JP3801456B2 - 鉄基希土類系永久磁石合金およびその製造方法 - Google Patents

鉄基希土類系永久磁石合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Ndを含む鉄基希土類系永久磁石合金およびその製造方法に関し、特にNd以外の希土類元素を不純物として含む希土類系永久磁石合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電用機器、OA機器、および電装品等において、より一層の高性能化と小型軽量化が要求されている。そのため、これらの機器に使用される永久磁石については、磁気回路全体としての性能対重量比を最大にすることが求められており、例えば残留磁束密度Brが0.5T(テスラ)以上の永久磁石を用いることが要求されている。しかし、従来の比較的安価なハードフェライト磁石によっては、残留磁束密度Brを0.5T以上にすることはできない。
【0003】
現在、0.5T以上の高い残留磁束密度Brを有する永久磁石としては、粉末冶金法によって作製されるSm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系磁石以外では、粉末冶金法によって作製されるNd−Fe−B系磁石や、液体急冷法によって作製されるNd−Fe−B系急冷磁石が高い残留磁束密度Brを発揮する。前者のNd−Fe−B系磁石は、例えば特開昭59−46008号公報に開示されており、後者のNd−Fe−B系急冷磁石は例えば特開昭60−9852号公報に開示されている。Nd−Fe−B系磁石は、安価なFeを主成分として含む鉄基希土類合金磁石であり、Sm−Co系磁石に比べて安く作製することができる。
【0004】
Nd−Fe−B系磁石として、希土類元素の濃度が比較的に低い組成、すなわち、Nd3.8Fe77.219(原子%)の近傍組成を持ち、Fe3B型化合物を主相とする磁石材料が知られている(R. Coehoorn等、J. de Phys, C8,1998, 669〜670頁)。この永久磁石材料は、液体急冷法によって作製したアモルファス合金に対して結晶化熱処理を施すことにより、軟磁性であるFe3B相および硬磁性であるNd2Fe14B相が混在する微細結晶集合体から形成された準安定構造を有しており、「ナノコンポジット磁石」と称されている。このようなナノコンポジット磁石については、1T以上の高い残留磁束密度Brを有することが報告されているが、その保磁力HcJは160kA/m〜240kA/mと比較的低い。そのため、この永久磁石材料の使用は、磁石の動作点が1以上になる用途に限られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、Nd−Fe−B系磁石は、Sm−Co系磁石に比べると安価に作製することができるが、Nd−Fe−B系磁石の製造工程に要する費用が高いという問題がある。製造工程費用が高い理由のひとつとして、Ndの分離精製や還元反応に大規模な設備と多大な工程が必要になることが挙げられる。
【0006】
上述のようなナノコンポジット磁石を作製する場合、希土類元素を含む材料としては、実際には高純度(例えば、純度99,8%)のNd材料を用いることが多い。このように高純度のNd材料を用いる理由は、Nd2Fe14B相を形成するために必須とされるNd以外に、他の希土類元素(例えば、La、Ce)などの不純物が材料中に含まれていると、得られる磁石合金の磁気特性(保磁力HCJなど)が大きく低下するおそれがあったからである。特に、Ndの量が9.5原子%以下と比較的少ない場合、LaやCeが含まれていると保磁力の低下が著く生じる。従って、Nd−Fe合金や、NdおよびPrを含むジジム合金を用いることはあっても、通常、LaやCeを含む材料を用いることは極力避けられていた。
【0007】
一方、ナノコンポジット磁石を作製する場合において、アモルファス生成能に優れたLaを原料合金に添加し、その原料合金の溶湯を急冷することによってアモルファス相を主相とする急冷凝固合金を作製した後、結晶化熱処理でNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を析出・成長させ、いずれの相も数十nm程度の微細なものとする技術も報告されている(W.C.Chan, et.al. "THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPERTIES OFα-Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES", IEEE, Trans. Magn. No. 5, INTERMAG. 99, Kyongiu, Korea pp.3265-3267, 1999)。ただし、この論文においては、希土類元素であるNdの組成比率を9.5at%よりも11.0at%に増加させることがNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を微細化する上で好ましいことが教示されている。すなわち、アモルファス生成能を向上させることを目的として所定量のLaを添加している場合には、Ndの量を比較的少なくしたままで、所望の磁気特性を有するNd−Fe−B系永久磁石合金を作製することは困難であった。Ndの量を増加させる場合、製造コストが上昇するという問題が生じる。
【0008】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、比較的廉価に作製することができる磁気特性に優れたNd−Fe−B系永久磁石合金を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による鉄基希土類系永久磁石合金は、組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-mR1myz(但し、TはCo、Niからなる群から選択された1種または2種の元素、Qは、BまたはCからなる群から選択された1種または2種の元素、R1は、Y、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素、MはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbからなる群から選択された1種以上の元素)で表され、x、y、z、k、およびmがそれぞれ、10<x≦25原子%、2≦y≦9.5原子%、0≦z≦10原子%、0≦k≦0.5、および0<m≦0.15を満足する。
【0010】
好ましい実施形態において、前記mが0.01≦m≦0.15を満たす。
【0011】
好ましい実施形態において、前記MはTiを必ず含む。
【0012】
好ましい実施形態において、前記Tiの組成比率が0.5原子%以上7.0原子%以下であることを特徴とする。
【0013】
好ましい実施形態において、前記希土類元素R1と異なる種類の希土類元素R2(但し、R2は、Pr,Dy,Tbの1種または2種以上)をさらに含み、前記組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-m-nR1mR2nyzで表され、nが0<n≦0.25を満足する。
【0014】
好ましい実施形態において、前記mおよびnが0<m+n≦0.25を満足する。
【0015】
本発明の鉄基希土類系永久磁石合金の製造方法は、組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-mR1myz(但し、TはCo、Niからなる群から選択された1種または2種の元素、Qは、BまたはCからなる群から選択された1種または2種の元素、R1は、Y、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素、MはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbからなる群から選択された1種以上の元素)で表され、x、y、z、k、およびmがそれぞれ、10<x≦25原子%、2≦y≦9.5原子%、0≦z≦10原子%、0≦k≦0.5、0<m≦0.15を満足する鉄基希土類原料合金の溶湯を用意する工程と、前記合金溶湯を案内手段上に供給し、前記案内手段上で前記合金溶湯の横方向流れを形成し、それによって、前記合金溶湯を冷却ロールとの接触領域に移動させる工程と、前記合金溶湯を前記冷却ロールによって急冷し、Nd2Fe14B型化合物相を含む急冷合金を作製する冷却工程とを包含する。
【0016】
本発明の希土類磁石は、上記製造方法を用いて作製された鉄基希土類系永久磁石合金を結晶化熱処理することによって作製される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本願発明者は、強磁性を有するNd2Fe14B型化合物相と同じく強磁性である鉄基硼化物相およびα−Fe相とが同一の金属組織内に混在する鉄基希土類系永久磁石合金において、必須となるNd以外に不純物として混入する可能性のある希土類元素の許容濃度について検討した。その結果、全量Ndの場合の最大エネルギー積(BH)maxを100%とすると、最大エネルギー積(BH)maxの低下率を20%以内に抑えるためには、全希土類濃度に占める希土類不純物(Y,La,Ce)の割合を15%以内にする必要があることを見出し、それによって本発明を完成させた。
【0018】
本発明によれば、組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-mR1myz(但し、TはCo、Niからなる群から選択された1種または2種の元素、Qは、BまたはCからなる群から選択された1種または2種の元素、R1は、Y、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素、MはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbからなる群から選択された1種以上の元素)で表され、x、y、z、k、およびmがそれぞれ、10<x≦25原子%(at%)、2≦y≦9.5原子%、0≦z≦10原子%、0≦k≦0.5、0<m≦0.15を満足する鉄基希土類系永久磁石合金が提供される。
【0019】
本発明で最も特徴的な点は、Ndの量が9.5at%以下と比較的少ない希土類磁石合金において、希土類不純物R1としてY、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素R1が混入される場合に、その含有率を、Ndを含む全希土類元素R量に対する比率で15at%以下に抑えていることである。本発明の鉄基希土類系永久磁石合金は、上記希土類不純物R1を含んでいるが、その量が全希土類元素の量の15at%以下と比較的少ないため、全量がNdの場合に比べて最大エネルギー積(BH)maxの低下率が20%程度に抑えられる。また、本発明の鉄基希土類系永久磁石合金は、上記範囲内であれば比較的少量のY、Ce、およびLaを含んでいても良く、高純度のNd材料を用いずとも、磁気特性の高いNd−Fe−B系磁石合金を作製することが可能になる。
【0020】
本発明の希土類系永久磁石合金は、Ndの原料として比較的安価に手に入れることができる低純度のNd含有材料を用いて作製され得る。例えば、ミッシュメタルは、Nd以外にもLaやCeを含むことが知られているが、LaおよびCeの量がNdを含む希土類元素全体の量の15at%以下であれば、Ndの精製を必要とせずこれを用いることができる。また、ミッシュメタルがLaやCeを比較的多く含む場合であっても、より高純度のNd材料と組み合わせて用いることで、LaとCeとを合算した量が全体として希土類元素全体の量の15at%以下に調整されていれば、Ndの精製を行なうことなくこれを用いて所望の磁気特性を有する希土類磁石合金を作製することができる。これにより、製造コストを大幅に削減することが可能になる。
【0021】
なお、液体急冷法によってナノコンポジット磁石を作製する場合において、LaやCeなどの希土類不純物の量が増加すると、保磁力HCJの低下や、減磁曲線の角型性の低下が生じる。特に、添加元素Mとして所定量(例えば、0.5〜7.0at%)のTiが添加されている場合、LaやCeの量を所定範囲内に設定することが重要である。以下、Tiを含有するNd−Fe−B系磁石について説明する。
【0022】
Nd−Fe−B系希土類合金の溶湯を比較的遅い冷却速度でアモルファス化するためには、B(ホウ素)を10原子%より多く添加することが望ましい。Bが、合金のアモルファス生成能を高める作用を有しているからである。しかし、このようにBを多く添加した場合は、急冷合金中に存在するアモルファス相がどうしてもBを過剰に含むことになるため、このBがその後の結晶化熱処理で他の元素と結合して析出・成長しやすくなると考えられる。このように、熱処理前のアモルファス相に含まれるBと他の元素とが結合して、磁化の低い硼化物が生成されると、結晶化熱処理を行った後も、B濃度の高い非磁性のアモルファス相が金属組織中に残存し、均質な微細結晶組織が得られないため、磁石全体として磁化が低下してしまう。
【0023】
これに対し、Tiを添加した場合、Tiの代わりにV、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類の金属を添加した場合とは異なり、磁化の低下が生じず、むしろ磁化が向上する。また、Tiを添加した場合には、前述の他の添加元素と比べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなる。この磁化の増加は、Tiの働きにより、急冷凝固合金中に存在するホウ素リッチな非磁性アモルファス相から強磁性鉄基硼化物などの硼化物相を生成し、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス相の体積比率を減少させたために得られたものと考えられる。
【0024】
特に磁石合金の組成範囲のうち、BおよびTiが比較的に少ない場合は、熱処理によって強磁性を有する鉄基硼化物相が析出しやすい。この場合は、非磁性のアモルファス相中に含まれるBが鉄基硼化物中に取り込まれる結果、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス相の体積比率が減少し、強磁性の結晶相が増加するため、残留磁束密度Brが向上する。
【0025】
また、Tiを添加すると、α−Feが析出する温度よりも高い温度領域において各構成相の粒成長が抑制され、優れた硬磁気特性が発揮される。そして、Nd2Fe14B相やα−Fe相以外の強磁性相を生成し、それによって、合金内に3種類以上の強磁性相を含む組織を形成することが可能になる。Tiに代えて、Nb、V、Crなどの金属元素を添加した場合は、α−Fe相が析出するような比較的高い温度領域でα−Fe相の粒成長が著しく進行し、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合によって有効に拘束されなくなる結果、減磁曲線の角形性が大きく低下する。
【0026】
なお、Tiを添加せずにNb、Mo、Wを添加した場合、α−Feが析出しない比較的低い温度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優れた良好な硬磁気特性を得ることが可能であるが、このような温度で熱処理を行なった合金では、R2Fe14B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分散して存在していると推定され、ナノコンポジット磁石の構成は形成されない。また、より高い温度で熱処理を行なうと、アモルファス相中からα−Fe相が析出する。このα−Fe相は、Tiを添加した場合と異なり、析出後、急激に成長し、粗大化する。このため、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合によって有効に拘束されなくなり、減磁曲線の角形性が大きく劣化してしまうことになる。
【0027】
このようにTiを添加した場合のみ、α−Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の晶出を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素としてBとともに重要な働きをするため、合金溶湯を急冷する際の冷却速度を1×103℃/秒〜8×104℃/秒程度の比較的低い値にしても、α−Feを析出させることなく、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混在する急冷合金を作製することが可能になる。このことは、種々の液体急冷法の中から、特に量産に適したストリップキャスト法の採用を可能にするため、低コスト化にとって重要である。
【0028】
このように、Tiが添加されている場合、希土類元素量が比較的少ない(9.5at%以下)原料合金を用いながら、磁化(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角形性にも優れた永久磁石を量産することができる。
【0029】
なお、Tiを含む場合、TiとBとが結合した化合物(TiB2など)が溶湯中で形成されやすく、その結果、溶湯の液相線温度が従来の組成を有する鉄基希土類磁石原料合金の溶湯に比べて高くなる。これに対し、C(炭素)を添加すれば、合金溶湯の液相線温度が下がるため、その分、出湯温度を低下させても、溶湯粘度はほとんど増加しない。従って、ストリップキャスト法などによって急冷合金を作製する場合において、安定した出湯を継続的に行なうことが可能になる。出湯温度が低くなると、冷却ロールの表面で充分な冷却を達成することができるため、ロールでの巻きつきを防止するとともに、急冷凝固合金組織を均一微細化することが可能になる。
【0030】
上述のように、Tiを含むNd−Fe−B系磁石合金では、希土類元素量が比較的少ない(9.5at%以下)原料合金を用いながら、磁化(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角形性にも優れた永久磁石を量産することができる。従って、本発明の好ましい実施形態では、磁石合金は添加元素としてTiを含む。Tiを含有する場合、Y、La、Ceからなる群から選択される希土類不純物R1が混入していても、その量が希土類元素全体の15at%以下であれば、実用に適した磁気特性に優れた永久磁石を作製することが可能である。なお、本発明者の実験によれば、上述のようなTiの添加によって得られる磁気特性向上の効果は、LaやCeによって大きく低下することがわかった。従って、Tiを添加した場合には、LaやCeの量を制御することが特に重要である。
【0031】
[組成の限定理由]
本発明の希土類系磁石合金は、希土類元素RとしてNdを必須として含むとともに、希土類不純物R1として特定範囲の量のY,La,Ceを含む。さらに、他の種類の希土類不純物R2として、特定範囲の量のPr,Tb,Dyを含んでいてもよい。Ndと希土類不純物(R1、または、R1およびR2)とを合わせた希土類元素Rの量が、組成比率で2at%未満ではNd2Fe14B型結晶構造を有する化合物相が十分析出しないため、硬磁気特性が得られない。また、希土類元素Rの量が、組成比率で9.5at%を越えると、鉄および鉄基硼化物が析出しないためナノコンポジット組織とならず高い磁化が得られない。このため、希土類元素Rの組成比率を、2at%以上9.5at%以下の範囲に設定する。好ましくは3at%以上9.5at%以下が良い。さらに好ましくは4at%以上9.2at%以下が良い。
【0032】
全希土類元素Rに対する希土類不純物R1(Y,La,Ce)の含有率が15at%を越えるとHcJが大幅に低下するため、その含有率は15at%以下でなければならない。すなわち、合金中の希土類元素Rが(Nd1-mR1m)で表されるとき、0<m≦0.15を満たす。また、製造コストを低減するためには、所望の磁気特性が得られる限りにおいて、希土類不純物R1の量が多くてもよい。高純度のNd材料を用いずとも、ミッシュメタルなどの比較的安価な材料を利用することができるからである。このため、上記mは、0.01≦m≦0.15であってもよい。さらに低コストで磁石合金を作製するためには、上記mは、0.05≦m≦0.15であってもよい。
【0033】
また、希土類不純物R2(Pr,Tb,Dy)を含む場合、全希土類元素Rに対するR2の含有率が25at%を越えると、減磁曲線の角形性が大きく劣化し、全量Ndの場合の最大エネルギー積(BH)maxに比べ(BH)maxが20%以上低下する。このため、全希土類濃度に対する希土類不純物R2の含有率は25at%以内であることが望ましい。すなわち、合金中の希土類元素Rが(Nd1-m-nR1mR2n)で表されるとき、0<n≦0.25を満たすことが望ましい。また、希土類不純物R2の含有率が20at%以内(n≦0.20)であればTb,Dyについては減磁曲線の角形性の大きな劣化を伴うことなくHcJを向上できる。このように希土類不純物R2の含有率が25at%以下に調節される限りにおいて、比較的純度の低いNd材料(例えば、Nd以外の不純物としてPrを含むジジム合金)を利用して所望の磁気特性を有する磁石合金を作製することができる。製造コストを削減するという観点からは、R2の含有率nは、0.05≦n≦0.25であることが望ましく、さらに0.1≦n≦0.25であることが望ましい。
【0034】
なお、上記希土類不純物R1とR2とを合わせた量がNdの量に対して多い場合、実用に適した磁気特性を有する磁石合金を作製することができなくなる。このため、希土類元素R全量に対するR1およびR2の含有率m+nは、0<m+n≦0.25であることが望ましい。また、製造コスト削減するという観点からは、0.1≦m+n≦0.25であることがさらに望ましい。
【0035】
Bは、10at%以下では液体急冷法を用いる場合にアモルファス化が促進しないか、または、ナノオーダーの均一な微細結晶組織が得られない。その結果、最適結晶化熱処理後、良好な減磁曲線の角形性を有するナノコンポジット組織が形成されず、優れた硬磁気特性が得られない。また、Bの組成比率が25at%を越えるとNd2Fe14B型化合物相が析出せず硬磁気特性が得られない。従って,Bの組成比率は、10at%より大きく25at%以下であるように設定される。好ましくは、10at%より大きく20at%以下に設定するのが良く、さらに好ましくは10.5at%以上20at%以下の範囲に設定するのが良い。なお、Bの50%までをCで置換してもよく、この場合には、磁気特性および金属組織に影響を与えない。
【0036】
Feは、実質的に上述の元素の残余を占めるが、Feの一部をCoおよびNiの1種または2種で置換しても所望の硬磁気特性を得ることができる。ただし、Feに対する置換量が50%を超えると0.5T以上の残留磁束密度Brを得ることができなくなるため、置換量は0%以上50%以下の範囲に限定される。尚、Coを置換することでHcJの向上するとともに、Nd2Fe14B相のキュリー温度が上昇することで耐熱性が向上する。この置換量の好ましい範囲は、0.5%以上15%以下である。
【0037】
また、添加元素Mとして、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pbの1種または2種以上の元素を加えることで、磁気特性が向上する他、最適熱処理温度域を拡大する効果が得られるが、添加元素Mの組成比率が10at%を超えると磁化の低下を招くため、0at%以上10at%以下に限定される。好ましくは、0.1at%以上5at%以下に設定される。好ましい実施形態では添加元素MはTiを必ず含むが、Tiの組成比率は0.5at%以上7.0at%以下であることが望ましい。
【0038】
以下、本発明の1実施形態を説明する。本実施形態では、例えば、図1に示す急冷装置を用いて上記組成を有するNd−Fe−B系磁石合金を製造する。酸化しやすいNdやFeを含む磁石合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素はNdと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0039】
[液体急冷装置]
図1の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。図1(a)は全体構成図であり、図1(b)は、一部の拡大図である。
【0040】
図1(a)に示されるように、溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
【0041】
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えている。
【0042】
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲内に制御するため、ポンプに接続されている。
【0043】
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
【0044】
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21の出湯がスムーズに実行される。
【0045】
冷却ロール7は、Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成することが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
【0046】
図1に示す装置によれば、例えば合計10kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯(合金リボン)22となる。
【0047】
[液体急冷法]
まず、前述の組成式で表現される原料合金の溶湯21を作製し、図1に示す液体急冷装置の溶解室1の貯湯容器4に貯える。次に、この溶湯21は出湯ノズル5から減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯され、冷却ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急冷凝固方法としては、冷却速度を高精度に制御できる方法を用いる必要がある。
【0048】
本実施形態の場合、溶湯21の冷却凝固に際して、冷却速度を1×102〜1×108℃/秒とすることが好ましく、1×104〜1×106℃/秒とすることが更に好ましい。
【0049】
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下する。本実施形態では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜常圧の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜熱効果が強まり、合金中にNd2Fe14B型化合物の均一微細に析出・成長させることができる。なお、適切な量のTiを原料合金中に添加した場合には、上述したような冷却過程を経た急冷合金中においてα−Feが優先的に析出・成長しないため、最終的な磁石特性が向上する。
【0050】
本実施形態では、ロール表面速度を10m/秒以上30m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧力を30kPa以上にすることによって、平均粒径50nm以下の微細なR2Fe14B型化合物相を含む急冷合金を作製している。
【0051】
なお、合金溶湯の急冷法は、上述の片ロール法に限定されず、双ロール法、ガスアトマイズ法、ノズルやオリフィスによる流量制御を行なわない方法であるストリップキャスト法、更には、ロール法とガスアトマイズ法とを組み合わせた冷却法などであってもよい。
【0052】
上記急冷法の中でも、ストリップキャスト法の冷却速度は比較的低く、1×103〜8×104℃/秒である。なお、適切な量のTiを合金に添加すれば、ストリップキャスト法による場合でもFe初晶を含まない組織が大半を占める急冷合金を形成することができる。ストリップキャスト法は、工程費用が他の液体急冷法の半分程度以下であるため、片ロール法に比べて大量の急冷合金を作製する場合に有効であり、量産化に適した技術である。原料合金に対してTiを添加しない場合や、Tiの代わりにCr、V、Mn、Mo、Ta、および/またはWを添加した場合には、ストリップキャスト法を用いて急冷合金を形成しても、Fe初晶を多く含む金属組織が生成するため、所望の金属組織を形成することができない。
【0053】
[熱処理]
本実施形態では、熱処理をアルゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を5℃/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃以下の温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温まで冷却する。この熱処理によって、アモルファス相中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポジット組織構造が形成される。本実施形態では、熱処理の開始時点で既に微細なNd2Fe14B型結晶相が存在しているため、α−Fe相や他の結晶相の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。
【0054】
なお、熱処理温度が550℃を下回ると、熱処理後もアモルファス相が多く残存し、急冷条件によっては、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。また、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以上850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度の範囲は570℃以上820℃以下である。
【0055】
本実施形態では、雰囲気ガスによる二次冷却効果のため、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14B型化合物相が均一かつ微細に析出している。このため、急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合でも、急冷凝固合金自体が充分な磁石特性を発揮し得る。そのため、結晶化熱処理は本発明に必須の工程ではないが、これを行なうことが磁石特性向上のためには好ましい。なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に磁石特性を向上させることが可能である。
【0056】
熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するため、50kPa以下のArガスやN2ガスなどの不活性ガスが好ましい。0.1kPa以下の真空中で熱処理を行っても良い。
【0057】
熱処理前の急冷合金中には、Nd2Fe14B型化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、Fe236、R2Fe14B相、およびR2Fe233相等の準安定相が含まれていても良い。その場合、熱処理によって、R2Fe233相は消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe236)やα−Feを結晶成長させることができる。
【0058】
本実施形態の場合、最終的にα−Feのような軟磁性相が存在していても、軟磁性相と硬磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合するため、優れた磁気特性が発揮される。
【0059】
熱処理後におけるNd2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、単軸結晶粒径である300nm以下となる必要があり、20nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。これに対し、硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径が50nmを超えると、各構成相間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、(BH)maxが低下してしまう。これらの平均結晶粒径が1nmを下回ると、高い保磁力を得られなくなる。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は1nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることが更に好ましい。
【0060】
なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切断または粉砕しておいてもよい。
【0061】
熱処理後、得られた磁石を微粉砕し、磁石粉末(磁粉)を作製すれば、その磁粉から公知の工程によって種々のボンド磁石を製造することができる。ボンド磁石を作製する場合、鉄基希土類合金磁粉はエポキシ樹脂やナイロン樹脂と混合され、所望の形状に成形される。このとき、ナノコンポジット磁粉に他の種類の磁粉、例えばSm−Fe−N系磁粉やハードフェライト磁粉を混合してもよい。
【0062】
上述のボンド磁石を用いてモータやアクチュエータなどの各種の回転機を製造することができる。
【0063】
作製した磁石磁末を射出成形ボンド磁石用に用いる場合は、平均粒度が200μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上150μm以下である。また、圧縮成形ボンド磁石用に用いる場合は、粒度が300μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上250μm以下である。さらに好ましい範囲は50μm以上200μm以下である。
【0064】
(実施例および比較例)
下記の表1に示すように希土類不純物Rを含有する、組成式が(Nd1-mm9Fe7612Ti3(at%)で表わされる磁石合金の試料(No.1〜No.16)を作製した。各試料を作製するために、純度99.5%以上のB、Fe、Ti、Nd、R(Y、La、Ce、Pr、Tb、またはDyのいずれか)の金属をそれぞれ秤量(総量30グラム)し、石英るつぼ内に投入した。なお表1においてRで示す欄には、希土類不純物Rの元素の種類とその含有率mとが記載されており、例えば「Y0.08」とは、Ndを含む全希土類元素(Nd1-mm)のうち、Yが8at%含まれていることを表している。
【0065】
試料No.1は、希土類不純物を含まない全量Ndの場合を示しており、試料No.2〜4および8〜10は、希土類不純物としてY、La、Ceのうちのいずれかを含む場合を示しており、試料No.5〜7および11〜16は、希土類不純物としてPr、Tb、Dyのうちのいずれかを含む場合を示している。
【0066】
【表1】
Figure 0003801456
【0067】
溶湯作製に用いた石英るつぼは、底部に直径0.8mmのオリフィスを有しているため、上記原料は石英るつぼ内で溶解された後、合金溶湯となってオリフィスから下方に滴下することになる。原料の溶解は、圧力が40kPaのアルゴン雰囲気下において高周波加熱法を用いて行った。本実施例では、溶湯温度を1500℃に設定した。
【0068】
合金溶湯の湯面を26.7kPaのArガスで加圧することによって、オリフィスの下方0.7mmの位置にある銅製ロールの外周面に対して溶湯を流下させた。ロールは、その外周面の温度が室温程度に維持されるように内部が冷却されながら回転する。このため、オリフィスから流下した合金溶湯はロール周面に接触して熱を奪われつつ、周速度方向に飛ばされることになる。合金溶湯はオリフィスを介して連続的にロール周面上に滴下されるため、急冷によって凝固した合金は薄帯状に長く延びたリボン(幅:2〜3mm、厚さ:50〜120μm)の形態を持つことになる。
【0069】
このようにして得られた液晶急冷合金の組織をCuKαの特性X線を用いて調べたところ、No.1〜No.16のいずれの試料もハローパターンであり、アモルファスライクな急冷合金組織が形成されていることがわかった。
【0070】
次に、No.1〜No.16の急冷合金をArガス中で熱処理した。具体的には、上記表1の左から2列目の欄に示す熱処理温度で各急冷合金を6分間保持した後、室温まで冷却した。その後、振動型磁力計を用いて各試料の磁気特性を測定した。上記の表1の右側の3列は、保磁力HCJ(kA/m)、最大エネルギー積(BH)max(kJ/m3)および残留磁束密度Br(T)をそれぞれ示している。
【0071】
表1からわかるように、不純物としてR1(Y、La、Ce)を含む場合、その量が希土類元素全体の8at%であり(No.2〜4)15at%以下の場合、保磁力HCJが高く、希土類の全量がNdの場合(No.1)に比べて最大エネルギー積(BH)maxの値が20%以上低下していないことがわかる。これに対して、R1の量が17at%(No.8〜10)であり15at%を超える場合、最大エネルギー積(BH)maxの値が大きく低下している。
【0072】
また、不純物としてR2(Pr、Tb、Dy)を含む場合、その量が希土類元素全体の8at%(No.5〜7)または17at%(No.11〜13)であり25at%以下の場合、保磁力HCJが高く、希土類の全量がNdの場合(No.1)に比べて最大エネルギー積(BH)maxの値が20%以上低下していないことがわかる。これに対して、R2の量が27at%(No.14〜16)であり25at%を超える場合、最大エネルギー積(BH)maxの値が大きく低下している。
【0073】
なお、No.1〜No.16の試料の熱処理後の金属組織についてもCuKαの特性X線により調べた。その結果、いずれの試料においてもR2Fe14B相とFe236およびFe3BのFe−B相が確認されたが、No.8〜10およびNo.14〜16については顕著なα−Feの回折ピークも合わせて確認された。すなわち、希土類不純物R1およびR2が所定の量を超えて混入している場合、α−Feの粗大化を抑制するというTiの効果が大きく減じられるものと考えられる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、Nd−Fe−B系磁石合金を作製するときに、希土類不純物として混入するY、Ce、Laの許容量が規定されているため、高価な高純度Ndを用いずとも、Y、Ce、Laを含む安価な低純度Ndを使用しつつ、磁気特性の高い永久磁石を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明による鉄基希土類合金磁石のための急冷合金を製造する方法に用いる装置の全体構成例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口
1a、2a、8a、および9a ガス排気口
1 溶解室
2 急冷室
3 溶解炉
4 貯湯容器
5 出湯ノズル
6 ロート
7 回転冷却ロール
21 溶湯
22 合金薄帯

Claims (4)

  1. 組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-mR1myz(但し、TはCo、Niからなる群から選択された1種または2種の元素、Qは、BまたはCからなる群から選択された1種または2種の元素、R1は、Y、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素、MはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbからなる群から選択された1種以上の元素であり、Tiを必ず含み、Tiの組成比率が0.5原子%以上7.0原子%以下である)で表され、x、y、z、k、およびmがそれぞれ、
    10<x≦25原子%
    2≦y≦9.5原子%
    0.5≦z≦10原子%
    0≦k≦0.5
    0.01≦m≦0.15
    を満足し、
    平均結晶粒径が20nm以上150nm以下のNd2Fe14B型化合物相と平均結晶粒径が1nm以上50nm以下の軟磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合しており、前記軟磁性相はα−Fe以外の強磁性相として機能する鉄基硼化物を含有している、鉄基希土類系永久磁石合金。
  2. 前記希土類元素R1と異なる種類の希土類元素R2(但し、R2は、Pr,Dy,Tbの1種または2種以上)をさらに含み、前記組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-m-nR1mR2nyzで表され、nが下記の値を満足する請求項1に記載の鉄基希土類系永久磁石合金。
    0<n≦0.25
  3. 前記mおよびnが下記の式を満足する請求項2に記載の鉄基希土類系永久磁石合金。
    0<m+n≦0.25
  4. 組成式が(Fe1-kk100-x-y-zx(Nd1-mR1myz(但し、TはCo、Niからなる群から選択された1種または2種の元素、Qは、BまたはCからなる群から選択された1種または2種の元素、R1は、Y、Ce、およびLaからなる群から選択された1種以上の元素、MはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Zr,Nb,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Pt,Au,Pbからなる群から選択された1種以上の元素であり、Tiを必ず含み、Tiの組成比率が0.5原子%以上7.0原子%以下である)で表され、x、y、z、k、およびmがそれぞれ、
    10<x≦25原子%
    2≦y≦9.5原子%
    0.5≦z≦10原子%
    0≦k≦0.5
    0.01≦m≦0.15
    を満足する鉄基希土類原料合金の溶湯を用意する工程と、
    前記合金溶湯を案内手段上に供給し、前記案内手段上で前記合金溶湯の横方向流れを形成し、それによって、前記合金溶湯を冷却ロールとの接触領域に移動させる工程と、
    前記合金溶湯を前記冷却ロールによって急冷し、Nd2Fe14B型化合物相を含む急冷合金を作製する冷却工程と、
    前記急冷合金を結晶化熱処理することにより、平均結晶粒径が20nm以上150nm以下のNd2Fe14B型化合物相と平均結晶粒径が1nm以上50nm以下の軟磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合し、前記軟磁性相はα−Fe以外の強磁性相として機能する鉄基硼化物を含有している、鉄基希土類系永久磁石合金を形成する工程と、
    を包含する鉄基希土類系永久磁石合金の製造方法。
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