JP2016051799A - 希土類鉄系磁石粉体およびそれを用いたボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
Description
希土類元素Rの構成比率が13at%以上15at%以下であり、
該希土類元素Rは、NdとPrとCeとを含み、
該希土類元素R中、CeがR総量の35at%以上65at%以下であり、そして
該磁石粉体が液体急冷凝固法により作製されることを特徴とする、
希土類鉄系磁石粉体に関する。
本発明の希土類鉄系磁石粉体は、前記添加元素MがTi、Nb、Zr、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
また本発明の希土類鉄系磁石粉体は、固有保磁力Hcjが1000kA/m以上であること、さらには、キュリー点が200℃以上270℃以下であることが好ましい。
前記希土類鉄系ボンド磁石は、キュリー点から60℃低い温度での減磁率が8%以下であるものが好ましい。
詳細には、希土類鉄系磁石粉体及びバインダ樹脂の混合物を加圧し、該バインダ樹脂の熱硬化により未着磁の被着磁体を成形する工程、その後、
前記被着磁体を該被着磁体のキュリー点以上の温度に加熱し、続いて磁界中で該被着磁体を該被着磁体のキュリー点未満の温度に降温させながら該被着磁体を着磁させる工程を含み、
前記磁石粉体として前述のR−Fe−B−M系希土類鉄系磁石粉体を用いることを特徴とする製造方法に関する。
また上記磁石粉体を用いた本発明の希土類ボンド磁石は、100〜125℃を超える耐熱性が求められる自動車用モータ用途においても、こうした実使用温度範囲での減磁率が低いボンド磁石として提供することができる。
本発明のR−Fe−B−M系希土類鉄系磁石粉体は、以下の構成を有してなる。
・希土類元素Rの構成比率が13at%以上15at%以下
・希土類元素Rは、NdとPrとCeとを含む
・希土類元素R中、CeがR総量の35%以上65%以下である
・好ましくは添加元素MがTi、Nb、Zr、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択される少なくとも一種である。
本発明に係る上記希土類鉄系磁石粉体は、液体急冷凝固法により作製されることを特徴とする以外、その製造方法は任意であるが、例えば希土類金属(R)、鉄(Fe)、ホウ素(B)及びその他添加金属(M)を上述の所定比率となるように配合した原料を、高周波溶解して合金インゴットを製造し、高温で均質化処理を行った後、合金溶湯を単ロール法等の液体急冷凝固法により粉体状とすることにより、得ることができる。なお、上記希土類鉄系磁石粉体には、上記希土類元素(R)と鉄(Fe)とホウ素(B)とその他の添加元素(M)の他、工業生産上不可避な不純物が含有され得る。
上記希土類鉄系磁石粉体の大きさ(粒径)等は特に限定されないが、例えば粒径範囲が30μmから500μmであることが好ましい。磁石粉体の粒径が上記数値範囲より小さいと、磁石粉体の比表面積が大きくなるため、磁石そのものが酸化され易くなり、耐熱性に優れた磁石を得ることが困難になる。また磁石粉体の粒径が上記数値範囲より大きくなると、各種小型モータ向けの肉厚が1mmを下回るようなリング状磁石を圧縮成形によって作製することが困難となる。
また、後述するボンド磁石の作製において、バインダ樹脂と混合後、良好な成形性を確保するために、該磁石粉体の粒度分布がある程度分散されていることが望ましい。これに限定されないが一例を挙げると、例えば当該磁石粉体の粉粒の平均粒径が75μmから125μmであり、該粒径をもつ磁石粉体が全体の50重量%である、といった粒度分布を有していることが好ましい。ここで、磁石粉体の粉粒の平均粒径を75μmから125μm程度とすることにより、磁石粉体とバインダ樹脂からなるコンパウンドの好適な流動性を確保し、良好な成形性が得ることができるため好ましい。
上記希土類鉄系ボンド磁石を用いて得られる希土類鉄系ボンド磁石は、キュリー点からおよそ60℃低い温度での減磁率が8%以下であるものが好ましい。
上記希土類鉄系ボンド磁石は、希土類鉄系磁石粉体及びバインダ樹脂からなる被着磁体を作製した後、従来公知の着磁方法によって着磁することにより作製することができる。着磁方法としては、例えばパルス着磁法や特許文献1の着磁方法が適用可能であるが、特に特許文献1の着磁方法によって着磁することにより、優れた着磁率を得られるため好ましい。
まず、前述の希土類鉄系磁石粉体及びバインダ樹脂を混合した混合物を加圧し圧縮成形体とし、その後、前記バインダ樹脂の熱硬化により、未着磁の被着磁体を成形する。
本実施形態において使用されるバインダ樹脂としては、好ましくは熱硬化性樹脂を使用し得、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタンなどを使用することができる。これらのなかでも、圧縮成形による希土類ボンド磁石の作製において、耐熱性に優れるという点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が最も好ましい。なお使用される熱硬化性樹脂は、室温で固形(粉体状)、液状のいずれであってもよい。
バインダ樹脂としてエポキシ樹脂が使用される場合、その種類は、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエステル、芳香族のグリシジルエーテル、ノボラック樹脂のエポキシ化物、環状オレフィンのエポキシ化合物などが挙げられる。
また、上記バインダ樹脂(熱硬化性樹脂)のための、硬化剤または/および促進剤を適宜使用することができ、それらの種類等は特に限定されず、例えばアミン系硬化剤、ジシアンジアミドとその誘導体、フェノールとその誘導体、イソシアネート、ブロックイソシアネート、イミダゾールとその誘導体などを適宜選択して使用できる。
さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などの添加剤を添加することができる。
すなわち、上記被着磁体を該被着磁体のキュリー点以上の温度(例えばキュリー点+30℃以上の温度)まで加熱し、該被着磁体が加熱されたままの状態で着磁磁界を有する着磁部へと該被着磁体を移し、前記着磁部内で着磁磁界を印加したまま該被着磁体のキュリー点未満の温度まで降温することにより該着磁体を着磁させ、ボンド磁石を得ることができる。
下記表1に示す磁石粉体1乃至3(実施例1乃至実施例3)を単ロール液体急冷法により作成した。
表1に示すように、磁石粉体全量に対して、実施例1の磁石粉体1のR(希土類元素)総量(Nd、Pr及びCe)は13.5at%であり、R総量に対するCe含有比率は35%であった。同様に、実施例2の磁石粉体2において、磁石粉体全量に対するR総量は14.5at%、R総量に対するCe含有比率は50%であり、実施例3の磁石粉体3に
おいて、磁石粉体全量に対するR総量は14.5at%、R総量に対するCe含有比率は65%であった。
また磁石粉体1乃至3の静磁気特性を振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)で測定した。得られた結果を表1にあわせて示す。
実施例は添加元素MとしてNbとTiを用いたが、保磁力を高める効果が得られる添加元素であれば適宜使用することが出来る。保磁力を高める効果が得られる添加元素として、Ti、Nb、Zr、Mo、Hf、Ta及びWが好適である。
尚、非特許文献1(佐川眞人・浜野正昭・平林眞編,「永久磁石−材料科学と応用−」,アグネ技術センター(2007))によると、Pr2Fe14Bの異方性磁界HAは6.5MA/mであると記載され、また非特許文献2(宝野和博・広沢哲,「元素戦略における永久磁石材料」,まぐね Vol.7,290−299.(2012))には、「工業的に応用されている磁石の保磁力でHc>0.25HAの保磁力が達成されていない」「実際には、・・・保磁力が異方性磁界の25%程度」である点が開示されている。これら文献の記載より、本発明が対象とする希土類磁石粉体の固有保磁力Hcjは、1625kA/m程度が上限であると考えられる。
比較例に用いる磁石粉体として、表2に示すマグネクエンチ社製の磁石粉体を使用した。表2に、マグネクエンチ社のカタログに示された静磁気特性をあわせて示す。
上記磁石粉体1乃至9を使用し、以下の手順にてボンド磁石を作製した。
各磁石粉体と、該磁石粉体の質量に対してバインダ樹脂としてエポキシ樹脂を2.5質量%混合し、外径2.6mm、内径1.0mm、長さ3mmの円環状の圧縮成形体(円柱形状)を得た。なおこれら成形体の寸法、質量を統一した。この圧縮成形体を200℃の高温槽内で1時間硬化を行い、被着磁体(未着磁のボンド磁石)を得た。その後、後述するパルス着磁法又は特許文献1の着磁方法により着磁させ、ボンド磁石を作製した。
なお磁石粉体1乃至3(実施例1乃至3)を用いて作成した被着磁体及びボンド磁石を実施例4乃至6とし、磁石粉体4乃至9を用いて作成した被着磁体及びボンド磁石を比較例1乃至6と称する。
実施例4、実施例5および比較例1乃至6の被着磁体をパルス着磁法により外周からの10極着磁を行い、多極着磁されたボンド磁石を得た。テスラメータにより該多極着磁されたボンド磁石の表面磁束密度を測定し、磁極ピークの表面磁束密度の平均値を求めた。また、磁気モーメント法により磁石粉体1乃至9の磁束密度の値をそれぞれ算出し、これを飽和着磁量として、先に求めた表面磁束密度の平均値と比較することにより、パルス着磁による着磁率を算出した。パルス着磁電圧に対する着磁率の関係を図1に示す。ここで着磁電圧600V時の着磁コイルに流れる電流密度は22kA/mm2に相当し、パルス着磁法による一般的な生産条件は450V(着磁電流密度:16kA/mm2)である。
図1に示すように、保磁力Hcjが1000kA/mを超える磁石粉体を用いて作製したボンド磁石(実施例4、実施例5、比較例1および比較例2)では、電流密度22kA/mm2であっても、パルス着磁法では飽和着磁の75%以下の着磁量にとどまるとする結果を得た。
特許文献1には、永久磁石方式[被着磁物:NdFeB等方性ボンド磁石(キュリー点:約350℃)、加熱温度:380℃、着磁用永久磁石:SmCo焼結磁石(キュリー点:約850℃)]又はコイル通電方式(パルス着磁法)[着磁電流密度:22,000A/mm2]により着磁した磁石における、着磁極間距離[mm]に対する表面磁束密度ピーク値の平均値Bo(ave)[mT]の関係(図6)が示されている。これによると、着磁極間距離1mm以下の領域では、全域にわたって永久磁石方式の方がコイル通電方式
よりも優位性があり、特に着磁極間距離が小さい場合ほど優位性が大きいことが示されている。すなわち被着磁物であるリング状永久磁石が極小径で、しかも着磁極数が多いほど、永久磁石方式のほうが着磁法として有利であると示されている。
同文献には、永久磁石方式はコイル通電方式と比べ構成が簡素化され、導線固定用のモールド樹脂が不要であるため着磁治具の寿命が延びること、また着磁に関して電力が不用のために低コスト化にも貢献できるという優位性についても示されている。
また永久磁石方式の結果は、磁界解析により算出した計算値(ポテンシャル)と一致したことから、理論的には100%の着磁率を示す点が述べられている。
このように、飽和着磁が理論上可能である永久磁石方式は、パルス着磁法に比べて高い磁気特性を達成できる優位な着磁法であり、以下に特許文献1の着磁方法(永久磁石方式)を上記磁石粉体に適用した結果を示す。
次に、実施例4乃至6および比較例1乃至6の被着磁体を永久磁石方式により外周10極着磁し、多極着磁されたボンド磁石を得た。なお、永久磁石方式による着磁は、特許文献1および特許文献2に従う手順にて実施し、加熱温度を被着磁物のキュリー点+50℃、加熱時間を3秒とし、着磁部温度を50℃〜275℃の範囲に設定し、着磁部内での保持時間を6秒とした。テスラメータにより該多極着磁されたボンド磁石の表面磁束密度を測定し、表面磁束密度の平均値を求めた。
本評価では、以下の条件でパルス着磁及びパルス着磁後の熱枯らし、並びに永久磁石方式による着磁を実施し、得られた各着磁品の着磁特性(表面磁束密度の平均値)より、飽和着磁特性を算出した。
・パルス着磁条件:電流密度22kA/mm2
・熱枯らし条件:150℃×10分間
・永久磁石方式による着磁条件:着磁部温度50℃、又は着磁部温度150℃
ここで、パルス着磁品の着磁特性をBrP、パルス着磁品の熱枯らし後の着磁特性をBrP1、着磁部温度50℃の永久磁石方式による着磁品の着磁特性をBrU、着磁部温度150℃の永久磁石方式による着磁品の着磁特性をBrU1とし、以下の計算式で飽和着磁特性を算出した。
・飽和着磁特性=BrU÷[1+(BrP1−BrP)÷BrP−(BrU1−BrU)÷BrU]
得られた飽和着磁特性と、各着磁部温度における永久磁石方式による着磁にて得られたボンド磁石の着磁特性(表面磁束密度の平均値)に基いて、減磁率(%)を算出した。
図2に着磁部温度に対する減磁率の変化を示す。
一方、キュリー点が最も高い比較例6(Tc:345℃)のボンド磁石は、着磁部温度80℃(Tc−265℃)で10%減磁しており、着磁部温度が高くなると減磁率はより大きくなる傾向を示した。
また比較例5のボンド磁石(Tc:309℃)においても、着磁部温度が高くなると減
磁率も連続して大きくなり、150℃(Tc−159℃)を超える着磁部温度では減磁率が10%を超えたとする結果を得た。
実施例4乃至6および比較例1乃至9の各ボンド磁石に関するキュリー点並びにキュリー点から60℃低い着磁部温度(Tc−60℃)での減磁率を表3に示す。
このように、本発明の磁石粉体は、特許文献1の着磁方法を行う際の加熱温度を従来の磁石(比較例1乃至比較例6)よりも低くした場合にも着磁を実施でき、150℃以上の高温環境下においても減磁の少ないボンド磁石を提供することが可能となる。
Claims (7)
- R−Fe−B−M(Mは添加元素を表す)系希土類鉄系磁石粉体であって、
希土類元素Rの構成比率が13at%以上15at%以下であり、
該希土類元素Rは、NdとPrとCeとを含み、
該希土類元素R中、CeがR総量の35%以上65%以下であり、そして
該磁石粉体が液体急冷凝固法により作製されることを特徴とする、
希土類鉄系磁石粉体。 - 前記添加元素MがTi、Nb、Zr、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の希土類鉄系磁石粉体。
- 固有保磁力Hcjが1000kA/m以上である、請求項1又は請求項2に記載の希土類鉄系磁石粉体。
- キュリー点が200℃以上270℃以下である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の希土類鉄系磁石粉体。
- 請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の希土類鉄系磁石粉体を用いて得られる希土類鉄系ボンド磁石。
- 希土類鉄系磁石粉体のキュリー点から60℃低い温度での減磁率が8%以下である、請求項5に記載の希土類鉄系ボンド磁石。
- 希土類鉄系ボンド磁石の製造方法であって、
希土類鉄系磁石粉体及びバインダ樹脂の混合物を加圧し、該バインダ樹脂の熱硬化により未着磁の被着磁体を成形する工程、その後、
前記被着磁体を該被着磁体のキュリー点以上の温度に加熱し、続いて磁界中で該被着磁体を該被着磁体のキュリー点未満の温度に降温させながら該被着磁体を着磁させる工程を含み、
前記磁石粉体として請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の希土類鉄系磁石粉体を用いることを特徴とする、
製造方法。
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