JP3748126B2 - 杭の継手構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、地中に打設されるコンクリート杭等の継手構造に係り、特に軽量で簡単な構造を有しかつ作業性の極めて良い杭の継手構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の杭の継手構造としては、例えば実公平6ー47965号公報、実開平5ー81326号公報或いは図8及び図9に示す技術が公知である。これ等の公知技術の杭の構造は、いずれも上杭51と下杭52の上下端面に夫々端板53,54を取り付けると共に、これ等の端板53,54の外周面より突出させて突条部55を設けるか、或いは端板53,54の外周面に夫々取り付けられたリングブロック56,57の外周面に夫々突条部58を突設した構造である。
【0003】
また、これ等の上杭51と下杭52との接続部の外周には、リング体を複数に分割して形成した分割リング59が嵌合されていた。これ等の分割リング59の外周面には杭軸方向に傾斜するテーパー面が設けられ、かつその内周面には、前記突条部55,58を嵌入することが出来る横溝60が穿設されている。
【0004】
合体された分割リング59の周りには円筒形の外リング61が嵌合されている。この外リング61の内周面には、前記分割リング59の外周面のテーパー面に対応するテーパー面が設けられており、合体された分割リング59の周りに外リング61を嵌合した場合には、複数の分割リング59を外リング61で締め付けて、夫々上杭51と下杭52との杭端に設けられた端板53,54を強く引き寄せて、上杭51と下杭52とを相互に圧着固定し得るように構成されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、前記公知技術の杭の継手構造に於いては、上下の杭51,52を接続する作業をする以前に、外リング61の中に下杭52を貫通させ、この外リング61を下杭52の周りに取り付けておかなければならなかった。処で、この外リング61は5〜14kgfの重量があるためにその労力と手間が大変である問題があった。また、杭を接続する際には、この重量のある外リング61を持上げて、分割リング59の周りに強制的に嵌合させなければならず、作業性が悪い問題もあった。
【0006】
更に、予め外リング61を下杭52の周りに取り付ける際に、外リング61の内周面に設けられたテーパーの傾きを間違えたまま貫入させてしまう問題もあった。この場合には外リング61の差し直し等をしなければならないので、その作業が大変である問題があった。
【0007】
本発明に係る杭の継手構造は、前述の従来の多くの問題点に鑑み開発された全く新しい技術であって、特に分割リングの各分割端部に突設された突片を所定のソケット部材を利用して締結することによって、複数の分割リングを上下杭の接続部分の周りに極めて簡単な作業で締め付けて取り付けることが出来る杭の継手構造の技術を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る杭の継手構造は、前述の従来の問題点を根本的に改善した技術であって、その第1発明の要旨は、上杭の下端と下杭の上端とが相互に当接されかつこの当接部分の外周部に複数の分割リングが嵌合されて該上杭と下杭とが相互に連結される杭の継手構造に於いて、前記上杭の下端と下杭の上端の外周に沿って夫々半径方向に突出した突条部が突設され、これ等の突条部は前記分割リングの内周面に設けられた横溝内に嵌入され、かつ該分割リングの各分割端部には半径方向に突出し、一辺が杭の軸芯に対して平行に形成され、該一辺に対応する他辺が杭の軸芯に対して傾斜した杭の半径方向内側に傾斜するテーパー面で形成されてなる突片が突設され、かつ相互に接近された前記分割リングの一対の突片が、徐々に巾狭になるように構成されると共に内周面に該一対の突片が嵌入し得る縦溝が設けられ、かつ該縦溝の両内側面には前記突片のテーパー面に対応するテーパー面が設けられたソケット部材を前記分割リングの一対の突片に嵌入することによって締結されていることを特徴とした杭の継手構造である。
【0009】
また、本発明に係る杭の継手構造の第2発明の要旨は、前記上杭と下杭との杭端接続面に夫々端板が取り付けられ、かつこれ等の端板の外周縁が夫々杭端の外周面より半径方向に突出して突条部を形成していることを特徴とした第1発明の杭の継手構造である。
【0010】
本発明の第3発明の要旨は、前記上杭と下杭との杭端の接続外周面に夫々リングブロックが溶着されており、かつこれ等のリングブロックの外周面に突条部が突設されて構成されていることを特徴とした第1発明の杭の継手構造である。
【0011】
本発明の第4発明の要旨は、前記上杭と下杭との端部に設けられた鋼製端板の外周の突条部に溶接用の開先溝を設けたことを特徴とする第1発明,第2発明又は第3発明の杭の継手構造である。
【0012】
【作用】
本発明に係る第1発明は、接合される上杭と下杭との下上端部の周りに夫々突条部が突設され、かつ上下杭の接合部の周りに取り付けられた複数の分割リングの内周面に設けられた横溝内に前記突条部が嵌入されているので、これ等の分割リングによって、上下杭を接合することが出来る。また、分割リングの各分割端部には、半径方向に突出した突片が突設され、かつ相互に接近された一対の突片はソケット部材によって相互に締結されるので、これによって複数の分割リングを簡単な構造で上下杭の接合部の周りに締め付けて固定することが出来る。
【0013】
特に、分割リングの各分割端部には半径方向に突出し、杭の軸芯に対して平行に形成された一辺と、杭の軸芯に対して傾斜した杭の半径方向内側に傾斜するテーパー面が設けられた他辺とからなる突片が突設され、かつソケット部材の内周面には、徐々に巾狭になるように構成されると共に内周面に一対の突片が嵌入し得る縦溝が設けられ、かつ該縦溝の両内側面には前記突片のテーパー面に対応するテーパー面が設けられているので、該ソケット部材を隣接した一対の突片に嵌合させて下側から上側に向けて移動させて並列された一対の突片をソケット部材の縦溝内に相対的に深く嵌入することによって、相互に隣接する分割リングを強固に連結することが出来る。従って、地中に杭が埋設されるときにソケット部材が抜けない方向に力が加わるように作用する。
【0014】
本発明の第2発明に於いては、前記上杭と下杭との杭端接続面に夫々端板が取り付けられると共に、これ等の端板の外周縁が杭端の外周面より半径方向に突出して突条部を形成しているので、杭端の周りに取り付けられた複数の分割リングの横溝内にこれ等の突条部を嵌入させることが出来る。従って分割リングを介して夫々の端板及びこれ等が連結された上下の杭を相互に連結することが出来る。
【0015】
本発明の第3発明に於いては、前記上杭と下杭との杭端の接続外周面に夫々リングブロックが溶着されており、かつこれ等のリングブロックの外周面に突条部が突設されているので、杭端の周りに取り付けられた複数の分割リングの横溝内にこれ等の突条部を嵌入させることが出来る。従って、分割リングと及びリングブロックとを介して上下の杭を相互に連結することが出来る。
【0016】
本発明の第4発明に於いては、前記上杭と下杭との端板の外周の突条部に溶接用の開先溝を設けて構成したので、前述のように分割リングをこの端板の外周部に取付けない場合には、この開先溝の部分を溶接することによって、上下の杭を相互に連結することが出来る。このように、端板の外周に溶接用の開先溝を設けることは、前述のような本発明の分割リングにより嵌合する際にも、何等邪魔にならず、トラブルが発生することはない。また、このような開先溝を設けた場合には溶接継手用の杭体としても転用が可能である。
【0017】
【実施例】
図により本発明に係る杭の継手構造について説明すると、図1は本発明に係る杭の継手構造の側面の一部断面説明図、図2は図1の継手構造の正面図、図3(A),(B)は夫々図1の継手構造の要部の部品を示す説明図、図4は図2の継手構造の要部の断面説明図、図5は各構成部品の寸法例を示す説明図、図6は他例の継手構造の一部断面説明図、図7は更に他例の継手構造を示す一部断面説明図である。
【0018】
図1乃至図4に於いて、1は上杭であり、2は下杭である。これ等の上下杭1,2の下端或いは上端には、夫々端板3,4がPC鋼材1a,2aなどにより定着されており、かつこれ等 の端板3,4の外周面には夫々半径方向に突出した突条部3a,4aが突設されている。前記上下杭1,2の端部外周面には夫々補強リング5が巻き付けられている。6はリング体を複数に分割した分轄リングであって、前記上下杭1,2の杭端の外周面に当接し得る内径を有している。また、各分割リング6の内周面には、前記一対の突条3a,4aを嵌入することが出来る横溝7が穿設されている。
【0019】
前記分割リング6の各分割端部には夫々半径方向に突出した突片8が突設されている。この突片8は、特に図3(A)及び図4で明らかな如く、一辺8aが上杭1、下杭2の軸心に対して平行に形成され、かつこの一辺に対応する他辺8bが上杭1、下杭2の軸心に対して傾斜した杭の半径方向内側に傾斜するテーパー面を形成している。
【0020】
9は円弧板状のソケット部材であって、その内周面には、前記一対の突片8を嵌入し得る縦溝10が穿設されている。この縦溝10は、特に図3(B)及び図4に明らかな如く、この両側面には夫々前記突片8のテーパー面に対応するテーパーが設けられ、従って上部が巾広で下部に行くに従って徐々に巾狭になるように構成されている。
【0021】
上述の構成を有する本発明の継手構造の組立構成に当たっては、上下杭1,2に取り付けられた端板3,4の周りに分割リング6を当接すると共に、分割リング6の横溝7内に端板3,4の外周面に突設された突条部3a,4aを夫々嵌入する。次に相互に隣接された一対の突片8の下方からソケット部材9の下面を当接すると共に、一対の突片8をソケット部材9の縦溝10内に挿入する。
【0022】
この状態でソケット部材9を上方向に摺動させることによって、縦溝10と突片8とのテーパー面を相互に強く突当てて、隣接する分割リング6を相互に強く締め付けて、各分割リング6を強固に連結することが出来る。かつこの連結された分割リング6を介して夫々の端板3,4及びこれ等の端板3,4が連結された上下杭1,2を相互に連結することが出来る。従って、ソケット部材9を上方に強く引上げることによって、各分割リング6を強く締め付けて、分割リング6で上下杭1,2を強固に連結することが出来る。
【0023】
上記実施例に於ける各構成部品の寸法例を図5により説明すると、次の通りである。即ち分割リング6の内周面の凸部の肉厚aと及び横溝7の深さとは5mm、他の残りの肉厚bは13mm、分割リング6に突設された突片8の肉厚及びソケット部材9の縦溝10の深さcは5mm、ソケット部材9の縦溝10の深さを除く肉厚dは13mm、分割リング6の上下巾eは60mm、ソケット部材9の上下巾fは70mm、端板3,4の厚さgは12mmである。
【0024】
上記実施例に於いては、上下杭1,2の端面に端板3,4を夫々連結し、かつこれ等の端板3,4の外周面を半径方向に突出させて、分割リング6の横溝7内に嵌入し得る突条部3a,4aを形成したが、図6に示す他の実施例に於いては、上下杭1,2の杭端外周面に設けたリング状の溝部に夫々リングブロック11,12を半ば埋込むようにして夫々溶着し、かつこのリングブロック11,12の外周面に夫々突条部11a,12aを突設し、これ等の突条部11a,12aを分割リング6の横溝7内に嵌入するように構成している。その他分割リング6とソケット9の締結関係は図1の例と同様である。
【0025】
前述の図1の実施例に於いては、上下杭1,2の端面に端板3,4がPC鋼材1a,2a等により定着されており、かつこれ等の端板3,4の外周面を半径方向に突出させて、分割リング6の横溝7内に嵌入し得る突条部3a,4aを形成したが、図7に示す他の実施例に於いては、更に端板3,4の外周面に夫々半径方向に突出した突条部3a,4aの杭端側外周に、端板3,4の端面に隣接して溶接用の開先溝3b,4bを夫々設けて構成している。その他の分割リング6とソケット部材9とは図1の実施例と同様である。
【0026】
従って、図7に示す実施例に於いては、この開先溝3b,4bを使用して、この部分に溶接を施すことによって、上杭1と下杭2とを溶接によって相互に連結することが出来る。前述のように分割リング6とソケット部材9とを使用して上杭1と下杭2との連結を行なわない場合には、この溶接のみで、上下杭1,2の締結を行なうことが出来る。また、分割リング6等の使用と溶接とを併用して上下杭1,2を連結した場合には、両者の結合をより強固にすることが出来る。また、上下端1,2の端板3,4にこれ等の開先溝3b,4bを設けることは容易であり、かつこの開先溝3b,4bが分割リング6等の使用に邪魔になることはない。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係る杭の継手構造は、前述の構造と作用とを有するので、次のような多大な効果を有している。
【0028】
(1)上下杭の接続部の外周面に当接された複数の分割リングを、軽くかつ極めて簡単な構造で相互に連結することが出来る。(2)従って、現場に於ける杭の継手作業を極めて単純化し、容易にすることが出来る。(3)分割リングの分割端部に夫々片側面にテーパー面を設けた突片を突設し、かつ隣接された2個の突片が嵌入し得る溝をソケット部材の内面に設け、隣接された一対の突片を該縦溝に嵌入することによって、各分割リングを該ソケット部材を介してこれ等のテーパー面を深く合致させることによって強く締結させることが出来る。
【0029】
(4)上下杭の杭端の外周面に突出させる突条部は、杭端に連結された端板そのものを突出させて形成することも、或いは杭端の周りに溶着されたリングブロックの外周の一部を突出させて形成することも出来る。
【0030】
(5)杭の端板に開先溝を設けた場合には、この開先溝に溶接を施すことにより杭を連結することも出来る。或いは溶接と分割リング等とを併用して杭をより強固に連結することも出来る。またこのように端板に設けた開先溝が分割リング等の使用を妨げることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る杭の継手構造の側面の一部断面説明図である。
【図2】 図1の継手構造の正面図である。
【図3】 図3(A),(B)は夫々図1の継手構造の要部の部品を示す説明図である。
【図4】 図2の継手構造の要部の断面説明図である。
【図5】 各構成部品の寸法例を示す説明図である。
【図6】 他例の継手構造の一部断面説明図である。
【図7】 更に他例の継手構造を示す一部断面説明図である。
【図8】 従来例の杭の継手構造を示す一部断面正面図である。
【図9】 従来の他例の継手構造を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
1 上杭 2 下杭
1a,2a PC鋼材 3,4 端板
3a,4a 突条部 3b,4b 開先溝
5 補強リング 6 分割リング
7 横溝 8 突片
8a 一辺 8b 他辺
9 ソケット部材 10 縦溝
11,12 リングブロック 11a,12a 突条部
51 上杭 52 下杭
53,54 端板 55,58 突条部
56,57 リングブロック 59 分割リング
60 横溝 61 外リング
Claims (4)
- 上杭の下端と下杭の上端とが相互に当接されかつこの当接部分の外周部に複数の分割リングが嵌合されて該上杭と下杭とが相互に連結される杭の継手構造に於いて、前記上杭の下端と下杭の上端の外周に沿って夫々半径方向に突出した突条部が突設され、これ等の突条部は前記分割リングの内周面に設けられた横溝内に嵌入され、かつ該分割リングの各分割端部には半径方向に突出し、一辺が杭の軸芯に対して平行に形成され、該一辺に対応する他辺が杭の軸芯に対して傾斜した杭の半径方向内側に傾斜するテーパー面で形成されてなる突片が突設され、かつ相互に接近された前記分割リングの一対の突片が、徐々に巾狭になるように構成されると共に内周面に該一対の突片が嵌入し得る縦溝が設けられ、かつ該縦溝の両内側面には前記突片のテーパー面に対応するテーパー面が設けられたソケット部材を前記分割リングの一対の突片に嵌入することによって締結されていることを特徴とした杭の継手構造。
- 前記上杭と下杭との杭端接続面に夫々端板が取り付けられ、かつこれ等の端板の外周縁が夫々杭端の外周面より半径方向に突出して突条部を形成していることを特徴とした請求項1の杭の継手構造。
- 前記上杭と下杭との杭端の接続外周面に夫々リングブロックが溶着されており、かつこれ等のリングブロックの外周面に突条部が突設されて構成されていることを特徴とした請求項1の杭の継手構造。
- 前記上杭と下杭との端部に設けられた鋼製端板の外周の突条部に溶接用の開先溝を設けたことを特徴とする請求項1,請求項2又は請求項3の杭の継手構造。
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