JP2003189786A5 - 米粉を主原料として架橋ネットワーク構造体を形成する方法と、米粉を主原料とする含泡食品用生地と含泡食品 - Google Patents

米粉を主原料として架橋ネットワーク構造体を形成する方法と、米粉を主原料とする含泡食品用生地と含泡食品 Download PDF

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 米紛を主原料として架橋ネットワーク構造体を形成する方法と、米紛を主原料とする含泡食品用生地と含泡食品
【特許請求の範囲】
【請求項1】 米粉に酵母と水を加えた主原料に、必要に応じて品質改善材や風味改善材といった副原料を加えて、混合、混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて作った粘弾性生地を、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4×104(Pa・s)となるように調製し、当該生地を酵母の発酵作用により発泡膨張させたうえ、加熱処理をすることにより米粉を主原料として、小麦粉やグルテンを用いないで、架橋ネットワーク構造体を形成する方法。
【請求項2】 米粉が上新粉と上粉を混合した米粉である請求項1に記載の方法。
【請求項3】 米粉に酵母と水を加えた主原料に、小麦粉やグルテンを用いないで、必要に応じて品質改善材又は風味改善材といった副原料の一部又は全部を加えて、混合、混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて粘弾性を持った生地を作るが、この際、せん断速度0.01(/s)での粘度が1×102〜4×104(Pa・s)となるように調製したことを特徴とする米粉を主原料とする含泡食品用生地。
【請求項4】 上新粉と上粉を混合した請求項3に記載の含泡食品用生地に用いる含泡食品用原料調製米粉。
【請求項5】 米粉に酵母と水を加えた主原料に、小麦粉やグルテンを用いないで必要に応じて品質改善材又は風味改善材といった副原料の一部又は全部を加えて、混合・混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて、せん断速度0.01(/s)での粘度が1×102〜4×104(Pa・s)となるように調製した含泡食品用生地となし、当該含泡食品用生地を酵母の作用で発酵させることにより発泡膨張させたうえ、成形し、加熱処理をして架橋ネットワーク構造体を形成したことを特徴とする米粉を主原料とする含泡食品。
【請求項6】 品質改善材又は風味改善材として、大豆粉末、馬鈴薯粉末、糖類、油脂類、乳製品及び/又は卵を用いた請求項5に記載の含泡食品。
【請求項7】 米粉が上新粉と上粉を混合した米粉である請求項5又は6に記載の含泡食品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
従来、米粉には、小麦粉のようにグルテンが殆ど無く、他に粘弾性物質が含まれていないので、架橋ネットワーク構造体は形成されないとされていたが、鋭意研究開発の結果、米粉を主原料とするだけでスポンジ状の架橋ネットワーク構造体を形成できる方法と技術的知見を見出した。そこで本発明者は、この新たな技術的知見に基づいて、米粉に酵母と水を加えた主原料と必要に応じて品質改善材や風味改善材を副原料として加えただけの材料を用いた生地で、架橋ネットワーク構造体を形成する方法と、当該生地の粘度を従来にない柔らかさに調製した含泡食品用生地と、それを用いた米粉を主原料とする含泡食品と、その代表例である米粉を主原料とするパンとその製造方法とを具現化する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食生活の欧風化と多様化に伴い、米飯に代わってパンやスポンジケーキ、マフィン、ラスク、などの小麦粉を原料とした食品の需要が拡大し、米の消費量が減少する傾向にある。このように我国の主要農産物である米の消費量が減少し、小麦の輸入が増大する状況は、食の自給率確保から大いに問題がある。このため、米を原料とする多様な加工食品の開発が強く要請されている。
【0003】
小麦粉は歴史的に非常に古くからパンなどの含泡食品に使用されてきた。小麦粉が原料として使用されてきた理由は水を含み混合した後のグルテンの粘弾性に起因することが知られている。このグルテンの粘弾性的性質はグリアジンとグルテニンという2つのタンパク質が加水した状態で、機械的混合中にぶつかり合うことにより、S−S結合などの新しい架橋ネットワーク構造体が形成されることによる。イースト等で気泡を生成した際、小麦粉グルテン以外の成分は粘度が低いため、気泡の成長変形過程を促進する。そして、気泡が大きく成長した際、壁の肉厚がうすくなるにも関わらず、グルテン成分があることにより大きな気泡の骨格や特有のテクスチャーを形成しこの構造がつぶれることなく保つことができる。ところが一方、うるち米、大麦、ライ麦、マイロ、とうもろこし等、小麦以外の穀物粉にはこのグルテン成分が含まれていない。このため、パンに代表される含泡食品は、小麦粉を使わず、100%米のみの主原料からつくるのはできないものとされてきた。このため米粉は、古来より、団子、白玉、柏餅、草餅、などの気泡の構造を有しない、柔弾性緻密構造加工食品に利用されるのが一般的で、パンなどの含泡食品に加工されることはほとんどなかった。
【0004】
近年、米を原料とする多様な加工食品の開発要請から米粉を用いたパン類の製造をしようとする研究が各方面でなされてきた。たとえば、特開平5−68468号「パン生地用米粉」、特開平6−7071号「米粉を用いたパンの製造方法」、特開平11−32706「米粉及びそれを用いた加工食品の製造方法」、特開平7−8158「新規なパン及び新規なパンの製造方法」、特開平9−51754「パンの製造方法及び冷凍パン並びに冷凍パン生地」、特開平11−225661「パン及びその製造方法」などがそれである。しかし、これらの発明は、いずれも小麦粉を部分的に米粉に置き換えたもの、あるいは、小麦粉のグルテンと米粉を組み合わせ、気泡が生成成長するプロセスにおいて、小麦粉由来のグルテン構造の助けを借りて、気泡を成長させようとする発想であった。これらも米粉を利用した含泡食品ではあるが、小麦粉のグルテン以外のでんぷん成分を米のでんぷん成分として、置き換えただけの処理であり、画期的な食品とはいいがたい。
【0005】
また、古くから玄米パンがあるが、これも上記と同様の発想である。また、特開2000−023614「イースト発酵食品組成物」、特開平05−049386「パンの製造法」、特開平05−007448「低蛋白パン用澱粉組成物及び低蛋白パンの製造法」には、小麦粉の一部を馬鈴薯澱粉などの澱粉に置き換えた技術に関して開示している。しかし、これらも上記と同様、主原料は小麦粉であり画期的な食品とはいいがたい。
【0006】
一方、近年米粉を主原料にして小麦粉を使わない含泡米粉食品の開発も非常に少ないがいくつかの例がある。たとえば、特開平5−130827「米粉パンの製造方法」である。これは米粉パンの海綿構造形成に必要な被膜性物として、餅米をアルファー化した糊状物に、水飴やマルトトリオース、イサゴール、キタサン、グアー、納豆菌粘質物などのような高分子粘性食品を混和して発酵させた複合体を用いる方法である。これも高分子粘性食品が不足している粘弾性を補充して複合体に構成したものである。確かに小麦粉のグルテンは、混入されていないが、それに代わる性質を有する高分子粘性食品を加えるもので、発想としては前記のものと共通である。
【0007】
また、特開2001−69925「複合化含泡米粉材料とこれを用いた含泡米粉食品」では、米粉を主原料としてこれに精製絹フィブロインをグルテンに代えて加えることにより含泡米粉食品を調製している。これも泡の安定化促進のため精製絹フィブロインを補充添加しているもので、添加物質に工夫はあるが、前記発想は前記のものと共通している。尚、この実施例からは、ベーキングパウダーを用いない場合のケーキ起泡には精製絹フィブロインは有効であるが、パンのように発酵によって泡の生成と成長をともなう発泡プロセスをともなうとき、泡の安定性にどう寄与するかに関しては全く示されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、独自のおいしさをもった米粉を主原料としながら、小麦粉やグルテンを用いないで、気泡が生成成長する発泡プロセスをともなわせた場合でも、その発泡倍率(発泡前後の体積比)は、従来の小麦粉由来のパンとほぼ同じ程度にあるようにするにはどうしたら良いか、米粉を主原料としてスポンジ状の架橋ネットワーク構造体を形成した発泡食品を開発することを技術課題として研究開発を進めたものである。
【0009】
従来の小麦粉を主原料としてつくられるパンのイーストでの発酵する前の生地の粘度は、グルテンが存在するためきわめて高い。たがって、米粉と酵母と食塩と水とを主原料にして、必要に応じて糖類、油脂類、乳製品、卵、その他の品質改善材又は風味改善材等の副原料を加えて、混合、混捏させて形成された生地では、上記の小麦粉での生地の粘度と同程度に調製すると酵母での発酵工程時に発酵がすすまず、ふくらむことがない。
【0010】
発泡プロセスについて、分野は異なるが発泡成形性とプラスチックの粘度の関係について、近年基礎的研究が進んできた。この研究知見では、粘度特性が同じであれば、材料の分子構造にはそれほど依存せず、良好に発泡するものと考えられている。本発明者は、異質分野の学術的知見に基づいて、本件の場合にも粘度特性に着目して、研究を進めることとした。
【0011】
まず、小麦粉を主原料とするパン生地の場合には、発酵時に生地の粘度が、せん断速度0.01(/s)において約100000(Pa・s)(単位はパスカル・セカンド)前後であることが解った。この様に小麦粉を主原料とするパン生地の場合にはかなり高粘度であるため、パンの種類によってその形状を例えば、棒状、ロール状、食パンでは四角の型に詰める等自由に成形することができる。そして、この成形パン生地をイースト(酵母)により良好な発泡プロセスをへて、架橋ネットワーク構造体を発形成させることができ、これを焼成することにより固定される。
【0012】
このため、米粉を主体として必要に応じて副材料を添加した場合にも、このようなパンの場合と同じか概念的に近い粘度特性であると考えられて試みられてきた。その場合には実験結果でも確認したように、米粉を主原料にしたパン生地を従来と同じ高い粘度にしたのでは、良好な発泡倍率を得ることができなかった。このため発明者は、米粉を主原料とした場合には、水分を多くしてその素材に適した特定の粘度領域にある生地を作ることを目指して実験検討をした。その結果、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4×104(Pa・s)にした米粉を主原料とする生地にすると、酵母の発酵作用によって良好な発泡が可能になり、その生地を発泡膨張させることができる事が解った。しかもその粘度領域にある生地にした場合には、発酵による発泡プロセスを経て発泡膨張した生地は、焼成したり、蒸したり、電子レンジで加熱したりすることにより、スポンジ状の架橋ネットワーク構造体が形成されそれが固定されるという技術知見を見出した。
【0013】
本発明者は、このようにして見出された新しい技術知見を利用すれば、従来困難とされてきた米粉を主原料として用いながら、「酵母の発酵により良好な発泡が可能な米粉を主原料とする含泡食品用生地」を提供できること、このような含泡食品用生地を用いれば小麦粉やグルテンや精製絹フィブロインや高分子粘性食品など粘性補強材を特別に用いることなく、米粉独特の風味を生かした米粉パンや米粉カステラや、スポンジケーキ等の新しい含泡食品を容易に製造することができることとなった。本発明は、このように小麦粉とは異なる独特の風味と味を持った米粉を主原料として用いた多様な食品分野があらたな広がりをもって創出できるのに寄与することが目的である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、まず、米粉に酵母と水を加えた主原料に、必要に応じて品質改善材や風味改善材といった副原料を加えて、混合、混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて作った粘弾性生地を、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4×104(Pa・s)となるように調製し、当該生地を酵母の発酵作用により発泡膨張させたうえ、加熱処理をすることにより米粉を主原料として、小麦粉やグルテンを用いないで、架橋ネットワーク構造体を形成する方法が提供される。
【0015】
上記第1発明は、米粉に酵母と水を加えた主原料として形成した粘弾性生地をせん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4×104Pa・s(パスカル、セカンド)となるように調製すれば、これによって発酵作用により良好な発泡膨張ができること、そしてこれを加熱処理すれば米粉で架橋ネットワーク構造体を形成することが出来るという基本発明である。従来から米粉は、粘度補強材を加えなければ、スポンジ状の架橋ネットワーク構造体ができないとされていたのを、粘度調製をするだけで簡単に実現できることになったので、米粉の食品としての利用態様が大きく広がることになった。
【0016】
本発明に従えば、また米粉に酵母と水を加えた主原料に、小麦粉やグルテンを用いないで、必要に応じて品質改善材又は風味改善材といった副原料の一部又は全部を加えて、混合、混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて粘弾性を持った生地を作るが、この際、せん断速度0.01(/s)での粘度が1×102〜4×104(Pa・s)となるように調製したことを特徴とする米粉を主原料とする含泡食品用生地が提供される。
【0017】
上記第2発明は、米粉を主原料にした発泡し得る粘弾性を有する含泡食品用生地である。第一発明の原理を応用した中間調理加工品である。このように、従来の小麦粉の生地での粘度とは異なる素材に適した粘度領域を具備した含泡食品用生地は、簡単に良好な発泡プロセスを経ることができ、米粉を主原料にした含泡食品を製造することができるので便利である。
【0018】
本発明において主原料として使用する米粉は、うるち米で製粉された米粉若しくはもち米で製造された米粉又はこれらが混合された米粉である。
【0019】
ここでいう米粉とは、市販されている上新粉やじょうよ粉をいう。また、米粉は、清酒における精米時にも大量に生成される米粉も含む。たとえば、清酒醸造元の極上粉や上粉などである。また、一般の粉砕機械でも用意に米を粉砕することができ、これらの米粉も含む。これらは、粉砕の粒の大きさや、粉砕プロセスの条件で、米粉は水を含ませたときの粘度が著しく異なる。このため、米粉と水分の比を調節することで、いろいろな米粉を単独または組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明においては、風味改善材として、大豆粉末、馬鈴薯粉末を加えた米粉を主原料として含泡食品用生地に用いることができる。
【0021】
ここでいう大豆粉末とは、粉末状分離大豆蛋白質粉末、構造性繊維状大豆蛋白、粒状大豆蛋白、粉末状濃縮大豆蛋白などをいう。大豆蛋白質はイソフラボンの供給源として知られており、大腸ガン、前立腺ガン、などの発生率を低下させることがしられている。また、最近のアメリカ食品医薬局(FDA)によると心臓病の予防食品として効果があることが知られている。粉末状分離大豆蛋白質粉末は水に良好に膨潤分散し、水と粉末状分離大豆蛋白質粉末の重量比あるいは、その粉末状分離大豆蛋白質粉末のグレードにより、粘度が調節可能である。また、馬鈴薯澱粉とは、市販の片栗粉として売られているもので、粒の大きさや水の量で粘度調節が可能である。そのほか、既存の食味改良材料とは、従来の小麦粉のパンに少量添加し利用されてきた、きな粉、ライ麦、大麦、等をいう。
【0022】
本発明に従えば、更に、米粉に、酵母と食塩と水を加えた主原料に、必要に応じて、大豆粉末、馬鈴薯粉末、糖類、油脂類、乳製品、卵、その他の品質改善材又は風味改善材といった副原料の一部又は全部に加えて、混合・混捏することにより当該混合原料が均一に分散・混合させて、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4x104(Pa・s)となるように調製した含泡食品用生地となし、当該含法食品用生地を酵母の作用で発酵させることにより発泡膨張させたうえ、成形し、焼成するか、蒸すか又は電子レンジで加熱するなどの手段で加熱処理をし、架橋ネットワーク構造体を形成したことを特徴とする米粉を主原料とする含泡食品が提供される。
【0023】
上記第3発明は、米粉独特の風味を生かした米粉製パンや米粉製カステラや、米粉製スポンジケーキ等を含む含泡食品である。本発明は、このように小麦粉とは異なる独特の風味と味を持った米粉を主原料として用いて、これまで困難とされてきた架橋ネットワーク構造体態様を具備した米粉を主原料とする含泡食品である。米粉のあらたな利用法を見出しての食品化である。
【0024】
第3発明において、米粉が、うるち米で製粉された米粉若しくはもち米で製造された米粉又はこれらが混合された米粉を主原料として使用する。
【0025】
上記第3発明においては、風味改善材として、大豆粉末、馬鈴薯粉末を加えた米粉を主原料として用いることができる。
【0026】
上記第3発明としては、米粉に酵母と食塩と水を加えた主原料に、必要に応じて品質改善材や風味改善材といった副原料を加えただけの混合原料を用いて、粘度を柔らかく調製したパン生地となし、そのパン生地を発酵により発泡膨張させ、焼成するか又は蒸すことにより架橋ネットワーク構造体を形成してなる米粉を主原料とするパンが含まれる。
【0027】
本件発明のパンは、米粉を主原料とする含泡食品の代表的な態様の商品である。パンは、非常にポピュラーな主要食品であるが、本件発明の米粉を主原料とするパンは、小麦粉やグルテンなど弾粘性を補強する成分が入っていないので、従来の小麦粉製のパンとはその食感と風味とが独特なものとなる。即ち、本発明は、新しいお米独特のおいしさを持った米粉製パンとして商品化できたものである。
【0028】
本発明によれば、米粉に酵母と食塩と水を加えた主原料に、必要に応じて糖類、油脂類、乳製品、卵、その他の品質改善材又は風味改善材といった副原料の一部又は全部を加えて、混合、混捏して、当該混合原料が均一に分散・混合するとともに、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102〜4x104(Pa・s)の粘弾性を持ったパン生地を作成し、当該パン生地を発酵させることにより発泡膨張させたうえ、成形し、焼成するか又は蒸すことによって米粉を主原料とするパンを製造することができる。
【0029】
本発明は、従来困難とされていた米粉を主原料とするパンを簡単に製造できる方法を提供したものである。即ち、米粉と酵母と食塩と水を加えた主原料だけでパン生地を作り、そのパン生地の粘度を調整するだけで、あとは従来と同じ手法で、発酵、形成、焼成工程を進めるだけででスポンジ状の架橋ネットワーク構造体を有するパンを安定して製造できるので便利である。
【0030】
【実施例】
以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
この実施例は、パンの調製をする事例である。本発明は、このパンの調製をする実施例に限られるものではないこと勿論である。
【0031】
パンは通常、主原料として小麦粉、酵母、食塩、水を用い、種類により副原料として糖類、油脂類のほかに乳製品や卵などを用いて作られる。パンの製造工程を示すと、まず、混合・混捏工程において、原料を均一に分散・混合させて、適度な弾性と伸びを持ち、発酵させるイーストを含んだ含泡食品用生地を調製する。次に、発酵工程においては、酵母の作用で二酸化炭素が生成され、生地を膨らませる。即ち、発酵させる発泡プロセスにより発酵膨張した含泡材料をつくるのである。これをパン製品の種類によって種種の形状に成形し、そのうえで焼成工程においては、生地をオーブンで焼くことでパンをつくる。
【0032】
一般にはこのようにしてパンをつくるのであるが、業務用の製造工程には、いろいろな方法がある。代表的な方法としては、まず、配合材料の全部を同時に捏ねて、その後、発酵させる直捏生地法がある。そのほかの代表的な製法としては、部分的な材料のみで中種をまず作っておき、その中種を発酵させたあと、残りの材料を加えてさらに捏ねて生地をつくり、これを発酵させる中種中地法がある。後者の製法の特徴は、中種発酵後の状態で、加える残りの量を制御できるので、製品の品質が均一に出来ると一般的にいわれている。
【0033】
本願発明の米粉をもちいる組成は、直捏生地法でも、中種中地法でも良好に調製することができ、その方法はどちらでも良い。ここの実施例1に示す結果は、すべて直捏生地法で行った。
【0034】
次に実施例に係るパンの調製をする際の組成について、説明する。図1は、比較例の組成を示した表1に、図2は、実施例の組成を表2に示す。ここで、小麦粉は日清製粉製の強力粉を用いた。砂糖は、新三井製糖製の砂糖を用いた。上新粉は中野食品工業株式会社の上新粉を用い、ショートニングは、日本製粉製のショートニングを用いた。塩は、あらしお株式会社製の塩を用いた。イーストは、S.I.Lesaffre(フランス)製のドライイーストを用いた。極上粉は清酒の醸造元である(株)小嶋総本店からのものを用いた。大豆蛋白質粉末はフジプロテインテクノロジー株式会社製のプロリーナ200、フジプロFX、ニュープジプロSE(いずれも室温で粉末状)を用いた。馬鈴薯澱粉は、市販する片栗粉を用いた。
【0035】
混合・混捏は、ハンドミキサー(bamix(スイス)製モデル100)を用いて10分間、最高出力にて混合を行った。また、型の大きさは、縦13.5センチ、横6.8センチ、高さ5.7センチの型をもちい、これに生地を流し込み発酵させた。発酵時間は1時間で、温度約35℃で行った。本願発明では、ショートニングを用いたが、バターでも代用できる。また、卵白は卵黄を含んだ卵とすることもできるし、また、水とすることもできる。イーストは、ドライイーストでも、また、生イーストでもよい。このように、主原料の米粉以外は、従来から知られている一般的な、材料におきかえることができる。本願発明の実施例ではすべて、米粉や大豆蛋白質粉末は、前処理なしに用いた。しかし、水中に前もってつける等の既存の処理方法をほどこしてもよい。また、米粉に代わるものとして、炊飯によりできたご飯がある。生地の粘度が、請求の範囲内であれば、ご飯で置き換えることもできる。
【0036】
次に、酵母の発酵作用による発泡生成による生地の発泡倍率を測定した。発泡倍率は、パンの形を形成する上で、重要な指標となる。本願発明においては、発酵した前のイーストを含んだ材料を型のなかに流し込み測定した高さを基準にし、発酵しさらにパンを焼いた後の高さを測り、この高さの比より発泡倍率を計算した。たとえば、発泡倍率は2倍とは、体積が2倍にふくれたことをいい、1倍とは、まったく、発酵前後で体積の変化がないことを意味する。
【0037】
また、原料の混合・混捏によりできた米粉を主原料とする含泡食品用生地の粘度を測定した。当該粘度測定は、レオメトリックス社製の回転タイプのレオメータ(製品名 ARES)を用いて、粘度が高い試料については平行平板型(円形の板が2枚あり、この間に試料を入れて、片側(下側)が回転して、片側(上側)で応力を検出する)を用い、実験は室温で、空気雰囲気中で行った。粘度の低い試料については2重円筒型を用いた。ここで粘度測定に用いた試料とは、全ての原料を混合してできた、発酵前のパン生地のことである。測定条件は、一定のひずみ速度(0.01 /s)で測定して、約700秒後のほぼ安定した粘度の値を測定値とした。試料が粘弾性的性質をもつと、粘度はひずみ速度とともに変化することが一般的にしられている。ここでは、発酵に伴う変形の速度が非常に遅いため、0.01(/s)という非常に遅い変形での粘度を、材料の粘度特性の意義ある指標となると考えて規定した。試料で注意した点として、イースト(酵母)を含むと、室温での保存や、室温での測定の最中に、気泡が生成成長してしまうため正確な測定が困難となる。そこで、表1,2(図1、図2)の組成で、イースト(酵母)を含まないものを、別に容易して、これを粘度測定専用のサンプルとして用いた。これにより良好な再現性のある粘度測定結果を得ることができた。
【0038】
次に、比較例の結果の説明をする。
図1には比較例での原材料すべて含めた組成を表1として示し、図3には、結果を表3として示す。小麦粉を原料にした従来のパンの生地(比較例1,2)は、水の量で多少の粘度のコントロールはできるが、1.1x105や5.4x104という非常に高い粘度でも発泡倍率が3.4や4.9という高い値に見られ、この領域で良好なパンが得られる。
【0039】
しかし、米粉を主原料にしたパンの生地(比較例3)では、4.1x104と、ほぼ小麦粉原料の生地(比較例2)と近い粘度の材料であるにもかかわらず、発泡倍率が極めて悪く、パンとしての構造として適していない。また、食感も堅すぎて良好なものではなかった。
【0040】
また、米粉を主原料にして、しかも、水の分量を極端に多くしたパンの生地(比較例4)では、8.3x101と非常に低い粘度となる。しかし、この場合粘度が低すぎて、気泡が生成と生長をしていくなかで、気泡構造を保つことができず、発泡は全くしない(発泡倍率1倍)。
【0041】
一方、米粉の他に大豆蛋白質粉末を副原料としてつかった生地の場合(比較例5)も、粘度が4.5x104とほぼ従来の小麦粉からのパンの生地の粘度と同じであると、発泡倍率が低く、パンの構造として適していないばかりか、食感も悪い。
【0042】
また、片栗粉100%では(比較例6)、沈殿が生じてしまい、ふくらみも悪い。このように、従来の小麦粉を原料とした生地と同程度の粘度では、予想外にも、米粉を主原料と原料とした生地では粘度がたかすぎて、イースト(酵母)により生成される気泡が成長することができないため発泡倍率が低いことが明らかとなった。粘度は、米粉と水分の量あるいは、米粉の種類(極上粉の方が、上新粉より同量の水へ分散させると極端に粘度が高い)で、極端に変化する。
【0043】
同様に、粘度は大豆蛋白質粉末と水分の量、大豆蛋白質粉末の種類(プロリーナ200の方が,フジプロFX、ニュープジプロSEよりも、同程度の水へ分散させると粘度が低い)で変化させることができる。
【0044】
最後に、本件実施例の結果について説明する。図2には実施例での原材料すべて含めた組成を表2として示し、図4には、結果を表4として示す。実施例で用いた、米粉として上新粉と極上粉の両方を主原料として使用した生地(実施例1)では、粘度が1.4x104となり、そのとき発泡倍率は2.3倍で、良好なパンができる。また、原料の米粉として、上新粉のみを用いて生地を作成した場合(実施例2)では、粘度が1.8x104となり、そのとき発泡倍率は2.6倍となり、良好なパンができる。このように、米粉は1種類を単独で用いようと、2種類を混合しようと、調製された生地の粘度が範囲内の粘度であれば、良好なパンを作成することができる。粘度は、水との比、あるいは米粉の種類で、調製可能である。米粉と大豆蛋白質粉末の両方を用いて作成された生地(実施例3)は粘度が1.9x104となり、このとき発泡倍率は2倍である良好なパンができる。
【0045】
また、米粉と大豆蛋白質粉末との比を実施例3とことなり変化させた場合(実施例4)は、粘度が1.4x104となる。このとき発泡倍率は2倍で良好なパンが作成できる。このように大豆蛋白質粉末を副原料として使う場合も、範囲内の粘度にはいっていれば、良好なパンが作成できる。さらに、実施例4と同様の組成であるが、大豆蛋白質粉末の種類をことなるものとしたのが実施例5,6である。同様に異なる大豆蛋白質粉末を用いても、範囲内の粘度であれば、良好なパンが作成できる。
【0046】
また、水を大量にして粘度を下げて作成した生地が実施例7である。このとき粘度は1.7x102であり、発泡倍率は2.2倍となり、気泡が大きいものと、小さい物とのばらつきが大きく、きめのばらつきが大きいが、良好なパンができる。
【0047】
また、実施例8から11のように、規定の粘度範囲内であれば、片栗を添加しても、片栗粉と大豆蛋白質の両方を添加しても、良好なふくらみとなる。以上から示されるように、せん断速度0.01(/s)での粘度が1x102から4x104(Pa・s)にあることを特徴とする米粉を主原料とする、必要に応じて既知の添加物を加えて作成された、生地材料を調製することにより、良好な含泡食品をつくれることを初めて見いだした。
【図面の簡単な説明】
【図1】
比較例に用いた原料の組成を示す表1である。
【図2】
実施例に用いた原料の組成を示す表2である。
【図3】
比較例の結果まとめを示す表3である。
【図4】
実施例の結果まとめを示す表4である。
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