JP2010150602A - Fe基軟磁性薄帯およびそれを用いた高周波磁芯 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い透磁率と飽和磁束密度を有し、高周波における透磁率の減衰を抑えたFe基軟磁性薄帯およびそれを用いた高周波磁芯を提供すること。
【解決手段】 中心線平均粗さRaで表わされる表面粗さが0.8μm以上5.0μm以下であり、厚みが10μm以上30μm以下であるFe基軟磁性薄帯とし、そのFe基軟磁性薄帯を用いて高周波用磁芯とする。
【選択図】 なし
Description
本発明はFe基軟磁性薄帯およびそれを用いた高周波磁芯に関するものである。
近年の電子機器の小型、軽量、高速化はめざましく、それに伴い電子機器に用いられる磁性部品においても高い飽和磁束密度、高透磁率材料や高周波への対応が求められている。磁性部品に用いられる軟磁性材料において、パーマロイ、センダスト、珪素鋼鈑などの軟磁性合金は酸化物フェライトと比較して高い飽和磁束密度を有し、小型化には適しているが、比抵抗が低いため高周波で使うと渦電流損失が大きくなるため、透磁率が低下したり損失が劣化したりする。
軟磁性材料の中でも期待される非晶質軟磁性合金材料では20〜30μm程度の極薄の薄帯により渦電流損失を低減させているが、100kHz以上の周波数では透磁率が著しく低下し、特に初透磁率が5000を超える高透磁率材で顕著である。非特許文献1には、非晶質薄帯の表面状態により磁区構造が変化し、磁気特性が変化することが開示されている。しかしながら、一般に軟磁気特性や占積率が低下するため、平滑な薄帯が求められている。
より平滑な薄帯を得るための技術として、特許文献1には、厚み30μm以下という、特に厳しい板厚、特性制御が要求される金属薄帯を製造するにおいて、表面性状が滑らかで占積率の高い金属薄帯を製造するための金属薄帯製造装置が開示されている。
特許文献1に開示される金属薄帯製造装置は、金属溶湯を出湯するノズルと、そのノズルより出湯された金属溶湯を冷却し金属薄帯とするための冷却ロールを具備し、厚み30μm以下、表面粗さRaが0.7μm以下の金属薄帯を製造する金属薄帯製造装置であって、そのノズル先端部にはノズル開口部よりも冷却ロールに向けて突出した部位を有し、該突出部と冷却ロール間の間隔が2μm以上の金属薄帯製造装置である。
特許文献2には、磁芯材料に好適な単ロール法により製造されるエアポケットサイズの小さい表面性状に優れた軟磁性合金薄帯、この合金薄帯を使用した高性能な磁芯、これを用いた装置およびエアポケットサイズの小さい表面性状に優れた軟磁性合金薄帯の製造方法が開示されている。
特許文献2に開示される製造方法は、単ロール法により製造される軟磁性合金薄帯のロールと接触した面に形成されるエアポケットの幅を35μm以下、エアポケットの長さを150μm以下、ロールと接触した面の中心線平均粗さRaを0.5μm以下とする軟磁性合金薄帯を製造する単ロール法において、合金溶湯を出湯中の出湯圧力が270gf/cm2以上、冷却ロールの周速が22m/s以上の製造方法を採ることによって得られるというものである。
"非晶質磁性薄帯の鉄損に及ぼすスクラッチ・部分的結晶化の効果"、成田賢仁、秦久敏、山崎二郎、福永博俊、日本応用磁気学会誌、Vol.6,No.2(1982),P59
特開2002−126855号公報
特開2000−328206号公報
本発明の解決すべき課題は、高い透磁率と飽和磁束密度を有し、高周波における透磁率の減衰を抑えたFe基軟磁性薄帯およびそれを用いた高周波磁芯を提供することである。
本発明者らは、上述の課題を解決することを目的として、種々の合金組成について鋭意検討した結果、Fe−B―P−Cuを含むFe基合金に適切な熱処理を施し、表面粗さと薄帯厚みを限定することにより、高い透磁率と飽和磁束密度を有し、高周波における透磁率の減衰を抑えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、中心線平均粗さRaで表わされる表面粗さが0.8μm以上5μm以下であり、かつ、軟磁性薄帯の厚みが10μm以上30μm以下であるFe基軟磁性薄帯である。
中心線平均粗さRaは、本発明においては0.8μm以上5μm以下である。Raを0.8μm以上5μm以下に定めたのは、Raが0.8μmを下回ると高周波における透磁率が低下し、またRaが5μmを上回ると低周波での透磁率と占積率が低下し、結果として高周波の透磁率も低下するためである。
薄帯の平均厚みは、10μm以上30μm以下である。本発明において薄帯の平均厚みを10μm以上30μm以下に定めたのは、平均厚みが10μmを下回る薄帯の製造は困難であり、また薄帯の平均厚みが30μmを超えると高周波の透磁率の低下が著しいためである。
本発明の第2の発明は、第1の発明からなり、組成式が(Fe1-aM1 a)100-b-c-d-e-f-gM2 bBcPdCueM3 fM4 gで表され、前記組成式の構成元素のうち、M1はCo、Niの少なくともいずれか一方の元素、M2はNb、Mo、Zr、Ta、W、Hf、Ti、V、Cr、Mnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3は白金族元素、希土類元素、Au、Ag、Zn、Sn、Sb、In、Rb、Sr、Cs、Baからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はC、Si、Al、Ga、Geからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たし、b、c、d、e、f、gはそれぞれ原子%で表わされ、0原子%≦b≦10原子%、5原子%≦c≦25原子%、0原子%<d≦10原子%、0原子%<e≦1.5原子%、0原子%≦f≦2原子%、0原子%≦g≦8原子%、70≦100−b−c−d−e−f−gを満たす数値であり、白金族元素はPd、Pt、Rh、Ir、Ru、Osからなり、希土類元素はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる。
上記のFe基合金において、主成分であるFeは磁性を担う元素であり、磁気特性を有するために必須である。
M1は、Co、Niの少なくともいずれか一方の元素であるが、Feと同様に磁性を担う元素であり、M1の添加により、磁歪を調整したり、磁場中熱処理等で誘導磁気異方性を付与したりすることが容易になる。しかし、M1の割合が前記組成式でa>0.5を満たす割合となると、飽和磁束密度の低下や軟磁気特性の劣化を招く可能性がある。従って、M1の割合は前記組成式でa≦0.5を満たす割合であるのが望ましく、a≦0.3を満たす割合であるのが更に望ましい。
Bは、非晶質形成を担う元素であり、非晶質形成能を向上させるために必須である。但し、Bの割合が5原子%より少ないと十分な非晶質形成能が得られない。また、Bの割合が25原子%を超えると、Fe含有量が相対的に減少し、飽和磁束密度の低下を招くとともに、融点の急激な上昇、非晶質形成能の低下などにより薄帯の作製が困難になる。
Cuは、必須元素であり、ナノ結晶の粒径を微細化する作用があると考えられる。また、Pと同時に添加することにより、非晶質形成能を向上させる作用を有する。但し、Cuの割合が1.5原子%を超えると非晶質形成能が低下するため、1.5原子%以下とするのが望ましい。
Pは、Bと同様に非晶質の形成を担う元素であり、非晶質形成能を向上させるために必須である。但し、Pの割合が10原子%を超えると、磁性を担うFe含有量が相対的に減少し、飽和磁束密度の低下を招くとともに、熱処理後にFe−Pの化合物が析出して、軟磁気特性の低下の一因となる。従って、Pの割合は10原子%以下とすることが望ましい。
M2は、非晶質形成能を高めるのに有効な元素であり、薄帯や粉末の作製を容易にする。またナノ結晶合金においても結晶粒の成長を抑制する効果も持ち合わせている。しかし、M2の割合が10原子%を超えるとFe濃度が低下し飽和磁束密度が低下するため、M2の割合は10原子%以下であるのが望ましい。また、非晶質組織として高飽和磁束密度を得るためには5原子%以下が望ましく、更に熱処理により50nm以下の結晶粒を得るためには、結晶粒の成長を抑制するために1原子%以上が望ましく、また非晶質形成能や飽和磁束密度の低下、またFe−M2化合物が析出しやすくなることにより軟磁気特性の低下を招くため10原子%以下が望ましい。
M3は、熱処理により析出した結晶相の結晶粒径を微細化する効果がある。しかし、M3の割合が2原子%を超えると非晶質形成能が低下し、またFe量が相対的に減少して飽和磁束密度が低下する。従って、M3の割合は2原子%以下であることが望ましい。
M4は、BやPと共に添加することにより、非晶質形成能の向上を促進すると同時に、磁歪の調整、耐食性の向上等の作用も有する。しかし、M4の割合が8原子%を超えると、非晶質形成能が低下すると同時に、熱処理によりナノ結晶化させた場合、化合物が析出し、軟磁気特性の低下の一因となる。また、Fe量が相対的に減少して飽和磁束密度が低下する。従って、M4の割合は8原子%以下であるのが望ましい。
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明からなり、熱処理することにより平均粒径50nm以下のFeのbcc相を主たる相とするFe基軟磁性薄帯である。本発明のFe基軟磁性薄帯は微細な結晶を析出させることにより、高い透磁率と飽和磁束密度とを両立させることが可能である。なおFeを主たる相とする微結晶の平均結晶粒径が50nmを超えると軟磁気特性の低下を招く。従って、結晶粒の平均粒径は50nm以下であることが望ましく、更には、30nm以下であることが望ましい。
本発明の第4の発明は、第1乃至第3の発明からなる高周波磁芯である。磁芯は、巻磁芯または積層磁芯である。組成と微細組織さらに表面粗さと平均厚みを限定することにより、高い透磁率と飽和磁束密度を両立させ、高周波でも透磁率の減衰の小さい巻磁芯又は積層磁芯が可能となる。
本発明によるFe基軟磁性薄帯およびそれを用いた磁芯は、組成と微細組織さらに表面粗さと平均厚みを限定することにより、高い透磁率と飽和磁束密度を両立させ、高周波でも透磁率の減衰の小さい巻磁芯又は積層磁芯が可能となる。
以下に本発明の実施の形態を具体的な実施例を用いて説明する。本発明のFe基軟磁性薄帯の特徴とするところは、薄帯の表面粗さと平均厚みおよび高い透磁率と飽和磁束密度が得られる組成範囲、およびFe基軟磁性薄帯を用いてなる部材およびそれを用いた装置にあるので、その作製にあたっては従来の一般的な高周波加熱装置や溶解冷却装置、熱処理装置などをそのまま利用可能である。溶解冷却装置を例に挙げるならば単ロール装置もしくは双ロール装置などがある。また熱処理工程を例に挙げるならば、雰囲気調整が可能で、700℃程度まで温度制御が可能な電気炉であれば、どのようなものでもとくに問題なく使用することができる。
高周波加熱装置を用いて本発明におけるFe基軟磁性薄帯を作製する場合、まず原料となる金属材料をそれぞれ秤量し、高周波加熱装置にて溶融し均一な母合金を作製する。さらに溶解冷却装置を用いて得られた母合金を再溶解し、結晶が析出することのない一定の以上の速度で冷却することで、Fe基軟磁性薄帯を得ることができる。さらにこのFe基軟磁性薄帯を用いて巻磁芯や積層磁芯を得ることができる。溶解冷却装置は、溶解した母合金から結晶化することなく非晶質単相を得られるものであればどのような方法でもよく、単ロール法もしくは双ロール法などが適用可能である。
本発明で特に重要となるFe基軟磁性薄帯の表面粗さの制御は、例えば単ロール法を用いる場合には、冷却ロールの周速(回転数)や溶解した母合金を射出する圧力、ノズルと冷却ロールとのギャップ、雰囲気ガス等を適正に調整することで可能となる。他の方法においても、同様に制御可能である。
次いで、得られたFe基軟磁性薄帯を用いた部材である巻磁芯、積層磁芯に対して熱処理を実施する。この熱処理は非晶質合金が凝固した時に蓄積された熱歪みや、薄帯を巻磁芯にした時や打ち抜いた時に発生する応力を緩和させることができる。さらに結晶化温度以上で熱処理することによりFeのbcc相を主たる相とする微細な結晶を析出させ、高い透磁率と飽和磁束密度を両立させることが可能になる。
ただし熱処理温度が700度を超えると平均結晶粒径が50nmを超え、軟磁気特性が低下する。熱処理は例えば真空、アルゴン、窒素などの雰囲気下で行われるが、大気中で行ってもよい。なお、熱処理時間は例えば5分から100分程度である。更に、磁場を印加した状態で熱処理を行ってもよい。
なお、本発明においてRaの評価は、単ロール液体急冷法にて作製した幅約5mm、長さ約10mの幅広連続薄帯を用い、薄帯の幅方向についてレーザー顕微鏡により行った。
以下に本発明の具体的な実施例について、複数の実施例を参照しながら更に詳細に説明する。
(実施例1〜9、比較例1〜5)
Fe、Si、B、Fe75P25、Nb、の原料をそれぞれFe81.45Si2B9P2Nb5.5Cu0.05となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理し、ロールの回転数と射出圧力を変化させながら幅5mmの平均厚みとRaの異なる薄帯を作製した。
Fe、Si、B、Fe75P25、Nb、の原料をそれぞれFe81.45Si2B9P2Nb5.5Cu0.05となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理し、ロールの回転数と射出圧力を変化させながら幅5mmの平均厚みとRaの異なる薄帯を作製した。
この作製したFe基軟磁性薄帯を用いて外径18mm、内径12mm、高さ5mm形状の巻磁芯を作製し、550℃で30分間アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った。また比較例4、5に従来材料の非晶質組成として低ロス材のFe78Si9B13と零磁歪材のCo66Fe4Si17B13となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理しながら幅5mmの薄帯を作製した。
この作製したFe基軟磁性薄帯を用いて同形状の巻磁芯を作製し、450℃で30分間アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った。得られた巻磁芯を1kHzから1MHzまでインピーダンスアナライザーにより初透磁率の評価を行った。さらに直流BHトレーサーにより800A/mを印加した時の磁束密度の評価を行った。本発明の実施例1〜9と比較例1〜5における薄帯の中心線平均粗さRa、平均厚みおよび巻き磁芯の1kHzと100kHzにおける初透磁率と磁場を800A/m印加した時の磁束密度を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1〜9のFe基軟磁性薄帯を用いた巻磁芯は、100kHzにおける初透磁率および800A/mにおける磁束密度が従来材料である比較例4と5の磁束密度1.04、初透磁率9500以上である。
ここで、表1に掲げられた実施例1〜5、比較例1、2にかかるものは、軟磁性薄帯において中心線平均粗さRaが0.62〜5.50μmまで変化させた場合に相当する。このうち実施例1〜5の場合は100kHzの初透磁率が9500以上、800A/mの磁束密度が1.04T以上の条件を満たしており、この場合の0.8〜5.0μmの範囲が本発明におけるRaの条件範囲となる。Ra=0.62μmである比較例1は高周波で初透磁率の低下が著しく、上掲の条件を満たしていない。またRa=0.55μmである比較例2は初透磁率および磁束密度が低く、上掲の条件を満たしていない。
ここで、表1に掲げられた実施例6〜9、比較例3にかかるものは、軟磁性薄帯において厚みが14〜45μmまで変化させた場合に相当する。このうち実施例6〜9の場合は100kHzの初透磁率が9500以上、800A/mの磁束密度が1.04T以上の条件を満たしており、この場合の30μm以下の範囲が本発明における薄帯厚みの条件範囲となる。薄帯厚みが45μmである比較例3は高周波で初透磁率の低下が著しく、上掲の条件を満たしていない。
(実施例10〜14、比較例6)
Fe、Si、B、Fe75P25、Nbの原料をそれぞれFe81.45Si2B9P2Nb5.5Cu0.05となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理し、幅5mmの平均厚み22μm、Ra1.22μmの薄帯を作製した。この作製したFe基軟磁性薄帯を用いて外径18mm、内径12mm、高さ5mm形状の巻磁芯を作製し、525℃〜650℃で30分間アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った。
Fe、Si、B、Fe75P25、Nbの原料をそれぞれFe81.45Si2B9P2Nb5.5Cu0.05となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理し、幅5mmの平均厚み22μm、Ra1.22μmの薄帯を作製した。この作製したFe基軟磁性薄帯を用いて外径18mm、内径12mm、高さ5mm形状の巻磁芯を作製し、525℃〜650℃で30分間アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った。
比較例7、8に従来材料の非晶質組成として低ロス材のFe78Si9B13と零磁歪材のCo66Fe4Si17B13となるように秤量し、アルミナ坩堝の中に入れて高周波誘導加熱装置の真空チャンバー内に配置して真空引きを行い、その後、減圧アルゴン雰囲気中で高周波誘導加熱により溶解して母合金を作製した。この母合金を単ロール液体急冷法にて処理しながら幅5mmの薄帯を作製した。
これらの作製した軟磁性薄帯を用いて同形状の巻磁芯を作製し、450℃で30分間アルゴン雰囲気中にて熱処理を行った。得られた巻磁芯を1kHzから1MHzまでインピーダンスアナライザーにより初透磁率の評価を行った。さらに直流BHトレーサーにより800A/m印加した時の磁束密度の評価を行った。またTEMにより熱処理後に析出した結晶の平均粒径を評価した。本発明の実施例10〜14と比較例6〜8における薄帯の結晶粒径および巻き磁芯の1kHzと100kHzにおける初透磁率と磁場を800A/m印加した時の磁束密度を表2に示す。
表2に示されるように、実施例10〜14の軟磁性薄帯を用いた巻磁芯は、100kHzにおける初透磁率および800A/mにおける磁束密度が従来材料である比較例4の磁束密度1.04T、比較例5の初透磁率9500以上である。
ここで、表2に掲げられた実施例10〜14、比較例6にかかるものは、平均粒径が9〜58nmまで変化させた場合に相当する。このうち実施例10〜14の場合は100kHzの初透磁率が9500以上、800A/mの磁束密度が1.04T以上の条件を満たしており、この場合の50nm以下の範囲が本発明における平均粒径の条件範囲となる。平均粒径が58nmである比較例6は初透磁率の低下が著しく、上掲の条件を満たしていない。
以上示したように、本発明の実施の形態に基づくFe基軟磁性薄帯及びそれを用いた磁芯はそのFe基軟磁性薄帯の中心線平均粗さRaと平均厚みの範囲に規定することにより高周波においても初透磁率の減衰を抑制することができ、また薄帯の組成と微細組織を限定することにより高い初透磁率と磁束密度を両立することが可能になる。これにより100kHzを超える高周波領域においても高い透磁率を有する巻磁芯や積層磁芯などを作製することができる。
従って磁性部品の特性向上、小型・低背・軽量化に大きく寄与すると考えられ、特に実装効率の向上は、省エネルギーについての寄与が大きいと言えるもので、環境問題の上からも有用である。
上記各実施例の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記の実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
Claims (4)
- 中心線平均粗さRaで表わされる表面粗さが0.8μm以上5.0μm以下であり、厚みが10μm以上30μm以下であることを特徴とするFe基軟磁性薄帯。
- 下記組成式に示される組成の成分を有することを特徴とする請求項1に記載のFe基軟磁性薄帯。
(Fe1-aM1 a)100-b-c-d-e-f-gM2 bBcPdCueM3 fM4 g
ここで、M1はCo、Niの少なくともいずれか一方の元素、M2はNb、Mo、Zr、Ta、W、Hf、Ti、V、Cr、Mnからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3は白金族元素、希土類元素、Au、Ag、Zn、Sn、Sb、In、Rb、Sr、Cs、Baからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はC、Si、Al、Ga、Geからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たし、b、c、d、e、f、gはそれぞれ原子%で表わされ、0原子%≦b≦10原子%、5原子%≦c≦25原子%、0原子%<d≦10原子%、0原子%<e≦1.5原子%、0原子%≦f≦2原子%、0原子%≦g≦8原子%、70≦100−b−c−d−e−f−gを満たす数値であり、白金族元素はPd、Pt、Rh、Ir、Ru、Osからなり、希土類元素はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる。 - 熱処理することにより平均粒径50nm以下のFeのbcc相を主たる相とすることを特徴とする請求項1ないし2のいずれか一項に記載のFe基軟磁性薄帯。
- 請求項1ないし3のいずれか一項に記載のFe基軟磁性薄帯からなる高周波磁芯。
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