BとFe236に加えて、α−Feの存在が確
認された。
【0103】更に、熱処理後の微細金属組織を透過型電
子顕微鏡(TEM)にて観測したところ、実施例では、
平均粒径40nm程度の結晶粒と、その粒界に位置する
10nm程度の微細結晶粒とが存在していた。これに対
して、比較例では、平均結晶粒径が相対的に大きかっ
た。表5に、各試料について、Nd2Fe14B結晶粒の
平均結晶粒径および標準偏差を示す。
【0104】
【表5】
【0105】表5からわかるように、比較例に比べて、
実施例では組織が微細かつ均一化している。これは、合
金溶湯を冷却して急冷合金を作製する際、実施例では均
一な冷却が行われたためである。
【0106】
【発明の効果】本発明によれば、Tiを添加した合金溶
湯の急冷を行なう際に、溶湯供給レートを従来に比べて
大きくすることにより、比較的厚い急冷合金を作製して
も、その厚さばらつきを小さく抑え、均一な組織を持っ
た急冷合金を提供することができる。このような急冷合
金を用いることにより、特性の優れたナノコンポジット
磁石を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、本発明による鉄基合金
磁石の組織を模式的に示す図である。
【図2】(a)は、本発明による急冷合金を製造する方
法に用いる装置の全体構成例を示す断面図であり、
(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。
【図3】本発明による急冷合金の製造に用いることので
きるストリップキャスト装置の構成を示す図である。
【図4】急冷合金の厚さ分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口 1a、2a、8a、および9a ガス排気口 1 溶解室 2 急冷室 3 溶解炉 4 貯湯容器 5 出湯ノズル 6 ロート 7 回転冷却ロール 21 溶湯 22 合金薄帯 41 溶解炉 43 合金溶湯 45 シュート(案内手段) 47 冷却ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 1/053 H01F 1/04 H

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx
    yTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択さ
    れた1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選
    択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的
    に含まない1種以上の希土類金属元素、MはAl、S
    i、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、
    Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgか
    らなる群から選択された少なくとも1種の金属元素)で
    表現されており、組成比率x、y、z、nおよびmが、
    それぞれ、 10<x≦20原子%、 6≦y<10原子%、 0.1≦z≦12原子%、 0≦n≦10原子%、および0≦m≦0.5を満足する
    急冷合金であって、 R214Q型化合物結晶粒の体積比率がα−Feの体積
    比率よりも大きく、平均厚さが50μmを超え90μm
    以下であり、厚さの標準偏差が15μm以下である、ナ
    ノコンポジット磁石用急冷合金。
  2. 【請求項2】 前記R214Q型化合物結晶粒を体積比
    率で全体の50体積%以上含有する請求項1に記載のナ
    ノコンポジット磁石用急冷合金。
  3. 【請求項3】 前記R214Q型化合物結晶粒の平均結
    晶粒径が150nm以下である請求項1または2に記載
    のナノコンポジット磁石用急冷合金。
  4. 【請求項4】 組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx
    yTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択さ
    れた1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選
    択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的
    に含まない1種以上の希土類金属元素、MはAl、S
    i、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、
    Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgか
    らなる群から選択された少なくとも1種の金属元素)で
    表現されており、組成比率x、y、z、nおよびmが、
    それぞれ、 10<x≦20原子%、 6≦y<10原子%、 0.1≦z≦12原子%、 0≦n≦10原子%、および0≦m≦0.5を満足する
    合金の溶湯を用意する工程と、 回転する冷却ロールの表面に対して前記合金溶湯を1.
    5kg/分以上の供給レートで接触させ、それによって
    214Q型化合物結晶粒の体積比率がα−Fe相の体
    積比率よりも大きく、しかも、平均厚さが50μmを超
    え90μm以下であり、厚さの標準偏差が15μm以下
    である急冷合金を作製する冷却工程と、を包含するナノ
    コンポジット磁石用急冷合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記冷却工程は、 内径1mmを越えるノズルオリフィスを用いて前記合金
    溶湯を前記冷却ロールの表面に向けて噴射する工程を含
    む、請求項4に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記冷却工程は、 案内面が水平方向に対して1〜80°の角度を形成する
    案内手段上に前記合金溶湯を供給し、前記冷却ロールと
    の接触領域に前記合金溶湯を移動させる工程を含む、請
    求項4に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記冷却工程は、前記案内手段により、
    前記合金溶湯の流れを複数条に分離し、各条の幅を前記
    冷却ロールの軸線方向に沿って所定の大きさに調節する
    ことを包含する請求項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記急冷合金の作製は、減圧雰囲気ガス
    中で行う請求項4から6のいずれかに記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記雰囲気ガスの圧力は、圧力30kP
    a以上100kPa以下に調節されている請求項8に記
    載の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記冷却工程において、前記R214
    Q型化合物結晶粒の体積比率を前記急冷合金の50体積
    %以上にする請求項4から9のいずれかに記載の製造方
    法。
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