JP2008192903A - 鉄基希土類合金磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】残留磁束密度を低下させることなく、不可逆熱減磁率の小さな耐熱性に優れた磁石を得る。
【解決手段】鉄基希土類合金磁石は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表される。TがCoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rがイットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、MがAl、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素である。5≦x≦14、10<y<12、0.1≦z≦5、0.2≦n≦5、0≦w≦10、0≦m≦0.3、および0.02≦p≦0.3の関係を満足する。硬磁性相の平均サイズが1nm以上80nm以下、軟磁性相を含む硬磁性相以外の相の平均サイズが0.1nm以上20nm以下。Zrは実質的に粒界相にのみ存在する。
【選択図】図2

Description

本発明は、各種モータやアクチュエータに好適に使用される永久磁石の製造方法に関し、特に鉄基希土類合金磁石の製造方法に関している。
近年、家電用機器、OA機器、および電装品等において、より一層の高性能化と小型軽量化が要求されている。そのため、これらの機器に使用される永久磁石については、磁気回路全体としての性能対重量比を最大にすることが求められており、例えば残留磁束密度Brが0.5T(テスラ)以上の永久磁石を用いることが要求されている。しかし、従来の安価なハードフェライト磁石によっては残留磁束密度Brを0.5T以上にすることはできない。
現在、0.5T以上の高い残留磁束密度Brを有する永久磁石としては、粉末冶金法によって作製されるSm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系磁石以外では、粉末冶金法によって作製されるNd−Fe−B系磁石や、液体急冷法によって作製されるNd−Fe−B系急冷磁石が高い残留磁束密度Brを発揮することができる。
しかしながら、Sm−Co系磁石は、原料となるSmおよびCoのいずれもが高価であるため、磁石価格が高いという欠点を有している。Nd−Fe−B系磁石の場合は、安価なFeを主成分として含むため(全体の60重量%〜70重量%程度)、Sm−Co系磁石に比べて安価ではあるが、その製造工程に要する費用が高いという問題がある。製造工程費用が高い理由のひとつは、含有量が全体の10原子%〜15原子%程度を占めるNdの分離精製や還元反応に、大規模な設備と多くの工程が必要になることである。また、粉末冶金法による場合は、どうしても製造工程数が多くなる。
これに対し、液体急冷法によって製造されるNd−Fe−B系急冷磁石は、溶解工程→液体冷却工程→熱処理工程といった比較的簡単な工程で得られるため、粉末冶金法によるNd−Fe−B系磁石に比べてその製造工程に要する費用が安いという利点がある。液体急冷法による場合、バルク状の永久磁石を得るには、急冷合金から作製した磁石粉末を樹脂と混ぜ、ボンド磁石を作製する必要がある。なお、液体急冷法によって作製した急冷合金は、磁気的に等方性である。
以上より、液体急冷法を用いてNd−Fe−B系急冷磁石を作製することにより、比較的安価に、かつ、ハードフェライト磁石より小型軽量な磁石が得られる。
しかしながら、Nd−Fe−B系磁石は高温環境下において熱によって減磁が起こってしまうという問題を有している。そのため使用される環境に応じた耐熱性を付与する必要がある。例えば自動車用の電装品等として使用する場合には、少なくとも160℃の環境における使用を考慮する必要があり、その場合の不可逆熱減磁率は160℃、パーミアンス係数Pc=2にて3%未満であることが望ましい。
Nd−Fe−B系磁石の熱減磁率を抑制するためには、固有保磁力を向上すればよいため、様々な手法によって固有保磁力を高める努力が行われてきた。液体急冷法によって製造されるNd−Fe−B系急冷磁石では、母合金に遷移金属を添加することにより固有保磁力を向上させることが可能であることが知られている。中でも、特許文献1や特許文献2などに開示されているTi含有ナノコンポジット磁石は、高い固有保磁力と残留磁束密度を有する極めて優れたNd−Fe−B系急冷磁石であるが、不可逆熱減磁率が160℃、パーミアンス係数Pc=2にて3%未満という高耐熱性を実現できていない。
さらに、特許文献3〜6にも母合金に遷移金属を添加することにより固有保磁力を向上させた磁石が開示されている。
特許文献3や特許文献4に記載されているTi含有ナノコンポジット磁石においては、添加元素V、CrはR2Fe14B型相のFeに置換せず粒界相に存在しその結果粒界相が安定化することにより保磁力が増加していると考えられる。しかしながらいずれも固有保磁力の増加に伴い残留磁束密度Brが低下し、着磁も困難になる。
特許文献5や特許文献6に記載のNd−Fe−B系急冷磁石においては、R2Fe14B型相にZrなどの添加元素Mを過飽和状態で固溶させることにより保磁力が向上している。更に、特許文献5においては、TiとZrの同時添加も示唆している。特許文献5や特許文献6に開示されているようにR2Fe14B型相にZrを過飽和状態で固溶させると、保磁力は向上するもののR2Fe14B型相のキュリー点が低下し、保磁力の温度変化率が大きくなるため不可逆熱減磁率を改善するのは困難である。
特開2002−175908号公報 特開2003−221655号公報 特開2004−158842号公報 特開2006−245534号公報 特開昭64−7502号公報 特開平8−51007号公報
上述したように、現存するNd−Fe−B系急冷磁石において、単に保磁力を増加することによって耐熱性を向上させようとすると、Brの低下が避けられない。また、希土類元素の組成比率yが11.5原子%未満の領域では、最大エネルギー積(BH)max≧100kJ/m3を維持しながら、160℃、Pc=2における不可逆熱減磁率が3%未満の性能を有する鉄基希土類合金磁石は、これまでに報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、最大エネルギー積(BH)max≧100kJ/m3を維持しながら、160℃、Pc=2における不可逆熱減磁率が3%未満の優れた耐熱性を持つ鉄基合金磁石を提供することにある。
発明者らは、所定の組成範囲、特に、所定量のTi、C、Zrを同時に含有した合金を元に磁石を作製することにより、結晶粒サイズが従来の磁石よりも微細かつ均一な金属組織を持つ磁石が得られることを知見した。また、得られた磁石はBrが低下することなく不可逆熱減磁率が小さいということがわかった。これは従来にはない知見である。
本発明の鉄基希土類合金磁石は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表され、TがCoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rがイットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、MがAl、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素であり、5≦x≦14、10<y<12、0.1≦z≦5、0.2≦n≦5、0≦w≦10、0≦m≦0.3、および0.02≦p≦0.3の関係を満足し、硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相および軟磁性相を含む2種類以上の結晶相を含有し、硬磁性相の平均サイズが1nm以上80nm以下、軟磁性相を含む硬磁性相以外の相の平均サイズが0.1nm以上20nm以下、各結晶相の最大サイズが100nm以下の範囲内にあり、Zrは実質的に粒界相にのみ存在し、R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の80%以上存在する。
好ましい実施形態において、160℃、パーミアンス係数Pc=2における不可逆熱減磁率が3%未満である。
好ましい実施形態において、Zrが添加されていない状態に比べて160℃、Pc=2における不可逆熱減磁率が10%以上低減されている。
好ましい実施形態において、鉄基硼化物相およびα−Fe相の少なくとも一方とR2Fe14B型化合物相とが同一の金属組織内に混在している。
好ましい実施形態において、前記鉄基硼化物相は、Fe3B相、Fe2B相、およびFe236相からなる群から選択された1種以上を含んでいる。
好ましい実施形態において、最大エネルギー積(BH)maxが100kJ/m3以上である。
本発明の鉄基希土類合金磁石の製造方法は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表され、TがCoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rがイットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、MがAl、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素であり、5≦x≦14、10<y<12、0.1≦z≦5、0.2≦n≦5、0≦w≦10、0≦m≦0.3、および0.02≦p≦0.3の関係を満足する合金の溶湯を作製する工程と、前記合金の溶湯を急冷することにより、体積比率で60%以上のR2Fe14B型結晶相を含む急冷合金を作製する冷却工程と、前記急冷合金を加熱することにより、硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相および軟磁性相をふくむ2種類以上の結晶相を含有し、硬磁性相の平均サイズが1nm以上80nm以下、軟磁性相を含む硬磁性相以外の相の平均サイズが0.1nm以上20nm以下、各結晶相の最大サイズが100nm以下の範囲内にあり、Zrは実質的に粒界相にのみ存在し、R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の80%以上存在する鉄基希土類合金磁石を製造する熱処理工程とを包含する。
本発明によれば、結晶粒サイズが微細かつ均一な金属組織を持つ磁石が得られ、これによってBrを低下させることなく、不可逆熱減磁率の小さな耐熱性に優れた磁石が得られる。
本発明による鉄基希土類合金磁石の組成式は、(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表される。ここで、Tは、CoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rは、イットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、Mは、Al、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素である。また、組成比率は、5≦x≦14、10<y<12、0.1≦z≦5、0.2≦n≦5、0≦w≦10、0≦m≦0.3、0.02≦p≦0.3の関係を満足している。
この鉄基希土類合金磁石は、硬磁性相(R2Fe14B型化合物相)および軟磁性相をふくむ2種類以上の結晶相を含有している。硬磁性相の平均サイズは1nm以上80nm以下、硬磁性相以外の相(軟磁性相を含む種々相)の平均サイズは0.1nm以上20nm以下にあり、各結晶相の最大サイズは100nm以下である。
本発明の鉄基希土類合金磁石に特徴的な点は、上述したように、構成相のサイズが微細であり、均一な金属組織を有するとともに、Zrが実質的に粒界相のみに存在している点にある。また、硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相は、体積比率で全体の80%以上存在している。このような構成を有するため、従来の磁石のようにBrが低下することなく、不可逆減磁率が小さくなり、耐熱性に優れた特性が実現する。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本実施形態の鉄基希土類合金磁石は、上記の組成式を満足する合金の溶湯を急冷して凝固することにより作製した急冷合金から形成される。この急冷合金は、急冷直後の段階において既に結晶相を含むが、この急冷合金に対して更に熱処理を施すことにより、結晶化を進めることが好ましい。
本実施形態の鉄基希土類合金磁石は、軟磁性相のサイズが微細であるため、各構成相が交換相互作用によって結合している。このため、硬磁性相のR2Fe14B型化合物相以外に鉄基硼化物やα−Feのような軟磁性相が存在していても、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示すことが可能になる。本実施形態の鉄基希土類合金磁石は、好適には、R2Fe14B型化合物相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を有する鉄基硼化物やα−Feを含有している。この鉄基硼化物は、例えば、Fe3B(飽和磁化1.5T)やFe236(飽和磁化1.6T)である。ここで、R2Fe14Bの飽和磁化は約1.6Tであり、α−Feの飽和磁化は2.1Tである。
急冷合金の段階では、Zrが均一に分散して存在しているため、Nd−Fe−B系の他の急冷磁石と同様に、ZrはR2Fe14B型相に固溶し、そのキュリー点を低下させる。しかし、急冷合金に熱処理を施すことによって得られる本実施形態の鉄基希土類合金磁石の段階では、ZrがR2Fe14B型相に固溶するのではなく、粒界相または鉄基酸化物相中に存在していると考えられる。ZrがR2Fe14B型相に固溶していると、キュリー点が大きく低下するのに対して、本実施形態の鉄基希土類合金磁石の段階では、そのようなキュリー点の低下が少なく、したがって、少なくとも熱処理後においては、ZrがR2Fe14B型相に固溶しておらず、粒界相または鉄基酸化物相中に存在していると考えられる。
本実施形態の磁石は、以下のような過程を経て形成されると推測される。
まず、急冷合金に対して熱処理を行うと、R2Fe14B型化合物相がZrを粒界相に排出しながら成長する。R2Fe14B型化合物相に固溶したZrは、他の添加元素と比較して粒界に排出されにくくZrを粒界相に排出しながら結晶化・結晶成長するには高いエネルギーを要するため、Zrを添加した合金では、R2Fe14B型化合物相の結晶化温度が高くなる。したがって、R2Fe14B型化合物相は結晶化温度以上の温度で緩やかに成長するため、最終的に極めて微細な組織の磁石を得ることができる。
上述したようにZrは粒界相に排出されにくいが、ある程度の時間をかけて熱処理を行うことにより、R2Fe14B型化合物相から排出させることが可能である。本実施形態では、R2Fe14B型化合物相から粒界相にZrを排出させるために必要な熱処理を適切に行うことにより、Zrによるキュリー点の低下を抑制できるため、保磁力の温度変化が大きくならず、熱減磁が抑制できる。
なお、特許文献5や特許文献6に記載されている磁石では、保磁力を向上させるため、最終的にR2Fe14B型化合物相中にZrを過飽和状態で残存させている。そのような組織を形成するためには、急冷合金に対する熱処理を比較的短時間で終了させることが必要である。しかし、短時間の熱処理の場合、粒界に非晶質相が結晶化しないまま残存する可能性がある。粒界に非晶質相が結晶化しないまま残存していると、耐熱性に悪影響を及ぼすことが知られている。これを回避するため、相対的に高い温度で熱処理を行うと、今度は結晶粒サイズが不均一になってしまうという問題がある。組織の不均一性は耐熱性に悪影響を及ぼす。
さらに、R2Fe14B型相にZrを過飽和状態で固溶させると、前述のように、保磁力は向上するが、R2Fe14B型相のキュリー点が低下し、保磁力の温度変化率が大きくなる。このため、ZrがR2Fe14B型相に残存していると、不可逆熱減磁率を改善することができなくなる。
本実施形態では、比較的高温で、一定以上の時間をかけて熱処理することにより、Zrを実質的に粒界相にのみ存在させている。
なお、本実施形態において、Zrが実質的に粒界相にのみ存在しているか否かは、Zrを添加していないことを除いて同じ組成の合金に対してR2Fe14B型化合物相のキュリー点の低下が5度未満に抑えられているか否かで判定可能である。
Tiはα−Feの生成を抑制する効果がある。本発明における希土類元素Rの組成比率は12原子%未満であり、この組成比率はR2Fe14B型化合物相の化学量論組成よりも小さい。このため、Tiを添加しないと、合金溶湯の急冷時に初晶としてα−Feが生成してしまう。α−Feは、その後の熱処理で成長させることはできても、消滅させることはできない。そのため、組織の微細化を実現するためには、急冷時には生成しないことが好ましく、生成したとしても数nmのサイズに抑制する必要がある。Tiの添加は、組織の微細化を実現する本発明にとって不可欠の元素の1つである。
Cを添加すると、Bを溶湯に均一に分散することができる。一方、ZrやTiは、Bに対する親和性が高いため、Bが均一に分散することにより、ZrやTiも均一に分散しやすくなる。このため、Cを添加することにより、ZrやTiを均一に分散させることができ、最終的な磁石組織をより均一微細なものにする効果がある。前述のように、Tiは、α−Feの生成を抑制する効果があるため、Cの添加によって均一な分散が実現すると、Tiの効果を合金全体に均一に与えることができる。また、Zrを含む合金溶湯は粘度が高いため、急冷時の合金厚みを均一化しにくく最終的な組織が不均一になりやすいが、Cを添加することにより、溶湯の液相線温度を下げ、粘度を下げることができるため、急冷状態の均一性も向上し、最終的に均一な金属組織が得られる。このように、Cの添加は、TiおよびZrによる効果を高める上で必須である。
本実施形態の磁石は、硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相および鉄基硼化物相やα―Fe相などの軟磁性相をふくむ2種類以上の結晶相を含有するナノコンポジット磁石である。硬磁性相の平均サイズは1nm以上80nm以下であり、20nm以上80nm以下であることが好ましく、20nm以上60nm以下であることが更に好ましい。軟磁性相の平均サイズは0.1nm以上20nm以下であり、1nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。さらに、本実施形態の磁石は、各結晶相の最大サイズが100nm以下、好ましくは80nm以下の範囲内という極めて微細かつ均一な金属組織を有しており、しかも、R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の80%以上存在している。
従来、各結晶相の最大サイズが100nm以下という均一微細な組織のナノコンポジット磁石は存在しなかった。本実施形態においては、磁石の組織をこのような均一微細なものにすることにより、160℃、Pc=2における不可逆熱減磁率が3%未満であるという優れた耐熱性を実現している。
また、このような微細な組織を実現したことにより、従来のナノコンポジット磁石と比較して、結晶粒同士の界面が増えるという効果が得られる。その結果、結晶粒界面での磁気的な交換結合が増加し、レマネンスエンハンスメントがより顕著に現れる結果、高いエネルギー積が得られることになる。
以下、本発明の鉄基希土類合金磁石を更に詳細に説明する。
[組成限定理由]
(B1-pp)によって表現される組成の比率xが大きくなると、Fe−B相などの軟磁性相が析出しやすくなり、耐熱性が悪化する恐れがある。本発明における組成比率xの上限は14原子%である。この組成比率xが5原子%よりも少なくなると、R2Fe14B型化合物相の体積率が小さくなり良好な磁気特性が得られないため、組成比率xの下限は5原子%である。組成比率xの好ましい範囲は6.5≦x≦13原子%である。本発明では前述した理由により、B以外にCが存在しており、BおよびCの全体に占めるCの割合pは0.01〜0.3であり、0.02〜0.2であることが好ましい。
RはY(イットリウム)および希土類元素から選択された少なくとも1種の希土類元素である。Rは、PrまたはNdを必須元素として含むことが望ましく、その必須元素の一部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組成比率yが10原子%よりも低くなると、保磁力が低下し熱減磁率が大きくなる恐れがある。逆にRの組成比率yが12原子%よりも高くなると、R−rich相が多く析出する。R−rich相の析出量が増加すると、酸化されやすく、熱減磁特性が低下する。よってRの組成yの範囲は10<y<12原子%であり、10.5≦y≦11.8原子%であることが好ましい。
Zrは急冷合金中に均一分散し熱処理時にR2Fe14B型化合物相からゆるやかに排出される現象を利用して均一微細な金属組織を得るために必須の元素である。Zrの組成比率nが0.3原子%よりも小さくなると、Zr添加の効果が十分発揮されない。また、組成比率nが5原子%よりも大きくなると、過剰のZr元素が主相に固溶するため、不可逆減磁率が大きくなってしまう。組成比率nの好ましい範囲は0.3≦n≦3.5原子%である。
Tiは前述した理由により本発明に必須の元素である。Tiの組成比率zが0.1原子%よりも小さくなると、Ti添加の効果が十分発揮されない。また、組成比率zが5原子%よりも大きくなると、急冷合金内に非磁性硼化物が生じるため磁気特性が悪化する。組成比率zの好ましい範囲は0.5≦z≦4原子%であり、より好ましい範囲は1≦z≦3原子%である。
合金には、Al、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された少なくとも1種の元素Mを加えても良い。このような元素の添加により、磁気特性が向上するほか、最適熱処理温度域を拡大させる効果が得られるが、Mの組成比率wが10原子%を越えると、磁化の低下を招く。よってMの組成範囲は0≦w≦10原子%、好ましい組成範囲は0≦w≦5原子%、より好ましい組成範囲は0≦w≦3原子%である。
Feは上述の元素の含有残余を占めるが、Feの一部をCoおよびNiの1種または二種の繊維金属元素Tで置換しても所望の硬磁気特性を得ることができる。Feに対するTの置換量が50%を越えると0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られない。このため、置換量nは0%以上50%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換することによって、減磁曲線の角形性が向上すると共に、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲は0.5%以上40%以下である。
[液体急冷装置]
本実施形態では、例えば図1に示す急冷装置を用いて原料合金を製造する。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素は希土類元素Rと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
図1の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。図1(a)は全体構成図であり、図1(b)は、一部の拡大図である。
図1(a)に示されるように、溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えている。
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲内に制御するため、ポンプに接続されている。
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21の出湯がスムーズに実行される。
冷却ロール7は、熱伝導度の点からAl合金、銅合金、炭素鋼、真鍮、W、Mo、青銅から形成され得る。ただし、機械的強度および経済性の観点から、Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成することが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
図1に示す装置によれば、例えば合計10kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯(合金リボン)22となる。
[液体急冷法]
まず、前述の組成式で表現される原料合金の溶湯21を作製し、図1の溶解室1の貯湯容器4に貯える。この溶湯21は、出湯ノズル5から減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯された後、冷却ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急冷凝固方法としては、冷却速度を高精度に制御できる方法を用いる必要がある。
本実施形態の場合、溶湯21の冷却凝固に際して、冷却速度を1×102〜1×108℃/秒とすることが好ましく、1×104〜1×106℃/秒とすることが更に好ましい。
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下する。本発明では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜常圧の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜熱効果が強まり、合金中にNd2Fe14B型化合物を均一微細に析出・成長させることができる。なお、適切な量のTiなどの元素を原料合金中に添加していない場合には、上述したような冷却過程を経た急冷合金中には、α−Feが優先的に析出・成長するため、最終的な磁石特性が劣化してしまうことになる。
本実施形態では、ロール表面速度を7m/秒以上25m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧力を30kPa以上にする。こうすることにより、平均粒径80nm以下の微細なR2Fe14B型化合物相を60体積%以上含む急冷合金を作製している。
なお、本発明で用いる合金溶湯の急冷法は、上述の片ロール法に限定されず、双ロール法、ガスアトマイズ法、ノズルやオリフィスによる流量制御を行なわない方法であるストリップキャスト法、更には、ロール法とガスアトマイズ法とを組み合わせた冷却法などであってもよい。
上記急冷法の中でも、ストリップキャスト法の冷却速度は比較的低く、102〜105℃/秒である。本実施形態では、適切な量のTiを合金に添加することにより、ストリップキャスト法による場合でもFe初晶を含まない組織が大半を占める急冷合金を形成することができる。ストリップキャスト法は、工程費用が他の液体急冷法の半分程度以下であるため、片ロール法に比べて大量の急冷合金を作製する場合に有効であり、量産化に適した技術である。原料合金に対して元素Tiを添加しない場合には、ストリップキャスト法を用いて急冷合金を形成しても、Fe初晶を多く含む金属組織が生成するため、所望の金属組織を形成することができない。
[熱処理]
本実施形態では、急冷合金に対する熱処理をアルゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を5℃/秒〜20℃/秒として、700℃以上850℃以下の温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温まで冷却する。この熱処理により、アモルファス相中に存在する準安定相の微細結晶が成長する。その際、急冷合金中に均一に分散していたZrがR2Fe14B型化合物相から排出され、最終的な金属組織が形成される。本実施形態によれば、熱処理の開始時点で既に微細なNd2Fe14B型結晶相が全体の60体積%以上存在しているため、α−Fe相や他の結晶相の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。
2Fe14B型化合物相はZrを排出しながら比較的緩やかに成長するため、30秒以上の熱処理時間を確保する必要がある。熱処理時間の好ましい範囲は、300秒〜15分である。
熱処理温度が550℃を下回ると、熱処理後もアモルファス相が多く残存するため、十分な減磁曲線の角形性および保磁力が得られず、不可逆熱減磁率が大きくなる。また、熱処理温度が820℃を超えると、各構成相の粒成長が著しいため、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角形性が劣化する。加えて金属組織も不均一になり耐熱性も悪化する。発明者の実験によると、熱処理温度は700℃以上850℃以下が好ましいことがわかった。より好ましい熱処理温度の範囲は740℃以上820℃以下である。
本実施形態では、雰囲気ガスによる二次冷却効果のため、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14B型化合物相が均一かつ微細に析出している。このため、急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合でも、急冷凝固合金自体が充分な磁石特性を発揮し得る。そのため、結晶化熱処理は本発明に必須の工程ではないが、これを行なうことが磁石特性向上のためには好ましい。なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に磁石特性を向上させることが可能である。
熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。0.1kPa以下の真空中で熱処理を行っても良い。
熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14B型化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、Fe236、およびR2Fe233相等の準安定相が含まれていても良い。その場合、熱処理によって、R2Fe233相は消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe236)やα−Feを結晶成長させることができる。
本実施形態の場合、最終的にα−Feのような軟磁性相が存在していても、軟磁性相と硬磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合するため、優れた磁気特性が発揮される。
熱処理後におけるR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、単磁区結晶粒径である100nm以下となる。R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、20nm以上80nm以下であることが好ましく、20nm以上60nm以下であることが更に好ましい。
硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径が50nmを超えると、各構成相間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、最大エネルギー積(BH)maxが低下してしまう。また、これらの平均結晶粒径が0.1nmを下回ると、高い保磁力を得られなくなる。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は0.1nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
熱処理後、得られた磁石を微粉砕し、磁石粉末(磁粉)を作製すれば、その磁粉から公知の工程によって種々のボンド磁石を製造することができる。なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切断または粉砕しておいてもよい。ボンド磁石を作製する場合、鉄基希土類合金磁粉はエポキシ樹脂やナイロン樹脂と混合され、所望の形状に成形される。このとき、ナノコンポジット磁粉に他の種類の磁粉、例えばSm−Fe−N系磁粉やハードフェライト磁粉を混合してもよい。
上述のボンド磁石を用いてモータやアクチュエータなどの各種の回転機を製造することができる。
本実施形態の磁石磁末を射出成形ボンド磁石用に用いる場合は、平均粒度が200μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上150μm以下である。また、圧縮成形ボンド磁石用に用いる場合は、粒度が300μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上250μm以下である。さらに好ましくは、粒径分布に2つのピークを持ち、平均粒径が50μm以上200μm以下にある。
なお、粉末の表面にカップリング処理や化成処理、鍍金などの表面処理を施すことにより、成形方法を問わずボンド磁石成形時の成形性や得られるボンド磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。また、成形後のボンド磁石表面に樹脂塗装や化成処理、鍍金などの表面処理を施した場合も、粉末の表面処理と同様にボンド磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。
実施形態について説明した方法により、表1に示す合金組成を有する試料No.1〜No.15の急冷凝固合金を作製した。急冷時のロール周速度Vsは、表1の「作製条件」に示すとおりである。この急冷凝固合金を850μm以下の粉末に粗粉砕した後、表1の「作製条件」に示す温度T[℃]のアルゴン雰囲気中で熱処理を施した。試料No.4〜12のサンプルは本発明の実施例であり、試料No.1〜3、および13〜15のサンプルは比較例である。熱処理後の磁石粉末について、VSM(振動試料型磁力計)を用いて磁気特性を測定した。表2に、測定した磁気特性、不可逆減磁率、最大粒径を示す。なお、ここで示す最大粒径は、磁石粉末中任意の1μm四方の金属組織をTEM(透過型電子顕微鏡)によって観察した際の最大粒径である。
図2(a)〜(c)は、それぞれ、試料No.1〜3のサンプル(比較例)の組織写真であり、図2(d)および(e)は、それぞれ、試料No.5および7のサンプル(実施例)の組織写真である。これらの写真から明らかなように、実施例の結晶粒は比較例に比べて微細である。また表2に示されるように、実施例では最大粒径が100nm以下であるのに対して、比較例の最大粒径は100nmを超え、中には300nmを超えるものも見受けられる。
なお、試料No.11のサンプル(実施例)と試料No.15のサンプル(比較例)との間にある相違点は、試料No.11のサンプルには0.3at.%のC(炭素)が添加されていたのに対して、試料No.15のサンプルにはC(炭素)が全く添加されていなかったことにある。この差異に起因して、最大粒径に大きな変化が生じた。すなわち、C添加無しの試料No.15における最大粒径は370nmにも達したのに、C(炭素)を添加した試料No.11の最大粒径は80nmに抑えられた。このようにC添加の有無により、最大粒径に大きな違いが発生することが確認された。
上記の試料No.1、4、5、7のサンプルについて、熱処理の前後におけるキュリー温度Tcを測定した。測定結果を以下の表3に示す。
表3からわかるように、試料No.1のサンプル(比較例)には、Zrが添加されておらず、そのキュリー点Tcは294℃である。一方、Zrが添加されている試料No.4、5、7のサンプル(実施例)では、熱処理前のキュリー点Tcが294℃よりも低い値を示しているが、熱処理後のキュリー点Tcは、290℃を超えるレベルに上昇している。このことから、Ti、C、およびZrが同時添加された実施例では、熱処理前(急冷凝固直後)、Zrによるキュリー点Tcの低下が生じており、ZrはR2Fe14B型化合物相に固溶していたと考えられる。一方、熱処理後は、Zrによるキュリー点Tcの低下が実質的に生じておらず、ZrはR2Fe14B型化合物相に固溶していない。すなわち、急冷凝固合金の熱処理により、ZrはR2Fe14B型化合物相から粒界相に移動したと考えられる。
熱処理時に生じるZrのR2Fe14B型化合物相から粒界相への移動が、結晶組織の均一な微細化に寄与する詳細なメカニズムは必ずしも明らかにはなっていないが、Ti、C、およびZrの同時添加により、結晶組織が微細化され、それによって磁石特性の向上することが事実として確認された。
本発明の鉄基希土類合金磁石は、耐熱性に優れているため、自動車用モータなどの各種用途に広く利用され得る。
(a)は、本発明による鉄基希土類合金磁石のための急冷合金を製造する方法に用いる装置の全体構成例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。 図2(a)〜(c)は、それぞれ、試料No.1〜3のサンプル(比較例)の断面TEM写真であり、図2(d)および(e)は、それぞれ、試料No.5および7のサンプル(実施例)の断面TEM写真である。
符号の説明
1b、2b、8b 雰囲気ガス供給口
1a、2a、8a ガス排気口
1 溶解室
2 急冷室
3 溶解炉
4 貯湯容器
5 出湯ノズル
6 ロート
7 回転冷却ロール
21 溶湯
22 合金薄帯

Claims (7)

  1. 組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表され、TがCoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rがイットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、MがAl、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素であり、
    5≦x≦14、
    10<y<12、
    0.1≦z≦5、
    0.2≦n≦5、
    0≦w≦10、
    0≦m≦0.3、および
    0.02≦p≦0.3の関係を満足し、
    硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相および軟磁性相を含む2種類以上の結晶相を含有し、硬磁性相の平均サイズが1nm以上80nm以下、軟磁性相を含む硬磁性相以外の相の平均サイズが0.1nm以上20nm以下、各結晶相の最大サイズが100nm以下の範囲内にあり、
    Zrは実質的に粒界相にのみ存在し、R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の80%以上存在する、鉄基希土類合金磁石。
  2. 160℃、パーミアンス係数Pc=2における不可逆熱減磁率が3%未満である、請求項1に記載の鉄基希土類合金磁石。
  3. Zrが添加されていない状態に比べて160℃、Pc=2における不可逆熱減磁率が10%以上低減されている、請求項1または2に記載の鉄基希土類合金磁石。
  4. 鉄基硼化物相およびα−Fe相の少なくとも一方とR2Fe14B型化合物相とが同一の金属組織内に混在している、請求項1から3のいずれかに記載の鉄基希土類合金磁石。
  5. 前記鉄基硼化物相は、Fe3B相、Fe2B相、およびFe236相からなる群から選択された1種以上を含んでいる、請求項4に記載の鉄基希土類合金磁石。
  6. 最大エネルギー積(BH)maxが100kJ/m3以上である請求項1から5のいずれかに記載の鉄基希土類合金磁石。
  7. 組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n-w(B1-ppxyTizZrnwで表され、TがCoおよびNiから選択された1種類以上の元素、Rがイットリウムおよび希土類金属元素から選択された1種類以上の元素、MがAl、Si、V、Mn、Cu、Zn、Ga、Cr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、およびSnからなる群から選択された1種類以上の元素であり、
    5≦x≦14、
    10<y<12、
    0.1≦z≦5、
    0.2≦n≦5、
    0≦w≦10、
    0≦m≦0.3、および
    0.02≦p≦0.3の関係を満足する合金の溶湯を作製する工程と、
    前記合金の溶湯を急冷することにより、体積比率で60%以上のR2Fe14B型結晶相を含む急冷合金を作製する冷却工程と、
    前記急冷合金を加熱することにより、硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相および軟磁性相をふくむ2種類以上の結晶相を含有し、硬磁性相の平均サイズが1nm以上80nm以下、軟磁性相を含む硬磁性相以外の相の平均サイズが0.1nm以上20nm以下、各結晶相の最大サイズが100nm以下の範囲内にあり、Zrは実質的に粒界相にのみ存在し、R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の80%以上存在する鉄基希土類合金磁石を製造する熱処理工程と、
    を包含する鉄基希土類合金磁石の製造方法。
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