JP2008231533A - 軟磁性薄帯、磁心、磁性部品、および軟磁性薄帯の製造方法 - Google Patents

軟磁性薄帯、磁心、磁性部品、および軟磁性薄帯の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ケイ素鋼板よりも高飽和磁束密度における損失が少ない軟磁性材料を提供する。
【解決手段】 薄帯の表面より深さ120nmの位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ薄帯の表面から深さ120nmの幅内にアモルファス層を有するものを用いる。軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0≦x≦5.0、10≦y≦24により表されるものが好ましい。
【選択図】図1

Description

各種トランス、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、各種リアクトル、ノイズ対策、各種モータ、各種発電機等に用いられる高飽和磁束密度で角形性が良好な軟磁性薄帯、とそれを用いた磁心、磁性部品、および軟磁性薄帯の製造方法に関する。
各種トランス、リアクトル・チョークコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、各種モータ、各種発電機等に用いられる、高飽和磁束密度でかつ優れた交流磁気特性の磁性材料には、ケイ素鋼、フェライト、アモルファス合金やFe基ナノ結晶合金材料等が知られている。
ケイ素鋼板は、材料が安価で磁束密度が高いが、高周波の用途に対しては磁心損失が大きいという問題がある。作製方法上、アモルファス薄帯並に薄く加工することは極めて難しく、渦電流損失が大きいため、これに伴う損失が大きく不利である。また、フェライト材料は飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い問題があり、動作磁束密度が大きいハイパワーの用途には磁気的に飽和しやすいフェライトは不向きである。
また、Co基アモルファス合金は、飽和磁束密度が実用的な材料では1T以下と低く、熱的に不安定である問題がある。このため、ハイパワーの用途に使用した場合、部品が大きくなる問題や経時変化のために磁心損失が増加する問題があり、さらに、Coが高価なことから価格的な問題もある。
また、特許文献1に記載されているようなFe基アモルファス軟磁性合金は、良い角形特性や低い保磁力を有し、非常に優れた軟磁気特性を示す。しかし、Fe基アモルファス合金系においては、飽和磁束密度は、1.68Tがほぼ物理的上限値となっている。また、Fe基アモルファス合金は、磁歪が大きく応力により特性が劣化する問題や、可聴周波数帯の電流が重畳するような用途では騒音が大きいという問題がある。さらに、従来のFe基アモルファス軟磁性合金において、Feを他の磁性元素Co、Ni等で大幅に置換した場合は若干の飽和磁束密度の増加も認められるが、価格の面からこれらの元素の含有量(重量%)をなるべく少量にすることが望まれる。これらの問題から、特許文献2に記載されるような、ナノ結晶を持つ軟磁性材料が開発され、様々な用途に使用されている。
また、高透磁率かつ高飽和磁束密度の軟磁性成形体として、特許文献3に記載されるような超微細結晶を持つアモルファス合金を得た後に熱処理してナノ結晶化する技術も開示された。
特開平5−140703号公報((0006)〜(0010)) 特許平1−156451号公報(第2頁右上欄19行目〜右下欄6行目) 特開2006−40906号公報((0040)〜(0041))
1.6T以上の高飽和磁束密度の材料としては、現状では、ケイ素鋼板が最も一般的である。しかし、ケイ素鋼板は飽和性が悪く、鉄損、渦電流損失、皮相電力が大きいという難点がある。この電力問題を解決するために高飽和磁束密度における損失が少ない軟磁性材料の開発が必要である。
本発明の軟磁性薄帯は、薄帯の表面より深さ120nm以内の位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ薄帯の表面から深さ120nm以内の深さにアモルファス層を有することを特徴とする。
上記の軟磁性薄帯は、最表面に結晶組織から成る結晶層が形成され、前記結晶層の内部側に前記アモルファス層が形成されている軟磁性薄帯でもよい。
また、前記アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層を有する軟磁性薄帯でもよい。
本発明の軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0≦x≦5、10≦y≦24により表されるものが好ましい。
これらの軟磁性薄帯を用いた磁心は低損失で小型化に適している。磁場1.6T、周波数50Hzで測定した単板の鉄損が0.65W/kg以下である磁心を実現することができる。
本発明の軟磁性薄帯の製造方法は、Feおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し、非晶質中に平均粒径30nm以下(0nmを含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織からなるFe基合金を作製する工程と、前記Fe基合金に熱処理を行い平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した組織とする熱処理工程を有し、かつ前記熱処理工程は300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことを特徴とする。
本発明によれば、大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に用いられる高飽和磁束密度で特に低い磁心損失を示す高飽和磁束密度低損失の軟磁性合金薄帯、磁心、およびそれを用いた高性能磁性部品を実現することができるため、その効果は著しいものがある。
本発明の軟磁性薄帯は、ナノ結晶合金の靭性が低いという一般的な問題に対し、ナノ結晶相と靭性に優れるアモルファス層の複合組織を得ることにより靭性が向上する特徴を有する。つまり本発明の軟磁性合金は、図5(a)、(b)に示すように、薄帯の表面2より120nmの深さで結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織Dを有し、かつ薄帯の表面から深さ120nm以内にアモルファス層Bを有する。この軟磁性薄帯は、最表面に結晶組織から成る結晶層Aが形成され、結晶層Aの内部側に前記アモルファス層Bが形成されているものも有る。さらに、アモルファス層Bと母相組織Dの間に、母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層Cを有することもある。本発明軟磁性薄帯の板厚は、渦電流損失を低減させるため100μm以下であり、より好ましくは40μm以下とする。
アモルファス層を有することにより靭性が向上する。アモルファス層とは、薄帯の断面を観察したときに表面側にアモルファス状態の部分が平均して10nm以上で層状に確認できる部分である。アモルファス層は薄帯の表面に沿ってほぼ平行に観察される。また、表面から120nm以内で観察される。完全に連続した層状でなくてもよく、部分的に途切れていることも有る。アモルファス相の出現に伴い、結晶の核が欠乏する領域が表面近傍に生じるため、アモルファス層に隣接した領域で、母相の平均結晶粒径よりも結晶粒径の大きい粗大化結晶粒が析出しやすくなる。すなわち、アモルファス層は、最表面の結晶層や粗大結晶粒層を安定的に析出させる効果がある。
結晶粒径の測定は、電子顕微鏡による組織写真で観察される組織の長径と短径の平均値を取ったものである。平均粒径とは、その結晶粒径を30個以上した値の平均値である。
結晶粒の体積分率は、線分法、すなわち顕微鏡組織中に任意の直線を想定しそのテストラインの長さをLt、結晶相により占められる線の長さLcを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合LL=Lc/Lt×100求めることにより求められる。ここで、結晶粒の体積分率VV=LLある。
アモルファス層が発現する理由を以下に推定する。本合金系は、Feを主成分としかつCu及び/又はAu(以下、A元素)が必須である。Feとほぼ非固溶のA元素は、凝集してナノオーダーのクラスターを形成し、結晶粒の核生成を助ける。表面から離れた部分では、A元素は均一に分散しやすく、そのためにナノ結晶の母相組織Dが形成される。また、非固溶の性質から、最表面ではA元素が偏析しやすくA元素の濃度が高くなり、母相と同様に結晶組織が形成される。一方、最表面の直下内部では、A元素が表面側に取られる分、A元素の濃度が低くなる。そのため、この領域では結晶粒の核生成が起きずにアモルファス層となる。本発明の軟磁性薄帯は、熱処理によって微結晶粒層を析出させるが、上述のようにA元素の分布により微結晶粒の核の濃度が決まる。そのため、表面近傍に核が現れにくくなり、アモルファス層ができると思われる。
Nb、Mo、Ta、Zr等、従来のナノ結晶系で用いられてきた元素には、A元素の偏析や熱拡散を抑える効果があり、多く含みすぎる場合、表面近傍のアモルファス層は得にくくなる。
また、粗大結晶粒層Cが発現する理由を以下に推定する。アモルファス層のさらに内側では、A元素の濃度は母相組織となる領域ほど高くなく、核生成も少ない。ナノ結晶粒の粒径は核の濃度と結晶粒成長のスピードの兼ね合いで決まる。A元素の濃度が均一な母相組織の領域では昇温速度の違いによる組織の違いは現れにくいが、A元素の少ないCの領域では、昇温速度が遅ければ、A元素の熱拡散に十分な時間が与えられて核が減る。そのため、結晶粒が粗大化し易くなり、粗大結晶粒層Cが形成される。例えば、昇温速度を速くすると、粗大結晶粒層Cの結晶粒は微細になり、平均粒径が母相に近づく。また、粗大結晶粒層Cの幅は減少する。昇温速度を制御することにより、組織制御がなされ、用途に合わせた磁気的性質が得られる。
ここで、粗大結晶粒層Cとは、母相組織の平均結晶粒径に対して1.5倍以上の部分を指すものとする。また、粗大結晶粒層Cの平均結晶粒径は、母相組織の平均結晶粒径の2倍以下とすることが好ましい。
粗大結晶粒層の平均結晶粒径が母相の平均結晶粒径の2倍よりも大きくなると、磁気異方性が大きくなり、母相とは異なる磁化過程を示す。そのため、磁場印加過程と磁場除去過程の間でヒステリシスが生じやすくなる。組織が異なる複合相状態であるため、異なる磁化回転機構の領域が混在し、損失の増大につながる。粗大結晶粒層の平均結晶粒径を母相の平均結晶粒径の2倍以下とすることで、1.6T、50Hzにおける鉄損が方向性ケイ素鋼板よりも低い0.65W/kg以下にすることが可能である。この場合、アモルファス層を最表面から120nm以内とすることで、母相の平均粒径よりも2倍以上となる粗大結晶粒の発生確率を抑えることができる。
粗大結晶粒層の平均結晶粒径は母相の平均結晶粒径の1.9倍以下、更には1.8倍以下とすることが好ましい。
母相組織中の結晶粒は体積分率で50%以上、さらには60%以上分散したものが好ましい。特に望ましい平均結晶粒径は2nmから25nmであり、この範囲において特に低い保磁力および磁心損失が得られる。
前述の合金中に形成する微結晶粒は主にFeを主体とする体心立方構造(bcc)の結晶相であり、Si,B,Al,GeやZr等が固溶しても良い。また、規則格子を含んでも良い。前記結晶相以外の残部は主にアモルファス相であるが、実質的に結晶相だけからなる合金も本発明に含まれる。一部にCuやAuを含む面心立方構造の相(fcc相)も存在する場合がある。
また、アモルファス相が結晶粒の周囲に存在する場合、抵抗率が高くなり、結晶粒成長の抑制により結晶粒が微細化され、より好ましい軟磁気特性が得られる。
本発明の軟磁性薄帯は化合物相が存在しない場合により低い磁心損失を示すが化合物相を一部に含んでも良い。
本発明の軟磁性薄帯は、飽和磁束密度が1.65T以上であり、かつ、磁場1.6T、周波数50Hzで測定した鉄損が0.65W/kg以下と優れた軟磁気特性を持つため、同様に磁心も優れた特性を有し、現状のFe系材料では得ることが困難な高磁束密度の領域において損失の少ない高効率材料が得られる。飽和磁束密度は1.70T、さらには1.72Tのものも得ることができる。
ケイ素鋼板では鉄損の要因として渦電流損失が大きな割合を占める。渦電流損失は板厚の2乗に比例して増加するため、軟磁性材は薄帯状であることが有利である。ケイ素鋼板は230μm程度以上の板厚であるが、本発明の軟磁性薄帯は100μm以下であり、電気抵抗率が同じ場合でも渦電流損失を1/6以下にすることが可能である。本発明では、Feを実質的に75at.%以上含むFe,A,X(AはCu,Auからなる1種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beからなる1種以上の元素)を含むナノ結晶材料合金薄帯に着目し、高飽和密度、低鉄損の材料の開発に至り、アモルファス材料の飽和磁束密度のほぼ上限である1.6T以上で、50Hzにおける鉄損がケイ素鋼板よりも低い0.65W/kg以下の軟磁性薄帯とすることにより、広い動作磁束密度領域と低損失が実現される。軟磁性薄帯の合金組成や熱処理の条件により、鉄損は0.6W/kg以下、さらには0.55W/kg以下にすることも可能である。
本発明の軟磁性薄帯は、飽和性が悪いケイ素鋼板よりも皮相電力を抑えることができる。飽和磁束密度は1.70T、さらには1.72Tのものも得ることができる。本発明の軟磁性薄帯は飽和性に優れ、例えば1.60T、50Hzの皮相電力を1.2VA/kg以下とすることでき、従来のFe系材料では困難であった高磁束密度領域における皮相電力の低減を実現でき、高効率材料が得られる。
本発明の軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)により表されるものが好ましい。以下にその限定理由を述べる。
A元素(Cu、Au)の量は5%以下(0%を含まず)とする。本発明の合金組成におけるA元素は特に重要である。前述したように、A元素はFeとほぼ非固溶のため、熱処理や機械的振動、電気的衝撃、磁気的衝撃等の外的あるいは内的な要因によって、拡散を起こす。特に、薄帯表面と内部で温度分布や温度差が生じやすい熱処理を施した場合には、拡散が起き易い部位と相互の拡散が妨げられ易い部位が存在し、内部で組織は傾斜的、層状的に変質する。磁気的性質を制御するには、薄帯の厚さ、組成の制御、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間、昇温速度、降温速度を制御するとことが有効であり、用途に合わせて、B-H曲線の形を変えられる。また、他の方法、振動等を与えること等でCu原子の拡散を促進することも可能である。
A元素の量は5%を超えるとA元素同士が凝集し、熱拡散が起こりにくくなる。好ましくは3%以下とする。また、A元素は、上記の効果を得るために0.1原子%以上、さらには0.5原子%以上、さらには0.8原子%以上を添加することが好ましい。A元素は原料コストを考慮するとCuを選択することがこのましい。
X元素(B,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Be)はA元素(Cu,Au)が同一薄帯内に存在する本発明の軟磁性薄帯を形成するために不可欠な元素である。10原子%未満であるとアモルファスの形成を促進する効果が不十分である。また24原子%を超えると軟磁気特性が悪化してしまう。好ましい範囲は12原子%以上20原子%以下である。
特にBはアモルファスの形成を促進するために重要な元素であり添加することが好ましい。Bの濃度が10≦y≦20原子%であると、Feの含有量を高く維持しつつアモルファス相が安定に得られる。
また、Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beを添加すると、結晶磁気異方性の大きいFe-Bが析出開始する温度が高くなるため、熱処理温度を高温にできる。高温の熱処理を施すことで微結晶相の割合が増え、BSが増加し、B-H曲線の角形性が改善される。また、試料表面の変質、変色を抑える効果がある。Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beの添加量は、0原子%超〜7原子%とすることが好ましい。特にSiはこの効果が顕著であり、好ましい。
Feの一部をFeとA元素に共に固溶するNi、Coから選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換してもよい。これらの元素を置換した軟磁性薄帯はアモルファス相の形成能が高くなり、A元素の含有量を増加させることが可能である。A元素の含有量が増加することで、結晶組織の微細化が促進され軟磁気特性が改善される。また、Ni,Coを置換した場合には飽和磁束密度が増加する。これらの元素を多く置換すると、価格の高騰につながるため、Niの置換量は10%未満、好ましくは5%未満、さらには2%未満が適当であり、Coの場合は10%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満が適当である。
Feの一部をTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換した場合、これらの元素はA元素やメタロイド元素と共に熱処理後も残留するアモルファス相に優先的に入るため、Fe濃度の高い微細結晶粒の生成を助ける働きをする。そのため、軟磁気特性の改善に寄与する。一方、本発明の軟磁性薄帯における実質的な磁性の担い手はFeであるため、Feの含有量を高く保つ必要があるが、これら、原子量の大きい元素を含有することは、単位重量あたりのFeの含有量が低下することになる。特に、置換する元素がNb,Zrの場合、置換量は5%未満程度、より好ましくは2%未満が適当であり、置換する元素がTa,Hfの場合、置換量は2.5%未満、より好ましくは1.2%未満が適当である。また、Mnを置換する場合は飽和磁束密度の低下がおこるため、置換量は5%未満が妥当であり、より好ましくは2%未満である。
但し、特に高い飽和磁束密度を得るためには、これらの元素の総量が1.8原子%以下とすることが好ましい。また、総量が1.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
本発明の軟磁性薄帯と同組成のアモルファス合金では、磁気体積効果により、比較的大きな磁歪が現れるが、体心立方構造のFeでは磁気体積効果が小さく、磁歪もはるかに小さい。本発明の軟磁性薄帯は組織の多くの部分がbccFeを主体とする微細結晶粒からなり、騒音低減の観点からも有望である。
上記の軟磁性の微結晶合金を得るには、Feおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し、非晶質相中に平均粒径30nm以下(0nmを含まず)の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織からなるFe基合金を作製する工程と、前記Fe基合金に熱処理を行い平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質相中に体積分率で30%以上分散した組織とする工程からなる製造方法を用いることが好ましい。
合金溶湯を急冷する際に、非晶質相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基合金を作製する。これにより、熱処理で結晶粒が粗大化しやすいFe量の多い組成の合金薄帯でも、結晶粒径の著しい増加を抑えることができる。よって本発明の軟磁性合金は、従来のFe基ナノ結晶合金やFe基非晶質合金よりも高飽和磁束密度でありながら、優れた軟磁気特性を示す。従来、完全な非晶質相からなる合金を熱処理し結晶化させた方が優れた軟磁性を示すと考えられていたが、鋭意検討の結果Fe量が多い合金においては、完全な非晶質合金を作製するのではなく、むしろ非晶質相(マトリックス)中に微細な結晶粒が分散した合金を作製した後に熱処理を行い、結晶化を進めた方が熱処理後より微細な結晶粒組織となり優れた軟磁気特性が実現できることを見出した。
熱処理前の非晶質相中に分散する結晶粒の平均粒径は30nm以下である必要がある。この理由は、熱処理前の状態で平均粒径がこの範囲を超えている場合、熱処理を行うと結晶粒が大きくなりすぎ、不均一な結晶粒組織となるなどが原因で軟磁性が劣化するためである。好ましくは、非晶質相中に分散する結晶粒の平均粒径は20nm以下である。この範囲で、より優れた軟磁気特性を実現できる。また、平均結晶粒間距離(各結晶の重心と重心の距離)は通常50nm以下である。平均結晶粒間距離が大きいと熱処理後の結晶粒の結晶粒径分布が広くなる。また、熱処理後に非晶質相中に分散する体心方構造の結晶粒は、平均粒径60nm以下、体積分率で30%以上分散している必要がある。結晶粒の平均粒径が60nmを超えると軟磁気特性が劣化し、結晶粒の体積分率が30%未満では、非晶質の割合が多く高飽和磁束密度が得にくいためである。より好ましい熱処理後の結晶粒の平均粒径は、30nm以下、より好ましい結晶粒の体積分率は50%以上である。この範囲で、より軟磁性が優れ、Fe基非晶質合金に比べて磁歪の低い合金を実現できる。
さらに、この合金は飽和磁束密度が1.65T以上、さらには1.7T以上、さらには1.73T以上で、かつ高飽和磁束密度で優れた軟磁性を示す。また、高周波特性にも優れており、400Hz,1.0T、1kHz,0.5T、20kHz,0.2Tにおける磁心損失が、それぞれ、7W/kg以下、10W/kg以下、20W/kg以下である低損失の軟磁性合金を実現できる。
また、保磁力Hcは200A/m以下、さらには100A/m以下の軟磁性合金を実現できる。また、交流比初透磁率μが3000以上、さらには5000以上の軟磁性合金を実現できる。
本発明の具体的な製造方法は、前記組成の溶湯を単ロール法等の急冷技術によって100℃/sec以上の冷却速度で急冷し、非晶質相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基合金を作製後、これを加工し、結晶化温度の近傍で熱処理を施し、平均粒系が60nm以下の微結晶組織を形成することによって得られる。
本発明において、溶湯を急冷して薄帯を製造する方法としては、単ロール法や双ロール法などがある。また、溶湯急冷時の溶湯温度は、合金の融点よりも50℃〜300℃程度高い温度とするのが望ましい。
単ロール法などの超急冷法は、活性な金属を含まない場合は大気中あるいは局所Arあるいは窒素ガスなどの雰囲気中で行うことが可能であるが、活性な金属を含む場合はAr,Heなどの不活性ガス中、窒素ガス中あるいは減圧中、あるいはノズル先端部のロール表面付近のガス雰囲気を制御する。また、CO2ガスをロールに吹き付ける方法や、COガスをノズル近傍のロール表面付近で燃焼させながら合金薄帯製造を行う。
単ロール法の場合の冷却ロール周速は、15m/sから50m/s程度の範囲が望ましく、冷却ロール材質は、熱伝導が良好な純銅やCu−Be、Cu−Cr、Cu−Zr、Cu−Zr−CrやCu−Ni−Siなどの銅合金が適している。大量に製造する場合、板厚が厚い薄帯や広幅薄帯を製造する場合は、冷却ロールは水冷構造とした方が好ましい。
熱処理は大気中、真空中、Ar、窒素ヘリウム等の不活性ガス中で行うことができるが、特に不活性ガス中で行うことが望ましい。熱処理により体心立方構造のFeを主体とする結晶粒の体積分率が増加し、飽和磁束密度が上昇する。また、熱処理により磁歪も低減する。本発明の軟磁性合金は、磁界中熱処理を行うことにより、誘導磁気異方性を付与することができる。磁界中熱処理は、熱処理期間の少なくとも一部の期間合金が飽和するのに十分な強さの磁界を印加して行う。合金磁心の形状にも依存するが、一般には薄帯の幅方向(環状磁心の場合:磁心の高さ方向)に印加する場合は8 kAm−1以上の磁界を、長手方向(環状磁心の場合は磁路方向)印加する場合は80Am−1以上の磁界を印加する。印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれを用いても良い。磁界は300℃以上の温度領域で通常20分以上印加する。昇温中、一定温度に保持中および冷却中も印加した方が、良好な一軸の誘導磁気異方性が付与されるので、より望ましい直流あるいは交流ヒステリシスループ形状が実現される。磁界中熱処理を適用しない場合、本発明の軟磁性薄帯は中程度の角形比の直流ヒステリシスループとなる。熱処理は、通常露点が−30℃以下の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましく、露点が−60℃以下の不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うと、ばらつきが更に小さくより好ましい結果が得られる。熱処理の際、最高到達温度は結晶化温度からそれよりも70℃程度高い温度範囲が望ましい。
保持温度は化合物が析出する温度(TX2)に対し、TX2−50℃以上とすることが好ましい。保持時間が1時間以上であると、上記の効果が得られにくく、かつ処理時間が長くなり、生産性が悪い。好ましい保持時間は30分以内であり、20分以内であり15分以内である。熱処理は1段階でなく、多段階、複数回行っても良い。さらに、合金に直流、交流あるいはパルス電流を流して、ジュール熱によって熱処理を施すこと、応力下で熱処理することも可能である。
また、2つ以上の異なる組織の層を同一薄帯内に存在する本発明の軟磁性薄帯を得るためには、熱処理温度が300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上とする。高温域での熱処理速度が特性に大きな影響を与える。また、300℃の熱処理温度を超える際の昇温速度が130℃/min以上、さらには150℃/min以上となるようにすることが好ましい。
以上の熱処理を施すことによりアモルファス層の出現する場所を再表面から120nm以内に制御でき、目的とする組織が得られやすくなる。
本発明の軟磁性微結晶合金は、必要に応じて、SiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し、薄帯と薄帯の層間の絶縁を行う等の処理を行うとより好ましい結果が得られる。これは特に層間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。この効果は表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に使用した場合に特に著しい。更に、本発明の軟磁性薄帯から磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。本発明の軟磁性薄帯は高周波の用途として特にパルス状電流が流れるような応用に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途に優れた特性を発揮でき、ハイパワーのパワーエレクトロニクスの用途に特に適する。
使用時に磁化する方向とほぼ垂直な方向に磁界を印加しながら熱処理した本発明の軟磁性薄帯は、従来の高飽和磁束密度の材料よりも低い磁心損失が得られる。
この高飽和磁束密度低損失の軟磁性薄帯から磁性部品を構成することにより、アノードリアクトルなどの大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、各種トランス、磁気シールド、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電機等に好適な高性能あるいは小型の磁性部品を実現することができる。
以下本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
単ロールを用いた液体急冷法で幅5mm、厚さが約20μmの表1に示す組成の薄帯を作製した。1300℃に加熱した合金溶湯を周速32m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し合金薄帯を作製した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、非晶質相中に体積分率で30%未満で分散した組織であることが確認された。
この薄帯に300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように熱処理を施した。保持温度を450℃で10分間とし、その後、放冷して本発明の軟磁性薄帯を得た。
各試料において、薄帯の最表面に厚さ約20nmの結晶層、その内側に厚さ約30nmのアモルファス層、さらにその内側に厚さ約50〜60nmの粗大結晶粒層が存在し、それよりも内部側には平均粒径が約20nmの微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織が存在していた。図1に本発明の軟磁性薄帯(実施例1−1〜1−4)の鉄損の磁束密度依存性を示す。また、表1に本発明の軟磁性薄帯の合金組成、1.6T、1.7Tで50Hzの条件で測定した飽和磁束密度Bs、および鉄損P16/50、P17/50のデータを示す。比較のため、方向性ケイ素鋼板のデータも共に示す。異相はいずれの組成においても1%以下であった。特に実施例1-4では、1.75Tにおける鉄損P17.5/50は0.51W/kgで、この領域でも方向性ケイ素鋼板の鉄損の約半分である。
本発明の軟磁性薄帯の飽和磁束密度はFe系アモルファス材の飽和磁束密度の上限の1.65Tよりも約15%高く、本発明の軟磁性薄帯の鉄損は約1.55Tから1.76Tまでの広い磁束密度の領域でFe系アモルファス材および方向性ケイ素鋼板よりも優れた鉄損特性を示す。
(実施例2)
実施例1で作製した軟磁性薄帯を使用し、皮相電力を測定した。図2に本発明の軟磁性薄帯の皮相電力と磁束密度との関係を示す。また、表2に本発明の軟磁性薄帯(実施例1−1〜1−4)の合金組成で、1.55T、1.60T、1.65Tで50Hzの条件で測定した皮相電力S15.5/50、S16/50、S16.5/50のデータを示す。比較のため、方向性ケイ素鋼板のデータも共に示す。
本発明の軟磁性薄帯は、約1.55Tから1.7Tの広い磁束密度の領域で、Fe系アモルファス材および方向性ケイ素鋼板よりも優れた皮相電力特性を示す。実施例1の結果とあわせると、磁束密度範囲が1.55Tから1.75Tの領域で本発明の軟磁性薄帯が特に優れた軟磁気特性を示している。
(実施例3)
実施例1で作製した軟磁性薄帯を使用し、400Hzと1kHzでの周波数で鉄損を測定した。表3には、本発明の軟磁性薄帯と方向性ケイ素鋼板の1.0T、400 Hzおよび0.5T、1kHzでの鉄損、P10/400、P5/1kを示す。周波数が高くなるほど、発明材料と方向性ケイ素鋼板の鉄損の差が大きくなり、高周波の用途に適していることがわかる。また、図3に実施例1-4の軟磁性薄帯を用いて鉄損の磁束密度依存性を各周波数ごとに測定した結果を示す。
(実施例4)
単ロールを用いた液体急冷法で厚さが約20μmのFebal.Cu1.4Si4B14の合金組成からなる薄帯を作製した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、非晶質相中に体積分率で30%未満で分散した組織であることが確認された。
この薄帯に300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように熱処理を施した。保持温度を450℃で10分間とし、その後、放冷して本発明の軟磁性薄帯を得た。
図4にこの軟磁性薄帯の熱処理後の組織写真を示す。図8はこの組織写真の模式図である。また、図5は本発明軟磁性薄帯の結晶層A、アモルファス層B、粗大結晶粒層Cの状態を示す簡略図である。最表面2から順に、薄帯の最表面に厚さ約20nmの結晶層A、その内側に厚さ約30nmのアモルファス層B、さらにその内側に平均粒径30nmの粗大化した結晶粒からなる層(粗大結晶粒層C)が厚さ約50〜60nmで存在し、それよりも内部側には平均粒径が約25nmの微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織Dが存在していた。
(実施例5)
図6のように単板状の軟磁性薄帯の試料を折り曲げた際、薄帯が割れずに曲げることができる最小の限界の直径DCを測定した。限界の直径DCが小さいほど靭性に優れていると判断できる。表4には液体急冷法で実施例1と同様にして約20μmの各組成の薄帯を作製し、熱処理の際の300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように、450℃で10分間の熱処理を施した軟磁性薄帯を作製した。この軟磁性薄帯の表面近傍のアモルファス層の幅と限界の直径DCの関連を示す。また、表4には熱処理条件を変えて、アモルファス相の幅を広くした試料と、エッチングによりアモルファス相を除去した試料の限界の直径DCも示す。アモルファス層が存在することで、試料の靭性が向上することが解る。一方、アモルファス層がない場合、薄帯は脆化し、取り扱いが困難になる。本発明材料は、損失が少なく、かつ薄帯の靭性が高いという特徴を持つ。
(実施例6)
単ロール法で、厚さ約20μmのFebal.Cu1.35Si2B14合金薄帯作製した。この合金を用いてJIS規格C12コアを作製し、磁場中で熱処理を施し、高周波特性を観測した。図7は本発明の軟磁性薄帯の0.2Tにおける鉄損の周波数特性を示したものである。比較のためにFe系アモルファスと電磁鋼板のデータも示す。いずれの周波数領域においても本発明の軟磁性薄帯の鉄損Pは低く、高周波特性が良好である。図8には交流初透磁率μ/μの周波数依存性を示す。図8のように、100kHzにおいてもμ/μは約7000ある。また熱処理時の印加磁場を100kA/m以上の強磁場とすることで、100kHzにおけるμ/μは約3500となる。
(実施例7)
表5−1、表5−2に示す組成の本発明の軟磁性薄帯を製造した。軟磁性薄帯の幅は約5mm、厚さは約21μmである。いずれも薄帯の表面から120nm以内の深さに厚さが40nm以下のアモルファス層、および、その内部側に微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織が存在していた。
熱処理温度と飽和磁束密度、および、1.6T、50Hzにおける鉄損の値を示す。300℃以上の平均昇温速度は100℃/minと200℃/minの二通りで行った。得られた軟磁性薄帯の鉄損P16/50は、全て0.65W/kg以下である。また、この表5−1、表5−2で示す組成の軟磁性薄帯は、いずれも図6に示した折り曲げ限界直系DCが5mm以下である。
(実施例8)
合金組成がFebal.Cu1.25Si2B14(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから回転する外径約300mmのCu-Be合金ロールに噴出し、幅5mmで非晶質相中の結晶粒体積分率の異なる合金薄帯を作製し結晶粒体積分率を透過電子顕微鏡像より求めた。次にこの合金薄帯を外径19mm内径15mmに巻き回し巻磁心を作製し410℃で1時間の熱処理を行い、熱処理後の飽和磁束密度Bs、保磁力Hcを測定した。なお、熱処理後の合金の結晶粒体積分率は30%以上であり、Bsは1.8T〜1.87Tを示した。
表6に熱処理後のHcを示す。熱処理前の合金中に結晶粒が存在しない合金を熱処理し熱処理後非晶質相中の結晶粒が60%になるように熱処理した場合、保磁力Hcは750A/mと著しく大きくなった。熱処理前における非晶質相中の結晶粒の体積分率が30%未満の合金を熱処理した場合、熱処理後のHcは小さく、本発明製造方法により高Bsで軟磁性に優れた合金が実現できることが確認された。これに対して、熱処理前における非晶質相中の結晶粒の体積分率が30%以上の合金を熱処理し残りの非晶質相を結晶化させた合金では、粗大化した結晶粒が存在するようになりHcが増加する傾向を示すことが分った。
以上のように、Fe量の多い高Bs材で熱処理前の急冷したままの状態で微細な結晶粒が0%超30%未満分散した組織の合金を熱処理し、更に結晶化を進めた合金の軟磁性は、完全な非晶質状態の合金や結晶粒が30%以上存在する合金よりも優れていることが分った。
50Hzにおける鉄損の磁束密度依存性を示す図である。 50Hzにおける皮相電力の磁束密度依存性を示す図である。 各周波数における鉄損の磁束密度依存性を示す図である。 透過型電子顕微鏡で撮影した表面近傍の断面組織写真である。 本発明の軟磁性薄帯の組織の状態を示す模式図である。 単板折り曲げを説明する模式図である。 鉄損の周波数依存性を示す図である。 交流初透磁率の周波数依存性を示す図である。
符号の説明
1:軟磁性薄帯、2:薄帯の表面

Claims (9)

  1. 薄帯の表面より深さ120nmの位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ薄帯の表面から120nm以内の深さでアモルファス層を有することを特徴とする軟磁性薄帯。
  2. 前記軟磁性薄帯は、最表面に結晶組織から成る結晶層が形成され、前記結晶層の内部側に前記アモルファス層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性薄帯。
  3. 前記アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性薄帯。
  4. 前記軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0≦x≦5、10≦y≦24により表されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の軟磁性薄帯。
  5. 請求項1乃至請求項4に記載の軟磁性薄帯を用いた磁心。
  6. 磁束密度1.6T、周波数50Hzで測定した鉄損が0.65W/kg以下であることを特徴とする請求項5に記載の磁心。
  7. 請求項1乃至請求項4に記載の軟磁性薄帯を用いた磁性部品。
  8. Feおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し、非晶質中に平均粒径30nm以下(0nmを含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織からなるFe基合金を作製する工程と、前記Fe基合金に熱処理を行い平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した組織とする熱処理工程を有し、かつ前記熱処理工程は300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことを特徴とする軟磁性薄帯の製造方法。
  9. 前記Fe基合金は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0≦x≦5、10≦y≦24により表されることを特徴とする請求項8に記載の軟磁性薄帯の製造方法。
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