JP2003090034A - 杭の継手構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】回り止め機構を具備しているにもかかわらず構
造が極めて簡素であって、しかも接続作業を簡単に行う
ことができる杭の継手構造を提供する。 【解決手段】嵌合雌部４の内周には、その端面から軸方
向に形成された軸方向溝部分６ａとその下部に連なって
周方向に形成された周方向溝部分６ｂとからなる複数の
係合溝６が周方向に間隔を置いて設けられ、嵌合雄部３
の外周には嵌合雌部４との嵌合に伴って係合溝６の軸方
向溝部分６ａに嵌入する複数の係合突起７が周方向に間
隔を置いて設けられるとともに、各係合突起７の上方に
あってかつ該突起と軸方向に整列するように回転阻止部
材８が仮止めされ、嵌合雌部４に嵌合された嵌合雄部３
を回転させると、係合突起７が係合溝６の周方向溝部分
６ｂに嵌入するとともに、回転阻止部材８の仮止めが解
除されて該回転阻止部材８が軸方向溝部分６ａ内を落下
して、周方向溝部分６ｂの入口部を閉鎖するようになっ
ている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、杭の継手構造に
関し、さらに詳しくは、施工現場において下杭と上杭を
継ぎ足す際に適用される継手構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、杭施工においては、その打設深
度が大きい場合、複数本の杭体を継ぎ足しながら施工さ
れる。従来、杭の継ぎ足し作業は溶接により行われてい
たが、作業に時間を要すること、特殊技能が要求される
こと、天候に左右されること等の問題があった。そこ
で、これらの問題を解消すべく、溶接によらない種々の
継手構造が提案されている（例えば特開平８−２７７８
１号公報、特開平９−１３７４４７号公報、特開平１１
−２１８８２号公報、特開２０００−３１９８７４号公
報）。

【０００３】これら先行技術は、いずれも嵌合方式によ
り上杭と下杭とを接続し、軸方向の抜け止め機構を付加
したものである。しかしながら、特開平１１−２１８８
２号公報に記載のものは、回り止め機構を具備していな
いので、施工後の信頼性に問題がある。他方、それ以外
の前記公報に記載のものは、回り止め機構を具備してい
るものの、いずれもボルトによるねじ止め機構となって
いる。このため、構造が複雑となり、また接続作業にも
手間がかかる等の問題が予想される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この発明は上記のよう
な技術的背景に基づいてなされたものであって、回り止
め機構を具備しているにもかかわらず構造が極めて簡素
であって、しかも接続作業を簡単に行うことができる杭
の継手構造を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明は上記課題を達
成するために、次のような手段を採用している。すなわ
ち、この発明は、上下２つの杭体にそれぞれ設けられた
嵌合雄部及び嵌合雌部を嵌合して、これらの杭体を接続
する継手構造であって、前記嵌合雌部の内周には、その
端面から杭の軸方向に形成された軸方向溝部分とその下
部に連なって周方向に形成された周方向溝部分とからな
る係合溝が周方向に間隔を置いて複数設けてあり、前記
嵌合雄部の外周には、前記嵌合雌部との嵌合に伴って前
記係合溝の軸方向溝部分に嵌入する係合突起が周方向に
間隔を置いて複数設けてあるとともに、各係合突起の上
方にあって、かつ該突起と軸方向に整列するように回転
阻止部材が仮止めされ、前記嵌合雌部に嵌合された前記
嵌合雄部を回転させると、前記係合突起が前記係合溝の
周方向溝部分に嵌入するとともに、前記回転阻止部材の
仮止めが解除されて該回転阻止部材が前記軸方向溝部分
内を落下して、前記周方向溝部分の入口部を閉鎖するよ
うに構成したことを特徴とする杭の継手構造にある。

【０００６】前記回転阻止部材は、例えば直方体状のも
のとすることができる。また、前記回転阻止部材は、２
つに分割された分割体と、これらの分割体に両端がそれ
ぞれ取り付けられたばね部材とで構成することもでき、
この場合、該回転阻止部材は前記分割体の各端面を互い
に近接させることにより、前記ばね部材を圧縮した状態
で前記嵌合雌部に仮止めされ、前記係合突起が前記周方
向溝部分に嵌入すると、前記分割体が前記軸方向溝部分
内で互いに離間するようになっている。

【０００７】この発明によれば、嵌合雄部と嵌合雌部と
を嵌合させた状態で、嵌合雄部を回転させると、係合突
起が係合溝の周方向溝部分に嵌入する。同時に、嵌合雄
部の回転により回転阻止部材には剪断力が作用して仮止
めが解除され、その結果、回転阻止部材は軸方向溝部分
内を自重により落下し、周方向溝部分の入口部を閉鎖す
る。これにより、係合突起は軸方向に対しても、また周
方向に対しても移動することができずに完全にロックさ
れ、上下の杭体どうしの抜け止め及び回り止めがなされ
る。

【０００８】

【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図面を参
照しながら以下に説明する。図１は、この発明の実施形
態を示す斜視図、図２は下杭のみを断面で示した正面図
である。上側杭体１と下側杭体２とを接続する継手は、
上側杭体１の下端に設けられた嵌合雄部３と下側杭体２
の上端に設けられた嵌合雌部４とを備えている。嵌合雄
部３は上端に外径が上側杭体１の外径と等しい基部５を
有し、この基部５において杭体１の端面に溶接等により
固着されている。また、嵌合雌部４は外径が下側杭体２
の外径と等しくなっていて、下端において溶接等により
下側杭体２の端面に固着されている。なお、この実施形
態の継手構造は、杭体１，２がコンクリート杭、鋼管
杭、ＳＣ杭のいずれの場合にも適用でき、例えばコンク
リート杭の場合、嵌合雄部３及び嵌合雌部４は杭端部に
設けられる鋼製の端板に固着される。

【０００９】嵌合雌部４の内周には複数（図示の例では
４つ）の係合溝６が周方向に間隔を置いて設けられてい
る。この係合溝６はＬ字形をなし、嵌合雌部４の端面か
ら軸方向に形成された軸方向溝部分６ａと、その下部に
連なって周方向に形成された周方向溝部分６ｂとからな
っている。

【００１０】嵌合雄部３の外周には係合溝６に対応し
て、複数の係合突起７が周方向に間隔を置いて溶接等に
より固着されている。さらに嵌合雄部３の外周には、各
係合突起７の上方にあって、かつ該突起７と軸方向に整
列するように回転阻止部材８が接着剤あるいはスポット
溶接等により仮止めされている。回転阻止部材８は、係
合突起７よりも長く、直方体状のものとなっている。回
転阻止部材８の仮止めは、係合突起７の上端又は嵌合雄
部３の周面に対してでもよいし、あるいは双方に対して
でもよい。

【００１１】次に、上記継手による杭の接続方法を図３
を示して説明する。図３（ａ）に示すように、係合突起
７と係合溝６の軸方向溝部分６ａとを位置合わせして、
上側杭体１の嵌合雄部３を下側杭体２の嵌合雌部４に嵌
合させると、その嵌合に伴って係合突起７及び回転阻止
部材８が軸方向溝部分６ａに嵌入する。

【００１２】次いで、図３（ｂ）に示すように、上側杭
体１すなわち嵌合雄部３を矢印Ａ方向に回転させると、
係合突起７が係合溝６の周方向溝部分６ｂに嵌入する。
同時に、嵌合雄部３の回転により回転阻止部材８には剪
断力が作用して仮止めが解除され、その結果、回転阻止
部材８は軸方向溝部分６ａ内を自重により落下し、周方
向溝部分６ｂの入口部を閉鎖する。これにより、係合突
起７は軸方向に対しても、また周方向に対しても移動す
ることができずに完全にロックされ、杭体１，２どうし
の抜け止め及び回り止めがなされる。

【００１３】図４は回転阻止部材８の別の実施形態を示
す断面図である。この実施形態では、回転阻止部材８は
図４（ａ）に示すように、２つの分割ケース１０ａ，１
０ｂと、両端が分割ケース１０ａ，１０ｂ内に収容され
て係止されたばね部材１１とからなっている。この実施
形態の場合、図４（ｂ）に示すように、回転阻止部材８
は分割ケース１０ａ，１０ｂの各端面を近接させること
により、ばね部材１１を圧縮させた状態で、前記実施形
態の場合と同様に嵌合雄部３に仮止めされる。

【００１４】そして、図５に示すように、嵌合雄部３を
嵌合雌部４に嵌合させ、さらに嵌合雄部３を回転させる
と、回転阻止部材８には自重に加えてばね力が作用して
分割ケース１０ａ、１０ｂが互いに離間する。その結
果、回転阻止部材８は周方向溝部分６ｂの入口部を確実
に閉鎖することになり、係合突起７は確実にロックされ
る。

【００１５】嵌合雄部３及び嵌合雌部４の杭体１，２へ
の取付けは、図６に示すように種々の形態を採りうる。
図６（ａ）は、上記実施形態で採用された取付け形態で
あり、嵌合雄部３及び嵌合雌部４を杭体１，２の端面に
それぞれ固着したものであり、この場合、前記したよう
にコンクリート杭、鋼管杭、ＳＣ杭いずれにも適用でき
る。図６（ｂ）に示す取付け形態は、嵌合雄部３及び嵌
合雌部４を杭体１，２の外周にそれぞれ固着したもので
あり、この場合、鋼管杭及びＳＣ杭に適用できる。図６
（ｃ）に示す取付け形態は、嵌合雄部３及び嵌合雌部４
を杭体１，２の内周にそれぞれ固着したものであり、こ
の場合、鋼管杭に適用できる。

【００１６】上記実施形態は例示にすぎず、この発明は
種々の改変が可能である。例えば、係合溝の周方向溝部
分は上記実施形態の場合と逆向きとするようにしてもよ
い。また、図７に示すように、係合溝６の軸方向溝部分
６ｂを複数（図示の例では２つ）設け、これに対応して
係合突起７を複数設けるようにしてもよい。また、係合
溝の数及びそれに対応する係合突起及び回転阻止部材の
数は適宜増減することもできる。

【００１７】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、簡単
な構造で杭体の抜け止め及び回り止めを達成することが
でき、しかも嵌合後に杭体を回転させるだけで抜け止め
及び回り止めがなされるので接続作業を簡単に行うこと
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施形態を示す斜視図である。

【図２】下杭のみを断面で示した同実施形態の正面図で
ある。

【図３】杭の接続方法を示す断面図である。

【図４】回転阻止部材の別の実施形態を示す断面図であ
る。

【図５】同実施形態による杭の接続状態を示す断面図で
ある。

【図６】嵌合雄部及び嵌合雌部の杭体への種々の取付け
形態を示す断面図である。

【図７】係合突起及び係合溝の別の実施形態を示す図で
ある。

【符号の説明】

１：上側杭体 ２：下側杭体 ３：嵌合雄部 ４：嵌合雌部 ５：基部 ６ａ：軸方向溝部分 ６ｂ：周方向溝部分 ６：係合溝 ７：係合突起 ８：回転阻止部材 １０ａ，１０ｂ：分割ケース １１：ばね部材

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】上下２つの杭体にそれぞれ設けられた嵌合
   雄部及び嵌合雌部を嵌合して、これらの杭体を接続する
   継手構造であって、 前記嵌合雌部の内周には、その端面から杭の軸方向に形
   成された軸方向溝部分とその下部に連なって周方向に形
   成された周方向溝部分とからなる係合溝が周方向に間隔
   を置いて複数設けてあり、 前記嵌合雄部の外周には、前記嵌合雌部との嵌合に伴っ
   て前記係合溝の軸方向溝部分に嵌入する係合突起が周方
   向に間隔を置いて複数設けてあるとともに、各係合突起
   の上方にあって、かつ該突起と軸方向に整列するように
   回転阻止部材が仮止めされ、 前記嵌合雌部に嵌合された前記嵌合雄部を回転させる
   と、前記係合突起が前記係合溝の周方向溝部分に嵌入す
   るとともに、前記回転阻止部材の仮止めが解除されて該
   回転阻止部材が前記軸方向溝部分内を落下して、前記周
   方向溝部分の入口部を閉鎖するように構成したことを特
   徴とする杭の継手構造。
2. 【請求項２】前記回転阻止部材は、２つに分割された分
   割体と、これらの分割体内に両端がそれぞれ取り付けら
   れたばね部材とからなり、 該回転阻止部材は前記分割体の各端面を互いに近接させ
   ることにより、前記ばね部材を圧縮した状態で前記嵌合
   雌部に仮止めされ、前記係合突起が前記周方向溝部分に
   嵌入すると、前記分割体が前記軸方向溝部分内で互いに
   離間するようになっていることを特徴とする請求項１記
   載の杭の継手構造。