JP2007201102A - 鉄基希土類永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

鉄基希土類永久磁石およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、特に熱減磁特性に優れた高性能の鉄基希土類永久磁石を提供する。
【解決手段】本発明の鉄基希土類永久磁石は、組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2lで表され、実質的にNd2Fe14B型結晶相および非磁性粒界相からなり、前記M1元素が主として前記粒界相に存在する。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素である。組成比率x、y、z、l、n、およびpがそれぞれ、3≦x≦10原子%、10≦y≦12原子%、0.1≦z≦2原子%、0≦l≦5原子%、0≦n≦0.5、0≦p≦0.5、およびx/y≧0.5を満足する組成を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉄基希土類永久磁石およびその製造方法に関する。
鉄基希土類永久磁石の1つである等方性Nd−Fe−B系急冷磁石は、硬磁性相であるNd2Fe14B型結晶相を主相として含有し、場合によっては主相の粒界に非磁性相が存在する磁石(単相系磁石)と、微細なNd2Fe14B型結晶相(硬磁性相)および軟磁性相が交換相互作用によって磁気的に結合した磁石(ナノコンポジット磁石)とに大別される。いずれもナノメートルスケールの結晶粒径を有しているが、単相系磁石は、強磁性相として硬磁性相のみを含有しているのに対して、ナノコンポジット磁石は、強磁性相として硬磁性相および軟磁性相を含有している。
これらの急冷磁石は、合金の溶湯を超急冷法によって急速に冷却し、凝固することによって作製される。実用化されている主な超急冷法には、メルトスピニング法とストリップキャスト法とがある。
特許文献1、2は、Nd−Fe−B系単相系磁石を開示しており、特に特許文献2では、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの少なくとも1種の金属元素Mを合金に添加することにより、最終的に保磁力などの磁気特性や耐食性に優れた磁石を製造できることを開示している。特許文献2に開示されている技術によれば、主相であるNd2Fe14B型結晶相に添加元素Mを過飽和状態で固溶させることより、準安定な主相を形成し、それによって保磁力を向上させようとしている。特許文献2の実施例では、添加元素Mの組成比率は2原子%以上である。
特開昭60−9852号公報 特開昭64−703号公報
昨今、自動車用モータなどに使用される磁石においては、耐熱性、特に熱減磁特性に優れた磁石が要求されており、さらなる熱減磁特性の向上が望まれている。通常、熱によって最も低下しやすい磁気特性は保磁力であるので、熱減磁特性を向上させるには磁石の保磁力を向上させることが考えられる。
単相系の磁石では、希土類元素Rの組成比率が10原子%未満の組成領域において、保磁力の小さな軟磁性相が析出しやすくなるため、磁石全体の保磁力が低下しやすい。また、希土類元素Rの組成比率がR2Fe14Bの化学量論組成に略等しい場合は、粒界相がほとんど存在しない組織が形成される。このような組織では、軟磁性相を含んでいないにも関わらず、レマネンスエンハンスメントの効果によりNd2Fe14B型結晶相の飽和磁化(1.6T)から推定される残留磁化(0.8T)を超えるような磁気特性が発揮されるが、隣接する主相が磁気的に分離されないため、特に結晶界面付近では磁化反転が起こりやすく、保磁力が低くなってしまう。
保磁力を向上させる手段の1つとして、希土類元素Rの量をR2Fe14Bの化学量論組成よりも大きくすることが考えられる。しかし、希土類元素Rの組成比率が増えると、磁石が酸化しやすくなるため、酸化による熱減磁が大きくなってしまい、耐熱性が低下する。
また特許文献2に記載の磁石では、保磁力の向上は期待できるものの、不純物であるM元素が主相に固溶するため、残留磁束密度Brが低下する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐熱性、特に熱減磁特性に優れた高性能の鉄基希土類永久磁石を提供することにある。
本発明の鉄基希土類永久磁石は、組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2l(但し、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素)で表現され、組成比率x、y、z、l、n、およびpがそれぞれ、3≦x≦10原子%、10≦y≦12原子%、0.1≦z≦2原子%、0≦l≦5原子%、0≦n≦0.5、0≦p≦0.5、およびx/y≧0.5を満足する組成を有し、実質的にNd2Fe14B型結晶相および非磁性粒界相からなり、前記M1元素が主として前記粒界相に存在する。
好ましい実施形態において、x/(y+z)≧0.5である。
好ましい実施形態において、0.01≦p≦0.5である。
好ましい実施形態において、前記Nd2Fe14B型結晶相の平均結晶粒径が10nm以上300nm以下である。
好ましい実施形態において、前記非磁性粒界相の厚さが10nm以下である。
好ましい実施形態において、残留磁束密度Br≧0.7Tの磁気特性を有する。
本発明によるボンド磁石の製造方法は、上記いずれかに記載の鉄基希土類永久磁石の粉末を用意する工程と、前記鉄基希土類永久磁石の粉末を用いてボンド磁石を作製する工程とを包含するボンド磁石の製造方法。
本発明による鉄基希土類永久磁石の製造方法は、組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2l(但し、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素)で表現され、組成比率x、y、z、l、n、およびpがそれぞれ、3≦x≦10原子%、10≦y≦12原子%、0.1≦z≦2原子%、0≦l≦5原子%、0≦n≦0.5、0≦p≦0.5、およびx/y≧0.5を満足する合金の溶湯を用意する工程と、前記溶湯を冷却し、急冷凝固合金を作製する溶湯急冷工程と、得られた合金を平均粒径が300μm以下の粉末に粉砕する工程とを包含する。
好ましい実施形態において、前記急冷合金に熱処理を施す工程を更に含む。
本発明によれば、耐熱性、特に熱減磁特性に優れた高性能の鉄基希土類永久磁石を提供することが可能になる。
本発明による鉄基希土類永久磁石の組成式は、(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2lによって表される。TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素である。組成比率x、y、z、l、n、およびpが、それぞれ、3≦x≦10原子%、10≦y≦12原子%、0.1≦z≦2原子%、0≦l≦5原子%、0≦n≦0.5、0≦p≦0.5、およびx/y≧0.5の関係を満足している。この磁石は、実質的にNd2Fe14B型結晶相と非磁性粒界相からなり、前記M1元素が主として前記粒界相に存在している。
このように、本発明では、希土類元素Rが10原子%以上12原子%以下の組成範囲において、希土類元素Rの組成比率yに対するB(硼素)およびC(炭素)の組成比率xの割合(x/y)を0.5以上に調整している。すなわち、本発明の磁石では、R2Fe14B型化合物の化学量論組成よりもBリッチな組成により、主相であるNd2Fe14B型結晶相の結晶粒界に厚さ10nm以下の非常に薄いBリッチな非磁性の粒界相が存在する組織が形成されている。このように薄い非磁性の粒界相は、隣接する主相を磁気的に分離し、高保磁力化と優れた角形性の実現に寄与している。なお、Cは必須ではない。
M1元素は、主として、このように薄い粒界相に微量に存在し、粒界相を安定化させるとともに、粒界相を非晶質化させやすくし、結晶粒成長を抑制する機能を発揮している。M1元素を添加しない場合、粒界相が不安定となり、例えばFeが粒界相のBと結びついてFe−B相(鉄基硼化物相)などの化合物相を形成しやすく、粒界相が粗大化しやすい。このようにして粒界相が厚くなった磁石は、粗大な軟磁性相を含むナノコンポジット組織と同様の組織を有することとなるため、保磁力が低くなってしまう。M1元素はBと結びつきやすく、鉄基硼化物相の形成を防ぐことにより、粒界相を安定化させ、粗大化を抑制する。
M1元素はBと結びつきやすく、かつ微量であるので、実質的に粒界相にのみ存在し、主相に固溶しない。よって、主相に余計な不純物を含まないため、Nd2Fe14B型結晶相の磁化から期待される高い磁気特性が充分に発揮される。
本発明では、Cは必須元素ではないが、Bを均一に分散させる効果を有するため、添加することが好ましい。Cを添加すると、粒界相においてBと結びついているM1元素を均一に分散させるため、粒界相は薄くなる。このため、M1が主相に固溶することが抑制される。
以下、本発明による鉄基希土類永久磁石の製造方法を説明する。
[合金溶湯の作製]
本発明では、まず、組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2lで表現される合金の溶湯を用意する。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素である。組成比率x、y、z、l、n、およびpは、それぞれ、3≦x≦10原子%、10≦y≦12原子%、0.1≦z≦2原子%、0≦l≦5原子%、0≦n≦0.5、0≦p≦0.5、およびx/y≧0.5の関係を満足する。
[組成限定理由]
(B1-pp)によって表現される要素は、B(硼素)を必須として、C(炭素)を含み得る。BおよびCの組成比率xが大きくなると、Fe−B相などの軟磁性相が析出しやすくなり、保磁力が低下する恐れがある。本発明における組成比率xの上限は10原子%である。この組成比率xが3原子%よりも少なくなると、Bリッチな粒界相を形成しなくなるため、組成比率xの下限は3原子%である。組成比率xの好ましい範囲は5≦x≦10原子%であり、より好ましい範囲は6≦x≦9原子%である。なお、前述した理由により、B以外にCが存在していることが好ましく、BおよびCの全体に占めるCの割合pは0.01〜0.2であることが好ましい。
RはY(イットリウム)および希土類元素から選択された少なくとも1種の希土類元素である。Rは、PrまたはNdを必須元素として含むことが望ましく、その必須元素の一部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組成比率yが10原子%よりも低くなると、α―Fe相、Fe−B相などの軟磁性相が析出しやすくなり、保磁力が低下する恐れがある。逆にRの組成比率yが12原子%よりも高くなると、R−rich相が多く析出する。R−rich相の析出量が増加すると、酸化されやすく、熱減磁特性が低下する。よってRの組成yの範囲は10≦y≦12原子%である。
M1は、Bと結びついて、Bリッチな粒界相を安定化させる必須の元素である。M1の組成比率zが0.1原子%よりも小さくなると、M1添加の効果が十分発揮されない。また、組成比率zが2原子%よりも大きくなると、過剰のM1元素が主相に固溶したり、Bリッチな粒界相の体積率が増すため、残留磁束密度Brが低下する。組成比率zの好ましい範囲は0.1≦z≦1.5原子%である。
希土類元素Rの組成比率に対するB(およびC)の組成比率の割合は0.5以上である。この割合が0.5を下回ると、Bリッチな粒界相を形成しなくなる。M1元素添加により、R2Fe14B型結晶相を形成するための有効なBの濃度が減少することが予測される。したがって、R、B、M1元素の原子数比率の関係がx/(y+z)≧0.5となることが好ましい。このような関係を満足するとき、M1元素が粒界のBと結びついて、主相に固溶しにくくなる。
合金には、Si、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、Nb、Hf、Ta、WおよびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素M2を加えても良い。このような元素の添加により、磁気特性が向上するほか、最適熱処理温度域を拡大させる効果が得られるが、M2の組成比率lが5原子%を越えると、磁化の低下を招く。よってM2の好ましい組成範囲は0≦l≦5原子%、より好ましい組成範囲は0≦l≦3原子%である。
Feは上述の元素の含有残余を占めるが、Feの一部をCoおよびNiの1種または2種の繊維金属元素Tで置換しても所望の硬磁気特性を得ることができる。Feに対するTの置換量が50%を越えると0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られない。このため、置換量nは0%以上50%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換することによって、減磁曲線の角形性が向上すると共に、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲は0.5%以上40%以下である。
[急冷凝固合金の作製]
本発明では、公知のメルトスピニング法やストリップキャスト法を用いて上記原料合金の溶湯を作製し、この合金溶湯を急冷して急冷凝固合金を製造する。
メルトスピニング法では、合金溶湯の表面に背圧を印加することにより、合金溶湯をノズルから冷却ロールの表面に噴射し、合金溶湯から熱を急速に奪い取ることによって急冷凝固合金を作製する。冷却ロールは高速で回転しているため、リボン状に薄く延びた急冷凝固合金が形成される。
本実施形態では、例えば、図1に示す急冷装置を用いて原料合金を製造する。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。
図1の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。図1(a)は全体構成図であり、図1(b)は、一部の拡大図である。
図1(a)に示されるように、溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えている。
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲内に制御するため、ポンプに接続されている。
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21の出湯がスムーズに実行される。
冷却ロール7は、熱伝導度の点からAl合金、銅合金、炭素鋼、真鍮、W、Mo、青銅から形成され得る。ただし、機械的強度および経済性の観点から、Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成することが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
図1に示す装置によれば、例えば合計10kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯(合金リボン)22となる。
一方、本発明においては、例えば図2に示すストリップキャスト装置を用いて合金を作成することもできる。図2の装置は、原料合金を溶解し、貯えることのできる溶解坩堝11と、溶解坩堝11から注がれる合金溶湯12を受けて所定位置まで溶湯12を案内するシュート(案内手段)14と、シュート14の先端から注がれる合金溶湯12を急冷する冷却ロール13とを備えている。
シュート14は、水平方向に対して角度βで傾斜した溶湯案内面を有しており、案内面上を流れる溶湯の流速を制御するとともに、その流れを整流し、それによって冷却ロール13への溶湯の安定した連続供給を実現する。
冷却ロール13の外周表面に接触した溶湯は、回転する冷却ロール13に引きずられるようにしてロール周面に沿って移動し、この過程において冷却され、急冷合金薄帯15となる。ストリップキャスト法では、溶湯12が冷却ロール13に接触する位置(溶湯パドルの形成位置)から冷却ロールの回転軸におろした垂線と鉛直方向との間の角度αが重要な意味をもつ。冷却ロール13の回転方向の反対側に角度αの正方向を規定する場合、角度αが大きくなると、溶湯12と冷却ロール13との接触長さが長くなる。ストリップキャスト法による場合は、角度αを比較的大きくすることができるため、ロール周方向における溶湯とロール外周面との接触長さが比較的長くでき、溶湯の冷却はロール上で略完了する。
なお、ストリップキャスト法によれば、メルトスピニング法による場合に比べて相対的に厚い薄帯状の急冷合金が形成される。このため、急冷合金の粉砕後に得られる粉末粒子は等軸的な形状(球状に近い形状)を有することになる。なお、従来の相対的に薄い急冷合金から作製された粉末の場合、粒子の形状は扁平であったため、射出成形でボンド磁石を作製するときは、磁石粉末の流動性が悪く、磁石粉末の充填性が低かった。これに対し、ストリップキャスト法で作成した磁石粉末では、粉末粒子のアスペクト比(短軸サイズ/長軸サイズ)が0.3〜1の範囲にあるため、磁石粉末の充填性が向上するという利点が得られる。
[熱処理]
熱処理はアルゴンなどの不活性雰囲気または真空中で実行することが好ましい。昇温速度は例えば1℃/秒〜20℃/秒に設定し、550℃以上850℃以下の温度で1秒以上1時間以下の時間保持した後、室温まで冷却することが好ましい。この熱処理によって、残存するアモルファス相中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノあるいはサブミクロン結晶組織が形成される。熱処理工程は必須ではないが、急冷合金組織中にアモルファス相を残存させ、熱処理することにより、金属組織が均質微細化され、良好な磁気特性が得られやすい。
なお、熱処理温度が550℃を下回るとNd2Fe14B型結晶相が析出しにくく、急冷条件によっては保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。また、熱処理温度が850℃を越えると、各構成相の粒成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角形性が劣化する。このため熱処理温度は550℃以上850℃以下が好ましく、より好ましくは600℃以上800℃以下である。熱処理雰囲気は、合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気が好ましい。0.1kPa以下の真空中で熱処理を行っても良い。
熱処理前の急冷合金には、R2Fe14B型化合物相およびアモルファス相以外に、α−Fe相およびまたは鉄基硼化物相を含んでいてもよい。熱処理後におけるR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、単磁区結晶粒径である300μm以下となる必要がある。α−Fe相や鉄基硼化物相も析出したナノコンポジット組織となる場合、R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。このときのα−Fe相や鉄基硼化物相は1nm以上50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
また、R2Fe14B型化合物相の結晶粒界にアモルファス相が析出したコンポジット組織となっていてもよく、粒界アモルファス相の粒径は、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
[粉砕]
こうして得られた合金を粉砕し、平均粒径が300μm以下の粉末を作製する。粉砕は、公知の粉砕装置を用いて任意の方法で実施することができる。粉砕後の磁石粉末は射出成形用に好適に用いられる。磁粉タップ密度は3.00g/cc以上であり、ナイロン系樹脂を用いた射出成形コンパウンドのMFRが100以上、PPS樹脂を用いた射出成形コンパウンドのMFRが50以上に設定することができる。ここで、MFRとは320℃で15kgの荷重をかけたとき10分間で流れたコンパウンドの重量(g)である。ナイロン系樹脂を用いる場合の磁粉比率は92質量%以上、PPS樹脂を用いる場合の磁粉比率は88質量%以上に設定することが好ましい。
表1の試料No.1〜No.5の合金組成になるように、純度99.5%以上のB、C、Fe、Co、Nd、M1およびM2の原料合金を総量が600gとなるように秤量した。この原料合金をアルミナ製坩堝に投入した後、Ar雰囲気中において、高周波加熱によって溶解した。溶湯温度が1500℃に到達した後、水冷した銅製鋳型上に鋳込み、平板上の合金を作製した。
上記の合金を総量が10gとなるように秤量し、底部に直径0.8mmオリフィスを有する石英坩堝内に投入した。圧力1.33〜47.92kPaのAr雰囲気中において、合金を高周波加熱によって溶解した。溶湯温度が1350℃に達した後、溶湯の湯面をArガスによって加圧し、オリフィスから溶湯を噴射した。噴射された溶湯は、室温にて20m/秒のロール表面速度にて回転する純銅製の冷却ロールの外周面に接触し、急冷され、薄帯状に凝固した。オリフィスと冷却ロールとの間隔は0.7mmであった。得られた急冷合金の幅は2mm〜3mm、厚さは20μm〜50μmであった。
次に、上記の方法によって作製された急冷凝固合金を、Ar雰囲気中において、600〜800℃の熱処理温度域で6〜8分間保持し、その後室温まで冷却して薄帯を取り出し、幅2mm〜3mm、厚さ20μm〜50μm、長さ3mm〜5mmの試料を作製し、VSMを用いて磁気特性を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2007201102
Figure 2007201102
実施例の残留磁束密度Brはいずれも0.7T以上であり、保磁力HcJも800kA/m以上であった。
本発明は、単相系磁石のみならず、ナノコンポジット磁石にも適用され、各種分野で好適に利用され得る。
(a)および(b)は、本発明による鉄基希土類合金ナノコンポジット磁石の製造に用いられる装置を示す図である。 本発明による鉄基希土類合金ナノコンポジット磁石の製造に用いられる他の装置の全体構成例を示す図である。
符号の説明
11 溶解坩堝
12 合金溶湯
13 回転冷却ロール
14 シュート
15 急冷凝固合金

Claims (9)

  1. 組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2l(但し、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素)で表現され、組成比率x、y、z、l、n、およびpがそれぞれ、
    3≦x≦10原子%、
    10≦y≦12原子%、
    0.1≦z≦2原子%、
    0≦l≦5原子%、
    0≦n≦0.5、
    0≦p≦0.5、
    およびx/y≧0.5
    を満足する組成を有し、
    実質的にNd2Fe14B型結晶相および非磁性粒界相からなり、前記M1元素が主として前記粒界相に存在する、鉄基希土類永久磁石。
  2. x/(y+z)≧0.5である、請求項1に記載の鉄基希土類永久磁石。
  3. 0.01≦p≦0.5である、請求項1に記載の鉄基希土類永久磁石。
  4. 前記Nd2Fe14B型結晶相の平均結晶粒径が10nm以上300nm以下である請求項1に記載の鉄基希土類永久磁石。
  5. 前記非磁性粒界相の厚さが10nm以下である請求項1に記載の鉄基希土類永久磁石。
  6. 残留磁束密度Br≧0.7Tの磁気特性を有する請求項1から5のいずれかに記載の鉄基希土類永久磁石。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の鉄基希土類永久磁石の粉末を用意する工程と、
    前記鉄基希土類永久磁石の粉末を用いてボンド磁石を作製する工程と、
    を包含するボンド磁石の製造方法。
  8. 組成式が(Fe1-nn100-x-y-z-l(B1-ppxyM1zM2l(但し、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)を含み得る1種以上の希土類元素、M1はZr、Nb、V、Mo、Cr、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種の元素、M2はSi、Al、Ga、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、In、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の元素)で表現され、組成比率x、y、z、l、n、およびpがそれぞれ、
    3≦x≦10原子%、
    10≦y≦12原子%、
    0.1≦z≦2原子%、
    0≦l≦5原子%、
    0≦n≦0.5、
    0≦p≦0.5、
    およびx/y≧0.5
    を満足する合金の溶湯を用意する工程と、
    前記溶湯を冷却し、急冷凝固合金を作製する溶湯急冷工程と、
    得られた合金を平均粒径が300μm以下の粉末に粉砕する工程と、
    を包含する鉄基希土類永久磁石の製造方法。
  9. 前記急冷合金に熱処理を施す工程を更に含む、請求項8に記載の鉄基希土類永久磁石の製造方法。
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