JP2003081724A

JP2003081724A - 環境殺菌剤及びぬめり防止具

Info

Publication number: JP2003081724A
Application number: JP2001270405A
Authority: JP
Inventors: Yoshimi Taguchi; 吉美田口
Original assignee: MISUZU SHOKAI KK
Current assignee: MISUZU SHOKAI KK
Priority date: 2001-09-06
Filing date: 2001-09-06
Publication date: 2003-03-19

Abstract

(57)【要約】【課題】金属に対する腐食性の抑制や人体に対する安全
性も評価されているヨードを使用しても、充分にヨード
の有する抗菌性および消臭性という効力を発揮させるこ
とができる環境殺菌剤の提供、および、この環境殺菌剤
の有する効力を長期間持続させて台所のぬめりやトイレ
の尿石を除去することができるぬめり防止具の提供を目
的とする。【解決手段】ヨウ素を有効成分とする環境殺菌剤であっ
て、サイクロデキストリンヨウ素包接体と有機バインダ
ーとを含有する組成物の成形体からなることを特徴とす
る構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、サイクロデキスト
リンヨウ素包接体を含有する抗菌性、消臭性、持続性に
優れた環境殺菌剤、およびこの環境殺菌剤を用いて流し
台のぬめりを取り除いたり、トイレの尿石を取り除いた
りすることのできるぬめり防止具に関する。

【０００２】

【従来の技術】台所や風呂場のような湿った場所では、
雑菌の繁殖により、所謂ぬめりが発生することが問題と
なっている。例えば、台所の流し台では、排水口の入口
には、台所内のゴミが水と一緒に流れ込まないように、
ストレイナーが設けられているが、このストレイナー内
にはゴミが溜まっており、しかも湿っているために、雑
菌やカビ等の微生物が繁殖し、ぬめりを発生したり、悪
臭を発生したりするという問題がある。また、男子トイ
レの小便器には、尿石が付着固化し、臭気が発生し清潔
な便器維持に支障が生じている。

【０００３】このぬめりの発生防止、尿石の除去に関す
る提案も従来多数なされている。しかし、現行では、薬
剤としては塩素、臭素系が大半を占めているが、これら
はいずれも金属に対する腐食性が極めて強く、有害ガス
の発生があり安全性の上から問題がある。このため、同
じハロゲン化合物であるが腐食性が少なく、且つ安全な
ヨード化合物がこれに代わるものとして登場した。特に
本発明に類似する特開平９−２２７３１７号公報には、
ヨードホールの一種であるポピドンヨード（ポリビニル
ピロリドンとヨウ素との複合体）を含有する環境殺菌剤
が記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
９−２２７３１７号公報に記載された環境殺菌剤におけ
るポピドンヨード含有の成形体は、そのポピドンヨード
が保有する一大特徴であるヨードガスの発生が常温では
ほとんどゼロのため、流水により成形体から流去したヨ
ード分が接触した個所だけに殺菌力が発生する。このた
め、対象物の周囲上部などには、その効力が及ばないと
いう欠点がある。

【０００５】従って、金属に対する腐食性の抑制や人体
に対する安全性も評価されているヨードに期待されては
いるが、従来のヨードホールすなわちポピドンヨード成
形体では効力の点で満足されていない。このため安全で
且つ腐食性もなくしかもガス発生が顕著に見られるヨー
ド化合物の出現が待望されていた。

【０００６】そこで、本発明は、金属に対する腐食性の
抑制や人体に対する安全性も評価されているヨードを使
用しても、充分にヨードの有する抗菌性および消臭性と
いう効力を発揮させることができる環境殺菌剤の提供、
および、この環境殺菌剤の有する効力を長期間持続させ
て台所のぬめりやトイレの尿石を除去することができる
ぬめり防止具の提供を目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項１にかかる環境殺菌剤（以下、「請
求項１の殺菌剤と記す。」）ヨウ素を有効成分とする環
境殺菌剤であって、サイクロデキストリンヨウ素包接体
と有機バインダーとを含有する組成物の成形体からなる
ことを特徴とする構成とした。上記構成において、サイ
クロデキストリンヨウ素包接体とは、ヨウ素（Ｉ）をサ
イクロデキストリンの疎水性の空洞部分に取り込んでな
る包接化合物のことをいう。

【０００８】このとき、サイクロデキストリンヨウ素包
接体は、本発明の請求項９にかかる環境殺菌剤のよう
に、サイクロデキストリンヨウ素包接体が３乃至３０重
量％の有効ヨウ素量を有するようにすることが好まし
い。すなわち、有効ヨウ素量が上記範囲よりも少なけれ
ば、抗菌性が不十分となるおそれが生じてしまい、一
方、有効ヨウ素量が上記範囲よりも多ければ、サイクロ
デキストリンヨウ素包接体が不安定になってしまった
り、ヨウ素臭が強くなりすぎて匂いの点で満足できない
おそれが生じてしまったりする。以上のような理由か
ら、サイクロデキストリンヨウ素包接体は、有効ヨウ素
量が５乃至２０重量％であることが好ましい。

【０００９】ここで、サイクロデキストリンとしては、
１分子中に含むグルコース基の数によりα体、β体、γ
体、δ体などが挙げられ、また、化学修飾体を有するメ
チル体、プロピル体、モノアセチル体、モノクロロトリ
アジニル体などが挙げられるが、特に限定されない。こ
の中でも、サイクロデキストリンヨウ素包接体は、β体
が容易に入手することができるのに加えて、溶解度に優
れ、殺菌剤としての効率よくヨウ素の効力を発揮させる
ことができる点で好ましい。

【００１０】また、組成物に対するサイクロデキストリ
ンヨウ素包接体の含有量、および有機バインダーの含有
量は、特に限定されないが、本発明の請求項２に係る環
境殺菌剤（以下、「請求項２の殺菌剤」と記す。）のよ
うに、組成物が、サイクロデキストリンヨウ素包接体
を、前記組成物全量に対して０．５乃至５０重量％含有
しているとともに、有機バインダーを、前記組成物全量
に対して５０重量％以上含有していることが好ましい。

【００１１】すなわち、組成物全量に対して、サイクロ
デキストリンヨウ素包接体の含有量が、上記範囲よりも
少ないと、得られる環境殺菌剤の抗菌性や消臭性、ぬめ
り防止性が充分に発揮されないおそれが生じてしまい、
サイクロデキストリンヨウ素包接体の含有量が上記範囲
よりも多いと、成形体の強度や水に対する形状保持性が
低下してしまうおそれが生じてしまう。

【００１２】一方、組成物全量に対して、有機バインダ
ーの含有量が、上記範囲よりも少ないと、成形体の強度
が低下したり、成形体が水に濡れたときに崩壊しやすく
なったりするという弊害が生じてしまう。以上のような
理由から、本発明にかかる環境殺菌剤は、組成物全量に
対して、サイクロデキストリンヨウ素包接体が１０乃至
２０重量％含有されているとともに、有機バインダーが
６０乃至９０重量％含有されていることが好ましい。

【００１３】ここで、有機バインダーとは、サイクロデ
キストリンヨウ素包接体を含有する組成物を成形体に賦
形させることができる有機物であれば特に限定されない
が、たとえば、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、
アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース
（ＣＭＣ）、メチルセルロース（ＭＣ），ヒドロキシメ
チルセルロース（ＨＭＣ）、ポリビニルアルコール、ポ
リビニルピロリドン、コーンスターチ、リグニン、金属
石鹸、酸化エチレン、酸化プロピレン誘導体、高級アル
コールなどが好ましい。特に、溶解流し込み成形を行っ
て成形体を得る場合は、酸化エチレン、酸化プロピレン
誘導体、及び高級アルコールを併用することが、より良
好な成形を行うことができる点で好ましい。

【００１４】また、組成物は、本発明の請求項３にかか
る環境殺菌剤（以下、「請求項３の殺菌剤」と記す。）
のように、請求項２の殺菌剤の構成に加えて、組成物
が、有機酸を、前記組成物全量に対して２０重量％以下
含有していることが好ましい。すなわち、請求項２の殺
菌剤の構成をした組成物に、２０重量％以下の有機酸を
含有させると、組成物のｐＨが３〜４の酸性になる。ヨ
ウ素は、中性からアルカリ性領域においては失活してし
まうという性質を有しているが、酸性領域では有効ヨウ
素量を顕著に向上させるという性質も有している。した
がって、有機酸を用いて組成物を酸性域にすることによ
り、より優れた効果を期待することができる。

【００１５】因みに、組成物における有機酸の含有量が
２０重量％を超えると、太政成形機を用いて成形体を成
形した場合、得られる成形体が崩壊しやすくなってしま
い、流し込み成形により成形体を成形する場合、他の有
機バインダーとの比重の差により均一な成形体を得るこ
とが困難と成ってしまう。

【００１６】以上のような理由から、環境殺菌剤は、請
求項２の構成に加えて、有機酸を５乃至１０重量％含有
している構成をしていることが特に好ましい。なお、こ
こで、有機酸としては特に限定されないが、たとえば、
酢酸、クエン酸、フマル酸、りんご酸、コハク酸、酒石
酸などが挙げられる。

【００１７】また、本発明の環境殺菌剤は、本発明の請
求項４にかかる環境殺菌剤のように、組成物が、サイク
ロデキストリンヨウ素包接体を、前記組成物全量に対し
て０．５乃至５０重量％含有しているとともに、有機バ
インダーおよび無機バインダーを含有し、これら有機バ
インダーと無機バインダーとの総量が組成物全量に対し
て５０重量％以上含有している構成をしていても構わな
い。

【００１８】上記構成において、無機バインダーは、サ
イクロデキストリンヨウ素包接体を含有する組成物を成
形体に賦形させることができる無機化合物であれば、特
に限定されないが、たとえば、周期律表第II族、第III
Ｂ族、第IV族、第ＶＡ族、第VIＡ族、第VIIＡ族あるい
は第VIII族元素の酸化物、複合酸化物、水酸化物、複合
水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩などを挙げることができ
る。具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウ
ム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アル
ミニウム、酸化ケイ素、（二）酸化チタン、酸化ジルコ
ニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化クロム、酸
化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化コバル
ト、酸化ニッケル、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシ
ウム、ケイ酸亜鉛、アルミノケイ酸塩、ホウ酸、ホウ酸
塩などが挙げられる。なお、このとき、前述した無機化
合物を複数組み合わせるようにしても構わない。

【００１９】これらの内でも、ケイ酸、ケイ酸塩、アル
ミノケイ酸塩は、特に比表面積が９０ｍ²／ｇ以上のも
のが、消臭性能にも優れており、本発明の目的に有利に
使用される。アルミノケイ酸塩としては、天然或いは合
成のテクトアルミノケイ酸塩或いはフィロアルミノケイ
酸塩、特に天然または合成の粘土或いはゼオライト、フ
ィロアルミノケイ酸亜鉛、フィロアルミノケイ酸マグネ
シウムを用いることができる。粘土鉱物としては、酸性
白土、活性白土、ベントナイト等モンモリロナイト、バ
イデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライ
ト、ソーコナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、
カオリナイト、アンチゴライト、セピオライト、パリゴ
ルスカイト、バーミキュライト等を挙げることができ
る。ゼオライトとしては、Ａ型、Ｘ型、Ｙ型、Ｐ型の各
種ゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ＺＳＭ−
５、結晶性層状ケイ酸及びその塩、アルミナ、コロイダ
ルシリカ、コロイダルアルミナ、ラポナイト、スチブン
サイト等を挙げることができる。また、これらの酸処理
物や焼成品を用いることもできる。上記無機粒子が０．
１乃至１５μｍの平均粒径、特に１乃至１０μｍの平均
粒径を有する粒子であるのが好ましい。

【００２０】さらに、本発明の環境殺菌剤は、本発明の
請求項５にかかる環境殺菌剤のように、請求項１の殺菌
剤の構成に加えて、組成物が、サイクロデキストリンヨ
ウ素包接体を、前記組成物全量に対して０．５乃至５０
重量％含有しているとともに、有機バインダー、無機バ
インダー、および有機酸を、これらの総量が組成物全量
に対して５０重量％以上含有している構成をしていても
良い。

【００２１】特に、成形体の強度などの見地から、有機
バインダー、無機バインダー、および有機酸は、これら
の総量が組成物全量に対して６０乃至８０重量％以上含
有している構成をしていることがより好ましい。上記構
成において、有機バインダー、無機バインダー、および
有機酸の配合割合は、これらの総量が組成物全量に対し
て５０重量％以上含有していれば、特に限定されない。

【００２２】また、上記構成において、組成物中の無機
バインダーが、炭酸塩を含有している構成をしている
と、発泡成形体を得ることができるため好ましい。すな
わち、発泡成形体からなる環境殺菌剤は、水中において
表面積が拡がるため有効成分を効率良く拡散させること
ができ、しかも成形体を速やかに崩壊させることができ
るため、即効性に優れた環境殺菌剤となる。

【００２３】上述したように有機バインダーに加えて、
無機バインダーも含有している構成をしている環境殺菌
剤は、ぬめり防止の効果や、成形体の強度を確保すると
いう見地から、組成物が、サイクロデキストリンヨウ素
包接体を、前記組成物全量に対して３乃至２０重量％含
有しているとともに、有機バインダーおよび無機バイン
ダーを含有し、これら有機バインダーと無機バインダー
との総量が組成物全量に対して８０乃至９７重量％含有
している構成をしていることがより好ましい。

【００２４】このとき、有機バインダーと無機バインダ
ーとの好適な配合割合は、有機バインダーおよび無機バ
インダーの種類により変化するため特に限定されない
が、たとえば、有機バインダーが粉末セルロースである
とともに、無機バインダーがケイ酸カルシウムである場
合、これら有機バインダー：無機バインダーの配合比率
が１：２となることが好ましい。

【００２５】また、本発明の環境殺菌剤は、本発明の請
求項６にかかる環境殺菌剤（以下、「請求項６の殺菌
剤」と記す。）のように、ヨウ素を有効成分とする環境
殺菌剤であって、サイクロデキストリンヨウ素包接体
と、このサイクロデキストリンヨウ素包接体を担持する
無機担体とを含有し、前記無機担体は、前記サイクロデ
キストリンヨウ素包接体の有効ヨウ素が徐々に外部に放
出されるように、サイクロデキストリンヨウ素包接体を
担持して形成された成形体からなることを特徴とする構
成をしていても構わない。

【００２６】上記構成において、無機担体としては、サ
イクロデキストリンヨウ素包接体を担持できるのであれ
ば特に限定されないが、たとえば、アルミノケイ酸塩
（アルミノシリケート）、ケイ酸カルシウムなどが挙げ
られる。特に、請求項７に記載の環境殺菌剤のように、
無機担体が、シリカゲルおよび／またはアルミノケイ酸
塩、または請求項８に記載の環境殺菌剤のように、無機
担体が、多孔質の活性アルミナおよび／または活性シリ
カゲルアルミナの紛粒体であると、成形体の耐熱温度、
透明性、触感を向上させることができるため好ましい。

【００２７】このような耐熱温度、透明性、触感を向上
させるという傾向は、環境殺菌剤として、上記環境殺菌
剤の成形体を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩
化ビニル（ＰＶＣ）などの熱可塑性樹脂やエラストマー
に重合させた熱可塑性重合体組成物からなるフィルム形
状またはその他の成形体として使用するときに、より強
く発揮される。

【００２８】以上のように形成される環境殺菌剤は、サ
イクロデキストリンヨウ素包接体に加えて、その他の有
機系殺菌、抗菌剤としてチモール、オルソフェニルフェ
ノール、イソチアリゾン系、安息香酸系、10,10'−オキ
シヒ゛スフェノキシアルシン、２−（４−チアソ゛リ
ル）−ヘ゛ンス゛イミタ゛ソ゛ール、Ｎ−（フルオロシ
゛クロロメチルチオ）−フタールイミト゛、２−メチル
カルホ゛ニルアミノヘ゛ンツイミタ゛ソ゛ール等を組成
物全量に対して、１乃至１０％好ましくは１乃至５％添
加混合することができ、その他の無機系殺菌、抗菌剤と
して銀及び銅置換ゼオライト、銀リン酸ジルコニウム、
銀ハイドロキシアパタイト、銀リン酸塩ガラスをその成
形安定性が損なわれない範囲内において添加混合するこ
とが可能である。

【００２９】また、本発明の環境殺菌剤は、上記各成分
を所定の量比で配合した組成物を、それ自体公知の手段
で成形して成形体とする。この組成物には、前述した必
須成分に加えてそれ自体公知の補助成分、例えば増量
剤、着色料等を配合しても構わない。増量剤としては、
特に限定されないが、たとえば、芒硝、炭酸ソーダ、炭
酸カリ、重曹、食塩等を挙げることができ、着色料とし
ては、特に限定されないが、たとえば、各種染料、顔料
等を挙げることができる。

【００３０】また、組成物を形成させるときの、各成分
の混合には、各種ブレンダー、ミキサー、ボールミル等
を用いることができ、組成物の成形には、溶融流し込
み、打錠成形機、転動造粒機、押出造粒機等を使用でき
る。打錠成形の場合、成形圧は、３乃至１５トン、好ま
しくは９乃至１５トンの範囲にあるのが好ましい。ま
た、溶融流し込みを行う場合、溶融流し込み温度は、ヨ
ードの混融安定化の見地から、各種バインダーで８０〜
１００℃、サイクロデキストリンヨウ素包接体で８０〜
８５℃に調整することが望ましい。

【００３１】さらに、成形体は、どのような形状をして
いてもよく、特に限定されないが、たとえば、球状、円
盤状、サイコロ状、円柱状、角柱状などが挙げられる。
また、成形体の大きさは、環境殺菌剤の用途により代わ
るため特に限定されないが、たとえば、環境殺菌剤を流
し台のぬめり防止を目的として使用する場合、径が５乃
至２００ｍｍ、好ましくは１５乃至５０ｍｍの範囲にあ
ることが適当である。

【００３２】また、本発明の請求項１０にかかるぬめり
防止具は、上述した請求項１乃至９の何れかに記載の環
境殺菌剤が、通水性を有する容器内に収容されてなる構
成とした。上記構成において、通水性を有する容器と
は、環境殺菌剤を収容する容器内と、この容器の外とが
通水自在となっていれば特に限定されないが、たとえ
ば、容器の周壁面に通水用の小孔が複数設けられている
タイプの容器、メッシュ構造をしているタイプの容器、
通水性の袋形状をしている容器などが挙げられる。ま
た、ぬめり防止具は、通水性の容器が、紐状体を取り付
けるための孔や突起などの紐状体取り付け部を備えてい
る構成をしていると、たとえば、台所流し台のストレイ
ナーや三角コーナーなどへの取り付けが容易となるため
好ましい。

【００３３】

【発明の実施形態】本発明では、環境殺菌剤の主剤とし
てサイクロデキストリンヨウ素包接体を選択使用する。
サイクロデキストリンヨウ素包接体においては、担体と
なるサイクロデキストリン中にヨウ素が包接されてお
り、ヨウ素特有の不快臭がなく、しかもヨウ素が徐々に
遊離して、抗菌作用を示すので、効果の持続性にも優れ
ている。本発明の環境殺菌剤は、上述したサイクロデキ
ストリンヨウ素包接体を、有機バインダー及び／または
無機バインダーと共に、タブレット等の成形体に成形し
て得ることができる。

【００３４】即ち、サイクロデキストリンヨウ素包接体
は、元々有効ヨウ素の徐放性に優れたものではあるが、
これを有機バインダー及び／または無機バインダーと共
に所定形状に成形することにより、水に濡れた状態にお
いても、成形体が崩壊することなく、形状保持性が維持
されると共に、有効ヨウ素の徐放性が一層確実なものと
なる。

【００３５】このときサイクロデキストリンヨウ素包接
体は、組成物全量に対して０．５乃至５０重量％含有さ
せるようにするとともに、有機バインダー及び／または
無機バインダーは、前記組成物全量に対して５０重量％
以上含有させるように配合して組成物を形成させるよう
にする。このようにして得られたサイクロデキストリン
ヨウ素包接体を用いた環境殺菌剤は、抗菌試験を行った
際、緑膿菌やぬめり原因菌に対して顕著な増殖阻止帯を
示し、抗菌性に優れている。

【００３６】本発明による環境殺菌剤は、種々の微生物
に対して有効な抗菌作用を呈する。次に、本発明による
環境殺菌剤により、実験的に抗菌作用が確認されている
微生物を挙げる。

【００３７】エシャリヒア・コリ（Escherichia coli
大腸菌）、シュウドモナス・エルギノウザ（Pseudomona
s aeruginosa 緑膿菌）、シゲラ・フレキシネリ（Shige
llaflexneri 赤痢菌）、サルモネラ・エンテリティディ
ス（Salmonella enteritidis サルモネラ菌）、クレブ
シエラ・オキシトウカ（Klebsiella oxytoca クレブシ
エラ菌）、ビブリオ・パラヘモリティカス（Vibrio par
ahaemolyticus 腸炎ビブリオ）、カンピロバクター・ス
ピーシズ（Campylobacter sp. カンピロバクター菌）、
スタフィロコッカス・オウレウス（Staphylococcus aur
eus 黄色ブドウ球菌）、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
（Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRS
A)）、エンテロコッカス・フェカリス（Enterococcus f
aecalis腸球菌）、カンジダ・アルビカンス（Candida a
lbicans カンジダ菌）、尚、上記以外の微生物に対して
も幅広い抗菌活性のあることが知られている。

【００３８】本発明の環境殺菌剤は、食品を取り扱う環
境、或いは事業所、家庭、病院、美術館、図書館、学
校、動物飼育室、特別養護老人ホーム、重度心身障害者
施設、各種生産工場、各種研究設備等の環境において
は、有害微生物を防除する目的に使用できる。例えば、
台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤として特に有
用であり、この場合、ぬめりが発生し、かつそれを防止
すべき部位に、本環境殺菌剤を置くことにより、所望の
防止効果が得られる。

【００３９】また、本発明の環境殺菌剤を使用する好適
態様としては、図１に示したように、上記の環境殺菌剤
の成形体を、排水口を有するストレイナー吊り下げ用容
器１内に収容させてストレイナー１０に設置して使用す
ることが挙げられる。この使用形態によると、一度設置
するだけで、ストレイナー１０に対して、ほぼ５週間に
わたって持続したぬめり防止効果を得ることができる。
以下に、本発明の環境殺菌剤を用いて行った脱臭試験、
有効ヨウ素量測定、殺菌活性測定、金属腐食測定、環境
殺菌剤組成物の溶出度測定の概要を示す。

【００４０】脱臭試験ガス採取用シリコンゴム栓付の１．８リットル密閉ガラ
ス容器に試料環境殺菌剤１個（約１５ｇ）を入れ、それ
にアンモニアガス、硫化水素水ガス、０．０８％エチル
メルカプタン−エタノール溶液をそれぞれ１００ｐｐｍ
の濃度になるまで注入する。室温にてアンモニア、エチ
ルメルカプタンの場合１５、６０、３００分放置後の濃
度、及び硫化水素の場合３０、１８０、１２００分放置
後の濃度をガス検知管にて測定する。

【００４１】有効ヨウ素量測定本発明の環境殺菌剤のような含ヨウ素化合物成形体の消
毒、殺菌効果はヨウ素（Ｉ₂）自体である。従って当該
供試体の全ヨウ素量のうち、イオン性ヨウ素量とそれ以
外の有効ヨウ素量（ヨウ素分子自体）とを下記の方法で
評価する必要がある。有効ヨウ素量は、２ｇの試料粉末
を水１００ｍｌに懸濁させ、０．００５Ｎチオ硫酸ナト
リウム液でのヨウ素−デンプン反応滴定で試料粉末中の
有効ヨウ素量％を定量する。

【００４２】殺菌活性測定検定用寒天培地としてはペプトン１ｇ／ｌ、ＫＨ₂ＰＯ
₄３．０ｇ／ｌ、Ｋ₂ＨＰＯ₄０．４５ｇ／ｌ、ＮａＣ
ｌ４ｇ／ｌ、ａｇａｒ１５ｇ／ｌをｐＨ６に調合し、
その中心に環境殺菌剤組成物を置き一定条件下で培養す
る。

【００４３】ぬめり原因菌は、流し台に付着したぬめり塊を採取しテ
フロン（登録商標）ホモジュナイザーで均一にホモジュ
ナイズした物を使用する。培養後、菌の増殖の阻止帯幅
（ｍｍ）を測定する。（図２参照）

【００４４】金属腐食試験ビーカー（５０ｃｃ）に環境殺菌剤組成物を入れ水道水
（約２０℃）を５００ｍｌ／分の速度で注ぎ続ける、ビ
ーカーから流出する水をネットの上にのせた被検金属で
あるステンレス製スプーン、鉄製釘、銅製鋲にあて環境
殺菌剤組成物が溶解したら更に新しい物を追加し３、
５、１０個と継続した時点での腐食性を観察する。

【００４５】評価方法として下記のように示す。０全く錆が発生しない１わずかな錆が発生する２一部分錆が発生する３大半の部分に錆が発生する。

【００４６】環境殺菌剤組成物の溶出度測定ビーカー（５０ｃｃ）に重量（２０℃水分飽和状態）を
測定した環境殺菌剤組成物を入れ水道水（約２０℃）を
５００ｍｌ／分の速度で注ぎ続け、環境殺菌組成物がす
べて溶解するまでの日数を測定する。

【００４７】本発明の環境殺菌剤は、上述した試験全て
に好適な結果を示し、長期に渡って抗菌性を有し、しか
も、塩素系殺菌剤などと比べて、金属に対する腐食性を
著しく緩和させることができるのに加えて、消臭効果も
優れた環境殺菌剤ということが分かる。

【００４８】本発明の効果をより詳細に説明すると、サ
イクロデキストリンヨウ素包接体の有効ヨウ素量は約２
０％あるのに対して、従来環境殺菌剤に用いられていた
ポリビニルピロリドンとヨウ素との複合体であるヨウ素
化合物（以下、「ポピドンヨード」と記す。）の有効ヨ
ウ素量は約１０％である。

【００４９】したがって、成形体に占める重量比率が同
等であれば、その有効ヨウ素量は２倍となり、殺菌力は
大幅に拡大する。また、上記ポピドンヨード含有の成形
体は、ガスの放散がないが、サイクロデキストリンヨウ
素包接体は常温においてその発生が顕著であり広範囲に
効力が生じる。したがって、消臭材としての効果をも充
分に期待することができるのである。

【００５０】

【実施例】次に実施例と比較例をあげて説明する。

【００５１】（実施例１）βサイクロデキストリンヨウ
素包接体（日宝化学製）２．５５ｇと、分子量２０００
０のポリエチレングリコール（ＰＥＧ２００００：三洋
化成（株）製）９．９ｇと、カスターワックス（：小倉
合成（株）製）２．５５ｇとを混合溶解し、８５℃に保
持しながら成形型に流し込み、直径３０ｍｍ、厚み１５
ｍｍの成形体からなる環境殺菌剤を製造した。

【００５２】（実施例２）βサイクロデキストリンヨウ
素包接体（日宝化学製）２．６ｇと、ステアリン酸カル
シウム６．０ｇと、カルボキシメチルセルロース３．４
ｇと合成アルミノケイ酸亜鉛（ミズカナイト表面積260
ｍ²/g 細孔容積0.55ml/g：水澤化学工業製）１．０ｇを
スーパーミキサーで十分混合し、内径３０ｍｍ、高さ５
０ｍｍのステンレス製金型に詰め込む、それに油圧プレ
ス機を用いて９．５トンの圧力を加え、直径３０ｍｍ、
高さ１３ｍｍの環境殺菌剤成型物を得た。

【００５３】（実施例３）βサイクロデキストリンヨウ
素包接体（日宝化学製）２．６ｇと、ステアリン酸カル
シウム６．０ｇと、ホウ酸３．４ｇと、ケイ酸カルシウ
ム（フローライトＲ：トクヤマ製）１．０ｇとを用いた
ことを除いて、実施例２と同様の操作を行い、直径３０
ｍｍ、高さ１２．８ｍｍの環境殺菌剤成型物を得た。

【００５４】（比較例１）粉末ポピドンヨード（日宝化
学製）２．６ｇと、ステアリン酸カルシウム６．０ｇ
と、ホウ酸３．４ｇと、ケイ酸カルシウム（フローライ
トＲ：トクヤマ製）１．０ｇとを用いたことを除いて、
実施例１と同様の操作を行い、直径３０ｍｍ、高さ１３
ｍｍの環境殺菌剤成型物を得た。

【００５５】上記実施例１〜３および比較例１の操作で
得られた環境殺菌剤について、環境殺菌剤組成物の有効
ヨウ素量と溶出度を表１に示した。また、殺菌活性を緑
膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表２に示し
た。さらに、環境殺菌剤組成物の脱臭性能を表３に示し
た。

【００５６】

【表１】

【００５７】

【表２】

【００５８】

【表３】

【００５９】表１の結果より、実施例１〜３の環境殺菌
剤は、比較例１の環境殺菌剤と比べて有効ヨウ素量が明
らかに多いことが分かる。また、実施例１および実施例
２の環境殺菌剤は、長期に渡って殺菌剤の効力を維持で
きることが分かる。また、実施例３の環境殺菌剤は、有
効ヨウ素量の割に殺菌剤が溶出される日数が短いため、
比較例１よりも強力な殺菌力を発揮することができ、ト
イレの尿石除去などのより強い殺菌を必要とする部分に
好適に使用することができることが分かる。

【００６０】また、表２の結果より、実施例１〜３の環
境殺菌剤は、比較例１の環境殺菌剤と比べて、緑膿菌と
ぬめり原因菌との両方に対して、非常に高い殺菌活性を
示していることが分かる。さらに、表３の結果より、実
施例１〜３の環境殺菌剤は、アンモニアガス、硫化水素
ガス、エチルメルカプタンのいずれに対しても非常に優
れた脱臭性能を有し、台所の流し台排水口のストレイナ
ーや三角コーナーに取り付けて使用するだけでなく、ト
イレの脱臭剤としても非常に優れた効果を有することが
分かる。

【００６１】

【発明の効果】本発明の請求項１にかかる環境殺菌剤
は、種々のヨード化合物の内でも、サイクロデキストリ
ンヨウ素包接体を選択し、これを有機バインダーと共に
成形体に成形した成形体によりなるため、サイクロデキ
ストリンヨウ素包接体の持つ殺菌効果を長期間持続させ
ることができ、しかも金属類への腐食を著しく緩和させ
ることができる。

【００６２】また、本発明の請求項２および請求項４に
かかる環境殺菌剤は、請求項１の環境殺菌剤の効果に加
えて、より成形体の強度を高め、しかも効率良く有効ヨ
ウ素の効力を発揮させることができる。また、本発明の
請求項３にかかる環境殺菌剤は、請求項２の効果に加え
て、組成物のｐＨを３〜４の酸性域に保つことにより、
ヨウ素の効力をより効率良く発揮させることができる。

【００６３】また、本発明の請求項５にかかる環境殺菌
剤は、請求項１の環境殺菌剤の効果に加えて、炭酸塩を
含んでいるため、発泡成形体を得ることができ、必然的
に表面積部分を増やすことと、崩壊性が向上することに
より、効力の即効性を測ることができる。また、本発明
の請求項６〜８にかかる環境殺菌剤は、これら環境殺菌
剤をさらに熱可塑性樹脂やエラストマーに重合させて、
フィルム形状などをした熱可塑性重合体組成物として使
用するとき、耐熱温度、透明性、触感に優れた熱可塑性
重合体組成物を得ることができる。

【００６４】また、本発明の請求項９にかかる環境殺菌
剤は、請求項１〜請求項８の何れかに記載の環境殺菌剤
の効果に加えて、サイクロデキストリンヨウ素包接体の
有効ヨウ素量が３乃至３０％の有効ヨウ素量を有するも
のであるため、抗菌性を確保しつつヨウ素臭を抑えるこ
とができるバランスに優れた成形体を得ることができ
る。

【００６５】また、本発明の請求項１０にかかるぬめり
防止具は、請求項１〜請求項９の何れかに記載の環境殺
菌剤の効力を効果的に発揮させて、ぬめりを取り除いた
り、消臭を行ったりすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる環境殺菌剤を排水口ストレイナ
ーに取り付けた様子を示した斜視図である。

【符号の説明】

１環境殺菌剤

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号ＦＩテーマコート゛(参考）Ｃ０２Ｆ 1/50 ５３１Ｃ０２Ｆ 1/50 ５３１Ｌ５４０５４０Ｅ５４０Ｆ 1/76 1/76 ＡＦターム(参考） 4D050 AA20 AB06 BB03 BD03 4H011 AA02 BA01 BB18 BC01 BC03 BC06 BC18 BC19 DA03 DC11 DD05 DF02 DH10

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ヨウ素を有効成分とする環境殺菌剤であっ
て、サイクロデキストリンヨウ素包接体と有機バインダ
ーとを含有する組成物の成形体からなることを特徴とす
る環境殺菌剤。
【請求項２】組成物が、サイクロデキストリンヨウ素包
接体を、前記組成物全量に対して０．５乃至５０重量％
含有しているとともに、有機バインダーを、前記組成物
全量に対して５０重量％以上含有している請求項１に記
載の環境殺菌剤。
【請求項３】組成物が、有機酸を、前記組成物全量に対
して２０重量％以下含有している請求項２に記載の環境
殺菌剤。
【請求項４】組成物が、サイクロデキストリンヨウ素包
接体を、前記組成物全量に対して０．５乃至５０重量％
含有しているとともに、有機バインダーおよび無機バイ
ンダーを含有し、これら有機バインダーと無機バインダ
ーとの総量が組成物全量に対して５０重量％以上含有し
ている請求項１に記載の環境殺菌剤。
【請求項５】組成物が、サイクロデキストリンヨウ素包
接体を、前記組成物全量に対して０．５乃至５０重量％
含有しているとともに、有機バインダー、無機バインダ
ー、および有機酸を、これらの総量が組成物全量に対し
て５０重量％以上含有している請求項１に記載の環境殺
菌剤。
【請求項６】ヨウ素を有効成分とする環境殺菌剤であっ
て、サイクロデキストリンヨウ素包接体と、このサイク
ロデキストリンヨウ素包接体を担持する多孔質の無機担
体とを含有し、前記無機担体は、前記サイクロデキスト
リンヨウ素包接体の有効ヨウ素が徐々に外部に放出され
るように、サイクロデキストリンヨウ素包接体を担持し
て形成された成形体からなることを特徴とする環境殺菌
剤。
【請求項７】無機担体が、シリカゲルおよび／またはア
ルミノケイ酸塩である請求項６記載の環境殺菌剤。
【請求項８】無機担体が、多孔質の活性アルミナおよび
／または活性シリカゲルアルミナの紛粒体である請求項
６記載の環境殺菌剤。
【請求項９】サイクロデキストリンヨウ素包接体が３乃
至３０％の有効ヨウ素量を有するものである請求項１乃
至８記載の環境殺菌剤。
【請求項１０】請求項１乃至９の何れかに記載の環境殺
菌剤が、通水性を有する容器内に収容されてなるぬめり
防止具。