JP4010345B2 - ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、接着剤、結合剤、化粧品、食品、押出し成形、塗料リムーバー、医薬品、又はPVC懸濁重合助剤等広い用途分野に利用されている。
【0003】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースが多方面に利用されるための重要な要素のひとつとして、溶液の性質が優れていること、すなわち例えば、溶液中で溶解して高い透明性を有することが挙げられる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、第一段階でセルロースを水酸化アルカリと反応させてアルカリセルロースを生成させ、次いでこれをプロピレンオキシトとクロロメチルとを反応させることにより製造されるが、この第一段階でのアルカリセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製品における品質、特に溶液の特性に大きく影響する。
【0004】
アルカリセルロース中の水酸化アルカリは、クロロメチルとは当量で反応し、プロピレンオキシドとの反応に対しては触媒としての働きをするが、アルカリセルロースに対するエーテル化剤の反応効率は、アルカリセルロース中の水酸化アルカリ及び水の量の影響を受け、水酸化アルカリ/セルロース重量比、水/セルロース重量比の増大にともなって低下することが知られている。また、必要量以上の水酸化アルカリ及び水は、エーテル化剤と反応して生成物から除去されなければならない不純物を生じさせ、望ましくない。
【0005】
したがって、アルカリセルロースとプロピレンオキシド及びクロロメチルとの反応によってヒドロキシプロピルメチルセルロースを効果的に得るためには、アルカリセルロースの調製に際し、アルカリセルロース中の水酸化アルカリ量と水分量とを目標とする置換度に応じて制御する必要がある。
【0006】
アルカリセルロースは一般に、シート状のパルプを水酸化アルカリ水溶液に浸漬後圧搾する方法、又は粉末状にしたパルプに水酸化アルカリ水溶液を攪拌下に噴霧する方法等により調製される。前者のアルカリセルロース調製方法では、水酸化アルカリ量と水分量が、水酸化アルカリ水溶液の濃度、浸漬温度、浸漬時間、圧搾時の圧力等の影響を受けるため、目的とする水酸化アルカリ量、水分量の制御が困難である。また、アルカリセルロースは、老成と呼ばれる経時的解重合が進行し、特に酸素存在化で促進されるが、解重合の進行したアルカリセルロースを用いて製造したセルロースエーテル類は、重合度が低く、溶液にした場合に高い粘度が発生しない。さらに、アルカリ浸漬、圧搾よるアルカリセルロース調製方法では工程が長く老成が進行し易いため、高粘度を有するセルロースエーテル類は製造し難い。
【0007】
一方、後者のアルカリセルロース調製方法では、所望の量の水酸化アルカリと水分とを水酸化アルカリ水溶液としてセルロースに添加するため、前者の方法に比し操作が容易である。また、続くアルキレンオキシド及びハロゲン化アルキルとの反応も同一反応機中で実施できることから、製造設備上も有利である。また、酸素濃度を低下させ老成を防止するための設備的な対応が容易であることから、高粘度を有するセルロースエーテル類の製造が可能である。
しかしながら、上記のような利点を有するものの後者のアルカリセルロース調製方法で得られた製品は、前者の方法のものと比較して、その溶液の透明性が低いという品質上の問題があった。
【0008】
粉末状にしたパルプに水酸化アルカリ水溶液を噴霧する方法により調製されたアルカリセルロースは、水酸化アルカリ水溶液に浸漬して得られるアルカリセルロースに比べて不均質であり、続くエーテル化反応が均一に進行せず、得られる製品中に未反応セルロースが混在する。結果として溶液にした場合に、溶解しないセルロース繊維分によって透明性を悪化させているからである。
アルカリセルロースの均一性を向上させる方法として、大量の有機溶剤の存在下、粉末状パルプに所望の水酸化アルカリ水溶液を添加する方法が提案されている(特公昭51−32676号等)。
しかし、同法により製造されたヒドロキシプロピルメチルセルロースでも製品の溶液の透明性は十分ではなく、また、有機溶剤を大量に用いるため回収設備を必要とすること等工業的生産に際してはコストアップとなり有利な方法とは言えない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、高い生産性を有し工業的に好適な粉末状にしたパルプから均質なアルカリセルロースを調製し、製品の溶液透明性を改善するようにしたヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題の解決のために鋭意検討した結果、ジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中、40〜70℃で粉末状のパルプと水酸化アルカリ水溶液との緊密に混合する方法により調製されたアルカリセルロースを用いて、プロピレンオキシドとクロロメチルとを反応させてヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造する方法が、工業的製造方法として有利であり、また、高い溶液透明性という良好な品質を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法であることを見い出し、本発明に想到した。すなわち、上記目的を達成するため請求項1の発明は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法であって、ジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中、40〜70℃で粉末状のパルプと水酸化アルカリ水溶液とを緊密に混合することによりアルカリセルロースを調製し、該アルカリセルロースにプロピレンオキシドとクロロメチルとを反応させてヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造するようにしたことを特徴とする。請求項2の発明は、請求項1のヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法におけるアルカリセルロースが、水酸化アルカリに対して0.1〜1の重量比のジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中で調製されたアルカリセルロースであることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法において、第一段階ではセルロースを水酸化アルカリと反応させてアルカリセルロースを生成させる。
原料として使用されるセルロースには、木材パルプ、リンターパルプ等があるがいずれも使用でき、分子量にも特に限定はなく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの要求される製品物性に応じて選択される。
本発明における原料パルプの形状は、粉末状のものが好ましく、特に粒子径0.5mm以下の粉末パルプが好適に使用される。粒子径0.5mmを超える場合にあっては、水酸化アルカリとの反応の均一性が不足し、良好な品質を確保できない。
この粉末パルプと反応させる水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が用いられるが、水酸化ナトリウムが好適である。
【0012】
水酸化アルカリは水溶液として用いられるがその濃度は、10〜60重量%のものが用いられる。10重量%より低い濃度のものでは、セルロースの膨潤が不十分で、続くエーテル化反応が十分進行しない。60重量%を超える濃度のものは使用上不便であり、また、粉末パルプと混合して反応させるに際し、均一性が不足するおそれがあり、望ましくない。
また、水酸化アルカリのセルロースに対する比率は任意の範囲のものが使用できるが、目的とするヒドロキシプロピルメチルセルロースのアルキル基置換度に応じて、調整される必要がある。
本発明における粉末パルプと水酸化アルカリ水溶液との反応は、40〜70℃、好ましくは50〜60℃の温度下、ジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中で実施される。
上記の範囲を外れる温度下で処理したものを用いて、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに誘導した場合、製品の溶液は高い透明性を示さない。
【0013】
溶媒としては、ジメチルエーテルが使用される。
このときのジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物の使用量は、水酸化アルカリに対する重量比で0.1〜1.0、好ましくは、0.4〜0.8である。この範囲を外れたものは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに誘導した場合良好な製品物性を得ることができない。水酸化アルカリに対する重量比1.0を超えて処理したものを用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースに誘導したものの溶液の透明度は著しく低いものであり、水酸化アルカリに対する重量比0.1よりも小さいものも同様の傾向を示す。また、ジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物は、除熱媒体としてのはたらきを有しており、水酸化アルカリに対する重量比0.1よりも小さい場合には、粉末パルプと水酸化アルカリ水溶液との反応によって生成する熱により、好適温度への制御が、特に工業的規模での実施にあっては困難となるという問題がある。
【0014】
本発明における粉末パルプと水酸化アルカリ水溶液の反応を行う反応機は、特に限定されないが、均一なアルカリセルロースを得るために緊密に混合できる装置を備えており、また、本発明の実施温度が、クロロメチルや使用されるジメチルエーテルの沸点以上であることから、密閉耐圧性が必要である。
なお、「緊密に混合する」ためには、粉末状のパルプと水酸化アルカリ水溶液との反応によって得られるアルカリセルロースが均質なとなるよう、十分な攪拌力を備えた混合機中で実施されるのが好ましい。例えば、粉末パルプを混合機中に攪拌・分散させ、水酸化アルカリ水溶液が混合機内に十分に行き渡るよう加える(例えば複数の仕込み口からスプレーして添加する)。
アルカリセルロース反応に続くプロピレンオキシド、クロロメチルとのエーテル化反応によるヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造は、公知の方法に従って実施することができる。アルカリセルロース反応とエーテル化反応は同一の反応機で連続的に実施することも可能であり、すなわちアルカリセルロース反応終了後、目的とするヒドロキシプロピルメチルセルロースのヒドロキシプロピル基置換度、メトキシ基置換度に応じて必要量のプロピレンオキシド、クロロメチルを添加して、反応を行う。
なお、クロロメチルは、前工程の粉末パルプと水酸化アルカリ水溶液との反応が、ジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中で実施されて場合にあっては、アルカリセルロース調製時のものと後に加えられるものと合わさってエーテル化剤として働くことから、添加量はアルカリセルロース調製時の使用量に応じて調整される。
反応温度は、反応が十分進行するよう必要に応じて温度調製が行われるが、30〜100℃、好ましくは50〜90℃で実施される。30℃未満の温度では反応速度が極めて遅く、反応終了までに長時間を必要として合理的でなく、一方100℃を超える温度では反応速度が大きくなり、反応の制御が困難となる。
エーテル化反応終了後、公知の方法によって精製することにより、目的のヒドロキシプロピルメチルセルロースが得られる。
本発明に従って製造されるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、いずれも溶液中で完全に溶解し、高い透明性を示す。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものでない。
【0016】
実施例1
内部攪拌機を備えた加圧反応器に粉末パルプ(平均粒子径120μm)100重量部を入れ、器内を十分に窒素置換した後、ジメチルエーテル50重量部、クロロメチル13重量部を仕込み、攪拌しながら50〜60℃下で49重量%水酸化ナトリウム水溶液233重量部を30分で粉霧して加え、アルカリセルロースを調製した。その後、一旦40℃に冷却し、クロロメチル140重量部、プロピレンオキシド45重量部を仕込み、40〜90℃で2.5時間反応を行った。反応物は80〜90℃の熱水を用いて洗浄した。80℃で送風乾燥して無色固体のヒドロキシプロピルメチルセルロース125重量部を得た。Zeisel法により求めた置換度は、ヒドロキシプロピル基についてMS=0.25、メトキシ基についてDS=1.9であった。
(MS:無水グルコース単位当りの置換基の平均置換モル数、DS:無水グルコース単位当りの置換基の平均置換度。以下同様)
【0017】
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に溶解して2重量%溶液を調製し、この溶液の粘度をB型粘度計を用いて測定し、また、光電比色計(5E型)を用いてブランク(水)に対する可視光線の透過率を測定した。
粘度は4500mPa・s、透過率は98%であった。この溶液は、未溶解繊維分を含まない、透明度の高いものであった。
【0018】
実施例2
内部攪拌機を備えた加圧反応器に粉末パルプ(平均粒子径120μm)100重量部を入れ、器内を十分に窒素置換した後、ジメチルエーテル50重量部、クロロメチル50重量部を仕込み、攪拌しながら50〜60℃下で49%水酸化ナトリウム水溶液208重量部を30分で粉霧して加え、アルカリセルロースを調製した。クロロメチル90重量部、プロピレンオキシド26重量部を仕込み、40〜90℃で2.5時間反応を行った。実施例1と同様な方法によって精製を行い、ヒドロキシプロピルメチルセルロース119重量部を得た。置換度はヒドロキシプロピル基についてMS=0.15、メトキシ基についてDS=1.8であった。
2重量%水溶液の粘度は4000mPa・s、可視光線の透過率は、97%であった。この溶液は、未溶解繊維分を含まない、透明度の高いものであった。
【0019】
比較例1
粉末パルプ(平均粒子径120μm)100重量部を入れ、器内を十分に窒素置換した後、ジメチルエーテル50重量部、クロロメチル13重量部を仕込み、攪拌しながら49重量%水酸化ナトリウム水溶液を粉霧して加えてアルカリセルロースを調製する際の温度が80〜90℃である以外は、実施例1と同様な方法によって製造を行い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
置換度はヒドロキシプロピル基についてMS=0.25、メトキシ基についてDS=1.9であったが、得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に溶解して調製した2重量%溶液の粘度は4000mPa・s、可視光線の透過率は85%であり、また、この溶液には、未溶解の繊維分が多く含まれているのが観察された。
【0020】
比較例2
内部攪拌機を備えた加圧反応器に粉末パルプ(平均粒子径120μm)100重量部を入れ、器内を十分に窒素置換した後、ジメチルエーテル100重量部、クロロメチル50重量部を仕込んだ以外は、実施例1と同様な方法によって製造を行い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
置換度はヒドロキシプロピル基についてMS=0.15、メトキシ基についてDS=1.8であったが、2重量%水溶液の粘度は4200mPa・s、可視光線の透過率は880%であり、未溶解繊維分が多く見られる透明性の低いものであった。
【0021】
比較例3
シート状のパルプ100重量部を大過剰の49重量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬してパルプに水酸化ナトリウム水溶液を吸収させた後、パルプに対する水酸化ナトリウム水溶液の比率が実施例1と同一となるよう、3kg/cm2 に加圧圧搾して余剰分の水酸化ナトリウム水溶液を除いて調整した。調製したアルカリセルロースを細かく粉砕し、内部攪拌機を備えた加圧反応器に入れ、器内を十分に窒素置換した後、ジメチルエーテル100重量部、クロロメチル190重量部、プロピレンオキシド45重量部を仕込み、40〜90℃で2.5時間反応を行った。実施例1と同様な方法によって精製を行い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
置換度はヒドロキシプロピル基についてMS=0.15、メトキシ基についてDS=1.8であったが、2重量%水溶液の粘度は1300mPa・s、可視光線の透過率は95%であり、透明性の高いものの、粘度は低いものであった。
【0022】
【発明の効果】
上記したところから明かなように、本発明によれば、粉末パルプを原料に用いることにより高い生産性を有する工業的に有利な方法で、かつ溶液透明性が高いという優れた品質のヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造できる。

Claims (2)

  1. ジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中、40〜70℃で粉末状のパルプと水酸化アルカリ水溶液とを緊密に混合することによりアルカリセルロースを調製し、該アルカリセルロースにプロピレンオキシドとクロロメチルとを反応させてヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造するようにしたことを特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法。
  2. アルカリセルロースが、水酸化アルカリに対して0.1〜1の重量比のジメチルエーテル又はジメチルエーテルとクロロメチルとの混合物中で調製されたアルカリセルロースである請求項1のヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法。
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