JP4866398B2 - グルテンを含まないパン製造用ドウ組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、このような熱可逆ゲル強度を有するメチルセルロ−スにあっては、水への溶解性が悪い欠点がある。この水への溶解性は水温を10℃以下に下げることで改善はされるものの通常のドウ調製時の温度として設定される20〜30℃においては溶解がされず、本来の熱可逆ゲル化性能も発揮されない。これに対してヒドロキシプロポキシル基を導入すると、この溶解の温度は20〜30℃以上の温度で溶解することが可能となる。
具体的には、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.05〜0.3 で、更に高い加熱ゲル強度を得るため好ましくはヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.05〜0.1でメトキシル基の置換度が1.4〜1.9である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、 該ヒドロキシプロポキシル基は該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基と置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基とに分けられ、該非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する。
本発明で使用されるヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.05〜0.3で、メトキシル基の置換度が1.4〜1.9である水溶性ヒドロキシプロピルルメチルセルロースは、特に限定されるものではないが、特開2001−302701号公報に提示されているようにセルロースにアルカリ水溶液を所定量含浸させた後、必要量のメチルエーテル化剤(好ましくは塩化メチル)及びヒドロキシアルキルエーテル化剤(好ましくはプロピレンオキサイド)を反応させて製造する。
ここで、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシプロポキシル基の平均モル数をいい、メトキシル基の置換度とは、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数をいう。
更に詳しくは、セルロ−スと必要量のアルカリ(好ましくはカセイソーダ溶液)を反応させてアルカリセルロ−スを調製した後、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)を仕込み、好ましくは50〜95℃の温度でエーテル化反応を行なう。その後に、メチルエ−テル化剤(例えば塩化メチル(メチルクロライド))を仕込み反応させる。
あるいは、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)を仕込み、仕込まれたこのエ−テル化剤のストイチオメトリック量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上反応が終了した時点においても、塩化メチルのストイチオメトリック量の好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上反応が終了していないように、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)及びメチルエーテル化剤(例えば塩化メチル)を連続又は適宜仕込みながら製造する。具体的には、ヒドロキシプロピルエーテル化剤とメチルエーテル化剤は、同時に添加してもどちらかを先に添加してもよいが、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤の仕込み時間に対するメチルエーテル化剤の仕込み時間の比が、1.3〜3、特に1.5〜3が好ましい。
文集第39巻第4号第293−298頁(1982年)に記載の分子量測定方法に従い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーと光散乱法の組み合わせによる方法により重量平均分子量を測定し、単位ヒドロキシプロピルメチルセルロース分子当たりの分子量で除して重量平均重合度を測定することができる。なお、重量平均分子量の測定における溶媒の種類や条件、温度、使用カラムや光散乱装置の波長等は、前記高分子論文集に記載された条件に限定されるものでなく適宜選定できる。また、重量平均分子量は、超遠心分離方法や粘度平均分子量からの換算によって求めることも可能である。
また、熱可逆ゲル強度については、得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの2質量%水溶液を調製した後、50mLのビーカー内に入れ80℃のバス内で30分間熱可逆ゲル化させ、レオテック社製のレオメーターによりゲルの上部より15mm直径の円筒棒を5cm/minにて2cm貫入させた時の円筒棒にかかる力の最大値を測定し、この値を円筒棒の断面積で除して熱可逆ゲル強度して求める。
[実施例1]
<ヒドロキシプロピルメチルセルロースの調製>
木材由来の日本製紙社製の高純度溶解パルプをローラーミルにより粉砕し、目開き600μmの飾いを通過させ、栗本鐵工所製の2軸混練機KRCニーダーS1型(パドル径25mm、外径255mm、L/D=10.2、内容積0.12リットル、回転数100rpm)に10g/分で定量供給し、同時に49質量%水酸化ナトリウム溶液をパルプ供給口に設けた注入口より21.5g/分で定量供給しセルロースにアルカリ水溶液を付加したアルカリセルロースを得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの分子量を高分子論文集第39巻第4号第293〜298頁(1982年)に記載の分子量測定方法により測定し、重量平均重合度を算出したところ、1200であった。
予め各検出ピークについて質量分析装置にて分解成分の構造を同定したピークによる同定と面積比により、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)を求めたところ0.8であった。
得られたパンを2つに切断し断面を観察したところ、均一な気泡が入りふっくらと膨らんで、柔らかい食感のパンが得られた。また、得られたパンについて、気泡の目視観察、焼成2時間後のクラム部分及びクラスト部分の固さをレオメーターを用いて測定し、その結果を表2に示す。固さの測定は、レオメーター(不動工業株式会社製)を用いて測定した場合の最大応力をもって示した。クラム部分(パンの内側の柔らかい部分)の場合、パンを測定直前に厚さ3センチに切断し、直径2cmの円状ディスクを2cm/分で進入させ、ディスクが1cm進入した際のディスクにかかる圧力を示す。クラスト部分(パンの表皮部分)については、パンを測定直前に、クラスト部分を含むように高さ3cmに切断し、直径2mmの棒状ディスクを2cm/分で進入させ、サンプルの表皮を破った時の応力を測定した。
実施例1で記述した使用パルプ品種及び塩化メチル及びプロピレンオキサイドの仕込み量、塩化メチル仕込み時間/プロピレンオキサイド仕込み時間比を表1に示す値に変えた他は実施例1と同様にして得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースについて、実施例1と同様の方法で測定されたメトキシル基の置換度、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)と、重量平均重合度、溶解温度、熱可逆ゲル強度を表1に実施例及び比較例ごとに示した。
また、実施例1と同様にして、これらのヒドロキシプロピルメチルセルロース及びセルロースパウダー、その他多糖類、食塩、砂糖、イースト、ショートニングを使用して調製した穀物パンを試作した。得られたパンについて、実施例1と同様にして、気泡の目視観察、焼成2時間後のクラム部分及びクラスト部分の固さをレオメーターを用いて測定した。その結果を表2に示す。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の添加剤として、ザンタンガム(三晶社製)、グアガム(三晶社製)を単独で使用し、実施例1と同様にパンを作成して、目視観察、固さ、食感を評価し表3に示した。
Claims (4)
- ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.05〜0.3で、メトキシル基の置換度が1.4〜1.9であり、重量平均重合度が100〜1200である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、該ヒドロキシプロポキシル基は、該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基と、置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基とに分けられ、該非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4〜0.8である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、グルテンを含まない穀粉類と、水とを少なくとも含んでなるパン製造用ドウ組成物。
- 上記水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、上記グルテンを含まない穀粉類100質量部に対して、0.1〜3質量部含まれる請求項1に記載のパン製造用ドウ組成物。
- 上記水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、アルカリセルロ−スをヒドロキシプロピルエ−テル化剤と反応させた後に、メチルエ−テル化剤と反応させて製造されたものであるか、アルカリセルロ−ス中にヒドロキシプロピルエ−テル化剤を仕込み、仕込まれたこのエ−テル化剤のストイチオメトリック量の60質量%以上反応が終了した時点においても、メチルエーテル化剤のストイチオメトリック量の40質量%以上反応が終了していないように、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤及びメチルエーテル化剤を仕込み製造されたものである請求項1又は請求項2に記載のパン製造用ドウ組成物。
- 熱可逆ゲル強度が、40〜200g/cm 2 である請求項1〜3のいずれかに記載のパン製造用ドウ組成物。
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