JP3887455B2 - セグメント継手 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル覆工用のセグメント相互間及び/又はリング相互間を結合するためのセグメントの継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネル覆工用のセグメント相互間及び/又はリング相互間を結合するための従来のセグメントの継手は、地山の土圧や水圧による曲げモーメントに耐えるように隣接セグメントと剛性的に結合する必要があり、例えば、隣接するセグメント端面近傍に相対して設けた継手板にボルトを貫通させてナットで締結する構造とされている。このような構造でセグメントを互いに結合する場合には、円周方向および軸線方向の継手におけるボルト孔を隣接セグメント間で一致させた後にボルトを貫通させてナットを締結するため、位置合わせが困難であって組立てに時間がかかることが問題となっている。また、ナットの締結はセグメントの内面に形成されたブロックアウトに工具を挿入して行うため、操作性を確保するためにブロックアウトを大きく形成する必要があり、その結果としてセグメントの有効断面積が減少することも問題となっている。さらに、セグメントの内側に二次覆工を行わない場合には、継手板やボルト等の金具の防食の必要性から全てのブロックアウトをモルタルで充填する必要があり、このために多大な労力が必要とされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解消するために推考されたものであり、セグメント相互間の位置合わせやナット等の締結作業が容易であり、しかも、セグメント内面にブロックアウトを必要としない新規なセグメントの継手を提案することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような課題を一挙に解決するため、本発明は、トンネル覆工用のセグメント相互間及び/又はセグメントリング相互間を結合するためのセグメントの継手において、セグメントの円周方向端面近傍の軸線方向端面に各々傾斜面を持つ一対の凹所を形成し、前記一対の凹所の前記傾斜面を、それらの凹所が形成された前記端面から奥に向かうにつれて互いに離間するものとし、前記凹所内に差込可能とするとともに先端部を開いた一対の脚部とこれら脚部が両端から突出する基部とを具えるカスガイ状の金具よりなる継手金具を、前記セグメントに軸線方向に隣接する他のセグメントの軸線方向端面に固定するとともに、前記他のセグメントにより前記セグメントに向けて押圧して前記一対の凹所内に差込んで前記一対の脚部を前記端面から奥に向かうにつれて互いに離間する前記傾斜面に当接させることにより、円周方向及び/又は軸線方向に隣接するセグメント同士を一体結合可能としたことを特徴としている。
【0005】
本発明によれば、トンネル覆工用のセグメント相互間及び/又はリング相互間を結合するに当たり、セグメントを隣接セグメントに突合わせる際に継手金具をセグメントの端面近傍に形成した凹所内に差込んで両セグメントを一体結合することができ、セグメント相互間の位置合わせやナット等の締結作業を容易かつ確実に遂行することが可能である。また、継手の金具類がセグメント内周面に露出せず、内面を平滑とすることができるため、シールド工事におけるセグメント内側の二次覆工を省略することも可能となる。
【0006】
本発明の好適な実施例においては、セグメントの端面近傍に形成する凹所を、セグメントの外周面に開口する開放ポケット形状とする。セグメントの外周面に開口する開放形状の凹所を具えるセグメントの継手は、セグメントリングの外周部にコンクリートを加圧充填する二層ライニング工法(いわゆる「TLライニング工法」)に適用した場合に、そのコンクリートが凹所内にも充填されるため、特別な措置を講じることなく継手金具類の強度と剛性および防食性を向上することが可能となる利点が得られるものである。なお、かかるライニング工法については、例えば特許第1,828,100 号及び同第1,829,591 号各明細書に詳述されている。
【0007】
もっとも、施工条件によっては、セグメントの端面近傍に形成する凹所を、セグメントの内周面及び外周面には開口しない閉鎖ポケット形状とするのが好適な場合もある。このような場合には、継手金具類の上記した補強と防食を兼ねて凹所内に適当な注入剤を注入するのが望ましい。
【0009】
また、軸線方向に隣接するセグメントリング同士でセグメントを千鳥状に配置するものとし、継手金具は各セグメントにおける軸線方向端面の、円周方向両端面のそれぞれの近傍の一対の凹所間の円周方向位置に基部が固定され、かつ、各セグメントに軸線方向に隣接するセグメントの凹所内に脚部を差込可能とするのが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の好適な実施形態により更に詳述する。
【0011】
図1は、本発明による継手を具えるシールド工事用の弧状セグメントを示す斜視図である。このセグメント10は円周方向端面10a ,10b の近傍に凹所11a ,11b が形成されており、これらの凹所11a ,11b はそれぞれセグメント10の外周面10c 及び軸線方向端面10d に開口する開放ポケット形状とされている。セグメント10の軸線方向端面10d には、凹所11a ,11b 間の円周方向位置で「かすがい」状の継手金具12を固定する。継手金具12は、一対の脚部12a ,12b が基部12c から軸線方向に突出し、基部12c においてセグメント10の軸線方向端面10d にボルト13により仮止めされる構成とすることができる。この場合、継手金具12における脚部12a ,12b は、それぞれ隣接セグメント10における凹所11a ,11b 内に差込可能とされている。なお、図2(a) に示すように、隣接セグメント10における凹所11a ,11b の表面と接触する継手金具12の内面には、適当なゴム状弾性材料よりなるクッション材14が被着されている。また、図2(b) は、「かすがい」状の継手金具を対に用いた場合で、片方の「かすがい」状突出部を打込むことでボルトによる取り付けを省略するようにした例である。本例では、2個の継手金具12,12を、それぞれの基部12c ,12c を背中合わせに突き合わせて溶接している。また、図1における参照数字15a ,15b は、軸線方向の通しボルト(図示せず)を挿通するためにセグメント10の全長に亙って延在させた貫通孔を表わしている。
【0012】
図3(a) 〜(c) は、上記構成のセグメントの継手を使用して隣接するセグメント10を一体的に結合する工程を示すものである。なお、図3においては上側が切羽側、下側が坑口側に対応している。
【0013】
図3(a) の下半部は既設リングにおけるセグメント10の切羽側の端面近傍領域を示している。そして、セグメント10の切羽側端面10d には継手金具12がボルト13により仮止めされており、その脚部12a ,12b は切羽側に隣接する組立途上のセグメント10,10に向けて突出している。なお、継手金具12の基部12c はセグメント10の切羽側端面10d から切羽側に向けて突出しない配置とするのが望ましく、そのために切羽側端面10d には継手金具12の板材の肉厚に対応する深さの窪みを形成しておくのが有利である。
【0014】
他方、図3(a) の上半部は既設リングの切羽側に隣接する組立途上のセグメント10,10における坑口側の端面近傍領域を示している。そして、これらセグメント10,10は円周方向の継手面10a ,10b が互いに突合わされた状態で、継手面近傍に位置する凹所11a ,11b が、坑口側に位置する既設リングの継手金具12と対向するよう配置されている。すなわち、本例においては隣接するセグメントリングをセグメント中心角の1/2だけ互いにオフセットさせた千鳥状に配置するものである。なお、セグメント10における凹所11a ,11b には、少なくとも継手金具12の内面と接触する表面領域に、所要に応じて適宜の補強金属板16a ,16b を取付けておくことができる。
【0015】
次に、既設リングの切羽側に隣接するセグメント10,10の組立が完了した時点で、シールド機のシールドジャッキ(図示せず)をトンネル軸線方向に伸長作動させることにより、組立が完了した新たなセグメントリングを、図3(b) に示すように、既設リングの切羽側端面10d に向けて押圧する。その際に、既設リングの切羽側端面10d における継手金具12の脚部12a ,12b は、切羽側に隣接するセグメント10,10における凹所11a ,11b の表面とそれぞれ接触を開始する。この場合、凹所11a ,11b の接触面を傾斜面として形成しておくことにより、継手金具12の脚部12a ,12b は徐々に拡開変形しつつ凹所11a ,11b の表面に沿って相対摺動することとなり、その弾性復元力により組立直後のセグメントを互いに一体的に保持する機能を発揮する。
【0016】
シールド機におけるシールドジャッキの伸長作動は、図3(c) に示すように、新たなセグメントリングの坑口側端面が既設セグメントリングの切羽側端面10d と完全に合致するまで継続する。そして、新設セグメントリングの坑口側端面が既設セグメントリングの切羽側端面10d と完全に合致すると、新設セグメントリングにおけるセグメント相互間及び既設セグメントリングとの間での単位接合作業が完了する。
【0017】
図4は、単位リングにおける隣接セグメント10,10相互間が継手金具12により接合された状態を示しており、図示を簡略化するために当該セグメントリングに隣接する既設セグメントリングは省略されている。
【0018】
図5(a) 〜図5(c) は単位リングを構成する1組のセグメントを例示するものである。また、図6は、隣接セグメントリングを千鳥状に配置する場合に採択し得るセグメントの組合わせ態様を示す展開図である。これら図中においては、上側が坑口側、下側が切羽側に対応している。単位リングを4ピースのセグメントで構成するとしてインバートセグメント(Aセグメント)10A 、一対のサイドセグメント(Bセグメント)10B 及びキーセグメント10C で形成する場合について例示すれば、下記のとおりである。
【0019】
各セグメントの展開形状は、それぞれ図5(a) 〜図5(c) に例示するように、インバートセグメント10A が長方形(Aセグメント)、サイドセグメント10B が長方形の一辺のみを斜めに切除した不等辺四辺形(Bセグメント)、キーセグメント10C が台形となる組合わせが可能である。この場合、図6の上側に示す坑口側の既設セグメントリングは、同図の左側から見て、サイドセグメント10B 、キーセグメント10C 、サイドセグメント10B 及びインバートセグメント10A から構成される。また、図6の下側に示す新設セグメントリングは、同図の左側から見て、インバートセグメント10A 、サイドセグメント10B 、キーセグメント10C 及びサイドセグメント10B から構成される。セグメントリングの分割を5ピース以上にする場合には、Aセグメントの数を増やせば良い。隣接セグメントリングを千鳥状に配列するためには、新設セグメントリングの各セグメントを、それぞれ既設セグメントリングの対応セグメントに対して所定角だけ円周方向にオフセットして配置する。図6の分割であれば、基準中心角(90°)の1/2、すなわち45°だけ円周方向にオフセットする。なお、施工条件に応じて隣接セグメントリングを千鳥状ではなく、芋継ぎ状に配列しても良いことは言うまでもない。この場合には、凹所11a ,11b の内面と係合する脚部12a ,12b を有する継手金具12は対向セグメントにボルト13により仮止めすることは不適当であるため、例えば手作業で坑口側から凹所11a ,11b 内に押込むものとする。
【0020】
新設セグメントリングの組立が完了した後、例えば前述した二層ライニング工法によりセグメントリングの外周部にコンクリートを加圧充填する場合には、凹所11a ,11b 内にもコンクリートが充填されることとなる。これにより、何ら特別な措置を講じることなく継手金具類の防食性を向上することが可能となる。
【0021】
図7は、本発明によるセグメント継手の他の実施形態を示す斜視図である。このセグメント10は、円周方向端面10a ,10b の近傍に形成された凹所11a ,11b がセグメント10の軸線方向端面10d のみに開口し、外周面10c には開口しない閉鎖形状とされている点で前例とは若干相違しているが、坑口側、すなわち既設セグメントリング側から継手金具12を差込可能とするために凹所11a ,11b がセグメント10の軸線方向端面10d に開口する点も含めた基本構造において変わるところはない。なお、図7においてセグメント10は、展開形状が台形のAセグメントとして図示されている。
【0022】
図8は、図7に示したセグメント継手における継手金具12により隣接セグメント10,10が相互に接合された状態を示しており、図4におけると同様に既設セグメントリングは省略されている。
【0023】
さらに、図9(a) 〜図9(c) は、図7に示したものと同等のインバートセグメント(Aセグメント)を含む4分割セグメントよりなるセグメントリングの組立状態を示す説明図である。このセグメントリングは、展開形状が台形のインバートセグメント10A と、展開形状が平行四辺形である一対のサイドセグメント10B と、展開形状がインバートセグメントの台形に対して相補的な台形を呈するキーセグメント10C とから構成されるものである。インバートセグメント10A は切羽側から坑口側に向けて幅が次第に広がる配置とされているため、単位セグメントリングにおいて最初に設置するものである。他方、キーセグメント10C は切羽側から坑口側に向けて幅が次第に狭まる配置とされているため、単位セグメントリングにおけるインバートセグメント10A 上にサイドセグメント10B を設置した後、サイドセグメント10B 相互間のスペース中に切羽側から最終段階で組込むものである。
【0024】
図7及び図8に示したセグメントの継手は閉鎖ポケット形状の凹所11a ,11b を有するため、セグメントの組立が完了した時点で坑口側から凹所内に適当な注入剤を注入することにより継手金具類の補強及び防食を施すのが望ましい。
【0025】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて例示的に説明したが、上記以外の種々の変形及び/又は変更が可能であることは言うまでもない。例えば、セグメントリングが等分割4ピースからなる場合には、かすがい状の継手金具をリング継手面の片側のみに配置し、他方のリング継手面には、金具が嵌合するほぞだけを設けて接合させることによりリング間の添接効果を向上することが可能である。このような考え方は、5分割以上のセグメント割りで千鳥組が可能な矩形セグメントを使用する場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例によるセグメントの継手を示す斜視図である。
【図2】図2(a) は、図1のセグメントの継手に使用する継手金具を例示する斜視図であり、図2(b) は、図2(a) に示す継手金具2枚を溶接して形成した継手金具を示す斜視図である。
【図3】図3(a) 〜図3(c) は、図1のセグメントの継手によるセグメントの結合工程を示す説明図である。
【図4】図4は、図1のセグメントの継手によるセグメントの結合状態を示す説明図である。
【図5】図5(a) 〜図5(c) は、図1の継手を有するセグメントの組合わせ例を示す展開図である。
【図6】図6は、千鳥組を行う場合のセグメントの配列例を示す展開図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例によるセグメントの継手を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7の継手によるセグメントの結合状態を示す説明図である。
【図9】図9は、図7の継手によりセグメントを結合してなるセグメントリングを例示するものであって、(a) は切羽側から見た正面図、(b) は平面図、(c) は側面図である。
【符号の説明】
10 セグメント
10a ,10b セグメントの円周方向端面
11a ,11b 凹所
10c セグメントの外周面
10d セグメントの軸線方向端面
12 継手金具
12a ,12b 継手金具の脚部
12c 継手金具の基部12c
13 仮止めボルト
14 クッション材
15a ,15b 通しボルト用の貫通孔
Claims (4)
- トンネル覆工用のセグメント相互間及び/又はセグメントリング相互間を結合するためのセグメントの継手であって、
セグメントの円周方向端面(10a, 10b)近傍の軸線方向端面(10d)に各々傾斜面を持つ一対の凹所(11a, 11b)を形成し、
前記一対の凹所( 11a, 11b )の前記傾斜面を、それらの凹所が形成された前記端面から奥に向かうにつれて互いに離間するものとし、
前記凹所内に差込可能とするとともに先端部を開いた一対の脚部(12a, 12b)とこれら脚部が両端から突出する基部(12c)とを具えるカスガイ状の金具よりなる継手金具(12)を、前記セグメントに軸線方向に隣接する他のセグメントの軸線方向端面(10d)に固定するとともに、前記他のセグメントにより前記セグメントに向けて押圧して前記一対の凹所内に差込んで前記一対の脚部を前記端面から奥に向かうにつれて互いに離間する前記傾斜面に当接させることにより、円周方向及び/又は軸線方向に隣接するセグメント同士を一体結合可能としたことを特徴とするセグメントの継手。 - 請求項1記載のセグメントの継手において、前記凹所(11a, 11b)はセグメントの外周面に開口する開放ポケット形状としたことを特徴とするセグメントの継手。
- 請求項1記載のセグメントの継手において、前記凹所(11a, 11b)はセグメントの内周面及び外周面には開口しない閉鎖ポケット形状としたことを特徴とするセグメントの継手。
- 請求項1記載のセグメントの継手において、軸線方向に隣接するセグメントリング同士でセグメント(10A, 10B, 10C)が千鳥状に配置され、
前記継手金具は前記各セグメントにおける軸線方向端面(10d)の、円周方向両端面(10a, 10b)のそれぞれの近傍の前記一対の凹所(11a, 11b)間の円周方向位置に前記基部(12c)が固定され、かつ、前記各セグメントに軸線方向に隣接するセグメントの前記凹所(11a, 11b)内に前記脚部(12a, 12b)を差込可能としたことを特徴とするセグメントの継手。
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1997
- 1997-05-28 JP JP13831897A patent/JP3887455B2/ja not_active Expired - Lifetime
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